澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「後法は前法を破る」―9条3項の新設は2項を破ることになる。

学生時代の親しい友から電話がかかってきた。
友「安倍晋三が、『加憲的な9条改憲』ということを言いだしたろう。あれは、いったいどういうことなんだ?」

私「9条1項の戦争の放棄、9条2項の戦力不保持には手を付けずにそのまま残しておいて、9条3項か、9条の2を新しく付け加えるというあれね。」

友「『自衛隊を憲法上の存在として明記する』というのだから、自衛隊の合憲化をねらっていることは間違いない。けど、よう分からんのは、ホントにそれだけなのかどうか。これまでの政府の解釈も、『自衛隊は違憲の存在ではない』のだから、わざわざ憲法改正までやるほどのことはないだろう」

私「『加憲的改憲』は公明党の主張だから、その賛成を得やすいというところは、大いにあるだろうね。自民党改憲草案のように、9条2項を削除して国防軍を制定するということでは、危険すぎて現実性がない」

友「けどな。ホントに『自衛隊は違憲ではない』ことを明確にするだけのことだったら、手間暇かけてこんな改憲手続をわざわざ用意するはずがない。必ず、ウラがあるんだろう。」

私「9条3項でも9条の2でも、これが新しく付け加えられことで、9条1項2項の解釈が違ってくることは大いにありうる。」

友「そこが、ポイントなんだな。『新しく付け加えられた9条3項が、9条1項2項の上書きをする』などという解説を読んだが、『上書き』ではよく分からない。こんなときの法律用語があったろう。」

私「有名な法諺に『後法は前法を破る』というのがある。『後法は前法を廃止する』ともいうようだ。『後法優先の原則』と言っても同じこと。」

友「9条1・2項と、新3項とは矛盾するという前提で、新3項が1・2項の内容まで変えてしまうということだな。」

私「そうだ。まずは、9条1~2項と、新3項との解釈に齟齬がないように、統一的な解釈を試みなければならない。しかし、いかんせん『陸海空軍その他の戦力は保持しない』という2項の定めと、新3項の『自衛隊の存立』。両者が矛盾なく並立することは常識的に困難だろう。」

友「9条3項におくことで合憲化しようという自衛隊は、ホントに今のままの自衛隊なのかね。将来『戦力に変質しうる自衛隊』ではないのか」

私「そのまえに、『今のままの自衛隊』がなんであるかを確認しなければならない。戦争法によって集団的自衛権行使や他国軍への『後方支援』の権限を付与された自衛隊なので、『専守防衛の自衛隊の合憲化』では決してないことが重要だろう」

友「なるほど、そのように言われると、3項の新設によって2項が破られてしまうということの意味が見えてくる。」

私「小狡いアベのやることだ。うんと悪いことに決まっている。と構えるのが正しい対処だと思うね」

友「しかし、なんで後法が優先するのだろう」

私「直近の憲法制定権者の意思が、従前のものより尊重されてしかるべき、ということだろうね。」

友「いったい、新3項の具体的な条文案はどうなるのだろう。」

私「けっこう具体的な案文作りは楽ではないと思うよ。やましい意図を隠しながらのダマシのテクニック」

友「報道だと、自民党は現行9条『堅持』の姿勢を示して公明党の理解を得、年末までの改正案取りまとめを目指す。保岡興治は『来年の通常国会が終わるまでに発議できればベスト』ということじゃないか」

私「2020年施行を逆算すれば、そんなペースだが、そんなにうまくいくはずはない」

友「そうだな。落ち目のアベ。落ち目の自民党だよな。傲りの挙げ句の支持率低下だ。今度の都議選でもお灸を据えられることになるのだろう。」

私「アベには哲学も理念もない。現行憲法のどこをどう変えねばならぬという信念がない。この無原則が彼の強み。改憲派を糾合する立場としてはうってつけだと思う。ともかく憲法に傷を付けたいという、反憲法の情念だけは人一倍強い。そのアベの求心力が落ちてくれば、自民党も与党もまとまらない。日和見維新も遠ざかる。右翼連中からも惰弱と指弾されることになる。そんな彼にとっての悪循環が始まったように見えるよね。ようやくのことだけど」
(2017年6月25日)

愛媛玉串料訴訟大法廷判決から20年。いま、その意義を考える。

本日は、久しぶりの松山。愛媛弁護士会が主催し日本弁護士連合会共催のシンポジウム「安保法制が成立した今、愛媛玉串料訴訟最高裁判決の意義を考える」に招かれての出席。朝羽田を発っての日帰りだったが、まだ身体は元気なのがありがたい。

愛媛玉串料訴訟大法廷判決(1997年4月2日)から20年。その地元愛媛で、判決の意義を再確認しようという企画。もちろん、現在の憲法状勢に照らして20年前の判例を見直してみようという趣旨。それが、「安保法制が成立した今」と付された意味なのだ。

「安保法制が成立した今」とは、集団的自衛権の行使として海外に派兵された自衛隊員に戦死者が出る、そのことの現実的な可能性を考慮しなければならない「今」である。再びの靖国神社合祀はないのかと問わざるを得ない今のことなのだ。戦後70年余、平和憲法下に戦死者あることを考えずにきた日本が、今までの日本ではなくなった。

スケジュール冒頭の記念講演が、当時愛媛大学で憲法を担当し、愛媛玉串料訴訟の理論的支柱であった諸根貞夫・現龍谷大学法学部教授による「安保法制と愛媛玉串料訴訟の意義」。

教授は講演の最後に、「特に戦死者の扱いについて」として、次のようにまとめられた。
「死にどのように向き合うかは故人ないし近親者の『自己決定権』と密接にかかわる問題で、そこには特定宗教で『祀られない自由』も含まれると解すべきである。『自由とは、他人を害しないすべてをなし得ることに存する』(フランス「人権宣言」第4条)とするならば、靖国神社は自己の『信教の自由』を一方的に主張して、他者の『祀られない自由』を害することはできないと解すべきである。国家による特定宗教を利用した戦死者の『管理』は許されない。最高裁が特定の宗教団体を特別に扱ってはならないと明言し、戦没者の慰霊などは『特定の宗教と特別のかかわり合いを持つ形でなくても』行うことができると指摘していることに注目すべきである。

そして、下記3名の各弁護士の報告と、パネルディスカッション。
愛媛玉串料訴訟弁護団長・弁護士西嶋吉光
岩手靖国訴訟弁護団・弁護士澤藤統一郎
箕面忠魂碑訴訟弁護団・弁護士加島宏

愛媛玉串料訴訟大法廷判決は、靖国神社・護国神社境内で挙行する祭祀に対し、県費から支出の玉串料等を奉納することが、憲法20条3項・89条に定める政教分離原則に反する違憲行為と断じた。多数意見13、反対意見2である。

なお、反対意見2の一人が、最高裁長官三好達。ネトウヨ同然の反対意見を書いて、退官後は日本会議の議長になった。大した識見である。

なお、諸根教授に対抗して、被告知事側に「理論」を提供したのが、当時愛媛大学に在籍していたもうひとりの憲法学者・百地章。勝敗があまりに明白に出たことが印象深い。

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私の岩手靖国違憲訴訟報告レジメを掲載しておく。
第1 岩手靖国違憲訴訟と判決
岩手靖国違憲訴訟とは原被告を異にする二つの(住民)訴訟からなる
☆当初は岩手靖国公式参拝違憲訴訟(1981年3月16日提訴)
天皇と内閣総理大臣の靖国公式参拝を求める県議会決議の違憲を問題にしたもの
(同様の決議は県議会レペルで37、市町村議会レペルで1548あった)
原告(牧師・元教師) 、被告(議長・県議40人)。

なお、この議会決議運動を主宰したのは、「英霊にこたえる会」。その初代会長が、石田和外元最高裁長官。

☆岩手玉串料訴訟(県費からの玉串料支出違憲訴訟・82年6月28日提訴)
原告住民(多彩な市民) 被告(知事・福祉部長・厚生援護課長) 県が補助参加
(提訴の日が愛媛玉串料訴訟と同日)

1983年夏の陣としての証拠調べ
原告側証人 村上重良・大江志乃夫・高柳信一の各氏
被告側証人神野藤重申(靖国神社禰宜)氏

そして、「最低・最悪」完敗の一審判決(1987年3月5日)から
「完勝」の仙台高裁控訴審判決(1991年1月10日)に

第2 高裁判決の憲法判断
☆ 天皇・首相の靖国公式参拝は違憲
☆ 県費からの玉串料支出は違憲
いずれも、目的効果基準に拠りつつ、これを厳格に適用しての違憲判断。
潜在効果・波及効果・象徴的効果などを重視する姿勢。
上告却下 特別抗告却下

第3 弁護団は政教分離問題をどうとらえたか
*信教の自由の制度的保障規定⇒基本的人権(精神的自由権)に関わる問題
*天皇を再び神にしてはならないとする歯止めの規定⇒国民主権原理に関わる問題
*軍国神社靖国と政権との癒着を禁じる規定⇒恒久平和主義に関わる問題
*政教分離の「教」とは、「国家神道の残滓」であり、「天皇の神聖性」鼓吹であり、国民精神を戦争に動員した「軍事的擬似宗教」である。
☆政教分離は、憲法の根幹に関わる大原則。自衛隊の海外派兵や自民党改憲論にからんで、ますますその重要性を高めている。歴史認識に立っての正確な認識が必要となっている。
(2017年6月24日)

自民の票と議席を減らそう。自民離れ票を小池新党にまわさず、日本共産党へ。

さあ、東京都議選が始まった。アベ一強政治に破綻が生じ、人心が離れつつある絶好のタイミング。この都議選は一地方議会の選挙にとどまらない。民意の在処をはかるまたとない機会。アベ政権による政治の私物化と、それを抑制できない自公与党体制への国民の審判のまたとないチャンス。共謀罪の廃止や、9条改憲阻止の民意を示すチャンスでもある。中央政治に、大きな影響を期待しうる注目すべき選挙。

この選挙はアベ一強批判選挙だ。最大の注目点は、自民党にどれだけの打撃を与えられるかということだ。前回選挙に比較して、前回の2013年6月都議選での自民党の当選者は59名、獲得票数は163万票、得票率は36%だった。この水準からのマイナス分が、アベ自民批判の国民の審判だ。具体的には、森友・加計両事件に象徴される政治の私物化とねじ曲げ。そして共謀罪強行に見られるアベ自民の徹底した非民主的姿勢への批判。

問題は小池新党(都ファ)の評価である。その基本性格は自民党凋落分の保守の受け皿。その機能は自民党離れ票の革新政党への流れを堰き止めるための防波堤。それが客観的な小池新党の役割。

127議席の過半数が64。小池新党単独ではこの数字に届かないが、公明と与党体制を組むことによって過半数に達するとの見方もあるようだ。

私は、地元(文京)で共産党・福手よう子候補の第一声に立ち会った。文京区は定数2で前回選挙では貴重な議席を確保している。長く都議だった現職の後継新人候補を当選させようと熱気は高い。応援に駆けつけた大阪の辰巳孝太郎、東京の吉良佳子両議員ともども熱弁を振るった。

「国政を私物化し、憲法を壊す安倍自公政権を首都・東京から変えよう」「そのための共産党の躍進を」「加計学園の疑惑。安倍首相は岩盤規制に穴を開けたというが、加計学園しか通れない特別の穴だったではないか」「安倍首相に直ちに臨時国会を開かせて必要な証人喚問をさせるよう徹底追及しよう」「特定秘密保護法・戦争法、そして共謀罪。さらには憲法9条改憲の安倍政権は徹底追及するしかない」「共謀罪法廃止も、改憲阻止も都議選の大きな争点」「開発優先の都政から、生活重視の都政への大転換を」「そして、築地市場の豊洲への移転をきっぱりと中止し、築地市場を未来に引き継ごう」「小池知事は豊洲移転を中止して、築地を営業しながら再整備する道を真剣に具体化すべきだ」「文京区内の待機児童をなくそう、特養待機高齢者をなくそう。孤独死をなくそう」「そのため、大塚車庫跡地の福祉施設利用を実現しよう」「国保税の引き下げを実現しよう」…。実に多彩な訴えだった。

自民党を減らす。だが自民離れ票を小池新党に止めてはならない。ぜひとも、自民離れ・公明離れの票を、共産党の受け皿にまで。そのような気迫のこもった演説。大いに期待したい。
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ところで、本日(6月23日)は沖縄慰霊の日。毎年、この日のことは当ブログで触れている。以下は、一昨年6月23日当ブログの一節。

沖縄県には、2か条の「沖縄県慰霊の日を定める条例」がある。1974年10月21日に制定されたもの。その全文が以下のとおり。
「第1条 我が県が、第二次世界大戦において多くの尊い生命、財産及び文化的遺産を失つた冷厳な歴史的事実にかんがみ、これを厳粛に受けとめ、戦争による惨禍が再び起こることのないよう、人類普遍の願いである恒久の平和を希求するとともに戦没者の霊を慰めるため、慰霊の日を定める。
第2条 慰霊の日は、6月23日とする。」

本日が、その沖縄県の「慰霊の日」。「その日は県はもちろん県下の全市町村とも閉庁となり、沖縄戦の最後の激戦地であった南部の戦跡地で『沖縄全戦役者追悼式』が行われます」(大田昌秀「沖縄 平和の礎」岩波新書)。

この日の慰霊の対象は全戦没者である。戦争の犠牲となった「尊い生命」に敵味方の分け隔てのあろうはずはなく、軍人と民間人の区別もあり得ない。男性も女性も、大人も子どもも、日本人も朝鮮人も中国人も米国人も、すべて等しく「その死を悼み慰める」対象とする。「戦争による惨禍が再び起こることのないよう、人類普遍の願いである恒久の平和を希求する」立ち場からは、当然にそうならざるを得ない。

味方だけを慰霊する、皇軍の軍人・軍属だけを祀る、という靖国の思想の偏頗さは微塵もない。一途にひたすらに、すべての人の命を大切にして平和を希求する日。それが、今日、6月23日。

酸鼻を極めた国内で唯一の地上戦終了の日。第32軍(沖縄守備軍)司令官牛島満と長勇参謀長が自決し、旧日本軍の組織的な戦闘が終わった日をもって、沖縄戦終了の日というのだ。

私は、学生時代に、初めてのパスポートを手に、ドルの支配する沖縄を訪れた。右側の車線を走るバスで南部の戦跡を回った。牛島中将の割腹の姿を模したものという黎明の塔を見て6月23日を脳裡に刻した。沖縄戦は1945年4月1日の米軍沖縄本島上陸から牛島割腹の6月23日までと教えられた。

大田昌秀はこれに異を唱えている。終戦50年を記念して、知事として沖縄戦の犠牲者のすべての名を永遠に記録しようという「平和の礎」建設の計画に関連して語っている。(以上引用終わり)

私は、大学4年の冬に1か月余沖縄にいた。そのとき、大田昌秀と仲宗根政善の両氏に出会っている。

大田は、琉球大学の学徒で有名人ではなかった。この人から聞いた話として記憶にあるのは、従軍学徒の南部戦跡での悲劇だった。鉄血勤皇隊員の死亡の多くは、井戸に水汲みに行っての射殺だったという。井戸は米軍陣地から丸見えの位置にあり、水汲みは不可欠な任務だったが標的にならざるを得ない危険な仕事。このような仕事は、兵ではなく中学生学徒の仕事とされた。遺書を書き米軍の隙を突いて井戸に駆け寄って、多くの命が奪われたという。級友が死んでいく中で、自分は軍中枢の伝令の役を担って、井戸汲みの役は免れた。伝令の最中に捕虜になって生き延びたが、水汲み役で死んでいった級友に対する負い目に堪えられず、以来南部の戦跡にはけっして行かないということだった。この人があとで著名になり知事となって、あの時の人かと思い当たった。

仲宗根政善は、当時知らぬものとてない著名人で、当時は東大に勤務していた。たまたま沖縄に帰っておられたときにお目にかかる機会を得た。最近、その人に、次のような歌が残されていることを知った。

 日の丸の旗もあがらず爆音の
 とどろきわたる復帰のあさけ

 沖縄のいくさをへにし身にしあれば
 などかなじまぬ国旗、君が代

 叙勲の報すなほにはなれず
 戦に失せし乙女の姿浮かびて

「沖縄のいくさをへにし身にしあれば などかなじまぬ国旗、君が代」という感懐はよく分かる。日の丸も君が代も、沖縄のいくさをもたらした元凶。穏やかな沖縄の人々に、いくさの悲劇を押しつけたものの象徴。沖縄のいくさをへにし身として、日の丸にも君が代にも、なじみがたいというのだ。怒りの表現ではなく、なげきの表現となっていることに意味が深いのであろう。

仲宗根政善が
 いわまくら かたくもあらん
 やすらかに ねむれとぞいのる
 まなびのともは
と詠ったあの悲劇のときから72年。

今年も、沖縄全戦没者追悼式が行われた。辺野古新基地建設を強行するアベ晋三が「沖縄基地負担の軽減」を口にする奇妙さ。

東京都民が、沖縄県民になし得ることは、7月2日投票の都知事選でアベ自民党に痛打を与えることだ。自民党の票と議席を減らそう。
(2017年6月23日)

文京区議会の偉大な第一歩 ― 『共謀罪』への反撃

本日(6月22日)、文京区革新懇事務局からご報告を受けた。
本日の文京区議会本会議で、「組織的犯罪処罰法(共謀罪の趣旨を含む)の廃止を求める請願」採択の議決があったとのこと。これは快挙だ。さすが、わが地元の議会。立派なものだ。

この請願は5月31日付で賛同者の署名簿を添えて議会に提出された。タイトルは「『共謀罪』法案(組織的犯罪処罰法改正案)の廃案を求める請願」。請願者は、文京平和委員会と文京革新懇の連名。請願案件は、総務区民委員会に負託されて請願審査がなされたが、採択に至らぬうちに共謀罪法は強行成立してしまった。

ところが、その後の委員会審査では、「共謀罪に反対との趣旨は明瞭なのだから、『法案の廃案』は、『法の廃止』と読み替えよう』との取り扱いになったという。

総務区民委員会の委員数は9名。議長ととして議決に加わることができない委員長を除くと8名。その8名が、採択賛成5・反対3という分布になったという。

未来・共産・市民・永久(とわ)と4会派が賛成にまわり、自民と公明が請願採択反対の姿勢を貫いて敗れた。みじめやな公明。ここでも下駄の雪。自公勢力、もはやけっして多数派ではないのだ。

こうして本会議での議決を経た請願書は、文京区民の意思として、議長名で政府関係機関に要望書として提出されることになる。

果敢に請願採択に取り組んだ関係者と文京区議会に敬意を表したい。このような取り組みが、運動に関与するみんなを勇気づける。これは「偉大な第一歩」と言ってよい。共謀罪の危険性を訴え続けよう、法の廃止を目指した具体的な運動をしよう。大いに励まされる。

法案段階での廃案を求める請願の内容を記載しておきたい。

件名:「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改正案)の廃案を求める請願
【請願理由】
このほど政府は、犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を本格的に審議入りさせました。この「共謀罪」法案は過去3度にわたり提出されたものの、憲法で保障された思想・信条、内心の自由を侵すものとして、国民の大きな反対によって廃案となったものです。
今回の法案も、以下のように多くの問題点があります。
第一に、政府は東京五輪の開催を控え、テロ対策としてこの法整備の必要性を強調しますが、適用される対象277にはテロとは無関係のものがあり、「組織的犯罪集団」の定義もあいまいで、市民活動も対象になりかねません。
第二に、犯罪が実行される前段階での合意や準備行為だけで処罰することは、近代刑法の原則を覆すものであり、また該当行為の範囲も不明確です。
第三に、共謀罪が新設されれば、日常的な会話が盗聴される恐れかあり、また市民同士の相互監視や密告社会を生み出す危険もあります。
よって私たちは、以下のことを強く求めます。
【請願事項】
「組織犯罪処罰法改正案」を廃案にするよう、国に求めること
(2017年6月22日)

『共謀罪』成立に対する抗議声明4題

2017年6月15日「中間報告」(国会法56条の3)なる奇策(法務委員会採決省略)によって、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正法案)が可決成立した。究極の強行採決と言って過言でない。共謀罪の内容の異常にふさわしい、手続的異常であった。あの日から1週間となる。

繰りかえし繰りかえし、この手続の異常と共謀罪の危険性をともに訴え続けることが、この法律(『共謀罪』)を使いにくくし、その運用を押さえ込み、さらには法の廃止を展望することにもつながる。

そのためには、この経過を記憶しよう。それにふさわしい、『共謀罪』の危険性と手続の異常を告発する抗議声明4題を掲記しておきたい。

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共謀罪法案の強行採決に強く抗議する声明
2017年6月19日

共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
社会文化法律センター     代表理事 宮 里 邦 雄
自由法曹団            団長 荒 井 新 二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原   和 良
日本国際法律家協会        会長 大 熊 政 一
日本反核法律家協会        会長 佐々木 猛 也
日本民主法律家協会       理事長 森   英 樹
日本労働弁護団          会長 徳 住 堅 治
明日の自由を守る若手弁護士の会 共同代表 神保大地・黒澤いつき

2017年6月15日午前7時46分,参議院本会議において,「中間報告」(国会法56条の3)により法務委員会の採決を省略するという極めて異例な手段によって,共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)の採決が強行され,同法案は可決成立した。
私たちは,この暴挙に強く抗議する。

共謀罪は,277種類もの犯罪について,日本刑法では例外中の例外とされる予備罪にも至らない,およそ法益侵害の危険性のない「計画」(共謀)を処罰しようとするものであり,刑法の原則を根本から破壊する憲法違反の悪法である。

政府は,共謀罪法案を「テロ等準備罪」と呼び,国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を批准するためには共謀罪の創設が不可欠である,同条約を批准しなければ東京オリンピックも開催できないなどと宣伝してきたが,TOC条約はテロ防止を目的とするものではないこと,同条約を批准するには共謀罪は不要であること,共謀罪が対象とする277の犯罪にはテロと無関係の犯罪がほとんどであり,テロ対策の法制度は整備済みであること,従って共謀罪がいかなる意味でもテロ対策法とはいえないことは,すでに明らかになっている。

また,「計画」,「準備行為」,「組織的犯罪集団」等の概念はあまりにも不明確である上,政府答弁も二転三転し,国民は何が犯罪であり,何が犯罪でないのかを知ることができない。別表に掲げられた対象犯罪277が極めて広範であることとあいまって,共謀罪が罪刑法定主義(憲法31条)に違反することは明白である。

共謀罪の最大の問題は,政府に異をとなえる市民団体などの活動の処罰や,その情報収集・捜査の根拠とされ,市民のプライバシーの権利(憲法13条),内心の自由(憲法19条),表現の自由(憲法21条)を侵害する危険が極めて高いことである。
法務大臣は,衆議院では,条文上何らの根拠がないにもかかわらず,「組織的犯罪集団とは,テロリズム集団,暴力団,麻薬密売組織などに限られる」,「通常の団体に属し,通常の社会生活を送っている方々は処罰対象にならない」と繰り返し答弁してきたが,参議院に至って,「対外的には環境保護や人権保護を標榜していたとしても,それが言わば隠れみの」である団体は組織的犯罪集団となり得るとの重大な答弁を行った。また,組織的犯罪集団の「周辺者」も捜査対象となることを認めた。
これは,共謀罪が成立すれば,正当な目的をもつ団体であっても,警察がその目的を「隠れみの」であると考えれば,その団体や,構成員ないし「周辺者」とみなされた市民が日常的な警察の監視対象とされることを意味する。
対象犯罪277の中に,組織的威力業務妨害罪や組織的強要罪など,基地やマンション建設に反対する行動などに適用される可能性の高い「犯罪」類型が含まれるだけに,上記の日常的な情報収集をもとに強制捜査や処罰が行われるおそれがある。
こうした重大な答弁が参議院になってからなされ,十分な審議がますます必要になったにもかかわらず,強引に採決した与党の強権的な国会運営には憤りを禁じえない。

法案審議中の5月18日,国連特別報告者ジョセフ・カナタチ氏は,共謀罪法案が「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との懸念を表明する書簡を安倍首相に送付した。ところが,日本政府はこの書簡に対し,単に「強く抗議」し,何ら回答しないという恥ずべき態度をとった。こうした日本政府の対応は海外メディアでも危惧感をもって大きく報道された。共謀罪法案が,このように国際社会に背を向けて成立した経緯も忘れてはならない。

国会法56条の3第2項は,「特に緊急を要すると認めたとき」に限り,法務委員会の採決を省略して本会議で採決することを認める。しかし,共謀罪を成立させることに何らの緊急性はなかった。共謀罪法案は,そもそも立法事実が存在しない上,法務大臣がしばしば答弁不能になるなど政府側の解釈が最後まで迷走し,疑問や矛盾が山積していたのであり,6月18日の会期末をもって廃案にすべき法案であった。このような法案について,奇策というべき手段で強行採決した与党の国会運営は,議会制民主主義を死滅させる暴挙である。

共謀罪法案の廃案をめざす声は,全国に大きく広がった。おびただしい数の市民集会,デモ,街頭宣伝,国会周辺では連日の座り込みや昼夜の共同行動が行われた。国会内では4野党1会派が結束して闘い,法律家も,日弁連及び52の単位弁護士会の全てが共謀罪に反対する声明を出し,多数の学者,作家,ジャーナリスト,マスメディアも反対の論陣を張った。そのなかで私たち法律家団体連絡会もあらゆる努力をした。世論調査では反対が賛成を上回った。こうした運動の広がりは,共謀罪を発動させない大きな力になると確信する。

「現代の治安維持法」,「監視社会を招く違憲立法」として強く批判してきた共謀罪であるが,私たち法律家は,今後も市民・野党と手を携え,共謀罪の廃止をめざし,共謀罪の発動を許さない活動を続ける。その一環として,国連特別報告者カナタチ氏が提案した,「監視活動を行う警察を監督する第三者機関」の設置をめざすことも重要な課題である。
私たちは,これからも市民が絶対に萎縮することなく,自由に表現し,自由に仲間と集いあえる社会を維持するため,全力を尽くす決意である。
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いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する日弁連会長声明

本日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、本会議の採決が行われ、成立した。

当連合会は、本法案が、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強いものとして、これまで本法案の制定には一貫して反対してきた。また、本法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存した。

本国会における政府の説明にもかかわらず、例えば、①一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、②「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、③計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などの様々な懸念は払拭されていないと言わざるを得ない。また、277にも上る対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても、十分な審議が行われたとは言い難い。

本法案は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容であり、また、報道機関の世論調査において、政府の説明が不十分であり、今国会での成立に反対であるとの意見が多数存していた。にもかかわらず、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記のとおり異例な手続を経て、成立に至ったことは極めて遺憾である。

当連合会は、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後、成立した法律の廃止に向けた取組を行う所存である。
2017年(平成29年)6月15日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170615.html

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日本ペンクラブ声明「共謀罪強行採決に抗議する」

国内外の専門家、表現者、市民から、多くの意見が表明されるなか、国会において十分な審議が尽くされないばかりか、多くの疑問をのこしたまま、思想・表現の自由に重大な悪影響を及ぼすいわゆる「共謀罪」が強行的に採決されたことを深く憂えるとともに、強い怒りを禁じえない。
今回の衆参両院における法案審議と採決にいたる過程は、民主主義のルールを無視し国民を愚弄したものであり、将来に大きな禍根をのこす暴挙である。
われわれは法案審議のやり直しを強く求める。
2017年6月15日
日本ペンクラブ会長 浅田次郎
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緊急声明:国会不在の共謀罪法案強行成立に抗議する(JCJ)

政府・与党は、参議院法務委員会の審議、討論と採決を省略して、委員長中間報告によって本会議採決を強行、共謀罪新設法案の強行成立させた。
メディアは「奇策」と報じたが、「国会の自殺行為」としかいいようがない。われわれは、「内心の自由」「表現の自由」を破壊し、警察権を拡大して、戦争が出来る国をつくる改憲をめざす安倍内閣に対し、満身の怒りを込めて抗議する。
共謀罪法案について政府は、マフィア対策でしかない条約を「テロ防止条約」だと偽り、組織外の周辺の人をも含んで捜査の対象とされるのに「一般人は関係がない」とウソの答弁を繰り返した。そして、法案自体、277といわれる対象犯罪の数どころか、構成要件とされる「計画」や「準備行為」の定義はあいまいなままで、「何をしたら罪になるのか」さえ明らかにされていない欠陥、かつ憲法違反の法案である。
今回の強行は、安倍政権の目玉政策の「特区」が、実は首相の親友の学園に便宜を図り、政策自体が歪められた疑惑が国会審議で明らかになり、その進展を恐れた政権が「加計隠し」を図ったものだと指摘されている。しかし同時に、それだけでなく、「2020年に9条改憲の施行」をめざす安倍政権が今年中の自民党案作成、2018年12月の衆議院任期中の改憲発議、国民投票、さらに天皇退位、元号改元、などという独裁的「改憲スケジュール」に乗ったものだとも取りざたされている。
われわれは共謀罪法案の新設と安倍改憲戦略の狙いを見抜き、日本を再び暗黒の時代に戻すことがないよう、日本国憲法を擁護し、改憲を許さず、平和と人権、そして民主主義を進めるジャーナリズムの精神を貫き、あきらめず闘い続けることをここに声明する。
2017年6月16日
日本ジャーナリスト会議
(2017年6月21日)

「浜の一揆」訴訟第8回法廷(6月22日)・案内

2017年6月20日
岩手・県政記者クラブ各社殿
同 ・県警記者クラブ各社殿
弁護士 澤藤統一郎
同   澤藤 大河

「浜の一揆」訴訟第8回法廷(6月22日)・案内

6月22日、盛岡地裁「浜の一揆」訴訟の第8回法廷のご案内をいたします。
この日、原告漁民4人と担当の県職員1名の尋問で、審理はヤマ場を迎えます。
この訴訟は、注目され話題になってしかるべき大型訴訟です。
行政のあり方を問い、民主主義を問い、震災後の地域復興の問題でもあります。
社会的意義のある訴訟としてご注目いただき、ぜひとも、取材をお願いします。

第1 事案の概要
岩手の河川を秋に遡上するサケは岩手沿岸における漁業の主力魚種である。1992年2月、岩手県は三陸の海の恵みを象徴する「南部さけ」を「県の魚」に指定している。古くから三陸沿岸の漁民は、秋に盛漁期を迎えるサケ漁を生業としてきた。
ところが、三陸沿岸の漁民は、県の水産行政によって、厳格にその捕獲を禁じられている。うっかりサケを網にかけると、最高刑懲役6月となる。漁船や漁具の没収の規定もある。岩手の漁民の多くが、この不合理を不満として、長年県政にサケ捕獲の許可を働きかけてきた。とりわけ、3・11の被災後はこの不合理を耐えがたいものと感じることとなり、これまで岩手県の水産行政に請願や陳情を重ねてきたがなんの進展も見ることがなかった。
そのため、2015年11月100人の沿岸漁民が岩手県(知事)を被告として、盛岡地裁に行政訴訟を提起した。要求は「固定式刺し網によるサケ漁を認めよ」「漁獲高は無制限である必要はない。各原告について年間10トンを上限として」。原告らは、これを「浜の一揆」訴訟と呼んでいる。
訴訟における請求の内容は二つ、「漁民がした『固定式刺し網によるサケの採捕の許可申請』に対する不許可処分を取り消せ」。そして、「県知事は、『固定式刺し網によるサケの採捕の許可』をせよ」というもの。
では、三陸沿岸の海の恵みは誰が手にしているか。二つの類型がある。一つは浜の有力者が経営する定置網業者である。そして、もう一つの類型が漁協の自営定置である。いずれも、大型定置網による漁獲。その漁獲に影響あるからとして、小型漁船で零細な漁業を営む漁民にはサケ漁が禁止されているのだ。
だから、「おれたちにもサケを獲らせろ」という漁民の切実な要求は、社会構造の矛盾に対する挑戦という意味を持っている。社会的強者と一体となって、零細漁民に冷たい県政への挑戦でもある。だから、「浜の一揆」なのだ。
個々の漁民にとって、「零細漁民の漁業を保護して、漁業の生計がなり立つ手立てを講じよ」という切実な要求である。そして、漁民が高齢化する中で、「後継者が育つ希望ある漁業」をという地域の切実な願いを背景にするものでもある。
本件訴訟は県の水産行政のあり方を問うとともに、地域の民主主義のあり方を問う訴訟でもある。また、3・11被災後の沿岸漁業と地域経済の復興にも、重大な影響をもってもいる。
原告ら漁民は、岩手県民の理解を得たいと願う立場から、県内メティアの取材を希望するものである。

第2 当日の日程
1 法廷
午前10時 開廷(盛岡地裁301号法廷)午前中2名尋問
原告藏さん   主尋問20分 反対尋問20分
サケ漁許可を求める運動の経過について
原告瀧澤さん 主尋問30分 反対尋問30分
漁民が主張する資源保護のあり方(IQ)について

午後1時 再開廷午後3名尋問
原告熊谷さん  主尋問20分 反対尋問20分
漁民の生計の実態、サケ漁許可を求める理由の切実さについて
原告菅野さん 主尋問20分 反対尋問20分
宮城との県境海域で宮城の漁民はサケを獲っていること
海区漁業調整委員会運営の実態
被告側証人 県漁業調整課長  主尋問40分 反対尋問40分

2 法廷終了後の記者会見と報告集会
閉廷後直ちに、報告集会
場所 岩手県公会堂 2階講堂(21号室)
冒頭の訴訟経過説明のあと 記者会見
その後 意見交換

第4 これまでの経過概要
1 県知事宛許可申請⇒小型漁船による固定式刺し網漁のサケ採捕許可申請
2014年9月30日 第1次申請
2014年11月4日 第2次申請
2015年1月30日 第3次申請
2 不許可決定(102名に対するもの)
2015年6月12日 岩手県知事・不許可決定(277号・278号)
*277号は、固定式刺し網漁の許可を得ている者  53名
*278号は、固定式刺し網漁の許可を得ていない者 49名
3 審査請求
2015年7月29日 農水大臣宛審査請求(102名)
2015年9月17日 県側からの弁明書提出
2015年10月30日 審査請求の翌日から3か月を経過
4 提訴と訴訟の経過
2015年11月5日 岩手県知事を被告とする行政訴訟の提起
2016年1月14日 第1回法廷
2017年4月20日 第7回法廷 証拠決定
2017年6月22日 第8回法廷 原告本人4名・被告側証人1名尋問
2017年9月 7日 第9回法廷(予定)学者証人2名尋問予定

第3 訴訟の内容
1 当事者 原告 三陸沿岸の小型漁船漁業を営む一般漁民100名
(すべて許可申請・不許可・審査請求の手続を経ている者)
被告 岩手県(処分庁 岩手県知事達増拓也)
2 請求の内容
*知事の不許可処分(277号・278号)の取消し
*277号処分原告(既に固定式刺し網漁の許可を得ている者) 51名
*278号処分原告(固定式刺し網漁の許可を得ていない者)  49名
*知事に対するサケ漁許可の義務づけ(全原告について)
「年間10トンの漁獲量を上限とするサケの採捕を目的とする固定式刺網漁業許可申請について、申請のとおりの許可をせよ。」

第4 争点の概略
1 処分取消請求における、知事のした不許可処分の違法の有無
(1) 手続的違法
行政手続法は、行政処分に理由の付記を要求している。付記すべき理由とは、形式的なもの(適用法条を示すだけ)では足りず、実質的な不許可の根拠を記載しなければならない。それを欠けば違法として取消理由となる。ましてや、本来国民の自由な行為を一般的に禁止したうえ、申請に従って個別に解除して本来の自由を回復すべき局面においては、飽くまでも許可が原則であって、不許可として自由を制約するには、合理性と必要性を備えた理由が要求される。その具体的な理由の付記を欠いた本件不許可処分はそれだけで手続的に違法である。
本件不許可処分には、「内部の取扱方針でそう決めたから」というだけで、まったく実質的な理由が書かれていない。
(2) 実質的違法
法は、申請あれば許可処分を原則としているが、許可障害事由ある場合には不許可処分となる。下記2点がサケ採捕の許可申請に対する障害事由として認められるか。飽くまで、主張・立証の責任は岩手県側にある。
①漁業調整の必要←漁業法65条1項
②水産資源の保護培養の必要←水産資源保護法4条1項
2 義務づけの要件の有無 上記1と表裏一体。

第5 義務付けについての原告主張の概要
1 基本的な考え方
*三陸沖を泳ぐサケは、無主物であり、そもそも誰が採るのも自由。
これが原則であり、議論の出発点。
*憲法22条1項は営業の自由を保障している。
⇒漁民がサケの漁をすることは原則として自由(憲法上の権利)
⇒自由の制限には、合理性・必要性に支えられた理由がなくてはならない。
*漁業法65条1項は、「漁業調整」の必要あれば、
水産資源保護法4条1項は、「水産資源の保護培養」の必要あれば、
「知事の許可を受けなければならないこととすることができる。」
*岩手県漁業調整規則23条
「知事は、「漁業調整」又は「水産資源の保護培養」のため必要があると認める場合は、漁業の許可をしない。」
⇒ということは、許可が原則。
県知事が「漁業調整」「水産資源の保護培養」の必要性について
具体的な事由を提示し、証明しなければならない。
2 ところが、被告(県知事)は、不許可事由として、「漁業調整」「水産資源の保護培養」の必要性にまったく触れるところがない。
不許可の理由は形式的に「庁内で作成した「取扱方針」(2002年制定)にそう書いてあるから」というだけ。

第6 漁協中心主義は漁民の権利を制約しうるか。
1 漁業法にいう、漁業の民主化とはなにか。
零細の個々の漁民の権利にこそ配慮することではないか。漁協の営業のために、漁民の営業を圧迫することは「民主化」への逆行である。
2 漁民あっての漁協であって、漁協あっての漁民ではない。
主客の転倒は、お国のための滅私奉公と同様の全体主義的発想ではないか。
3 結局は、浜の有力者に奉仕する漁業行政の「カムフラージュの理論」ではないか。

☆これに対して、被告岩手県は、訴訟進行後ようやく「固定式刺し網によるサケ漁」を許可しない実質的な理由を整理して述べてきた。
以下のとおりである。
①岩手県の長年に亘るサケ産業(水産振興)政策とそれに基づく関係者の多大な尽力を根本的に損ねてしまうこと
②種卵採取というサケ資源保護の見地からも弊害が大きいこと
③各地漁協などが多大な費用と労力を投じた孵化放流事業により形成されたサケ資源をこれに寄与していない者が先取りする結果となり、その点でも漁業調整上の問題が大きいこと
④解禁に伴い膨大な漁業者が参入し一挙に資源が枯渇するなどの問題が生じること
⑤沖合で採捕する固定式刺し網漁業の性質上、他道県との漁業調整上の摩擦も看過できないこと
⑥近年、県内のサケ資源が深刻な減少傾向にあること

以上の各理由は一応なりとも、合理的なものとは到底考えがたい。こんなことで漁民の切実な漁の自由(憲法22条の経済的基本権)が奪われてはならない。
☆各理由に通底するものは、徹頭徹尾定置網漁業完全擁護の立論である。およそいささかなりとも定置網漁業の利益を損なってはならないとする、行政にあるまじき偏頗きわまる立論として弾劾されてしかるべきでもの。利害対立する県民当事者相互間の利益を「調整」するという観念をまったく欠いた恐るべき主張というほかはない。
☆しかも、利害対立の当事者とは、一方は原告ら生身の零細漁民である。20トン以下の小型漁船で生計を立てる者で、法的には経済的基本権の主体である。そして対立するもう一方が、大規模な定置網漁業者である。その主体は、漁協単独の経営体であり、漁協と複数個人の共同経営体であり、株式会社であり、有限会社であり、定置網漁業を営む資本を有する経済力に恵まれた個人である。「浜の有力者」対「一般漁民」のせめぎあいなのである。
☆定置網漁業者の過半は、漁協である。被告の主張は、「漁協が自営する定置営業保護のために、漁民個人の固定式刺し網によるサケ漁は禁止しなければならない」ということに尽きる。
☆漁民の繁栄あっての漁協であって、その反対ではない。飽くまで「漁民優先」が当然の大原則。漁協の健全経営維持のために漁民の操業が規制される筋合いはない。
☆以下は、被告が「近年、県内のサケ資源が深刻な減少傾向にあること」を不許可の理由として挙げていることに対する批判の一節である。

「近年のサケ資源の減少傾向」が、固定式刺し網漁業不許可の理由とはなりえない。これを理由に掲げる被告の主張は、いわゆる「獅子の分け前」(Lion’s Share)の思想にほかならない。
漁協は獅子である。獅子がたっぷり食べて余りがあれば、狐にも分けてやろう。しかし今はその余裕がないから、狐にやる分け前はない。被告岩手県は無邪気に、傲慢な差別を表白しているのである。
行政は平等で、公正でなくてはならない。漁協を獅子とし、漁民を狐として扱ってはならない。原告ら漁民こそが人権の主体であり、漁協は原告ら漁民の便益に奉仕するために作られた組織に過ぎないのだから。」

(2017年6月20日)

 

加計学園が経営する獣医学部ー文科大臣による設置認可のストップを

刑法学でも刑事司法実務でも、保護法益という概念が多用される。ある犯罪類型を作ることで、法が守ろうとしている価値ないし利益のことをいう。殺人罪の保護法益は人の生命。偽証罪の保護法益は、適正な国家の司法作用。では、賄賂罪の保護法益はなんだろうか。

最高裁判例は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼を保護法益とする」と言っている。「公務員の職務の公正」だけでなく、「公務員の職務の公正に対する社会一般の信頼」も守られるべき価値なのだ。

賄賂罪の基本である単純収賄罪の構成要件は、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をすること」(刑法197条第1項前段)である。現実に職務の公正が害されたことを要件としていない。公務員たるもの、職務の公正を害してはならないだけではなく、職務の公正に対する社会一般の信頼を損ねてはならないのだ。

以上は、刑事法レベルでの議論。政治的道義的レベルにおいてはなおさらのことだ。公務員たるもの、職務の公正を害してはならないだけではなく、職務の公正に対する社会一般の信頼を失わぬよう、よくよく注意して職務の執行にあたらねばならない。これが、閣僚や、官邸の最高レベルの公務員ともなれば、最高レベルの注意が要求されることになる。いささかも職務の公正に対する疑惑を持たれてはならない。そのように身を持さねばならない。

加計学園事件に関する安倍晋三の弁明の見苦しさは、このあたりの理解を決定的に欠いていることである。もともと、首相の座にふさわしい人物ではないのだ。

国家戦略特区諮問委員会議長としての行為によって、腹心の友に利益をもたらした。しかも、自らも「岩盤に穴を開ける」という、強引なやり口でのこと。のみならず、そこに至るまでの経過が不透明で、「ご意向」「忖度」の文字が躍る文書が数多く出て来ている。洗いざらい経過を説明せよという真っ当な要求にたいしては、「書類は廃棄」「記憶にない」、不都合な発言者には、身辺調査と人格攻撃で威嚇して黙らせようとする。誰が見ても、政権は真実の露呈を恐れているとしか思えない。

この期に及んで、「具体的に指示したり、働きかけたりしたことは一度もない」「法律にのっとった意思決定だったことに一点の曇りもない」と言っていることが的はずれ。既に首相の職務の公正に対する社会一般の信頼は完全に失われているのだ。

日本テレビ系NNNの世論調査に次の問の項目がある。
問 あなたは、加計学園の獣医学部開設のいきさつについての、安倍総理の説明に納得しますか、納得しませんか?
その回答が次のとおりだ。
(1) 納得する 9.6 %
(2) 納得しない 68.6 %
(3) わからない、答えない 21.7 %

首相の説明に納得できるという国民は、10人中にたった一人。7人ほどは首相を信じられないというのだ。だから、防衛的に「疑惑の実体はない」と言うだけではダメ。行政の経過は透明でなくてはならず、行政には説明責任が伴うという大原則の原点に戻って、すべての経過を積極的に明らかにする覚悟が必要なのだ。

それができなければ疑惑を甘受しなければならない。「政治の私物化」、「公正であるべき行政がゆがめられた」、「官邸は、既得権益者攻撃の名で、新たな既得権益者をつくり出している」「首相と、その取り巻き一味の利益のための政治が横行している」という疑惑を真実として受け入れるという意味の甘受である。

具体的な対象検証の一つとして、2017年6月30日に閣議決定された「4条件」(あるいは、「3条件+1留意事項」)充足の可否がある。同日、「『日本再興戦略』改訂2015」が決定され、国家戦略特区における獣医学部の新設に満たすべき「4条件」が確定された。以下のとおりである。

「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
1. 現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、
2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、
3. 既存の大学・学部では対応困難な場合には、
4. 近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。」

前川前文科事務次官や農水相の担当を呼んで徹底審議をすれば、この4要件充足の有無は明瞭になる。そのことを明瞭するまで、加計学園が経営する岡山理科大獣医学部の設置は、ペンディングとするしかない。

なお、同学部設置手続の進展は、国家戦略特区諮問会議での区画計画認定(2017年1月20日)には至っているものの、文科大臣による獣医学部設置認可には至っていない。

文科大臣宛の認可申請は本年3月31日になされた。8月下旬に認可、来年(18年)4月開校予定と伝えられているが、明らかに事情変更の事態となっている。「文科大臣による獣医学部設置認可ストップ」が、声を合わせて叫ばなければならない、喫緊のスローガンとなろう。
(2017年6月19日)

あがれあがれ、もっとあがれ不支持率ーこの暴挙への怒りを持続させよう

6月18日。193通常国会終了の日である。
この国会で共謀罪法が成立し、アベ友学園・腹心の友学園の疑惑は晴れぬまま、会期は閉幕した。アベ政権は国民をなめきっている。「戦争法案であれだけ支持率を下げたものの、有権者の物忘れのスピードは早かったではないか」「今度も多少は支持率下がるだろうが、なに、アベ一強に代わる選択肢はなかろう」という見くびり方だ。

日本の政治は、批判の言論に反応しての修正能力を失っている。権力者による行政の私物化が進行し、行政の公正・公平に疑惑を持たれるのに、政権担当者に懼れの気持がない。疑惑の隠蔽が可能と自信過剰に陥っている。疑惑の指摘者を脅して黙らせ、記録は徹底して破棄し隠匿する。この国会で垣間見えたこの国の行政は腐りきっている。アベ自身が、「これから丁寧に国民の皆様に説明していく」と神妙な顔つきを見せながら何もせずにすっぽかす光景を何度も見せつけられてきた。

その行政の横暴を国会がチェックできない。与党議員は、政権から独立した立法府の一員であることのプライドを持たない。読売・産経に代表されるメディアの劣化も甚だしい。総じて、政治の劣化であり、民主主義形骸化の事態である。

朝日は、この国会に表れた政府の姿勢を、「厳しい追及を受けた政府は、『認めない』『調べない』『謝らない』答弁を連発した。会期150日間の答弁に、批判や疑問を正面から受け止めない姿が浮かぶ。」と表現した。

私は戦前の政党政治形骸化の過程を直接に知る世代ではない。しかし、なるほどこんな風だったのかと思わせる時代の空気を感じる。戦前の臣民は、天皇制に弾圧された人々ばかりではない。天皇にひれ伏し圧倒的に支持した人々が、侵略にも戦争にも熱狂したのだ。株価上昇の一事で政権を支持している現在の国民が、「満蒙はわが国の生命線」と納得した当時の臣民に重なって見える。

これだけのムチャクチャな横暴をやってのけたアベ政権に対する世論の批判は、それなりに大きい。本日(6月16日)、幾つかの世論調査結果が発表され、軒並み内閣支持率を下げている。

共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は44・9%で、前回5月から10・5ポイント急落した。不支持は43・1%。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、行政がゆがめられたことはないとする政府側の説明に「納得できない」としたのは73・8%で、「納得できる」は18・1%にとどまった。加計学園を巡る記録文書についての政府の調査で真相が「明らかになったと思う」は9・3%、「思わない」は84・9%だった。「共謀罪」の採決で、与党がとった異例の手続きについては、67・7%が「よくなかった」と批判した。(共同)

毎日新聞調査でも、支持率は「前回から10ポイント減」となって、不支持が逆転している。

毎日新聞は17、18両日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は36%で、5月の前回調査から10ポイント減。不支持率は44%で同9ポイント増加した。不支持が支持を上回ったのは2015年10月以来。「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法を参院委員会採決を省略して成立させた与党の国会運営や、学校法人「加計学園」の問題への政府の対応などが影響したとみられる。(毎日)

日本テレビ系の、NNN世論調査では安倍内閣支持率の推移は以下のとおり。この調査でも、不支持が支持を上回っている。
       支持する  支持しない  わからない
今 回 (6月) 39.8%   41.8%     18.4%
前 回 (5月) 46.1%   36.4%     17.6%
前々回 (4月) 50.4%   30.8%     18.8%

こんな問に対する回答もある。
問 あなたは、加計学園の獣医学部開設のいきさつについての、安倍総理の説明に納得しますか、納得しませんか?

(1) 納得する 9.6 %
(2) 納得しない 68.6 %
(3) わからない、答えない 21.7 %

問 「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などの言葉を使って、文科省に積極対応を求めたとされる内閣府が、「そのようなことを伝えた認識はないことが確認された」などとする調査結果を公表しました。あなたは、内閣府の調査結果に納得しますか、納得しませんか?

(1) 納得する 11.3 %
(2) 納得しない 68.1 %
(3) わからない、答えない 20.6 %

問 「共謀罪」の趣旨を含んだテロ等準備罪を新たにつくる、「改正組織犯罪処罰法」が、国会で成立しました。あなたは、この法律に賛成ですか、反対ですか?

(1) 賛成 31.8 %
(2) 反対 39.5 %
(3) わからない、答えない 28.8 %

各世論調査に現れた国民意識の反応は健全なものだ。問題は、その持続性。私は、この怒りを忘れない。そして、「忘れるな」「忘れてはならない」と執拗に訴え続けたい。
(2017年6月18日)

ロンドンの高層公営住宅の火災に思うーこの惨事は格差社会の落とし子だ

6月14日ロンドンの高層公営住宅の大規模火災。これが、格差社会がもたらした悲惨な事故として物議を醸している。

かつての英国は、「揺りかごから墓場まで」の福祉が充実した先進国とのイメージが強かった。しかし、サッチャリズムの禍々しい旋風以来、この国も弱者に冷たい新自由主義の社会になっているようだ。

「16日夕には、ロンドン各地で地元行政や政府に抗議するデモが行われた。火災が起きた公営住宅を所有する地元の区役所には数百人が詰めかけ、責任追及を求めて『メイ首相は退陣しろ』などとシュプレヒコールをあげた。」(朝日)という。

大火になった原因が耐火性の低い安価な外壁材の使用にあった、防火設備の不備の放置もあった。これが低所得者層が多く住む公営住宅の管理の不備と指弾されている。

「発火原因が4階の冷蔵庫の爆発」で、「大火になった原因が耐火性の低い安価な外壁材の使用」との指摘が、よく分かる。安全にはコストがかかる。金をけちれば惨事につながるのだ。

下記の一文をお読み願いたい。

「 冷凍庫に限らず、各種電気製品はみな火を噴く報告例をもっている。電気行火やファンヒーターはもちろん、テレビも、パソコンも、扇風機も、冷蔵庫も火を噴くのだ。コンセントも発火源となり、コードの被覆も燃える。もちろん、製品のすべてが発火するわけではない。しかし、小さい確率でも発火事故は確実に起こり続けている。
冷蔵庫や冷凍庫の発火は、サーモスタットの小さな火花が製品内の可燃物に引火することで起こる。実は冷凍庫の断熱材ウレタンフォームが可燃物なのだ。石油でできており、庫内に石油を敷き詰めているのと変わらないという。その密閉が破綻して酸素と触れあう状態となれば発火の条件が調うことになる。安価ではあるが、危険なのだ。」

これは、ロゴス社の季刊誌『Fraternity フラタニティ』No.3 2016年8月1日号に、「私がかかわった裁判闘争・第3回」「『冷凍庫が火を噴いた』訴訟ー消費者事件の持つ意味」として、私が寄稿した記事の一部である。できれば、「フラタニティ」をご購読いただけたらありがたい。
http://logos-ui.org/fraternity.html

家人の留守の間に冷凍庫が火を噴いた。これが火元となって店舗兼居宅が全焼した。目撃者はない。1991年7月、福島県いわき市でのことである。被害者が、その被害の損害賠償を冷凍庫製造元の三洋電気に請求したというのが問題の事件の概要。この訴訟、正式には「三洋電機冷凍庫発火事故製造物責任訴訟」と呼称していた。製造物責任法(PL法)制定運動が訴訟を支援し、法運用の象徴的な事件として知られた事件。消費者運動対企業の天下分け目の大事件と注目された訴訟だった。

弁護士実務に消費者事件・消費者訴訟というジャンルがあり、弁護士会内に消費者弁護士・消費者族という一群がある。イメージは、「族議員」とさして変わらない。私は、長く消費者問題に取り組んできた消費者弁護士である。

消費者問題とはなにか。一言で言えば、商品流通の末端における消費者と事業者の矛盾である。資本主義社会では、すべての人の生活を支える消費財は、利潤獲得を目標とする商品となっている。人の生活は、企業がつくった商品や、企業が提供するサービスに依存して営まれている。最大限利潤を求める企業と、生身の生活者との利害の葛藤が不可避となる。これも、資本主義の矛盾のあらわれかたの一面。

実際、労働問題と消費者問題、労働事件と消費者事件とは似た面が多々ある。いずれも一方は営利を目的とする企業である。これに対峙する労働者も消費者も個人としてはまことに弱い存在で、保護が不可欠である。そして、労働運動や消費者運動を通じて、個別の利益を超えた権利の拡大が必要なことも共通している。

消費者事件においては、強い立場の企業(事業者)と、弱い立場の消費者の対峙がある。とりわけ、提供される商品やサービスが高度化し、消費者の側に事実上商品選択の能力が失われると、原理的に「賢い消費者像」を期待し得なくなる。「消費者よ、注意せよ」のスローガンは意味を失い、もっぱら「業者注意」を強調しなければならなくなる。

事業者と消費者との大きな力量格差を、どうすれば民事訴訟実に的確に反映させて実質的平等を実現することができるか。これが、消費者事件に取り組む、消費者弁護士の問題意識である。その典型が、PL訴訟にあらわれる。

安全であるはずの食品やサプリメントで中毒事故を起こした。薬品の副作用で半身不随となった。テレビが火を噴いて子どもが火傷した。自動車のブレーキが効かず人身事故を起こした。走行中自転車の車輪がはずれて路上に投げ出された。化粧品で顔が真っ黒になった。赤ちゃんがベビーベッドの隙間に挟まれて大けがをした。草刈り機の刃こぼれが飛んできて失明した。ハシゴが折れて転倒し骨折した。シロアリ駆除剤で人間がまいってしまった……。身近な「製品事故」は、枚挙にいとまがない。深刻な被害も少なくない。しかし、伝統的な損害賠償法制では、被害を受けた消費者は加害企業の過失を立証しなければ損害賠償を受けられない。この過失の立証が消費者に大きな壁となって立ちはだかっていた。

企業の利益に優越して生活の安全を重視する社会の要求が、製品に起因する事故で損害が生じた場合には、企業に無過失でも賠償の責任があってしかるべきだという法原則転換の要求となる。これが不法行為責任一般とは区別された意味での「製造物責任」である。

消費者の声が産業界の反対を押し切る形で、ようやく1995年7月1日の製造物責任法(通称PL法)施行にこぎ着けた。この日以後に出荷された商品については、PL訴訟に過失の立証は不要となった。商品に事故の原因となった「欠陥」さえあれば、メーカーは無過失でも責任を負う。「欠陥」とは「商品が通常有すべき安全性を欠いていること」と条文に定義されている。つまり、消費者がふつうの使い方をしていて事故が起これば、その商品には欠陥があったことになり、製造業者に被害の賠償責任が生じるのだ。

さて、可燃性断熱材の使用が悲劇の原因となったロンドン公営住宅の大規模火災。被害の把握の視点に、PL訴訟との共通点を見ることができる。その理念は、弱者の保護である。

PL事故被害の消費者と、住宅の安全性欠如によって被害を被った居住者と。いずれも、この資本主義社会が構造的に生みだした事故の犠牲者として保護されなければならない。日本国憲法の条文を引けば、憲法25条(生存権の保障)であり、13条(個人の尊厳の確保)であろう。

現代憲法は、国民に国家からの自由を保障しただけでなく、国家に対して国民への福祉政策の実現を命じている。PL法による製品の安全も、住環境の安全も、日本国憲法はその実現を目指すべく命じている。資本主義経済原則が国民にもたらす災厄を防止し救済する福祉政策の実現こそが憲法の生存権規定の目指すところ。

可燃性の断熱材がもたらす火災は、あるときはPL事故として、またあるときは建築被害として、憲法の命じる生存権保障ないしは福祉政策の理念から、救済対象とされ防止対策が施されなければならない。
(2017年6月17日)

「安倍政権を支持しない」が93%!という調査も出てきた

朝は、6時半からウトウトしながらのTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」。金曜日の小沢遼子さんがリタイヤしてさびしくなったが、森本毅郎はハリのある声で健在。しばらく腰痛の治療でのお休みもあったが、今やこの人、齢をとることを忘れたのではないかと思わせる。

今週は、番組の特別企画として、「忖度しない!ご意向まつり」を実施。リスナーの「ご意向」を募集してきた。ミニ世論調査である。森本ファンの投票だから、当然にサンプルは偏っている。世間とはひと味違うところに面白みがある。

今日(6月16日・金)がその最終日で、テーマは「あなたは安倍政権を支持しますか。しませんか」。究極の強行採決で共謀罪法案を強引に押し通したその翌日というタイミング。支持と不支持の二者択一で、「分からない」も、「どちらとも言えない」もない。興味津々の結果は…。

「支持する!」・・・・・7%
「支持しない!」・・・93%
 (応募総数701通)
https://www.tbsradio.jp/156827

この結果は、「やはり」というべきか、それとも「驚くべき」というべきか。

読み上げられた、主な不支持の理由。
「共謀罪の決め方がひどかった。とても支持できない。支持する人がいるのが不思議」「国有地払い下げもすっきりしない、獣医学部新設もすっきりしない。国会や官房長官の説明は国民を馬鹿にしている。自浄作用がなくなった現政権は、まったく支持できない」「首相でありながら平気で野次を飛ばし、自分が野次を飛ばされると怒り出し、野党議員に対して反撃する様は見ていられない。」「『丁寧に説明していく』となんども言っているが、その説明を聞いたことがない。」「異論を唱えるものに冷たく、お友達には手厚い政権に未来を託せない」「秘密保護法、カジノ法案、安保法案、共謀罪を強行採決。しかし、この力を与えたのは国民。次は自民党に投票するのをやめて、暴走を止めなければと思う」

支持の7%は「経済政策の評価」と、「民進党よりはマシ」。
「(アベの)振る舞いは目にあまるが、金融緩和で株は上昇している。この実績は評価すべき」「民進党を見ていると、安倍政権を支持するしかない。蓮舫さんはパフォーマンスばかり。共謀罪の審議も、法案の問題点を追及すべきなのに、法相の個人攻撃ばかりだった」

「100対0」となっては、却って恐い。「93対7」は、確実に今の良質な国民意識の一面を物語っている。みんなもどかしいのだ。こんな粗暴な政権をのさばらせ放置してきたことを。そして、いまだに退治することができずに拱手傍観せざるを得ないことを。

そんな気持で、7時45分に家を出た。今日は東北新幹線に乗り遅れてはならない。やや急いで、丸の内線・本郷三丁目駅の入り口まできて、オジさん5~6人がビラを配っているのに遭遇した。てっきりマンション販売ビラかと思ったら、これが自民党都議会議院選挙候補者の宣伝行動。

思わず、言葉が出た。「えっ? 自民党?」「自民党だけは絶対にダメだ」「自民党よ。昨日は、国会で何をした」「キミたち恥ずかしくないか」「アベ晋三のために政治をねじ曲げて恥ずかしいとは思わないのか」。一番駅寄りに、議員バッジを付けた、候補者と思しき人物が立っていた。配っていたビラの写真の人物。睨みつけて大きな声で、「恥を知れ。自民党!!」

件の人物はなにも言わずに、えへらえへらしているだけ。もちろん、自民党にだって表現の自由はある。しかし、共謀罪法をだまし討ちで成立させた翌日のことだ。これくらいは言っておかなくては。

えこひいき政治も、だまし討ち国会運営も、結局は国民がアベ政権与党に与えた議席の数の力によるものだ。まずは、至るところで「アベ政権ノー」の声を出そう。NHKや読売の世論調査で内閣支持率が、「森本毅郎スタンバイ!」並みに近づけば、確実に政治状況は変わる。

このまま自民党が選挙に勝つようなことでは、「アベの、アベによる、アベのための政治」「アベ政権の、自公与党による、アベの身内とおともだちのための政治」が続くことになる。

まずは東京都議選で、驕る自公勢力に熱いお灸をすえなければならない。
(2017年6月16日)

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