澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

カフェイン過剰摂取死亡事件が示すサプリメント規制強化の必要性ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第62弾

「『エナジードリンク』と呼ばれるカフェインを含む清涼飲料水を大量に飲んだ九州の男性が中毒死した問題で、福岡大(福岡市)は(12月)21日、解剖の結果、カフェインの血中濃度が致死量に達していたことが分かったと発表した。胃の中からカフェインの錠剤も見つかり、解剖した同大の久保真一教授(法医学)は記者会見で『短期間の大量摂取は危険だ』と注意を呼びかけた。」(毎日)

「久保教授によると、男性は深夜勤務のある仕事に従事し、夜勤明けに自宅で吐き、その後亡くなった。死因・身元調査法に基づき解剖したところ、血液1ミリリットル中のカフェイン含有量は致死量に達する182マイクログラムで、胃からは粉々になったカフェインを含む錠剤も検出された。男性が服用したとみられる。
 男性に既往症はなかったが、亡くなる1年ほど前から眠気覚ましに、カフェインを含む『エナジードリンク』と呼ばれる飲料を飲むようになったと家族は教授に説明。3、4度吐いたことがあり、亡くなる1週間ほど前からは眠気で仕事に支障が出ていたとも話した。
 久保教授は、こうした状況から、摂取した時期や量は分からないものの、男性がカフェインを含む飲料や錠剤を比較的短時間にたくさんとったことにより、急性カフェイン中毒で死亡したと結論づけた。10月に神戸市であった学会で発表したという
。」(朝日)

コンビニに置いてある清涼飲料と気軽に入手可能な錠剤サプリメントでのカフェン過剰摂取。それが現実の死亡事故となった。サプリメント先進国アメリカでこそ相当数の報告があるものの、我が国では初めての報告という。しかし、解剖なければ死因は分からなかったはず。死因分からぬままの同種症例は他にもあったのではないか。また、死亡にまでは至らないカフェイン過剰摂取健康障害事例がなかったはずはない。この事件が示唆する、健康食品・サプリメントによる健康被害のひろがりは、深刻な事態といわねばならない。

カフェインもビタミンもミネラルも、自然食品に含まれている。普通の食生活において自然食品を摂取している限り健康に害はない。ところが、企業の宣伝に煽られて、過剰摂取におちいると健康被害が生じることになる。過剰な広告による過剰な商品摂取が危険なことはつとに警告されてきたところ。だが、健康食品もサプリメントも、取締法規と行政規制は「自己判断・自己責任」の問題として放置したままである。

過剰摂取が特に危険とされている微量栄養素として、ビタミンA・ビタミンD・鉄・セレン・ゲルマニウム・クロム・カルシウムなどが警告の対象となっている。また、病人特に腎不全患者は高用量のビタミンC摂取を回避すべきとされてもいる。(内閣府食品安全委員会・報告書)

実は、これらの健康食品・サプリメント類の過剰摂取健康被害は表面化しにくい。通常因果関係の立証はきわめて困難である。しかし、解剖例から明確にされた、カフェイン過剰摂取死症例の存在は、他のビタミン・ミネラル類についても過剰摂取による隠れた健康被害が広範にあることを示唆するものと考えなければならない。

カフェイン死亡事件は、健康食品やサプリメントを行政規制の鎖から野放しにしておくことの危険を象徴するものと言えよう。とりわけ、錠剤サプリメントによる大量摂取が消費者の健康被害に危険を及ぼすことは明らかではないか。

DHC吉田嘉明は、「週刊新潮」2014年4月3日号に手記を寄せてこう言っている。
「私の経営する会社は、主に化粧品とサプリメントを取り扱っています。その主務官庁は厚労省です。厚労省の規制チェックは他の省庁と比べても特別煩わしく、何やかやと縛りをかけてきます」「私から見れば、厚労省に限らず、官僚たちが手を出せば出すほど、日本の産業はおかしくなっているように思います。つまり、霞ヶ関、官僚機構の打破こそが今の日本に求められている改革…」

要するに、「自社を縛っている行政規制が煩わしい。その規制チェックをなくすることが、今の日本に求められている。」という、企業のホンネをあからさまに述べているものと解するほかはない。サプリメント販売の行政規制強化などはとんでもない、ということになろう。

ところが、である。DHCのネット広告の中に次の一文を見つけた。
「今や日本人の6割以上が日常的にサプリメントを使用する時代となりました。しかし、日本の健康食品業界はサプリメントの先進国アメリカに比べると規制が緩く、それを逆手に取った価格や配合成分、効果に疑問を持たざるをえないサプリメントが存在します。残念なことに日本ではそのような“不健康なサプリ”があふれかえっており、“健康なサプリ”が少ないのが現状です。生活の質を向上させるためにサプリメントを購入する際には、企業の宣伝や広告を鵜呑みにするのではなく、自分自身で“健康なサプリメント”と“不健康なサプリメント”をしっかりと見極めましょう。」

この広告では、日本の健康食品業界に対する行政規制が緩いことを嘆いて見せているのである。一方では「規制を特別煩わしい」と言い、一方では「規制が緩い」と言うこのご都合主義は、いったいどういうことなのだろう。

消費者に読ませる広告において規制が緩いことを嘆く姿勢を見せることが、自社製品の安全性アピールに結びつくとの思惑からのことであろうが、企業の広告がホンネと乖離していることの見本と言うべきであろう。どの企業も、ホンネは規制の緩和ないし撤廃を望んでいる。しかし、消費者には規制を嫌っていると思われたくはないのだ。

そして、「価格や配合成分、効果に疑問を持たざるをえない不健康なサプリメント」は、業界のすべての企業の製品に共通している。厚労省も消費者庁も、そして内閣府食品安全委員会もその実態を明らかにしつつ、強く警告を発しているのだ。

企業としては、健康食品と医薬品の境界線上にある商品に関して、一面医薬品としての取り扱いによる規制は煩わしいと思いながらも、他面医薬品としての消費者の信頼は欲しいところ。これが、アンビバレントの本質。行政は1971年の「食薬区分」(「46通達」と言われる)で、一応その切り分けをしているが、なお明確ではない。

公表されたカフェイン死亡事故を無駄にしてはならない。「食薬区分」線上にある製品の行政規制を、今こそ「健康食品・サプリメントへの規制が緩い」と嘆いて、厳格化しなければならない。企業に「規制を特別煩わしい」などと言わせていてはならない。国民の健康のため、いや命をまもるために、である。

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   DHCスラップ訴訟12月24日控訴審口頭弁論期日スケジュール
DHC・吉田嘉明が私を訴え、6000万円の慰謝料支払いを求めている「DHCスラップ訴訟」。本年9月2日一審判決の言い渡しがあって、被告の私が勝訴し原告のDHC吉田は全面敗訴となりました。しかし、DHC吉田は一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之裁判長)に係属しています。

その第1回口頭弁論期日は、
 クリスマスイブの12月24日(木)午後2時から。
 法廷は、東京高裁庁舎8階の822号法廷。
ぜひ傍聴にお越しください。被控訴人(私)側の弁護団は、現在136名。弁護団長か被控訴人本人の私が、意見陳述(控訴答弁書の要旨の陳述)を行います。

また、恒例になっている閉廷後の報告集会は、
 午後3時から
 東京弁護士会502号会議室(弁護士会館5階)A・Bで。
せっかくのクリスマスイブ。ゆったりと、楽しく報告集会をもちましょう。
 弁護団報告は、表現の自由と名誉毀損の問題に関して、最新の訴訟実務の内容を報告するものとなることでしょう。
 表現の自由を大切に思う方ならどなたでもご参加ください。歓迎いたします。
(2015年12月22日・連続第996回)

判決が認定した「DHCに対する行政指導の数々」ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第59弾

DHC・吉田嘉明が私のブログ記事を名誉毀損として、6000万円の慰謝料支払いや謝罪文などを求めているのが「DHCスラップ訴訟」。本年9月2日に東京地裁民事第24部(阪本勝裁判長)で一審判決の言い渡しがあって、被告の私が全面勝訴した。全面敗訴となったDHC・吉田は、一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之裁判長)に係属している。

控訴人側の控訴理由も、被控訴人側の控訴答弁書も裁判所に提出済みで、おそらくは12月24日の第1回口頭弁論で即日結審となり、控訴審判決の言い渡し日が指定されることになるだろう。

控訴人らに、原審での主張の蒸し返し以上の新しい主張はない。目新しいことと言えば、同種訴訟での判決書1通と和解調書1通が書証として提出されたこと。本日のブログではその判決書(被告は、かなりの販売部数を持つ業界紙の発行会社)を紹介したい。

控訴人(DHC・吉田)の証拠説明書によると、この判決を証拠として提出した立証趣旨は、「控訴人吉田による8億円の貸付に関連する記事について,控訴人らに対する名誉毀損を肯定して損害賠償請求や削除請求が認容された事実等」となっている。この立証趣旨の記載だけをみると、別件とは言え「関連事件でそんな判決もあったのか」と一瞬幻惑されざるを得ない。しかし、内容を読んでみると何のことはない。「控訴人吉田による8億円の貸付に関連する記事について」は、DHC・吉田側の完敗判決である。むしろ、よくもまあこんな自分に不利な事実認定の判決をどうして提出してきたのだろうかと、首を捻らざるを得ない。

しかし、せっかくDHC・吉田自らが、自主的に私との訴訟で提出した判決書である。その内容を多くの人に知っていただくことが公共の利益に資することになるものと考え、被告に迷惑のかからない配慮をしつつ、なるべく正確にご紹介したい。

以下は裁判所が証拠によって認定した事実である。けっして、被告の主張ではない。私の感想を交えずに、判決書の記載を20頁から23頁まで、そのまま引用する。なお、原告会社とは、DHCのことである。

エ 原告会社に対する行政指導等
(ア)群馬県は,原告会社から製造委託を受けたコスメイトリックスラボラトリーズ株式会社が製造した清涼飲料「アロエベラ」を購入した消費者から腐敗臭がする等の苦情が寄せられたため,平成13年4月に同社工場を立ち入り調査したところ,食品衛生法の定める殺菌処理を実施していない等の製造管理上の問題が判明したことから,原告会社に対し,自主回収と製造自粛を指導した(甲14,乙2)。なお,原告会社は,当該商品を製造していなくとも,企画・開発に携わった「表示製造業者」として責任を負うべき地位にあった。

(イ)原告会社は,通信販売をしていた「アスタキサンチン」を利用した健康食品に未承認添加物が混入していた疑いが強まったことから,平成14年4月1日までに,販売した製品を自主回収して購入者に返金することを決定し,管轄する保健所に事実関係を報告した(甲15,乙3)。なお,同製品の原料調達には複数のサプライヤーが関与していた。

(ウ)厚生労働省は,平成15年5月30日,原告会社が販売していた健康食品「メリロート」の摂取が原因と見られる健康被害例を発表したが,原告会社がその後の消費者からの問い合わせに「調査中」などとして,自社製品であることを認めない説明をしている疑いがあったため,同年6月10日,原告会社に対し,メリロートが自社の製品であることを消費者に伝えるよう指導した(乙4)。それにもかかわらず,原告会社の対応が不十分であったことから,厚生労働省は,同年10月にも原告会社に対し,メリロートが原因と見られる健康被害事例に対する消費者からの問い合わせに自社製品であることを伝えるよう指導した(乙5)。
厚生労働省は,原告会社が上記指導に対して十分な改善を行わなかったことから,同月31日,ホームページに掲載している「いわゆる健康食品による健康被害事例」に「販売者」の欄を追加し,それまでに寄せられた健康被害事例のうちブルーベリーエキスの製造者及びメリロートの製品販売者が原告会社であることを公表し,消費者等に告知した(乙7)。
独立行政法人国民生活センターは,平成16年6月17日頃,メリロートを含む健康食品について有効成分や表示などを調査した結果として,原告会社の製品を含め,医薬品の基準を超えるメリロートを含有しているものがあったこと,表示に景品表示法や薬事法に違反する疑いがあるものが見られたことを公表し,消費者に対して注意喚起するとともに,販売会社に改善を要請した(乙1O)。
これに対し,原告会社は,同月,メリロートに含まれる有効成分「クマリン」の含有量は,ドイツ保健省の中にある医薬品と医療器具の安全性と効果を評価する専門機関が規定する基準の範囲内であり,薬事法,食品衛生法その他関連法規の観点でも問題はなく,上記機関の定める基準に沿った安全性の高いサプリメントであるから,販売を継続する旨表明した(甲17)。なお,当時,日本の健康食品において,クマリンの配合量に関する規制はなかった(甲17,乙10)。
もっとも,原告は,メリロートの摂取目安量の変更やパッケージ変更を行い(甲16),その後は厚生労働省から指導を受けていない。

(エ)厚生労働省は,平成15年10月,原告会社が発行する会報誌に掲載している健康食品の広告において,厚生労働省が許可する特定保健用食品だけに許される「コレステロールが気になる方に」「血圧が気になる方に」「血糖値が気になる方に」「体脂肪が気になる方に」などの表示を,許可を得ないまま行っていたことにつき原告会社を指導した(乙5,6)。

(オ)厚生労働省は,平成16年3月25日,コエンザイムQ10が承認なしで化粧品に使用することができない「医療品成分」に該当すると判断し,これを受けた各都道府県は,厚生労働省が化粧品にコエンザイムQ10を使用することを許可した「承認前例」が確認できない場合,同成分配合の化粧品の製造・輸入を自粛するよう化粧品メーカーに要請した。原告会社は,同要請後もコエンザイムQ10を配合する化粧品の製造を継続していたため,神奈川県は,原告会社の横浜工場に同成分配合の化粧品の製造等の自粛を指導したところ,原告会社は,同年4月23日以降は製造していないと回答した。原告会社は,同年5月,コエンザイムQ10を配合した化粧品の販売を休止したとホームベージ上で告知した(乙8,9)。
その後,原告会社は,安全性データを厚生労働省に提出して上記化粧品の販売を再開したが,その後は東京都や厚生労働省から指導を受けていない(甲18)。

(カ)厚生労働省は,承認なく化粧品へ配合することを禁じられている「医薬品成分」に該当すると判断したコエンザイムQ10を配合した化粧品を,平成16年4月に原告会社がテレビ等で公開したことを問題視し,同年5月に東京都に調査を依頼したところ,原告会社が発行する会報誌に薬事法に抵触する記載(効能効果等の広告)が残っているとして,これを改めるよう原告会社を指導した(乙9)。東京都は,その後も原告会社が薬事法違反の広告を行っているとして,同年9月28日までに,原告会社に対し,薬事法違反(無承認無許可医薬品の広告等)の指導を行った(乙12)。

(キ)厚生労働省は,平成18年7月28日,原告会社が通信販売する清涼飲料水について,WHO等が設ける基準値の7倍を超えるベンゼンが検出されたとして,原告会社に対し,製品の自主回収を要請した(乙13)。なお,日本では食品中のベンゼンに関する基準値は定められておらず,水道法上の基準値を超えた製品を一定量飲んだとしても健康に大きな影響はないが,厚生労働省は念のため自主回収を要請したものであり,原告会社は同要請に応じて商品の回収及び製造の休止を行った(甲19,20,21,乙13)。

(ク)厚生労働省は,平成19年4月13日付けで各都道府県に発出した事務連絡の中で,原告会社を含む健康食品販売会社10社に対し,効能効果を暗示させる健康食品名の改善を要請した(乙14)。なお,同要請に対しては,規制の基準が見えにくいとの批判もあった(甲22,23)。

(ケ)公正取引委員会は,平成21年2月3日,「シャンピニオンエキス」と称する成分を使用して口臭,体臭及び便臭を消す効果を標ぼうする商品の製造販売業者(原告会社を含む。)に対し調査を行ったところ,これらの業者が販売する上記商品に係る表示が景品表示法4条2項の規定により,同条1項1号の「優良誤認」に該当するとみなされ,同号の規定に違反する事実が認められたとして排除命令を行った(乙15)。

(コ)経済産業省中部経済産業局は,平成24年8月,原告会社が同局の委託による消費者が利用する機能性食品会社に関する調査結果を承諾なく新聞広告に掲載したことにつき,原告会社に抗議を申し入れた(乙16)。

私は、2014年4月2日のブログで、「『DHC8億円事件』大旦那と幇間 蜜月と破綻」と題して、機能性表示食品制度導入に反対の意見を書いた。その記事のなかで、次のように述べたことが、DHCと吉田嘉明の名誉を毀損したとされた。

「サプリの業界としては、サプリの効能表示の自由化で売上げを伸ばしたい。もっともっと儲けたい。規制緩和の本場アメリカでは、企業の判断次第で効能を唱って宣伝ができるようになった。当局(FDA)の審査は不要、届出だけでよい。その結果が3兆円の市場の形成。吉田は、日本でもこれを実現したくてしょうがないのだ。それこそが、「官僚と闘う」の本音であり実態なのだ。渡辺のような、金に汚い政治家なら、使い勝手良く使いっ走りをしてくれそう。そこで、闇に隠れた背後で、みんなの党を引き回していたというわけだ。
大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される。スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。「抵抗勢力」を排して、財界と政治家が、旦那と幇間の二人三脚で持ちつ持たれつの醜い連携。これが、おそらくは氷山の一角なのだ。」

前掲判決の事実認定をみれば、「スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。」という私の見解は図星ではないか。

もっとも、前掲の判決は、DHC・吉田の全面敗訴ではない。1%だけ勝っている。1億円の請求に対して100万円だけを認容している。訴訟費用は、100分の99が原告らの負担とされている。一部ウエブサイトの記事削除を命じられたが、謝罪文の請求は全面棄却である。

原告らが勝訴した1%分は、「吉田・渡辺間の政治資金8億円授受事件」に関わるところではない。被告が業界紙の掲載した、「(DHCは)人のものを真似るのが得意。だから訴訟も多い」との記述にまつわるところなのだ。およそ、私の事件となんの関わりもない。これも、公共の利益に資するものとして、判決書き中の裁判所の事実認定を引用しておく。

「オ 原告らを当事者とする訴訟等
(ァ)原告会社は,平成17年1月,解雇した従業員のうち,解雇無効を争ってネットワークユニオンに加入した4名が開設したホームページ上の記載等が名誉毀損に該当するとして提訴したが,原告会社が上記元従業員らに対し,1名当たり200万円から700万円の和解金を支払う内容の和解が成立した(乙19)。
(イ)原告吉田は,東京地方裁判所に対し,東京国税局の違法な税務調査により精神的苦痛を受けたとして,国を被告として約1億4000万円の支払を求める訴訟を提起した。同訴訟においては,平成17年7月14日,原告吉田の請求を棄却するとの判決が言い渡され,同判決は確定した。なお,同判決では,税務調査の際,原告吉田が「高額納税者であることを知っているのか。」「挨拶にも会わない。その辺の会社とは違う。」などと述べて,税務調査に協力できない旨の回答をしたとの事実が認定されている(乙18,22)
(ウ)株式会社ファンケルは,平成22年7月13日,東京地方裁判所に対し,原告会社を被告とし,原告会社が販売する製品がファンケルの特許権を侵害していると主張して,同製品の製造販売の差止め及び損害賠償を求める訴訟を提起した(乙20)。東京地方裁判所は,平成24年5月,原告会社に対して1億6500万円の支払を命じる判決を言い渡したが,原告会社はこれを不服として控訴したところ,知的財産高等裁判所において,原告会社は特許権侵害の事実を認めず,金銭の支払もしない内容で和解が成立した(甲25)。

以上の事実認定にもとづいて同判決は、「ファンケルから提起された特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟においては,控訴審において原告会社が特許権侵害を認めず,金銭も支払わないとの内容の和解が成立しており,同和解の内容からは原告会社がファンケルの商品を模倣していないと推認される。そして,他に原告らが人のものを真似したとの理由で訴訟を提起されたと認めるに足りる証拠はない」として、「原告らが人のものを真似することが原因で多数の訴訟が提起されているとの摘示事実が真実であるとは認められない。」と結論した。

DHC吉田はこの訴訟で、4本の記事における13個所の記述が、名誉毀損や侮辱に当たると主張した。その内の1個所だけがヒットして、1%の勝訴を得たことになった。しかし、「8億円政治資金授受事件」に直接関わる記述では、全部原告敗訴の完敗なのだ。もちろん、私の事件への影響などはあり得ない。

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   DHCスラップ訴訟12月24日控訴審口頭弁論期日スケジュール
DHC・吉田嘉明が私を訴え、6000万円の慰謝料支払いを求めている「DHCスラップ訴訟」。本年9月2日一審判決の言い渡しがあって、被告の私が勝訴し原告のDHC吉田は全面敗訴となりました。しかし、DHC吉田は一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之総括裁判官)に係属しています。

その第1回口頭弁論期日は、
 クリスマスイブの12月24日(木)午後2時から。
 法廷は、東京高裁庁舎8階の822号法廷。
ぜひ傍聴にお越しください。被控訴人(私)側の弁護団は、現在136名。弁護団長か被控訴人本人の私が、意見陳述(控訴答弁書の要旨の陳述)を行います。

また、恒例になっている閉廷後の報告集会は、
 午後3時から
 東京弁護士会502号会議室(弁護士会館5階)A・Bで。
せっかくのクリスマスイブ。ゆったりと、楽しく報告集会をもちましょう。
 表現の自由を大切に思う方ならどなたでもご参加ください。歓迎いたします。
(2015年12月19日・連続第993回)

あなたが健康でありたいと願うなら、「健康食品」はおやめなさいー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第57弾

この私が被告とされ、6000万円の慰謝料請求を受けている「DHCスラップ訴訟」。その控訴審第1回弁論期日12月24日が近づいてきた。

何ゆえ私は被告にされ、6000万円の請求を受けているか。発端は、下記の3ブログである。これが違法な名誉毀損の言論だとされたのだ。何度でも掲載して、ぜひとも、多くの人に繰りかえしお読みいただきたい。はたして、私の言論が違法とされ、この社会では許されないものであると言えるのか。それとも民主主義政治過程に必要な強者を批判する言論として庇護を受けるべきものか、トクとお読みの上、ご判断いただきたい。

  http://article9.jp/wordpress/?p=2371 (2014年3月31日)
  「DHC・渡辺喜美」事件の本質的批判 

  http://article9.jp/wordpress/?p=2386 (2014年4月2日)
  「DHC8億円事件」大旦那と幇間 蜜月と破綻

  http://article9.jp/wordpress/?p=2426 (2014年4月8日)
  政治資金の動きはガラス張りでなければならない

以上の私のブログの記事は、政治がカネで動かされてはならないという問題提起であるだけでなく、消費者問題の視点で貫ぬかれてもいる。

例えば、次のようにである。
「(『徳洲会・猪瀬』事件と、『DHC・渡辺』問題とを比較し)徳洲会は歴とした病院経営体。社会への貢献は否定し得ない。DHCといえば、要するに利潤追求目的だけの存在と考えて大きくは間違いなかろう。批判に遠慮はいらない。」
「DHCの吉田は、その手記で『私の経営する会社にとって、厚生労働行政における規制が桎梏だから、この規制を取っ払ってくれる渡辺に期待して金を渡した』旨を無邪気に書いている。刑事事件として立件できるかどうかはともかく、金で政治を買おうというこの行動、とりわけ大金持ちがさらなる利潤を追求するために、行政の規制緩和を求めて政治家に金を出す、こんな行為は徹底して批判されなくてはならない。」(3月31日ブログ)

「たまたま、今日の朝日に『サプリメント大国アメリカの現状』『3兆円市場 効能に審査なし』の調査記事が掲載されている。『DHC・渡辺』事件に符節を合わせたグッドタイミング。なるほど、DHC吉田が8億出しても惜しくないのは、サプリメント販売についての『規制緩和という政治』を買いとりたいからなのだと合点が行く。」
「サプリの業界としては、サプリの効能表示の自由化で売上げを伸ばしたい。もっともっと儲けたい。規制緩和の本場アメリカでは、企業の判断次第で効能を唱って宣伝ができるようになった。当局(FDA)の審査は不要、届出だけでよい。その結果が3兆円の市場の形成。吉田は、日本でもこれを実現したくてしょうがないのだ。それこそが、『官僚と闘う』の本音であり実態なのだ。渡辺のような、金に汚い政治家なら、使い勝手良く使いっ走りをしてくれそう。そこで、闇に隠れた背後で、みんなの党を引き回していたというわけだ。」
「大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される。スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。『抵抗勢力』を排して、財界と政治家が、旦那と幇間の二人三脚で持ちつ持たれつの醜い連携。これが、おそらくは氷山の一角なのだ。」(4月2日)

「DHCの吉田嘉明は…、化粧品やサプリメントを販売してもっと儲けるためには厚生行政や消費者保護の規制が邪魔だ。小売業者を保護する規制も邪魔だ。労働者をもっと安価に使えるように、労働行政の規制もなくしたい。その本音を、『官僚と闘う』『官僚機構の打破』にカムフラージュして、みんなの党に託したのだ。」
「自らの私益のために金で政治を買おうとした主犯が吉田。その使いっ走りをした意地汚い政治家が渡辺。渡辺だけを批判するのは、この事件の本質を見ないものではないか。」(4月8日)

私は、40年余の弁護士としての職業生活を通じて、一貫して消費者問題に取り組んできた。消費者問題を資本主義経済が持つ固有の矛盾の一つとして把握し、資本の利潤追求の犠牲となる市民生活の不利益を防止し、救済したいと願ってのことである。

もっとも、「DHCといえば、要するに利潤追求目的だけの存在と考えて大きくは間違いなかろう。批判に遠慮はいらない。」「スポンサー(DHC)の側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。」などという表現については、ごく少数ながらも「少し言い過ぎではないか」「ややきつい断定ではないのか」という向きもあるようだ。しかし、これは消費者問題に関心を持つ者の間では、誇張でも言い過ぎでもない。まさしく、常識的な見解なのだ。

「DHCといえば、要するに利潤追求目的だけの存在」「広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい」は、もちろん、必ずしもDHCだけについてだけのことではない。数え切れないほどの「健康食品販売会社」「サプリメント販売業者」あるいはその業界に通有のことである。

健康食品業界の実態が「利潤追求目的だけの存在」「広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けている」ことを裏付ける政府報告を紹介しておきたい。先日、このブログで「フードファディズム」とサプリメント広告規制を論じた。フードファディズムとは、「特定の食品が特に健康によいと言うことはありえない」という穏やかな主張。本日ご紹介する報告は、「健康食品に安全性は保障されていない」「むしろ、危険なエビデンスがいっぱい」というものなのだ。さすがに、政府機関の報告だから、「健康食品おやめなさい」と結論をはっきりとは言わない。「健康食品摂取の際には、正確な情報に基づいてご自分の判断で」というにとどまっている。しかし、どう考えても、「あなたが健康を願うのなら、健康食品の摂取はおやめなさい」としか読めない。

当ブログは、本日を第1回として今後何度も執拗に、この政府報告と関連情報を紹介し続ける。DHCにダメージを与える目的というのではなく、消費者の利益のために健康食品業界全体と闘いたいということなのだ。

食品安全基本法にもとづく内閣府の審議会として、2003年7月内閣府に「食品安全委員会」が設置されている。「国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行う機関」とされている。

食品安全委員会は7名の委員から構成され、その下に12の専門調査会が設置され、職員60人のほかに、食品のリスク評価を行う専門家100人を擁しているという。

その食品安全委員会の「いわゆる『健康食品』の検討に関するワーキンググループ」が、このほど「『健康食品』の検討に関する報告書」をまとめて公表した。一昨日(12月8日)のことである。

このことの報道に気が付いた人は少ないのではないか。ネットでは毎日新聞が、12月9日朝刊の記事として下記を掲出している。
見出し「健康食品 リスクを公開 食品安全委員会」
本文「健康食品の摂取リスクなどを検討してきた食品安全委員会(佐藤洋委員長)は8日、「いわゆる『健康食品』に関する報告書」を公表した。これに合わせ「健康食品で逆に健康を害することもある。科学的な考え方を持って、食品を取るかどうか判断してほしい」とする異例の委員長談話を発表し、注意喚起した。同委員会の専門家グループでは、食品のリスク要因を主に▽製品▽摂取者▽情報−−の3点から分析した。その上で「健康食品は医薬品並みの品質管理がなされていない」「ビタミンやミネラルのサプリメントによる過剰摂取のリスクに注意」など、健康食品を選ぶ時に注意すべき項目を19のメッセージにまとめ、ホームページで公開している。」

この報道内容に誤りはない。しかし、いかにも通り一遍の報道。この報告書の重大性や衝撃性は伝わってこない。健康食品やサプリメントを摂取している人への警告という視点がない。広告料収入に頼り切っているメディアの弱みが露呈しているのではないかと勘ぐられてもやむを得まい。もっと大々的に、全メディアが報道すべきなのだ。

この報告書を作成したワーキンググループの13人は、すべて医師ないし自然科学の研究者。報告書は42頁の大部なもの。117の引用論文が掲載されている。内容は、きわめて意欲的なものだ。健康食品やサプリメントが、アベノミクスの「第3の矢」の目玉などという思惑に対する遠慮は微塵も感じられない。この内容が国民に正確に伝われば、健康食品会社もサプリメント業界も生き残れるとは到底考えられない。業界は顔面蒼白になってしかるべきなのだ。それだけの衝撃性を持っている。

この報告書の要約版として「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」が同時に公表され、具体的な「19のメッセージ」が掲載されている。参考とするには、これが手頃だ。さらに食品安全委員会は分かり易い21問の「Q&A」まで作っている。その意気込みがすばらしいと思う。

ぜひとも、下記のURLをクリックして、「報告書」「メッセージ」「Q&A」をご覧いただきたい。これを読めば、健康食品やサプリメントを買おうという意欲はなくなるはずだ。「これまで払った金を返せ」とも言いたくなるだろう。
  https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html

「DHCといえば、要するに利潤追求目的だけの存在と考えて大きくは間違いなかろう。批判に遠慮はいらない。」「スポンサー(DHC)の側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。」などという表現が、けっして「少しも言い過ぎではなく」、「きつい断定というのも当たらない」ことを理解していただけよう。私の見解は、「消費者問題に関心を持つ者」だけの意見ではなく、政府の審議会報告に照らしても、「誇張でも言い過ぎでもない」、まさしく常識的な見解なのである。この報告書の具体的内容については、後日詳細に報告したい。

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   12月24日(木)控訴審口頭弁論期日スケジュール
DHC・吉田が私を訴えた「DHCスラップ訴訟」は、本年9月2日一審判決の言い渡しがあって、被告の私が勝訴し原告のDHC吉田は完敗となった。しかし、DHC吉田は一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之総括裁判官)に係属している。

その第1回口頭弁論期日は、クリスマスイブの12月24日(木)午後2時から。法廷は、東京高裁庁舎822号法廷。ぜひ傍聴にお越し願いたい。被控訴人(私)側の弁護団は、現在136名。弁護団長か被控訴人本人の私が、意見陳述(控訴答弁書の要旨の陳述)を行う。

また、恒例になっている閉廷後の報告集会は、午後3時から東京弁護士会502号会議室(弁護士会館5階)A・Bで。せっかくのクリスマスイブ。ゆったりと、楽しく報告集会をもちたい。表現の自由を大切に思う方ならどなたでもご参加を歓迎する。
(2015年12月10日・連続第984回)

怯まず臆せず、政権と自民党を批判したBPO意見書

このごろ巷に流行るもの、「不祥事に、第三者委員会」である。
第三者とは「当事者以外の者、その事柄に直接関係していない人を言う」と辞書は解説しているが、どうも身内のお手盛り委員会と疑われるものが多い。どうやら、「第三者委員会まがい」、ないしは「第三者委員会もどき」である。

不祥事の当事者は、記者会見で神妙に頭を下げ、「第三者委員会を設置して厳重に調査してもらいます」と呪文をとなえる。この呪文が案外に効くのだ。社会からの風圧を遮断し、その調査結果を待ってみようという気分にさせるのだ。そして、学識経験者や弁護士らから成る委員会(もどき)が、世間の記憶が薄れたころに、気の抜けたサイダーのごとき調査結果を発表をする。これが通例、これが通り相場の定番となりつつある。

ところが、昨日(11月5日)、NHKと日本民間放送連盟による第三者機関であるBPO(「放送倫理・番組向上機構」)がNHKの報道番組「クローズアップ現代」のやらせ問題で珍しく立派な意見書を発表した。これこそ、第三者委員会のお手本ではないか。

政権にも、与党にも、有力政治にも、そしてNHK当局に対しても、怯むことなく臆することなく、指摘すべきを指摘し、批判すべきを批判しているこの姿勢は十分な評価に値する。多くのメディアの論調がこの度のBPO意見書を肯定的に紹介していることは、この社会の健全さを示すものとして爽やかさを感じさせる。

第三者と銘打つ機関の調査結果が辛口であって当たり前なのだが、新聞には「異例の意見書」という大見出しが踊った。「やらせはなかった」というNHKの自己調査を「深刻な問題を演出や編集の不適切さに矮小化している」と批判し、「重大な放送倫理違反があった」「事実と異なることを視聴者に伝えた」と指摘した。(東京新聞)

このまっとうな結論に、NHK当局は「真摯に受けとめる。事実に基づき正確に報道するという原点を再確認し、再発防止策を着実に実行していく」と答えている。(東京新聞)

BPO意見書の異例はこれだけではない。つけ加えて、総務相や自民党の放送への介入を厳しく戒めたのである。これが真骨頂。久方ぶりにまっとうな意見を聞くことができ、清々しい気分で朝を迎えることができた。

各紙が「NHKに自民圧力」「BPO 政府の介入を批判」「番組介入許されない」と報じた。「自民党国会議員らの6月の例会で『マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい』との発言があったことなどを『圧力』の例として列挙。高市早苗総務相が4月末、NHKを厳重注意したことも問題視した」「NHKが自主的に問題を是正しようとしているのに、政府が行政指導で介入するのは、放送法が保障する『自立』の侵害行為だ」「自民党情報通信戦略調査会がNHK幹部を呼び、番組について説明させたのは、放送の自由と自律に対する政権党による圧力そのもので厳しく非難されるべきだ」と政権の介入を厳しく批判した。また、放送局側にも「干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も浸食され、やがては失われる」としかるべき対応の努力を促した。(毎日新聞)

この日は、タイミングよく「アベチャンネルはゴメンだ!」「怒りのNHK包囲行動」予定の日。包囲行動のボルテージは自ずから高揚した。NHK西門における、従軍慰安婦問題を追及してきた池田恵理子さん、沖縄辺野古から果敢に報道を続けている景山あさ子さんなど各界からのNHKの偏向報道に対する不満や叱咤激励のリレートークも自ずと力のこもったものとなった。出入りするNHK職員もさぞ肩身が狭かろう。

その後、宮下公園から渋谷ハチ公広場前をコースとしたデモ行進が行われた。コールも曇り空に負けまいと大きく響いた。「アベ政権は報道への介入をやめろ」「NHKをアベちゃんねるにするな」「NHKは政権の介入に屈するな」というコールはBPO意見書のとおりである。「籾井会長はやめろ」「NHKは国民の声を伝えろ」は当然の要求である。

「マイナンバーで受信料を徴収するな」は沿道の若い人々の大きな共感を呼んだ。携帯でシャメを撮る人が多いのも渋谷をデモする醍醐味。ちょっと長丁場の包囲行動は参加者や世話人の方には負担かとも思われたが、解散場所の宮下公園へ着いても快い興奮が充満してさりがたい気分が満ちていた。このような人々の声が、BPO意見に反映しているのだ。
(2015年11月7日・連続第951回)

「機能性表示食品制度に異議あり」ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第42弾

なんと私自身が被告にされ、6000万円の賠償を請求されているDHCスラップ訴訟の次回口頭弁論期日は明日4月22日(水)となった。13時15分から東京地裁6階の631号法廷。誰でも、事前の手続不要で傍聴できる。また、閉廷後の報告集会は、東京弁護士会507号会議室(弁護士会館5階)でおこなわれる。集会では、関連テーマでのミニ講演も予定されている。どなたでも歓迎なので、ぜひご参加をお願いしたい。私は、多くの人にこの訴訟をよく見ていただきたいと思っている。そして原告DHC吉田側が、いかに不当で非常識な提訴をして、表現の自由を踏みにじっているかについてご理解を得たいのだ。

DHC会長の吉田嘉明は、私の言論を耳に痛いとして、私の口を封じようとした。無茶苦茶な高額損害賠償請求訴訟の提起という手段によってである。彼が封じようとした私の言論は、まずは、みんなの党渡辺喜美に対する8億円拠出についての政治とカネにまつわる批判だが、それだけでない。なんのために彼が政治家に巨額の政治資金を提供してたのか、という動機に関する私の批判がある。私は当ブログにおいて、吉田の政治家への巨額なカネの拠出と行政の規制緩和との関わりを指摘し、彼のいう「官僚機構の打破」の内実として機能性表示食品制度導入問題を取り上げた。

この制度は、アベノミクスの第3の矢の目玉の一つである。つまりは経済の活性化策として導入がはかられたものだ。企業は利潤追求を目的とする組織であって、往々にして消費者の利益を犠牲にしても、利潤を追求する衝動をもつ。だから、消費者保護のための行政規制が必要なのだ。これを桎梏と感じる企業においては、規制を緩和する政治を歓迎する。これは常識的なものの考え方だ。

私は2014年4月2日のブログを「『DHC8億円事件』大旦那と幇間 蜜月と破綻」との標題とした。以下は、その一節である。これが問題とされている。

たまたま、今日の朝日に、「サプリメント大国アメリカの現状」「3兆円市場 効能に審査なし」の調査記事が掲載されている。「DHC・渡辺」事件に符節を合わせたグッドタイミング。なるほど、DHC吉田が8億出しても惜しくないのは、サプリメント販売についての「規制緩和という政治」を買いとりたいからなのだと合点が行く。

同報道によれば、我が国で、健康食品がどのように体によいかを表す「機能性表示」が解禁されようとしている。「骨の健康を維持する」「体脂肪の減少を助ける」といった表示で、消費者庁でいま新制度を検討中だという。その先進国が20年前からダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)の表示を自由化している米国だという。

サプリの業界としては、サプリの効能表示の自由化で売上げを伸ばしたい。もっともっと儲けたい。規制緩和の本場アメリカでは、企業の判断次第で効能を唱って宣伝ができるようになった。当局(FDA)の審査は不要、届出だけでよい。その結果が3兆円の市場の形成。吉田は、日本でもこれを実現したくてしょうがないのだ。それこそが、「官僚と闘う」の本音であり実態なのだ。渡辺のような、金に汚い政治家なら、使い勝手良く使いっ走りをしてくれそう。そこで、闇に隠れた背後で、みんなの党を引き回していたというわけだ。

大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される。スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。「抵抗勢力」を排して、財界と政治家が、旦那と幇間の二人三脚で持ちつ持たれつの醜い連携。

「大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される」とはガルブレイスの説示によるものだ。彼は、一足早く消費社会を迎えていたアメリカの現実の経済が消費者主権ではなく、生産者主権の下にあることを指摘した。彼の「生産者主権」の議論は、わが国においても消費者問題を論ずる上での大きな影響をもった。ガルブレイスが指摘するとおり、今日の消費者が自立した存在ではなく、自らの欲望まで大企業に支配され、操作される存在であるとの認識は、わが国の消費者保護論の共通の認識ー常識となった。

また、消費者法の草分けである正田彬教授は次のように言っている。
「賢い消費者」という言葉が「商品を見分け認識する能力をもつ消費者」という意味であるならば、賢い消費者は存在しないし、また賢い消費者になることは不可能である。高度な科学的性格をもつ商品、あるいは化学的商品など、複雑な生産工程を経て生産されたものについてだけではない。生鮮食料品についてすら、商品の質について認識できないのが消費者である。消費者は、最も典型的な素人であり、このことは、現在の生産体系からすれば当然のことである。必然的に、消費者の認識の材料は、事業者―生産者あるいは販売者が、消費者に提供する情報(表示・広告などの)ということにならざるを得ない。消費者は、全面的に事業者に依存せざるをえないという地位におかれるということである。

このような基本認識のとおりに、現実に多くの消費者被害が発生した。だから、消費者保護が必要なことは当然と考えられてきた。被害を追いかけるかたちで、消費者保護の法制が次第に整備されてきた。私は、そのような時代に弁護士としての職業生活を送った。

それに対する事業者からの巻き返しを理論づけたのが「規制緩和論」である。「行政による事前規制は緩和せよ撤廃せよ」「規制緩和なくして強い経済の復活はあり得ない」というもの。企業にとって、事業者にとって消費者規制は利益追求の桎梏なのだ。消費者の安全よりも、企業の利益を優先する、規制緩和・撤廃の政治があってはじめて日本の経済は再生するというのだ。

アベノミクスの一環としての機能性表示食品制度、まさしく経済活性化のための規制緩和である。コンセプトは、「消費者の安全よりは、まず企業の利益」「企業が情報を提供するのだから、消費者注意で行けばよい」「消費者は賢くなればよい」「消費者被害には事後救済でよい」ということ。

本日発売のサンデー毎日(5月3日号)が、「機能性表示食品スタート」「『第3の表示』に欺されない!」という特集を組んでいる。小見出しを拾えば、「国の許可なく『効能』うたえる」「健康被害どう防ぐ」「まずは食生活の改善 過剰摂取は健康害す」などの警告がならぶ。何よりも読むべきは、主婦連・河村真紀子事務局長の「性急すぎ、混乱に拍車」という寄稿。「健康食品をめぐる混乱は根深く、新制度によるさらなる被害」を懸念している。これが、消費者の声だ。

この問題で最も活発に発言している市民団体である「食の安全・監視市民委員会」は4月18日に、「健康食品にだまされないために 消費者が知っておくべきこと」と題するシンポジウムを開催した。その報道では、「機能性表示食品として消費者庁に届け出した食品の中には、以前、特定保健用食品(トクホ)として国に申請し、「証拠不十分」と却下されたものも交じっている」との指摘があったという(赤旗)。まさに、企業のための規制緩和策そのものだ。

あらためて「合点が行く」話しではないか。消費者の安全の強調は、企業に不都合なのだ。私は、そのような常識をベースに、サプリメント製造販売企業オーナーの政治資金拠出の動機を合理的に推論したのだ。消費者の利益を発言し続ける私の口が、封じられてはならない。
(2015年4月21日)

下村文科相 塾業界との癒着の構造

昨日(3月12日)は、維新と一体の中原徹大阪府教育長の失態を取り上げた。続いて今日(3月13日)は、安倍政権と一体の下村博文文科相の醜態を取り上げたい。

人格未熟なる者が企業の幹部になったり市長になったりすると、自分がえらくなったと勘違いする。権力行使に伴う快感は麻薬だ。その魔力がパワーハラスメント事件をひき起こす。ナッツ姫によるナッツ・リターン事件に類することは日常的にありふれている。なかなか表面化しないだけ。中原は、なまじ校長や教育長になったのが不幸のもと。大いに傍迷惑ではあるが、こちらは個人的な人格の未熟をさらけ出しただけの事件。

これに較べて文科相の問題は根が深い。構造的な「業界と政界の癒着」「政治とカネ」の問題につながっているからだ。民主党がこの問題をよく追求している。やればできるじゃないか、民主党よガンバレ。

本日配達の赤旗日曜版(3月15日号)トップに、「教育行政利権」「徹底追求」「下村文科相 塾業界と癒着」の大見出し。

「閣僚の「政治とカネ」疑惑が続出する安倍政権。なかでも首相の”盟友”、下村博文文部科学相の疑惑は底無しです。教育行政を動かす力を背景に、塾業界に自分の名前をかぶせた後援組織「博友会」を広げ、票や「会費」などと称する政治資金を集める-。まさに教育分野の”利権あさり”の構図です」とのリード。

法務省や文科省は利権との関わりが小さいような印象だが、どこにだって癒着の対象となる関連業界はある。下村自身が学習塾経営者出身であって、「塾業界」なるものからカネも票ももらっている。世の中、道義を忘れてはならない。とりわけ道徳教育を教科にしようという文科相だ。もらったカネに報いること、「浄財を寄進してくれた篤志の方に真心込めて恩返し」をし、末永く仲良くお付き合いすべきが人としての道、その心得がよく身についているようだ。さすがに立派な教育族。

カネの見返りとしての業界への恩返しの具体的内容が「教育の規制緩和で、ビジネスチャンスを」というもの。カネを媒介にした政治と業界との、持ちつ持たれつのみにくい癒着。折も折、アベノミクスの「第3の矢」である規制緩和策に「学校の公設民営」が盛り込まれている。

指摘されて初めて気が付いた。下村にとっては、また安倍政権にとっても、教育とは何よりもビジネスチャンスなのだ。だから、下村が文科相なのだ。
どの分野でも同じことだが、規制緩和とは業界の要求である。事業者にとってのビジネスチャンス拡大と同義なのだ。だから、下村のような政治家は「教育のビジネスチャンスを」と業者に呼びかけてカネにありつこうとし、また、業者の側は、自分たちに利益をもたらす規制緩和策を実現するために、目星をつけた政治家にカネを提供する。こうして、結局は金ある者のための政治が横行する。

ところで刑法は、第25章を「汚職の罪」とする。その中心に、贈収賄罪が位置している。
「第197条(収賄) 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
第198条(贈賄) 第197条‥に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。」

いうまでもなく「公務員」は議員を含む。賄賂とは、金品に限らず「人の欲望を満たす一切」を意味する。そして、贈収賄罪の保護法益は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」とするのが、大審院以来の判例の立場である。

つまりは、職務の公正を守るためだけに贈収賄が犯罪となっているのではない。職務の公正に対する社会の疑惑を払拭して、職務の公正に対する社会の信頼を確保しようというのだ。政治資金規正法も同様の趣旨でできている。

もちろん、犯罪の構成要件は厳格にできているから、職務関連性認定のハードルは高く、政治家が事業者からカネを受けとれば、すべてが贈収賄となるわけではない。しかし、政治や職務の公平性に対する社会の信頼を保護しようとする立法の趣旨には反することにはなる。

赤旗の記事の表現を借りよう。
「もともと、下村氏自身が塾を経営。東京都議を経て国会議員になり、塾業界に『ビジネスチャンス』をもたらす、と叫んできました。『ビジネスチャンス』とは-。公教育のさまざまな規制を緩和して、営利企業である株式会社の学校経営参入を広げ、利益をあげられるような仕組みにすること。下村氏は、今国会で、公立学校の運営を民間にゆだねる『公設民営』の法案提出も目ざしています。その裏で、表とカネが動くのです」

資本主義経済における野放しの企業行動の自由は、社会に害悪をもたらす。その経験から、企業活動には種々の規制が設けられている。教育においても然りである。儲けのためにはこの規制を邪魔とする勢力が規制を緩和しようとする。その手段が、政治家にカネと票とを提供することである。これによって、政治を儲けの手段の方向に誘導しようというのだ。仮に、そのような目的がなくても、あるいはその誘導に成功しなくても、カネで政治が歪められているのではないかという社会の疑惑はいっそう深まることになる。

だから、政治の公正や公務員の職務の公正に対する社会の信頼を擁護するために、上限規制を厳格にした個人献金以外の、企業・団体献金は一切禁止すべきなのだ。
(2015年3月13日)

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