澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

間近となった参議院選挙を、憲法擁護の機会として生かすよう訴えます。

ご近所の皆さま、ご通行中の皆さま。少しの時間、耳をお貸しください。

来週の水曜日6月22日が第24回参議院議員選挙の公示日、そして7月10日が投票日です。今回の参院選は、いつにも増して重要な選挙といわねばなりません。とりわけ、憲法の命運にとって決定的な選挙といわざるを得ません。憲法の命運は、この国と国民の命運でもあります。参院選の結果が、この国のあり方を決定づけると言ってけっして大袈裟ではありません。

私たちは、「本郷湯島九条の会」の会員として、憲法擁護という一点から、皆さまに訴えます。今度の選挙では、憲法を守る政党、改憲阻止を公約とする候補者へのご支援をお願いいたします。憲法改正をたくらんでいる自民党にはけっして投票をしてはなりません。それは、99%の市民にとっては、自分の首を絞めることになるからです。自民党と連立与党を作っている公明党への投票も同じこと。そして、自民党への摺り寄りの姿勢を露骨に示している「おおさか維新」にも貴重な一票を投ずることのないよう、心から訴えます。

このたびの参院選で問われているものは、何よりも立憲主義の回復です。安倍政権と、自民・公明の与党は、憲法にもとづく国の運営、憲法にもとづく政治という、近代社会・近代国家の大原則を打ち捨てました。恐るべき憲法破壊の罪状と指摘せざるを得ません。
2014年7月1日、安倍内閣は、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行いました。日本が侵略されていなくとも、親しい国の要請で、海外で武力行使ができるというのです。これまで、歴代の自民党内閣が憲法違反としていたことを、あっさりと合憲としてしまいました。憲法に縛られるのはイヤだ。不都合な憲法の条文は解釈を変えてしまえ、というのです。これが、立憲主義の放棄。そして、戦争法を上程して成立を強行したことは、記憶に新しいところ。
戦争法を廃止して、立憲主義を取り戻す、これが今回参院選の課題です。

次に、明文改憲阻止という課題があります。今度の選挙は、安倍自民党の憲法改正の姿勢に、国民のノーを突きつける選挙です。
自民党は、2016年参院選の政策パンフレットを作成しています。26頁に及ぶ政策の最後の最後、26ページ目のおしまいに、「国民合意の上に憲法改正」とわずか10行が掲載されています。意味のある文章はわずか3行「衆議院・参議院の憲法審査会における議論を進め、各党との連携を図り、あわせて国民の合意形成に努め、憲法改正を目指します」とだけ言っています。まるで、積極的な改憲の意図はないごとくではありませんか。
しかし、これはウソです。これまでの政権の言動から見て、明らかに改憲の意図を隠した、有権者騙しの戦術といわねばなりません。嘘つきの安倍政権に欺されてはなりません。

第2次安倍政権が発足以来、今度が3度目の国政選挙になります。2013年7月の前回参院選では、安倍政権は、まだボロの出ていなかったアベノミクスの「三本の矢」の成果を強調して、自民党が大勝しました。選挙に勝って政権は何をしたか。言論の自由を踏みにじる特定秘密保護法だったではありませんか。2014年末の衆院選では、政権は「景気回復、この道しかない」とアピールして、選挙では勝ちました。そのあとに待っていたのが、戦争法の上程と数にものを言わせた成立の強行ではありませんか。
選挙の争点になるのを意識的に避けながら、安保政策を大転換させる布石を打ってきたといっていい。
国論を二分する重要な憲法上の課題を、選挙前にきちんと説明することなく、議席を掠めとったあとで、本当にやりたいことをやってのける。こうして、日本の有権者は2度欺されました。3度欺されてはなりません。自民党や公明党に、選挙で勝たせてはならないのです。

今度の選挙は、自民党は破綻したアベノミクスを取り繕って、経済政策を争う選挙としています。しかし、選挙結果が、自民・公明の与党と、与党摺り寄りの「おおさか維新」を合わせて、参院の改憲発議に必要な3分の2以上の議席を確保すれば、安倍政権は一路憲法改正に邁進することになります。そのようなことを許してはなりません。

昨年の戦争法反対の国民運動の盛り上がりの中で、危険な安倍政権に対抗するために、市民から「野党は共闘」の声があがりました。今、多くの市民の声が後押しして、参院選での野党共闘が実現しつつあります。

立憲主義を投げ捨て、さらには明文改憲をたくらむ政権与党と、これに対抗して立憲主義と民主義を取り戻し、改憲を阻止しようという野党共闘の対決の構図が明確になっています。選挙の勝敗を決めるのは、32ある一人区。その一人区の全部で安倍改憲を許さない立場で一致した、民進・共産・社民・生活の4野党が、統一候補者を決めました。与党と野党は、改憲をめぐる土俵の上で、がっぷり四つに組んだのです。

「憲法改正の必要はない」というのが、今やあらゆる世論調査で圧倒的な国民の声となっています。自公の改憲路線は、けっして世論が支持しているわけではありません。しかし、これまでは、野党がバラバラで自公連合に個別撃破を許してきたということです。今度は、一人区の全部で共闘ができたのですから、けっして前回参院選のように自公の大勝とはなりません。

今回参院選では、初めて18歳からの有権者が参加した選挙になります。文部科学省と総務省が作成した選挙を考えるための副教材が全高校生に配布されているということです。そこには、「民主政治とは話し合いの政治であり、最終的には多数決で合意を形成する」としながら、「ただし、多数決が有効に生かされるためには、多様な意見が出し尽くされ、少数意見が正しいものであれば、できるだけ吸収するというものでなければなりません」と記されていることが話題になっています。数の暴力は民主主義とは無縁なもの。議席を与えれば、少数意見を圧殺し改憲を強行する安倍自民と与党ではありませんか。ぜひとも、憲法の擁護につながる野党の側にご支持をお願いいたします。そのことが、立憲主義・民主主義を取り戻し、平和と生活を守ることになるのですから。
(2016年6月13日)

改憲実現へ-票を掠めとる国民欺しの大作戦

アベ晋三でございます。日本会議国会議員懇談会特別顧問のアベ、神道政治連盟会長のアベ、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会のアベでもございます。また、行政府のトップであるだけでなく、時折は立法府の長までも兼ねているワタクシ。要するに右翼の軍国主義者で権力を掌握しているアベ晋三なのでございます。本日は、自民党総裁として、また、改憲勢力のリーダーとして、ここだけの話しを身内の皆様方に申しあげるわけでございます。

7月10日の参院選投票日まで、ちょうどあと一月となりました。6月22日が公示日で、7月10日に投開票が行われます。この選挙は、この道しかない我が国の今後にとってこの上ない重要な選挙なのでございます。

何となれば、敗戦によってGHQに押しつけられ、心ならずも涙とともに飲み込んだ日本国憲法を、いまこそ改正して真の日本を取り戻すまたとないチャンスだからでございます。我が国においては、いまだに戦後民主主義の外来思想に毒された蒙昧な輩が社会の隅々にまではびこっています。彼らは、個人の尊厳が原点だ、個人の尊厳を守るために国家の権限を制約すべきだ、などと言っています。国が強くなっては、国民個人の権利を圧迫するから、国は弱くてもよい。いや、国は強くなってはならない。むしろ権力は弱いに越したことはないなどとまで。このような亡国の暴論が幅をきかせています。その根拠となっているのが、日本国憲法。護憲勢力と言われる連中が、憲法に基づいているとしてこの暴論を喧伝しています。これが、我が国の嘆かわしい現実なのでございます。

言うまでもなく、国家は強くなければなりません。富国強兵こそが、維新以来の正しいスローガンなのでございます。人権だの平和だのと、軟弱なことを言っていては、近隣諸国に侮られ貶められて、やがては国の存立を危うくすることになることは火を見るよりも明らかではありませんか。

個人の尊厳を確立する以前に、強固な国家の建設をこそ重視しなければなりません。基本的人権の尊重よりは、国家の公序確立を優越する価値としなければなりません。しかも、その国家の公序において、その中心に天皇陛下を戴くのが、古来よりの我が国の国柄ではありませんか。

精強な国家は、何よりも強い経済によって支えられます。富国がすべての基礎となります。富国が実現してこそ、人心は安定して国家を信頼し、強兵たる軍隊を作ることができるのでございます。

その点、いろんな批判を受けながらもアベノミクスは正しい政策であると自負しております。つまり、アベノミクスとは、国民個人を豊かにする目的を持つものではなく、強兵のための富国をこそ目的とする経済政策なのでございます。貧富の差はあってよい。不安定雇用も、男女賃金の格差も、子どもの貧困も、そんなことは些細な問題。要は強兵のための財政支出を可能とする強い国家の基礎となる経済であればよいのでございます。

しかし皆さん。いま、そのような本音を口にしようものなら、「憲法違反だ」「日本国憲法を理解していない」「アベは立憲主義を解ってない」「アベ政治を許さない」と、集中砲火を受けることが目に見えています。ですから、ここは隠忍自重、賢く対処しなければなりません。

アベノミクスはいずれ国民を豊かにする、と有権者を引っ張り続ける策略が必要なのです。端的に言えば、国民を欺さねばなりません。戦後レジームから脱却して、真正の日本を取り戻すためです。正しい政治を行うという目的のためですから、嘘が許されて当然なのでございます。

日本国憲法こそが、戦後レジームの骨格であり、強い国家の敵対物であり、また、非日・反日と自虐史観の根源なのですから、憲法改正の実現までは、じっと我慢で本音を隠し続けねばならないのでございます。

政治家の評価があっという間に地に落ちる恐ろしい世の中であることは、オリンピック招致であんなにはしゃいでいた東京都知事も、二代続いて、あっという間に炎上して袋だたきに遭っていることが証明しています。猪瀬も舛添も、所詮はジャーナリストや学者であって政治家ではありません。上手に嘘がつけないのでございますよ。その点、私は三代目の生粋の政治家ですから、嘘のつきかたの呼吸はよく心得ているのでございます。

舛添は、「せこい」「せこすぎる」として攻撃されています。ここが面白いところ。本来、政治家のつつましさは美徳。せこさを非難される筋合いはありません。でも、庶民には「せこい不祥事」はよく分かるのです。反応しやすいのです。二泊三日の正月の家族旅行の費用を政治資金の流用で捻出するなんてことは、常に身銭を切らざるを得ない我が身との比較で容易に怒り心頭の対象となるのです。私の海外旅行の金額などはケタが違います。でも、堂々とやってのければ、庶民には想像もできないこととて怒りが現実化してこないのでございます。

ともかく、本音を隠すこと、上手に嘘をつきとおすことが肝要なのです。そうすれば憲法を改正する絶好のチャンスがやって来る。その大事なときに、舛添のようなヘマを犯してはならないのでございます。本音は隠して、票をかすめ取る。憲法改正は争点にしない。でも勝てばこっちのもの。「国民の信任を得た」として、改憲に踏み出すのでございます。

ご承知のとおり、憲法を改正するためには各院の3分の2の議員による発議が必要。ですから、今回の改選議席で3分の2をとるためには、改憲勢力は78の議席をとらねばなりません。もちろん、自民党単独では無理。下駄の雪の公明党と一緒でぜひ78議席を。それでも足りなければ、頻りに政権への擦り寄りを目指している、おおさか維新も一緒にして78議席。

改憲を阻止しようという、民主・共産・社民・生活4党は、改憲の危機意識から共闘を組んだのでございます。けっして侮ることはできません。彼らの目標は、改憲3党で3分の2をとらせないこと。今回改選121議席のうち、78議席をとらせないこととなります。

われわれ改憲派の陣営は、どうすれば78議席をとることができるか。勝敗を左右するのは32ある一人区でございます。この32の一人区すべてで野党統一候補が立つことになりました。由々しき事態といわねばなりません。

わたくしは、選挙遊説を、被災地視察として福島、大分、熊本から始めました。次いで、山梨、そして昨日(6月9日)山形、本日(6月10日)は奈良、三重両県と、すべて一人区をまわっています。

そして、訴えるのは、「景気回復、この道しかない。」ともっぱらアベノミクスの成果。乏しい成果を針小棒大に言わねばなりませんが、嘘をつくのは慣れたもの。また、従順な国民の皆さまは、結構その気になって、欺されてくれるのでございます。

もう一つの訴えは、「野党統一候補が、民進党と共産党の両党に共通する政策を作れるはずがない。民進か共産か、どちらの考え方に賛成するのか、はっきり示すべきだ」と言う分断作戦です。自民党と公明党の関係はどうなんだ、と切り替えされたりもしますが、両党は基本姿勢も政策も一致ですから、問題はないのでございます。

改憲のくわだては後景に引っ込め、アベノミクスの成果を針小棒大に宣伝して票を掠めとろうとする、国民欺しの大作戦。その内容につきましては、くれぐれも内密にお願い申しあげる次第でございます。
(2016年6月10日)

「護憲派44議席の確保」に向けて、これが共闘の政策協定だ。

参院選の投開票(7月10日)が間近となった。北海道5区補選や沖縄県議選などの前哨戦の結果はまずまずで、野党共闘は順調な滑り出し。明るい見通しをもって選挙戦本番をを迎えることになっている。

昨日(6月7日)の民進党岡田克也代表の記者会見発言に注目せざるを得ない。
「民進党の岡田克也代表は7日、参院選で改憲勢力による3分の2以上の議席確保の阻止について『目標ではない。私にとって最低限の数字だ』と述べた。これまで勝敗ラインについては明言を避けてきたが、改憲勢力に3分の2を許せば野党第1党の党首として責任論は避けられないため、事実上の勝敗ラインとして言及した。」(毎日)

また、同じ席で「(安倍政権の)本当の狙いは憲法の改悪。そのための3分の2の確保ということである。それを絶対に阻止する、そのことを正面から掲げて戦っていきたいと思う」と述べたとも報道されている(TBSニュース)。
  http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160607-00000079-jnn-pol

多くの市民の期待に応える、最大野党党首の意欲溢れる発言に拍手を送りたい。
至上命題が、明文改憲の阻止である。現在の選挙制度を前提とする限り、野党がバラバラでいる限りは、改憲を狙う与党勢力に各個撃破されて選挙に勝てない。憲法擁護を求める国民の多数の声が、「死票」となって議場から閉め出され切り捨てられる。「憲法の改悪を絶対に阻止」するためには、野党の共闘が必要なことはあきらかだ。目前の参院選における選挙協力を形だけのものとするのではなく、真に勝ち抜くための中身のある共闘を実現しなくてはならない。

参議院の定数は、選挙区選出議員146名、比例代表選出議員96名の合計242名。3年ごとに半数(121)が改選される。改憲を標榜する与党(自・公)と、これを補完する準与党(おおさか維新・日本のこころ)の非改選議席数は以下のとおりである。
  自民       66
  公明       11
  おおさか維新   5
  日本のこころ   3
  合計       85

参議院の改憲発議に必要な3分の2の議席数は162。今回の改選で改憲派4党が77議席を獲得して非改選議席に積み増しすれば、改憲の実現に手が届くことになる。これを阻止するためには、改憲阻止派4党が、改選総議席121から77を差し引いた44議席(以上)を獲得すればよいことになる。44議席を割り込めば、一挙に憲法が危うくなる。

民進・共産・社民・生活の改憲阻止派4党で、合計44議席。44が絶対防衛ライン。前回(2013年)参院選の各党獲得議席数は以下のとおりである。
  民主     17(その後プラス1)
  共産      8
  社民      1
  生活      0(その後プラス1)
合計     26(その後28)
6年前の2010年参院選では、民主党単独で44議席を獲得しているが、現状での4党44議席獲得の厳しさは誰の目にも明らかと言えよう。だから、野党共闘が必要なのだ。

毎日の報道では、「民進党は参院選の政治活動用ポスターのキャッチフレーズを『まず、2/3をとらせないこと。』『国民と進む。』の2種類に決めた。近く発表する。」という。

これも歓迎すべきこと。要するに、改憲阻止に護憲派4党で44議席をとらねばならない。44議席をとるためにはどうするか、を発想しなければならない。必然的に、野党共闘に行き着かざるを得ないのだ。

その、野党共闘における政策協定が昨日成立した。下記の、時事通信配信記事が比較的詳しくその経過と内容を報じている。
「「安倍政権対野党プラス市民」=安保廃止へ政策協定 【16参院選】」
 民進、共産、社民、生活の野党4党は7日、安全保障関連法廃止を訴える市民団体が設立した「市民連合」との間で、7月の参院選に向け政策協定を締結した。「安倍政権対野党プラス市民」の対決構図を掲げ、幅広く政権批判票を取り込む狙いだ。協定には安保法廃止に加え、安倍晋三首相が目指す憲法改正の阻止を盛り込んだ。
 「一人ひとりの生活を大事にする。そのことが成長につながっていく」。民進党の岡田克也代表は調印式後に共同記者会見に臨み、個人の生活重視や格差是正を訴えた。大企業や富裕層が富めば中小企業や低所得層も恩恵を被るとするアベノミクスとの対立軸と位置付ける主張だ。
 協定の締結は、市民連合が提示した政策要望書に、4野党の党首らが共闘を約束して署名する形を取った。協定書には安保や憲法問題だけでなく、保育士の待遇改善や高校授業料の完全無償化、男女賃金格差の是正など、民進党が重視する「人への投資」の具体的なメニューが並んだ。 
 4野党は参院選の勝敗を分ける32の1人区全てで候補を一本化し、自民党との事実上の一騎打ちに持ち込んだ。モデルケースとなった4月の衆院北海道5区補選で、野党統一候補は敗れはしたものの、無党派層の6~7割の支持を得たとされる。野党はこの「実績」に手応えを感じており、参院選でも市民との連携を前面に打ち出す戦略だ。
 野党一本化を主導した共産党の志位和夫委員長は共同会見で「全1人区で野党統一候補が実現したのは、市民の運動が背中を押してくれた結果だ」と謝意を表明。市民連合側の呼び掛け人の山口二郎法政大教授は「さまざまな政策課題についても市民と野党の間で確認し、共に戦っていくことが必要だ」と語り、草の根の支援を約束した。」

市民連合とは、2015年12月、下記の五市民団体が母体となって結成された市民団体の連合体である。
  「立憲デモクラシーの会」
  「安全保障関連法に反対する学者の会」
  「安保関連法に反対するママの会」
  「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」
  「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」。

政党は本来的に、政治理念や政策の独自性を競い合う存在。その独自性をぶつけ合うのが、選挙という場。選挙共闘はなかなかに難しい。これを可能にしたのが、市民の声であり、後押しの力である。学者・青年・学生・女性・労組・反原発・環境・平和・消費者・弁護士等々の市民運動が、政党に呼びかけて共闘を現実のものとした。まさしく、「〈安倍政権〉対〈野党プラス市民〉」の構図なのだ。しかも、市民主導で共闘の政策が成立した。

市民連合の政策要望書(すなわち、共闘の政策)は、東京新聞が次のように要約している。
・安全保障関連法の廃止と立憲主義の回復
・改憲の阻止
・公正で持続可能な社会と経済をつくるための機会の保障
・保育士の待遇の大幅改善
・最低賃金を(時給)1000円以上に引き上げ
・辺野古新基地建設の中止
・原発に依存しない社会の実現に向けた地域分散型エネルギーの推進

念のため、以下に全文を挙げておきたい。明文改憲阻止と、安保法廃止・立憲主義回復がメインだが、それだけではない。格差・貧困の克服、差別なく働ける社会の構築、そして、沖縄と原発がテーマだ。これで、十分に選挙は戦えるではないか。多くの国民の共感を得る政策となっている。もう、けっして野党の野合などという悪口は言わせない。余裕を失ったアベ改憲勢力の悔し紛れの分断策として、笑って聞き流そう。

I 安全保障関連法の廃止と立憲主義の回復(集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む)を実現すること、そのための最低限の前提として、参議院において与党および改憲勢力が3分の2の議席を獲得し、憲法改正へと動くことを何としても阻止することを望みます。
 上記のIに加えて、市民連合は、個人の尊厳の擁護を実現する政治を求める市民連合として、以下のIIをすべての野党が実現するよう要望します。

II すべての国民の個人の尊厳を無条件で尊重し、これまでの政策的支援からこぼれおちていた若者と女性も含めて、公正で持続可能な社会と経済をつくるための機会を保障することを望みます。
・日本社会における格差は、もはや経済成長の阻害要因となっています。公正な分配・再分配や労働条件を実現し、格差や貧困を解消することこそが、生活者の購買力を高め、健全な需要を喚起し、持続可能な経済成長を可能にします。
・誰もが自由で尊厳ある暮らしを送ることができる公正で健全な社会モデルへの転換を図るために、格差のひずみがとりわけ集中してきた若者や女性に対する差別の撤廃から、真っ先に着手していく必要があります。
1.子どもや若者が、人生のスタートで「格差の壁」に直面するようでは、日本の未来は描けません。格差を解消するために、以下の政策を実現することを望みます。
 保育の質の向上と拡充、保育士の待遇の大幅改善、高校完全無償化、給付制奨学金・奨学金債務の減免、正規・非正規の均等待遇、同一価値労働同一賃金、最低賃金を1000円以上に引き上げ、若いカップル・家族のためのセーフティネットとしての公共住宅の拡大、公職選挙法の改正(被選挙権年齢の引き下げ、市民に開かれた選挙のための抜本的見直し)
2.女性が、個人としてリスペクト(尊重)される。いまどき当たり前だと思います。女性の尊厳と機会を保障するために、以下の政策を実現することを望みます。
 女性に対する雇用差別の撤廃、男女賃金格差の是正、選択的夫婦別姓の実現、国と地方議会における議員の男女同数を目指すこと、包括的な性暴力禁止法と性暴力被害者支援法の制定
3.特権的な富裕層のためのマネーゲームではダメ、社会基盤が守られてこそ持続的な経済成長は可能になります。そのために、以下の政策を実現することを望みます。
 貧困の解消、累進所得税、法人課税、資産課税のバランスの回復による公正な税制の実現(タックスヘイブン対策を含む)、TPP合意に反対、被災地復興支援、沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の中止、原発に依存しない社会の実現へ向けた地域分散型エネルギーの推進 以上
(2016年6月8日)        

自民党の参院選公約、本当のところを語りましょう。

自民党を代表いたしまして、2016年参院選(第24回)公約のエッセンスをかいつまんで解説申し上げます。

申し遅れましたが、わたくしアベ・シンゾーと申します。恥ずかしながら、自民党の総裁であり、日本のソーリ大臣でもあります(「そのとおり。全く恥ずかしい」と不規則発言する者あり。)。総裁はともかく、大臣って天皇の筆頭格の家来という意味。わたくし、陛下の臣であることを身に余る光栄と存じております。「ダイジン」、あるいは「おとど」って、とてもすばらしい響きではありませんか。誰がなんと言おうと、天皇あっての日本、天皇のための日本というのが私の信念。臣民一億総員が火の玉となって御稜威を輝やかせる、これが神武以来の我が国の国柄にほかなりません。今は、戦争に負けて、心ならずもGHQに押しつけられた「日本国憲法」によって、個人主義だの、自由主義だのがはびこる世になっていますが、これに終止符を打つための憲法改正が私の使命。そうして、本来の国柄とそれにふさわしい日本を取り戻すことができれば、私の本望とするところ。今回の参院選の公約の眼目は、実はこの点にあるのです。

私が使命とする憲法改正は、容易な企てではありません。GHQの陰謀に洗脳された一億総平和惚け国民の目を覚まして、日本人としての自覚を呼び起こすことなのですから、言わば国民の精神革命が不可欠なのです(「革命ではなく、反革命だろう」と不規則発言する者あり。)。

上ご一人に率いられた万邦無比の國体は金甌無欠、過去に間違ったことをしたはずはありません。特に、過ぐる大東亜戦争を、侵略戦争だの帝国主義戦争だなどとことさらに神州日本を貶めることは許せません。さらには、こともあろうに靖国に鎮まる護国の神々が皇軍の兵として活躍していた時代に、従軍慰安婦を辱めたなどと濡れ衣を着せるような、自虐史観を払拭しなければなりません。

皇国の富国強兵の必要を忘れて、平和主義などとうつつを抜かす輩に国防の精神を叩き込まねばなりません。精強なる国家を再興するためには、月々火水木金々の精神で文句を言わない勤労の精神を注入しなければなりません。個人の権利だとか、自由などを口にする前に、滅私奉公を行動で示すことを叩き込まねばなりません。

天皇を中心として一億国民が総結集することで、国は強くなり、国が栄えます。国防の武威あって初めて国民の安全が確保されます。国富が充実して初めて国民の経済も潤います。国が強く栄えずして、個人の幸せはあり得ません。「まずなによりもお国のため」「個人の利益は後回し」を徹底する国柄を作らねばならないのです。この精神は、自民党が下野していた時代に作った「自民党・日本国憲法改正草案」にしっかりと書き込んであります。

しかし、今述べたような私の本心を赤裸々に語っては、今の国民に受け容れてもらえないことは、よく承知しています。ですからどうするか。そりゃ決まっています。欺すのです。

世の中では、「嘘はいけないこと」とされていますが、政治は違います。なんのために政治はあるのか、立派な国を作り、そのことによって国民を幸せにすることなのですから、国民を幸せにするための嘘は許される。これがわたくしの強固な信念です。普通の人は、なかなかウソをつけない。それでは政治家失格です。私のように、政治家稼業三代目ともなれば、嘘をつく能力は生得のものとなっています。DNAに組み込まれているのです。

だから、「アンダーコントロール」で、「完全にブロックされています」と、平気で大ウソをついて、東京オリンピック誘致を成功させたではありませんか。もちろんあれは嘘です。でも、それでみんながハッピーになったのだから、なんの問題がありましょうか。

今回の参議院選公約もまったく同様なのです。本当の狙いは、憲法改正にあります。でも、そうあからさまには言わないのです。まずは、国民を欺して改憲に必要な議席をとること。議席をとってしまえば、しめたもの。そのあとに、国民の信任を受けたと言って、憲法改正に踏み切るのです。これが、作戦なのです(「ずるいぞアベ」と不規則発言する者多数あり)。

だから、マスコミ向けの記者会見では、「アベノミクスを加速するか、後戻りするか。これが最大の争点だ」と言っているのです。でも、ご存じのとおり、アベノミクスは、議席獲得のための手段、本当の目的は改憲の実現です。そんなことはお分かりでしょう。改憲が將、経済は馬。改憲を射んとして、まずはアベノミクスの矢を放っているのです。

もう、公然の秘密ですが、改憲を訴えれば票が逃げます。「改憲は自民党の党是。隠しているわけではないが、今は声を潜めた方がいい。参院で3分の2が取れたら改憲に動き出す。それが政治の世界」なのです。

良賈は深く蔵して虚しきが如し、というではありませんか。能あるシンゾーは、改憲の爪を隠しているのです。「選挙戦で改憲を訴えるつもりはありません。他にも訴えるべきことがあります」。これが、私のスタンス。

わたくしは、普段は産経新聞しか読まないのですが、本日(6月5日)の毎日新聞の切り抜きを見せられました。菅野完という人がズバリこう言っていますね。

「安倍晋三首相は憲法改正を目指しているが、選挙では経済政策アベノミクスや消費増税延期が与党の主張の前面に出て、憲法はかすんでしまうだろう」「選挙で憲法が争点にならなかったとしても、改憲勢力が参院で3分の2以上の議席を占めれば、首相が『民意を得た』と改憲に向けて動き出すだろう。これは2014年衆院選の自民党公約に小さく書き込んだだけの『安全保障法制の速やかな整備』に、翌年から積極的に取り組んだのと同じだ」「改憲の狙いは、まずは護憲派が想定する9条ではなく、『緊急事態条項』の創設や、伝統的家族観をうたう『家族条項』などがクローズアップされてくるはずだ」と。

菅野は、「有権者やメディアはこうした欺きを指摘しなければならない。安倍政権は憲法の何を変えようとしているのか。選挙の前に手の内を明かせと言う必要がある。」と言っていますが、わたくしが簡単に嘘を嘘と言うはずはありません。手の内を明かしてしまえば、マジックは成り立ちません。所詮は、シンゾー流ダマシのテクニックを皆さんに楽しんでいただきたいのです。

「人はパンのみにて生くるにあらず。政治は真のみにて成り立つにあらず。」
自民党の参院選公約とは、そんなものなのです。(「引っ込め、シンゾー」と不規則発言する者甚だ多く、以下聴取不能。)
(2016年6月5日)

「小さな人権」そこをのけ、「大きな人権」のお通りだ。-自民改憲草案の基本思想

本日の毎日新聞夕刊第2面・特集ワイド欄に、「自民党『憲法改正草案Q&A』への疑問」「緊急時なら制限されてもいい…?『小さな人権』とは」という記事。
  http://mainichi.jp/articles/20160523/dde/012/010/006000c

冒頭の一文が、「思わず首をかしげてしまった。『大きな人権』と『小さな人権』が存在するというのである」。この一文を読んで、思わず膝を打ってしまった。そうだ、「大きな人権」も「小さな人権」もあるものか。

この記事は、記者の次の問題意識から、展開されている。
「この表現(『大きな人権』と『小さな人権』)は、自民党が憲法改正草案を解説するために作成した冊子『改正草案Q&A』の中で見つけた。大災害などの緊急時には『生命、身体、財産という大きな人権を守るため、小さな人権がやむなく制限されることもあり得る』というのだ。そもそも人権は大小に分けることができるのだろうか。

大きな人権を守るために犠牲にされる「小さな人権」の内実はいったい何だ。という記者の問いかけが新鮮である。この疑問を掘り下げることで、自民党改憲草案の本質をえぐり出している。アベ改憲許すまじの結論なのだ。

「Q&A」では、緊急事態条項解説の個所にだけ出て来る「大きな人権と小さな人権」の対比。もちろん、「大きな人権を守るために、小さな人権の制約はやむを得ない」という文脈で語られる。

「Q&A」の表現は、「『緊急事態であっても、基本的人権は制限すべきではない』との意見もありますが、国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます」というもの。底意が見えている。

改憲草案の作成に深く関わったという礒崎陽輔・党憲法改正推進本部副本部長の言も紹介されている。
国家の崇高で重い役割の一つは、国民の生命、身体、財産を守ることにある。小さな人権が侵害されることはあるかもしれないが、国民を守れなければ、立憲主義も何もない」というのだ。こちらが、より本音があらわれている。

自民党が「小さな人権」として語っているものは、実は個人を主体とする基本的人権である。普通に語られている「人権」そのものなのだ。これは、「侵害されることはあるかもしれない」と位置づけられている。要するに、大切にはされていない。

これに対置される「大きな人権」とは、「国家の崇高で重い役割」によって保障される「国民の生命、身体、財産」という価値である。実は、この「大きな人権」の主体は個人ではない。ここでいう「国民」とは、個人としての国民ではなく、集合名詞としての国民全体にほかならない。

自民党は、「個人」が大嫌いで、「国家・国民」が大好きなのだ。だから、現行日本国憲法のヘソというべき第13条「すべて国民は、個人として尊重される」を、わざわざ「全て国民は、人として尊重される」と、「個」を抜いて書き直そうというのだ。憲法からの「個人」の排除である。個人よりは国家社会優先という姿勢を隠そうともしない。

大きな人権とは、国家や国民全体の利益をいうのだ。「全体は個に優越する」。「全体のために、個人の利益が制約されることはやむを得ない」。「大所高所に立てば、個人的利益の擁護に拘泥してはおられない」。これが自民党改憲案のホンネ。

戦前は、もっと露骨だった。「忠良なる汝臣民」は、天皇のために死ぬことが誉れとされた。個人ためではなく、君のため・国のために生きることが道徳とされ、天皇の軍隊の兵士として死ねとまで教え込まれた。これが、富国強兵時代の国家主義思想である。

この「君」「国」が、今自民党改憲草案では「(集合名詞としての)国民」の「大きな人権」に置き換えられている。

「緊急事態には、『国民の生命、身体及び財産という大きな人権』を守るために、必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得る」は、俗耳に入り易いようにと言いつくろったレトリック。本音は、「国家社会が全体として危機にあるとき、個人の人権擁護などと悠長なことを言ってはおられるか」ということだ。

阪口正二郎一橋大教授(憲法学)が、紙上でこう解説している。
「人権に大小の区別はありません」。「緊急時に表現の自由が『小さな人権だ』として制限される可能性がある」「緊急事態条項の目的は国家を守ること。『危機にある国家を守らねばならないから、国家を批判する言動は控えろ』と、表現の自由などの人権を制限しかねない。個人の人権よりも国家の意思を優先させ、物事を進めたいのが本音ではないでしょうか

自民党の改憲草案は、緊急事態に限らず、「国家社会を優先」「そのための安易な人権制約」の思想に貫かれている。「国家あっての人権」「安全保障が確保されてこその人権」「国家の秩序、社会の安寧が保たれてこその、その枠内の自由であり人権」という戦前回帰型思想である。これが、戦後レジームからの脱却の中身。

個人の人権を、ことさらに「小さい」と形容する自民党・アベ政権は、国家主義・全体主義の見地から、人権軽視の改憲を目論んでいると指弾せざるをえない。この姿勢は、国のために死ぬ兵士を想定した、戦争のできる国作りにも通じる。

「大きな時計と小さな時計、どちらも時間はおんなじだ。」にならって、「大きな人権小さな人権、どっちも値打ちはおんなじだ。」というべきであろうか。いや、「大も小も区別ない、みんな同じ価値の人権だ」というべきであろう。
(2016年5月23日)

野党選挙共闘に期待する―「改憲阻止絶対防衛圏」を守り抜くため

各紙の「野党 参院選全1人区で候補一本化」との見出しが目にまぶしい。
香川選挙区で民進党が擁立を断念し、共産党の候補予定者への一本化が決定。これを受けて共産党は近く、民進党と調整中の三重、佐賀で公認候補を取り下げる方向だという。これで事実上、今夏の参院選「1人区」(32選挙区)すべてで、民進・共産・社民・生活4党による候補者一本化実現となった。

各選挙区の候補者と所属は以下のとおりである。
 青森   田名部匡代   民・新
 岩手   木戸口英司   無・新
 宮城   桜井 充     民・現
 秋田   松浦大悟    民・前
 山形   舟山康江    無・前
 福島   増子輝彦    民・現
 新潟   森ゆう子    無・前
 富山   道用悦子    無・新
 石川   柴田未来    無・新
 福井   横山龍寛    無・新
 山梨   宮沢由佳    民・新
 長野   杉尾秀哉    民・新
 栃木   田野辺隆男   無・新
 群馬   堀越啓仁    民・新
 岐阜   小見山幸治   民・現
 三重   芝博一      民・現 
 滋賀   林久美子    民・現
 奈良   前川清成    民・現
 和歌山  由良登信    無・新
 鳥取島根 福島浩彦   無・新
 岡山   黒石健太郎   民・新
 山口   纐纈 厚     無・新 
 徳島高知  大西聡    無・新 
 香川   田辺健一    共・新
 愛媛   永江孝子    無・新
 長崎   西岡秀子    民・新
 佐賀   中村哲治    民・元
 熊本   阿部広美    無・新
 大分   足立信也    民・現
 宮崎   読谷山洋司   無・新
 鹿児島 下町和三     無・新
 沖縄   伊波洋一    無・新

これまで相争う関係にあった各党の候補者調整である。困難が大きいのは当然のこと。「岡田克也(民進党)代表は20日の会見で、香川について『共産党との関係は現時点で白紙だ』と述べた。共産党の候補予定者を民進党が推薦する可能性は低く、正式な協力態勢が整った石川や熊本などとは温度差がある」(毎日)と報じられている。各党がこぞって、統一候補を推薦というきれいな図を描くには至っていない。

それでも、全一人区で与野党一騎打ちの構図になる。この意義は大きい。「改憲か、その阻止か」という対抗軸が明瞭になるからだ。いくつかの選挙区では、野党共闘の成果としての議席の獲得が現実化するだろう。その新たな獲得議席が、明文改憲を阻止し、解釈改憲も是正する貴重な存在となるだろう。

明文改憲の阻止と戦争法廃止の両者を統一するスローガンが、「日本の政治に立憲主義を取り戻そう」である。日本国憲法の存在を前提として、いま、安倍政権の、反憲法的政治姿勢は目に余る。憲法が政権を縛り政権の方向を定めているのに、政権はこれを嫌って、憲法をねじ曲げようとしている。あまつさえ、憲法そのものを書き換えようとしている。このアベ政権の姿勢を「立憲主義に反する」と批判し、「立憲主義を取り戻せ」とスローガンを掲げているのだ。

憲法擁護義務を無視した安倍政権は、強引に憲法9条の解釈を変えて戦争法の成立を強行し、それでも足りずに、明文改憲を狙っている。政権の目指す憲法が、「自民党改憲草案にあることは自民党の広言するところ。これまで国民が共通の認識としてきた憲法価値である、平和・人権・民主主義の擁護が「立憲主義を取り戻せ」のスローガンに包含されている。表現の自由も、福祉も、労働も、歴史認識も、その具体的課題となる。

参院選での野党共闘態勢の構築は、正式な共闘成立公表とともに、メディアの大きな話題となるだろう。また、今後に大きな影響を与えることにもなるだろう。まずは、5月27日告示6月5日投開票の沖縄県議選を励ますことになり、衆院選の小選挙区共闘を促すことになるだろう。

今回参院選の統一候補の内訳が、「政党公認16、無所属16」である。政党公認16のうち、「民進15、共産1」というのが、現実的な落としどころなのだろう。このように現実化した参院1人区共闘が、総選挙でできないはずはない。世論が求め、そうしなければ勝てないという現実があるからだ。しかも、ここで「各院の3分の1」という「絶対防衛圏」を破られては、後戻りできない禍根を残すことになるではないか。

参院とは対照的に、衆院の野党共闘協議は進んでいないのが実態。民進党の態度が消極的だといわれてきた。しかし、「国会会期末が迫るなか、野党内には首相が参院選に合わせて衆院解散に打って出るとの警戒感が高まり、民進も態度を変えた。」「民進の岡田代表は、『衆参ダブル選挙の可能性もかなり高い。幹事長レベルでよく話し合っていく』と述べ、衆院小選挙区での候補者調整を急ぐ考えを示した。21日には愛媛県新居浜市で記者団に『特に一本化すれば勝てる可能性があるところは、一本化の努力はすべきだ』と述べた」「仮に衆参同日選となれば調整に残された時間は少なく、選挙協力がどこまで進むかは不透明だ。民進幹部は『いざとなったら「えいや」でやるしかない』と語る」(朝日)と報じられている。

ことは、憲法の命運に関わる。憲法の命運とは、国民の権利と自由と平和の命運にほかならない。「野党は共闘」「野党は真剣に共闘に取り組め」と声を上げ続けねばならないと思う。
(2016年5月22日)

改憲阻止を目指す野党選挙共闘実現の流れー32の一人区のうち、あますところはあと3区。

参院選の野党統一候補擁立の動きに注目し続けている。その成否が改憲阻止の成否に直結するからだ。アベ壊憲政権の与党勢力に3分の2の議席を与えてはならない。そのためには、明文改憲阻止の一点で野党の選挙共闘が不可欠だ。民進・共産・社民・生活の野党4党間で進んでいる、候補者統一が改憲を阻止しうる院内勢力を形づくることになる。そして、参院選後の総選挙での選挙協力にも道を切り開くことになる。

注目の一人区は全部で32(県数では34)。このところ、5月15日に鹿児島、16日に奈良、そして昨日(18日)和歌山と岩手の野党統一候補擁立の発表があった。残るは3選挙区、三重・香川・佐賀のみである。ここまでくれば、一人区全部で野党統一候補擁立実現の見通しが高くなってきた。がぜん、参院選は伯仲模様、熱を帯びたものとなってきている。

岩手は、民進が生活に譲った形での共闘成立。協議難航した生活と民進両党を説得したのが、間にはいった社民・共産の両党だったと報道されている。「野党共闘は衆参一体で捉えるべきだ」との立場から、生活推薦候補を参院選の共闘候補とし、民進推薦候補を次期衆院選岩手2区候補とする案を提示して、打開につなげたという。これで、野党4党対自公の一騎打ちとなる。注目選挙区の一つである。

和歌山の共闘模様は、やや複雑だ。すんなりの全野党合意ではない。
まず、安全保障関連法廃止を掲げる「市民連合わかやま」の主導で、統一候補者が模索された。「市民連合わかやま」が、各野党に呼びかけた政策の合意は次の3点である。
①安全保障関連法の廃止
②集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回
③日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻す

結局、「市民連合わかやま」は、この3項目の政策で参議院選挙の和歌山選挙区予定候補に由良登信弁護士(元和歌山弁護士会会長)を推薦することを決定し、民進、共産、社民の各野党に「野党統一候補として推薦いただきたい」と申し入れた。市民組織先行での野党への呼びかけは、「この指止まれ方式」だ。

これに対し、共産・社民・生活の3党は、この指にとまって、由良推薦を決めた。共産は独自候補を比例区に回してのこと。民進党県連の、この指への止まり方は微妙だった。自党の参院選予定候補者を「次の衆議院選挙の和歌山2区で候補とする」と「転戦」を発表はしたが、由良候補推薦とはならなかった。「基本的な理念や政策に違和感がある。野党の統一候補とは言えない」として、参議院選挙では、自主投票としたという。

複雑な事情は知り得ないが、民進も既に決めていた候補者を下ろしたのだ。由良候補を、「事実上の野党統一候補」と言ってよいだろう。

私は、由良さんをよく知る一人だ。日弁連の消費者委員会で活動をともにした。信頼のできる人だし、社会的弱者の立場に立つことを鮮明にしている人。到底、自ら国政に出ようというタイプには見えなかったが、この人が選挙に出るなら、なるほどよい候補者だ。人当たりが柔らかで、誰の意見にも穏やかに耳を傾ける。何よりも声がよい。歯切れがよいし、滑舌が滑らかで聞きやすい。そして、話が分かりやすい。説得力がある。
がんばれ、由良さん。がんばれ、和歌山野党共闘。

「野党は共闘」とは、市民の声であり、今や天の声でもある。野党はこの天の声に耳を傾けざるをえない。なんと言っても、これが大義なのだ。この大義が、由良さんのような無所属候補を擁立したのだ。これで、「野党共闘+市民の陣営」対「与党(自公)の陣営」の対立構図が明確になってきた。対立軸は、明文改憲と解釈改憲の是非である。「憲法擁護の、野党+市民」対「改憲の自公」の対立なのだ。

典型例としての愛媛県の例。無所属の候補と、これを擁立した市民組織「安保法制(戦争法)の廃止を求める愛媛の会」と4野党(ここでは、民進、共産、社民、新社会)との合意内容は以下のとおりである。
①憲法違反の安全保障関連法廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を公約する
②安倍政権の打倒をめざす
③自民党改憲案にもとづく憲法改正を阻止する
④立憲主義と民主主義の回復をめざし、その姿勢を貫く

こうして、日本国民は、憲法12条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」を実践し、日本国憲法とその理念を、日々選び取り血肉化しているのだ。憲法を排撃すること厳しいアベ政権が、国民の憲法意識を鍛えているとも言えるだろう。

最後に、もう一度。がんばれ、由良さん。がんばれ全国の野党統一候補者の皆さん、そして共闘を支える野党と市民の皆さん。
(2016年5月19日)

神様から改憲署名をお願いされたら、そりゃ断りづらかろう。

本日(5月4日)の毎日新聞社会面に、憲法記念日関連報道の一つとして「改憲署名 賛成派700万筆集める 氏子を動員」という記事。

「憲法記念日の3日、…憲法改正を目指す団体『美しい日本の憲法をつくる国民の会』は東京都内でイベントを開き、全国で同日までに700万2501筆の改憲賛同署名を集めたと発表した。署名活動の現場を取材すると、地域に根づく神社と氏子組織が活発に動いていた。」

「国民の会」がアベ政権の別働隊として1000万筆を目標に改憲推進署名を行っていること、その署名運動の現場の担い手として神社かフル稼働していることが、予てから話題となっている。

記事は、その現場のひとつを次のように報じている。
「福島県二本松市の隠津島神社は毎年正月、各地区の氏子総代を集めてお札を配る。だが2015年正月は様子が違った。神事の後、安部匡俊宮司がおもむろに憲法の話題を持ち出した。『占領軍に押しつけられた憲法を変えなくてはいけない』。宮司は総代約30人に国民の会の署名用紙を配り、『各戸を回って集めてほしい』と頭を下げたという。」

「安部宮司は今年3月、取材に『福島県神社庁からのお願いで県下の神社がそれぞれ署名を集めている。総代が熱心に回ってくれた集落は集まりが良かった。反対や批判はない』と話した。隠津島神社の氏子は約550戸2000人で世帯主を中心に350筆を集めたという。氏子たちの反応はさまざまだ。

「今年正月には東京都内の神社が境内に署名用紙を置いて話題になった。全国で氏子組織が動いているのかなどについて、全国の神社を統括する宗教法人「神社本庁」(東京都)は取材に『国民の会に協力しているが、詳細は分からない』と説明。

隠津島神社の氏子総代(の一人)は言う。『地元の人が選挙に出ると地縁血縁で後援会に入らざるを得なくなる。署名集めもそれと似ている。ましてや神様からお願いされているようで、断りづらい面があったと思う』」。

この記事には興味が尽きない。神社が改憲運動に大きな役割を果たしているのだ。「神様からお願いされては、改憲署名は断りづらい」という氏子のつぶやきは、まことに言い得て妙。

元来、神社は地縁社会と緊密に結びついてきた。国家神道とは、神社の村落や地縁との結びつきを、意識的に国家権力の統合作用に利用したもの。村の鎮守様を集落共同で崇める精神構造をそのままに、国家の神を国民共同で崇める信仰体系に作り替えたものと言えよう。

いま、国家神道はなくなってはいるが、その基底をなしていた「地縁に支えられた神社組織」は健在である。その神社組織が日本国憲法を敵視して、改憲運動を担って改憲署名運動の中心にある。

見過ごせないのは、次の記事。この神社中心の改憲署名運動は、極めて戦略的に憲法改正の国民投票までを見据えているというのだ。
「署名活動で神社関係者の動きが目立つが、『国民の会』を主導するのは保守系の任意団体『日本会議』だ。」「長野市内で昨年9月に開かれた日本会議の支部総会。東京から来た事務局員は、1000万人を目標とする改憲賛同署名の狙いを説明した」「会場には、長野県内の神社関係者が目立った」「これは請願署名ではない。国民投票という大空中戦で投票を呼びかける名簿になる」「憲法改正は衆参両院3分の2以上の賛成で発議され、国民投票で決まる。国民の会は国民投票の有効投票数を6000万人と想定。署名した1000万人に2人ずつ声かけをさせれば、改正に必要な過半数の3000万票に届くと計算する」。

以下は、毎日新聞3月18日付の記事。いったい、神社界はなぜかくも改憲に熱心なのか。
全国8万社を傘下に置く宗教法人・神社本庁の主張は「大日本帝国憲法は、民主主義的で誇り得る、堂々たる立派な近代的憲法」「帝国憲法の原点に立ち戻り、わが国の国体にふさわしくない条文や文言は改め、…全文見直しを行うのが本筋の改憲のあり方」(神社本庁の政治団体・神道政治連盟発行誌「意」、14年5月15日号)として、憲法1条を改めて天皇を元首とするほか、戦力不保持を定めた9条2項、国の宗教的活動・教育を禁じた20条3項の削除・改正に主眼を置く」という。

毎日は、「神社本庁の一部には、神社存続のために、国家神道の仕組みに戻りたいという心情があるのでは」という識者の意見を紹介している。

日本国憲法の「政教分離原則」とは、政治権力と宗教団体の癒着を許さないということだが、政治権力の側に対する規範と理解されている。「天皇や閣僚はその公的資格をもって靖国神社を参拝してはならない」「県知事は、護国神社に玉串料を奉納してはならない」「市が、地鎮祭を主催してはならない」という具合に、である。その反面、政教分離原則が宗教団体の側に対する規範という意識は希薄だった。神社が署名活動をすること自体は世俗的な政治活動であって、宗教的行為とは言いがたい。しかし、神社がここまでアベ政権と癒着し右翼勢力の中心にあって改憲に熱心であると、「政と教のどちらから歩み寄るにせよ、両者の癒着は防止しなければならない」と言いたくもなる。

憲法20条3項は、次のような書きぶりである。
「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」
つまり、「国及びその機関」に対する命令となっている。「国及びその機関」に対して「宗教的活動を禁止する」という形で、宗教との癒着を防止しているのだ。

しかし、20条第1項の第2文は、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と、宗教団体を主語にした書きぶりになっている。

改憲署名運動が、「国から特権を受け、又は政治上の権力を行使」に当たるものとはにわかには言いがたい。しかし、「帝国憲法の原点に立ち戻ろう」とする宗教団体が、時の権力にここまで擦り寄る政治性の高い改憲署名活動は、戦前の神社の特権と政治的権力を恢復しようという、反憲法的な目的と効果を有するものと捉えうるのではないか。

宗教団体の側からの政教分離違反の問題として考え直してみる必要がありそうではある。
(2016年5月4日)

「文明社会とは価値観を共有し得ない」櫻井よしこの改憲論

日本国憲法は、1946年11月3日に公布され、翌47年5月3日に施行となった。本日は69回目の日本国憲法施行の記念日である。

かつては、政府が憲法記念の祝賀行事を主催した。いま政府の祝賀行事は皆無である。昨今はそれどころではない。憲法擁護義務を負う首相自身が「憲法改正」への積極意欲を口にしてはばからない。政府・与党による憲法と立憲主義攻撃の中で、緊張した雰囲気に包まれた憲法記念日となっている。

日本国憲法は保守政権にとっての厄介者である。アベ政権に至っては天敵扱いである。当然に、この軛から逃れたいという衝動をもっている。

しかし国家権力にとっての憲法とは、常にいやいやながらも従わざるを得ないもの。押しつけられたものだ。戦後連綿と続いてきた保守政権にとって、かつては戦勝国から押しつけられたものではあろうが、いま、アメリカからの憲法遵守要求の圧力はない。代わって国民が、政権に憲法を押しつけている構図となっている。国民の意思や運動が、政権に改憲を許さず、憲法理念の遵守要求圧力となっているのだ。

政権に憲法を押しつけているもの。「むかしGHQ、いま国民」ではないか。日本国憲法は、政権から嫌われたが故に、国民のものになってきたのだ。政権から歓迎される憲法では、存在価値はない。政権から疎まれ、嫌われる憲法であってこそ存在の意味がある。アベ政権から疎まれ、国民から大切にされる憲法。改憲の攻撃を受けつつ、これとせめぎ合い、守り抜く運動の中の憲法。緊張感の中ではあるが、こうして日本国民は日本国憲法を血肉化しているのだと実感する。

69回目の憲法記念日で、政府に代わって憲法攻撃を広言しているのが右翼勢力。

「東京・平河町の砂防会館別館であった改憲派の集会には、約1100人(主催者発表)が出席。有識者でつくる民間憲法臨調と『美しい日本の憲法をつくる国民の会』の共催で、同臨調代表のジャーナリスト、桜井よしこさんは改憲について『緊急事態条項を入れるところから出発するのがよい』と主張した。」(朝日)

その集会に参加した友人から次のメモの報告を受けた。

第18回公開憲法フォーラム・各党に緊急事態に対応する憲法論議を提唱する-すみやかな憲法改正発議の実現を!

まず、櫻井よしこさんの主催者代表挨拶。
国と国民の対立構造はない。
この国には国を縛るルールという考えはない。
3.11で命を救うために動けなかったのは憲法が元凶。
財産権の保障があるから助かる命が救えなかった。
日本らしさ、歴史、伝統、文明、価値観を守るのが憲法。
穏やかで公正な国のあり方。
緊急事態条項から出発しよう

安倍首相のビデオメッセージ
自衛隊が違憲と思われていて遺憾

中曽根康弘氏ビデオメッセージ
厭戦感に対し説得しなければならない

下村博文衆院議員(自民党)
どんな想定外のことでも対応できるように緊急事態条項を作らなければならない

松原仁衆院議員(民進党)
我々が憲法を作ったという事実がない
戦勝国の価値観を受け入れざるを得なかった
憲法の勘違いは近隣に平和を委ねること

江口克彦参院議員(おおさか維新の会)
マッカーサーは日本人は12歳だと言った
12歳の日本人を対象に作った憲法
護憲派は日本人は12歳だと言っているのと同じ
作成された時代で止まっている
法は時代の流れとともに変えていかなければならない
現実に合わない
解釈改憲は時の政権の解釈によることになるのでよくない

中山恭子(日本のこころを大切にする党)
拉致事件などが起きた国にすべてをまかせる、
自分の国を他国の力で守ろうとする甘ったれた国
前文を変えたい

この後緊急事態条項新設の必要性の提言
青年からの意見表明

1000万目標の署名が、5月3日時点で700万筆集まっている。」

メモには、「カルチャーショックでした!」という感想が添えられていた。これが、アベ政権提灯持ちの実態であることを国民は知らねばならない。

櫻井よしこの「あいさつ(要旨)」が産経に紹介されている。そのさわりは、以下のとおり。

「『立憲主義』という言葉に関して、国というものが国民と政府の対立であるかのように捉えられています。しかし、日本国の統治の仕方を振り返ってみるときに、国と国民が対立してきた、そしてその国を縛るための基本ルールが憲法であるというような考え方は、私たちにはなじみません」「憲法を論ずるときに、あたかも政府と国民の対立構造の中でものを考えるのは、間違いであると思います

これには驚いた。およそ、櫻井よしこの頭の中は、「17か条の憲法」のレベルである。あるいは、全体主義国家のイデオロギーで固まっている。思想も表現も自由ではあるが、これでは現代世界の文明国との「価値観の共有」は到底できない。「一番大事なことは、国民の共同体としての国家」と、国家権力と国民との緊張関係をことさらに否定する「思想」は、全体主義や軍事独裁のプロパガンダである。改憲派の本音と危険性を露わにしたことことにおいて、櫻井発言は、まさしく「カルチャーショック!」というべきであろう。

櫻井は、こうも言っている。
「私たちはあの3・11から、何を学んだのでしょうか。十分にお年寄りを助けることができましたでしょうか。体が不自由な人を助け出すことができたでしょうか。…もし、私たちができうることができなかったのであれば、それはなぜだろうかと真剣に考えなければなりません。その問題は憲法に元凶があるのではないでしょうか。緊急の道路を造るのに、荷物、車、がれき、片付けようとしても、現場は戸惑いました。なぜならば、それは憲法で財産権の保障などをしていて、もしかしてこれは憲法に抵触するのではないか。そのような思いを現場の人が現に持ったんです。そのことは、助けることのできる命が助からなかったということをも、意味しています。このようなことを繰り返してはなりません」

恐るべきこじつけの論理、いや非論理というほかはない。この非論理を前提にして、櫻井はこう結論する。

憲法は根本から変えなければなりませんけれども、各政党の最大公約数といってよい緊急事態条項を入れましょうというところから出発するのがよいのではないかと思います。日本国の明るい未来というものを目指して、みんなで頑張って憲法改正を実現していきたいと思います」

これが、本日の改憲派集会の趣旨のようだ。

憲法という存在をどう理解することも、発言することも自由だ。しかし、人類の叡智が長年積み上げてきた思想や経験知の体系に、いささかなりとも敬意があってしかるべきではないか。憲法に関する常識を無視しての、勝手放題の発言に説得力はない。驚くべきは、首相や元首相のメッセージまで寄せられた1000人規模の改憲派集会での主催者代表挨拶の知的レベルがこの程度だということ。

こんなレベルの改憲論だから恐るに足りず、というべきだろうか。それとも、こんなレベルの改憲論が国会内では多数派を形成しているのだから恐るべし、なのだろうか。
(2016年5月3日)

「野党は共闘」という市民の声による、アベ政治を許さない選挙共闘

この夏の参院選は、日本国憲法の命運を大きく左右する。アベ政権の改憲策動実現への第一歩となるか、それとも改憲を阻止することによってさらに国民に定着したものとするのか。

その参院選の日程が、いよいよ「6月22日公示、7月10日投開票」と本決まりの模様。そして、衆院の解散によるダブル選挙はなくなったというのが各紙の報ずるところ。寝たふり解散や抜き打ち選挙もあり得ないではないが、解散権を持つ側にとって、「ダブル選挙必ずしも有利ならず」と読ませる状況があるということだ。

選挙をめぐる関心の焦点は、自公の改憲勢力で、改憲発議のできる3分の2をとれるか否か。それは野党共闘の成否にかかっている。とりわけ、32ある一人区で、どこまで野党統一候補の擁立ができるかがカギとなる。いま、その動きが全国に浸透しつつあるが、改憲派から見て、「野党の選挙共闘恐るべし」なのだろうか、それとも「恐るに足りず」なのだろうか。本日の産経がこの点を語っている。しかも、北海道5区補選の彼らなりの教訓を踏まえてのこと。「2016参院選 本紙シミュレーション」という記事である。

右翼と自民党に支えられた産経である。スポンサーに失礼あっては社運に関わる。徹底して、改憲派の側からの分析であり、表現となっている。それでも、危機感横溢の内容となっている。おそらくは、この危機感が保守層の本音なのではないか。

メインのタイトルは「野党共闘効果は限定的 本紙が前回結果から試算」となっているが、サブのタイトルは、「与党、無党派で苦戦も 閣僚不祥事・失言など影響大」というもの。つまり、「野党統一候補は一部地域で善戦する可能性があるとはいえ、効果は限定的ともいえる」とスポンサーのご機嫌を伺いながらも、「補選の結果をみれば、無党派層の動向いかんでは野党共闘に勢いがつきかねない」「自民党は保守層の支持基盤を強化するとともに、無党派層の取り込みに向けた対策を進める必要がありそうだ」と献策している。この大事な選挙、自民党は安泰なのか、危ういのか。タイトルではなく、記事を読む限りは、大いに危ういのだ。

産経が、「野党共闘ができたとしても効果は限定的」という根拠は、3年前の参院選における有権者の投票行動を基礎としてのもの。これはたいして当てになるものではない。それでも、野党が一本化すれば、それだけで自民党候補に勝つところが7選挙区になるという。

さらに、次の記事が北海道5区補選の保守側の衝撃をよく表現している。
「自民党にとって枕を高くして寝ていられる状況でもない。夏の参院選の帰趨を占うとされた4月の衆院北海道5区補欠選挙で、野党統一候補が自民党公認候補を相手に健闘したからだ。
 補選は参院選の構図とほぼ同じ「与党候補」と「野党統一候補」の一騎打ち。両候補の得票数を市町村別に分析すると、支持政党を持たない無党派層が多い都市部で与党候補の得票数が野党統一候補を下回った。
 共同通信の出口調査では無党派層の約7割が野党候補に投票しており、自民党に大きな衝撃を与えた。自民党は政策がバラバラな「民共合作」を批判する戦術で辛くも制したが、無党派層の投票率が伸びれば与党候補が逆転されることもあり得た。もともと革新系が強いとされる北海道とはいえ、「堅調な内閣支持率のもとで党の支持層を固めれば、無党派層もそれほど取りこぼさない」というセオリーが覆された形だ。
 ある自民党選対幹部は『民進、共産両党にほぼきっちり支持層の票を積み上げられ、結果的に「1+1=1・9」になった。0・1は誤差の範囲内。勝ったものの、恐ろしい結果だ』と警戒感をあらわにする。」

要は、野党共闘のあり方次第で、参院選を制することで改憲を阻止し、アベ政権を窮地に追い込むことは可能なのだ。

誰がどう考えても、主敵・アベ政権を倒すには、野党の選挙共闘しかありえない。その基本枠組みは、既に2月19日にできている。

民主、維新、共産、生活、社民の野党5党(現在は、民主・維新が民進となって4党)の党首は2月19日、安全保障関連法を廃止する2法案を同日共同で衆院に提出するに当たって国会内で会談。国会での対応や国政選挙などで協力を強化していくことなど、下記の4点の共闘項目についてあらためて合意している。

(1)安全保障関連法の廃止と集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の撤回
(2)安倍政権の打倒を目指す
(3)国政選挙で現与党とその補完勢力を少数に追い込む
(4)国会での対応や国政選挙などあらゆる場面で5党のできる限りの協力を行う

本年4月3日の毎日新聞が、その参院選における野党共闘進展の具体的模様を伝えている。見出しは、「野党一本化、15選挙区…32の1人区 本紙調査」というもの。

「夏の参院選に向け、全国で32の「1人区」のうち15選挙区で民進党と共産党を中心にした野党の候補者一本化が確実になったことが分かった。両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、「統一候補」はさらに増える可能性が高い。参院選では1人区の勝敗が選挙戦全体の結果を左右する傾向が強く、2013年の前回参院選で『自民党一強』を選んだ民意が変わるかどうかが注目される。」

同日の毎日記事は、32の「1人区」を野党の選挙協力成否に関して3分している。
合意成立 15区
 青森・宮城・山形・栃木・新潟・福井・山梨・長野・「鳥取島根」・山口・「徳島高知」・長崎・熊本・宮崎・沖縄

協議中 10区
 岩手・秋田・福島・富山・三重・滋賀・和歌山・岡山・佐賀・大分

難航 7区
 群馬・石川・岐阜・奈良・香川・愛媛・鹿児島

そして、昨日(5月1日)の赤旗が、最新情勢を伝えている。
「一人区野党統一候補が大勢に」「政権に危機感」というもの。

「夏の参院選にむけ、32の1人区での野党統一候補の擁立が20選挙区を数え、大勢になりつつあります。『野党と市民・国民』対『自公と補完勢力』という選挙の対決構図が鮮明になるなか、安倍政権・与党は警戒感を募らせています。」という内容。

「前回参院選(2013年)の野党票を合計すると、9選挙区で野党が勝利、3選挙区で接戦となる計算となります。前々回(10年)の野党票合計では、18選挙区で野党が勝利、5選挙区で接戦。市民とともに野党が団結し本気で選挙をたたかえば、自民を負かす可能性がみえています。」

「一方、野党は統一候補擁立とともに政策課題でも一致点を広げています。26日、徳島・高知選挙区で野党4党と大西聡統一候補は、消費税増税反対、TPP(環太平洋連携協定)批准反対、原発に依存しない社会の実現、辺野古新基地建設反対など11項目の共通政策を発表しています。」

赤旗が報じる参院選1人区での野党統一候補は以下のとおり。
 青森    田名部匡代          民進公認
 秋田    松浦大悟           民進公認
 宮城    桜井充             民進公認
 山形    舟山康江            無所属
 栃木    たのべたかお         無所属
 群馬    堀越啓仁           民進公認
 新潟    森裕子             無所属
 長野    杉尾ひでや          民進公認
 山梨    宮沢ゆか           民進公認 
 石川    柴田未来           無所属
 福井    横山龍寛           無所属
 滋賀    林久美子           民進公認
 岡山    黒石健太郎          民進公認
 鳥取・島根 福島浩彦           無所属
 山口    こうけつ厚           無所属
 徳島・高知 大西聡            無所属
 長崎    西岡秀子           民進公認
 宮崎    読谷山洋司          無所属
 熊本    あべ広美           無所属
 沖縄    イハ洋一           オール沖縄

残る一人区(12)は、 岩手 福島 富山 岐阜 三重 奈良 和歌山 香川 愛媛 佐賀 大分 鹿児島である。

日経(4月30日)によれば、「7月の参院選で勝敗のカギを握る32の改選定数1の選挙区を巡り、民進、共産、社民、生活の野党4党は全体の6割を超える20選挙区で統一候補の擁立に合意した。残る12のうち、9選挙区で一本化に向け最終調整に入っている。参院選で「自民1強」に歯止めをかけるには野党共闘の加速が欠かせないと判断。残る選挙区で協議を進め、5月中の決着をめざす」とのことである。

私は、無原則な選挙共闘の相乗効果を安易に信じる立場にはない。しかし、今回参院選に限っては、野党候補統一の相乗効果は大いに期待しうるのではないだろうか。『1+1=2』にとどまらず、『1+1=2.5』にも、あるいは『1+1=3』にもなり得ると思う。

「一人区では、どうせ野党候補に勝ち目はない」という雰囲気は、アンチ・アベ無党派層の投票意欲を著しく殺ぐことになる。ところが、第2位・第3位の候補者の共闘が実現して接戦に持ち込めるとなれば、反アベ・反自民・反公明の無党派層の投票行動へのインセンティブが跳ね上がるのだ。

前回参院選(2013年)は、野党陣営にとっては最悪の事態でのものだった。このときの票の分布を今回も同様と安易に決めつけてはならない。北海道5区で示された接戦状態が、至るところで現出するだろう。そして、その経験は来たるべき総選挙における小選挙区共闘につながることになる。

「野党は共闘」という昨年の戦争法案反対デモのシュプレヒコールが、まだ耳に響いている。あのコールが、ここまで政治を動かしつつあるのだ。もしかしたら、あのデモが、アベ政治を許さず、改憲を阻止することになるのかも知れない。
(2016年5月2日)

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