澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

なぜ、今、安倍晋三告発罪名が背任なのか。

一昨日(1月14日)、学者グループ13名が、代理人弁護士51名を立てて、安倍晋三を東京地検特捜部に告発した。告発罪名は背任罪(刑法247条)。私も告発代理人の一人として,地検に赴き告発状を提出した。
告発状全文は、下記URLを開いてご覧いただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?p=14139

昨日(1月15日)、国会で桜疑惑追及の中心メンバーの一人、宮本徹議員から私の事務所に電話での問合せがあって、澤藤大河弁護士が応接した。

問合せの趣旨は、告発罪名が公職選挙法違反や政治資金規正法違反ではなく、なぜ背任だったのか、ということ。さらには、「法律家グループは、公職選挙法違反や政治資金規正法違反では告発は困難と考えているのか」と疑念あってのことのようだ。なるほど、これまでメディアで発信された見解からは、そのような誤解もありえようか。

改めて、なぜ今桜疑惑で背任告発か。飽くまで現時点での私見だが、整理をしておきたい。

1 ことの本質は、安倍晋三の国民に対する裏切りにある。この国民からの信頼を裏切る行為を法的に表現すれば、背任にほかならない。桜疑惑を犯罪として捉えようとすれば、内閣総理大臣が国民から付託された任務に違背する行為として、背任罪が最も適切なのだ。
森友事件・加計学園事件に続く桜疑惑である。なぜ、国民がこれほどに怒っているのか。それは、内閣総理大臣たる者の国政私物化である。国政私物化とは、国民が信頼してこの人物に権力を預け、国民全体の利益のために適切に行使してくれるものと信頼して権限を与えたにも拘わらず、その人物が国民からの信頼を裏切って私益のために権限を悪用したということである。この国民から付託された信頼を裏切る行為を本質とする犯罪が、背任罪である。背任罪告発は、ことの本質を捉え、国民の怒りの根源を問う告発であると考えられる。

2 にもかかわらず、これまで安倍晋三の背任を意識した議論が少ない。この告発によって、まずは大きく世論にインパクトを与え、世論を動かしたい。単に、「安倍晋三は怪しからん」というだけの漠然とした世論を、「安倍晋三は国民の信頼を裏切った」「これは背任罪に当たる」「背任罪で処罰すべきだ」という具体的な要求の形をもった世論とすることで、政権忖度で及び腰の検察にも本腰を入れさせることが可能となる。検察審査会の議決の勝負になったときには、この世論のありかたが決定的にものをいうことになる。

3 国民の怒りは、国政私物化の安倍晋三に向いている。安倍本人を直撃する告発が本筋であろう。
公職選挙法違反・政治資金規正法違反・公用文書毀棄等々の告発の場合、主犯はそれぞれの事務の担当者とならざるを得ない。報告書の作成者、会計事務責任者、当該文書の作成者等々。そこから、安倍晋三本人の罪責にまで行き着くのが一苦労であり、さらに調査を重ねなければならない。
しかし、背任罪なら、安倍晋三の責任が明らかというべきなのだ。何しろ、「桜を見る会」の主催者であり、内閣府の長として予算執行の責任者でもある。そして、何の功績もなく大量に招待させたり、あるいは招待もなく会に参加させた安倍晋三後援会の主宰者でもあるのだ。両者の立場を兼ねていればこそ、国民に対する信頼を裏切って行政を私物化し国費を私的な利益に流用することができたのだ。

4 しかも、安倍晋三に対する背任告発は、報道された事実だけで完結している。基本的に告発状に記載したもの以上の未解明の事実が必要というわけではない。このことは、野党の責任追及に支障となることがないことを意味している。国会で、安倍晋三やその取り巻きに、「告発されていますから、そのことのお答えは差し控えさせていただきます」という答弁拒否の口実を与えることはありえない。

5 背任罪は、身分犯であり、目的犯であり、財産犯でもある。信任関係違背だけでは犯罪成立とはならない。身分と目的を充足していることには、ほぼ問題がない。
財産犯であるから、被告発人安倍が国に幾らの損害を与えているかが問題となる。これを予算超過額とした。合計、1億5200万円である。
厳密には、招待すべからざる参加者に対する飲食費の特定が必要なのかも知れない。しかし、それは告発者に不可能を強いることになる。参加者名簿を破棄しておいて、資料の不存在を奇貨とする言い逃れは許されない。

このことに関して、昨年(2019年)5月13日の衆議院決算行政監視委員会議事録に、次のような、宮本徹議員の質問と、政府参考人(内閣府大臣官房長)の回答がある。

宮本委員 予算を積んでいる額は、今のお話では、二〇一三年は一千七百十八万円、二〇一四年以降ことしまで一千七百六十六万円。支出を聞いたら、三千万円、それから三千八百万、四千六百万、四千七百万、五千二百万と。ことしはもっとふえていると思います。
  予算よりも支出が多いじゃないですか。これはどこからお金が出てきているんですか。

井野靖久政府参考人(内閣府大臣官房長) お答えいたします。
  桜を見る会につきましては、準備、設営に最低限必要となる経費を前提に予算を計上しているところでございます。
  他方、実際の開催に当たりましては、その時々の情勢を踏まえまして必要な支出を行っておりまして、例えば、金属探知機の設置等のテロ対策強化でありますとか、参加者数に応じた飲食物提供業務経費などがございまして、結果的に予算額を上回る経費がかかっております。
  このように、支出額が予算額を上回った分につきましては、内閣府本府の一般共通経費を活用することにより経費を確保しているところでございます。

宮本委員 情勢によってとかいって招待客をどんどんどんどんふやして、予算にもないようなお金をどこかから流用して使っているという話じゃないですか。とんでもない話じゃないですか。しかも、招待客の基準が全く不透明なんですよね。
  安倍政権を応援している「虎ノ門ニュース」というネット番組があるそうです。レギュラー出演している方がブログに書いておりますが、いつも招待をもらっていたが、ことしは例年と異なり、ネット番組「虎ノ門ニュース」の出演者全員でというお招きだったので、虎ノ門ファミリーの皆さんとともに参加しましたと書いてあります。
  こうやって政権に近い人をどんどんどんどん呼んで参加人数が膨らんで、予算にもないような支出がどんどんどんどんふえているという話じゃないですか。
  こういう支出のふやし方というのは、官房長官、国民の理解は決して得られないんじゃないですか。

菅国務大臣 桜を見る会については、準備、設営に最低限必要と考えられる経費を前提に予算を計上しているところであり、来年度以降についても、これまでの計算上の考え方、実際の支出状況などを踏まえつつ対応していくことになるだろうというふうに思います。
  また、この桜を見る会は、昭和二十七年以来、内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日ごろの御苦労を慰労するとともに、親しく懇談される内閣の公的行事として開催をしているものであり、必要な経費については予算から先ほど言われましたように支出しているということであります。

宮本委員 功労、功績といいますけれども、「虎ノ門ニュース」の皆さんがどういう功績があったのかわからないですけれども、安倍内閣になってから、それまで一万人前後であったのが一万八千二百人にふえているわけですよ、参加者が。
  功労を上げた人が急にふえた、政府の基準からいって、そういうことですか。

○海江田委員長 答弁は。(宮本委員「官房長官です」と呼ぶ)
菅官房長官、指名していますから。もう時間がありません。時間が過ぎておりますので、手短に。

○菅国務大臣 いずれにしても、各府省からの意見を踏まえて、幅広く招待をさせていただいているということであります。

○海江田委員長 もう時間が過ぎていますから、手短に。

宮本委員 こういうやり方は、国民の納得は絶対に得られないですよ。

つまり、最低限必要となる見込みの経費を前提に予算を計上し、支出額が予算額を上回った分については、「一般共通経費」で補填しているという。問題は明らかだ。予算で最低限必要なことはできるのだ。「桜を見る会開催要領」に従って、招待者1万人枠を遵守していれば、「一般共通経費」の「活用」は不要なのだ。最初から「一般共通経費」の「活用」を前提として予算を組むことなどありえないのだから。

国会が承認した予算を漫然と超過することは許されない。どのような事情で、何に、幾らかかったかの特定と、根拠となる証票がなければ、「一般共通経費」からの支出が許されるはずはない。

被告発人安倍晋三が遵守しなけばならないのは、「桜を見る会開催要領」と予算である。日本とは、内閣総理大臣自らが法を守る姿勢をもたない情けない国なのだ。まずはこの人物の背任罪の責任を徹底して追及しよう。

(2020年1月16日)

被告発人安倍晋三に対する「桜疑惑」での背任罪告発状

本日(1月14日)、桜疑惑での安倍晋三に対する告発状を東京地検特捜部に提出した。告発人は、上脇博之さんら憲法専攻者を中心とする研究者13名。代理人は、阪口徳雄君を筆頭とする51名の弁護士。告発罪名は、背任である。

告発人の上脇博之さんと、代理人である阪口徳雄・澤藤統一郎・児玉勇二の3弁護士が午後1時地検に赴き、告発状を提出。その後、記者会見をした。

桜疑惑は多くの犯罪成立の可能性に満ちている。公職選挙法・政治資金規正法・公用文書毀棄等々。もしかしたら、贈収賄までも。森友疑惑の既視感がある。

しかし、多くの場合、安倍晋三本人の罪責にまで行き着くのは一苦労である。背任罪なら、安倍晋三の責任が明らかというべきなのだ。何しろ、「桜を見る会」の主催者であり、内閣府の長として予算執行の責任者でもある。その立場にある者が、国民に対する信頼を裏切って、行政を私物化し、国費を私的な利益に流用して国に損害を与えているのだ。

いかに、告発状本体の全文を掲載する。1月20日から始まる通常国会での安倍内閣追及の一助にもしていただきたい。
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 告 発 状

2020(令和2)年1月14日

東京地方検察庁 検察官 殿

告発人
別紙告発人ら目録記載の上脇博之含む13名
告発人ら代理人
別紙告発人ら代理人目録記載の51名共同代表

弁 護 士   阪 口 徳 雄
弁 護 士   澤 藤 統一郎
弁 護 士   徳 井 義 幸

 〒100-0014  東京都千代田区永田町2丁目3-1
被告発人   安 倍 晋 三

第1 告発の趣旨
被告発人安倍晋三の下記告発事実に記載の所為は、刑法第247条背任罪に該当すると思料しますので、捜査のうえ厳重に処罰されたく告発いたします。

1 告発事実
被告発人は、2015年(平成27年)から2019年(平成31年)まで、内閣総理大臣の地位にあって、下記の「会開催日」記載の各年月日に、新宿御苑(東京都新宿区内藤町11所在)における「桜を見る会」の主催者として、国の事務である「桜を見る会」に関する業務全般を統括・管理し、いずれの会においても予算額として定められた金1766万6000円の範囲で、内閣官房及び内閣府が定める各年の「桜を見る会」開催要領に基づき、「皇族、元皇族、各国大公使等、衆参両院議長及び副議長、最高裁長官、国務大臣、副大臣及び大臣政務官、国会議員、認証官、事務次官及び局長などの一部、都道府県の知事及び議会の議長などの一部、その他各界の代表者等」として制限列挙され合計約1万名と定められていたのであるから、招待者を上記開催要領に従い適正かつ慎重に厳選し、国家財政にいたずらに損害を与えることのないよう当該予算の範囲内で合計約1万名の招待者枠を厳守して当該事務を遂行すべき任務を有するところ、その任務に違背し、主催者であることを奇貨として、自己が主宰する後援会員,自己が所属する与党議員、妻の安倍昭恵夫人などの利益をはかる目的で、招待者枠を恣に大幅に拡大して多数招待して参加させ、しかも後援会が配布する招待状には知人、友人であれば誰でも「コピーして参加出来るよう」安倍後援会の桜を見る会の参加申し込み用紙を大量に配布する等して、下記「会開催日」欄記載の日に各「参加者」欄記載の通り約1万5000人ないし約1万8200人も開催要項に決められた人数を大幅に超過した人数を招待して参加させ、その為の飲食代金等を国に各「支出額」記載の通り支出せしめ、もって国に各「予算超過金額」欄記載の財産上の損害を各「会開催日」欄記載の各日に与えたものである。

会開催日    参加者   予算額   支出額   予算超過額
2015年4月18日 約15000人  17,666,000 38,417,000 20,071,000
2016年4月09日 約16000人 17,666,000 46,391,000 28,725,000
2017年4月15日 約16500人 17,666,000 47,250,000 29,584,000
2018年4月21日 約17500人 17,666,000 52,290,000 34,624,000
2019年4月13日 約18200人 17,666,000 55,187,000 37,521,000

2 罪名及び罰条
背任罪、刑法第247条

第2 告発の理由
1.はじめに
被告発人安倍晋三は、2012(平成24)年12月第二次安倍内閣の組閣以来、四次にわたり内閣を組閣し、既に7年余りの長期間にわたってその政権を組織してきた。昨年11月20日には、内閣総理大臣としての在任日数は2,887日となり、憲政史上最長となっている。この間、森友学園事件、加計学園事件を通じて、「国政の私物化」の強い疑惑をもたれ、国民の強い批判にさらされながらも、自己に関する事実に関しては全て否定し、官僚達はその意向を忖度して、関係証拠を隠匿、隠蔽等するなどして説明責任を果たさず長期政権が維持、存続されてきた。
今回発覚した「桜を見る会」の「私物化」は、この政権の長期化に伴うモラル・ハザードが治癒しがたい事態にまで立ち至っていることを示すものであり、安倍内閣は、国会内やマスコミの追及の前に早くも来年度の「桜を見る会」の開催の中止を発表したが、単なる中止によってモラルハザードは治癒するものではなく、真相の解明と法的責任の明確化によってのみ治癒するものである。
本件告発は、そのことを念願してなされたものである。

 2.「桜を見る会」の概要
(1)この会は、皇族、元皇族、各国大使等、衆議院議長と参議院議長及び両院副議長、最高裁判所長官、国務大臣、副大臣及び大臣政務官、国会議員、認証官、事務次官等及び局長等の一部、都道府県の知事及び議会の議長等の一部、その他各界の代表者等、計約1万人が招待され(甲1)、酒類や菓子、食事が振る舞われる公的行事であり、招待客の飲食費や新宿御苑の入園料は無料であり、これらの費用は税金から拠出される。安倍内閣は「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものであり、意義のあるものと考えている」と答弁している。
(2)この会は内閣総理大臣が主催するが、招待客の選定は各府省庁からの意見を踏まえて内閣官房と内閣府が最終的にとりまとめる(招待者名簿の作成、推薦者名簿の作成)とされるが、実態として、与党国会議員に推薦枠が割り振られているとも言われ、「桜を見る会」の案内状の発送は内閣府が一括し、必ず招待客一人ひとりに宛てて送付を行うとされている。芸能人やスポーツ選手が多数参加する様子が毎年メディアで取り上げられており、テレビ報道でその様子を見たことのある国民も多い。
(3)「桜を見る会」の前身として「観桜会」が戦前にはあった。この観桜会は1881(明治14)年に吹上御所で「観桜御宴」が行われたのを前史とし、1883(明治16)年から1916(大正5)年までは浜離宮、1917(大正6)年から1938(昭和13)年までは新宿御苑に会場を移し、いずれも国際親善を目的として天皇主催の皇室行事として開催されていた。戦後この観桜会を復活させる形で1952(昭和27)年に吉田茂が総理大臣主催の会として始めたのが「桜を見る会」であるとされている。
由緒ある「桜を見る会」を私利私欲のために汚れた行事としているのが被告発人安倍晋三である。

 3.第二次安倍内閣の下での「桜を見る会」の異常な肥大化
(1)戦後の「桜を見る会」は吉田茂によって、内閣総理大臣が主催する公的行事として開催されてきたが、第二次安倍内閣が登場するまでの「桜を見る会」は、その招待客数は計約10,000人前後であり、その予算の規模は1700万円台で、その支出も予算額程度であったと思われる。
回次 開催日  首相   出席者数
51 2004/4/17 小泉純一郎 約8000人
52 2005/4/09 小泉純一郎 約8700人
53 2006/4/15 小泉純一郎 約11000人
54 2007/4/14 安倍晋三  約11000人
55 2008/4/12 福田康夫 約10000人
56 2009/4/18 麻生太郎 約11000人
57 2010/4/17 鳩山由紀夫 約10000人

(2)ところが、第二次安倍内閣成立後に開催された「桜を見る会」の招待者数と支出額は以下のとおりで、明らかに異常な肥大化を遂げてきた。
回次 開催日   首相   招待数   出席者数  支出額
58 2013/4/20 安倍晋三 調査出来ず 約12000人 17,180,000
59 2014/4/12 安倍晋三 約12800人 約14000人 30,053,000
60 2015/4/18 安倍晋三 約13600人 約15000人 38,417,000
61 2016/4/09 安倍晋三 約13600人 約16000人 46,391,000
62 2017/4/15 安倍晋三 約13900人 約16500人 47,250,000
63 2018/4/21 安倍晋三 約15900人 約17500人 52,290,000
64 2019/4/13 安倍晋三 約15400人 約18200人 55,187,000

第二次安倍内閣になって以降の招待者数は、従来の約10,000名前後から2019年4月の「桜を見る会」では15,400名に、また出席者数は招待者数を大幅に上回り約18,200名に、経費の支出額も予算額の1766万6000円の3倍を超える5518万7000円にまでも拡大して肥大化したのである。
この規模の拡大・肥大化の原因は、与党議員への推薦枠の拡大等だけでない。「安倍事務所」が桜を見る会への参加者への申込書に『参加される方はご家族(同居人を含む)、知人、友人の場合は別途用紙でお申し込み下さい(コピーしてご利用下さい)』と招待者を自らの後援会の会員に拡大するだけではなく、無原則にその「知人、友人」の場合でも参加申し込みを認め、しかも申し込み用紙を「コピー」でも良いとした事に起因すると思われる。
(3)安倍晋三による自身の後援会会員850名余りが招待されたと報道されているが、真実は、それ以外に安倍事務所の後援会会員の「知人、友人」が申し込み用紙をコピーして参加申し込みしている者が、大幅に参加して増えたと思われる。

4.「あべ晋三後援会」会員の「桜を見る会」への招待の実態
(1)参議院議員田村智子は、この問題を昨年11月8日の国会質問で取り上げ、その実態を以下の如く告発している(甲2)。
「安倍首相の地元後援会のみなさんを多数招待している」が「友田(有・山口)県議、後援会女性部はどういう功労が認められたのか」などと指摘して開催要項の定める招待者の範囲外の後援会員を選定しているとして、批判した。これに対し大塚幸寬内閣府大臣官房長は「具体的な招待者の推薦にかかる書類は、保存期間1年未満の文書として廃棄している」と述べ、被告発人安倍晋三は「各界で功績、功労のあった方々を招いて開催している。地元には自治会やPTAなどの役員をしている方々もいるので、後援会の方々と重複することも当然ある」と述べた。安倍総理の地元の自治会やPTA役員などが各界の功労者、代表者であるとは到底言い難いものである。そして、この「招待者名簿」は既に廃棄されたとされるが、廃棄は宮本徹衆議院議員よりの資料提出要求のあった昨2019年5月9日当日であったことも発覚している。都合の悪い「招待者名簿」の隠蔽工作と言わざるを得ない(甲3)。
現に各省庁の推薦者名簿は保存されていたのであり、いわゆる政治家枠のもののみが破棄されていた(甲4)。
また、田村議員は「安倍事務所に申し込んだら、内閣府から招待状がきた」という下関の後援会員の証言があると指摘し、「税金の私物化が行われている」と指摘している。さらに、開催前日の後援会員との懇親会に被告発人安倍晋三の妻である安倍昭恵が出席している事を指摘し、「(桜を見る会が)まさに首相の後援会の一大行事になっている」と指摘している。これらのことから野党議員がこれが「事実だとすれば、内閣総理大臣がその地位を利用して個人の後援会活動にそれを利用していたこと。いわば税金で主催するこの国の公的行事で接待していたと受け取られかねない事案だ」と述べているのは当然のことである。
さらに、自由民主党の若林健太元参議院議員はブログで「大臣政務官(在職当時)としてご招待出来る枠を数件頂いたので、後援会役員の方に声を掛けさせて頂いた」「私が許された枠は5組だけ。お世話になっている地元関係者へご案内を申し上げている」と自身の権限で招待したと述べているのである。各界での功績・功労の有無とは無関係に政治家の後援会員へのサービス行事として悪用されている事態を示している。
(2)具体的に見れば、「あべ晋三後援会」は、この「桜を見る会」への後援会員の招待を前日の都内の有名ホテルで開催される前夜祭と称するパーティーへの参加と一体として取り組んでいることも判明しており、この点からも開催要領が招待者の範囲としている各界の功労者・代表者とは無縁の人を自己の後援会会員を招待していることが明白である。
すなわち、安倍晋三事務所が事務所名で「『桜を見る会』のご案内」と題する文書を後援会員に配布し案内したうえ、「出席を希望される方は、2月20日までに別紙申込書に必要な事項をご記入のうえ、安倍事務所または担当者までご連絡ください」との文書を発行し、この文書では前日にホテルニューオータニで関係される「あべ晋三後援会主催前日夕食会」の開催案内をセットで実施していることも明白である(甲5)。
さらに安倍事務所は「内閣府主催『桜を見る会』参加申し込み書」(甲6)、「『桜を見る会』について(ご連絡)」(甲7)、「『桜を見る会』アンケート(4月12日~4月13日)」(甲8)、「桜を見る会「懇親会」についてのお知らせ」(甲9)、「桜を見る会注意点」(甲10)の各文書を後援会員に配布して、「桜を見る会」への参加を案内しているが、これらの文書の記載よりして、「あべ晋三後援会」の主催する後援会行事であるホテルニューオータニで開催される前夜祭やその前に実施されるA、B、Cの三つのコースに分かれた安倍事務所ツアーと内閣総理大臣安倍晋三の主催する「桜を見る会」とは完全にセットになっており、後援会行事と「桜を見る会」は完全に一体化していることが判明する。
また、安倍晋三事務所自身が内閣総理大臣安倍晋三の主催する「桜を見る会」への参加申込をその後援会に配布して、募集しており、「各界の代表者」には該当しない人を開催要領に違反して招待者としていることも歴然としているものである。すなわち、この申込書では「桜を見る会」への参加資格を問題とすることが全くないことが前提となっているのである。
(3)そして、被告発人安倍晋三は、11月20日開催された参議院本会議において、「私自身も事務所から相談を受ければ推薦者についての意見を言うこともあった」として、招待者の選定に直接自ら関与したことを認めた。また当日の国会審議においては、招待者の内訳について各省庁推薦の各界功労者・大使などが6000人、自民党関係者が6000人、官房長官や副総理が1000人、安倍首相よりの推薦が1000人でその中には総理夫人の昭恵氏の推薦分まで含まれていたことが明らかにされている(甲11)。
森友学園事件において総理夫人昭恵氏の関与が重大な疑惑となったが、今日の「桜を見る会」をめぐる問題においても同夫人の関与が明らかにされたのである。同夫人は、私人であると内閣は位置付けており、何ゆえに私人が総理大臣主催の公的行事の招待者を推薦することができるのか、被告発人安倍晋三のモラル・ハザードと「国政の私物化」はここまでの腐敗に至っているのである。
(4)以上の通り、被告発人安倍晋三は「桜を見る会」という内閣総理大臣が主催する公的行事への招待を自己の後援会行事と一体化して実施し、開催要領にも明白に反する招待者の選定などの任務違背のあることは歴然としているものである。

5.背任罪の構成要件該当性
(1)背任罪について
刑法第247条は、「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた」ことを背任罪の構成要件とし、「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と法定刑を定める。
以下に、本件に即して、背任罪の構成要件としての「主体」「図利加害目的」「任務違背」「財産上の損害」について、略述する。
(2)主体
背任罪は身分犯であって、その主体は、「他人のためにその事務を処理する者」である。憲法第15条に基づき、「全体の奉仕者」として公共の利益のために職務を行うべき公務員が、身分犯としての背任罪の主体となり得ることは判例通説の認めるところである。内閣総理大臣の職にある者においてはなお当然というべきで、この点に疑問の余地はない。
本件の場合、「他人」とは国であって、被告発人は、各年の「桜を見る会」の主催者である。同「会」の遂行に関する一切の事務について国の利益のために適切に企画し実行すべき立場にある者として、構成要件における「他人のためにその事務を処理する者」に当たる。
(3)図利加害目的
背任罪は目的犯であって、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要とされる。本件の場合は、「自己若しくは第三者の利益を図る」図利の目的が明白なので、「本人(国)に損害を加える」積極的な加害の目的の有無は問題とならない。被告発人自身の利益、ならびに第三者である被告発人の妻・被告発人の政治的後援会員・被告発人と所属政党を同じくする国会議員らの利益をはかる目的があっての任務違背であることは、自明のことというべきである。
(4)任務違背
背任罪の本質は背信であると説かれる。被告発人の国に対する任務に違背する行為が、構成要件上の犯罪行為である。当該任務は、「法令、予算、通達、定款、内規、契約等」を根拠とする。その根拠にもとづく「任務に反する行為でその行為が、国に財産的損害を生ぜしめる性質のものである限り原則的に任務違背が成立する。」(西田典之著『刑法各論第6版』258頁など)
被告発人は内閣府の長として、本件各「桜を見る会」を企画し実施して必要な経費を支出するに当たっては、「桜を見る会開催要領」(甲1)と予め定められた歳出予算額とを遵守すべき義務を負っていたものである。
歳出予算は拘束力を持ち、いわゆる「超過支出禁止の原則」にしたがって、予算計上額を上回って超過支出することが禁止され、予算外支出も認められない。「会計年度独立の原則」にしたがって、それぞれの会計年度の支出は、その会計年度の収入によって賄われなければならないという原則も予算の拘束力を示す一例である。
にもかかわらず、被告発人は、前記の通り「桜を見る会開催要領」をまったく無視して、招待者の範囲を恣に拡大し、約1万名と限定されていた範囲を大幅に逸脱して無原則に招待者を拡大し、予算の制約を大幅に超えて費用を支出した点において、その任務に違背したものである。
(5)国の財産的損害
被告発人は、総理大臣になって以来、前記の通り毎年「桜を見る会」への招待者数を増やし、国に予算を超過する支出を余儀なくさせて、毎年前記各予算超過額に相当する損害を生じせしめた。その金額の総計は、1億5121万5000円にも及ぶものである。

年月日      予算額      支出額      予算超過額
2014年4月12日 1766・6万円 3005・3万円 1238・7万円
2015年4月18日 1766・6万円 3841・7万円 2075・1万円
2016年4月09日 1766・6万円 4639・1万円 2872・5万円
2017年4月15日 1766・6万円 4725・0万円 2958・4万円
2018年4月21日 1766・6万円 5229・0万円 3462・4万円
2019年4月13日 1766・6万円 5518・7万円 3752・1万円
予算超過総計                  1億5121・5万円

6 結論
以上のとおり、被告発人の行為が背任に該当することは明らかと言わねばならない。しかも、国が支出を余儀なくされた超過支出金額の大半は、「桜を見る会」に本来参加すべき資格なき者に提供された飲食費等としてのもので、被告発人は、本来自らが主宰する後援会が負担すべき支出を国費で賄ったという点において、総理大臣の職務の廉潔性を汚したものである。さらには、公職選挙法や政治資金規正法が重要な理念とする政治に関するカネの流れの透明性を侵害し、総理大臣としての職権を濫用して国政を私物化したと弾劾されるべき行為でもある。議会制民主主義擁護の観点から到底看過し得ない。
この被告発人の長年にわたる国政私物化と,忖度にまみれた安倍内閣のモラルハザードを一掃するには、御庁の巨悪を逃さない強い決意による捜査権限発動が不可欠である。
告発人らは、広範な国民の世論を代表して、本件告発に及んだ。御庁にあっては事案の真相を徹底して解明したうえで、被告発人に対する厳正な処罰をされるよう、強く求めるものである。

証拠目録
1の1. 甲1の1 「桜を見る会」開催要領(平成24年2月28日付)
1の2.  甲1の2 「桜を見る会」開催要領(平成31年1月25日付)
2.甲2    しんぶん赤旗日曜版 2019年11月17日
3.甲3    朝日新聞 2019年11月21日
4.甲4    しんぶん赤旗 2019年11月23日
5.甲5    「桜を見る会」のご案内 平成31年2月吉日 安倍晋三事務所
6.甲6    「内閣府主催『桜を見る会』参加申し込み書」 あべ事務所
7.甲7     「『桜を見る会』について(ご連絡)」
平成31年2月吉日 あべ晋三事務所
8.甲8     「『桜を見る会』アンケート(4月12日~4月13日)」
あべ事務所
9.甲9     「桜を見る会「懇親会」についてのお知らせ」
平成31年3月吉日 安倍晋三事務所
10.甲10    「桜を見る会注意点」
11.甲11     朝日新聞記事 2019年11月2日

添付書類

 1 甲各号証写し       各1通
2 委任状          11通

(2020年1月14日)

下関市でも「安倍派市長によるアベ友優遇疑惑」

通常国会は、1月20日開会の予定。「桜」「カジノ」「イラン」と、政権には頭の痛い問題が山積している。開会直後からの、鋭い野党の切り込みを期待したい。

とりわけ、「桜疑惑」は、追及次第で政権を散らすことになりうる大問題である。首相たる者の行政私物化が歴然だからである。モリ・カケは、いずれも安倍晋三の責任についての疑惑は限りなく濃いものの、安倍自身の具体的関与の点において、直接証拠に欠ける。忖度した部下の責任に転嫁した形となっているのだ。これに比して、「桜を見る会」疑惑については、安倍晋三自身の責任が明確なのだ。

いやしくも首相の地位にある者において、国民のための行政を、安倍晋三個人のための行政にねじ曲げ、国民からの負託に背いたのである。その罪は深く、放置してはならない。適切な責任をとらせなければならない。

本来国民への奉仕者である公務員が、その任務に背き自分の私益のために権限を濫用する行為は、背任に該当する犯罪である。公務員のトップに位置する内閣総理大臣の行政私物化は、国家の私物化に等しい犯罪行為である。こんな人物に権力を委ねることはできない。

昨年11月18日参院予算委での田村智子質問が衝撃的だった。が、それ以後も具体的な問題が次から次への出てきた。安倍晋三の行政私物化の実態が、衆目に曝されつつある。こんな人物が、こんな政治を行っていたのだ。

これまで、安倍晋三の行政私物化の証左として、安倍の選挙区(山口4区≒下関市)内の後援会員の多くが「桜を見る会」に招待されていたことが問題とされてきた。安倍の私的な後援会活動、延いては選挙対策活動を、国費で行っていたということへの批判である。

しかし、どうも漠然と選挙区内の後援会員を招待していたというにとどまらないようなのだ。もう少し生臭い事情があるという。それが下関市長選における論功行賞だというのだ。これは、昨年末の野党の合同ヒアリングでも問題とされていると言うが、「紙の爆弾」2月号に、横田一記者(フリー)が、ルポを書いている。タイトルが、「山口県下関市『桜を見る会』税金私物化―首相の地元選挙対策と特定企業優遇」というもの。その概容をご紹介したい。

 下関市では、安倍首相と宏池会(岸田派)の林芳正・元農水大臣が父親の代からライバル関係で、市長選は両者の代理戦争の様相も呈し、市長ポストの争奪戦を続けてきた。最近三代の下関市長は、以下の通りである。
 江高潔市長(1995年~2009年)安倍派
 中尾昭友市長(09年~17年)林派
 前田晋太郎市長(17年~)安倍派

17年の市長選は、8年も続いた林派の市長ポストを、久々に安倍派奪還の選挙だった。この選挙対策として、あるいは論功行賞として、この選挙の前後に地元選挙民の招待者が膨らんだという。

問題はこの先である。

 なぜ安倍首相は、法律違反のリスクを冒してまで、「桜を見る会」を使って下関市長選などの地元選挙対策に力を入れていったのか。
 江島市長(安倍派)時代には、神戸製鋼所などの安倍首相関連企業が地元大型案件を相次いで受注して談合疑惑も浮上、田辺よし子市議(無所属)らが議会で追及した。
 こうした『アベ友優遇案件』ともいえる談合疑惑で最も有名なのが、安倍首相の出身企業であった神戸製鋼所が市のゴミ処理関連事業を連続受注したことだ。同社は談合情報が飛び交うなか、2000年に「奥山工場焼却施設」(110億円)、そして01年にも新環境センター「リサイクルプラザ」(60億円)を落札した。
 しかも奥山工場の焼却施設は「プラズマ溶融炉」で「焼却灰がリサイクルできる」ということが売りだったが、当時の神戸製鋼所の実績は皆無だったのに、なぜか受注に至った。「癒着ではないか」という声が市民の間から出たのはごく自然のことだった。
 しかもメリットとされた「焼却灰のリサイクル」は実現せずに頓挫。それでもプラズマ溶融炉の維持管理費を関連企業「神鋼ソリューション」に払い続けてきたが、林派の中尾市政になった12年8月に使用停止を決定、電気代などが浮いて経費削減をすることができた。安倍派市長時代には、神戸製鋼所からプラズマ溶融炉を購入しただけでなく、余計な維持管理費も系列企業に支払っていたが、林派市長時代に打ち止めになったということだ。
 もう一つのリサイクルプラザでも「神戸製鋼所に決まった」という談合情報が流れたが、市は入札を強行。情報通り、神戸製鋼所が落札したため、市議会で「官製談合ではないか」と追及された。
 こうした地元での『アベ友優遇政治』への反発が強まり、首相直系の江島氏は不出馬に追い込まれ、09年の下関市長選では、安倍派県議だった新人候補(友田たもつ県議)を林減の中尾市長が破った。ようやく安倍減市長による市政にピリオドが打たれたのだ。
 しかし13年に再選された中尾氏は17年の市長選で安倍首相が全面的に支援した前田氏に僅差で敗北、三選を果たせなかった。

下関市でも、安倍派市長がアベ友企業(神戸製鋼所)優遇の談合疑惑があったというのだ。既にその追及が下関市議会では行われてきたという。この横田一ルポを読むまで私はまったく知らなかった。この際、是非とも国会で徹底的な追及を期待する。日本の政治全体が腐る前に、患部を摘出しなければならない。
(2020年1月5日)

朝日川柳に見る年の瀬の世相

クリスマス・イブとやら。外つ国の神の御子の生誕に何の感興もなく、したがって何の反感もない。万世一系のまがまがしさよりはずっとマシな今宵の穏やかさ。

 イブよりは年の瀬。たまたま10日前、12月14日の「朝日川柳」(山丘春朗選)欄掲載句が、今年を振り返るにまことに的確で秀逸。投句者と選者の才能と炯眼に脱帽するばかり。もっとも、朝日川柳欄、いつもいつも秀逸句ばかりではない。この日の粒ぞろいは神の御業か。野暮を承知で秀句に感想の駄弁を。

 一字から万事が見える桜かな(東京都 鈴木英人)

「一事が万事」というがごとく、「桜」の一字からいろんなことか見えてくる。まずは政権の驕り。そして安倍晋三という人物の薄汚さ。さらにはその取り巻き連の、意地汚さ。嘘と誤魔化しがまかりとおる、この世の情けなさ。おや、「桜を見る会」とは、実は「政権末期の醜態と世相を見る会」であったか。

 信なくも立ち続けてるその不思議(兵庫県 妻鹿信彦)

政治の要諦は「信なくば立たず」である。ところが、この政権に限っては、国民の信をすっかり失ってもなお立ち続けている。満身創痍、膿にまみれ腐敗臭を放ちつつ、なお立ち続けているのだ。これほどの不思議はない。「弁慶の立ち往生」を思い出す。この政権は、もうすぐ立ったまま干からびて枯死に至るのか。

 支持率の落ちて天下の怒気を知る(愛知県 石川国男)

冬枯れの落ち葉が散る。落ちた葉が木枯らしに舞う。この落ち葉こそ我が身の姿。支持率の低落は、モリ・カケ・サクラ・テストと続く疑惑の数々がなせる業。政権トップによる政治の私物化への民の怒りだ。この天下に満ちた怒気が肌に突き刺さる。目に痛い。「桜」疑惑追及をかわしたはずの国会閉幕後にこの世論の風の冷たさ強さ。わびしき、年の暮れ。

 文科省目玉ふたつを落っことし(埼玉県 西村健児)

これこそ秀逸句。ふたつの目玉とは、安倍政権肝いりの大学入試共通テスト改革。英語民間試験の活用と、国語数学に記述式導入の試み。のみならず、下村博文と萩生田光一の二人でもあり、安倍にとっての支持率と改憲気運のふたつでもある。また、行政に対する国民の信頼と安倍政権に対する信任でもある。文科省は、これを見事に、落っことしたのだ。

 首里首里と奏で辺野古を忘れさせ(埼玉県 堀利男)

ウームなるほど。首里首里と世相が騒いでいるのは、政権が奏でる曲に乗せられているのかも知れない。なんとなく、「首里が通れば辺野古が引っ込む」という印象は否めない。ここは、「首里も辺野古も」でなくてはならない。あるいは、「首里はゴーで、辺野古はストップ」、「辺野古建設を止めて、浮いた金を首里に回せ」でなくてはならない。「首里城も辺野古もともに忘れまい」。

 逃げ切った男が仕切る税調か(青森県 大橋誠)

疑惑の人。グレイではない真っ黒けの甘利明経済再生担当相(当時)である。この人も、安倍の側近といわれた人。「その人の安倍との距離は、醜悪さに比例し廉潔さに反比例する」という、アベの法則を地で証明した政治家。思い出させるのは、何ゆえこんなあからさまな政治家の犯罪が不起訴とされた悔しさ。ああ、検察もアベ一強に忖度する存在になりさがったか。その人が、またうごめいている。

 あいにくと川柳はせぬ年忘れ(神奈川県 朝広三猫子)

これが、今年の掉尾を飾るにふさわしい一句。アベも、アソウも、ニカイも、萩生田も下村も、良民どもは年が変われば旧年のできごとはすっぱりと忘れてくれるはずと思い込んでいる。みんな盛大に「忘年会」をやっているだろう。大切なのは、「年忘れ」をして新たな年を迎えることだ。ところがおあいにくにも、「川柳はせぬ年忘れ」なのだ。年の暮れにも初春にも、梅のころにも桜のころも、「桜疑惑」もモリ・カケも、忘れてなるものか。

(2019年12月24日)

ジャパンライフ山口隆祥招待が照らし出す「桜を見る会」の正体

一昨日(12月18日)、「ジャパンライフ全国被害弁護団連絡会」が、安倍晋三の「桜を見る会」疑惑に関連して声明を発し記者会見を行った。「安倍首相は、山口隆祥元会長を「桜を見る会」に招待した経緯を、被害者らに誠意をもって説明すべきだ」とする趣旨。弁護団代表は、さらに同日、国会内で行われた野党の合同ヒアリングにも参加して、被害者の立場から内閣府の担当官に,強い姿勢で「誠実な説明」を求めた。

「桜を見る会」疑惑の本質は、安倍晋三とその取り巻きの行政私物化である。国家の私物化といってもよい。なによりもこのことの重みを明確にしておかねばならない。

安倍晋三とその取り巻きのやったことは、公私混同という醜行である。彼らの頭の中では、「公」と「私」の区別が溶けてなくなっているのだ。アベ後援会の活動も自民党の活動も「私」の分野のものである。本来、すべて私費で行われなければならない。「桜を見る会」は政府の公的な行事である。参加者の選定も、その招待も、会の進行も、本来「公」の活動である。この区別を殊更に無視して、「桜を見る会」という「公」の行事を、「私」の安倍後援会活動の一端に組み込んだ公私混同が、まず糾弾されなければならない。

のみならず、安倍晋三とは内閣総理大臣の座にある者である。言うまでもなく、内閣総理大臣とは公権力のトップに位置する職務である。彼の場合の「公」と「私」との区別は、法の支配や立憲主義と密接に関わる。近代以前には、王や領主の私的な家法が、そのまま国法でもあった。そこでは、権力者の意思はすなわち国の意思であって、権力者の私的行為と公的行為の区別の必要はなかった。しかし、近代国家では、権力者の恣意の振る舞いは許されない。憲法に従い国民の利益のために働く意思と能力を持つ者に、その限りで権力が預けられ、その範囲で権力の行使が許されるのである。近代社会では、権力の私物化など、原理的にあり得ないのだ。

ところが、安倍晋三という人物は、権力を私物化し、「私」の利益のために「公」を利用しているのだ。この人物には国民の利益のために働く誠実さと能力を欠くことにおいて、権力を預かる資格がない。

そのことを確認した上で、「反社の方々」や「甚大な被害を輩出している詐欺師」を「桜を見る会」の招待者としたことの非を、派生問題として把握しなければならない。が、この派生問題は、実はたいへんに大きなインパクトを持っている。

被害者弁護団は、「桜を見る会」の招待状が同社の宣伝や勧誘に利用されたことで「多くの被害者がジャパンライフを信頼できる会社と誤解した」と指摘。長年にわたって悪徳商法を展開してきた山口を功績・功労があった者として招待した経緯について「(安倍首相は)被害者に対し、誠意をもって説明すべき」だと強調している。

ジャパンライフとは大規模な詐欺組織である。山口隆祥とは、その総帥の詐欺師にほかならない。安倍官邸はこの詐欺師を「桜を見る会」に招待し、招待された詐欺師は、総理主催の公的行事に招待されたことを,社会的信用の証しとして最大限に活用した。

現在破産手続き中の同社の負債総額は2405億円、契約者は7000人に上るものの、破産手続き中の同社が被害者に返金できる資金はないという。そこで弁護団は、同社の元顧問らに顧問料の返還を求めるよう管財人に要請し交渉中という。元内閣府官房長・永谷安賢、元特許庁長官・中嶋誠、元科学技術庁科学技術政策研究所長・元日本オリンピック委員会(JOC)理事・佐藤征夫、経済企画庁長官秘書官・松尾篤元、元朝日新聞政治部長・橘優らである。いずれも、被害者を信用させるに足る地位にいた顧問ら。その合計金額が1億4500万円に上るという。

ジャパンライフが悪徳業者として話題に上ってから20年余にもなる。かくも長期に永らえ、かくも甚大な被害に至ったのは、行政や大物政治家との癒着があったからである。多くの天下り官僚を受け入れてもいた。政治資金パーティーには、毎年100万円~200万円を支出していた。この癒着の象徴として、「桜を見る会」の招待がある。

また、同社はこれまで4度の行政処分を受けており、その悪名を内閣府が知らなかったはずはない。それでも、公的に山口に「桜を見る会」の招待状が届き、詐欺商法に利用させた。これについて、内閣府も官邸も可能な限りの調査をし説明をしようという誠実さのカケラもない。名簿の保存がないから、山口を招待したことすら確認できないという、説明拒否に終始する態度なのだ。誰がどのような理由で推薦し、内閣府がどのような根拠で招待に値すると判断したのか、その過程を誠実に調査して明確にすれば、安倍政権の公私混同ぶり、権力者の放埒な振る舞いが白日のもとにあぶりだされるからなのだ。

「桜を見る会」への詐欺師招待は、必ずしも問題の本質ではない。しかし、たいへん分かり易く、行政の私物化がもたらす弊害を明らかにしている。同時に、行政が資料の廃棄を急いだ理由をも教えてくれてもいる。はからずも、詐欺師正体が、「桜を見る会」疑惑の正体を照らし出すものとなっているのだ。
(2019年12月20日)

権力を批判する人、おもねる人。

毎日新聞「松尾貴史のちょっと違和感」が、このところまことに快調。明晰な文章のテンポが小気味よいだけでなく、イラストも秀逸だ。羨ましいほどの才能が、日曜の朝刊を楽しいものにしている。

昨日(12月8日)は「『桜を見る会』疑惑 安倍政権こそ『悪夢』そのもの」というタイトル。冒頭と末尾だけを、引用させていただく。

総理大臣主催の「桜を見る会」の疑惑は、安倍晋三氏のもくろみとは裏腹に、一向に収束する兆しを見せない。違法薬物所持による芸能人の逮捕でニュースや情報番組は一斉にそちらに傾くと思いきや、まさかの検査陰性という事態になって材料が乏しくなったのか、あるいはそれが追い付かないほど次から次へウソと新たな疑惑が浮かび上がってきて、この騒ぎは来年まで尾を引きそうだ。…ウソで蓋(ふた)をしようとすればするほど、つじつまの合わないところが出てきて疑惑が数珠つなぎに引っ張り出される構造になっている。

ウソの上塗りを続けると、さらに大きなウソや滑稽(こっけい)な言い訳を繰り出さざるを得なくなる。しかし、ここまでくると見苦しく人ごとながら恥ずかしい。
そして、おなじみ「困ったときの民主党」も持ち出していた。鳩山由紀夫総理の時も桜を見る会をやっていたということらしい。もし私物化し、反社会的勢力や問題のある人物を呼び、後援会で取りまとめ、資料の隠蔽(いんぺい)などをやっていたのなら、一緒に責任を追及すればいいだけのことだ。日本を良き方向にかじ取りをして浮揚させてくれていればまだマシだけれど、7年間もほしいままにやらかしておいて、「悪夢のような民主党政権」はもう使えないだろう。あの頃より何を良くしてくれましたか。私にとっては「悪夢そのものの安倍政権」である。

彼の言うとおり、「『桜を見る会』の疑惑は、安倍晋三氏のもくろみとは裏腹に、一向に収束する兆しを見せない」し、収束させてはならない。徹底して追及しなければならない。安倍晋三が逃げるのなら、追いかけなければならない。年を越しても、国会の会期をまたいでも。もう少しまともな政権と交替させるまで。

ところが、こういうときには、政権御用達の「御用言論人」がしゃしゃり出て来てゴマを摺る。たとえば、小川榮太郎(2019年12月4日)。読むだに、こちらが恥ずかしい。

【安倍総理の先見の明】に感心している。桜を見る会の中止決断の事だ。余りに早かったので、私は判断尚早と考え、ご本人にもそう申し上げたしコメントでもそう書いた。モリカケに較べてさえ愚の骨頂のから騒ぎがそう続くはずがないと思ったからだ。ところがどうだ。

「やつら」は通常国会でもこのネタで延々と騒ぐつもりでいるらしい。従来の人類の基準では測れない「この人達」の知能レベルと行動パターンを身を以て知悉している安倍総理ならではの早期決断だったわけだ。総理の慧眼、改めて感服した次第。

あるいは、木村太郎。「『桜を見る会』問題は『終わったんじゃないか…審議拒否する野党もどうか』」という具合。

…木村氏は「桜を見る会なんて、もうやめちゃえばいいと思うんですよ、こんなもの。まったく意味のない催しだと思うんで。やめちゃえばいいと思うんですけど」とコメントした。
一方で「だからと言って、桜を見る会を理由に審議拒否する野党もどうかなと思って。特に日米貿易協定って、あんな大事な協定の承認の問題をほとんど審議しないで終わっちゃった。これから、いろんな意味で日本人の生活に影響がある問題をほったらかしにして、やる問題ではなかった」とした。(報知新聞社)

日米貿易協定の審議を実質行わないまま、国会通したのは与党じゃないか。こういうときに、人の中身が顕れる。自分の信念でものを言う人であるのか、政権に忖度して甘い汁を吸おうという人であるのか、と。

(2019年12月9日)

森友事件は終わってない。首相夫妻の国政私物化を忘れてはならない。

本日は、森友関連事件について要請に最高検へ。下記の要請書を持参した。

森友事件とは、その本質は最高権力者の国政私物化にある。その国政私物化が刑事事件として表面化したものが、近畿財務局の国有地8億円値引き問題である。払い下げの相手は、首相の妻が名誉校長の地位にあった私立小学校経営者。問題の土地はその小学校の敷地で、学校が完成すれば、首相夫妻好みの極端な右翼教育が行われるはずであった。

幸いにことは露見して、この学校建設計画は頓挫し、首相夫妻への批判が巻きおこった。しかし、首相の下僕となった官僚機構は、記録を隠蔽し、改竄して、首相を国会の追及からかばった。

そこで、刑事司法の出番となった。多くの刑事告発が申し立てられた。被告発人を近畿財務局の担当職員とする背任罪や、この追及をかわした高級官僚の公文書毀棄・変造、あるいは証拠隠滅など。

通常であれば、起訴されて当然のところが、大阪地検特捜部はこれを全部不起訴処分とした。こうして、舞台は検察審査会に移り、今年(2019年)3月にその一部が「不起訴不当」の議決となった。

現在、大阪地検特捜部が、再捜査をしているが、首相の忖度で固められた政治や行政の雰囲気の中で、政治的な圧力を排して検察の使命を果たすことができるだろうか。

この事件の処分は特捜限りではできない。大阪地検でも判断はできまい。常識的に、最高検の判断に依らざるを得ないだろうとの印象をもっている。ぜひとも、最高検には、大阪地検特捜部に対する「政治的圧力に負けずに、検察の使命に徹して、厳正な捜査を遂げて、起訴に至るよう」指導を求めたい。無理に、起訴せよというのではない。大阪検察審査会も、起訴あってしかるべきと明言している通り、不当な政治的影響なければ当然に起訴となるべき事案なのだ。

最高検への要請の後、司法記者クラブで記者会見。「森友事件は終わっていない。忘れてはならない」と。

(2019年7月17日・連続更新2298日)

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「森友関連告発事件」についての指導の要請

2019年7月17日

検事総長 稲田伸夫殿

当該事件告発人  醍醐聡外 計19名

同告発人ら代理人弁護士  澤藤統一郎

同            杉浦ひとみ

同            佐藤 真理

同            澤藤 大河

 

(連絡先 〒113-0033 東京都文京区本郷5丁目22番12号

                  弁護士 澤 藤 大 河)

 

指導を求める告発事件(以下「本件告発事件」)の特定と経過

2017年10月16日 東京地検に告発(被疑者・池田靖 罪名・背任)

同 年10月27 日 大阪地検へ移送

2018年 5月31日 大阪地検検察官不起訴処分(平成29年検第17422号)

(なお、関連の告発被疑事実について被疑者38人全員を不起訴)

同 年 6月 4 日 大阪検察審査会に審査申立

同 年 6月 5日 大阪第一検察審査会審査申立受理(平成30年検第13号)

2019年3月15日 大阪第一検察審査会(以下、単に「検察審査会」)

が「不起訴不当」の議決

2019年3月29日 検察審査会上記議決要旨を通知

現在、大阪地検特捜部において再捜査中

要請の趣旨

  本件告発事件について、貴職より、最高検察庁のしかるべき機関を通じて、再捜査担当の大阪地検検察官に対して、一切の政治的思惑を排して、刑事訴訟法の原則と検察官のあるべき使命に従い、十全の捜査を遂げた上、起訴処分に至るべく指導を求める。

要請の理由

1 本件告発被疑事件(背任)の概要

被疑者池田靖は、財務省近畿財務局管財部統括国有財産管理官の任にあって、国に対して、国有財産法、財政法等の規定に基づき、同財務局管内の国有地を売却するに当たっては売却対象の土地の価格について十分な調査をして適正な価格で売却し国が損害を被ることがないようにすべき任務があるのに、その任務に背き、学校法人森友学園理事長らと共謀の上、同学園の利益を図り、かつ、国に損害を加える目的で、大阪府豊中市所在の国有地の売却価格1億3400万円が同土地の更地価格9億5600万円に比して著しく低廉な価格であることを知りながら、2016年6月20日、同土地を同学園に1億3400万円で売却し、もって国に財産上の損害を加えたものである。

2 検察審査会不起訴不当議決の留意点

(1)大阪地検検察官の不起訴処分を不当とした検察審査会の議決要旨は本件背任の嫌疑の核心をなす地下埋設物の撤去費用の見積もりに疑問を呈し、「本件と利害関係のない他の建設業者のみならず、教育あるいは保健機関の意見も参考にし客観性のある試算を行うなど廃棄物の撤去処理費用について、さらに捜査を尽くすべきではないかと考える」と指摘している。

また、8億円余の値引きの根拠とされた森友学園側からの損賠賠償の提訴の虞について、学園側の代理人弁護士でさえ、「国を相手にする訴訟は相当厳しいものになると認識していたことがうかがえる」、「そもそも、・・・・本件で問題とされる生活ゴミは〔地下埋設物撤去等工事〕契約の対象外とされていたことを考慮すれば、その責任の全てを国が負うと考えるのは納得できない」と厳しい疑問を投げかけている。

(2) 大阪地検検察官の不起訴処分を不当と議決した検察審査会議決要旨の理由中に、以下の異例の記載がある。

「背任罪に関しては、検察官において、政治家らによる働きかけの影響の有無につき検討をしていることから付言すると、確かに本件不起訴記録中の被疑者の供述などからは、森友学園側の働きかけによる政治家の秘書等から財務省に対する陳情、問い合わせ等があった事実を受け近財を含む国側がこれに応じて何らかの便宜を図ったことがうかがえる証拠は認めなかった。しかし、本件不起訴記録にある証拠のみでは、政治家らによる働きかけの影響の有無については判断しがたく、この点についても検察官は、さらに捜査を尽くすべきと考える。」

「以上のことを踏まえ、当検察審査会の判断としては、上記趣旨のとおり議決するものであるが、最後に付言するとすれば、背任罪について、本件のような社会的に注目を集めた被疑事件については、公開の法廷という場で事実関係を明らかにすべく公訴を提起する意義は大きいのではないかと考える。

従って、本件の被疑者中、その不起訴処分を不当とした者については、検察官において、更なる捜査を尽くし、その上での再考を要請する。」

(3) 即ち、検察審査会も、審査に顕出された資料の範囲では、「近畿財務局を含む国側が、政治家の秘書等から財務省に対する陳情等に応じて、何らかの便宜を図ったことがうかがうべき証拠は認めなかった。」とは言う。

しかし、明らかに同議決は、疑惑を否定し得ないものとしている。検察官が作成した「本件不起訴記録にある証拠のみでは、政治家らによる働きかけの影響の有無については判断しがた(い)」というのである。

このことを前提に、検察審査会は、背任の罪体についてではなく、背任の動機としての「政治家らによる働きかけの影響」の有無、具体的には「近畿財務局を含む国側が、政治家の秘書等から財務省に対する陳情等に応じて、何らかの便宜を図ったこと」についても、「検察官は、さらに捜査を尽くすべきと考える。」と明言しているのである。このことの意味は大きい。

(4) 検察審査会の本件議決が、わざわざ「本件のような社会的に注目を集めた被疑事件については、公開の法廷という場で事実関係を明らかにすべく公訴を提起する意義は大きいのではないかと考える。」というとおり、本件被疑事実には、国民誰もが大きく注目している。国民誰もが、徹底して事実関係を解明するために起訴あってしかるべきと考えてもいる。

その注目の理由は、特定の公務員ひとりの犯罪の成否にあるのではなく、厳正であるべき国有財産の管理が、内閣総理大臣の任にある政治家と、その妻が介在することによって、「只同然の価格で」払い下げられたのではないかという疑惑にある。公正で平等であるべき行政が、有力政治家によって私物化され、ゆがめられたのではないかという疑惑である。

(5) 検察審査会の本件議決は、敢えて明言を避けてはいるものの、上記の疑惑を払拭し得ないものとしている。婉曲には、「政治家らによる働きかけの影響」によって、本件背任行為がなされたことの疑惑の存在を肯定し、これを前提としての立論をしている。留意すべきは、その点についての捜査の不徹底が、本件の捜査と処分をした検察官のありかたの批判ともなっていることである。

即ち、「近畿財務局を含む国側」だけでなく、「公正であるべき検察」も、「政治家らによる働きかけの影響」をうけているのではないかとする疑惑が示唆されているといってよい。

検察審査会の本件議決は、確かに「本件不起訴記録にある証拠のみでは、政治家らによる働きかけの影響の有無については判断しがた(い)」とはいう。しかし、その点に関する検察の捜査の不徹底を批判して、「検察官は、さらに捜査を尽くすべきと考える」と明言しているのである。

いま、政権中枢は、行政私物化の疑念のみならず、司法の一翼を担う検察の私物化疑惑をも抱えるに至った。

本件議決の指摘はそう読まなければならない。

(6) なお、以上の検察審査会の判断は、罪体自体の捜査については、これを不十分と指摘するところはない。捜査報告書に記載された事実関係の把握によって、被疑者の背任罪の成立は当然に認められるとしているものである。

しかも、背任罪の被害額が8億円余と巨額であるだけでなく、「この上なく社会的な注目を集めた被疑事件」でもある。当然に、公開法廷において事実関係を明らかにすべく公訴提起あって然るべき事件であるにもかかわらず、不起訴とされた。森友関連諸事件での被告発者は計38名にのぼるところ、その全員が全被疑事実について不起訴となった。国民の目からは、政治的背景なくしてはあり得ない処分であり、検察自らが、政権へのおもねりによる処分との疑惑を招いたものと指摘せざるを得ない。

3 貴職に適正な指導を求める理由

検察の使命は、厳正公平・不偏不党を旨とし、迅速適正に、犯罪の真相を解明し、罰すべきものがあれば、これに対して公訴を提起し、公開の法廷で事案を明らかにするとともに、被告人の人権を保障しつつ、適正な刑罰が科されるように公判を維持することにある。そして、検察庁においては、国家意思の統一の保持のため、検事総長を頂点とする一体の組織として活動することが要請される(「検察官同一体の原則」)。この検察官一体の原則は、国家刑罰権の発動を促す個々の検察官の判断における公平を図ることのほか、厳正公平・不偏不党を貫くことが困難な権力との対峙の場面では、検事総長が検察庁を統一することが求められるのである。このことによって、あるべき社会秩序を維持し、公平で安全・安心な社会の実現への貢献が期待されるところである。そのことの徹底によって、国民は検察を信頼しうることになる。

ところで、検察の使命である厳正公平・不偏不党を侵害する最大のものは、政治権力であり行政権力である。検察の使命は、このような巨悪と対峙し、一歩も退かずに、「巨悪を眠らせない」姿勢を貫くところにあり、そのことによって、検察は国民の信頼を勝ちうることが可能となる。

検察は、はたしていま、そのような国民の期待に応え得ているだろうか。国民の付託に応えるよう努力しているとの信頼を勝ち得ているだろうか。

残念ながら、巨悪は枕を高くして眠っているのではないか。少なくとも、そのような疑惑を払拭し得ていない。

本件告発人らは、主権者国民を代表する立場において、貴職に要請を申しあげたい。

本件告発事件の再捜査は、大阪地検特捜部における担当検察官によって進展しているが、その捜査の徹底と、不起訴処分を覆しての起訴処分は、大阪地検限りでの判断ではなしがたいものと考えざるをえない。既述のとおり、本件の政治的背景には厳しいものがあり、処分以前に最高検の指導や指示を仰ぐことになると予想されるところである。

この点について、貴職より、最高検察庁のしかるべき機関を通じて、再捜査担当の大阪地検検察官に対して、一切の政治的忖度も思惑も排して、刑事訴訟法の原則と検察官のあるべき使命に従い、厳正な捜査を遂げた上、起訴処分に至るべく指導を尽くされたい。

とりわけ、検察審査会の本件議決が指摘するところに十分な配慮をして民意に応え、公平・不偏不党を旨とする検察の姿勢を貫き、国民の信頼を勝ち得る努力を通じての成果を上げるよう、衷心からの期待と要請を申しあげる。

以 上

「この学校敷地には鉛やヒ素が含まれ、たとえ浄化後でも公開されると事業経営に支障をきたすことになる。だから、当然秘密にしておかなくてはならない」 ー これって、裁判所が言うべきことだろうか?

5月30日、森友学園事件の情報公開請求不開示問題で、木村真・大阪府豊中市議が国に11万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。大阪地裁・松永栄治裁判長は国に3万3000円の支払いを命じる判決を言い渡した。請求の一部とはいえ、国(近畿財務局)の情報公開請求に対する不開示(後に不開示処分を撤回している)の違法を認めた判決である。歴然たる国の敗訴、木村真市議の勝訴。とは言え、原告側の顔色は冴えない。スッキリしないのだ。

朝日は、一面トップにこの記事を掲載した。裁判所による不開示違法の判断にスポットを当てて紹介している。まずは、当然の姿勢。その判決評価の垂れ幕の写真が、微妙。一本が「勝訴」、そしてもう一本が「不当判決」。勝訴はしたものの、スッキリ勝ちきっていない。判決理由中に「不当」な判断を含む、積極消極評価両様の判決ということなのだ。

以下は、朝日が掲載する判決要旨の紹介。

学校法人森友学園(大阪市)の国有地取引をめぐる問題で、学園への国有地売却額を一時不開示とされ精神的苦痛を受けたとして、学校法人森友学園(大阪市)の国有地取引をめぐり、売却額の一時不開示を違法とした30日の大阪地裁判決の要旨は次の通り。

【売却額の一時不開示は違法か】
 情報公開法は、法人や個人の情報のうち、公にすることで権利や競争上の地位、正当な利益を害するおそれがあるものを不開示情報と定める。「単に他人に知られたくない」というだけでは足りない。権利や地位を害するおそれが客観的に認められる必要がある。
 財政法の趣旨は、国有財産の適切な管理を求めることだ。当時、国有財産を公共随契などで貸したり、売ったりした場合、原則として契約金額などを財務局のホームページで公表することになっていた。法人などが国有地を買い受ける際、売却額が公表されることが想定されていた。
 そうすると、国有地の売却額は基本的に公表されるべき情報にあたり、公にされることで法人などが利益を害されるおそれがあっても、情報公開法の不開示情報には該当しない。
 国は、開示すると
 (1)値引きを必要とするいわく付きの土地だと推察されるおそれがある
 (2)小学校を運営する森友学園の信用を低下させ、小学校経営における経営上の地位や事業運営上の利益を侵害する恐れがある――などと主張する。
 だが、土地価格の開示によってなぜ森友学園の信用が害されるのか、国の主張は論理があいまいで、十分な根拠は見いだしがたい。
 2013~16年度に公共随契の方法で国有地の売り払いがされた契約104件のうち、契約金額が非公表とされた事例は本件だけだった。近畿財務局が職務上の注意義務を尽くしていれば、売却額が不開示情報に該当しないことは容易に判断できた。漫然と不開示の判断をしたことは、国家賠償法上、違法だ。

【ごみなどにかかわる特約条項の一時不開示は違法か】
 特約条項には、《森友学園が小学校敷地として取得した土地に、地下数十センチから3メートルまでの間に廃材やごみなどがあり、鉛やヒ素が含まれることが具体的に記されている》。開示されると、これらを了承して買ったことが具体的に明らかになる。
 土壌汚染があった土地の小学校という印象を保護者に与え、有害物質で健康を害する懸念を生じさせるおそれがある。浄化後でも強い心理的嫌悪感を与える。小学校経営における競争上の地位や、事業運営上の利益を害するおそれがある。
 不開示情報とした判断には合理的な根拠があり、違法とは認められない。

【損害額】
 原告は、不開示処分を受けたことで、処分取り消しを求める訴えを起こさざるを得なかった。その後に国や報道機関を通じて不開示処分が公開され、新たに開示処分を受けたことを考慮しても、適正な開示決定を受けるという人格的な利益が違法に侵害された。事案の内容や性質、経緯などに照らせば、損害額は3万円、弁護士費用は3千円と認めるのが相当だ。

不開示の違法性については、《売却額の一時不開示》と、《ごみなどにかかわる特約条項についての一時不開示》の2点が争われた。判決は、前者については原告の主張のとおり違法と認定したが、後者については「不開示情報とした判断には合理的な根拠があり、違法とは認められない」というのだ。おかしいよ。どうしたって納得できるはずがない。

判決によれば、特約条項には、《小学校敷地として取得した土地に、地下数十センチから3メートルまでの間に廃材やごみなどがあり、鉛やヒ素が含まれることが具体的に記されている》のだという。そんなことを隠しておいていいのか。判決は、「鉛やヒ素が含まれることが具体的に記されている土地であることが公開されると、たとえ、浄化後であっても事業運営上の利益を害するおそれがある」。だから、公開しないことに合理的な理由があるというのだ。

判決の言うのはこういうこと。「せっかく臭い物に蓋をしたのだ。何があるのか分からぬよう、しっかりと蓋を閉めて秘密にしておくべきことには合理性がある」。いや、この比喩では足りない。「売買の対象は、毒性のある物質を含む危険な土地で、子どもたちの健康を損なうおそれがある。たとえ浄化後といえども、子どもの親などに知られては買い主の事業経営に支障をきたすことになる。だから、秘密にすべきものである。」

裁判所は「校舎の敷地に鉛やヒ素が含まれること(あるいは、含まれていたこと)は、親も世間も知らなくてもよい。知らせなくてもよい」と言っているのだ。これでよいはずがないではないか。

もちろん、スッキリしないのはそれだけの理由ではない。相澤冬樹記者(大阪日日新聞・元NHK)は、次のように報じている。

判決後、裁判所内の記者クラブで会見を行った木村さんは、納得できない思いを訴えた。
「判決は『相当量のごみがあった』と言ってるけど、違うでしょ。あの国有地には第1のごみと第2のごみがあるんです。こんなの森友問題の基本中の基本だから。あの国有地には元々ごみがあったけど、それは浅いところにあるごみで、前からわかっていて問題にならない(=第1のごみ)。ところが地中深くから新たなごみが出てきたということになって、それが値引きの根拠にされた(=第2のごみ)。でも、そんな深いところのごみはないんですよ。それはあらゆる証拠が示している。なのにこの裁判長はこの2つをいっしょくたにして『相当量のごみがあった』なんて言っている。全く納得できない。こんな判決あり得ません」

もう一つ、私は問題としたい。「弁護士費用3000円」とはいったい何だ。いつまでも、こんな浮き世離れの賠償額でよいのだろうか。少なくとも、国家賠償請求訴訟の場合、もう少し常識的な認容額であってしかるべきではないか。

朝日のトップを飾るだけの意義のある判決。原告の木村市議は、情報公開請求も、国家賠償訴訟(提訴時は、開示処分を求める請求)の提起も、私益のために行ったのではない。勝訴をしても認容額が3万3000円では、行政を糺そうというモチべーションに欠けることになりはしないか。弁護士なしでは事実上できない訴訟だが、その「弁護士費用は3千円と認めるのが相当」はあまりに、情けない。対等・平等のはずの国側には、指定代理人も弁護士もカネの心配なく、配置することができるのだ。
(2019年6月2日)

森友問題、告発人ら大阪地検特捜部に厳正再捜査と起訴を要請

昨日(5月10日)、森友問題での刑事告発人らや代理人弁護士らが、大阪地検特捜部の担当検察官と面会し、厳正な再捜査と起訴を要望した。

学校法人「森友学園」への国有地タダ同然売却問題、そしてそのことを隠蔽するための決裁文書改ざんや国会答弁問題で相次いだ告発がすべて不起訴となった。この安倍政権への忖度処分を不服として、大阪検察審査会への審査申立がなされ、その一部が「不起訴不当」の議決となった。大阪地検(特捜部)は、誠実に再捜査を遂げ、今度こそ政権への思惑を捨てて、厳正に起訴をすべきである。

共同配信記事は、こう伝えている。
 大阪第1検察審査会が佐川宣寿前国税庁長官ら10人について不起訴不当と議決したことを受け、審査を申し立てていた醍醐聡東大名誉教授らは10日、大阪地検特捜部検事と面会し、厳正な再捜査と起訴を求める文書を出した。
 約40分間の面会終了後、大阪市で報道陣の取材に応じた醍醐氏は「地検の不起訴理由と検審の議決内容は著しく食い違う」と強調。検事は醍醐氏らに対し「ご要望として承る」と応じたという。

醍醐さんの報告では、短い時間に準備した資料を検事に提示して、4点を強調して発言したとのこと。その中心は下記のとおり。

「安倍首相は2017年3月6日の参院予算委における答弁で『ゴミを取ることを前提に1億数千万円で売った」と答弁した。しかし、森友学園は埋設物をそのままにして校舎を完成した。特捜は安倍首相と、開学に向けた森友の工事の実態の重大な食い違いに強い関心を持って再捜査に当たると考えてよいか?」また、「上記の発言の中で安倍首相は何度も『ゴミがあるからディスカウントした』『瑕疵担保責任というのはそういうこと・・・』と発言している。専門家の特捜部が瑕疵の対象物を『ゴミ』などと世間話のレベルで捉えておられるとは、無論思わないが、国会でもマスコミでも、ゴミが、ゴミが、と語られてきた。私たちがこれまでに提出した申入文書で指摘したように、瑕疵担保責任が問題になる地下埋設物とは、買い受けた土地を目的の用に供する工事をする際に障害となる物を指すという解釈は判例でも定着している。特捜部は、瑕疵担保責任をこのような厳密な法的意味で解釈していると理解してよいか?」(以上は、参議院予算委の議事録の該当箇所を示しての発言)

これに対する検事の応答は、「ここで、こちらの考えを話すのは控える。ご要望として受け取める。」「4月1日にみなさんが提出された申入書は私も受け取っている。その他のことはご要望として受け止める。」というものだったという。

また、NHK記者時代に事件を追っていた相澤冬樹さんが次のように、報告している。

 森友事件を一貫して追及してきた大阪の阪口徳雄弁護士は、応対する蜂須賀検事に見覚えがあった。12年前、奈良県生駒市の前市長が逮捕される背任事件があった。前市長が現職当時、タダ同然の山林を親しい業者から市の公社を使って1億3480万円で買い上げた。これが市に損害を与えた背任として立件された。阪口弁護士は市長が替わった後の生駒市の顧問で、新市長の意向を受けて特捜部にこの件を持ち込んだ。これを受けて大阪地検特捜部で捜査にあたったのが蜂須賀検事だったのだ。

阪口弁護士)あなた、生駒市の背任事件を担当したんじゃないですか?
蜂須賀検事)よく覚えてますねえ。
阪口弁護士)私は生駒市の顧問としてあの事件を特捜部に持ち込んだんですよ。たしかあのころお会いした記憶がある。
蜂須賀検事)あの事件は私も記憶に残っています。
阪口弁護士)あのころ、奈良市の市議会議長が贈賄で逮捕される事件もあったでしょう。あれも私が持ち込んだんですよ。
蜂須賀検事)あれも私が担当しました。
阪口弁護士)あのころの大阪特捜は頑張ってましたねえ。

 この皮肉に、蜂須賀検事はただ笑っているだけだったが、雰囲気は和やかだった。阪口弁護士としては、かつて公職者の背任を手がけた検事に再び頑張ってほしいという思いもあった。申し入れはそこからが本題だ。ここから阪口弁護士は厳しく迫った。

・大阪地検がこれまで政治家や公務員の犯罪に毅然と対処し起訴に踏み切ったことを関西の我々は知っているし、期待もしてきた。
・しかし検察審査会は今回の検察の捜査について極めて恣意的で不十分だと指摘している。
・有権者から無作為に選ばれた委員がこのように判断したということは、これが国民の大多数の意向を反映したものだ。
・法律的にも、この事件は起訴して無罪になることなど、およそあり得ない。むしろ検察の不起訴の理由の方がとってつけた屁理屈としか思えない。
・検察が適当にお茶を濁す再捜査をして、またも不起訴にするなら、国民の信頼は喪失されるだろう。政権の関係者が関与するとして注目されるだけに、なおさらである。
・検察審査会の「不起訴不当」の議決は多くの国民の検察に対する批判、叱咤激励と受けとめ、徹底的に再捜査して起訴するよう強く要請する。

 同じく申し入れを行った醍醐聰東大名誉教授は安倍首相の答弁の齟齬を指摘して捜査を求めた。
・森友事件が発覚した2年前の当初、安倍首相は国会で問題の国有地について「ごみを撤去することを前提に(8億円あまりを値引きして)1億3400万円で売却した」と答弁している。実際にはごみは撤去されていないのだから現実との間に重大な齟齬がある。
・あの土地にごみがあるというが、工事の妨げになるようなごみがなければ値引きの理由にはならない。実際にはごみは撤去されていない。
・「土地の瑕疵(欠陥)を見つけて価値を下げていきたい(値下げしたい)」などと、財務局側が値引きが背任にあたるという認識を持っていたことを示す証拠がある。

 特捜部の蜂須賀検事は申し入れに対し、次のように答えたという。
・検察審査会の議決が出たことは重々承知しています。議決書を踏まえて適正かつ慎重に再捜査します。
・ご指摘の点はご要望として受けとめました。ここで我々がどうかはお答えすることができません。

 ほぼこの答えを繰り返すだけだった。申し入れの参加者は、検察がひたすら慎重な姿勢に終始し、揚げ足をとられないようにしていると感じた。

 国家公務員がなぜこれほどの不正行為に及んだのか? 政権や政治家に忖度したのか? 政権側の関与はないのか?小学校の名誉校長を務めていた安倍昭恵首相夫人の存在はどのように影響したのか?

 すべては当事者を起訴しなければ法廷で明らかにされない。そして起訴されるかどうかは、国民世論が高まるかどうか、国民1人1人の声が大阪地検に届くかどうかにかかっている。森友事件を追及してきた阪口徳雄弁護士は、そう考えている。

共同通信配信
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/418296

「関西NEWS WEB」(動画付き)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20190510/0015393.html

相澤冬樹さん記事
https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20190510-00125569

森友問題を「再捜査し起訴を」不起訴不当で弁護士ら要望
https://www.asahi.com/articles/ASM5B4RKKM5BPTIL00Z.html

なお、醍醐さんらが提出した、申し入れ書は以下のとおり。
**************************************************************************

 2019年5月10日

大阪地方検察庁特捜部 御中

申 入 書

大阪第一検察審査会の議決を真摯に受け止め、背任の嫌疑について厳正な再捜査のうえ、起訴処分を求める

平成30年大阪第一検察審査会審査事件(申立)第13号

審査申立人    醍醐 聰 他18名

申立人ら代理人弁 護 士  澤 藤 統一郎
同             佐 藤 真 理
同             杉 浦 ひとみ
同              澤 藤 大 河

被疑者 池田 靖(近畿財務局管財部統括国有財産管理官・当時)

私たちは本年4月1日、貴庁に対し、「大阪第一検察審査会の議決を真摯に受け止め、真相解明のために厳正な再捜査と起訴処分を要望します」と題した申入書を提出しました。
貴庁特捜部が、森友学園への国有地売却に係る背任の嫌疑につき、大阪第一検察審査会(以下、「大阪検審」)が示した不起訴不当の議決を受けて再捜査をされるにあたり、改めて申入れをいたします。

1. 本件土地には値引きで補償すべき法的意味での瑕疵は実在しなかったこと、その事実を被疑者は十分認識していたことを徹底究明されるよう求める。

 貴庁は、本件土地売買契約書に、買主が今後、損害賠償請求をできなくする特約が盛り込まれたことを理由に挙げて、被疑者には違法な値引きをした背任があったとはいえないとして、被疑者を不起訴処分としました。
 しかし、大阪検審議決は、問題にされた地下埋設物撤去費用試算にあたって、検察官が小学校校舎建設を前提とする検証をしていないことを指摘し、今後、客観性のある捜査を尽くすべきだとしています。この指摘は、当然に当該地下埋設物は校舎建設にあたって、撤去を必要とするようなものではなかったこともありうることを示唆しています。国交省航空局長も国会で同様の答弁をしています。
 また、大阪検審は森友学園の代理人弁護士も、被疑者ら自身も、かりに森友学園が国を相手に損害賠償の訴訟を起こしても訴えが認められる可能性は極めて低いことを認識していたと指摘しています。 
 私たちも過去の類似の事案の判例等をもとに、本件土地には、法的な意味で損害賠償を必要とするような瑕疵(それを撤去しなければ土地を目的の用に供せないような地下埋設物)はなかったこと立証する資料を提出しました。
 再捜査にあたっては、これらを証拠資料として、本件土地には瑕疵にあたるものは実在しなかったこと、被疑者らはその事実を十分、認識していたことを明らかにされるよう、強く求めます。

2.限りなく起訴相当に近い大阪検審の議決の重みを真摯に受け止め、公判で事の真相を明らかにする徹底した審理が行われ、公正で社会的正義を踏まえた判決に道を開くよう、起訴処分を求める。

 大阪検審の議決要旨は随所で、具体的な事実を上げながら、貴庁の不起訴処分に強い疑問を投げかけています。そして結びでは、本件背任の嫌疑について公判の場で真実を明らかにする意義がきわめて大きいと指摘しています。長期にわたる審査を経て大阪検審が示したこのような指摘は極めて重いものです。
 また、本件は、国会審議の報道などを通じて社会的にも大きな関心を集め、各種世論調査において、政府や財務省当局の説明に納得できないと答える人々は一貫して7割を超えています。
 貴庁におかれましては、こうした世論を納得させるためにも厳正な再捜査を尽くされるよう要望します。そのうえで、公判で事の真相を明らかにする審理が行われ、公正な判決に道を開くよう、起訴処分を求めます。
さらに私たちは、被疑者に係る背任の捜査を端緒として、被疑者らに背任の罪を負わせるような力がどこから、どのように働いたのか等についても毅然と解明され、社会正義にかなった判断を示されるよう、強く要望するものです。

以上

(2019年5月11日)

尻尾を切った トカゲのつぶやき

私はトカゲだ。変種のトカゲ。保守の政治風土の中で特殊な進化を遂げてこの形にたどりついた。特徴は、数え切れない舌の枚数と尻尾の本数。舌禍のたびにその舌を切り離す。不都合あれば、次々に尻尾を切り捨てて、生きのびる。そして、面の皮の厚さに、左右の非対称。もちろん、右半身のみ異様に発達している。利権と忖度とヘイトをエサに肥え太っている。

何本もある尻尾の一本として、塚本一郎がある。正確に言えば、「ある」ではなく、「あった」。もう切り捨てた、新潟のあの参院議員。麻生派で、昨日までの国土交通副大臣。ナニ、大して大事な尻尾ではない。大した尻尾ではないが、切り捨てれば当然に傷ができる。尻尾の行く末に関心はないが、トカゲ本体の傷の深さが心配なのだ。

さて、この尻尾。切るべきか、切らざるべきか。昨日まで、それが問題だった。逡巡の結果、思い切って切り捨てた。意外にも尻尾を切った傷痕からの出血が多量だ。この血かおさまるかどうか。切ったは正解だったか間違いだったか。実はまだ自信がない。

問題の、私の地元下関市と北九州市とを結ぶ予定の「下関北九州道路」。これが通称「安倍・麻生ルート」。地元ブロック紙「西日本新聞」本日朝刊の解説記事のタイトルが、「政権、逆風に屈す 塚田副大臣辞任 選挙控え地方悲鳴」だ。これは、まずいじゃないか。新聞はどうしてもっと私に忖度しないのか。その他のメディアもこぞって、「一強の驕り」「緩み」「たるみ」の政権姿勢批判だ。たかが、道路くらいで、何を騒ぐか。

あ~あ、森友事件、加計問題とおんなじだ。「国政の私物化」「財政の私物化」「忖度政治の弊害」と追及されることになる。根も葉もないことなら大したことではない。火のないところに立った煙なら面倒なことにはならない。しかし、しっかりと根も葉もあり、燃え盛る火あればこその煙だから、何とか手を打たなければならない。でないと、国政調査権の発動やら、文書公開請求やらを武器に、またまたこじれそうではないか。

当然、野党は「これまで、かばってきた総理の責任」を厳しく追及するだろう。私の面の皮は相当に厚いけど、シンゾウにまで毛が生えているわけではない。やっぱり面白くはない。同様の事件がないか徹底して調べられたら、そりゃ安閑としてはいられない。

この尻尾、余りに無防備で、あっけらかんとホントのことを言っちゃったんだ。それはないよな。なんてったって、自民党の政治家なんだから。これ言っちゃまずいくらい、分かりそうなもんだと思うがね。

総事業費が2000億円ともそれ以上とも試算されているこの道路。その必要性や採算性には、疑問符が付けられてお藏入りだった。それがどうして復活したのか。そこが問題だ。こんなことは、灰色のままにしておけばよい。安倍・麻生の権勢は推測されるだけでよいのだ。あからさまに内幕を暴露することはない。

この件の報告を受けて、私も驚いた。こんなにあからさまに内幕をぶちまけられては、できる道路もできなくなる。私も麻生も大いに迷惑だ。もっと上手に、こっそりと、陰でやってもらわなきゃならん。こんなに下手な政治家を育てたキョーイクが悪いんじゃないか。ニッキョーソの責任。やはり、学校では教育勅語を教えなくっちゃ。

塚田が言ったのは、こんなことだったそうじゃないか。福岡県知事選自民党推薦候補の応援演説の中でのことだ。事実上の麻生派集会だった。

「麻生太郎衆院議員にお仕えして、はや20年近く。最初の総裁選は大変でした。その時代から麻生太郎いのち一筋でやってきた、筋金入りの麻生派です」
「国土交通副大臣ですから、ちょっとだけ仕事の話をさせていただきますが、大家敏志さん(福岡の自民党参院議員)がですね、私のもうひとり逆らえない吉田博美さんという参議院の(自民党)幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。『地元の要望がある』。これが下関北九州道路です。
 じつはこれ、経緯がありまして、11年前に凍結されているんです。なんでかわかります? 『コンクリートから人』っていう、とんでもない内閣があったでしょ。総理は『悪夢のようだ』と言いましたが、まさにそのとおりでございます。公共事業はやらないという民主党政権ができて、こういう事業は全部フリーズ、凍結しちゃったんです
 「何とかしないといけない。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか? 安倍晋三総理です。安倍晋三総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっているわけです。
 吉田幹事長が私の顔を見たら、『塚田、わかってる? これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ』と。『俺が何で来たかわかるか』と。私、すごく物わかりがいいんです。すぐ忖度します。『わかりました』と。
  そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません、地元の。そんなこと、実際ないんですよ? 森友とかいろいろ言われていますけど、私は忖度します」
「それでですね、この事業を再スタートするためには、いったん国で調査を引き取らせていただくということになりまして、これを、今回の新年度の予算に国で直轄の調査計画に引き上げました! 別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので」

 誰が聞いても、彼が話したことは臨場感十分で信憑性が高い。またまた、「総理のご意向」「首相案件」と責めたてられる。せっかく、新元号フィーバー演出で、うまく国民を欺せたと思っていたのに、最悪のタイミング。そりゃ傷口が痛む。

アベ政権一期目の終盤のトラウマが頭をよぎる。失言で、次々と閣僚が辞めていった。12年前のあの悪夢の二の舞はごめんだ。だから、できることなら、この尻尾切りたくはなかった。「尻尾よ、尻尾。責任を感じて、しっかり職責を全うせよ」とよく分からん論理で激励もし、ごまかしもしてきた。

ところが、この汚れた尻尾を抱えたままでは、地方選も参院選も闘えない、と陣営全体が悲鳴を上げた。切っても切らずでも傷は大きい。比較して、どちらの傷が浅いか。

結局は、国民の健忘症に期待して、切る方に賭けることにした。できるだけ、迅速に切って、後は国民の忘却を待つ作戦。しかし、この尻尾切り作戦うまく行くだろうか。明日は、統一地方選前半戦の投開票日だ。尻尾を切ったは、吉と出るかそれとも凶か。尻尾を切った傷口の痛みはまだ癒えない。出血も止まらない。
(2019年4月6日)

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