澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

岸本洋平さんと支持者の皆様、本当にご苦労様でした。

(2022年1月24日)
 岸本洋平さん、あなたの渾身の奮闘に敬意を表します。そして、岸本さんを市長にと投票された1万4439人の名護市民の皆様、本当にご苦労様でした。

 選挙の結果はなんとも残念でした。もし勝利していたら、どんなにか日本中のみんなが喜んだことでしょう。でも、結果以上に闘うこと自体が大きな意味をもつこともあります。岸本さんと支援の皆様方の毅然とした姿勢が、日本中の多くの人たちの励ましとなりました。

 「所詮大きなものには勝てっこない。勝てない無駄な闘いはせぬのが利口。不利な闘いをするよりは勝つ方に付くのが得に決まっている。勝つ方に付いて取れるものを少しでも多く取るのが処世の常道。『長いものには巻かれよ』というではないか」。こんな考えに染まらず、『一寸の虫にも五分の魂』を見せていただいたのが、岸本洋平さんたちの闘いでした。

 岸本洋平さんと支持者の皆様。あなた方の志には、人を感動させるものがあります。故郷の美ら海を孫子に伝えよう、誇るべき自然環境を守ろう、あの戦争の記憶を教訓に平和を守ろう、米軍基地がもたらす様々なトラブルから故郷の平和な暮らしを守ろう。それは、誰にも通じる思い、誰にも共感できる願いです。

 私には、渡具知さんたちが当選してバンザイと言っているその姿に大きな違和感があります。その気持が理解できないのです。おそらく彼らの胸の内には、当選してもなお整理の付かない忸怩たる思いがあるに違いないのです。彼らには大義がありません。ただ政権が投げて寄こしたアメにたかろうというのですから。

 私は、この選挙に政治の理想と現実を見る思いがします。政治には理想が必要です。理念が欠かせません。岸本さん、あなた方は理念を掲げました。それは自然環境の持続性であり、平和に生きる権利であり、本当の意味での住民自治の思想でした。それに対して、渡具知さんたちは現実を選択しました。「米軍再編交付金の給付なければ、地域振興も住民福祉も成り立たないではないか」という現実。しかし、その現実は孫子の代までに及ぶ大きな負の遺産とセットになったもの。結局は、中央政府の強権ににひれ伏したのです。

 この局面では、理想を選んだあなたたちは、現実を選択した彼らに敗れました。しかし、その闘いは、けっして終わっていません。まだまだ長い闘いは続くことになります。

 この大切な選挙挙戦の敗北が明らかになった昨夜の午後10時過ぎ、雨の中の静まり返った選挙事務所で、岸本さんは赤いネクタイを締め直し、支持者に深々と頭を下げ、「結果を重く受け止める。私の力不足」と声を絞り出したと報じられています。そのうえで、辺野古の新基地建設については「民意は反対だったと受け止めている」と言い切ったとも。

 「オール沖縄」の象徴だった、故翁長雄志前知事の妻樹子さんはこう言ったそうではありませんか。「相手は辺野古を受け入れると言って当選していない。この選挙結果は辺野古についての民意ではない。そう、政府は自覚してほしい」と。

 玉城デニー知事も同じです。記者団に「新基地問題に何の懸念もない。軟弱地盤を抱える工事で完成は不可能だ」という従来の姿勢を崩さなかった、と。

 重苦しい、大事な選挙の敗北ですが、飽くまで長い闘いの一局面。岸本さんには、これからの新基地建設反対闘争の新しいリーダーとしてのご活躍を期待いたします。
 本土の私たちも、非力ではありますが、精一杯の応援をしたいと思います。けっして他人事としてではなく、そうです、自らの問題として。

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