澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

人種差別発言への制裁の厳しさに学ぶ

アメリカで人気のスポーツといえば、アメフト、野球に続いて、バスケットボールなのだそうだ。プロ組織であるNBA(National Basketball Association)には、全30チームが所属し、その全資産価値は110億ドル(約9500億円)に及ぶとか。

その人気のプロスポーツ選手の76%が黒人ということだが、その選手に儲けさせてもらっているはずのチームオーナーの差別発言で全米が揺れている。この事件で、改めて知る。ヘイトスピーチへの制裁の厳しさを。社会に、人種差別は許さないという明確な合意ができているのだ。

29日、NBAは人種差別発言があったとして、人気チームクリッパーズのオーナーであるドナルド・スターリング氏を永久追放処分としたうえ、最高額となる250万ドル(約2億6000万円)の罰金を科した。この罰金は反差別運動を進める団体に寄付されるとのことだ。

スターリング氏とは、不動産業界での成功者として名高い人とのこと。その差別発言というのは、4月上旬のスティビアーノという女性(知人、交際相手、あるいは恋人などとされている)との会話の中でのこと。その録音テープが、芸能専門サイトで暴露された。会話では、その女性と元レーカーズのスーパースター、マジック・ジョンソン氏らとの交友関係に、スターリング氏が不快感を示している。スティビアーノさんがジョンソン氏と一緒に納まる写真を画像共有サイトに投稿したことから、「黒人と一緒の写真を公開するなんて、ひどく不愉快だ」「イスラエルに行ってみろ。黒人は犬扱いだぞ」などと激怒。彼女が反論すると、「それなら私のチームの試合に来るな。そして黒人を連れてくるな」と言い放った、という(CNNなど)。

時事の配信では、「なぜマイノリティー(白人以外の人種)と写真を撮るのか。君(知人女性)が黒人と関係があることを吹聴するのは不愉快だ。君は何をしてもいい。彼らと性的関係を結んでもいい。ただ、私の(チームの)試合にだけは連れて来ないでくれ。(インターネット上で)黒人と一緒にうろつく姿をさらす必要はない。彼(マジック・ジョンソン氏)は尊敬に値する人物だが、私の試合に連れて来るのは、よしてほしい。」というもの。

NBAは調査により、差別発言をした男性をスターリング氏と特定し、同氏も認めた。NBAのシルバー・コミッショナーは、「私は氏の発言に激怒しているし、人々の怒りも理解している」「もはやNBAに氏の居場所はない」という厳しい非難。

問題は全米で関心を集め反響は凄まじい。バスケットボール好きで知られるオバマ大統領はアジア歴訪中に声明を発表し、「無知で極めて攻撃的な差別発言」と非難した。「無知な人間は自らの無知を宣伝したがる。米国はいまだに人種差別や奴隷制度の名残と闘っているのだ」と述べたという報道もある。

プレーオフに出場しているクリッパーズのドク・リバーズ監督や選手も抗議の姿勢を示し、チームの公式サイトは「WE ARE ONE(私たちは一つ)」の一文を掲載した。

マイケル・ジョーダン氏ら元NBAのスター選手が続々と不快感や「激しい怒り」を表明。
当のジョンソン氏は27日、米スポーツ中継専門局に「スポーツはあらゆる人種が競い合うからすばらしいんだ。もはや彼(スターリング氏)にチームを保有する資格はない」と強く非難。さらに「黒人も(不動産王で有名な)あんたの不動産を借り、あんたのチームでプレーし、あんたのためにコーチを務めている。俺はホントに怒っている」と訴えた。

注目すべきは、スポンサーの動向である。AFPの報道では以下のとおり。

「主要スポンサーである米カジノ経営のチュマッシュ・カジノ・リゾート(Chumash Casino Resort)と中古車販売業のカーマックス(CarMax)は28日、クリッパーズとの契約を解除した。カーマックス社は、スターリング氏の発言について「完全に受け入れがたい」とコメントし、さらに声明で、「これらの見解は、すべての個人を尊重するカーマックス社の文化と真っ向から対立するものである」と述べた。米国先住民が経営するチュマッシュ・カジノは、米スポーツ専門チャンネルESPNに対して、「どのようなグループに対しても悪意や危害を生じさせるような、いかなる発言も無視できない。わが社はクリッパーズのスポンサーから撤退する」と語った。
米格安航空会社ヴァージン・アメリカ(Virgin America)の代理人は、TMZに対して、「ファンや選手の応援は続けるが、ヴァージン・アメリカはロサンゼルス・クリッパーズのスポンサー契約を終了することを決断した」と述べた。
ラップ音楽界のスター、ショーン・コムズ(Sean ‘Diddy’ Combs)が所有するミネラルウオーター販売のアクアハイドレート(AQUAhydrate)は、ツイッター(Twitter)で契約の一時停止を発表。さらにステート・ファーム保険会社(State Farm Insurance)も調査が継続するなかで、一時凍結した。
また、クリッパーズのブレイク・グリフィン(Blake Griffin)がNBAオールスターゲームのスラムダンクコンテストで跳び越えた車として知られる韓国・起亜自動車(Kia Motors)をはじめ、ヨコハマタイヤ(Yokohama Tires)、レッドブル(Red Bull)、スプリント(Sprint)、ランバー・リクイデーターズ(Lumber Liquidators)も、同チームとのスポンサー契約を凍結している。
米長距離列車アムトラック(Amtrak)は、米紙USAトゥデイ(USA Today)に対し、「レギュラーシーズンが終了した2週間前に、クリッパーズとの契約は満了となっており、チームと契約していた形跡は、いかなるものも除去する」と述べた。」

差別発言をするチームのスポンサー契約は経済的にペイしないという即断なのだ。社会の風が企業にそのような判断をさせている。

それにしても、公開の場での発言ではない。いわば密室での2人きりの場での会話。しかも、このテープを持ち込んだのはスティビアーノさん自身で、その目的はスターリング家から約180万ドル(約1億8400万円)を着服したとして訴訟を起こされていることへの報復であろうとの報道もなされている。そのような場における、そのよう事情あっての発言でも、人種差別発言は許さない、という社会の合意が見て取れる。

ヘイトスピーチへの制裁の厳しさ、その果敢で迅速な対応に、学ぶべきものは大きい。
(2014年4月30日)

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Published in 水曜日, 4月 30th, 2014, at 23:54, and filed under ヘイトスピーチ.

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