澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「株主代表訴訟と住民訴訟に明と暗の判決」続編ー川柳2句にちなんで

今日の毎日川柳欄に、次の一句。
   管理職経験生きぬ町内会  (のびた)

企業にせよ役所にせよ、部下との関係では管理職は気楽なものだ。上司としての管理職には、業務命令だの職務命令だのという武器が与えられている。この強力な武器を振りかざして、部下には専制君主として振る舞うことができるのだ。

長く管理職をやっているうちに錯覚に陥る人がある。「自分には、生来他人に命令をする力が備わっているのだ」と。誰かに命令できるのが当然だと勘違いし、それに従わない人間を「けしからぬ奴」と見ることになる。

だから、元管理職氏が町内会の役員になると往々にしてギグシャグが生じる。人を説得し納得ずくでことを運ぶことが非能率としか考えられない。そんな面倒なことをしてはおられないと、長年なじんだ強権をふるうことにもなる。これでうまくいくはずはない。上命下服で動くはずのない町内会では、元管理職の肩書きが生きないばかりか、その強権体質が町内会運営の邪魔になるのだ。結局は、会員の参集を蹴散らすこととなる。

元市長などが、ボランティアチームのリーダーになって悪かろうはずはない。しかし、たまたまこの人物が、「自分には他人に命令をする力がある」という錯覚派だと、悲惨なことになる。共通の理念に賛同して、運動に参加した仲間を対等な人格とみることができない。同じボランティア仲間に、命令ができると大きな勘違いをしてしまう。さらには、「事務局長と目を合わせて、にやにやしながら、『この人、私の命令を聞けないんだって』」などと、傲慢な態度をとることにもなる。

「民主的」選対の本部長や事務局長が、権力や企業内の組織にいるのと同じ発想であることが恐ろしい。しかも、周囲が、このような本部長や事務局長をたしなめることさえせず、自浄能力の欠如をさらけ出したことはいっそうの悲惨と言わざるを得ない。

もっとも、取締役であれ首長であれ、「管理職」は部下との関係では気楽だが、所属する企業や自治体との関係では責任は大きい。第三者との関係でも、ときには身銭を切って責任を全うしなければならない。そのときには、管理職はつらい立場となる。「管理職」に違法があって、被害者に損害を与えれば管理職個人の責任が追求される。企業や自治体が目をつぶっても、違法を見逃せないとするたった一人の株主あるいは市民の提訴の権利を法は認めている。「管理職」が、会社や自治体に開けた穴について、「違法をおかした責任者に身銭を切って埋めさせる」という責任追及の制度である。これが、株主代表訴訟であり、住民訴訟なのだ。

今日の毎日川柳欄から、もう一句。
   手は打つが行政指導と云う無力  (岩田規夫)

この句が指摘するとおり、行政指導とは本来強制力のない無力なものなのだ。公権力の行使が強制力をもつためには、厳格に定められた法的根拠をもたなければならない。また、無力であればこそ、法的根拠のない行政指導も許される。しかし、市長が公約に掲げたテーマだからとか、市民の支持のある問題だからとかの理由で、強引な行政指導が許されることにはならない。市長に行き過ぎた行政指導があって第三者に損害を与えた場合には、まず市が損害を賠償しなければならない。次いで、市長に故意または重過失あれば、市長個人が市の財政に開けた穴を埋めなければならない。そのような文脈で国立市の住民が住民訴訟を提起し、2010年12月22日東京地裁判決(確定)は、「被告国立市は、元市長に対し、3123万9726円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求せよ」と命じた。国立市は、この判決に従って、元市長に対する請求の訴訟を提起した。

ところが、その3年後、国立市議会は市が有する元市長に対する損害賠償請求権を放棄する決議をしたのだ。14年9月25日東京地裁判決は、この決議の効果を認め、国立市から元市長に対する請求を棄却した。この判決は、貴重な住民訴訟制度の機能を無にしかねないという意味で、悪しき前例になりかねない。。

市町村長や知事の横暴は、あちこちにあふれている。ところが、通常彼らは議会内多数派とは親密な関係にある。大阪府や大阪市の首長と、議会との関係を想起するとわかりやすいのではないか。せっかくの住民訴訟で、首長の責任が確定しても、議会の多数派が請求権放棄の議決をしてしまえば、元の木阿弥になってしまう。それでよいのだろうか。

ダブルスタンダードはいただけない。これまでは住民訴訟の機能を大切にし、活用を心がけていた人ならば、今回の判決のこの論点について、納得できるはずがないと思うのだが。
(2014年10月4日)

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