澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

パロディ「与党党首の原発再稼働願望」 ― 総選挙の争点(その3)

有権者の皆様に、政権与党の党首として心から訴えます。東京新聞を読まないようにお願いしたいのです。

東京新聞の看板記事である「こちら特報部」などは、権力批判の色濃く「この道しかない」わが国の国益を侵害するもので、お読みになっておためにならない。ですから、お読みならぬように。とりわけ、本日(12月5日)の東京新聞朝刊は読んではいけません。仮に、どうしてもお読みにならねばならない事情があるとしても、一面トップの記事だけは、意識的に避けていただきたい。残念ながら、大きな活字が向こうからパッと目に飛び込んできてしまいますがね。

なにゆえ本日の東京新聞トップを読んではならないかといえば、それが「誤解与える海水簡易分析」「『不検出』実際は汚染」という福島第一原発の海洋汚染の報道だからです。今日の記事に限らず、原発の放射線汚染報道は、いたずらに世を惑わすこと甚だしい。情報が正確であればあるほど、社会の不安を招くことになります。そんな「不都合な真実」を、いったい誰が知りたいと思うでしょうか。少なくとも、私は知らせたくない。

人それぞれに「知られたくない真実」というものがあります。そこには踏み込まないのが、人としての情でもあり信義でもあるのではないでしょうか。それこそが、和をもって貴しとなすという我が国伝統の美学。漢籍には「惻隠の情」という言葉もあるとおりです。分けても私のような一国の権力者に「不都合な真実」と思わせる情報を「本紙の調査の結果」として、得々と目立つ記事にするのは、お国のためにならない。今後は、特定秘密保護法の活用をよく考えなければならない。

その記事は、こんなけしからんことを言っています。
「東京電力福島第一原発から海洋への放射性セシウム汚染問題で、東電は測定時間が極めて短い簡易の分析で『検出せず』と公表してきた。ところが、詳細分析の結果では、その7、8割でセシウムが含まれていることが分かった。虚偽の公表とは言えないが、汚染は続いていないかのような誤解を与えかねない。」

あまり知られていないことですが、東電による福島第一放水口近くの海洋放射線量測定は、3カ所で行われており、測定方法は2通りあるのです。ひとつは高精度の詳細分析で、もう一つが低精度の簡易分析。詳細分析は10時間もかかる面倒な作業、その公表は行われてはいるものの1か月ほど後に目立たないようにされています。これに対して、簡易分析は40分の1の短時間で行いすぐに発表できるものです。精度は低いものの簡便ですから、東電も政府も記者会見資料としてこちらを使っています。そして、「一定の線量より低値の場合は線量が分からない」などと回りくどく言うよりは、きっぱりと「不検出」と言われた方が国民の皆様もご安心でしょう。もちろん、これが国益に適ったやり方。

ところが、国益と真実とは調和しないもの。簡易分析資料に基づいて記者会見では、「検出なし(ND)」と発表されていたものが、実は同じサンプルの詳細分析では汚染ありとなっていたということを東京新聞が調査で資料を見つけたのです。しかも、簡易分析で「放射線不検出」とされたものの7割から8割が、実は詳細分析では放射線汚染されていた、という報道となっている。そんな資料なぞひっそり眠らせておけばよいものを、なんと余計なことをしてくれたもの。

「その結果、簡易分析では『セシウムを検出せず』だったのに、詳細分析では検出されたケースが、南放水口で96件、北放水口では89件あった。それぞれ80%、73%の確率で、汚染はあるのに、ないかのような情報を発信していたことになる。」
「東電も政府も、記者会見で提供する説明資料では低精度の分析結果を用いることがほとんど。専門的には『検出せず』はゼロではなく、『ある濃度より低い場合は分からない』を意味する。うその説明にはならないものの、詳細分析のデータがあるのに、信頼性の低い値を使い続けているのが現状だ。」
というのが東京新聞の記事の内容。捏造だと文句の付けようがないから、始末が悪い。

しかも、私にとって実にいやな具体例が紹介されている。
「2013年8月26日 福島第一原発南放水口付近で採取した海水の簡易分析結果は不検出(ND)」。しかし、「同じサンプルの詳細分析結果は、2.06ベクレル/リットル」だったという。

皆様もうお忘れになったことでしょうが、2013年9月7日がブェノスアイレスで開催されたIOC総会で、2020年夏季オリンピックの開催地を決定する投票が行われた日。その日までに私が8月26日精密調査の結果を知らなかったと言っても、信用してはもらえないことでしょう。また、福島第一原発南放水口付近とは、外洋につながる場所でブロックするものは何もないのです。

にもかかわらず、私は「状況はコントロールされている」「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」と世界に向かって大見得を切ったのです。今日の東京新聞による限り、港湾内ではなく、外洋の海水から放射線汚染が検出されたことを知っていて嘘を言ったろうと言われてもやむを得ないところです。また、すくなともこれだけの大見得を切って断言する前に精密調査の結果を正確に調べるべきだったろうとの指摘には一言もありません。

でも、あの嘘があったからこその東京オリンピック招致成功じゃないですか。今更、あれは嘘だったと言ってどうなるものでもない。私は、人の嘘には厳しい。20年前の朝日の記事の引用に間違いがあったことは、徹底して追求する。でも、自分の嘘には寛容だ。政治家たる者の性として、当たり前の話でしょうが。

問題は、この記事が選挙に大きく関わってくる可能性があるということ。誰もが知ってのとおり、私は原発再稼働推進の立場。そのためには、福島の事故の影響はできるだけ小さいものだったと見ていただきたい。真実かどうかは問題じゃない。国益に適うかどうかだけが問題なのですから。

政府の方針でも、検査の精度は「1ベクレル以上の汚染を検知するよう」指示しています。これは、海水1リットル当たり1ベクレルが、海洋魚の食用安全性を考える目安となっているから。東京電力は、海洋廃棄許容基準として「セシウム(134と137)は1リットルあたり1ベクレル以下」としていますが、これは、廃棄され希釈される以前の汚染水そのものについての放射線量。希釈されたあとの外洋の海水が「1リットルあたり1ベクレル以上」となれば、さすがの私でもちょっとひるみますよ。

IOC総会直前8月26日の海水の放射線値が、2ベクレル/リットルであったように、安全の基準値を超える実例が現実にたくさんあったんですね。東京新聞の調査結果では、これ(1リットルあたり1ベクレル以上の検知)を守れずに見逃していたことを確認できるケースが南放水口で10件、北放水口で25件あったと報道されています。

このことは、2013年8月当時の福島原発の海洋汚染度が魚の安全の目安となっていた基準を超した危険値となっていたことを示しています。この事実が広く知られれば、原発の再稼働を許さないとする世論の声がさらに大きくなり、選挙での再稼働派の得票減をもたらしかねないことになります。それは国益を損なうこと。

だから、有権者の皆様、東京新聞を読んではいけないのです。くさいものにはフタ。火だねがあっても煙を消して、不都合な真実を見ないようにしましょう。そうして、みんなで「この一本道」をまっすぐにつき進むのです。そうすれば、この選挙は乗り切れる。この選挙さえ乗り切れば、規制委のお墨付きをもらって原発再稼働に持ち込める。そこまで持ち込めたらもうこっちのもの。その先何が起ころうとも私の責任ではない。なにしろ、主権者である皆様の選択の結果なのですから。
(2014年12月5日)

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