澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「浜の一揆」に全国展開の兆し

昨日(2月21日)の午後、南青山で「『全国沿岸漁民連絡会』結成を目ざす交流集会」が開催され、私も応援団の末席に参加した。なかなかの盛会。熱気があふれんばかり。懇親会の席で、呼びかけ人の一人が「何年か経ったら、あの日の交流会が歴史的な出発点だったと、きっと思い起こすことになるでしょう」と挨拶していた。確かに、そうなりそうな印象だった。

集会は、北海道・岩手・福島・千葉・和歌山の各運動体の代表者5名が呼びかけたもの。静岡、長崎からのメッセージが届けられている。神奈川や高知との連携もあるという。漁業問題は各地にあり運動もあるのだから、いずれ全国的な運動と組織に発展するだろう、そう展望が語られた。

今のところは「交流集会」である。次に「準備会」にして事務局機能を整え、さらに「全国沿岸漁民連絡会」への発展が予定されている。全国組織とすることにより、経験を交流し知恵と力を出し合って相互に各地の運動を援助し合うとともに、全国組織の力で水産庁交渉の主体となろうということなのだ。

各地が抱える具体的問題の内容は、それぞれに異なる。北海道からの参加者は水産資源の持続性の課題を語り、福島は原発事故の漁業への影響を語った。千葉からは、大規模漁業者との軋轢や漁業振興政策の制度改善が問題として述べられた。岩手は、3・11による被災の深刻さと、その後の漁業復興過程における「サケ漁許可」申請問題が、裁判を予定しているものとして報告された。

司会は、手際よく、各地からの報告を「(1)水産資源持続性の問題、(2)漁業をめぐる制度改善の問題、(3)原発の問題」と3点にまとめた。とりわけ、原発問題については、「必ず海岸に設置されて漁場と接している以上、その影響は全国48個所の原発プラントを抱える全ての地域の漁民の問題」と総括されていた。なるほど。

ところで、「沿岸漁民」とは、零細な漁船漁民と海面養殖業者をいう。漁船漁業を営む者については、概ね20トン未満の漁船で漁をする小規模漁業をいうようだ。

配付された資料によると、20トン未満の漁船で漁をする小規模経営体は、昨年の調査で全国で73643を数えるという。漁業経営体総数94522の78%を占める。これが「日本漁業の主役」となのだ。ちなみに、20トン以上の大規模漁船をもつ経営体は2%、大規模な定置網の経営体数も4%にすぎない。

この世界でも、事業体の規模の格差が政治的な力量の格差となり、零細漁民の不公平行政への不信と不満が横溢しているのだ。一つは、水産資源の持続性を確保して、次世代への漁業の継承を実現することが大きな課題だが、根こそぎに資源を取り尽くす大規模事業者への不満が鬱積している。それだけでなく限りある水産資源の公正な配分をどうするかについて、民主的な規制が切実な要求なのだ。

多くの零細漁民が同じような不満と要求をもっている。本来であれば、漁業協同組合が、協同組合の理念に基づいて零細漁民の声を代弁する役割を果たすべきなのだが、一般に現実はそのようになっていない。多忙な零細漁民のリーダーが、時間を割いて仲間の声を糾合し、運動を立ち上げていることは、最大限の敬意を表するに値する。

何人もの会の参加者が口にしていた。
「漁師は、魚を獲るだけで精一杯だし、それでよいと思ってきた」「でも、今のままでは漁業の未来がない。後継者に継承もできない」「やはり、知恵と力を合わせて漁業が継続できるように、運動もしなければならないし、行政との交渉もしなければならない」

もっとも、農業と同様、漁業も新自由主義的「改革」の対象として意識されている。震災からの復興の手段としての特区構想にどう対処すべきかなど問題は山積しており、方針の具体化はけっして容易ではない。

提案された行動指針の原案のなかに、「小規模漁業漁民・家族漁業経営体の生活と権利を守るための活動をおこなう」とある。この立場性が運動の原点だ。

この日の集会は、「浜の一揆」の全国版の萌芽ではないか。このような場に居合わすことができたのは、私の好運である。次の会合が、7月下旬に予定された。もっとたくさんの人々が集って、もっと具体的な運動方針や組織方針が出されることを期待したい。
(2015年2月22日)

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