澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「明治 北海道十勝カマンベールチーズ」髪の毛混入事件の顛末

これまで、食品業界の不祥事は星の数ほどあった。カネミ油症や森永ヒ素ミルクのような「大事件」ばかりではなく、マクドナルド、雪印、赤福、船場吉兆、白い恋人など枚挙に暇がない。そんなことに遭遇しない自分を幸運だと思っていた。ところが、自分にかかわる問題として食の安全を意識する事件に遭遇した。その顛末をご報告する。

問題食品の製品名は「明治 北海道十勝カマンベールチーズ」。製造業者は株式会社明治。このチーズに髪の毛が混入していたことが報道された。その報道の2日前、同様製品をたまたま購入していたのだ。私の購入したチーズにも髪の毛が混入しているかどうかは、「開封していないから分からない」としか言いようがない。たとえ、髪の毛混入がなくても、とても不快で食べる気はしない。

事件の顛末は、以下のごとくである。
先月(4月)25日の午後。ある男性が、熊本県天草市にあるスーパーでチーズを買った。「明治 北海道十勝カマンベールチーズ」である。そのチーズに、髪の毛が埋め込まれた状態で混入していた。男性はこれを動画に撮影した上で、製造・販売元の明治に連絡した。その後12日を経過した今月8日、同社から電話で回答があったという。「検査の結果、チーズに混入していたのは髪の毛だった」「原因は調査中」とのこと。

この件は5月11日TBSで報道され、私はそのことを同日ネットで知った。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2489405.html

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20150511-00000024-jnn-soci

たまたま私が購入したチーズも同じ「明治 北海道十勝カマンベールチーズ」。成り行きを注目したが続報はなく、明治のホームページを見てもなんの関連情報の掲載もない。

そこで仕方なく、明治のお客様相談センターに電話をかけてみた。5月13日のことだ。担当の小池忠郎氏(センター・課長)の曰く、「私どもといたしましては、万全を期して製造しております。ですが、人間のしていることですので・・。あの髪の毛の入ったチーズについての情報は私どもがTBSに提供したものではありません。その原因につきましては鋭意調査中でございます」。なお、問題の髪の毛混入チーズは、同じ「明治の北海道十勝カマンベールチーズ」ではあるが、私が購入したものとは違って、分割包装されている「切れてるタイプ」というもののようだ。製造工場も違うとの指摘があった。
製品のタイプの違いは下記のとおり。
http://catalog-p.meiji.co.jp/products/dairies/cheese/020304/4902705060050.html

「それでは調査結果の公表を待ちたいと思います。ホームページに掲載してください」と要請すると、本来そのような予定はないという態度だったが、シブシブ「社内で検討いたします」とまで譲歩した。そしてその2日後(5月15日)に、小池氏から電話がかかってきた。
「この件は製造過程ではなく、包装中に髪の毛が入ったということで、当該のお客様には納得していただきました。人間が作っているものなので、ミスの可能性は否定できません。しかしながら、当社としてはそのことについてホームページに載せるとか、公表することはいたしません。この件では当該のお客様とだけ個別に対応が必要と認識しており、ご納得いただいたことで解決済みとなりました」と、きっぱりとした明快な報告であった。

「ネットで公開された写真を見た限り、髪の毛はチーズに陥入して、埋め込まれている状態ではありませんか。包装中に混入したというのはとうてい考えられない」「事故製品を買った方が『納得した』というのも到底信じられない」「私の購入チーズは、違う工場で造られたからといって、気味が悪く食べる気はしない。送りますのでせめて代金を返してください」と言うと、「金属片が入っていたわけでもなく、健康被害があったわけでもないので、その要望にはお応えできません」とこれも歯切れよく断られた。「チーズは食べようと捨てようとお客様のご判断次第です」ともいわれた。とりつく島がないとはこのこと。

あっけにとられるばかりでは芸がないので、「明治」について調べてみる気が俄然わき起こってきた。こんなときインターネットは便利である。「明治」のホームページには立派な言葉が並んでいる。相談室の対応に接した後では空虚な美辞麗句としか思えない。

以下はホームページに記載された会社の方針から抜粋したもの。
http://www.meiji.com/corporate/management/philosophy/
◇「グループ理念」
「私たちの使命は『健康・安心』への期待に応えていくこと。私たちの願いは『お客様の気持ち』に寄り添い、日々の『生活充実』に貢献すること」
◇「経営姿勢」
「『高品質で安全安心な商品』を提供すること。『透明・健全で社会から信頼される企業』になる」

羊頭狗肉とはこのこと。「明治」および小池氏の慇懃無礼な対応は、「お客様の気持ちに」寄り添っていない。「安心安全な商品」を提供していないし、誠実に説明責任を果たそうとしない態度は「透明・健全で社会から信頼される企業」の姿勢とはほど遠い。

◇「品質マネジメントシステム」
「食品メーカーとして製品の安全性を担保することは基本中の基本です。当社はフードチェーン全体に存在するリスクを顕在化して、リスク評価を行い、リスクを許容できるレベルまで合理的に低減するための手順を決定し実行しています」
この部分は理解に苦しむ文章。「人間のやることですので髪の毛一本くらい仕方がないでしょう」という言い訳を社の方針として述べているのかとも読める。

なお、小池氏が「金属片」という言葉を出していたが、それは、「明治」が2010年8月に金属片の入った疑いのあるチーズ23万個を自主回収した前科を指していたのだということを、インターネットが教えてくれた。もちろん、明治のホームページには、そんなことの片鱗も掲げていない。

明治の担当者が、「あなたの購入製品は事故を起こした製品ではない」と言った途端から、明治と私とは、具体的な事故の当事者の関係であるよりは、事業者と一般消費者との関係に転化した。

最後は次のように、こちらからしゃべった。
「消費者の一人として申しあげるが、食の安全については万全を期してもらわねばならない」「現実に事故が起こったのだから、真摯にその原因を調査して公表し、再発を防止する策を明確にしなければならない。そのことが、消費者の信頼を回復する唯一の手段ではないか」「一個のチーズに髪の毛が混入していたことは、製造工程の異物混入防止策が不十分なことを物語っている。髪の毛だけではなく、フケでも、汗でも、唾液でも混入した可能性を否定できない」「真摯な事故対応があって、信頼できる調査結果が発表されれば、事故は限定的なものだったと納得ができる」「しかし、今回の明治の対応は、社の隠蔽体質を露わにしたと言わざるを得ない」「これでは、他のチーズにも、チーズ以外の他の食品にも同様事故があったのではないか。多くの事故を個別の対応でこっそり解決して、隠蔽し続けてきているのではないか。いったいどれだけの事故が個別対応でこっそり処理されているのだろうか。そう疑われても仕方なかろう」

結局は、のれんに腕押しの相手に、当方の住所氏名を名乗り、ブログに顛末を掲載すること、以後明治の製品は買わないこと、「カマンベールチーズ」は記念にとっておくことを告げて電話を切った。消費者は非力である。読者諸氏には明治の製品にはくれぐれもご注意をと申し上げる。

現代の社会では、ほぼすべての人の生活が全面的に事業者によって提供される商品またはサービスに依存してなり立っている。衣食住から、医療・教育・情報・趣味の分野まで、すべてが商品を購入せずにはなり立たない。しかも、高度に複雑化し専門化した商品やサービスの安全性や耐久性は消費者には解明しがたい。消費者、つまりは生活者の生活の質や安全が、事業者の提供する商品に依存しているということだ。

事業者は自社が製造し販売する製品の利便性と安全性を喧伝し、消費者はこれを信頼して購入する。ところが、時としてこの製品に対する信頼が裏切られることがあって、社会問題となる。とりわけ、食品や医薬品の安全問題が、消費者の生命や健康に直接かかわる問題として、重要である。食品事故は、消費者共通の利害にかかわる社会的重要事として、隠蔽されてはならない。

消費者は、事業者に事故情報の開示を求めよう。積極的に事故情報を発信し交換し共有しよう。もちろん、できるだけ正確にである。そのことが、消費生活の安全に資することにつながる。
(2015年5月17日)

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Published in 日曜日, 5月 17th, 2015, at 10:13, and filed under 消費者問題.

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