澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「フルスペック佐藤」 その屁理屈の危険

NHK日曜討論。これまでは時間の無駄と思って関心なかったが、先週に続いて今日も594KHZを選局した。先週7月26日が「与野党激論 どうする新国立競技場・安保法案」。今日が、「参院 論戦激化 安保法案 10党に問う」である。

聴衆を前にした「論戦」とは、聴衆に好感度をアピールして、その支持の獲得を競う「戦い」である。その論戦の選手として、自民党は先週稲田朋美を送り出した。この人、この種のバトルにまったくの不適任。評価は「感じ悪いよね」の一言以上に言うべきものはない。安倍政権と自民党の支持率低下の貢献役にピッタリだ。自民党に人なきがごとしである。

それに比較して、今週の自民党代表選手である佐藤正久は、人柄のアピール度はけっして感じ悪くない。しかし、あまりに軽い。頼りない。支持者への演説ならともかく、「論戦」は無理だろう。やはり、自民党に人はいない。稲田朋美や佐藤正久が前面に出ざるを得ないというのは、もはや法案審議に重要影響事態だ。いや存立危機事態かも知れない。これなら、戦争法案は潰せる。

それだけではない。佐藤正久には「【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみた」の動画のイメージが定着してしまった。佐藤が何をしゃべっても、あかりちゃんにやり込められている、あの軽薄な動画キャラクターのイメージがつきまとう。これは凄いことだ。前代未聞のこと。

政権と与党には思いがけない障害物が続出の難レース。オウンゴールも数知れず。それに加えて、この動画も大きな障害となってきた。たどたどしく同じことを繰り返す「ヒゲの隊長」には、高校生あかりちゃんの鋭い反論の声がかぶさってくるからだ。

下記ユーチューブは7月9日に公開され、本日(8月2日)現在、動画再生回数は既に90万回を超えている。
https://www.youtube.com/watch?v=L9WjGyo9AU8
このパロディの作者、何者かは知らないがたいへんな才能。その才能の持ち主も、ここまでの効果の絶大さは予想していなかったろう。なにしろ、参議院安全保障特別委員会の自民党筆頭理事でもあり、党国防部会長でもある「時の人」の面目を完膚なきまでに潰して見せたのだから。

礒崎陽輔も、ツィッターでの10代女性とのバトルが話題となった。
礒崎が集団自衛権を隣の家の家事に例えた発言をしたことに対し、若い女性から『バカをさらけ出して恥ずかしくないんですか』と返され議論に。女性は『まず例えが下手』『火事と戦争を同等にして例えるのがおかしい』『例え話は同等の物で例えないと例えにならないんだよ』などと攻撃。女性のトーンは『やばい。頭悪いし、中学生でも論破できるレベルの政治家』と激しく、結果礒崎はこの女性をブロックしたという。女性は「逃亡。情けない補佐官だなぁ」と語って終了。

今日(8月2日)は、高校生のデモが話題となっている。その多くが、来夏の参議院議員選挙に投票する年代。あかりちゃんも含めて、若者たち、頼もしいではないか。

「アカリちゃんハンデ」を別にしても、佐藤正久の今日の発言のメチャメチャぶりに驚いた。「これまで政府が一貫して集団的自衛権を違憲と言ってきたのは、『フルスペックの集団的自衛権』に限ってのことだった。今、法案となっている新3要件によって限定された集団的自衛権にはこれまで言及がなかった」「だから限定された集団的自衛権行使の立法が法的安定性を損なうことはない」。ヒゲの佐藤よ、そんないい加減なことを言ってよいのか。またまた、オウンゴールの1点献上ではないか。

これまでの政府見解に照らして佐藤発言の不正確は明らかだが、さらに一般論から言ってこれは典型的な詭弁である。概念の全部とその部分をことさらに対立させて、「全部の禁止や約束」を「部分は禁止されていない」「部分は約束していない」と強弁する居直りの手口。こんな詭弁を世間では、屁理屈と言う。このヒゲの「屁理屈」、実は相当に危険なものなのだ。たとえば次の如し。

「憲法を守ると宣誓はしましたが、フルスペックの憲法全部を守ると約束した覚えはありません。だから、私に都合の悪い条文についての義務履行は拒否します」

「自衛隊は国民を守るためにあるとは言ったけれど、フルスペックの国民全体を守ると言った覚えはない。だから、自衛隊を違憲というような国民まで守らなければならないわけではない」

「外国とは平和に協調するとは申しあげたが、フルスペックですべての国と仲良くしなければならないと申しあげたことはございません。70年経っても、我が国に対する戦争責任を言い続けるような国とまで協調しなければならないわけではございません」

「公約を守るべきは公党として当然のこと、しかしフルスペックの公約遵守が非現実的なのは皆さまご存じのとおり。フルスペックの公約全部を必ず実現と言った覚えはありませんから、実現できない公約があっても責任追及されるいわれはないわけでございます」

こんな論理あり? 放送で天下に公言すること? 
(2015年8月2日)

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Published in 日曜日, 8月 2nd, 2015, at 18:36, and filed under 戦争法.

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