澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

各メディアの皆さまにDHCスラップ訴訟判決の取材と報道を要請申し上げますーー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第50弾

明後日(9月2日)東京地裁で、私自身が被告にされている「DHCスラップ訴訟」の判決が言い渡されます。報道に値する判決になるはずですので、ぜひ取材のうえ報道されるよう要請いたします。

そして、この判決を契機として、表現の自由保障の重要性や、経済的強者が民事訴訟を濫発して自分に不都合な言論を封殺しようという「スラップ訴訟」の弊害と防止策などについて、ぜひ掘り下げて言論界の話題にしていただくようお願いいたします。

この件で被告になっているのは私ですが、実は私だけでなく「政治的言論の自由」「政治とカネにまつわる問題についての批判の自由」「消費者利益の擁護に向けた言論の自由」なども、私と一緒に被告席に立たされています。その意味では、すべてのディアがご自分の問題としても関心をもたざるを得ない訴訟であり判決だと思います。

《当日の予定》は以下のとおりです。
  午後1時15分 判決言い渡し(631号法廷)
  午後1時30分 判決勝利報告集会(一弁講堂・弁護士会館12階)
  午後3時30分 記者会見(司法記者クラブ)

《判決を迎える事件の特定》
  東京地方裁判所民事第24部合議A係
  平成27年(ワ)第9408号
  原告 吉田嘉明 DHC(株)の両名
  被告 澤藤統一郎(職業・弁護士)
  裁判長裁判官 阪本勝
  陪席裁判官 渡辺達之輔 大曽根史洋
  原告代理人弁護士 今村憲 木村祐太 山田昭
  被告代理人弁護士 光前幸一 外110名(計111名)

《この事件が持つ意味》
 *政治的言論が保障されなければならないこと。
 *「政治とカネ」をめぐる論評の自由が特に保障されねばならないこと。
  論評の内容は「カネで政治を買う」ことへの批判。
 *消費者利益をめぐる論評の自由が強く保障されねばならないこと。
  論評の内容はサプリメント販売の規制緩和(機能性表示食品問題)への批判。
 *公権力だけでなく、経済的社会的強者も言論による批判を甘受すべきこと。
 *高額損害賠償請求訴訟を提起しての言論妨害が許されないこと。

《予想される判決の内容》
この日の判決は、DHC・吉田嘉明の自己に不都合な言論を封殺しようとした不当な意図を挫いて、政治的言論の自由を再確認し、市民や消費者の立場からの、企業や行政や経済的強者への批判の権利を保障する内容になるはずです。判決の主文もさることながら、理由がより注目されるところ。

《DHCスラップ訴訟経過の概略》
 2014年3月31日 違法とされたブログ(1)掲載
    「DHC・渡辺喜美」事件の本質的批判
 2014年4月2日 違法とされたブログ(2)掲載
    「DHC8億円事件」大旦那と幇間 蜜月と破綻
 2014年4月8日 違法とされたブログ(3)掲載
    政治資金の動きはガラス張りでなければならない
 同年4月16日 原告ら提訴(当時 石栗正子裁判長)
 5月16日 訴状送達(2000万円の損害賠償請求+謝罪要求)
 6月 4日 答弁書提出(本案前・訴権の濫用却下、本案では棄却を求める)
 6月11日 第1回期日(被告欠席・答弁書擬制陳述)
 7月11日 進行協議(第1回期日の持ち方について協議)
 7月13日 ブログに、「『DHCスラップ訴訟』を許さない」シリーズ開始
       第1弾「いけません 口封じ目的の濫訴」
   14日 第2弾「万国のブロガー団結せよ」
   15日 第3弾「言っちゃった カネで政治を買ってると」
   16日 第4弾「弁護士が被告になって」
   以下本日の第50弾まで
 7月22日 弁護団発足集会(弁護団体制確認・右崎先生講演)
 8月20日 10時30分 705号法廷 第2回(実質第1回)弁論期日。
 8月29日 原告 請求の拡張(6000万円の請求に増額) 書面提出
   新たに下記の2ブログ記事が名誉毀損だとされる。
     7月13日の「第1弾」ー違法とされたブログ(4)
       「いけません 口封じ目的の濫訴」
     8月8日「第15弾」ー違法とされたブログ(5)
       「政治とカネ」その監視と批判は主権者の任務だ
  参照 http://article9.jp/wordpress/?cat=12 
      『DHCスラップ訴訟』関連記事
 2015年7月 1日 第8回(実質第7回)弁論 結審
 2015年9月 2日 判決言い渡し期日

《本日の勝訴報告集会》
   13時30分~15時 第一東京弁護士会講堂
   弁護団長 経過と判決内容の説明 今後の展望 質疑応答
   常任弁護団から、あるべきスラップ訴訟対策提言試案
   弁護団・支援者・傍聴者 意見交換
スラップ常習提訴者や提携弁護士に対する抑止・制裁のあり方
    スラップ対策の制度つくり など
   被告本人 お礼とご挨拶

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《関連他事件について》
DHCと吉田嘉明が連名で原告となって提起した同種スラップ(いずれも、吉田嘉明の渡辺喜美に対する8億円提供を批判したもの)は合計10件あります。その内の1件はDHC・吉田が自ら取り下げ、9件が現在係属中です。

最も早く進行したDHC対折本和司弁護士事件は、
 本年1月15日に地裁判決(請求棄却)、
 6月25日の控訴棄却判決(控訴棄却)、
 その後上告受理申立がなされ最高裁に係属中。

2番目の判決となったS氏(経済評論家)を被告とする事件は
 本年3月24日に地裁判決(請求棄却)、
 8月5日に控訴審判決(控訴棄却)、
 やはり、その後上告受理申立がなされ最高裁に係属中。

私の事件が、3番目の地裁判決になるようです。
DHC・吉田は、同種2事件で各一審と控訴審計4回の判決を受けてすべて敗訴となっています。
DHC・吉田は、関連して仮処分事件も2件申し立てていますが、いずれも却下。両者とも抗告して、抗告審も敗訴。これで、合計8連敗です。

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《スラップに成功体験をさせてはならない》
私は、多くの人の支援や励ましに恵まれた「幸福な被告」です。しかし、被告が常に法的、財政的、精神的な支援に恵まれる訳ではありません。スラップの被害に遭った者がペンの矛先を鈍らせることも十分にあり得ることと言わざるを得まらん。だから、恵まれた立場にある私は、声を大にして、DHC・吉田の不当を叫び続けなければならない。そして、スラップの根絶に力を尽くさなければならない、そう思っています。
 その思いを、下記のとおり結審法廷の被告陳述書で述べています。

《被告本人意見陳述》(2015年7月1日結審の法廷で)
口頭弁論終結に際して、裁判官の皆さまに意見を申し述べます。
私は、突然に被告とされ、応訴を余儀なくされています。当初は2000万円、現在は、6000万円を支払え、とされる立場です。当然のことながら、心穏やかではいられません。このうえなく不愉快な体験を強いられています。理不尽極まる原告らの提訴を許すことができません。
私は、憲法で保障された「表現の自由」を行使したのです。本件で問題とされた私の言論の内容は、「政治をカネで歪めてはならない」という民主主義社会における真っ当な批判であり、消費者利益が危うくなることに関しての社会への警告なのです。むしろ私は、社会に有益で有用な情報や意見を発信したのだと確信しています。被告とされる筋合いはありえません。この点について、ぜひ十分なご理解をいただきたいと存じます。
関連してもう一点お願いいたします。原告の訴状では、私の書いた文章がずたずたに細切れにされ、細切れになった文章の各パーツに、なんとも牽強付会の意味づけをして、「違法な文章」に仕立て上げようとしています。細切れにせずに、各ブログの文章全体をお読みください。そうすれば、私の記事が、いずれも非難すべきところのない真っ当な言論であることをご理解いただけると存じます。

私は、45年の弁護士生活を通じて、政治とカネ、あるいは選挙とカネをめぐる問題を、民主主義の根幹に関わるものととらえて、関心を持ち続けてきました。また、消費者事件の諸分野で訴訟実務を経験し、東京弁護士会の消費者委員長を2期、日本弁護士連合会の消費者委員長2期を勤めています。消費者問題に取り組む中で、「官僚規制の緩和」や「既得権益擁護の規制撤廃」などという名目で、実は事業者の利益のために、消費者保護の制度や運用が後退していくことに危機感を募らせてきました。そのことが本件各ブログに、色濃く反映しています。
私の「憲法日記」と表題するインターネット・ブログは、弁護士としての使命履行の一端であり、職業生活の一部との認識で書き続けているものです。現在のものは、2013年4月1日に開設し毎日連続更新を宣言して連載を始めたもので、昨日で連続更新821日を記録しています。このブログは権力者や社会的強者に対する批判の視点で貫かれていますが、そのような私の視界に、「DHC8億円裏金事件」が飛び込んできたのです。
昨年3月「週刊新潮」誌上に吉田嘉明手記が発表される以前は、私はDHCや原告吉田への関心はまったくなく、訴状で問題とされた3本のブログは、いずれも純粋に政治資金規正のあり方と規制緩和問題の両面からの問題提起として執筆したものです。公共的なテーマについての、公益目的での言論であることに、一点の疑義もありません。
原告らは、私の言論によって社会的評価を低下した、と主張しています。しかし、自由な言論が権利として保障されているということは、その言論によって傷つく人のあろうことは、法が想定していることなのです。誰をも傷つけることのない人畜無害の言論には、格別に「自由」だの「権利」だのと法的な保護を与える必要はありません。仮に原告両名が、私の憲法上の権利行使としての言論によって、名誉や信用を毀損されることがあったとしても、これを甘受しなければならないのです。

そのことを当然とする根拠を3点上げておきたいと思います。
その第1は、原告らの「公人性」が著しく高いことです。もともと原告吉田は単なる「私人」ではありません。多数の人の健康に関わるサプリメントや化粧品の製造販売を業とする巨大企業のオーナーです。行政の規制と対峙しこれを不服とする立場にもあります。これに加えて、公党の党首に政治資金として8億円もの巨額を拠出して政治に関与しました。さらに、そのことを自ら曝露して、敢えて国民からの批判の言論を甘受すべき立場に立ったのです。自らの意思で「私人性」を放棄し、積極的に「公人性」を獲得したのです。自分に都合のよいことだけは言っておいて、批判は許さないなどということが通用するはずはありません。
その第2点は、私の言論の内容が、政治とカネというきわめて公共性の高いテーマであることです。「原告吉田の行為は政治資金規正法の理念を逸脱している」というのが、私の批判の内容です。仮にもこの私の言論が違法ということになれば、憲法21条の表現の自由は画に描いた餅となり、民主主義の政治過程がスムーズに進行するための基礎を失うことになってしまいます。
 さらに、第3点は、私の言論が、すべて原告吉田が自ら週刊誌に公表した事実に基づくものであることです。本来、真実性の立証も、相当性の立証も問題となる余地はありません。私は、その事実に常識的な推論を加えて論評しているに過ぎないのです。意見や論評を自由になしうることこそが、表現の自由の真髄です。私の論評がどんなに手痛いものであったとしても、原告吉田はこれを甘受しなければならないのです。

にもかかわらず、吉田は私をいきなり提訴しました。しかも、私だけでなく10人の批判者を被告にして同じような訴訟を提起しています。カネをもつ者が、カネにものを言わせて、裁判という制度を悪用し、自分への批判の言論を封じようという試みが「スラップ訴訟」です。本件こそが、典型的なスラップ訴訟にほかなりません。原告吉田は、私をだまらせようとして、非常識な高額損害賠償請求訴訟を提起したのです。私は、「黙れ」と恫喝されて、けっして黙ってはならない、と決意しました。もっともっと大きな声で、何度でも繰りかえし、原告吉田の不当を徹底して叫び続けなければならない、これも弁護士としての社会的使命の一端なのだ、そう自分に言い聞かせています。

その決意が、私のブログでの「『DHCスラップ訴訟』を許さない」シリーズの連載です。昨日(6月30日)までで46回書き連ねたことになります。原告吉田は、このうちの2本の記事が名誉毀損になるとして、それまでの2000万円の請求を6000万円に拡張しました。この金額の積み上げ方それ自体が、本件提訴の目的が恫喝による言論妨害であって、提訴がスラップであることを自ら証明したに等しいと考えざるを得ません。

本件は本日結審して判決を迎えることになります。
その判決において、仮にもし私の言論について、いささかでも違法の要素ありと判断されるようなことがあれば、およそ政治批判の言論は成り立たなくなります。原告吉田を模倣した、本件のごときスラップ訴訟が乱発され、社会的な強者が自分に対する批判を嫌っての濫訴が横行する事態を招くことになるでしょう。そのとき、市民の言論は萎縮し、権力者や経済的強者への断固たる批判の言論は、後退を余儀なくされるでしょう。そのことは、権力と経済力が社会を恣に支配することを意味します。言論の自由と、言論の自由に支えられた民主主義政治の危機というほかはありません。スラップに成功体験をさせてはならないのです。
 貴裁判所には、本件のごとき濫訴は法の許すところではないことを明確に宣言の上、訴えを却下し、あるいは請求を棄却して、司法の使命を果たされるよう要請申し上げます。

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なお、メディア関係者以外の一般の方に訴えます。
法廷傍聴も、法廷後の勝訴報告集会も、どなたでも参加ご自由です。言論の自由を大切に思う多くの皆さま、政治とカネの問題や、消費者問題に関心のある方、ぜひご参加ください。
(2015年8月31日)

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