澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

日本国憲法から有権者へのお願い

私は日本国憲法。日本国民を親として66年前に誕生し、国民に育まれて今日に至った。幸いにして、これまで身体髪膚の毀傷なく、親への不幸はない。

しかし、私は、必ずしも国民全てから等しく愛され慈しまれてきたわけではない。一部の人からは、蛇蝎のごとく嫌われ、公然と悪口を言われてもきた。そのことは私の宿命であり、私にとっては覚悟のこと。私のもっとも重要な役割は、一部の人の権力や富や権勢を抑制することにあるのだから、この世で権力や富や権勢に近い人ほど、私を疎ましいと思うことは当然なのだ。だから、私を嫌う人がいればこその私の存在価値である。だれからも等しく歓迎される私であっては、私が私でなくなってしまう。

私は、恒久の平和を宣言している。多くの国民は、これを歓迎している。だが、戦争を歓迎する国民もけっして少なくない。古来戦争は、一部の人に莫大な富をもたらした。過剰な権力欲や名誉欲をもつ者にとってはこの上ないチャンスである。激情に駆られた民衆が敵国への憎悪をたぎらせて戦争を支持したのはつい先頃のことだったではないか。いま、あからさまには戦争を欲すると言えない。「武力なくしては近隣諸国になめられる」「いざというときのために武力の備えをしておかねば外交もうまく行かない」という口実で、私は攻撃されている。

私は、なによりも個人の尊厳を重んじ、国民の人権を保障することを宣言している。これも多くの国民が歓迎しているところだが、「個人よりは国家」「自由よりも秩序」を重んじるべきだ、と叫ぶ人もけっして少なくはない。「権利を主張するばかりで義務を重んじないことが怪しからん」、と私は攻撃を受けている。

天皇を軽んじすぎる。日本の歴史・文化・伝統に配慮が足りない。家族の価値を軽視している。自助努力を重視せよ。憲法改正の要件が厳格に過ぎる。‥いくつもの批判や非難がなされている。批判や非難を自由に言えることは、私が認めていること。存分に、私が保障する表現の自由を享受していただきたい。

とはいうものの、その私も選挙の度に考えこむ。長く、この国で政権を取ってきた自民党という政党は、私を嫌う勢力の中心に位置する。結党以来一貫して「自主憲法制定」を党是としてきた。私自身が定める憲法改正手続によってではなく、私とは無関係のまったく別の新たな憲法を作ろうというのだ。2010年の新綱領でも、憲法改正ではなく「新憲法の制定」が目標として謳われている。そして昨年、この政党は到底私が容認し得ない、「憲法改正草案」を公表している。この政権政党が両議院において3分の2を超えることになったら、私の運命はどうなるのだろうか。

私は、多元的な価値を容認する立ち場で一貫している。その立ち場こそが、人類の叡智が到達した普遍性をもつ公理であると宣言している。しかし、この普遍性を攻撃する立ち場から私にレッドカードを突きつけられるようになったら、これは大事件だ。取り返しのつかないことになる。

かつて、私を大切に思う国民の意思は、国会内に、日本社会党を中心とした「3分の1の壁」を築いた。そのためもあって、自民党も本格的な改憲の動きに出ることは長くあきらめていた。ところが、今、その壁はあとかたもない。そして、自民党も変わった。なによりも、私を邪魔にし、私を追い落とそうと執念を燃やす人物を総裁とし、首相としたのだ。その名を安倍晋三という。

いつの選挙も重要である。重要でない国政選挙などあろうはずもない。しかし、7月4日公示21日投票の今回参院選は、私の運命を占う意味で、格別の重要性をもつものとなっている。昨年12月16日総選挙の結果、衆議院は既に自民党が294議席を獲得し、連立政権を組む友党公明と併せて325議席となった。この2党で、3分の2(320議席)を超えている。それだけではない。維新という極右政党が54議席をもっている。公明を上回る勢力だ。みんなの党という積極改憲派も、18議席。このような、衆院の改憲派優勢下での参院選なのだ。私の心配も杞憂でないことがお分かりいただけよう。

価値中立であるはずの私が選挙を語ることはおかしい。そう、自分ながら思わないわけではない。しかし、既に緊急事態である。私にも「自衛権」「正当防衛権」を認めていただきたい。人権や、民主々義や、平和を大切にする人々に訴えたい。私の退場を求める自民党とその同盟者には投票を差し控えていただきたい。維新や、「みんな」という明確な改憲諸党にもである。

投票前には、是非とも各党の憲法政策をよくお読みいただきたい。改憲阻止・憲法擁護を明確にしている政党への投票をお願いしたい。民主党は明確な改憲政党ではないが、しっかりした改憲阻止政党でもない。かつては論憲を言い、創憲とも言った。今は「未来志向の憲法を構想する」と言っており、その中身は不明確である。

自民党の改憲主張と対極をなすのが日本共産党である。憲法論争も、自共対決となっている。現行憲法のあらゆる条項を厳格に守るとの姿勢において、共産党の態度は揺るぎなく一貫している。私を守るのか、換えてしまうのか。政党レベルでは、共産党と自民党が、太い対決軸をつくっている。自民の改憲策動が本格化すれば、対抗関係にある共産党の議席が伸びる、得票数が伸びる、選挙結果がこのようになれば、改憲の策動に大きなブレーキがかかることになる。はからずも、現時点では、私の命運は共産党の消長とともにある。

日本共産党が、唯物弁証法の哲学を持つとか、コミュニズムの未来社会を構想しているとか、そのようなことへの賛否はさて措いてよい。私は、私の命運を懸けて、改憲阻止の一点で、信頼に値する共産党の健闘に期待したい。
(2013年6月30日)

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Published in 月曜日, 7月 1st, 2013, at 00:20, and filed under 未分類.

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