澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「核こそは人類と共存し得ない絶対悪」 ― サーロー節子さんの演説に9条の精神を見る。

ノーベル賞に良いイメージは持ちあわせていない。とりわけ、あの佐藤栄作が平和賞を受章という衝撃以来、「そんな程度のものか」という思いが強い。

しかし、今回のICANの平和賞受賞については、被爆者の運動が世界に注目され、核兵器禁止条約の正当性の強力なアピールとなったものと素直に喜びたい。その意味で、昨日(12月10日)オスロで行われた授賞式でのサーロー節子さんの演説は素晴らしいものだった。誰に遠慮することもなく、「核兵器は必要悪ではなく人類と共存し得ない絶対悪です。」と言い切った。これは、制憲議会で語られた日本国憲法9条の精神ではないか。これをこそ被爆者の魂の叫びと受けとめたい。

「私たちは、被害者であることに甘んじていられません。私たちは、世界が大爆発して終わることも、緩慢に毒に侵されていくことも受け入れません。私たちは、大国と呼ばれる国々が私たちを核の夕暮れからさらに核の深夜へと無謀にも導いていこうとする中で、恐れの中でただ無為に座していることを拒みます。私たちは立ち上がったのです。私たちは、私たちが生きる物語を語り始めました。核兵器と人類は共存できない、と。

今日、私は皆さんに、この会場において、広島と長崎で非業の死を遂げた全ての人々の存在を感じていただきたいと思います。…その一人ひとりには名前がありました。一人ひとりが、誰かに愛されていました。彼らの死を無駄にしてはなりません。

広島について思い出すとき、私の頭に最初に浮かぶのは4歳のおい、英治です。彼の小さな体は、何者か判別もできない溶けた肉の塊に変わってしまいました。彼はかすれた声で水を求め続けていましたが、息を引き取り、苦しみから解放されました。私にとって彼は、世界で今まさに核兵器によって脅されているすべての罪のない子どもたちを代表しています。毎日、毎秒、核兵器は、私たちの愛するすべての人を、私たちの親しむすべての物を、危機にさらしています。私たちは、この異常さをこれ以上、許していてはなりません。

私たち被爆者は、苦しみと生き残るための真の闘いを通じて、灰の中から生き返るために、この世に終わりをもたらす核兵器について世界に警告しなければならないと確信しました。くり返し、私たちは証言をしてきました。

それにもかかわらず、広島と長崎の残虐行為を戦争犯罪と認めない人たちがいます。彼らは、これは「正義の戦争」を終わらせた「よい爆弾」だったというプロパガンダを受け入れています。この神話こそが、今日まで続く悲惨な核軍備競争を導いているのです。

9カ国が、都市全体を燃やし尽くし、地球上の生命を破壊し、この美しい世界を将来世代が暮らしていけないものにすると脅し続けています。核兵器の開発は、国家の偉大さが高まることを表すものではなく、国家が暗黒のふちへと堕落することを表しています。核兵器は必要悪ではなく、絶対悪です。

今年7月7日、世界の圧倒的多数の国々が核兵器禁止条約を投票により採択したとき、私は喜びで感極まりました。かつて人類の最悪のときを目の当たりにした私は、この日、人類の最良のときを目の当たりにしました。私たち被爆者は、72年にわたり、核兵器の禁止を待ち望んできました。これを、核兵器の終わりの始まりにしようではありませんか。

 責任ある指導者であるなら、必ずや、この条約に署名するでしょう。そして歴史は、これを拒む者たちを厳しく裁くでしょう。彼らの抽象的な理論は、それが実は大量虐殺に他ならないという現実をもはや隠し通すことができません。「核抑止」なるものは、軍縮を抑止するものでしかないことはもはや明らかです。私たちはもはや、恐怖のキノコ雲の下で生きることはしないのです。

 核武装国の政府の皆さんに、そして、「核の傘」なるものの下で共犯者となっている国々の政府の皆さんに申し上げたい。私たちの証言を聞き、私たちの警告を心に留めなさい。そうすれば、必ずや、あなたたちは行動することになることを知るでしょう。あなたたちは皆、人類を危機にさらしている暴力システムに欠かせない一部分なのです。私たちは皆、悪の凡庸さに気づかなければなりません。

 世界のすべての国の大統領や首相たちに懇願します。核兵器禁止条約に参加し、核による絶滅の脅威を永遠に除去してください。」

この演説は核廃絶の障害となっている犯人を挙げている。まずは核保有の「9カ国」。つまり、米・露・英・独・仏・中の核保有5大国(P5)に、イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮を加えた「強請9人組」である。いずれの国も、他国の核は危険極まりないもので、自国の核は対抗措置としてやむをえないものであり、平和のための核という。サーローさんは、この核保有9カ国を「都市全体を燃やし尽くし、地球上の生命を破壊し、この美しい世界を将来世代が暮らしていけないものにすると脅し続けています。」と厳しく指弾する。

サーローさんの指摘は、これにとどまらない。「強請9人組」を主犯として、その共犯者に警告を発している。その筆頭が明らかに日本だ。
「『核の傘』なるものの下で共犯者となっている国々の政府の皆さんに申し上げたい。私たちの証言を聞き、私たちの警告を心に留めなさい。そうすれば、必ずや、あなたたちは行動することになることを知るでしょう。あなたたちは皆、人類を危機にさらしている暴力システムに欠かせない一部分なのです。私たちは皆、悪の凡庸さに気づかなければなりません。」

もう少しはっきり言い直してみよう。
「『アメリカの核の傘』なるものの下で共犯者となっている日本の安倍晋三さんと行政府の皆さんに申し上げたい。私たち広島・長崎の被爆者の証言を聞き、私たちの警告を心に留めなさい。そうすれば、必ずや、日本政府も真剣に行動すべきことになるでしょう、核兵器禁止条約を早期に批准しなければならないことを知るでしょう。安倍晋三さん、そして行政府の皆さん。あなたたちは皆、人類を危機にさらしている暴力システムに欠かせない一部分なのです。あなたたちは、自分に言い訳しながら犯している悪事について、その罪の大きさに気づかなければなりません。」
(2017年12月11日)

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