澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

目出度さも中くらいか ― 2018年弁護士会選挙結果報告

常々思っていることだが、弁護士会は市民に開かれていなければならない。市民に支えられ市民とともに歩む姿勢を大切にしなければならない。弁護士会は権力と対峙する側にあるのだから、市民に支えられなければ権力に抗する力を持ち得ない。

弁護士会が何を考えているか。市民に対する広報も重要だが、弁護士会の役員選挙での公約を市民に知ってもらうことも大切だと思う。弁護士が、真に市民の利益のための弁護士会を作ろうとしているのか、それとももっぱら弁護士の利益を考えているのか、選挙戦はリアルに弁護士らの姿勢を映し出す。

本日(2月9日)は、日弁連会長選挙の投開票であり、各単位会の役員選挙の投開票でもあった。日弁連次期会長(任期2年)には、東京弁護士会の菊地裕太郎候補が当選した。いわゆる主流派の路線が継承されることになる。この路線の生ぬるさを批判する立場から立候補した武内更一候補は、意外と水を開けられた。得票数1万3005対2847であった。

両候補についての評価は、1月31日の当ブログ「日弁連会長選挙 保守派も革新派も『弁護士自治を堅持』」をご覧いただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?p=9852

最大単位会である東弁の会長選挙立候補者は2名、二大派閥の法友会と法曹親和会を地盤とした各候補。第三の派閥である期成会は、過去3人の東弁会長を出している。かつて、右翼誌が「日弁連は東弁が動かしている」「東弁は期成会がキャスティングボードを握っている。」「その期成会は共産党が牛耳っている」「だから、共産党が日弁連を動かしている」という『名言(迷言)』を語らしめた期成会である。今年は、久しぶりにその期成会から会長候補擁立をという声が高かった。

しかし、期成会からの東弁会長候補擁立は立ち消えになり、親和の冨田秀実候補を推すことになった。その冨田候補の公約のメインスローガンは、「憲法的価値を護り、法化社会を実現する」である。立派なものと言ってよい。対立する安井規雄候補のものは、「すべての市民の人権が等しく保障される社会に」というもの。これとてなかなかのものだが、冨田候補に比較すれば明らかに薄味。もっとも、濃い味が好まれるとは限らない。薄味であればこその支持・支援もあるだろう。

本日投開票の結果、2408票対2126票の僅差で、薄味派が当選した。これが現実。

破れた濃い味派冨田候補の選挙公約の一部を特に記して記憶しておきたい。公約全体は膨大だが、立憲主義と弁護士自治堅持の部分に限って。

☆立憲主義を堅持する
政治権力の恣意的な権利行使を制限する立憲主義は堅持しなければなりません。解釈によって実質的に憲法を改変した安全保障関連法に対してはその廃止を含め見直しを求め、その運用も監視すべきです。国民の権利を制約する特定秘密保護法や共謀罪の運用についてもその監視を怠ってはなりません。そのためにも、国民の知る権利の保障を充実させ、情報公開の促進と権力監視の仕組みを強化することが必要です。
憲法の基本原理である国民主権主義、平和主義、基本的人権尊重主義に反するような改正には、断固として反対します。したがって、憲法9条に自衛隊を明記しようとする加憲論については、同9条が「原理」規定である点や平和主義・立憲主義の観点から賛成することはできません。

☆憲法的秩序を護るためにも弁護士自治を堅持する
憲法は、刑事被告人に対して弁護人依頼権を保障し(37条3項)、弁護士(弁護人)が刑事被告人の人権を護る重要な役割を担うことを認め、国民には裁判を受ける権利を保障(32条)しています。刑事事件では国家と対峙することから、国家の圧力から、また、民事事件においては、外部の不当な圧力から弁護士の職務の独立性を担保するために、弁護士法によって弁護士自治が認められています。同時に、弁護士法は、弁護士の使命を「基本的人権の擁護と社会正義の実現」と定め、その使命を遂行するための活動についても、弁護士が外部から不当な干渉を受けないように弁護士自治が認められています。このように、弁護士が、その職務を遂行し、活動をするにあたって、弁護士自治は個々の弁護士の職務や活動の独立性を護るためのもので、ひいては、依頼者の人権や権利を護るための制度的な保障ともなっているのです。
ところで、近時、弁護士不祥事事件が多発し、国民の弁護士に対する信頼が揺らいでいる状況があり、その対策は喫緊です。依頼者見舞金制度や預り金□座の届出制のみならず、東弁における具体的な防止策や対策を講じ、国民の信頼を回復し、弁護士・弁護士会にとって最も重要な弁護士自治を堅持します。

冨田候補による弁護士自治堅持の語り口の熱さには脱帽であり、冨田候補の落選は残念と言わざるを得ない。敗れたとはいえ、これだけの公約を掲げた候補がこれだけの票を取ったのだ。その影響は小さいはずがない。

当選後のあいさつで、安井候補は、こう言ったそうだ。

「私は、三つのことを守ると約束する。国民の人権を守る。平和憲法を守る。そして、弁護士自治を守る」

その言やよし。

(2018年2月9日)

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