澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

どうして? いつのまに、日本が民主主義後進国に?

デモとストとは、民主主義社会の健全性をはかるバロメータである。デモは政治的言論の自由を象徴し、ストライキは経済的要求活動の活性度を表す。デモもなくストもない社会は、抑圧された社会であるか、 活力を失って零落しつつある社会でしかない。当然に、民主主義後進国ということにもなる。どうも、日本がそれに当たるようなのだ。

ドナルド・トランプという粗野で我が儘な人物がいる。「人種差別主義者で戦争屋で女性蔑視者で環境破壊者」なのだ。アメリカの民主主義は、こんな人物に権力を預けた。それゆえトランプは、粗野で我が儘だけでなく、最も危険な人物となった。

この男が今年(2019年)の5月25日から28日まで日本にやって来たとき、政権と皇室と相撲協会とゴルフ場と炉端焼きが、それぞれの思惑をもって最大限のオモテナシをした。これは、粗野で我が儘で危険な人物への対応としてあるまじき、明らかに異常な事態。一方、トランプの訪日に抗議する真っ当な民衆のデモは、まことに小規模なものでしかなかった。残念ながら、日本の社会が抑圧されて活力を失っていることを如実に示す結果となった。

そのトランプが、6月3日から訪欧し、まずは4日イギリス・ロンドンで市民運動の大規模なデモに迎えられた。ロンドン発時事によれば、「トランプ米大統領の国賓訪英に反対する大規模デモが4日、ロンドンで行われた。米英首脳会談に合わせたもので、全国各地から推定で約25万人が参加。『共にトランプに対抗しよう』をスローガンに、人種差別的とされるトランプ氏の政策に抗議の意を示した。デモは反戦・女性団体、環境保護団体など複数の市民グループが共同で主催。市中心部のトラファルガー広場から、会談会場の首相官邸に近い議会議事堂前広場に向け、参加者らは『人種差別にノー』『トランプ(の政策)を捨てよう』などと書かれたプラカードを掲げて練り歩いた。野党労働党のコービン党首も参加し、集会で『(デモは)トランプ氏に攻撃を受けた人々を支援する機会だ』と演説した。
議事堂前広場には抗議の一環として、トランプ氏をおむつ姿の赤ちゃんに見立てた巨大風船『トランプベビー』が掲げられた。ロイター通信によると、企画した一人は『大統領に対し、いかにこの国で歓迎されていないか想起させたい』とコメント。デモは、バーミンガムやグラスゴーなど国内各地でも企画された。」

イギリス社会は、おむつ姿の巨大風船『トランプベビー』を掲げることによって、その知性も理性も、そして活力も失っていないことを世界に示したのだ。

ところで、日本での反トランプのデモは極めて小さい規模のものだったが、新天皇の就位をめぐっての提灯行列は大規模に行われた。シンガポール陥落を祝っての昔の話ではなく、21世紀の今の実話。けっして作り話ではない。

「愛知県を訪れている天皇皇后両陛下は1日夜、名古屋市内の宿泊先のホテルで、ちょうちんを手に集まった大勢の住民の歓迎にこたえられました。
両陛下は全国植樹祭に出席するため、1日から2日間の日程で愛知県を訪問していて、… そして1日夜、名古屋市内の宿泊先のホテルの前にある公園には、大勢の人たちがちょうちんを手に集まり、両陛下も午後8時半すぎ、ホテルの17階にある明かりが消えた部屋の窓辺にちょうちんを持って立たれました。
住民たちがちょうちんを振ったり万歳三唱をしたりして歓迎の気持ちをあらわすと、両陛下は、上下左右にちょうちんを振ってこたえられました。最後に部屋の明かりがついて両陛下の姿が見えると住民から歓声があがり、両陛下は、何度も手を振ってこたえられていました。」(NHK)

いうまでもなく、「提灯を持つ」とは、頼まれもしないのに進んで他人の手先として働くこと。あるいは、へつらってその人をひたすら褒めて宣伝することをいう。引用したNHKの報道を「提灯記事」というのだ。戦前の国家主義教育を受けて滅私奉公を叩き込まれた臣民は、こぞって天皇に提灯を持ち、群をなして提灯を掲げた。嗚呼、日本国憲法下の今にしてなお、その臣民根性が抜けやらぬのだ。

提灯から、火袋を外すと、ろうそくとなる。韓国の民主化運動では大規模なろうそくデモが繰り返された。朴槿恵政権を退陣に追い込んだのは、光化門広場を埋めつくし溢れ出た100万を遙かに超す人々のろうそくデモだった。提灯行列と、ろうそくデモ。ちょっと似ているが、まるっきり違う。権威や権力に操られた人々のへつらいと、主権者としての自覚に基づく権力打倒の政治行動。

こんなはずはなかった。戦後の日本は、思想・良心の自由も、表現の自由も、民主主義も手にしたはずではないか。食糧メーデーも、血のメーデーも、安保闘争も、スト権ストも、公害闘争も、原水禁運動も積み重ねてきた。アベのような戦前回帰主義者に抗して、改憲だって阻止し続けてきたではないか。

それが、どうも最近調子がおかしくはないか。デモもストも、規模が小さい。元気がない。日本はいつから民主主義後進国になってしまったのだろうか。
(2019年6月6日)

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