(2023年5月31日)
NHKの報道姿勢に関心を持つ市民の皆様
そして報道各社の皆様へ
NHK情報公開制度を活用しての《NHK文書開示請求訴訟》が大詰めです。来週に迫った次回法廷では、森下俊三経営委員長を尋問します。
ひとも、傍聴と報道をお願いいたします。
時 6月7日(水) 13時10分?
(12時30頃に傍聴券配布。12時50分締め切りの予定)
所 東京地裁103号(大法廷)
当日の人証は以下の3名です。
証人 中原常雄(経営委員会事務局長・原告側尋問時間30分)
被告 森下俊三(経営委員会委員長・原告側尋問時間60分)
原告 長井 暁(元NHKチーフプロデューサー・尋問時間20分)
なお、閉廷後に報告集会を行います。こちらにもぜひご参加ください。
時間 17時30分?
場所 東京弁護士会502号(A・B・C)
この訴訟の原告は、NHKを行政のくびきから解放して、独立したジャーナリズムに育てようという、壮大な志を持つ市民運動に携わってきた114名。被告はNHKと、現職の経営委員会委員長・森下俊三氏。
NHK運営の透明性を確保し、視聴者への説明責任を全うさせようという情報公開請求ですが、情報公開を妨害してきた被告森下の責任を問う訴訟となっています。
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《NHK文書開示請求訴訟》概要の解説
原告の主たる請求は、「第1316回経営委員会(2018年10月23日開催)議事録」の全面開示です。併せて、議事録の正確性を担保するための録音テープの開示も求めています。形式的にはその義務は被告NHKにありますが、実質的にその義務を妨げているのは被告森下の責任であると原告側は考えています。
「第1316回経営委員会」では、経営委員会が当時のNHK会長上田良一氏に、口頭での厳重注意を言い渡しています。表面上は「ガバナンスの不徹底」「視聴者目線に立っていない」という名目ですが、経営委員会は明らかに外部勢力と一体となって、NHKの番組制作現場に圧力を掛けたのです。だから、放送法が命じている、議事録の作成も、その公表もなかったのです。
この訴訟の第1回口頭弁論期日(21年9月)を報告する原告団ニュースは20頁に及ぶものですが、その冒頭の大見出しが、「番組妨害・議事録隠し・放送法違反の森下俊三氏が経営委員長の職に留まることを許さない」というものです。このよくできたスローガンが原告・弁護団の合い言葉です。
問題の発端は、NHKの看板番組「クローズアップ現代+」が「日本郵政のかんぽ生命不正販売」を取りあげたこと。2018年4月のことです。
この番組が、日本郵政の不興を買って、制作現場のみならずNHK執行部も、当時日本郵政グループの上級副社長であった鈴木康雄氏(元総務次官)を先頭とする攻撃にさらされました。このとき、防波堤となるべき経営委員会は、あろうことか、日本郵政側に立って番組制作現場とNHK会長を攻撃したのです。なんと、経営委員会は、当時の会長を厳重注意としました。
さすがに恥ずかしくて公表できなかった経営委員会議事録の完全開示を求めて原告らは本件提訴に及んだのです。そうしたら、「議事録のようなもの」が提出されました。しかし、明らかに正規の議事録としての手続を踏んだものではなく、その記載の真偽を確認の術もありません。起こしの元となった録音テープの提出を求めたところ、都合よく「既に廃棄した」というのです。誰が、いつ、なぜ、どのように、廃棄したとは言わずに、ともかく廃棄した、存在しないのだといいます。到底信じがたく、このことが、法廷で尋問の対象となります。
(2023年1月27日)
一昨日(1月25日)午後、稲葉延雄・NHK新会長が就任の記者会見に臨んだ。その一問一答が報道されている。各紙の見出しは、概ね以下のとおり。
NHK・稲葉新会長、政治と適切な「距離」を保つ姿勢強調(毎日)
稲葉新会長 前会長の改革「私の目から検証、見直しを」(朝日)
NHK、稲葉新体制発足「デジタル活用が改革の本丸」(日経)
記者会見は全体にそつのない印象。かつて安倍政権ベッタリの姿勢を隠そうともしなかった籾井勝人などとの同類ではない。だが、前任者前田晃伸と自民党族議員との仲はすこぶる険悪だったという。その前田の再任を阻んでの不自然な「元日銀理事」からの人選。本当にこの人が適任なのか、どうしても疑問を拭えない。
彼が言いたかったのは、冒頭の下記発言で尽きるだろう。
「◆稲葉 前田晃伸前会長がこれまで取り組んできた改革では、業務の効率化を大胆に進めることで、受信料値下げに伴う収入の減少を収支均衡に持っていく道筋におおむねメドをつけていただいた。この先、想定通りに財務の数字が表れてくるかどうか、しっかり見極めながらこの秋の受信料の値下げを実現していきたい。
その上で、私の役割は改革の検証と発展。かなり大胆な改革なので、若干のほころびやマイナス面が生じている部分があるかもしれない。もしそうであれば丁寧に手当てをしながら、ベストな姿に持っていく。特に、人事制度改革については検証・見直しを行っていきたい。ひとりひとりが能力を最大限発揮してもらうために、多様なキャリアパスを示して、安心して職務に専念できる温かみのある人事制度にしたいと考えている」
さて、幾つかの注目すべき発言がある。
――これまでNHKという組織を外からどう見ていたか。
「◆私は日銀時代に経緯があって放送法を勉強するチャンスがあった。放送法第1条には放送の目的として「健全な民主主義の発達に資する」などとうたわれていて、非常に感銘を受けた。そういう組織があるんだというふうにNHKについては受け止めていた」
そつのない発言の典型のようでもあるが、この人、本当に放送法を勉強したのだろうか。やや心もとない。放送法第1条はNHKに関しての規定ではなく、放送一般についてのものだからだ。放送法第1条を引いて、NHKを「そういう組織があるんだ」というのはちょっとヘン。
放送法の第1章「総則」と第2章「放送番組の編集等に関する通則」は、民間放送を含む放送事業一般についての規定で、第3章「日本放送協会」で初めてNHKが出て来る。彼が「感銘を受けた」という「健全な民主主義の発達に資する」ことを理念とする組織は、NHKに限らないのだ。
――政権との距離について。会長選出時に多くの社が岸田文雄首相側の意向が働いたと報じていた。選出前に、実際首相側から打診が何かあったか。
「◆私にそういう動きがあったかということか? それはない」
「それはない」は、あまりに素っ気ない。では、いつころ、誰から、どのように「日銀出身者」に打診があったというのか、知りたいところ。本当に、首相側から打診がなかったとは、にわかに信じがたい。
――NHKにはこれまでも政治的圧力があったと指摘されている事例がたくさんある。会長として政権と今後どう向き合うのか。
「◆NHKは放送法に基づいて運営されている。放送法では自主自律・公平公正な立場を堅持して、何人からも干渉されない対応をしていくべきものだとうたわれているし、そのように行動すべきだと思っている。報道機関として自主的な編集判断に基づいて、不偏不党の立場から報道している。できるだけ真実を掘り下げて、見つけ出す努力をすることは不可欠。それでも真実が見つからない場合には、多様な見方を等しく取り上げてお伝えする。そういう姿勢を維持していけば、結果として不偏不党の報道姿勢になると思っている」
これは、まことに微妙な言い回しである。端的に、「NHKが政治的圧力に屈することはない」とも、「会長として、政権からの干渉を拒否する姿勢で向き合う」とも言わない。「放送法がある以上、不偏不党の立場から報道しているはず。今のままで、結果として不偏不党の報道姿勢になると思っている」と、まことに頼りない。ほんとに大丈夫なのだろうか。この人。
なお、記者からの発問にある「会長選出時に多くの社が岸田文雄首相側の意向が働いたと報じていた」。その内の一つを再録しておきたい。
昨年12月7日配信の「東洋経済オンライン」の抜粋である。
「NHKの経営委員会は12月5日、2023年1月24日で任期満了となる前田晃伸会長(77)の後任として、日本銀行元理事の稲葉延雄氏(72)の任命を決めた。同日、稲葉氏は「突然のご指名で大変驚いておりますが、できるだけ早く実情を把握し、公共放送の使命にふさわしい仕事をしていきたい」とのコメントを出した。
事情に詳しいNHK関係者によれば、直前まで別の人物が最終候補として挙がっていた。前田晃伸会長の出身母体であるみずほフィナンシャルグループと親密で、個人的にも親交のある大手総合商社の元会長だった。「商社で社長や会長を歴任し、経済界のみならず幅広い人脈と知見を持っていた点が評価された」(NHK関係者)とされ、別のNHK関係者は「本人もやる気だったようだ」という。
だが、次期会長人事が表面化すると、官邸や自民党から横やりが入る。総務省関係者によれば、総務大臣経験者をはじめとする自民党の総務族が、この人選に「ノー」を突きつけた。理由は「前田会長に近い人物だったから」(総務省関係者)というものだった。
そして、声がかかったのが稲葉氏だった。打診があったのは12月最初の週末。12月6日の会見で稲葉氏が「迷っている暇なく(任命の)昨日が来た」と口にしたのもそのためだ。関係者の間では「“前田憎し”の官邸や自民党は、前田会長との距離が近いことを理由に(商社元会長の人選を)認めず、経営委員会に稲葉氏を推薦した」との見方がもっぱらだ。
そもそも前田会長と官邸、そして自民党との間には、埋めがたい溝があった。NHKの経営委員会の委員は衆参両院の同意を経て任命され、業務執行の責任者であるNHK会長はその経営委員らが決めている。NHKに関する重要な施策は総務省や政治の意向を仰ぐのが不文律でもある。
だが、前田会長のやり方は違った。2020年1月の就任後、「スリムで強靱な新しいNHK」をテーマに管理職の3割削減や、職員の昇進や昇格プロセスに関する人事制度改革に着手。その目的や経緯について官邸や自民党などに説明することなく進めたため“不評”を買った」
すべては、公共放送NHKにおける権力からの独立性欠如の結果なのだ。新会長、果たして、この重い課題に取り組む意欲有りや無しや。
(2023年1月21日)
毎日新聞一昨日朝刊の「記者の目」欄。「NHK会長人事 視聴者から見えぬ選考過程」というメインタイトル。「ささやかれてきた『首相官邸の関与』」「『透明性』のために多くの事実開示を」という二つの小見出しが付いている。執筆者は屋代尚則記者(東京学芸部)。NHK問題を論じつつ、ジャーナリズムのあり方や、民主主義的な組織論についての問題提起となっている。
間もなくNHK会長が交替する。前田晃伸現会長が退任して、1月25日付で稲葉延雄新会長の就任となる。新会長は元日本銀行理事で、その後はリコーの取締役会議長だった人物とか。果たして、問題山積のNHKの会長としてふさわしい人なのかどうか。多くの国民の関心の集まるところだが、昨年からNHKや関係者への取材を続けてきた専門記者の目からも「視聴者から見えぬ選考過程」として違和感を抱かざるを得ないという。むしろ「ささやかれてきた『首相官邸の関与』」を嘆いている。これでよかろうはずはない。
記者の疑義は、端的にこう表現されている。
「NHKは視聴者の受信料で成り立つ公共放送だ。そのトップを担う人物が、私たちの目が届かない“密室”で決められ、そこに政権の意向が関わっているのではないかという疑念が、私には拭えない。」
ジャーナリズムの本領は権力からの独立にある。権力におもねらず、権力批判を恐れぬ健全な言論のためには、政権の意向が関わっての会長人事などあってはならない。ところが、記者の目はこう見ている。
「NHKは、報道機関として政治との適切な『距離』をどう保つかが常に問われる。しかし、会長の人選を巡っては近年、首相官邸の強い関与が指摘されてきた。今回の会長人事を巡っても、ある自民党の国会議員は『官邸が会長人事に関わる動きがあった』と明かし、永田町では、稲葉氏を推す声が岸田文雄首相の周辺から上がったのではとささやかれている」
だから、会長人事の選考過程の透明性が重要になるのだが、会長選任権を持ち、この人事に責任をもつ立場にある経営委員会委員長の森下俊三は、記者の質問にこう答えるのみだという。
「『人事に関することは基本的に非公表だ。ただ透明性は求められるので、おおむね過去(の会長人事の際)と同じフォーマットで公表している』というものだった。事前に政治家と話をしたのかという質問にも『人事の話なのでコメントは控える』」
記者の問題意識は、民主主義の根幹に関わる。「国会議員も、首相も閣僚も、自治体の首長も、私たちの目が届かない“密室”で決められてはならない」。公共放送の会長人事も、同様である。「人事に関することは基本的に非公表」という論理こそが厳しく非難されなければならない。実は、政権肝いりの会長人事をカムフラージュしているだけのことではないか。これでよかろうはずはない。
このような不透明な選考過程でNHK会長となる稲葉延雄なる人物、昨年12月の記者会見でこう言っているそうだ。
「中央銀行(日銀)は自主性、独立性が求められる。NHKも不偏不党、公平公正な報道を追求する組織で、NHKが持つ使命には親近感を覚える」
こりゃダメだ。この人は、報道機関のあり方を日銀と同等のものとしか理解していない。ジャーナリズムの基本理念など頭にないのだ。
本来彼は、こう言うべきだった。
「私は長く日銀に勤めて、政府の金融政策の一翼を担ってまいりました。その経歴から、私の基本姿勢が政府寄りで、NHK会長としては不適格ではないかという視聴者や国民の皆様のご疑念はよく理解しております。
しかし、私は心機一転、民主主義におけるジャーナリズムとは何であるかについて虚心に学び直し、あの会長だからNHKは、政府寄り・政権寄り・権力寄りだと言われることのなきよう、放送を担当する現場の自主性を最大限尊重して、NHKを健全な報道機関とすることに鋭意努力をいたします」
さらに、こう続けたら満点なのだが。
「私のNHK会長人事打診が、経営委員会からのものではなく、官邸から直接のものであったことは、世に噂されているとおりです。火のないところに煙は立たないのです。しかし、私はけっして官邸に忖度はいたしません。おそらくは、官邸の期待を裏切ることになることでしょう。それが視聴者や国民からのNHKに対する信頼を維持するためにやむを得ないからです」
なお、日銀法と放送法との差異を指摘しておきたい。
日銀法第4条(政府との関係) 「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」
当然といえば当然なのだが、日銀とは、「政府の経済政策の一環をなす」存在である。それゆえ、その活動は「政府の基本方針と整合的なもの」であることが求められ、「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と縛られているのである。政府からの独立はおこがましい。
NHKは、他の民放と同様、第1条2号・3号で、こう目的を定められている。
「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」
仮に、日銀のごとくに、「政府の基本方針と整合的なもの」「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図る」とすれば、報道機関の使命の死以外のなにものでもない。
(2023年1月20日)
一昨日、東京高裁(細田啓介裁判長)は、東京電力の元幹部、勝俣恒久・武黒一郎・武藤栄の3被告人に、一審に続いての無罪判決を言い渡した。が、なんとも釈然としない。どうしても、ざらついた違和感を拭えない。
この事件、東電福島第一原発事故に伴う住民の被害に関して、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたもの。当初、検察官の処分としては不起訴だった。が、告発した市民が納得できないとして検察審査会への審査を申立てて起訴相当の議決となり、さらに起訴議決があって、強制起訴となった。
11人の検察審査委員のうち、少なくとも8名以上(全員だった可能性もある)が、2度にわたって、「起訴すべし」と判断したのだ。予想される巨大津波に対して、なすべき対策を怠って、避難を強いられた入院患者らを死亡に至らせた。その責任は問われるべし、というのが市民の結論である。
一審以来の争点は二つ。「予見可能性」と「結果回避可能性」である。予見可能性とは、「本件事故の原因となった巨大津波の発生は予見できた」ということであり、結果回避可能性とは、「取るべき対策をとっていれば原発事故は防げた」ということである。いずれの「可能性」の認定も微妙な判断とならざるを得ない。そして、通常の刑事訴訟の原則のとおりに、立証責任は検察官役を務める指定弁護士の側が負うことになる。
具体的に問題とされたのは、2002年に国が公表した地震予測「長期評価」と、長期評価に基づいて東電子会社が2008年に算出した「最大15・7メートル」の津波予測の信頼性だった。このような事前予測ができていたのだから、当然に「予見は可能」であり、これに基づく対策を取れば「結果回避も可能」だったと考えて少しもおかしくはない。
ところが、判決は、「10メートルを超える津波が襲来する現実的な情報だったとは言えず、その具体的な根拠についての証明は不十分」と、「予見可能性」と「結果回避可能性」を否定し、一審の無罪判決を不服とした指定弁護士の控訴を棄却した。果たして、これでよいのだろうか。
通例、人権の重みを論じる立場からは、刑事事件における無罪判決を刑事司法の健全性の証しとして歓迎する。だが、この判決は同列に論じられない。
現代の刑事司法手続の大原則は、《疑わしきは被告人の利益に》というものである。犯罪の立証のために、訴追側には圧倒的な力量が与えられている。合理的な疑いを容れる余地のない程度にまで犯罪の立証ができなければ、無罪の推定が働く。
しかし、その刑事司法の大原則は、飽くまで訴追者である警察・検察の力量と意欲を前提としてのものというべきであろう。さらには、被告人として想定されているのは、権力と対峙する個人である。権力を担う人々や、権力と一体となった人物を想定するものではない。
本件では、指定弁護士の献身的な活動があったが、その活動の力量には自ずから限界がある。検察官が警察を指揮して、また検察庁を挙げての証拠収集能力があることに比較すればその劣位は明白と言わねばならない。
また、強制起訴された被告人3名は、国策を担っての原発運転者でもある。限りなく権力に近い立場と言ってよい。《疑わしきは被告人の利益に》という現代刑事司法手続の大原則を適用することにためらいがあり、無罪の結論に疑義が晴れないのだ。
問題の「長期評価」は、国の機関である地震調査研究推進本部がまとめたものである。これに基づいての08年津波予測は「最大15・7メートル」というものであった。これを採用して、予見可能性を肯定しても、少しもおかしくはない。
ところが、判決は、「長期評価」の信頼性を否定し、「影響が大きな運転停止を義務づけるほどの予見可能性はなかった」「(原発の敷地の高さの)10メートルを超える津波襲来を現実的な可能性として認識させるような情報ではなかった」と結論づけた。その前書きに「誤差を含む」「利用には留意が必要」などとある。東日本大震災が起きた領域の地震発生確率などは信頼度が「やや低い」とされていた。国の中央防災会議の報告などにも採り入れられなかった。などと指摘して信頼性を否定した。併せて、念を入れて結果回避可能性も否定している。
刑事被告人の人権は、権力作用と直接に対峙するものとして疎かにはできない。刑事司法の諸原則は厳格に守られねばならない。しかし、刑事司法の諸原則が当然の前提としている諸条件が調っているとは必ずしも言いがたい本件においてまで、その大原則を、通常の事件にも増して厳格に貫こうとする裁判所の姿勢に違和感を持たざるを得ない。被害者から上がった「不当判決」「悔しい」という声にこそ、十分に耳を傾けたい。
(2022年12月22日)
NHKと森下俊三経営委員長の両者を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第6回口頭弁論が、下記のとおり開かれた。
日時 12月21日(水) 14時
法廷 東京地裁415号
パワーポイントを使っての法廷での原告代理人意見陳述は、原告第7・第8準備書面の主張と、それに対する両被告の応答を整理した上で、4名の人証の申請をし、その採用の必要性を強調した。
ことの発端は、NHK「クローズアップ現代+」が、「かんぽ生命保険」の不正販売を追求する番組を報道したことにある。この報道に日本郵政から圧力がかかってきたとき、NHKの最高意思決定機関である経営委員会は、番組制作の現場を守ろうとせず、日本郵政と一体となって、報道の妨害に手を貸した。その手段が、経営委員会の席上における「NHK会長に対する厳重注意」というもの。公共放送としてのNHKの歴史的な汚点であり、明らかな放送法(32条2項)違反でもある。
114名の原告らが開示を求めているのは、この「会長厳重注意」を言い渡した経営委員会議事録にほかならない。「厳重注意」部分を除いた不完全なものではなく、法規に則った完全な議事録。そしてその議事録の正確性を確認するために必要な、会議録音の生データ。
原告の主張は、この文書開示請求妨害の先頭に立ってきたのが、現経営委員長(当時は委員長代行)の被告森下俊三であり、同人こそが一連の不祥事の元兇として不法行為損害賠償の責めを負うというもの。
この日、裁判所は、原告と両被告に対しそれぞれの主張は尽くしたものであることを確認し、証拠調べの段階に入りたいと述べた。そのうえで4人申請の人証の内、原告1人と、経営委員会事務方の責任者の2名の採用は問題がないとして、残る証人・上田良一(元NHK会長)と、被告本人・森下俊三(経営委員会委員長)両名の採否について、各被告代理人に口頭での意見を求めた。
これに対して、被告森下の代理人からは、「当方から人証申請をして主尋問をしたい」旨が述べられ、被告NHKの代理人は「NHKに対する請求は文書開示に尽きるもので当該文書の存否は会長に聞いても分からない。従って証人としての採用は無用」との意見だった。
若干の意見交換の後に、裁判所は森下側には「次回までに被告森下の本人尋問申請書を提出し、併せて陳述書を準備するよう」指示。NHK側には、「上田証人採否についての意見を文書にして提出するように。原告はこれに反論を。その後に採否を決したい」との意向を明らかにした。
以下に、両名の立証趣旨と尋問事項を抜き書きして掲載する。
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第2 立証趣旨
1 証人 上田良一(元NHK会長)
・NHK会長以下の執行部が、経営委員会の違法な指示にも従わざるを得ない立場にあること
・被告NHKが視聴者からの開示の求めに対して開示すべき文書を、経営委員会委員長の指示によって義務不履行、あるいは遅滞とした経験があったこと
・被告NHKの本件各文書の開示義務不履行あるいは遅延が被告森下の指示によるものであること
・本件開示請求対象である議事録及び会議録音記録の存在
2 被告本人 森下俊三(経営委員会委員長)
・被告森下において、被告NHKに対して、本件各文書の開示をしないように働きかけたこと及びその動機が放送法違反行為の隠蔽にあったこと
・開示対象である本件議事録及び会議録音記録の存在
第3 尋問事項
1 証人 上田良一元NHK会長(2017年1月25日?2020年1月24日)
・経営委員会による「会長厳重注意」に至った事情
・「厳重注意」がどのような意図・目的でなされたと理解したのか
・公表すべき「厳重注意」に関する議事録が未公表のまま放置された経過とその理由
・甲1-2?1-4(以下「粗起こし」とする。)について被告NHKの開示義務履行が遅延した事情
・その他関連事項
2 被告本人 森下俊三(経営委員会委員長)
・本件開示の求めへの対応についての協議のために、被告森下から被告NHKに対しどのように接触したか
・上記接触に対する被告NHKの反応はどのようなものであったか
・本件開示請求に関して、経営委員会から被告NHKに対する接触の有無
・本件開示請求に関して、被告森下から被告NHKに対する接触の目的ととその結果
・通常の経営委員会議事録作成手順
・通常の経営委員会における議事録音の手順
・通常の経営委員会における議事録音記録の保存
・本件経営委員会議事録作成手順
・本件経営委員会議事録音の手順
・本件経営委員会議事録音記録の管理
・録音記録を消除した具体的な経緯
・その他関連事項
(2022年12月14日)
「東洋経済オンライン」に、下記の本日5:00掲載の記事(抜粋)。到底看過し得ない。
「今回の会長人事の前に奇妙な運動が起こっていた。市民団体が元文科省次官・前川喜平氏をNHK会長に推す署名活動を行ったのだ。4万人分の署名がネットで集まったそうだが、私はこの運動に何の意味があるのか不思議だった」「選挙ではないのだ。…運動にはNHKのOBもいて、会長選出の仕組みを知っているはずなのになぜ」「集会の様子が偏ったメディアに拡散されれば効果があると思ったのだろうか。そんなやり方で経営委員に届くはずがなく、「お花畑」と言われても仕方ないだろう。」
市民運動を揶揄するこの見解。市民運動のなんたるかについての理解も想像力もなく、理解しようという意欲も善意もない。民主主義のなんたるかも、公共放送の理念にも無知である。「お花畑」の賑わいも暖かさもなく、「砂漠」の殺風景と「墓場」の冷たさに覆われた記事。
市民運動は、市民一人ひとりの正義感や怒りから出発する。NHKの報道姿勢は明らかにおかしい。政権に忖度したニュースや解説。現場のドキュメントに対する執行部や経営委員会からの介入・締めつけ。優秀で良心的な現場を、権力と一体となった経営陣が押さえつけているのだ。
市民運動が求めるNHK会長は、ジャーナリズムのなんたるかをよく理解している人物である。政権と意を通じた、政権お抱えの会長ではない。優秀なビジネスマンでもない。もちろん、安倍・菅政権から一本釣りされた経営委員のお気に入りでもない。
市民運動は、制度に囚われない。おかしな制度は徹底して批判する。そもそも、会長公選制でないことがおかしいのではないか。マグナカルタ以来の民主主義の基本は、「代表なくして課税なし」である。これは、「課税あるところには、代表選出の権利もなくてはならない」という主張なのだ。
NHKに受信料を支払っている公共放送の視聴者にとっては、「受信料支払いの強制あれば、当然に会長選出の権利もなくてはならない」のだ。放送法の制度を墨守すべきとする姿勢こそが、嗤うべき因循姑息。
市民運動には知恵がある。「前川喜平氏をNHK会長に推す署名活動」は、素晴らしい問題提起をした。多くの人が、政権から独立し得ていない現在のNHKの姿勢に不満を持っていることを明確にしたのだ。市民にとって、前川喜平こそは、政権からの独立を象徴する人物像である。これが、多くの視聴者から歓迎されるNHK会長のイメージなのだ。
NHK次期会長に選任された元日銀理事稲葉延雄は、その人物像を前川喜平と比較されることになる。権力への忖度の素振りは、徹底して批判される。「やっぱり政権ベッタリか」と言われることを気にせざるを得ない。われわれも、遠慮なく批判しよう。「前川なら、こういう態度はとらないだろう」と。
本日の毎日新聞が、「なるほドリ」の蘭で、NHK会長人事を以下のように解説している。『NHK会長、あるべき姿は? 求められる政治的中立 選考過程をオープンに』というタイトル。これを抜粋する。
Q 「あるべき会長像」ってあるのかな?
A リーダーシップはもちろんですが、政治的中立が求められます。放送法などで「公平・公正」「不偏不党」がうたわれているからです。稲葉さんも会長就任の記者会見で「公平・公正が大切」と強調していました。
Q なぜ公平・公正でなければならないの?
A NHKは全国各地や海外に拠点を持ち、その放送には大きな影響力があります。時の政権がNHKに圧力をかければ、国民の多様な意見を反映できなくなり、報道機関として国民の知る権利に応えられなくなるでしょう。2014年に就任した籾井勝人(もみいかつと)会長は、当時の安倍晋三(あべしんぞう)政権の肝(きも)いりで決まったといわれました。就任会見で「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」などと発言し、会長としての資質が問題視されました。
Q 会長を選ぶ過程で、今回は政権の動きはあったのかな?
A NHKの会長を決めるのは経営委員会なのですが、今回も政権の意向があったという指摘もあります。選考の過程をもっとオープンにすべきでしょうね。
もちろん、今回の会長選考過程で、政権の意向も動きも、大いにあった。経営委員会は、実際のところ何の選考も審議もしていないとも言われている。さて、政権丸抱えの新NHK会長、前川喜平と比較されて恥ずかしくない姿勢をとれるだろうか。
(2022年12月11日)
NHK経営委員会ホームページに、12月5日付の「お知らせ」。「本日の経営委員会において、2023年1月25日付で次のとおり会長を任命することを決定しました」とのこと。
任期3年の次期会長として任命されたのは「稲葉延雄」(株式会社リコー リコー経済社会研究所参与)。前川喜平ではなかった。なお、「前田晃伸現会長は、任期満了により23年1月24日をもって退任となります」と公告されている。
なぜ、稲葉延雄なのか。どのような論議を経ての会長人事なのかはまったくの藪の中。経営委員会は、積極的に明らかにしようとはしない。この次期会長、元は日銀理事だというが、その経歴がNHK会長にふさわしいとはとうてい考えられない。この人事からは、さわやかな風は吹いてこない。明るさも見えない。NHKの未来は展望できない。むしろ、もうNHKダメじゃないのか、と思わせるばかり。
18年10月に、経営委員会から不当極まる厳重注意処分を受けた上田良一会長も、もちろん経営委員会が選任している。その上田会長選任時の「会長指名部会議事録」を追ってみると興味深い。
【NHK次期会長の資格要件】がこう確認されている。
1 NHKの公共放送としての使命を十分に理解している。
2 政治的に中立である。
3 人格高潔であり、説明力にすぐれ、広く国民から信頼を得られる。
4 構想力、リーダーシップが豊かで、業務遂行力がある。
5 社会環境の変化、新しい時代の要請に対し、的確に対応できる経営的センスを有する。
その上で、上田良一(元三菱商事株式会社代表取締役副社長執行役員)を会長に推薦する具体的な理由が以下のように述べてられている。
【推薦理由(概要)】
○ 三菱商事株式会社において、海外経験が豊富であり、経営企画部門の責任者としてリスクマネジメント、グループ経営においてすぐれたリーダーシップを発揮するなど、大きな組織の経営に関する経験が豊富であること。
○ NHK経営委員・監査委員として、放送法に明るく、公共の福祉と文化の向上に寄与するNHKの役割を深く理解していること。また政治的にも中立で、沈着冷静であり、国民・視聴者の方にも信頼いただけると期待できること。
○ 放送現場や関連企業をつぶさにまわり、NHK内部の状況にも精通していること。
○ 組織の独立を守り、現場の自由な取材や番組作成の環境作りの重要性を理解した上で、現在進行中のNHK改革を進める見識や手腕を持つこと。
○ 人望に富み常に冷静沈着で温厚な言動や人柄は、NHK職員の人心を掌握し、融和を図る上でも期待できること。
以上の「会長適格条件」を厳格に墨守する限り、稲葉延雄の不適格は明白と言うべきであろう。あるいは、「会長適格条件」なんぞは、そのときその場でのご都合主義の賜物でしかないというのだろうか。
経営委員会は特殊法人NHKの最高意思決定機関であるが、その最も重要な任務が、会長の任命である。会長人選と適否の論議がどう行われたか、その過程はまったく公表されていない。これじゃ、ダメだろう。放送法(41条)違反でもあろうが、なによりも視聴者国民の納得を得られまい。
《市民とともに歩み自立した NHK 会長を求める会》は、さっそく抗議声明を発表し、同時に公開質問状をNHKに送付した。以下に、ご紹介したい。
《NHK 次期会長選出についての抗議声明》
透明性の決定的な欠如と視聴者・市民の声を完全に無視した 次期 NHK 会長選ひ?に抗議します(付・公開質問状)
市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会
共同代表 小林 緑(元 NHK 経営委員、国立音楽大学名誉教授)
河野慎二(日本シ?ャーナリスト会議運営委員)
丹原美穂(NHK とメテ?ィアの今を考える会共同代表)
貴経営委員会は 12 月 5 日、委員 12 人の全員一致て? NHK の次期会長に稲葉延雄氏(元日本銀行理事)を選出したと発表しました。その稲葉氏は当日、「突然のこ?指名て?大変驚いていますか?…」とのコメントを発表しました。
大変驚いたのは、稲葉氏た?けて?はありません。次期NHK会長選ひ?に強い関心を持ち、新会長には時の政権から自立した公共放送の真のリータ?ーにふさわしい人物を、と運動を進めてきた私たち視聴者・市民の方こそ、大変驚きました。
私たちはすて?に11月4日、貴経営委員会に対して、これまて?5期15年にわたって政権の意向をストレートに受けて選出された財界出身の会長て?はなく、時の政権に媚ひ?ない姿勢を明確に打ち出し、日本国憲法・放送法の精神を踏まえた前川喜平氏(元文部科学事務次官)を次期会長に推薦してきました。
しかしなか?ら、今回の次期会長選ひ?に、稲葉氏か?はからす?も「突然…」と表明したことからも明らかなように、貴経営委員会か?、公共放送NHK会長選考の手続において、透明性を決定的に欠き、かつ私たち視聴者・市民の声を完全に無視したことは、公共放送の存在意義及ひ?民主主義の精神に著しく反するものて?ある、と言わさ?るをえません。
私たちは、従前にも増して経営委員会の運営及ひ?新会長選考過程の不透明さに抗議するとと もに心底からの怒りを表明し、今回の次期会長決定の発表を撤回することを要求するものて?す。
さらに、次の私たちの公開質問状に速やかに回答されることを求めます。
今回の次期NHK会長選ひ?についてのいくつかの疑問・質問
いま、国会て?は日本の防衛のありようをめく?って、日本国憲法第9条とも関係する重要な審議か?行なわれています。そうしたなかて?、NHKか?事実を正確に伝え、視聴者・市民の関心を呼ひ?起こし、深い議論の場を提供することは、公共放送として大変重要かつ大切なことて?す。
公共放送NHKか?日本の民主主義と文化の向上・発展にとって果たすへ?き役割は極めて大きいのて?、次期NHK会長には、シ?ャーナリス?ムと文化について高い見識を有し、言論・報道機関としてのNHKの自主・自律を貫く人物か?選任されるへ?きだと私たちは考えています。
そこて?、私たちの会は、次期会長に求められる基本的資格要件として、日本国憲法はもちろん 現行放送法の精神を踏まえ、シ?ャーナリス?ムの在り方について深い見識を有することのほかに、何よりも政治権力からの自主・自律を貫ける人物で?あることか?絶対条件て?あると考えます。
Q1:今回の会長選ひ?の手続において透明性の確保か?決定的に欠如しているのて?はないか
~密室選出過程の問題性、経営委員会の役割は?~
「政府高官によると、首相は水面下て?稲葉氏に接触して口説き落とし、自民党麻生副総裁や菅前首相ら総務大臣経験者への根回しを行ったという」(『読売新聞』2022年12月6日号)と報道 されています。現行放送法によれは?「会長は、経営委員会か?任命する」(第52条)と規定されていますか?、実態としては首相か?決定し、経営委員会は単なるその追認機関に成り下か?っているのて?はないでしょうか。しかも「全員一致」て?。
かつての経営委員経験者の語るところによれは?、たとえ一部の経営委員か?反対しても、外部に発表する場合は「全員一致」とすることになっており、異論は一切表に出ることはなかったそうて?す。実際、今回の場合、本当に「全員一致」た?っのて?しょうか。そこに嘘はないのて?しょうか。
もしそうて?あれは?、「複数の財界人に断られ、最終的に稲葉氏に行きついた」(自民党幹部)と の見方もある人事(同前『読売新聞』)について、経営委員 12 人全員は、稲葉氏のNHK会長と しての適格性をいつ、と?ういう形て?認識し、賛同したのて?しょうか。また、経営委員会はなせ?会 長に連続 6 期も財界人を求めるのて?しょうか。
国会か?再度求めた「手続の透明性」(参議院総務委員会附帯決議、2015年及ひ? 2016年)も無視して会長選出を行なうとしたら、きわめて重大な問題て?あるため、お尋ねしています。
Q2:私たちか?推薦した前川喜平さんは、選考過程て?、と?のように取り扱われたのて?しょうか。~公共放送のリータ?ーを選考する際、視聴者・市民の声は無視?~
私たちは、政権から自立した公共放送のリータ?ーに最もふさわしい新会長候補として、貴経営委員会に対し、元文部科学事務次官の前川喜平さんを推薦するとともに、視聴者・市民による緊急賛同署名を集めてまいりました。このコロナ禍において署名集めは困難を極めましたか?、当初の予想をはるかに上回る署名か?集まりました。この1カ月、オンライン署名(約24,000筆)、書面署名(約21,000筆)あわせて約45,000筆にものほ?りました(2022年12月6日現在)。
私たちの会は11月4日、貴経営委員会に対し推薦した前川喜平さんか?、視聴者・市民の幅広 い支持のあることを証明するために賛同署名約 44,000 筆(2022年11月30日現在)を提出するとともに、貴経営委員会開催直前の12月5日、前川喜平さんについての審議状況についての公開質問状を提出しました。元総務事務次官(日本郵政ク?ルーフ?)による横槍の「声」(番組介入)には直ちに対応するのに対して、私たち視聴者・市民の声か?45,000筆にのほ?っても一顧た?にしないのか?NHKの「お客様志向」の体質て?あるとすれは?、それ自体大変ゆゆしき問題て?す。
ちなみに、経営委員会指名委員会か?2007年11月27日に定めた「次期会長の資格要件」には 「*外部、内部を問わす?推薦する候補か?いれは?委員長に連絡する。」(同日第2回指名委員会議事 録)と付記されていました。
Q3:NHK会長選考については、2015年及び2016年、連続して「選考の手続の在り方について検討すること」を国会から求められています。この点に関し、過去数年の間に、貴経営委員会として、と?のように取り組んた?のか、それとも取り組まなかったのか、お尋ねします。
会長選考にあたっては、BBC(英国放送協会)か?すて?に採用している推薦制、公募制なと?を積極的に導入することにより、政権から公共放送NHKへの直接的な介入を避け、視聴者・市民の 意見を反映させた開放的な会長選考を行なっていくことを提案します。
このことは、現行放送法のもとて?も、経営委員会か?その本来の職責に加え、自主性・自律性を貫き通すことは可能なことて?すし、それか?高らかにうたわれています。こうしたことを通し?て、失われた視聴者・市民からのNHKへの信頼を取り戻していくことになるのて?はないて?しょうか。
以上の質問については、2023年1月15日まて?に下記事務局まて?こ?回答くた?さるよう強く要求します。
(2022年12月2日)
本日の東京新聞に、「『前川喜平さんを次期NHK会長に』市民団体が署名提出 加計学園報道の『忖度』を批判」という望月衣塑子記者の記事。
「来年1月に任期満了を迎えるNHK会長の後任に元文部科学次官の前川喜平さんを推薦する市民団体が1日、NHKの在り方を考えるシンポジウムを東京・永田町(衆議院・議員会館)で開いた。登壇した前川さんは「加計学園問題で、入手した情報を放送できず記者が涙を流したと聞く。NHKはおかしくなっている」と改革を訴えた。」
NHKは、文字どおりのマスメディアである。メガメディアと言っても、ギガメディアと言ってもおかしくない規模。そして、商業放送でも国営放送でもない。飽くまでも国家からは独立したタテマエの、公共放送である。言わば、国民が受信料という形で直接育てている大切な財産。その報道姿勢は、国民生活にも民主主義のあり方にも、巨大な影響力をもつ。
にもかかわらず、NHKの報道はジャーナリズムの本道を踏みはずしたものと指摘せざるを得ない。とりわけ、安倍政権以来その傾向が著しい。なんとかしなければならない。そのような心ある国民の声が、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」の結成となり、「会」は前川喜平さんをNHK会長候補に推薦した。前川さんが積極的にこれを受けとめて、今この運動に弾みが付いている。
この運動を始めた市民団体の発想力に脱帽である。ルールの上では、市民が(あるいは市民代表が)NHK会長を選ぶことにはなっていない。視聴者の意見を聞く手続さえまったくない。だから、市民運動がNHK会長の選任に関わろうという発想は出てこない。しかし、NHKが放送ジャーナリズムである以上は、権力側に軸足を置く存在ではない。権力を批判する市民の側に位置するものなのだ。
だから、NHK会長を市民が選ぶべきが王道なのだ。内閣→経営委員会→NHK会長、という権力による選任ルートがそもそも邪道なのだ。市民運動の発想こそが正しく、経営委員会はこれを形式上追認すべきと言えよう。
ところで、NHKの在り方は放送法で決められている。NHK会長とは何か。どう選ばれるのか。
第51条1項 「会長は、協会を代表し、経営委員会の定めるところに従い、その業務を総理する。」
第52条1項 「会長は、経営委員会が任命する。」
同 条2項 「前項の任命に当たつては、経営委員会は、委員9人以上の多数による議決によらなければならない。」
第53条1項 「会長…の任期は3年…とする。」
同 条2項 「会長…は、再任されることができる。」
NHKの最高意思決定機関は経営委員会である。内閣から紐のついた経営委員会が、NHK会長の選任・罷免の権限をもっている。経営委員12人の選任が、NHKの在り方を決めている。
法第31条は、「(経営)委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない。」とするが、現実は、安倍晋三の息のかかった「アベトモ」に占められている。
現実には「公共の福祉に関し公正な判断をすることができず、広い経験と知識を有する者のうちからの経営委員の選任はない」「教育、文化、科学、その他の各分野及び全国各地方からの選任もなく、ひたすら産業界と右翼文筆家、そして御用学者によって占拠されている」。
そのため、第一次安倍晋三政権時代の2008年1月に、菅義偉総務大臣が古森重隆(富士フィルム社長)を経営委員長に据え、古森が主導して福地茂雄(アサヒビール出身)をNHK会長に選んで以来、松本正之(JR東海出身)、籾井勝人(三井物産出身)、上田良一(三菱商事出身)、前田晃伸(みずほ銀行出身)と、5期(15年)の長きにわたって、安倍晋三と緊密な財界出身者が、経営委員長と政権幹部との密室の協議によって任命されて来ている。ジャーナリズムのあり方も、公共放送の理念も理解しているとはとうてい思えない面々。
その前田現会長の任期が、23年1月に終了する。さて、次期会長も同様であってはならない。前川喜平NHK会長推薦は、これに一石を投じようという市民運動である。この日(12月1日)、前川喜平さんを推薦する賛同署名4万4019筆がNHK経営委員会に提出された。「経営委員会が心の底から改心しさえすれば」、前川喜平NHK会長実現もあり得ないことではない。
またこの日、国会内で開催された「公共放送NHKはどうあるべきか」と題したシンポジウムでは、前川喜平さんを囲む形で、ジャーナリストや研究者、NHKの元職員、市民運動に携わる者が出席して、NHKのあり方について活発な議論を交わした。このようなオープンな議論が重要である。仮に、前川喜平会長が実現しなくても、次期会長は密室での選任過程が問題視されることになる。そして何よりも、その識見や適格性を前川喜平と比較されることにもなるだろう。
この市民運動の成り行き、興味津々である。
(2022年11月22日)
カタール発の報道は、うさんくさいことばかりでウンザリさせられる。この世にはびこる商業主義は、何にでも手を出してしゃぶりつくす。営利のためには、なにものをも犠牲にして恥じない。汚い金にまみれた東京オリンピックがまさにその典型だったが、その腐敗ぶりにおいてワールド・カップも負けてはいない。
さらには、現代の奴隷制とされる外国人出稼ぎ労働者に対する極端な虐待・搾取の問題である。ガーディアンが報じたところによれば、ワールドカップ開催が決定して以来、カタールでは6500人もの外国労働者が死亡しているという。ジェンダー問題も、性的少数者に対する侮蔑の法制度も問題視されている。夜郎自大に自国のルールに固執することは、文明世界では恥ずべきことと知らねばならない。
人権侵害を批判する世界の声に、FIFAはどう応えているか。ほぼ、IOCと同じだ。「サッカーと政治は切り離すべきだ」という、あの論法。「サッカーに集中しよう!」「すべてのイデオロギーや政治闘争に巻き込まれないようにしてほしい」という姿勢なのだ。オリンピックもワールドカップも、スポーツを通じて平和で公正な世界をつくろうという理念を捨て去ったようではないか。
ヨーロッパでは、人権問題の視点からカタール大会に批判が強い。それを象徴するものが、英・BBCの「11月20日、開会式を放送せず」であった。BBCは、その時間帯には、敢えて「カタールW杯が環境に与える悪影響」の番組を放映した。権力に忖度するところのない、硬骨なポリシーの表現である。開会式を大はしゃぎで放映したというNHKとは、好対照となった。
BBCとNHK、どちらも国内では最大の影響力を誇る公共放送メディアである。どちらも視聴者からの受信料収入で成り立つ。だが、国際的な評価は大きく異なる。一口で言えば、「BBCにはジャーナリズム精神が横溢しており、NHKにはそれが欠けている」ということ。「BBCには政府批判に遠慮がないが、NHKには忖度の姿勢に満ちている」「BBCには人権尊重のポリシーがあるが、NHKにはそれがない」とも言えるだろう。
「国民は、そのレベルにふさわしい政治しかもてない」をもじって、「国民は、そのレベルにふさわしいメディアしかもてない」とも言われる。BBCを今のBBCに育てたのは英国の国民であり、NHKを今のNHKに育てたのは日本の国民と言わざるを得ない。
私は、「消費者主権」という言葉を、この局面でも使いたい。もの言う消費者こそが、その消費市場の選択を通じて、企業のあり方を統制する力をもっている。主権者である日本国民は、スポンサーたる視聴者として、NHKにものを言わねばならない。オリンピックの放映のあり方についても、ワールドカップにおいても。そして、政権への忖度の姿勢においても。
(2022年11月5日)
NHKの報道姿勢に関心をお持ちだろうか。NHK会長の人事についてはいかがだろうか。NHKこそは世論に最も大きな影響力を持つ我が国最大の報道機関である。その動向は日本の民主主義に大きな影響を与える。そのトップの人事は、重大な政治マターとならざるを得ない。
政権は、NHKのあり方にも会長人事にも、重大な関心を持ち続けてきた。とりわけ、安倍晋三である。彼はNHKを独立したジャーナリズムと見ることはなく、自分の意のままとなる配下の一部門と考えてきた。その結果、NHKは「アベチャンネル」と揶揄される惨状を呈するに至っている。
民主的感覚を持ち合わせぬ安倍晋三は、自分の右翼仲間で経営委員会を固め、その経営委員会は、5期連続してNHK会長を財界出身者としてきた。在野性のカケラもない人物たち。ジャーナリズムの何たるかを知ろうともしない人たち。もう、いい加減にしてもらいたい。こういう声が、市民による次期会長選任の運動となった。
市民の立場で、公共放送のトップにふさわしい、本来あるべきNHK会長を選ぼうではないか、という運動が起こっている。NHKを真に国民の立場に立つ公共放送として政府のくびきから解き放つには、強靱な在野精神に充ちた強力なリーダーが必要なのだ。
これまで、NHKの政権追随の姿勢を批判し、公平・中立・独立した番組編成を求める市民運動は全国に広範にあった。その人たちが、現前田会長の任期終了(来年1月)を目前に、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」を立ち上げた。森下俊三経営委員会委員長らが次期会長候補推薦の動きをしているとの報に対抗してのことであろう。
とは言うものの、具体的な候補者名はなかなか出てこなかった。具体的な固有名詞なしの「NHK会長推薦」は難しい。ところが、事情を知らない私にとっては突然に、前川喜平さんの名前が上がった。11月1日付で、「前川喜平氏をNHK会長に!」という署名運動が開始された。
そして昨日(11月4日)、「会」と前川さんの記者会見が行われた。ユーチューブでその模様を見た私は、なるほど、前川さんこそが、次期NHK会長にピッタリだと思った。
彼は言う。「私がNHKの会長に就任した暁には、憲法と放送法を遵守して、市民とともにあるNHK、そして不偏不党で、真実のみを重視するNHKのあり方を追求していきたい。そのためには番組の編集、報道にあたって、完全な自由が保障されないといけない」「政治的中立を上から求めたら権力への奉仕となる。不偏不党にも、公平にもならない。大切なことは現場の自由を重んじることだ。表現にかかわる分野では、報道も教育も文化も同じこと」「政府が右を向けと言っても右を向くことはない。左を向けと言っても同じ。けっして政府の言いなりにはならない」
NHKの視聴者は受信料は払うが、会長選任の権利はない。会長選任権は、内閣が任命する12人の経営委員がもつ。さはさりながら、前川喜平会長選任の国民の声は、政権もけっして無視はできまい。
以下に、「会」の呼びかけを紹介しておきたい。
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市民とともに歩み、自立したNHK会長を選んでください!
市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会
公共放送NHKは視聴者の受信料で支えられています。しかしNHK会長は総理大臣が任命したNHK経営委員会が決めます。
第一次安倍政権時の2008年1月に、密室の協議で福地茂雄氏(アサヒビール出身)が会長に選出されて以来、NHK会長には5期連続で安倍氏を支持する財界出身者が選ばれて来ました。そうした会長のもとでNHKは「アベ・チャンネル」と揶揄されるような、政権にすり寄り、時には市民をないがしろにする放送を、ニュースを中心に繰り返して来ました。
私たちは、来年1月に任期満了を迎える前田晃伸会長(みずほ銀行出身)の後任を選ぶにあたって、NHK 経営委員会が過去の病弊を断ち切り、市民とともに歩み自立した公共放送のリーダーにふさわしい新会長を選ぶことを求めます。
私たちは日本社会の民主主義と文化の向上のために、公共放送NHKが果たすべき役割は大変大きいものがあると考えています。そのためにNHK会長には、ジャーナリズムのありようや文化的な使命について高い見識を持ち、言論・報道機関であるNHKの自主・自立を貫き通す人物が選ばれる必要があります。そして、その選定にあたっては、透明性が確保されるべきです。
ところが第一次安倍晋三政権時代の2008年1月に、菅義偉総務大臣が古森重隆氏(富士フィルム社長)を経営委員長に据え、古森氏が主導して福地茂雄氏(アサヒビール出身)をNHK会長に選んで以来、松本正之氏(JR東海出身)、籾井勝人氏(三井物産出身)、上田良一氏(三菱商事出身)、前田晃伸氏(みずほ銀行出身)と、5期(15年)の長きにわたって、安倍氏を支持する財界出身者が、経営委員長と政権幹部との密室の協議によって任命されて来ました。
その間、「政府が右ということを左とは言えない」と発言した籾井会長に象徴されるように、NHKは政権にすり寄り、市民の活動を冷笑するような放送を繰り返して来ました。特に政権に都合のよい報道に偏った政治ニュースは、「アベ・チャンネル」と呼ばれるまでになりました。
菅義偉政権になると前田会長を中心とするNHKの政権追従の姿勢はさらに顕著になり、市民の間にコロナ禍での東京五輪の開催に批判的な意見が強まる中で、NHKは世論を無視してまで、大会の強行を後押しし、盛り上げに邁進しました。そんな中、昨年12月にはBS1スペシャル「河?直美が見つめる東京五輪」という番組で、民主主義の根幹をなす市民の活動、その表現手段としてのデモを貶める内容の番組が放送されました。
一方、前田会長が「スリムで強靭な新しいNHK」を目指すとして進める改革は、公共放送の価値や役割を軽視し、もっぱら経済合理性に重点を置いた人事制度改革・営業改革・関連事業改革に終始しています。前田会長が進める改革の内実は、一般の営利企業ですでに実践されてきたコンサルティング会社による改革案を、そのまま持ち込んだものに過ぎません。こうした強引な改革によって、NHKの現場は疲弊・荒廃し、放送番組の質の低下となり、視聴者の期待を裏切る事態が生まれています。
10月11日には前田会長は、菅氏ら総務大臣経験者を中心とした自民党議員からの圧力に屈し、取りまとめていた経営計画案を急遽修正してNHK経営委員会に提出したことが新聞報道によって明らかになりました。政権主導で選ばれたNHK会長では、政治家の圧力に抗えない事実が白日の下にさらされました。
このままでは日本社会にとってかけがえのない公共放送が崩壊しかねません。私たちは、公共放送の健全性を取り戻し、この社会の民主主義を育てるために、ジャーナリズムに深い見識を備え、NHKの自主・自立を貫き通すためのリーダーが、次期会長に選ばれることを強く望みます。
下記のURLから署名ができます。
https://www.change.org/p/%E5%89%8D%E5%B7%9D%E5%96%9C%E5%B9%B3%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%92%E6%AC%A1%E6%9C%9Fnhk%E4%BC%9A%E9%95%B7%E3%81%AB
キャンペーン ・ 市民とともに歩み自立したNHK会長を選んでくだ
さい! ・ Change.org