たまたまこのブログに目を留められた都内有権者の皆さんに訴えます。
東京都議会選挙が、3日後の日曜日に迫っています。多くの心ある有権者が、「自民党には投票しない」「今回だけは傲れる自民党に厳しいお灸を据えなければならない」とお考えのことでしょう。しかし、その大切な自民への批判票。都民ファーストの会にやってしまっては、結局は同じ穴のムジナを太らせるだけのこと。あなたの自民党批判の意図が生きることにはなりません。
アベ一強政治の傲りは、政治を私物化し、おトモダチ人事で要所を固め、行政の公平をねじ曲げ、数の力による諸悪法の製造を強行し、説明責任を放棄し、議会制民主主義を形骸化するなど、既に末期症状に至っています。このような事態で、安倍晋三は9条改憲に手を付けようと言い始めました。最後の悪あがきというほかはありません。
特定秘密保護法、戦争法(安保関連法)、そして共謀罪法案(「組織的犯罪処罰法改正案」)の究極の強行採決。森友学園、加計学園問題。辺野古新基地建設強行と沖縄県民いじめ、国連での核廃絶条約への反対の立場、福祉の削減、労働法制での弱者いじめ…。安倍政権の反国民性はまことに顕著といわねばなりません。
さらに、萩生田光一、豊田真由子、稲田朋美、下村博文など日替わりメニューで腐敗ぶりを見せつけてもいます。こんな政党に、大切な一票を投じることなどできるわけがありません。
では、自民批判票を対立するどの政党、どの候補者に投ずべきか。よくよくお考えください。
メディアは、ことさらに自民対小池新党対立の構造を描いています。つまり、非自民票の受け皿としての都ファへの投票を誘導しているのです。しかし、大切な一票です。ちょっと待ってください。都ファへいれるのはもったいないといわねばなりません。
もし、あなたが都ファに投票をとお考えなら、ぜひ「なぜ」「どうして」と反芻していただきたいのです。都ファって、いったいなんだろうか。どんな理念で、何を目指している政党なのだろうか。ご存じでしょうか。
小池百合子という党首が、右翼組織である日本会議国会議員懇談会の元副会長であり、「歴史教科書問題を考える会」の役員を務め、歴史修正主義の片棒を担いできたこと。「つくる会」系の教科書採択をサポートする運動に参加してきたこと。元は安倍第1次内閣の防衛大臣であり、数え切れないほどの政党を渡り歩いてきた政治家であること。そして、民族差別主義団体在特会系団体と近しいことなどは、よく知られているところですが、さて都民ファーストの会とはいったい何なのか。
以下が都民ファーストの会の綱領です。念のために申し添えますが、これが全文です。ぜひ読んでみてください。この綱領をもつ政党に、何らかの政治理念を感じられますか。この政党が誰のために、何をしようとしているのか。どんな具体的政策をとるのか、想像ができますか。あなたの一票を託せるでしょうか。
宇宙から夜の地球を見た時、世界は大きな闇と、偏在する灯りの塊に見える。その灯りの塊の最も大きなものが、東京を中心とした輝きである。
その輝きは、東京という大都市の力であり、経済の大きさであるが、同時に、そこにある一つひとつの灯りの下に、人々の生活があり、営みがあることを政治は想像できなければいけない。
一つひとつの灯りが揺らいではいけない。
もちろん、全体の輝きが褪せてもいけない。
この20年の硬直した都政の下で、アジアの金融拠点はシンガポールに、物流拠点は上海に、ハブ空港は仁川に後塵を拝しつつある。東京が産業構造の変革の波の中で、世界をリードする絵図を描けているか。少子高齢化が叫ばれながら、福祉対策の転換を導いているか。老朽化する都市は輝きを失うのではないか。様々な危機に対する準備は万全か。これまでの延長線をなぞるだけの都政でよいのか。
だから、今こそ「東京大改革」の旗を私たちは掲げる。
「東京大改革」とは、首都東京を、将来にわたって、経済・福祉・環境などあらゆる分野で持続可能な社会となりえるよう、新しい東京へと再構築すること。東京の魅力ある資産を磨き直し、国際競争力を向上させること。都民一人ひとりが活躍できる、安心できる社会にステージアップすることである。
そのための大原則を「都民ファースト」「情報公開」「賢い支出(ワイズスペンディング)」とする。私たちが自らの名に「都民ファースト」を冠するのは、都政の第一目的は、都民の利益を最大化すること以外にないと考えるからである。一部の人間、集団の利益のために都政があってはならない。
私たちは、旧来の勢力に囚われている都政を解き放ち、躊躇なく東京を活性化し、行政力の強化を行う。区部のさらなる発展を図り、多摩・島嶼振興を積極的に推進することで、東京2020オリンピック・パラリンピック後も輝き続ける首都東京を創造していく。
今日よりも明日、明日よりも未来に希望がもてる社会を描くため、私たちが「東京大改革」をすすめていく。
都民ファーストの会の初代会長は、野田数という極右というべき人物です。まぎれもなく、反憲法、反民主々義思想の持ち主。元小池百合子衆議院議員秘書で、2016年の東京都知事選挙では小池百合子の選挙対策本部責任者を務めて、当選後に知事の特別秘書(政策担当)に任命された人物。今年の1月新設の都民ファーストの会初代代表に就任して、6月1日小池都知事が正式に都民ファーストの会の代表に就任したことに伴い代表を退任しました。
この人、2012年10月「東京維新の会」を代表して、日本国憲法無効論に基づく大日本帝国憲法復活請願を東京都議会に提出しています。その中で、「我が国の独立が奪われた時期に制定された」と現行憲法の無効を主張するとともに、皇室典範については「国民を主人とし天皇を家来とする不敬不遜の極み」「国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄」すべきことを主張しています。
こんな人物が小池新党の初代代表者として、綱領や政策を作ったというのです。小池という衣の下に見える鎧がこの野田数。空っぽの綱領の底にあるのが、憲法否定、国民主権否定の恐るべき極右思想。
あなたが真剣に、よりよい政治を望むのなら。さらには、平和や人権や民主主義が重んじられ、働きやすく住みやすい格差の少ない社会を望むのであれば、都民ファーストの会に投票してはいけません。
ぜひ共産党へ、あるいは民進・社民・自由の、立憲民主主義を掲げている各政党の候補者への投票をお願いいたします。
(なお、以上の記事は「リテラ」「ウィキペディア」「都民ファーストの会公式ホームページ」等を参考にしています)
(2017年6月29日)
あー。いやなことを思い出す。政権1期目のおしまいのころのこと。歯車が軋んで、何をどうやっても、うまくいかなくなった。何をやっても、何を言っても、裏目に出て叩かれっぱなし。その結果が史上例を見ない、みっともない政権投げ出しとなったんだ。2007年8月のこと。あれからもうすぐ10年。10年前の悪夢を思い出すと、またキリキリ腸が痛む。
あれは、オレだけの責任じゃない。獅子身中の虫は獅子を食らうというじゃないか。オレが獅子だというほどのうぬぼれはないが、何匹もの虫に身を食われた痛みを忘れることができない。一年足らずの短命政権が、不祥事で5人もの大臣辞任者を出した。だから、オレの責任じゃない。身中の虫のせいだ。
あのときの虫は、まず規制改革担当大臣の佐田玄一郎だ。事実上存在しない事務所の費用に7800万円も支出したという政治資金の虚偽報告だ。この佐田の辞任が、ケチのつきはじめ。
次が、厚生労働大臣柳澤伯夫。「残業代ゼロ法案」推進が国民の反発で挫折した挙げ句が、女性を「産む機械」とした失言。この追及は応えた。女性の支持率が下がっちゃった。
その次が、「原爆投下しょうがない」発言で辞任した久間章生防衛相。まだある。農水相の松岡利勝。事務所費問題の追及で自殺に追い込まれた。その後任が赤城徳彦。あの「バンソウコウ王子」だ。政治資金虚偽報告疑惑渦中の彼の顔がテレビに映るたびに支持率が下がって、持ちこたえられなくなった。政権も、オレの腸もだ。
第2次政権以後も、虫虫虫虫…。虫だらけだ。
小渕優子経産大臣と松島みどり法務大臣の『ダブル辞任』。次いで、経済財政政策担当大臣甘利明、高木毅原発事故再生担当相、西川公也農水大臣、下村博文前文科相、沖縄対策担当大臣鶴保庸介、復興大臣今村雅弘、地方創生担当大臣山本幸三、法務大臣金田勝年。アベチルドレンと言われた政務官クラスだと、数え切れない。
中でも噛みつかれて痛い虫が、パワハラ豊田真由子だ。「このハゲーーーーーっ!」の衝撃はメガトン級だ。しかも、選挙の応援演説で、オレが豊田を連呼しているところが繰り返された。豊田にではなく、オレにとって最悪だ。都議選でオレが街頭演説をやれば、聴衆は豊田真由子の「このハゲーーーーーっ!」を連想するだろう。イメージ悪過ぎで、オレの出番がなくなった。
せっかくダメージの少ない方を選択して、無理して国会閉じて森友・加計に蓋をして都議選になだれ込んだのに、あまりにも悪いタイミング。政権末期には、こんなことが起こるんだ。
そして、イナダだ。あの無能、懲りずにまたやらかした。いったい何度目だ。
産経報道の見出しが「稲田朋美氏発言で“三重苦” 『とばっちりだ…』突然の後ろ矢、憤る自民候補 他党は『敵失で好機』」というもの。「影響は自民現職2人や都民新人2人など10人の候補で5議席を争う激戦の板橋区選挙区にとどまらず、都議選全体に飛び火しつつある。」と遠慮がない。
産経ですら、厳しいイナダ批判で、自民と政権に手厳しい。ということは、全メディアが政権に遠慮せずにものを言うようになったということだ。政権への遠慮した物言いができない空気が蔓延しはじめているのだ。やっぱり、政権の末期症状だ。
もっと大きな虫がいる。菅だ。もっと上手に懸案を処理してくれるはずではなかったのか。森友問題も、加計問題も、収束の筋書きが書けていない。失敗続きで、責任大きい。何とかしろ。
いや、忘れていた。最大の虫はオレ自身だ。獅子を食い尽くした虫をよく見たら、獅子そのものだった。オレがオレ自身を食いちらし、食い尽くしたのだ。考えてみれば、惨めに政権を投げ出したオレが、第2次政権を作ったのがそもそもの間違い。そもそもオレの右翼体質が、結局は国民に受け入れられなかったということなのだ。
都議選の結果が恐ろしい。とりわけ、真っ向からの政権批判者だった共産党の議席次第で、悪夢が正夢になる。
ああ、祇園精舎の鐘の音が耳に重く響く。
「アベーーーーーっ! ヤベーーーーーっ!」「ダメーーーーーーっ!」と。
(2017年6月28日)
つい先頃までネットでの選挙運動は禁止されていた。大いにその不平を鳴らしていたが、4年前の公職選挙法改正で解禁となった。ようやくにして今は「自由」だ。これを活用しない手はない。
要点を確認しておこう。
選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」などと面倒な定義がなされている。そんな定義にこだわることはない。
要するに、「きたる7月2日の東京都議選文京選挙区では、自民党の悪政に対決し、すべての働く人々に明るい未来を切り開く、日本共産党の福手ゆう子に、ぜひとも清き一票をお願いします」と、特定の選挙について、特定の候補者の名前を出して、投票依頼をしてもよいということだ。
選挙運動は不自由極まりなく、選挙用文書の規制も厳しい。しかし、有権者の誰もが、ホームページ、ブログ、SNS、動画共有サービス、動画中継サイトで、選挙運動ができるのだ。大いに活用すべし、ではないか。もっとも、不特定多数者へのメール発信による選挙運動は誰もが考えるところだが、候補者・政党にのみ許され、一般有権者には解禁されていない。
また、注意すべきは、選挙とは本来が正々堂々の言論戦であるということ。言論には自ずから制約がある。虚偽や侮辱の言論を慎むべきは当然であり、また、匿名に隠れての無責任な言論もあってはならない。
だから匿名のネット選挙運動は、認められていない。「ネット選挙運動には、メールアドレスを表示することが義務づけられている」(公職選挙法第142条の3第3項)。メールアドレスの代わりに返信用フォームのURL、ツイッターのユーザー名などでもよい。その違反に罰則はないが、プロバイダー責任制限法での削除対象にはなり得る。
また、選挙運動は、選挙の期間中になすべきこととなっている。ネット選挙運動も、告示日(6月23日)から、投票日の前日(7月1日)までのこと。選挙当日には選挙運動としての新たな書き込みはできないが、それまでにアップした記事を削除する必要はない。なお、18歳未満の者は選挙運動ができないルールだから、当然にネットでの運動もできない。
さて、都議選である。ネットによる言論戦が望まれる。今は、投票結果に結びつく発信をすべきときだ。
メディアは、もっぱら「小池与党」対「自民」の対立構図を描いているが、そうとらえてはならない。この選挙は、なによりもアベ一強政治弾劾選挙だ。アベ強権政治ノーの一票の積み上げの舞台だ。共謀罪反対の意思表示であり、共謀罪採決強行に見られた議会制民主主義の危機への有権者の警鐘の選挙だ。政治を私物化し、行政をねじ曲げ、政治過程の透明性を奪い、真摯な説明責任を放擲したアベ自民党政治への怒りを表明する機会だ。投票による世直しのチャンスなのだ。
メディアはこれをミスリードして、「小池知事派過半数か 自民第1党か」(朝日)、「知事勢力の過半数焦点」(東京)、「小池勢力VS自民 新構図の決戦」(産経)などと言っている。こういう構図が喧伝されれば、「小池」と「自民」だけがクローズアップされ、その他の政治勢力の存在が霞んでしまうことになる。
ところが、選挙状勢はそうなっていないようなのだ。
JX通信社なるネット配信社が、東京都内世論調査を昨日(6月26日)発表している。
6月24?25日実施のもの。788人から回答を得たという。
見出しを「都議選中盤情勢 都民ファーストが第1党の勢い維持」とし、
アブストラクトを
「都民ファーストに投票32% 自民は19%」
「『築地は守る、豊洲を活かす』に賛成58%」
としている。要するに、ありきたりのメデイアの構図である。
注目すべきは、都民の投票意向先調査で、1週間前の前回数値との比較である。
「都民ファースト」 32.2%(前週比-2.4ポイント)
「自民党」 19.5%(前週比+0.8ポイント)
3位以下の投票意向先では、
共産党が12.2%(プラス4.2ポイント)
民進党が 6.0%(プラス1.3ポイント)
公明党が 5.1%(プラス0.5ポイント)
都ファは、支持を減らしている。-2.4ポイントは、決して小さな数値ではない。注目は共産党。先週の8.0%からの12.2%の獲得は52.5%の増である。この上昇幅のもつ意味は大きい。
前回都議選の自民党得票率は36%。この数値と比較しての今回19.5%は明らかに自民党への都民の批判が大きいことを物語っている。しかし、その批判票の受け皿が小池新党であってはならない。よく知られているとおり、小池は改憲論者の右翼。「日本会議国会議員懇談会」の副会長経歴を持つ。「新しい歴史教科書をつくる会」の支持を受けている歴史修正主義者でもある。また、公明党は、国政ではアベ政治を支え、都政では小池と組もうという無原則。
「自民批判票を、小池新党にやってはならない。ぜひとも共産党に」という呼びかけの手応えが、1週間での「プラス4.2ポイント=52%増」ではないか。共産党の地道な自民批判と、都ファ・公明に対抗しての選挙運動が実を結びつつあるように見える。
(2017年6月27日)
時事が伝える昨日(6月25日・日曜日)の首相動静である。
午前10時現在、東京・富ケ谷の私邸。朝の来客なし。
午前中は来客なく、私邸で過ごす。
午後も来客なく、私邸で過ごす。
26日午前0時現在、私邸。来客なし。
以下は6月19日付読売の報道。
「読売新聞社は17?18日、全国世論調査を実施した。
安倍内閣の支持率は49%で、前回調査(5月12?14日)の61%から12ポイント下落した。不支持率は41%(前回28%)に上昇した。
内閣支持率が50%を割ったのは、昨年6月17?19日調査(49%)以来。下落幅は2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で最も大きかった。ただ、最低を記録した安全保障関連法成立直後(15年9月調査)の41%は上回った。内閣を支持しない理由のトップは『首相が信頼できないから』48%で、第2次安倍内閣発足以降で最も高かった。」
ほかならぬアベの盟友、ナベツネ新聞がアベの不人気を報道せざるを得ない事態。これが、1週間前のこと。とはいえ、このときはまだ内閣の支持率が不支持率を上回っていた。今、さらに事態は深刻だ。
毎日に続いて、朝日も読売もアベ内閣不支持が支持率を上回った(都内有権者)という世論調査結果を発表した。数字だけではない。折も折、アベチルドレンの一人、豊田真由子議員の「パワハラ・絶叫」事件。随伴して繰り返される安倍晋三のパワハラ議員支援連呼絶叫の映像。加計学園問題だけでなく、森友学園問題も大きく人々に記憶を呼び起こす事態となっている。
アベの私邸は東京都内にある。その東京が天下分け目の都議選の真っ最中。その短い選挙期間のラスト・サンデーに、自民党総裁安倍晋三の出番はなかった。自民党都議団凋落が囁かれている事態にもかかわらず、である。アベに応援受けるなんて、不人気を背負い込むようなもの。豊田真由子を連想させるだけ。自民党都議候補からすれば、疫病神同然なのだ。聴衆から罵声を浴びせられることにもなりかねない。
だから、お呼びがかからない。お呼びがかからないから、ラスト・サンデーが「ふて寝サンデー」となったのだ。
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孤独だな。さびしいな。誰も声をかけてくれない。世の中冷たいな。神戸は五月晴れなんて言ってみたけど、東京は霧だ、靄だ、いや闇だ。
あああ、パンダはいいな。なんの悩みもないんだろうな。ただいるだけで、ちやほやされて、人寄せパンダだもんな。ボクもパンダになりたい。
あああ、藤井聡太君はいいな。若くてたいへんな人気だ。実力ある人が羨ましい。ボクもああなりたいな。
あああ、前川さんはいいな。なんてったって信念の人だものね。いうことにスジが通っていて、説得力があるものね。ボクも信念がほしい。いまさら、無理だろうけど。
あああ、籠池夫婦はいいな。彼らなりに「夫婦相和し」ってのを実践しているもんな。お互いの信頼関係が深いんだろうな。ウチの夫婦はダメだ。やることなすことうまくいかない。籠池夫婦みたいになりたいな。
考えてみれば、ボクって、才能はなく、学識も常識もデンデンなく、もちろん誠実さも信念もない。それでいて上から目線で人間関係を上手に作れない。それでも、生まれの良さと図々しさだけでやってきたんだ。それが、とっくにメッキは剥げちゃっている。これまでは、不思議と人気だけはあって大きな顔をしてきたけどもう駄目なようだ。となると、ボクって何の取り得もない、どうしようもない人間だってことが、しみじみとよく分かる。
一期目の終わりのことを思い出す。なにもかも逆目に出て、泣きべそかいて政権を投げ出したあの惨めなときのこと。今度も、はしゃいだ挙げ句の身の破滅となるんだろうな。でも、自業自得だものな。批判はすべて本当のことだから、しょうがないかな。
これまではみんな黙っていたくせに、ボクが落ち目になると批判をはじめる。経団連会長まで、「ぜひ是正してほしい。約束通り説明の機会をつくり、総理の言葉で国民に説明してほしい」なんていう。ボクに説明責任を果たし、信頼回復に努めろなんていうんだ。
これまで、ボクが「国民の皆様にご理解いただけるよう、丁寧に説明を続けていきます」と何度も言って、一度だって実行していないのは知っているはずだろう。できることなら、とっくにやっている。できないからやっていないんじゃないか。みんなそんなことはよく分かっていて、「説明責任を果たすべきだ」なんて。みんな意地が悪いんだ。しかも、ボクが口を開くと「あまりに下品で不誠実で幼稚」と罵られてばかり。
あああ。パンダにあやかりたい。藤井聡太がうらやましい。前川喜平を真似したい。籠池夫婦はいいな。それにつけても…、いつの間にボクってこんなにみじめになっちゃったんだろう。
(2017年6月26日)
学生時代の親しい友から電話がかかってきた。
友「安倍晋三が、『加憲的な9条改憲』ということを言いだしたろう。あれは、いったいどういうことなんだ?」
私「9条1項の戦争の放棄、9条2項の戦力不保持には手を付けずにそのまま残しておいて、9条3項か、9条の2を新しく付け加えるというあれね。」
友「『自衛隊を憲法上の存在として明記する』というのだから、自衛隊の合憲化をねらっていることは間違いない。けど、よう分からんのは、ホントにそれだけなのかどうか。これまでの政府の解釈も、『自衛隊は違憲の存在ではない』のだから、わざわざ憲法改正までやるほどのことはないだろう。」
私「『加憲的改憲』は公明党の主張だから、その賛成を得やすいというところは、大いにあるだろうね。自民党改憲草案のように、9条2項を削除して国防軍を創設するということでは、危険すぎて現実性がない」
友「けどな。ホントに『自衛隊は違憲ではない』ことを明確にするだけのことだったら、手間暇かけてこんな改憲手続をわざわざするはずがない。必ず、ウラがあるんだろう。」
私「9条3項でも9条の2でも、これが新しく付け加えられことで、9条1項2項の解釈が違ってくることは大いにありうる。」
友「そこが、ポイントなんだな。『新しく付け加えられた9条3項が、9条1項2項の上書きをする』などという解説を読んだが、『上書き』ではよく分からない。こんなときの法律用語があったろう。」
私「有名な法諺に『後法は前法を破る』というのがある。『後法は前法を廃止する』ともいうようだ。『後法優先の原則』と言っても同じこと。」
友「9条1・2項と、新3項とは矛盾するという前提で、新3項が1・2項の内容まで変えてしまうということだな。」
私「そうだ。まずは、9条1・2項と、新3項との解釈に齟齬がないように、統一的な解釈を試みなければならない。しかし、いかんせん『陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない』という2項の定めと、新3項の『自衛隊の存立』。両者が矛盾なく並立することは常識的に困難だろう。」
友「9条3項におくことで合憲化しようという自衛隊は、ホントに今のままの自衛隊なのかね。将来『戦力に変質しうる自衛隊』ではないのか。」
私「そのまえに、『今のままの自衛隊』がなんであるかを確認しなければならない。戦争法によって集団的自衛権行使や他国軍への『後方支援』の権限を付与された自衛隊なので、決して『専守防衛の自衛隊の合憲化』ではないことが重要だろう」
友「なるほど、そのように言われると、3項の新設によって2項が破られてしまうということの意味が見えてくる。」
私「小狡いアベのやることだ。うんと悪いことに決まっている。そう構えるのが正しい対処だと思うね。」
友「しかし、なんで後法が優先するのだろう。意味が明確な2項に矛盾しない範囲で3項を解釈すると考えてもおかしくないじゃないか。」
私「直近の主権者の意思が、従前のものより尊重されてしかるべき、ということだろうね。」
友「いったい、新3項の具体的な条文案はどうなるのだろう。」
私「けっこう具体的な案文作りは楽ではないと思うよ。やましい意図を隠しながらのダマシのテクニックを駆使しなければならないのだから。」
友「報道だと、自民党は現行9条『堅持』の姿勢を示して公明党の理解を得、年末までの改正案取りまとめを目指す。その前倒しという話もある。保岡興治は『来年の通常国会が終わるまでに発議できればベスト』ということじゃないか。」
私「2020年施行を逆算すれば、そんなペースだが、そんなにうまくいくはずはなかろう。」
友「そうだな。落ち目のアベ。落ち目の自民党だよな。傲りの挙げ句の支持率低下だ。今度の都議選でもお灸を据えられることになるのだろう。」
私「アベには哲学も理念もない。現行憲法のどこをどう変えねばならぬという信念がない。しかし、この無原則が彼の強み。改憲派を糾合する立場としてはうってつけだと思う。ともかく憲法に傷を付けたいという、反憲法の情念だけは人一倍強い。そのアベの求心力が落ちてくれば、自民党も与党もまとまらない。日和見維新も遠ざかる。右翼連中からも惰弱と指弾されることになる。そんな彼にとっての悪循環が始まったように見えるよね。ようやくのことだけど」
(2017年6月25日)
本日は、久しぶりの松山。愛媛弁護士会が主催し日本弁護士連合会共催のシンポジウム「安保法制が成立した今、愛媛玉串料訴訟最高裁判決の意義を考える」に招かれての出席。朝羽田を発っての日帰りだったが、まだ身体は元気なのがありがたい。
愛媛玉串料訴訟大法廷判決(1997年4月2日)から20年。その地元愛媛で、判決の意義を再確認しようという企画。もちろん、現在の憲法状勢に照らして20年前の判例を見直してみようという趣旨。それが、「安保法制が成立した今」と付された意味なのだ。
「安保法制が成立した今」とは、集団的自衛権の行使として海外に派兵された自衛隊員に戦死者が出る、そのことの現実的な可能性を考慮しなければならない「今」である。再びの靖国神社合祀はないのかと問わざるを得ない今のことなのだ。戦後70年余、平和憲法下に戦死者あることを考えずにきた日本が、今までの日本ではなくなった。
スケジュール冒頭の記念講演が、当時愛媛大学で憲法を担当し、愛媛玉串料訴訟の理論的支柱であった諸根貞夫・現龍谷大学法学部教授による「安保法制と愛媛玉串料訴訟の意義」。
教授は講演の最後に、「特に戦死者の扱いについて」として、次のようにまとめられた。
「死にどのように向き合うかは故人ないし近親者の『自己決定権』と密接にかかわる問題で、そこには特定宗教で『祀られない自由』も含まれると解すべきである。『自由とは、他人を害しないすべてをなし得ることに存する』(フランス「人権宣言」第4条)とするならば、靖国神社は自己の『信教の自由』を一方的に主張して、他者の『祀られない自由』を害することはできないと解すべきである。国家による特定宗教を利用した戦死者の『管理』は許されない。最高裁が特定の宗教団体を特別に扱ってはならないと明言し、戦没者の慰霊などは『特定の宗教と特別のかかわり合いを持つ形でなくても』行うことができると指摘していることに注目すべきである。
そして、下記3名の各弁護士の報告と、パネルディスカッション。
愛媛玉串料訴訟弁護団長・弁護士西嶋吉光
岩手靖国訴訟弁護団・弁護士澤藤統一郎
箕面忠魂碑訴訟弁護団・弁護士加島宏
愛媛玉串料訴訟大法廷判決は、靖国神社・護国神社境内で挙行する祭祀に対し、県費から支出の玉串料等を奉納することが、憲法20条3項・89条に定める政教分離原則に反する違憲行為と断じた。多数意見13、反対意見2である。
なお、反対意見2の一人が、最高裁長官三好達。ネトウヨ同然の反対意見を書いて、退官後は日本会議の議長になった。大した識見である。
なお、諸根教授に対抗して、被告知事側に「理論」を提供したのが、当時愛媛大学に在籍していたもうひとりの憲法学者・百地章。勝敗があまりに明白に出たことが印象深い。
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私の岩手靖国違憲訴訟報告レジメを掲載しておく。
第1 岩手靖国違憲訴訟と判決
岩手靖国違憲訴訟とは原被告を異にする二つの(住民)訴訟からなる
☆当初は岩手靖国公式参拝違憲訴訟(1981年3月16日提訴)
天皇と内閣総理大臣の靖国公式参拝を求める県議会決議の違憲を問題にしたもの
(同様の決議は県議会レペルで37、市町村議会レペルで1548あった)
原告(牧師・元教師) 、被告(議長・県議40人)。
なお、この議会決議運動を主宰したのは、「英霊にこたえる会」。その初代会長が、石田和外元最高裁長官。
☆岩手玉串料訴訟(県費からの玉串料支出違憲訴訟・82年6月28日提訴)
原告住民(多彩な市民) 被告(知事・福祉部長・厚生援護課長) 県が補助参加
(提訴の日が愛媛玉串料訴訟と同日)
1983年夏の陣としての証拠調べ
原告側証人 村上重良・大江志乃夫・高柳信一の各氏
被告側証人神野藤重申(靖国神社禰宜)氏
そして、「最低・最悪」完敗の一審判決(1987年3月5日)から
「完勝」の仙台高裁控訴審判決(1991年1月10日)に
第2 高裁判決の憲法判断
☆ 天皇・首相の靖国公式参拝は違憲
☆ 県費からの玉串料支出は違憲
いずれも、目的効果基準に拠りつつ、これを厳格に適用しての違憲判断。
潜在効果・波及効果・象徴的効果などを重視する姿勢。
上告却下 特別抗告却下
第3 弁護団は政教分離問題をどうとらえたか
*信教の自由の制度的保障規定⇒基本的人権(精神的自由権)に関わる問題
*天皇を再び神にしてはならないとする歯止めの規定⇒国民主権原理に関わる問題
*軍国神社靖国と政権との癒着を禁じる規定⇒恒久平和主義に関わる問題
*政教分離の「教」とは、「国家神道の残滓」であり、「天皇の神聖性」鼓吹であり、国民精神を戦争に動員した「軍事的擬似宗教」である。
☆政教分離は、憲法の根幹に関わる大原則。自衛隊の海外派兵や自民党改憲論にからんで、ますますその重要性を高めている。歴史認識に立っての正確な認識が必要となっている。
(2017年6月24日)
さあ、東京都議選が始まった。アベ一強政治に破綻が生じ、人心が離れつつある絶好のタイミング。この都議選は一地方議会の選挙にとどまらない。民意の在処をはかるまたとない機会。アベ政権による政治の私物化と、それを抑制できない自公与党体制への国民の審判のまたとないチャンス。共謀罪の廃止や、9条改憲阻止の民意を示すチャンスでもある。中央政治に、大きな影響を期待しうる注目すべき選挙。
この選挙はアベ一強批判選挙だ。最大の注目点は、自民党にどれだけの打撃を与えられるかということだ。前回選挙に比較して、前回の2013年6月都議選での自民党の当選者は59名、獲得票数は163万票、得票率は36%だった。この水準からのマイナス分が、アベ自民批判の国民の審判だ。具体的には、森友・加計両事件に象徴される政治の私物化とねじ曲げ。そして共謀罪強行に見られるアベ自民の徹底した非民主的姿勢への批判。
問題は小池新党(都ファ)の評価である。その基本性格は自民党凋落分の保守の受け皿。その機能は自民党離れ票の革新政党への流れを堰き止めるための防波堤。それが客観的な小池新党の役割。
127議席の過半数が64。小池新党単独ではこの数字に届かないが、公明と与党体制を組むことによって過半数に達するとの見方もあるようだ。
私は、地元(文京)で共産党・福手よう子候補の第一声に立ち会った。文京区は定数2で前回選挙では貴重な議席を確保している。長く都議だった現職の後継新人候補を当選させようと熱気は高い。応援に駆けつけた大阪の辰巳孝太郎、東京の吉良佳子両議員ともども熱弁を振るった。
「国政を私物化し、憲法を壊す安倍自公政権を首都・東京から変えよう」「そのための共産党の躍進を」「加計学園の疑惑。安倍首相は岩盤規制に穴を開けたというが、加計学園しか通れない特別の穴だったではないか」「安倍首相に直ちに臨時国会を開かせて必要な証人喚問をさせるよう徹底追及しよう」「特定秘密保護法・戦争法、そして共謀罪。さらには憲法9条改憲の安倍政権は徹底追及するしかない」「共謀罪法廃止も、改憲阻止も都議選の大きな争点」「開発優先の都政から、生活重視の都政への大転換を」「そして、築地市場の豊洲への移転をきっぱりと中止し、築地市場を未来に引き継ごう」「小池知事は豊洲移転を中止して、築地を営業しながら再整備する道を真剣に具体化すべきだ」「文京区内の待機児童をなくそう、特養待機高齢者をなくそう。孤独死をなくそう」「そのため、大塚車庫跡地の福祉施設利用を実現しよう」「国保税の引き下げを実現しよう」…。実に多彩な訴えだった。
自民党を減らす。だが自民離れ票を小池新党に止めてはならない。ぜひとも、自民離れ・公明離れの票を、共産党の受け皿にまで。そのような気迫のこもった演説。大いに期待したい。
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ところで、本日(6月23日)は沖縄慰霊の日。毎年、この日のことは当ブログで触れている。以下は、一昨年6月23日当ブログの一節。
沖縄県には、2か条の「沖縄県慰霊の日を定める条例」がある。1974年10月21日に制定されたもの。その全文が以下のとおり。
「第1条 我が県が、第二次世界大戦において多くの尊い生命、財産及び文化的遺産を失つた冷厳な歴史的事実にかんがみ、これを厳粛に受けとめ、戦争による惨禍が再び起こることのないよう、人類普遍の願いである恒久の平和を希求するとともに戦没者の霊を慰めるため、慰霊の日を定める。
第2条 慰霊の日は、6月23日とする。」
本日が、その沖縄県の「慰霊の日」。「その日は県はもちろん県下の全市町村とも閉庁となり、沖縄戦の最後の激戦地であった南部の戦跡地で『沖縄全戦役者追悼式』が行われます」(大田昌秀「沖縄 平和の礎」岩波新書)。
この日の慰霊の対象は全戦没者である。戦争の犠牲となった「尊い生命」に敵味方の分け隔てのあろうはずはなく、軍人と民間人の区別もあり得ない。男性も女性も、大人も子どもも、日本人も朝鮮人も中国人も米国人も、すべて等しく「その死を悼み慰める」対象とする。「戦争による惨禍が再び起こることのないよう、人類普遍の願いである恒久の平和を希求する」立ち場からは、当然にそうならざるを得ない。
味方だけを慰霊する、皇軍の軍人・軍属だけを祀る、という靖国の思想の偏頗さは微塵もない。一途にひたすらに、すべての人の命を大切にして平和を希求する日。それが、今日、6月23日。
酸鼻を極めた国内で唯一の地上戦終了の日。第32軍(沖縄守備軍)司令官牛島満と長勇参謀長が自決し、旧日本軍の組織的な戦闘が終わった日をもって、沖縄戦終了の日というのだ。
私は、学生時代に、初めてのパスポートを手に、ドルの支配する沖縄を訪れた。右側の車線を走るバスで南部の戦跡を回った。牛島中将の割腹の姿を模したものという黎明の塔を見て6月23日を脳裡に刻した。沖縄戦は1945年4月1日の米軍沖縄本島上陸から牛島割腹の6月23日までと教えられた。
大田昌秀はこれに異を唱えている。終戦50年を記念して、知事として沖縄戦の犠牲者のすべての名を永遠に記録しようという「平和の礎」建設の計画に関連して語っている。(以上引用終わり)
私は、大学4年の冬に1か月余沖縄にいた。そのとき、大田昌秀と仲宗根政善の両氏に出会っている。
大田は、琉球大学の学徒で有名人ではなかった。この人から聞いた話として記憶にあるのは、従軍学徒の南部戦跡での悲劇だった。鉄血勤皇隊員の死亡の多くは、井戸に水汲みに行っての狙撃の犠牲だったという。井戸は米軍陣地から丸見えの位置にあり、水汲みは不可欠な任務だった。標的にならざるを得ない危険な仕事。このような仕事は、兵ではなく中学生学徒の仕事とされた。遺書を書き米軍の隙を突いて井戸に駆け寄って、多くの命が奪われたという。級友が死んでいく中で、自分は軍中枢の伝令の役を担って、井戸汲みの役は免れた。伝令の最中に捕虜になって生き延びたが、水汲み役で死んでいった級友に対する負い目に堪えられず、以来南部の戦跡にはけっして行かないということだった。この人があとで著名になり知事となって、あの時の人かと思い当たった。
仲宗根政善は、当時知らぬものとてない著名人で、当時は東大に勤務していた。たまたま沖縄に帰っておられたときでお目にかかる機会を得た。最近、その人に、次のような歌が残されていることを知った。
日の丸の旗もあがらず爆音の
とどろきわたる復帰のあさけ
沖縄のいくさをへにし身にしあれば
などかなじまぬ国旗、君が代
叙勲の報すなほにはなれず
戦に失せし乙女の姿浮かびて
「沖縄のいくさをへにし身にしあれば などかなじまぬ国旗、君が代」という感懐はよく分かる。日の丸も君が代も、沖縄のいくさをもたらした元凶。穏やかな沖縄の人々に、いくさの悲劇を押しつけたものの象徴。沖縄のいくさをへにし身として、日の丸にも君が代にも、なじみがたいというのだ。怒りの表現ではなく、なげきの表現となっていることに意味が深いのであろう。
仲宗根政善が
いわまくら かたくもあらん
やすらかに ねむれとぞいのる
まなびのともは
と詠ったあの悲劇のときから72年。
今年も、沖縄全戦没者追悼式が行われた。辺野古新基地建設を強行するアベ晋三が「沖縄基地負担の軽減」を口にする奇妙さ。
東京都民が、沖縄県民になし得ることは、7月2日投票の都知事選でアベ自民党に痛打を与えることだ。自民党の票と議席を減らそう。
(2017年6月23日)
本日(6月22日)、文京区革新懇事務局からご報告を受けた。
本日の文京区議会本会議で、「組織的犯罪処罰法(共謀罪の趣旨を含む)の廃止を求める請願」採択の議決があったとのこと。これは快挙だ。さすが、わが地元の議会。立派なものだ。
この請願は5月31日付で賛同者の署名簿を添えて議会に提出された。タイトルは「『共謀罪』法案(組織的犯罪処罰法改正案)の廃案を求める請願」。請願者は、文京平和委員会と文京革新懇の連名。請願案件は、総務区民委員会に負託されて請願審査がなされたが、採択に至らぬうちに共謀罪法は強行成立してしまった。
ところが、その後の委員会審査では、「共謀罪に反対との趣旨は明瞭なのだから、『法案の廃案』は、『法の廃止』と読み替えよう』との取り扱いになったという。
総務区民委員会の委員数は9名。議長ととして議決に加わることができない委員長を除くと8名。その8名が、採択賛成5・反対3という分布になったという。
未来・共産・市民・永久(とわ)と4会派が賛成にまわり、自民と公明が請願採択反対の姿勢を貫いて敗れた。みじめやな公明。ここでも下駄の雪。自公勢力、もはやけっして多数派ではないのだ。
こうして本会議での議決を経た請願書は、文京区民の意思として、議長名で政府関係機関に要望書として提出されることになる。
果敢に請願採択に取り組んだ関係者と文京区議会に敬意を表したい。このような取り組みが、運動に関与するみんなを勇気づける。これは「偉大な第一歩」と言ってよい。共謀罪の危険性を訴え続けよう、法の廃止を目指した具体的な運動をしよう。大いに励まされる。
法案段階での廃案を求める請願の内容を記載しておきたい。
件名:「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改正案)の廃案を求める請願
【請願理由】
このほど政府は、犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を本格的に審議入りさせました。この「共謀罪」法案は過去3度にわたり提出されたものの、憲法で保障された思想・信条、内心の自由を侵すものとして、国民の大きな反対によって廃案となったものです。
今回の法案も、以下のように多くの問題点があります。
第一に、政府は東京五輪の開催を控え、テロ対策としてこの法整備の必要性を強調しますが、適用される対象277にはテロとは無関係のものがあり、「組織的犯罪集団」の定義もあいまいで、市民活動も対象になりかねません。
第二に、犯罪が実行される前段階での合意や準備行為だけで処罰することは、近代刑法の原則を覆すものであり、また該当行為の範囲も不明確です。
第三に、共謀罪が新設されれば、日常的な会話が盗聴される恐れかあり、また市民同士の相互監視や密告社会を生み出す危険もあります。
よって私たちは、以下のことを強く求めます。
【請願事項】
「組織犯罪処罰法改正案」を廃案にするよう、国に求めること
(2017年6月22日)
2017年6月15日「中間報告」(国会法56条の3)なる奇策(法務委員会採決省略)によって、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正法案)が可決成立した。究極の強行採決と言って過言でない。共謀罪の内容の異常にふさわしい、手続的異常であった。あの日から1週間となる。
繰りかえし繰りかえし、この手続の異常と共謀罪の危険性をともに訴え続けることが、この法律(『共謀罪』)を使いにくくし、その運用を押さえ込み、さらには法の廃止を展望することにもつながる。
そのためには、この経過を記憶しよう。それにふさわしい、『共謀罪』の危険性と手続の異常を告発する抗議声明4題を掲記しておきたい。
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共謀罪法案の強行採決に強く抗議する声明
2017年6月19日
共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
社会文化法律センター 代表理事 宮 里 邦 雄
自由法曹団 団長 荒 井 新 二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原 和 良
日本国際法律家協会 会長 大 熊 政 一
日本反核法律家協会 会長 佐々木 猛 也
日本民主法律家協会 理事長 森 英 樹
日本労働弁護団 会長 徳 住 堅 治
明日の自由を守る若手弁護士の会 共同代表 神保大地・黒澤いつき
2017年6月15日午前7時46分,参議院本会議において,「中間報告」(国会法56条の3)により法務委員会の採決を省略するという極めて異例な手段によって,共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)の採決が強行され,同法案は可決成立した。
私たちは,この暴挙に強く抗議する。
共謀罪は,277種類もの犯罪について,日本刑法では例外中の例外とされる予備罪にも至らない,およそ法益侵害の危険性のない「計画」(共謀)を処罰しようとするものであり,刑法の原則を根本から破壊する憲法違反の悪法である。
政府は,共謀罪法案を「テロ等準備罪」と呼び,国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を批准するためには共謀罪の創設が不可欠である,同条約を批准しなければ東京オリンピックも開催できないなどと宣伝してきたが,TOC条約はテロ防止を目的とするものではないこと,同条約を批准するには共謀罪は不要であること,共謀罪が対象とする277の犯罪にはテロと無関係の犯罪がほとんどであり,テロ対策の法制度は整備済みであること,従って共謀罪がいかなる意味でもテロ対策法とはいえないことは,すでに明らかになっている。
また,「計画」,「準備行為」,「組織的犯罪集団」等の概念はあまりにも不明確である上,政府答弁も二転三転し,国民は何が犯罪であり,何が犯罪でないのかを知ることができない。別表に掲げられた対象犯罪277が極めて広範であることとあいまって,共謀罪が罪刑法定主義(憲法31条)に違反することは明白である。
共謀罪の最大の問題は,政府に異をとなえる市民団体などの活動の処罰や,その情報収集・捜査の根拠とされ,市民のプライバシーの権利(憲法13条),内心の自由(憲法19条),表現の自由(憲法21条)を侵害する危険が極めて高いことである。
法務大臣は,衆議院では,条文上何らの根拠がないにもかかわらず,「組織的犯罪集団とは,テロリズム集団,暴力団,麻薬密売組織などに限られる」,「通常の団体に属し,通常の社会生活を送っている方々は処罰対象にならない」と繰り返し答弁してきたが,参議院に至って,「対外的には環境保護や人権保護を標榜していたとしても,それが言わば隠れみの」である団体は組織的犯罪集団となり得るとの重大な答弁を行った。また,組織的犯罪集団の「周辺者」も捜査対象となることを認めた。
これは,共謀罪が成立すれば,正当な目的をもつ団体であっても,警察がその目的を「隠れみの」であると考えれば,その団体や,構成員ないし「周辺者」とみなされた市民が日常的な警察の監視対象とされることを意味する。
対象犯罪277の中に,組織的威力業務妨害罪や組織的強要罪など,基地やマンション建設に反対する行動などに適用される可能性の高い「犯罪」類型が含まれるだけに,上記の日常的な情報収集をもとに強制捜査や処罰が行われるおそれがある。
こうした重大な答弁が参議院になってからなされ,十分な審議がますます必要になったにもかかわらず,強引に採決した与党の強権的な国会運営には憤りを禁じえない。
法案審議中の5月18日,国連特別報告者ジョセフ・カナタチ氏は,共謀罪法案が「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との懸念を表明する書簡を安倍首相に送付した。ところが,日本政府はこの書簡に対し,単に「強く抗議」し,何ら回答しないという恥ずべき態度をとった。こうした日本政府の対応は海外メディアでも危惧感をもって大きく報道された。共謀罪法案が,このように国際社会に背を向けて成立した経緯も忘れてはならない。
国会法56条の3第2項は,「特に緊急を要すると認めたとき」に限り,法務委員会の採決を省略して本会議で採決することを認める。しかし,共謀罪を成立させることに何らの緊急性はなかった。共謀罪法案は,そもそも立法事実が存在しない上,法務大臣がしばしば答弁不能になるなど政府側の解釈が最後まで迷走し,疑問や矛盾が山積していたのであり,6月18日の会期末をもって廃案にすべき法案であった。このような法案について,奇策というべき手段で強行採決した与党の国会運営は,議会制民主主義を死滅させる暴挙である。
共謀罪法案の廃案をめざす声は,全国に大きく広がった。おびただしい数の市民集会,デモ,街頭宣伝,国会周辺では連日の座り込みや昼夜の共同行動が行われた。国会内では4野党1会派が結束して闘い,法律家も,日弁連及び52の単位弁護士会の全てが共謀罪に反対する声明を出し,多数の学者,作家,ジャーナリスト,マスメディアも反対の論陣を張った。そのなかで私たち法律家団体連絡会もあらゆる努力をした。世論調査では反対が賛成を上回った。こうした運動の広がりは,共謀罪を発動させない大きな力になると確信する。
「現代の治安維持法」,「監視社会を招く違憲立法」として強く批判してきた共謀罪であるが,私たち法律家は,今後も市民・野党と手を携え,共謀罪の廃止をめざし,共謀罪の発動を許さない活動を続ける。その一環として,国連特別報告者カナタチ氏が提案した,「監視活動を行う警察を監督する第三者機関」の設置をめざすことも重要な課題である。
私たちは,これからも市民が絶対に萎縮することなく,自由に表現し,自由に仲間と集いあえる社会を維持するため,全力を尽くす決意である。
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いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する日弁連会長声明
本日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、本会議の採決が行われ、成立した。
当連合会は、本法案が、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強いものとして、これまで本法案の制定には一貫して反対してきた。また、本法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存した。
本国会における政府の説明にもかかわらず、例えば、?一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、?「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、?計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などの様々な懸念は払拭されていないと言わざるを得ない。また、277にも上る対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても、十分な審議が行われたとは言い難い。
本法案は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容であり、また、報道機関の世論調査において、政府の説明が不十分であり、今国会での成立に反対であるとの意見が多数存していた。にもかかわらず、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記のとおり異例な手続を経て、成立に至ったことは極めて遺憾である。
当連合会は、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後、成立した法律の廃止に向けた取組を行う所存である。
2017年(平成29年)6月15日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170615.html
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日本ペンクラブ声明「共謀罪強行採決に抗議する」
国内外の専門家、表現者、市民から、多くの意見が表明されるなか、国会において十分な審議が尽くされないばかりか、多くの疑問をのこしたまま、思想・表現の自由に重大な悪影響を及ぼすいわゆる「共謀罪」が強行的に採決されたことを深く憂えるとともに、強い怒りを禁じえない。
今回の衆参両院における法案審議と採決にいたる過程は、民主主義のルールを無視し国民を愚弄したものであり、将来に大きな禍根をのこす暴挙である。
われわれは法案審議のやり直しを強く求める。
2017年6月15日
日本ペンクラブ会長 浅田次郎
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緊急声明:国会不在の共謀罪法案強行成立に抗議する(JCJ)
政府・与党は、参議院法務委員会の審議、討論と採決を省略して、委員長中間報告によって本会議採決を強行、共謀罪新設法案の強行成立させた。
メディアは「奇策」と報じたが、「国会の自殺行為」としかいいようがない。われわれは、「内心の自由」「表現の自由」を破壊し、警察権を拡大して、戦争が出来る国をつくる改憲をめざす安倍内閣に対し、満身の怒りを込めて抗議する。
共謀罪法案について政府は、マフィア対策でしかない条約を「テロ防止条約」だと偽り、組織外の周辺の人をも含んで捜査の対象とされるのに「一般人は関係がない」とウソの答弁を繰り返した。そして、法案自体、277といわれる対象犯罪の数どころか、構成要件とされる「計画」や「準備行為」の定義はあいまいなままで、「何をしたら罪になるのか」さえ明らかにされていない欠陥、かつ憲法違反の法案である。
今回の強行は、安倍政権の目玉政策の「特区」が、実は首相の親友の学園に便宜を図り、政策自体が歪められた疑惑が国会審議で明らかになり、その進展を恐れた政権が「加計隠し」を図ったものだと指摘されている。しかし同時に、それだけでなく、「2020年に9条改憲の施行」をめざす安倍政権が今年中の自民党案作成、2018年12月の衆議院任期中の改憲発議、国民投票、さらに天皇退位、元号改元、などという独裁的「改憲スケジュール」に乗ったものだとも取りざたされている。
われわれは共謀罪法案の新設と安倍改憲戦略の狙いを見抜き、日本を再び暗黒の時代に戻すことがないよう、日本国憲法を擁護し、改憲を許さず、平和と人権、そして民主主義を進めるジャーナリズムの精神を貫き、あきらめず闘い続けることをここに声明する。
2017年6月16日
日本ジャーナリスト会議
(2017年6月21日)
2017年6月20日
岩手・県政記者クラブ各社殿
同 ・県警記者クラブ各社殿
弁護士 澤藤統一郎
同 澤藤 大河
「浜の一揆」訴訟第8回法廷(6月22日)・案内
6月22日、盛岡地裁「浜の一揆」訴訟の第8回法廷のご案内をいたします。
この日、原告漁民4人と担当の県職員1名の尋問で、審理はヤマ場を迎えます。
この訴訟は、注目され話題になってしかるべき大型訴訟です。
行政のあり方を問い、民主主義を問い、震災後の地域復興の問題でもあります。
社会的意義のある訴訟としてご注目いただき、ぜひとも、取材をお願いします。
第1 事案の概要
岩手の河川を秋に遡上するサケは岩手沿岸における漁業の主力魚種である。1992年2月、岩手県は三陸の海の恵みを象徴する「南部さけ」を「県の魚」に指定している。古くから三陸沿岸の漁民は、秋に盛漁期を迎えるサケ漁を生業としてきた。
ところが、三陸沿岸の漁民は、県の水産行政によって、厳格にその捕獲を禁じられている。うっかりサケを網にかけると、最高刑懲役6月となる。漁船や漁具の没収の規定もある。岩手の漁民の多くが、この不合理を不満として、長年県政にサケ捕獲の許可を働きかけてきた。とりわけ、3・11の被災後はこの不合理を耐えがたいものと感じることとなり、これまで岩手県の水産行政に請願や陳情を重ねてきたがなんの進展も見ることがなかった。
そのため、2015年11月100人の沿岸漁民が岩手県(知事)を被告として、盛岡地裁に行政訴訟を提起した。要求は「固定式刺し網によるサケ漁を認めよ」「漁獲高は無制限である必要はない。各原告について年間10トンを上限として」。原告らは、これを「浜の一揆」訴訟と呼んでいる。
訴訟における請求の内容は二つ、「漁民がした『固定式刺し網によるサケの採捕の許可申請』に対する不許可処分を取り消せ」。そして、「県知事は、『固定式刺し網によるサケの採捕の許可』をせよ」というもの。
では、三陸沿岸の海の恵みは誰が手にしているか。二つの類型がある。一つは浜の有力者が経営する定置網業者である。そして、もう一つの類型が漁協の自営定置である。いずれも、大型定置網による漁獲。その漁獲に影響あるからとして、小型漁船で零細な漁業を営む漁民にはサケ漁が禁止されているのだ。
だから、「おれたちにもサケを獲らせろ」という漁民の切実な要求は、社会構造の矛盾に対する挑戦という意味を持っている。社会的強者と一体となって、零細漁民に冷たい県政への挑戦でもある。だから、「浜の一揆」なのだ。
個々の漁民にとって、「零細漁民の漁業を保護して、漁業の生計がなり立つ手立てを講じよ」という切実な要求である。そして、漁民が高齢化する中で、「後継者が育つ希望ある漁業」をという地域の切実な願いを背景にするものでもある。
本件訴訟は県の水産行政のあり方を問うとともに、地域の民主主義のあり方を問う訴訟でもある。また、3・11被災後の沿岸漁業と地域経済の復興にも、重大な影響をもってもいる。
原告ら漁民は、岩手県民の理解を得たいと願う立場から、県内メティアの取材を希望するものである。
第2 当日の日程
1 法廷
午前10時 開廷(盛岡地裁301号法廷)午前中2名尋問
原告藏さん? 主尋問20分 反対尋問20分
サケ漁許可を求める運動の経過について
原告瀧澤さん 主尋問30分 反対尋問30分
漁民が主張する資源保護のあり方(IQ)について
午後1時 再開廷午後3名尋問
原告熊谷さん? 主尋問20分 反対尋問20分
漁民の生計の実態、サケ漁許可を求める理由の切実さについて
原告菅野さん 主尋問20分 反対尋問20分
宮城との県境海域で宮城の漁民はサケを獲っていること
海区漁業調整委員会運営の実態
被告側証人 県漁業調整課長? 主尋問40分 反対尋問40分
2 法廷終了後の記者会見と報告集会
閉廷後直ちに、報告集会
場所 岩手県公会堂 2階講堂(21号室)
冒頭の訴訟経過説明のあと 記者会見
その後 意見交換
第4 これまでの経過概要
1 県知事宛許可申請⇒小型漁船による固定式刺し網漁のサケ採捕許可申請
2014年9月30日 第1次申請
2014年11月4日 第2次申請
2015年1月30日 第3次申請
2 不許可決定(102名に対するもの)
2015年6月12日 岩手県知事・不許可決定(277号・278号)
*277号は、固定式刺し網漁の許可を得ている者 53名
*278号は、固定式刺し網漁の許可を得ていない者 49名
3 審査請求
2015年7月29日 農水大臣宛審査請求(102名)
2015年9月17日 県側からの弁明書提出
2015年10月30日 審査請求の翌日から3か月を経過
4 提訴と訴訟の経過
2015年11月5日 岩手県知事を被告とする行政訴訟の提起
2016年1月14日 第1回法廷
2017年4月20日 第7回法廷 証拠決定
2017年6月22日 第8回法廷 原告本人4名・被告側証人1名尋問
2017年9月 7日 第9回法廷(予定)学者証人2名尋問予定
第3 訴訟の内容
1 当事者 原告 三陸沿岸の小型漁船漁業を営む一般漁民100名
(すべて許可申請・不許可・審査請求の手続を経ている者)
被告 岩手県(処分庁 岩手県知事達増拓也)
2 請求の内容
*知事の不許可処分(277号・278号)の取消し
*277号処分原告(既に固定式刺し網漁の許可を得ている者) 51名
*278号処分原告(固定式刺し網漁の許可を得ていない者) 49名
*知事に対するサケ漁許可の義務づけ(全原告について)
「年間10トンの漁獲量を上限とするサケの採捕を目的とする固定式刺網漁業許可申請について、申請のとおりの許可をせよ。」
第4 争点の概略
1 処分取消請求における、知事のした不許可処分の違法の有無
(1) 手続的違法
行政手続法は、行政処分に理由の付記を要求している。付記すべき理由とは、形式的なもの(適用法条を示すだけ)では足りず、実質的な不許可の根拠を記載しなければならない。それを欠けば違法として取消理由となる。ましてや、本来国民の自由な行為を一般的に禁止したうえ、申請に従って個別に解除して本来の自由を回復すべき局面においては、飽くまでも許可が原則であって、不許可として自由を制約するには、合理性と必要性を備えた理由が要求される。その具体的な理由の付記を欠いた本件不許可処分はそれだけで手続的に違法である。
本件不許可処分には、「内部の取扱方針でそう決めたから」というだけで、まったく実質的な理由が書かれていない。
(2) 実質的違法
法は、申請あれば許可処分を原則としているが、許可障害事由ある場合には不許可処分となる。下記2点がサケ採捕の許可申請に対する障害事由として認められるか。飽くまで、主張・立証の責任は岩手県側にある。
?漁業調整の必要←漁業法65条1項
?水産資源の保護培養の必要←水産資源保護法4条1項
2 義務づけの要件の有無 上記1と表裏一体。
第5 義務付けについての原告主張の概要
1 基本的な考え方
*三陸沖を泳ぐサケは、無主物であり、そもそも誰が採るのも自由。
これが原則であり、議論の出発点。
*憲法22条1項は営業の自由を保障している。
⇒漁民がサケの漁をすることは原則として自由(憲法上の権利)
⇒自由の制限には、合理性・必要性に支えられた理由がなくてはならない。
*漁業法65条1項は、「漁業調整」の必要あれば、
水産資源保護法4条1項は、「水産資源の保護培養」の必要あれば、
「知事の許可を受けなければならないこととすることができる。」
*岩手県漁業調整規則23条
「知事は、「漁業調整」又は「水産資源の保護培養」のため必要があると認める場合は、漁業の許可をしない。」
⇒ということは、許可が原則。
県知事が「漁業調整」「水産資源の保護培養」の必要性について
具体的な事由を提示し、証明しなければならない。
2 ところが、被告(県知事)は、不許可事由として、「漁業調整」「水産資源の保護培養」の必要性にまったく触れるところがない。
不許可の理由は形式的に「庁内で作成した「取扱方針」(2002年制定)にそう書いてあるから」というだけ。
第6 漁協中心主義は漁民の権利を制約しうるか。
1 漁業法にいう、漁業の民主化とはなにか。
零細の個々の漁民の権利にこそ配慮することではないか。漁協の営業のために、漁民の営業を圧迫することは「民主化」への逆行である。
2 漁民あっての漁協であって、漁協あっての漁民ではない。
主客の転倒は、お国のための滅私奉公と同様の全体主義的発想ではないか。
3 結局は、浜の有力者に奉仕する漁業行政の「カムフラージュの理論」ではないか。
☆これに対して、被告岩手県は、訴訟進行後ようやく「固定式刺し網によるサケ漁」を許可しない実質的な理由を整理して述べてきた。
以下のとおりである。
?岩手県の長年に亘るサケ産業(水産振興)政策とそれに基づく関係者の多大な尽力を根本的に損ねてしまうこと
?種卵採取というサケ資源保護の見地からも弊害が大きいこと
?各地漁協などが多大な費用と労力を投じた孵化放流事業により形成されたサケ資源をこれに寄与していない者が先取りする結果となり、その点でも漁業調整上の問題が大きいこと
?解禁に伴い膨大な漁業者が参入し一挙に資源が枯渇するなどの問題が生じること
?沖合で採捕する固定式刺し網漁業の性質上、他道県との漁業調整上の摩擦も看過できないこと
?近年、県内のサケ資源が深刻な減少傾向にあること
以上の各理由は一応なりとも、合理的なものとは到底考えがたい。こんなことで漁民の切実な漁の自由(憲法22条の経済的基本権)が奪われてはならない。
☆各理由に通底するものは、徹頭徹尾定置網漁業完全擁護の立論である。およそいささかなりとも定置網漁業の利益を損なってはならないとする、行政にあるまじき偏頗きわまる立論として弾劾されてしかるべきでもの。利害対立する県民当事者相互間の利益を「調整」するという観念をまったく欠いた恐るべき主張というほかはない。
☆しかも、利害対立の当事者とは、一方は原告ら生身の零細漁民である。20トン以下の小型漁船で生計を立てる者で、法的には経済的基本権の主体である。そして対立するもう一方が、大規模な定置網漁業者である。その主体は、漁協単独の経営体であり、漁協と複数個人の共同経営体であり、株式会社であり、有限会社であり、定置網漁業を営む資本を有する経済力に恵まれた個人である。「浜の有力者」対「一般漁民」のせめぎあいなのである。
☆定置網漁業者の過半は、漁協である。被告の主張は、「漁協が自営する定置営業保護のために、漁民個人の固定式刺し網によるサケ漁は禁止しなければならない」ということに尽きる。
☆漁民の繁栄あっての漁協であって、その反対ではない。飽くまで「漁民優先」が当然の大原則。漁協の健全経営維持のために漁民の操業が規制される筋合いはない。
☆以下は、被告が「近年、県内のサケ資源が深刻な減少傾向にあること」を不許可の理由として挙げていることに対する批判の一節である。
「近年のサケ資源の減少傾向」が、固定式刺し網漁業不許可の理由とはなりえない。これを理由に掲げる被告の主張は、いわゆる「獅子の分け前」(Lion’s Share)の思想にほかならない。
漁協は獅子である。獅子がたっぷり食べて余りがあれば、狐にも分けてやろう。しかし今はその余裕がないから、狐にやる分け前はない。被告岩手県は無邪気に、傲慢な差別を表白しているのである。
行政は平等で、公正でなくてはならない。漁協を獅子とし、漁民を狐として扱ってはならない。原告ら漁民こそが人権の主体であり、漁協は原告ら漁民の便益に奉仕するために作られた組織に過ぎないのだから。」
(2017年6月20日)