ちょうど100年前に成立した治安維持法。あの暗い時代を繰り返してはならない。
(2025年4月8日)
本郷三丁目交差点ご通行中の皆さま、ご近所の皆様。こちらは「本郷湯島九条の会」です。毎月一度、この場をお借りして、「平和を守れ」と訴え続けております。昼休みのひとときですが、少しの時間耳をお貸しください。
春うらら、まことによいお天気の4月8日です。お釈迦様がお生まれになった日だとか申します。お釈迦様は、生母摩耶夫人の右脇から生まれいでて、そまま7歩を歩いて「天上天下唯我独尊」とおっしゃった。これを英訳しますと、「Buddha First(お釈迦様第一主義)」と言うんでしょうね。まあ、大昔のことで、赤ちゃんのお釈迦様の言葉だから、とても可愛い。
これを今、ならず者のトランプが、「天上天下、唯アメリカ独り尊し」「天上天下我トランプの思うがまま」と、駄々をこねて、あっちに関税、こっちにも関税と世界の金融市場を掻き回しています。なんと見苦しくも愚かな図でしょう。ちっとも可愛くない。
トランプが自国の産業を保護するために始めた唐突な関税引き上げは、相手国を敵視し威嚇した軍備の増強によく似ています。自国の防衛のためとして、こちらが軍備を拡大すれば、あちらも拡大せざるを得ない。そしたら、さらにこちらも…。お互い、負けるものかとエスカレートすることになる。軍備でも関税でも、問題はどちらがどれだけ、相手よりも優位に立つかということですから、お互いに負けてはいられないことになる。どうしてまた、こんなヘンテコリンで、おかしな人物が強大な権力を握ることになってしまったのでしょうか。
今世界は、確実におかしい。危険な事態と言わざるを得ません。プーチンやネタニヤフ、習近平・キムジョンウンなどが危険でおかしいと思っていたら、「オレだって負けるものか」とトランプがシャリシャリ出てきた。言葉の真の意味での、愚か者でならず者。世界最強国の権力者だけに、トランプ第一です。トランプが群を抜いて最も危険でおかしい。無茶苦茶なことをやり始めて、誰も手を付けられない。
プーチンやトランプに較べればまだマシには見えますが、日本だって危険でおかしい。プーチンやトランプと親友だと自慢する、ヘンテコリンで危険な首相の時代から、日本は確実におかしくて危険になっています。
今年は戦後80年。あの戦争の惨禍に対する反省を踏まえて、平和憲法ができて、国際協調や平和を基本とする国づくりをしてきました。これに真っ向から異を唱えたのが、ウラジミールやドナルドと親密なことを売り物とした、同じ穴の安倍晋三。彼の唱えた「戦後レジームからの脱却」とは、「憲法を根幹において改正し、教育や家族のあり方、経済のあり方も根本的に変更して、戦前の美しく強い国を取り戻そう」というもの。
彼が取り戻そうという「戦前の美しい国」っていったいどんな国でしょうか。言うまでもなく、天皇が主権者として君臨する国、富国強兵のために臣民に滅私奉公を求める国。人権も民主主義もなく、差別を容認する国。両性の平等も、思想・良心・信仰の自由も、言論の自由もない国でした。
ちょうど100年前の1925年3月、帝国議会は、稀代の悪法「治安維持法」を成立させました。施行は5月から。敗戦直後の1945年10月にGHQの指令を受けて廃止されるまでの20年間、治安維持法は思想弾圧に猛威を振るいました。
治安維持法の所管は内務省と司法省。つまりは、特高警察と思想検事と、そして思想判事でした。現人神である天皇という荒唐無稽な存在を維持するための非国民狩りに狂奔し、メディアも教育もこれを煽ったのです。大日本帝国とは、挙国一致の治安維持法体制であったと言って差し支えありません。
成立時の治安維持法は7か条。その第1条は、「国体を変革しまたは私有財產制度を否認することを目的として結社を組織しまたは情を知りてこれに加入したる者は10年以下の懲役または禁錮に処す」というもの。事実上、「国体の変革」(天皇制の否定)と「私有財產制度の否認」(資本主義の否定)という思想が処罰対象とされたのです。
治安維持法は小さく生まれて大きく育ちました。はやくも、1928年の緊急勅令に基づく「改正」で、最高刑を死刑とする重罰化とともに、「結社の目的遂行のためにする行為」を処罰する目的遂行罪を新設して処罰範囲を広く拡大しました。「目的遂行のためにする行為」という曖昧な罪で、何でも引っかけ、誰でも、しょっ引けるようにしたのです。
この悪法は、1922年創立の日本共産党弾圧を主たる弾圧目的に制定されたものではありますが、検挙対象は、共産党にとどまりませんでした。言論・出版・労働・宗教・学術・教育・文芸・芸術・法曹等々の各分野に及びました。
その結果、「治安維持法20年間の犠牲者は、…逮捕者が数十万人、送検された者の実数7万5681名。送検後の獄死者1682名、これに拷問により虐殺された者及び獄死した者加えると、ほぼ2千人」とされています。美しい国とは、実はこんな野蛮な国でした。この野蛮な国は、国民を天皇が唱導する聖戦に駆りたてるとともに、戦争に反対する勢力を根こそぎ弾圧の対象としたのです。
戦後80年、日本人の多くは、平和と自由を愛し、差別をなくして、豊かな福祉国家建設を望み目指してきました。もう戦争はないだろう。もう大きな思想弾圧もないだろう。今日より明日は、豊かな住みよい社会になるだろう。そう考えてきましたが、安倍晋三政権以来、私たちの国にはキナくささが抜けません。戦争の準備が着々と進められているという危惧を払拭できません。
皆さん、うららかな春の日和ですが、治安維持法の暗い厳しい時代を忘れてはなりません。戦争に反対すれば、否応なく非国民だとしてしょっぴかれる、あの時代を繰り返してはなりません。今、私たちは言論の自由を持っています。今は、戦争政策を批判することができます。この自由は、使わないと錆び付きます。皆様、ものを言いましょう。戦争に反対。平和を守れ。危険な安保条約は廃棄せよ。防衛予算の増額はやめろ。企業・団体献金は禁止だ。杉田水脈は落選させよう。トランプ批判に遠慮するな。アメリカにおもねらず、中国とも仲良くせよ。消費税はなくせ。大企業と大金持ちから税金を取れ。そして、学術会議の独立性をまもれ。選択的夫婦別姓を実現せよ。再審法制定を急げ。危険な大阪万博やめろ。あらゆる差別を許すな。無法者トランプに屈するな…。
言論の自由を行使し、選挙で主権者の意思を表明しましょう。日本の民主主義を錆び付かせないように。