(2022年10月9日)
昨日の赤旗に、「ヘイト告発二審も勝訴」「福岡高裁 共産市議『大きな意味』」という記事。この訴訟もスラップ。しかも、ヘイトが絡んだスラップ。スラップを棄却した裁判例に、また一つが付け加えられた。
このスラップ訴訟、原告は小坪慎也というヘイト発言の常習者、福岡県行橋市の市議である。注目すべきは、その代理人が江頭節子。最近、この種ヘイト事件を専らにする弁護士。被告は行橋市と日本共産党の徳永克子市議の2者。請求は各被告それぞれに220万円の支払と謝罪広告掲載の要求。2019年12月の提訴で、一審・福岡地裁小倉支部判決が請求を棄却し、一昨日(10月7日)福岡高裁が控訴を棄却する判決を言い渡した。
赤旗の報道は、「ヘイトスピーチを批判する市議会決議と議会報告で名誉を損なわれたとして福岡県行橋市議会の小坪慎也氏が日本共産党の徳永克子氏に220万円の損害賠償を求めている裁判の控訴審判決が7日福岡高裁でありました。梅本圭一郎裁判長は徳永市議が勝訴した一審判決を支持し、控訴を棄却しました」として、被告行橋市については何も言っていない。マッ、それでもいいか。間違いというわけではないし、読者の関心も徳永市議の勝敗にのみにある。
赤旗の短い記事が、要領よく事実経過を整理している。
「小坪市議は2016年の熊本地震の際インターネット記事で「『朝鮮人が井戸に毒を入れた』というデマが飛び交うことは仕方がない」などと発言。市には団体や個人からの多数の抗議が寄せられたほか、爆破予告の脅迫事件が起きました。市議会は、小坪市議に謝罪などを求める決議を可決し、徳永市議はその全文をインターネットの議会報告に掲載したものです。」
そして、控訴審判決の内容を、これも短く、こう解説している。
「二審判決は、徳永市議の議会報告は、『専ら公益を図るもの』で、その意見表明には『信じるにつき相当の理由がある』と改めて認定。小坪市議の反論を全て退けました。」
名誉毀損言論の真実性を証明できれば違法性が阻却される。真実性を証明できなくても、相当性(真実と信じるについての相当の理由)があれば、過失を欠くものとして責任が阻却されることになる。どちらにせよ、請求は棄却となる。
このスラップを起こした小坪慎也(行橋市議)は、レイシストとして著名な人物である。2016年4月の熊本地震直後に、産経の右翼オピニオンサイト「iRONNA」に、「『朝鮮人が井戸に毒』大騒ぎするネトウヨとブサヨどもに言いたい!」という表題の記事を掲載した。表題が品位を欠くだけでなく、記事もひどい。これによって、彼はヘイトスピーカーとして一躍有名人となったが、良識ある市民からは顰蹙を買い、批判の的となった。のみならず、行橋市に対する爆破予告の脅迫事件まで起こしたのだ。
その記事の中で、彼は大要こう述べている。「『朝鮮人が井戸に毒を入れた』というデマが飛び交うことに対しては仕方がないという立場である。」「私は、災害時において外の人を恐れるのは仕方ないし、当然のことだと受け入れている。極限状況になればそうなることが自然だと考えるためだ。疑われるのは『外の人』である。もっとも身近な外の人が朝鮮人というだけだろう」。「治安に不安がある場合は、自警団も組むべきだろう。」「しかし、疑心暗鬼から罪なき者を処断する・リンチしてしまうリスクも存在する。そうはなって欲しくないが、災害発生時の極限状況ゆえ、どう転ぶかはわからない。」
恐るべき人物の恐るべきヘイトスピーチ。こんなものを掲載した産経にも、大きな問題ありと言わねばならない。
同年9月12日、行橋市議会は、「小坪慎也議員に対する決議」を採択した。評決は16対8、内容は以下のとおりである。
「9月8日に、行橋市役所に脅迫の電話があった。この事により、市民に対し、また、市当局や議会においても多大な迷惑を及ぼした。この「脅迫事件」は決して許されるべきものではない。
これは、小坪慎也議員が、平成28年4月に熊本地震が発生した際、差別的にとらえられるSNSでの意見発表を行った事を発端としている。
公人である市議会議員は、住民を代表する立場にあり、議会外の活動であっても良識ある言動が求められるのは当然である。
市民・国民に迷惑を及ぼすような意見の表明は、行橋市議会の信用が傷つけられたものといわざるを得ない。
行橋市議会は、小坪慎也議員が品位を汚すことの無いよう、公人としての立場をわきまえる事を求めると共に、謝罪及び必要な行動を自ら行うことを求めるものである。
以上、決議する。」
小坪は、この決議に反発した。「本件爆破予告事件の原因は、原告の「SNSでの意見表明」ではなかった。にもかかわらず、本件決議案等は、本件爆破予告事件が起こるや否や、犯人が逮捕されもしないうちから、『小坪慎也議員が、平成28年4月に熊本地震が発生した際、差別的にとらえられるSNSでの意見発表を行った事を発端としている。』と事実を適示し、それを前提に、原告が市民・国民に迷惑を及ぼし行橋市議会の信用を傷つけたと決め付け、良識が無い、品位を汚すなどと非難したものである。」との言い分である。
この決議の事実摘示が間違っている。徳永市議は、この間違った決議を提案し、成立させ、事後にはこれをインターネットサイトに掲載し、拡散もした、ことを違法として提訴した。2019年12月のこと。2022年3月17日、福岡地裁小倉支部は行橋市議ヘイト・スピーチ事件裁判について原告の請求を棄却する判決を言い渡している。「本件爆破予告事件の原因が、原告の「SNSでの意見表明」ではなかったにせよ、それが真実であると信じるについての相当な理由が認められるということである。
小坪は、もう一度真摯に市議会決議を読み直さなくてはならない。「公人である市議会議員は、住民を代表する立場にあり、議会外の活動であっても良識ある言動が求められるのは当然である」。にもかかわらず小坪は、ヘイトに重ねて、スラップにまで及んで良識を放擲したのである。「品位を汚すことの無いよう、公人としての立場をわきまえるべきこと」が求められている。
(2022年2月9日)
石原慎太郎の死去が2月1日だった。「棺を蓋いて事定まった」はずなのだが、この人の場合、生前にもまして毀誉褒貶のブレが大きい。石原の同類や同類へのへつらいが、こんな人物を褒めたり、懐かしがったり、持ち上げたりしている。この際、石原の死に際して、誰がなんと言ったかをよく覚えておこう。 「自分は石原なんぞとの同類ではない」と声をあげている人が清々しい。たとえば、本日の東京新聞「本音のコラム」欄、斎藤美奈子の「無責任な追悼」という一文。抜粋しての引用。爽やかに辛辣である。
「石原慎太郎氏は暴言の多い人だった。『文明がもたらしたもっとも有害なものはババア』『三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している』。暴言の多くは、女性、外国人、障害者、性的マイノリティなどに対する差別発言だったが、彼は役職を追われることも、メディアから干されることもなかった。そんな「特別扱い」が彼を増長させたのではなかったか。
…作家としての石原慎太郎の姿勢にも私は疑問を持っている。朝日新聞の文芸時評を担当していた2010年2月。「文学界」3月号掲載の『再生』には下敷(福島智『盲ろう者として生きて』)。当時は書籍化前の論文)があると知り、両者を子細に読み比べてみたのである。
と、挿話が同じなのはともかく表現まで酷似している。三人称のノンフィクションを一人称に書き直すのは彼の得意技らしく、田中角栄の評伝小説『天才』も同様の手法で書かれている。これもまた『御大・石原慎太郎だから』許された手法だったのではないか。
各紙の追悼文は彼の差別発言を「石原節」と称して容認した。二日の本紙(東京新聞)「筆洗」は『その人はやはりまぶしい太陽だった』と書いた。こうして彼は許されていく。負の歴史と向き合わず、自らの責任も問わない報道って何?(文芸評論家)」
浮かび上がる石原像は、基本的に汚い。そして、弱い者イジメを売り物にした唾棄すべき男。
もう一つ、紹介しておきたい。本日配送された週刊金曜日に、斎藤貴男の「弔辞」が掲載されている。「ヘイトやフェイクの時代の先駆者、石原慎太郎氏への弔辞」というタイトル。その記事の中に、こんなことが書かれている。私は、初めて知って仰天した。
「石原氏は16年東京五輪の招致活動で、IOC(国際オリンピック委員会)のロゲ会長(当時)に手紙を書いている。〈忌まわしい戦争〉から解放された少年時代に、〈民族を違えても人間は人間としてある〉と痛感したとする回顧から書き起こされ、わが祖国はその戦争への反省から〈戦争放棄を謳った憲法を採択し〉て今日に至った、日本で〈民族の融和、国家の協調を担う大きなよすがとなるオリンピックを行うことは、世界の平和に大きな貢献ができるものと信じます〉と結ばれていた。
大嘘だった。近頃の若者がダメな理由はと問われた彼が「60年間戦争がなかったから」「『勝つ高揚感』を一番感じるのは、スポーツなどではなく戦争だ」と断じたのは五輪招致を言い出す半年前(『週刊ポスト』05年1月14・21 日号)。招致失敗後も何も変わらなかった。」
斎藤貴男による石原評は、さすがに鋭く的確である。「石原氏は安全圏から標的を見下し、せせら笑って悦に入る。思えばヘイトやフェイクが猖獗を極める時代の、彼は先駆者だった。」「権力者にとって便利な人だった。躊躇のない差別は、新自由主義や、もちろん戦争の大前提であり、“理想”でもあるからだ。都政を私するコソ泥三昧が許された所以か。」「慎太郎的なるものの定着などあってはならない。合掌。」
一方、こちらは、石原慎太郎と同じ穴のムジナか、ムジナへの迎合者たちの弁である。NHK・Webnewsに掲載された、「石原氏の死去を受けて、各界から悼む声が上がっています」という、延々たる記事の見出しを並べてみただけのもの。
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日朝協会の機関誌「日本と朝鮮」の2月1日号が届いた。全国版と東京版の両者。どちらもなかなかの充実した内容である。政府間の関係が不正常である今日、市民団体の親韓国・親朝鮮の運動の役割が重要なのだ。機関誌はこれに応える内容となっている。
その東京版に私の寄稿がある。これを転載させていただく。内容は「東京都ヘイト規制条例」にちなむものだが、「2020東京オリパラ」にも関係するもの。なお、オリンピック開会は、猛暑のさなかの7月24日である。その直前7月5日が東京都知事選挙の投票日となった。ぜひとも、都知事を交代させて、少しはマシなイベントにしたい。
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東京都ヘイト規制条例の誕生と現状
2020年東京の新年は、オリンピック・パラリンピックで浮き足立っている。オリパラをカネ儲けのタネにしたい、あるいは政治的に利用したいという不愉快な思惑があふれかえった新春。あの愚物の総理大臣が「2020年東京オリンピックの年に憲法改正の施行を」と表明したその年の始めなのだ。
オリンピックには、国威発揚と商業主義跋扈の負のイメージが強い。国民統合とナショナリズム喚起の最大限活用のイベントだが、言うまでもなく、国民統合は排他性と一対をなし、ナショナリズムは排外主義を伴う。内には「日の丸」を打ち振り、外には差別の舞台なのだ。
もっとも、オリンピックの理念そのものは薄汚いものではない。オリンピック憲章に「オリンピズムの根本原則」という節があり、その1項目に、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」とある。
これを承けて、東京都はオリンピック開催都市として、「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を制定した。これが、「東京都ヘイト規制条例」と呼ばれるもので、昨年(19年)4月に施行されている。
その柱は2本ある。「多様な性の理解の推進」(第2章)と、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」(第3章)。性的マイノリティーに対する差別解消も、ヘイトスピーチ解消への取り組みも、都道府県レベルでは、初めての条例であるという。しかし、極めて実効性に乏しい規制内容と言わざるを得ない。
オリンピックとは、これ以上はない壮大なホンネ(商業主義・国威発揚)とタテマエ(人類愛・国際協調)乖離の催しである。都条例は、タテマエに合わせて最低限の「差別解消」の目標を条例化したのだ。しかしこの条例には、具体的な「在日差別禁止」条項はない。「ヘイトスピーチ違法」を規定する条文すらない。また、「在日」以外の外国人に対する差別については、「様々な人権に関する不当な差別を許さないことを改めてここに明らかにする」と述べられた一般理念の中に埋もれてしまっている。もちろん、罰則規定などはない。
オリンピック開催都市として、東京都の人権問題への取り組みをアピールするだけの条例制定となっている感があるが、それでも自民党はこれに賛成しなかった。「集会や表現の自由を制限することになりかねない」という,なんともご立派な理由からである。
条例のヘイトスピーチ対策は、「不当な差別的言動を解消するための啓発の推進」「不当な差別的言動が行われることを防止するための公の施設の利用制限」「不当な差別的言動の拡散防止するための措置」「当該表現活動の概要等を公表」にとどまる。
それでも、東京都は同条例に基づいて、10月16日に2件、12月9日に1件の下記「公表」を行った。
(1)5月20日、練馬区内での拡声器を使用した街頭宣伝における「朝鮮人を東京湾に叩き込め」「朝鮮人を日本から叩き出せ、叩き殺せ」の言動
(2)6月16日、東京都台東区内でのデモ行進における「朝鮮人を叩き出せ」の言動
(3)9月15日、墨田区内でのデモ行進における「百害あって一利なし。反日在日朝鮮人はいますぐ韓国に帰りなさい」「犯罪朝鮮人は日本から出ていけ」「日本に嫌がらせの限りを続ける朝鮮人を日本から叩き出せ」の言動
公表内容はこれだけである。この言動を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する表現活動」であると判断はしたものの、街宣活動の主催者名の公表もしていない。
問題はこれからである。タテマエから生まれたにせよ、東京都ヘイトスピーチ条例が動き出した。これを真に有効なものとしての活用の努力が必要となろう。東京都や同条例に基づいて設置された有識者による「審査会」の監視や激励が課題となっている。また、ヘイトスピーチ解消の効果が上がらなければ、条例の改正も考えなければならない。
オリパラの成功よりも、差別を解消した首都の実現こそが、遙かに重要な課題なのだから。
(2020年2月3日・連続更新2499日)
DHCスラップ「反撃」訴訟では、本年(2019年)10月4日に一審東京地裁民事第1部での勝訴判決を得た。
判決主文は、請求の一部を認容して、DHC・吉田嘉明にして110万円(+遅延損害金)を支払えと命じるもの。訴訟費用負担は、原告(澤藤)が6分の1、被告ら(DHC・吉田嘉明)が6分の5という興味深い割合。
この判決にも被告(DHC・吉田嘉明)が控訴して、東京高等裁判所第5民事部に継続した。12月4日付で控訴理由書が提出され、第1回口頭弁論期日が、2020年1月27日(月)午前11時に指定されている。場所は地裁・高裁庁舎の5階、511号法廷。是非、傍聴にお越し下さい。
あらためて、この訴訟の概要についてお伝えし、ご支援をお願いしたい。
この事件は、典型的なスラップ訴訟である。スラップ訴訟とは、法に関わる社会現象であって、成文法に出てくる用語ではなく、厳密な定義があるわけでもない。常識的に理解されているところでは、「特定の表現を封殺する目的で提起される民事訴訟」を指す。封殺目的の「表現」の多くは言論だが、個人の行為や集団行動を対象とすることもある。その多くは、「社会的強者から」の「社会的に有益な表現」に対する攻撃である。その提訴という手段を通じて表現者を威嚇・恫喝せしめる側面に着目して、「威嚇訴訟」「恫喝訴訟」とも呼ばれる。典型的には、被告を威嚇・恫喝するにふさわしい、高額の損害賠償請求となっている。まさしく、DHC・吉田嘉明が私(澤藤)を被告として提起したDHCスラップ訴訟がそのような典型としての、世のイメージのとおりの訴訟である。
スラップは、その意図と効果において表現の自由封殺の反社会性をもちながら、国民の権利とされている民事訴訟提起を手段とするところに、スラップ特有の違法性判断の困難さがつきまとう。また、それが、スラップ提起者の付け目でもある。
私は、当ブログを毎日書き続けている。権力や権威、社会的強者に対する批判で一貫している内容。「当たり障りのないことは書かない。当たり障りのあることだけを書く」をモットーとして、連続更新は本日で、2459回である。
2014年春、このブログでサプリメント販売大手DHCのオーナー吉田嘉明を批判した。彼自身が週刊新潮の手記「さらば、器量なき政治家・渡辺喜美」で暴露した、みんなの党の党首(当時)渡辺喜美に政治資金として8億円の裏金を提供した事実を、「政治を金で買おうという薄汚い行為」と手厳しく批判したもの。
そして、吉田の裏金政治資金提供の動機を「利潤追求のために行政規制の緩和を求めたもの」として消費者問題の視点から批判した。
DHC・吉田嘉明がスラップ訴訟で、違法と主張したブログ記事の主要な一つが、次の記載である。
「大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される。スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。『抵抗勢力』を排して、財界と政治家が、旦那と幇間の二人三脚で持ちつ持たれつの醜い連携。
これが、おそらくは氷山の一角なのだ。」
これは、消費者に有益な情報である。このような言論が違法として封殺されてはならない。スラップ訴訟とは、市民に有益な情報を遮断しようというものである。スラップは本来表現の自由に敵対する違法な行為なのだ。
私は、突然に、生まれて初めて被告とされた。提訴時の請求慰謝料額は2000万円。私は、「黙れ」と恫喝されたと理解し、弁護士として絶対に黙ってはならないと覚悟を決めた。同じブログに、猛烈に「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズを書き始めた。本日がその第167弾にあたる。
このシリーズを書き始めたとたんに、DHC・吉田嘉明側の弁護士(今村憲・二弁)から警告があり、慰謝料請求金額は6000万円に拡張された。吉田自ら、提訴の動機を告白しているに等しい。
スラップの対象となった私のブログは、政治とカネをめぐっての政治的言論であり、「消費者利益擁護の行政規制を緩和・撤廃してはならない」と警告を発するもので、社会に許容される言論というよりは、民主主義社会に有益な言論にほかならない。
当然のことながら、このスラップ訴訟は、私の勝訴で確定した。しかし、DHC・吉田側が意図した、「DHCを批判すると面倒なことになるぞ」という恫喝の社会的な効果は残されている。スラップを違法とする「反撃訴訟」が必要と考えた。
こうして、DHCスラップ「反撃」訴訟が提起され、去る10月4日、その一審勝訴の判決を得た。先行の「DHCスラップ訴訟」の提起を違法として、慰謝料等110万円の賠償を命じたもの。係属裁判所は東京地裁民事1部(前澤達朗裁判長)である。
この判決は、大要次のように判断している。
「DHC・吉田嘉明が澤藤に対して損害賠償請求の根拠としたブログは合計5本あるが、そのいずれについての提訴も、客観的に請求の根拠を欠くだけでなく、DHC・吉田嘉明はそのことを知っていたか、あるいは通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。にもかかわらず、DHC・吉田嘉明は、敢えて訴えを提起したもので、これは裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に当たり、提訴自体が違法行為になる」
私の側は控訴しなかったが、DHC・吉田嘉明の側が控訴した。これから、控訴審が始まる。その第1回が、1月27日である。決定的に勝ちたいと思う。ご支援をお願いしたい。表現の自由の確立のために。
(2019年12月25日)
ときに、新聞記者から電話をもらうことがある。取材だったり、コメントを求められたり。あるいは、記者の理解でよいのか確認のための説明を求められることも。
8月20日ころのある日、電話を取ったら韓国の記者からの取材だった。これは初めての経験。私の数少ない韓国の知人の名をあげて、その人の伝手とのことだった。必ずしも流暢とは言いがたいが、しっかりした日本語で、「JTBCの記者の通訳」を名乗り、記者の名前も通訳の自己紹介も聞いたが名前は難しくて聞き取れない。かなりの時間を割いて、DHC・吉田嘉明との裁判の経過を詳しく語った。もちろん、吉田嘉明のヘイト体質についても、DHCテレビ問題についても、的確な質問があり、自論を述べた。その電話取材がどのように放送に生かされたかは、まったく分からない。
その後間もなく、韓国のある国会議員秘書氏からの電話をもらった。今度は、JTBCの放送で私(澤藤)と吉田嘉明の関係を知ったとのこと。なかなかに達者な日本語だった。韓国の与党である「共に民主党」が、「嫌韓ヘイト発言問題で、国会に、吉田嘉明を召喚して証言を求めたいと思っているが、吉田の呼出先をどう特定すべきかのアドバイスを得たい。また、彼は呼び出せば召喚に応じる人物であろうか」という趣旨の問合せ。
韓国ヘイトのDHC・吉田嘉明が、したたかに韓国でも商売をしていることは、この夏までまったく知らなかった。DHCテレビが、インターネット番組で韓国を中傷する発言をし、韓国のドラッグストア業界がDHC商品の販売中止を始めるなど不買運動が広がった。
DHCは、徴用工を酷使した企業ではない。朝鮮侵略とも無縁な新興企業。日本を代表するほどの企業ではない。それが、敢えて嫌韓ヘイト発言をすることによって、韓国民衆による不買運動の標的とされた。「#さよならDHC」のハッシュタグが大規模に拡散されているという。
DHCコリアは、自分たちは東京の本社とは立場が違うと弁明に努めたが苦境に立たされた。一昨日(10月1日)の報道では、DHCのイメージキャラクターだった女優チョン・ユミが、DHCコリアとの契約を解除した。聯合ニュース配信記事が簡潔に事態を伝えている。
【ソウル聯合ニュース】日本の化粧品販売会社ディーエイチシー(DHC)の韓国内イメージキャラクターを務めた女優のチョン・ユミが、同社の韓国法人、DHCコリアとの契約を終了した。期間満了前の契約終了で、残る契約期間の契約料は返還した。
? 所属事務所は1日、DHCコリアが事務所側の立場を理解し、解約の要請に対し円満に合意したと発表した。
8月に放送されたDHC子会社「DHCテレビ」が制作するネット番組の出演者による嫌韓発言が韓国で問題視されたことを受け、所属事務所はDHCに対し、チョン・ユミの肖像権使用撤回とイメージキャラクターとしての活動中止を要請した。
同日の中央日報日本語版の記事では、
チョン・ユミは、「再契約も絶対に無いだろう」と宣言した。さらに、契約終了前のモデル料を返してまでDHCとの縁をバッサリと切った。韓国芸能人がこのような決定を下したのはまれな事。チョン・ユミはDHC側の常識外れの態度に対して積極的に対応したわけだ。チョン・ユミが返す6カ月分のモデル料は数千万ウォンに達するものと見られる。
ヘイトの代償は高い。DHCの場合、韓国だけではない。日本国内でも、じわりと影響が出てきている様子なのだ。
パルシステム生活協同組合連合会という大組織がある。首都圏を中心とした消費生活協同組合の連合体。加盟総数は約152万世帯、年額総事業高2,117.8億円。食を中心とした商品の供給事業を主としている。
「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民」のツイッターには、次のような「朗報」が連ねられている。
パルシステムに電話で問い合わせたところ、商品企画部署から回答があり、「DHCについては事前の調査が不十分だったため、こういう企業とは知らずに商品を企画してしまった(知っていれば企画しなかった)。今後はDHCの商品は取り扱わないし、事前の調査を十分行うようにする」とのことでした。
パルシステムの商品企画部によると「9月の3回以降、DHC商品は扱わない」「事前の調査が不十分だった。今後は、事前の調査を十分行うようにする」とのことです。問い合わせをした組合員のみなさま、本当にお疲れ様でした。#さよならDHC
DHC の商品は生協の理念に合わないのでは? と9月1回のカタログを見てすぐに問い合わせたところ、書面で回答を得ました。直ちに仕入れ企画の修正を決定したパルシステムの対応はナイスだったと思います。市民の運動ってこのように小さい事からですね。
パルシステムを信じて長年使ってきたから本当に良かった。パルは、食べ物だけじゃなく政治や社会問題の勉強会を組合員主催で開催したり、利用者の意識も高いのできっと沢山声が届いたんだと思います。これからも沢山パルシステムでお買い物します。
パルシステムすばらしい!声をあげる意味大きいね!
Dema Hate Company、また販路を失いました。パルシステムさん、ありがとう。
こういう「うっかりミス」が起きないように、ヘイト企業一覧が必要だと思う。
パルシステムに本件に対する意見を送った者です。本日パルシステム東京のご担当者様より、お詫びの言葉と併せて今後のDHCブランドの企画については見送る旨ご連絡をいただきました!同様の意見が多数届いていたようです。ご報告まで。
日韓それぞれの社会環境変化の中で、明日10月4日(金)13時15分に、DHCスラップ「反撃訴訟」判決が言い渡される。法廷は、東京地方裁判所4階の415号法廷。
(2019年10月3日)
上には上があるというベきか。あるいは、下にはさらに下があると驚くべきか。オーナーの身勝手なヘイト志向の信念を従業員に押し付けるブラック企業としてはDHCが極め付けと思っていた。が、世の中は広い。DHCに勝るとも劣らぬ企業が関西にあることを知った。これまで知らなかったその社名が、「フジ住宅」。大阪府岸和田市に本社を置く東証1部上場の不動産大手。従業員数は1000人に近く、関連会社を含めると1200名規模だという。
DHCは、デマとヘイトとスラップの3拍子で知られる。フジ住宅は、従業員へのヘイト文書大量配布と、育鵬社教科書の採択運動に社員を動員してきたことで有名になった。どちらのオーナーも、独善と押し付け、嫌韓・反中の信念の強固なことにおいて、兄たりがたく弟たりがたい。
フジ住宅が一躍全国区で有名になったのは、この夏のこと。大阪弁護士が、この会社の女性従業員からの人権救済申立を容れて、異例の人権救済勧告を出し、本年(2019年)7月16日にこのことを公表してからのこと。
同月11日付の勧告の主文は、以下のとおりである。
勧告の趣旨
1 被申立人(フジ住宅)はその従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと
2 被申立人(フジ住宅)はその従業員に対し、中学校の歴史及び公民教科書の採択に際し、特定の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を被申立人にするよう求めないこと
つまり、フジ住宅は、弁護士会から「人権侵害に当たるからおやめなさい」と注意を受けるほどに、「社員に対して、韓国など本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布」していたし、「社員に、歴史・公民教科書の採択に際し、歴史修正主義派の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を会社にするよう求め」ていたということなのだ。
この会社のヘイトぶりに我慢ができなくなった在日三世の女性従業員は、弁護士会に対する人権救済申し立てだけでなく、大阪地裁堺支部に名誉毀損の損害賠償請求の提訴もしている。ネットで、両者の主張を読むことができる。
通常この種の事件で裁判所に提出される主張は、法律家のスクリーニングを経て、それなりの抑制が利いたものとなる。ところが、この会社の準備書面は、弁護士が作成したとは思えないほどにストレートな会社の言い分そのままなのだ。そのストレートな会社側の主張が興味津々である。たとえば、これが準備書面の文章である。
「被告会社会長である被告今井の信念として、戦後の日本人が自らの国に誇りを持てないことが社会に大きなひずみを生みだしているところ、それは東京裁判に象徴される第二次世界大戦戦勝国の措置によって日本人に植え付けられたいわゆる「自虐史観」が主な原因であるから、自らの国に誇りを持つためには「自虐史観」を払拭する必要がある。この観点から、戦後日本において多くの国民の自己肯定感情の障害となってきたと考える「自虐史観」の払拭に役立つと思われる文書を配布している。」
この会社のホームページには、こうある。
「弊社が当裁判に負けることは、原告を除くほぼ全ての、外国籍の方を含む社員全体が支持してくれている弊社の仕事の進め方、それを通じて広く社員が見識を高めてくれることを期待する社員育成の方法が採れなくなることを意味しており、弊社としましては、この点で、妥協できる余地は一切なく、弊社の存立に深く関わるこの経営のあり方を続けたいと思っております。
また、当方を応援して下さる方の中には、当裁判の帰趨が非常に重要な歴史的意味を持っており、日本国民として絶対に負けられない裁判であると言ってくださる方も多くおられます。弊社と致しましても、万が一当裁判に負けるような事があれば、日本人全体の人権や、言論の自由が大きく毀損される事になるとの危機感を共有しており、当社経営理念「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」をしっかりと守り、「ひいては国家の為に当社を経営する。」と述べている事に、嘘、偽りの無い姿勢を貫きたいと思っています。
この会社には、従業員を主体性ある独立した人格と見る視点がない。労使の関係が、対等な法主体間の労働契約であることの基礎的な理解を欠いている。この会社も、この弁護士たちも、近代的労使関係の何たるかをまったく分かっていないとしか評しようがない。「社風」とか、「社員育成」によって、社員の人格や思想・良心を蹂躙することができて当然と思い込んでいるのだ。従来、企業側弁護士はこのような会社をたしなめ、説得し、教育してきたはずだが、ただただこの会社の愚かな主張に追随しているようにしか見えない。
この大阪弁護士会の異例の勧告を、朝日(関西版)は、こう伝えた。
東証1部上場の住宅販売会社で、韓国人などを侮辱する表現を記した文書が繰り返し配布されていたとして、大阪弁護士会は(7月)16日、人権侵害に当たるため配布をやめるよう勧告したと発表した。同社では、中学校の教科書に育鵬社版が採択されるよう社員の動員もしていたといい、思想・良心の自由を侵害する可能性も指摘した。
毎日はこうだ。
今月11日付の勧告書によると、同社は2013年、「息を吐くようにうそをつく」など、韓国や北朝鮮、中国を差別する表現がある雑誌記事などを少なくとも8回にわたって全従業員に配布した。さらに15年、「新しい歴史教科書をつくる会」の元幹部らが編集に関わった育鵬社の「歴史」と「公民」が公立中学校の教科書に採択されるよう従業員に各自治体の住民アンケートなどへの回答を推奨。同社の会長に結果を報告するよう求め多くの従業員が応じていたという。
どうも、メディアの伝え方が、いまいち十分ではないという印象を否めないが、それはとかく、これからはこう決意し、こう訴えよう。
DHCの製品は買わない
アパホテルには泊まらない
フジ住宅で家は建てない
播磨屋のせんべいは食べない。
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以下に、大阪弁護士会「勧告」の判断部分を要約してご紹介する。極めて常識的なものだが、この会社の耳にははいらないようだ。
https://moonkh.wixsite.com/hateharassment/blank-7
2 当会の判断
(1)別紙一覧表1記載の文書の配布について
何人も平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する権利は、憲法第13条に由来する人格権として強く保護され、かかる権利は、国籍・民族の知何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されるべきものである。
ただし、憲法は私人間の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないから、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになる。
ところで、一般に私人の表現行為は、個人の基本的な自由として憲法第21条第1項に基づき厚く保障されるべきものである。しかし、本邦以外の特定の民族または国籍の出身者を侮辱し、これらの者に対する差別的意識を醸成させる行為は、憲法第13条、第14条に照らし、社会的に許容される合理的範囲を超えて他人の法的利益を侵害していると認められるときは、人権侵害行為にあたり、民法第709条の不法行為(ないし契約関係が存する場合には、契約内容に応じ債務不履行)が成立すると評価できる。
これを本件についてみると、申立人(従業員)は、韓国国籍を有する在日韓国人3世として本邦に居住しているのであるから、平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する人格権を有しているというべきである。他方、被申立人(フジ住宅)には、会社の目的に必要とされている範囲で表現行為の自由が保障されているところ、被申立人が、自身に所属する全役職員に対し配布した別紙一覧表1記載の文書には、いずれも韓国又は韓国国民に対する批判的論評の域を超えた侮辱的表現が随所に見られる上、被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどしている。確かに、被申立人による上記文書配布は、申立人を被申立人の職場から排除することや申立人の人格権を侵害することを直接の目的とするものではなく、また、配布された文書を申立人が受領することが強制されていた事実は認められない。しかし、被申立人は、1000名を超える従業員を雇用する東証一部上場企業であり、いわば社会の公器として多様な価値観・歴史観を許容し、国籍や人種等による差別的意識を排する職場環境の構築が求められるところ、被申立人の創業者であり、被申立人の全役職員に対して極めて大きな影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどして上記文書を被申立人の全役職員に配布した行為は、いずれも被申立人の業務に必要とは言いがたく、被申立人の全役職員に対して上記文書を配布することを保障する必要性に乏しい。以上からすると、被申立人による別紙一覧表1記載の文章の配布が、被申立人の人格権を侵害したものといえると評価されたとしても、その評価が不当であるとは決していえない。
(2)別紙一覧表2記載の文書の配布について
憲法第19条が思想・良心の自由を保障しているのは、いかなる国家観、世界観、人生観を持とうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり、国家権力は、内心の思想、に基づいて不利益を課したり、あるいは特定の思想を抱くことを禁止することができないということである。そして、かかる自由が国籍・民族の如何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されること、憲法が私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないので、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになることは、前記(1)と同様である。これを本件についてみると、本邦の歴史、とりわけ明治維新以降の近現代史における歴史的事実については、個人の歴史観や思想・信条によって様々な評価があることは、公知の事実である。そのため、中学校における歴史及び公民の教科書は、各執筆者が近現代史における歴史的事実を各々評価し執筆しているので、異なる叙述がされている。したがって、教科書に対する評価は、個人の歴史観その他思想・信条と密接に結びついているといえる。しかるに、創業者であり被申立人役職員に強い影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、被申立人の全役職員に対し、別紙一覧表2記載の文書を配布するなどして特定の教科書を採択させるための運動に従事するよう強く推奨するとともに、かかる運動に従事したときは、その内容を上記代表取締役会長に報告することを求めている。そして、現にかかる推奨に応じて多くの役職員が上記報告に及んでいる。被申立人のこの一連の行為は、被申立人の業務に必要とはいい難く、しかも、被申立人は、これらの収集した報告をどのようにでも使える立場にあるので、例えば、上記採択運動に従事したか否かで、従業員の待遇に差を設けることもできる。以上からすると、かかる運動に従事することを被申立人の全役職員に強制するものではないことが、別紙一覧表2記載の文書の一部に明記されているとはいえ、被申立人が、その収集した思想・良心にかかる報告を自由に使える立場あることからして、かかる運動に従事したか否かによって、申立人を含めた従業員がその待遇等において差別的取扱いを受ける可能性が高い状況下にあるので、申立人を含めた従業員が自己の思想・良心を侵害されるおそれの高いことを否定することはできない。
3 結語
以上によれば、被申立人による各行為に対し、申立人の救済には今後の人権侵害の防止につき適当な措置を採ることを勧告することが相当であるから、勧告の趣旨記載のとおり、勧告する。
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なお、会長の信念によって、全社員に配布されたヘイト文書の一部を抜き書きしておく。
多くは、「月刊WILL」「正論」「産経」「加瀬英明」「呉善花」「中山成彬」「櫻井よしこ」などの文章の転載である。
「韓国の国民性を痛烈にえぐっている。…嘘と無恥の国なのだ」
「では、なぜ韓国人は第三国でこれほど反日活動に走るのだろうか。それは韓国人の習性に由来している。韓国人同士がケンカする時は相手の言い分などに耳を貸さず、ひたすら自分の主張を大声で怒鳴り合う。さらに、周りの人々に訴えて自分の味方を増やそうとする。直接相手に堂々と挑むのではなく、第三者に訴えてねじ伏せようとするのが韓国流のケンカである。彼らは味方を増やすために『いかに自分の主張が正しいか』嘘八百を並べながら、身振り手振り、場合によっては号泣して周りに訴える」
「『金王朝』を信奉する朝鮮学校出身者のせいか・・・息を吐くように嘘をつく反日サヨクの生き様そのもの」「自分たちの悪事を批判されるとすぐに『差別ニダ』!と大騒ぎする在日朝鮮族」
「韓国も中国も、日本人とは異なった国民性を持つ民族であると認識しなければなりません。私たちは親から『嘘をついてはいけません』と教育されます。しかし、中国や韓国は『騙される方が悪い』『嘘も100回言えば本当になる』と信じている国民です」
「日本非難を共産党独裁の正当化につなげる無神論の中国と、日本たたきを民族プライドにつなげる情緒的な韓国からしか参拝糾弾が出てこない点注目すべきです」「『ワイロは国民性』日本とは逆に韓国・北朝鮮はワイロを当然とする民族性があります。ワイロを与えることによって見返りを得るという伝統です」「今の韓国も北朝鮮もワイロ無しでは社会が成り立たないほど、ワイロはまさしく国民性にまで、なっています」
「韓国人の思考の中に敵相手ならどんな非道をしても許されると勘違いしているところがありますよね、確かに野生動物がまさしくこれです。鳥類、ほ乳類、は虫類ではないが、恐に足りないものに対しての攻撃性は、見るに堪えがたいものがあります」
「韓国は未だ売春は犯罪という意識もなく普通に売春している」
「中学校であれば『育鵬社』、高校で在れば『明成社』が良いということを・・」
「アンケート記入に行かれる方は、昨年同様、ボールペンで、記入し、フジ住宅の社章と拉致被害者救う会のバッジは外して行ってくださいネ・・・女性の方は私服で、行ってくださいネ。」「市長や教育長にお手紙を書かれたり、FAX、メールをされたり、また会いに行かれたり、あるいは教科書アンケートに行かれる場合は、勿論勤務時間中にしていただいて結構です。」「市長や教育長の方にお手紙やメール、FAXをされました方は、私(会長)・・(に)ご報告してくだされば、ありがたく思います。」「一般的に(各市)2?3名で十分かナアと思います。あまり多くの方がお手紙を出すとかえってマイナスになると思いますので。」
(2019年9月28日)
またまたの典型的なスラップ訴訟のご紹介。ヘイトスピーチへの批判の新聞記事が名誉毀損とされ、地方紙の記者が訴えられた事例。いま、ヘイトとヘイト規制が熱くせめぎ合っている川崎での事件である。
まずは、神奈川新聞社会面の今日(9月25日)の記事で概要を把握いただきたい。
「差別報じた記事、名誉毀損と提訴」「本紙記者争う姿勢」
在日コリアンに関する講演会での自身の発言を悪質なデマなどと報道され、名誉を毀損されたとして、今春の川崎市議選に立候補した佐久間吾一氏が神奈川新聞社の石橋学記者に140万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が24日、横浜地裁川崎支部(飯塚宏裁判長)であった。石橋記者側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。
訴えによると、佐久間氏は自身が代表を務める団体が同市内で主催した2月の講演会で、「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」と発言。この発言に対し、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と石橋記者に報じられたことで、立候補予定者である佐久間氏の名誉が著しく毀損されたと主張している。
口頭弁論で、石橋記者側は「佐久間氏の発言は事実に反している」と指摘。「そうした発言は在日コリアンを敵とみなし、在日コリアンを傷つける差別の扇動である」とした上で、「記事は、佐久間氏の言動が人権侵害に当たるとの意見ないし論評の域を出ていない」と反論した。
原告(佐久?)は、排外主義を掲げる日本第一党の活動家。ヘイトの常連といってよい。石橋記者は事後報告集会で「記事を書けば訴えられ、面倒に巻き込まれると萎縮効果を狙っているのは間違いない。メディアこそが先頭に立って差別をなくすべきだとの記事を書き続けていく。ヘイトの状況がこうなる以前にメディアとしての役割を果たしていなかったという思いもある」と今後の裁判に決意を表したという。
報じられている限りでだが、名誉毀損とされた表現は、以下のとおり。
《原告(佐久?)の「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」との発言》に関しての、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」との記事。
この事件、原告(佐久?)側に100%勝ち目はない。勝ち目がなくても、相手に相応の嫌がらせにはなる。その効果を狙っての提訴がスラップ訴訟というものだ。石橋記者が、「記事を書けば訴えられ、面倒に巻き込まれると萎縮効果を狙っているのは間違いない。」と言っているとおり。
名誉毀損訴訟では、名誉毀損表現を構成する「〈事実摘示〉と〈論評(ないし意見表明)〉」とを厳密に分ける。判例は、「事実摘示」の誤りには厳しいが、「論評」の自由の幅は、表現の自由の理念を意識して極めて広い。極端な人格攻撃をともなわない限り、論評の違法はないと考えてよい。
事実摘示の主要部分が真実で、記事に公共性・公益性が認められる限り、違法性はないものとされ、損害賠償請求は棄却される。
本件訴訟における「名誉毀損表現」の事実摘示は、《原告佐久?が「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」と発言したこと》である。被告石橋記者は、この発言がなされたという事実の真実性の挙証は要求される。しかし、それで十分でそれ以上は要求されない。
念のためだが、「旧日本鋼管の土地をコリア系が占領している」「共産革命の橋頭堡が築かれ今も闘いが続いている」との佐久?の発言の真偽は、実は訴訟の本筋に無関係で、審理や判決に影響を及ぼさない。もちろん、石橋記者側に、これがデマであることの挙証責任の負担はない。
ところで、被告・石橋記者の代理人となっている神原元弁護士のツイートのボルテージが高い。こちらも紹介しておく。
【拡散希望】「佐久間吾一氏・『差別扇動』裁判」第一回期日のお知らせ
神奈川新聞記者石橋学さんは、市議候補者佐久間吾一氏の発言を扱った、記事『差別言動繰り返し』で訴えられました。
佐久間氏の発言は差別扇動か否か?世紀の裁判が始まる??
9月24日午前11時30分
横浜地裁川崎支部1号法廷
問題にされたのはこの記事。ヘイト団体の集会を「差別扇動」と批判し、佐久間吾一氏の発言を批判する内容だ。
佐久間氏は名誉毀損だと主張しているが、「佐久間氏の発言は川崎南部に集住する在日コリアンに対する差別扇動だ」というのか石橋さんの主張だ。
裁判所はどちらの主張に軍配をあげるか?
我々石橋さんの弁護団は、川崎におけるヘイトスピーチ被害の実態や佐久間氏の発言の悪質性を立証し、「悪意あるデマであり、差別扇動」という石橋記事の正当性を主張する。
この訴訟の勝利により、全国のヘイト団体は、川崎南部地域において差別扇動を決して許さない活動の力強さを、思い知るだろう。
いよいよ今日。
川崎におけるヘイトvs.反ヘイトの最後の決戦の火蓋が切られる。
ここが「主戦場」だ。
この裁判は、川崎におけるヘイトと反ヘイトの、いわば「主戦場」になるかもしれない。そして、川崎は全国における反ヘイトの「主戦場」である。
したがって、川崎におけるこの裁判の勝利の効果は全国に波及するかもしれない。そして、正義は我々にある。正義は勝つだろう。
石橋学記者も、こう発信している。
「差別を差別と非難し、デマをデマと断じることはメディアの役目。ヘイトを断罪する判決を勝ち取ります。」
その意気や良し、である。もちろん、メディアの役割を「客観的なできごとの伝達」に限定する立場もあろう。しかし、今の権力主導のヘイトとデマの蔓延、そして権力忖度のメディアの状況を考えるとき、石橋記者のごとき心意気をたいへん貴重なものと思わざるを得ない。私も、DHCスラップ訴訟被害者の立場として協力・応援を惜しまない。
同じ神奈川新聞の記者の下記連帯の意思表示が心強い。まことにそのとおりだ。
「言論封じにつながりかねない今回の訴訟は、すべての記者が当事者と言えます。差別のない社会に向けて、差別に対して声を上げる言論を守らなくてはなりません。」
(2019年9月25日)
8月に入った。暦(大暑)のとおりの猛暑である。本日も早朝6時に家を出ての散歩だったが、汗が吹き出る。世の中も暑苦しい。安倍晋三が政権に居座る日本だけではない。世界中が、である。暑苦しさの根源に差別がある。ヘイトスピーチを一掃して、涼やかな世にしたいものと思う。
昨日(7月31日)の毎日新聞・夕刊の「特集ワイド」に、川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関するタイミングのよい記事。「ヘイトスピーチに罰則、条例化目指す川崎市はいま 実効性に期待する被害者」というタイトルで、この条例案の意義を的確に指摘して分かり易い。井田純記者の労作である。
https://mainichi.jp/articles/20190731/dde/012/040/007000c
川崎市のホームページを検索すると、関係資料に接することができるが、如何せん公的な文書。やや繁雑でもある。ぜひとも、「特集ワイド」をお読み願いたい。
ところが、これはネットでは有料記事となっている。やむを得ない。毎日新聞読者以外は、下記の私の記事に目を通していただきたい。
6月24日、川崎市はこの条例案を公表し、パブリックコメントを募集している。期間は、7月8日から8月9日(金)まで。
市の広報では、「意見を提出できる方の範囲」を、「市内に在住、在勤、在学の方、又はこの案件の内容に利害関係のある方(個人、団体を問いません。)」としているが、誰もが「この案件の内容に利害関係のある方」と言ってよい。「特集ワイド」の最後が、「川崎市に呼応するように、同じ神奈川県内の相模原市でも、罰則付きのヘイト対策条例制定に向けた動きが始まっている。」と締めくくられている。この条例が、ヘイトスピーチ規制に実効ある法規制の第1号である。国民的議論の対象とされてしかるべきで、大いに意見を寄せるべきだと思う。
なお、パブコメは分類されて発表されることになろうから、賛成の趣旨をまずは明確に述べて、その理由を書くべきだろう。URLは下記のとおり。
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関する意見募集について
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/250/0000108585.html
意見のフォームはこちら。
https://sc.city.kawasaki.jp/multiform/multiform.php?form_id=3851
ご参考までに、私のコメントは、以下のとおりである。
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私は、「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に、積極的に賛成します。併せて、川崎市がこのような人権尊重のまちづくりに取り組んでいることに、敬意を評します。
私は、1971年に登録した弁護士です。日本国憲法の理念をこの上なく大切なものとして、その実現のために努力して参りました。憲法の根幹に、人権の尊重があることはいうまでもありません。人権尊重とは、すべての人が平等に、その人格が尊厳あるものとして、処遇されなければならないことを意味します。「差別のない人権尊重の社会」は、日本国憲法の目指すところであり、暮らしやすい社会でもあります。
ところが、近年、民族や人種に対する差別を公然と口にして恥と思わない人びとや集団が目立つようになっていることを憂慮せざるを得ません。
戦前、富国強制のスローガンのもと、近隣諸国への侵略や植民地化を国是としていた時代には、日本や日本国民が他に優越したものであるという明らかに誤った独善的な選民思想が意図的に流布されました。そのことが、近隣諸国民に対する差別意識を醸成し、現在なおこの差別意識に捕らわれている人が少なくありません。その差別意識を公然と口にしてよいという近時の社会の雰囲気に、極めて危険な兆候を感じます。
私は、国民の自由に対する権力的規制には、反対の立場を貫いて参りました。規制は権力がするもので、現政権のごとき、日本国憲法の理念理解に乏しく、むしろ日本国憲法を敵視する権力が悪用することを恐れてのことです。しかし、ヘイトスピーチ跋扈の現状は、いわゆるヘイトスピーチ解消法制定3年を経てなお治まることなく、到底これを看過し得ません。もはや、言論の自由を根拠としてヘイトスピーチ規制をすることに躊躇しえないと考えるに至りました。
本条例素案が表現の自由一般を不当に侵害することのないよう、種々の配慮をしていることを歓迎して、条例制定に賛成いたします。
当然のことながら、ヘイトスピーチ派はこの条例制定に反対しています。もちろん、そのホンネは、今までどおりにマイノリティとして弱者である宿命を持った在日の人びとに対する根拠のないイジメを続けたいだけのことです。しかし、それでは、訴える力となりませんので、何とか「理論付け」しようと試みているようではあります。しかし、真面目な議論として耳を傾けるべきものは見あたりません。その幾つかのパターンへの感想を述べておきます。
反対論その1 「条例素案における犯罪構成要件が特定性を欠き、曖昧に過ぎないのではないか。たとえば、「ヘイトスピーチ」の定義にしても、禁止されている行為にしても。」
そんなことはありません。「ヘイトスピーチ」の定義自体は、「ヘイトスピーチ解消法」第2条の定義規定「この法律において『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において『本邦外出身者』という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」で、構成要件文言としては特定性十分ではありませんか。
また、本条素案が禁止する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」については、以下のとおり、特定性十分と考えまられます。
「素案の説明資料4(2)」に、明記されているとおり、「何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』を行い、又は行わせてはならない。」
≪類型≫
◎ 特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫(以下「特定国出身者等」という。)を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの
≪手段≫
◎ 拡声機を使用する。
◎ 看板、プラカード等を掲示する。
◎ ビラ、パンフレット等を配布する。
◎ 多数の者が一斉に大声で連呼する。
反対論その2 「条例素案の罰則部分は、過剰に表現の自由を規制をするものとして憲法21条に違反するものではないか。」
憲法21条「表現の自由」保障の本領は、権力者や社会的強者を批判する自由の領域にあります。マイノリティであり、社会的弱者の人権を侵害する表現が自由になされてよいはずはありません。ヘイトスピーチの自由など、本来てきにあり得ないのです。しかし、ヘイトスピーチを権力的規制の対象として処罰条項を設けてよいかは、また別のことになります。いわゆる立法事実(そのような処罰規定を作る根拠としての事実)が必要となります。まさしく、ここが争点です。私は、ヘイトスピーチデモの口汚さや、ネットでのネトウヨ言論の品性のなさの積み重ねが、雄弁に立法事実の存在を物語っていると考えます。
しかも、「ヘイトスピーチ」即犯罪の成立ではなく、市長からの勧告・命令を経て、なおこれに従わない場合にはじめて罰則の適用となるというのですから、けっして過剰な言論規制になっているとは考えません。
反対論その3 「条例素案の『インターネット表現活動に係る拡散防止措置』は、一地方自治体の条例でネット上の『表現の自由』を規制するものとして、条例の権限を越えているのではないか。」
匿名性に隠れてのネット上での差別発言、しかも差別感情剥き出しの罵詈雑言は、当然に規制されてしかるべきものと考えます。したがって、条例素案が、ネットでのヘイト発言を罰則での取締りから除外していることに、生温い規制との批判があるかも知れません。私は、提案のとおり、この点は将来の課題として留保してよいと思います。
なお、条例素案は、「インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表」は、その対象を、次のものに限定しています。
◎ 市の区域内で行われたインターネット表現活動
◎ 市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
・ 表現の内容が特定の市民等(市の区域内に住所を有する者、在勤する者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以下同じ。)を対象としているもの
・ 前記のインターネット表現活動以外で、市の区域内で行われた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容を市の区域内に拡散するもの
けっして、無限定に規制をしているものではなく、「条例の権限を越えている」ものではないと考えられます。
反対論その4 「条例素案は、『本邦外出身者』だけを保護対象にしており、『本邦出身者』のヘイトスピーチ被害を保護対象としていない。この非対称性は、逆差別として許されないのではないか。」
これはかなり数多くみられる見解ですが、言いがかりの類の見解というほかはありません。圧倒的なマイノリティである『本邦外出身者』が、圧倒的なマジョリティであり、それゆえ社会的強者である『本邦出身者』(日本人)に対して、差別的発言がなされているとは考えられないところです。少なくとも、「『本邦出身者』(日本人)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の出身であることを理由として、本邦出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」がなされているはずはありません。
一方的なヘイトスピーチがなされている現実が非対称なのです。これを是正する措置が非対称になるのは当然ことと言わねばなりません。
? 条例素案の解説を一読すれば、お分かりのとおり、人権侵害となる不当な差別は数多くあります。解説が挙げているものだけでも、「こども」「男女平等」「高齢者」「障害者」「部落差別」「外国人」「性的マイノリティ」「その他…」。条例素案は、それらの侵害された人権全般を救済し、あるいは不当な差別全般の解消に思いをいたしながら、特に緊急の対応の必要ある『本邦外出身者』に対する差別に限って、刑事罰もやむを得ないと限定して考えています。この姿勢を支持するものです。
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なお、「条例」(素案)の内容は以下のURLで読めるが、読みにくい。読み易いよう、以下にコピペしておきたい。
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/cmsfiles/contents/0000108/108585/20190624soan_hp.pdf
目次
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)を作成しました。
<主な内容>
? 「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)について
1 条例制定の背景
2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について
3 条例制定について
? 「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
2 総則
3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
? 今後のスケジュール
本文
1 条例制定の背景
川崎市は、日本各地や海外から多くの人たちが移り住み、地域に根づいて多様な文化が交流する「多文化のまち」へと発展する中、「川崎市外国人市民代表者会議条例」の制定をはじめ、「川崎市子どもの権利に関する条例」や「男女平等かわさき条例」を制定するなど先駆的な取組を行い、その後も、「川崎市子どもを虐待から守る条例」や「川崎市自殺対策の推進に関する条例」の制定など、着実に人権施策を実施してきました。
しかしながら、近年、本邦外出身者に対する不当な差別的言動、いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題が顕在化してきました。
このような状況の下、平成28年7月、市長が、「川崎市人権施策推進協議会」に対し、「ヘイトスピーチ対策に関すること」につき優先審議を依頼したところ、同年12月には、同協議会が、市長に対し、「ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例として、ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生、人種差別撤廃などの「人権全般を見据えた条例」の制定を求める」提言を提出しました。
また、平成28年には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、「部落差別の解消の推進に関する法律」のいわゆる「差別解消三法」が施行され、川崎市をはじめとした地方公共団体にも地域の実情に応じた施策を講ずることが求められることになりました。
2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について(一部略)
提言で取り組むべきとされた項目
項目1 公的施設の利用に関するガイドラインの策定
項目2 インターネット上の対策
項目3 制定すべき条例の検討
「人権全般を見据えた条例の制定に必要な作業に入るべきである。」
【協議会の意見】
● ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例が必要である。
● 内容については、ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが想定される。
【特に留意すべき点】
● 協議会及び部会において、幅広い条例が必要との認識では一致したところであり、具体的な内容については、ヘイトスピーチ対策を含めた多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが求められる。
3 条例制定について
(1)条例制定の考え方
いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題が顕在化している現状を踏まえ、全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる人権尊重のまちづくりを推進していくため、条例を制定します。
(2)条例の特徴
? 人権全般を見据えた条例
「川崎市人権施策推進協議会」からの提言を踏まえ、ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例とします。
したがって、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害等の人権全般を見据え、不当な差別のない人権尊重のまちづくりを推進します。
? 本邦外出身者に対する不当な差別的言動を規制する条例
特に、一定の要件に該当するヘイトスピーチに対しては、罰則等をもって規制する条例とします。
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
● 川崎市は、日本国憲法及び人権に関する諸条約の理念を踏まえ、あらゆる不当な差別の解消に向けて、一人ひとりの人間の尊厳を最優先する人権施策を、平等と多様性を尊重し、着実に実施してきた。
● 今なお、不当な差別は存在し、いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題も生じている。
● 市、市民及び事業者が協力して、不当な差別の解消と人権課題の解決に向けて、人権尊重の理念の普及をより一層推進していく必要がある。
● 全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる人権尊重のまちづくりを推進していくため、この条例を制定する。
2 総則
(1)目的
ア 不当な差別のない人権尊重のまちづくりに関し、市、市民及び事業者の責務を明らかにする。
イ 人権に関する施策の基本となる事項と、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する事項を定める。
ウ 前記ア及びイにより、人権尊重のまちづくりを総合的かつ計画的に推進し、もって人権を尊重し、共に生きる社会の実現に資する。
(2)定義
ア 不当な差別…人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別をいう。
イ 本邦外出身者に対する不当な差別的言動…「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ解消法」という。)第2条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動をいう。
3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
(1)市の責務
市は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を総合的かつ計画的に推進する。
(2)市民及び事業者の責務
市民及び事業者は、市の実施する不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策に協力するよう努める。
(3)不当な差別的取扱いの禁止
何人も、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
(4)人権施策推進基本計画
ア 市長は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本計画を策定し、基本計画には、人権に関する施策の基本理念、基本目標、基本的施策、その他人権に関する施策を推進するために必要な事項を定める。
イ 市長は、基本計画を策定(変更)しようとするときは、あらかじめ、「人権尊重のまちづくり推進協議会」の意見を聴き、また、基本計画を策定(変更)したときは、公表する。
(5)人権教育及び人権啓発
市は、不当な差別を解消し、人権尊重のまちづくりに対する市民及び事業者の理解を深めるため、人権教育及び人権啓発を推進する。
(6)人権侵害を受けた者に対する支援
市は、関係機関等と連携し、インターネットを利用した不当な差別その他の人権侵害を受けた者に対する相談の実施その他必要な支援に努める。
(7)情報の収集及び調査研究
市は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を効果的に実施するため、必要な情報の収集及び調査研究を行う。
(8)人権尊重のまちづくり推進協議会
ア 前記(4)イの場合のほか、不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進に関する重要事項について、市長の諮問に応じ、調査審議するため、附属機関として「人権尊重のまちづくり推進協議会」を置く。協議会は、委員12人以内で組織し、委員は、学識経験者、関係団体の役職員、市民のうちから市長が委嘱する。
イ 委員の任期は2年とし、再任可とする。そのほか、臨時委員を置くことやその解嘱、秘密漏えい禁止、部会を置くことについて規定し、その他協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
(1)この章の趣旨
市は、ヘイトスピーチ解消法第4条第2項の規定に基づき、市の実情に応じた施策を講ずることにより、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消を図る。
(2)本邦外出身者に対する不当な差別的言動の禁止
何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」を行い、又は行わせてはならない。
≪類型≫
◎ 特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫(以下「特定国出身者等」という。)を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの
≪手段≫
◎ 拡声機を使用する。 ◎ 看板、プラカード等を掲示する。
◎ ビラ、パンフレット等を配布する。 ◎ 多数の者が一斉に大声で連呼する。
(3)勧告・命令・公表
◎前記(2)に違反(1回目)⇒勧告
市長は、1回目と同様の違反行為を行ってはならない旨を勧告することができ
る。
◎違反行為(2回目)⇒命令
市長は、前2回と同様の違反行為を行ってはならない旨を命ずることができる。
◎違反行為(3回目)⇒公 表
市長は、命令に従わなかったときは、氏名又は団体の名称、住所、団体の代表者等の氏名のほか、命令の内容その他規則で定める事項を公表する。
・市長は、勧告の前に、1回目の違反があったことについて、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・市長は、命令の前に、勧告に従わなかったことについて、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・市長は、公表の前に、公表される者にその理由を通知し、その者が意見を述べ、証拠を提示する機会を与える。
(4)公の施設の利用許可等の基準
市長は、市が設置する公の施設において、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が行われるおそれがある場合における公の施設の利用許可及びその取消しの基準その他必要な事項を定める。
(5)インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表
対象
◎ 市の区域内で行われたインターネット表現活動※
◎ 市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
・ 表現の内容が特定の市民等(市の区域内に住所を有する者、在勤する者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以下同じ。)を対象としているもの
・ 前記のインターネット表現活動以外で、市の区域内で行われた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容を市の区域内に拡散するもの
※ インターネットその他の高度情報通信ネットワークを利用する方法による表現活動で、デモや演説など他の表現活動の内容を記録した文書、図画、映像等を不特定多数の者による閲覧又は視聴ができる状態に置くこと(いわゆる「拡散する」こと。)を含む。
ア インターネット表現活動に係る拡散防止措置
市長は、インターネット表現活動が「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当すると認めるとき。
→ インターネット表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずる。
イ インターネット表現活動に係る公表
市長は、前記アの措置を講じたとき。
→ 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当する旨、表現の内容の概要、拡散を防止するために講じた措置その他規則で定める事項を公表する。ただし、公表することにより前記(1)の「「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消を図る」との趣旨を阻害すると認められるときその他特別の理由があると認められるときは、公表しないことができる。
・ 前記の措置と公表は、市民等の申出又は職権により行う。
・ 市長は、措置や公表の前に、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・ 市長は、公表をするに当たっては、当該「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容が拡散することのないよう十分に留意する。
(6)差別防止対策等審査会
ア 前記(3)の勧告、命令、前記(5)の措置、公表を行う場合のほか、不当な差別の解消のために必要な事
項について、市長の諮問に応じ、調査審議するため、附属機関として「差別防止対策等審査会」を置く。審査会は、委員5人以内で組織し、委員は、学識経験者のうちから市長が委嘱する。その他の細目については、前記3(8)の「人権尊重のまちづくり推進協議会」と同様とする。
イ 審査会は、前記(5)の措置と公表に係る申出を行った市民等に意見書又は資料の提出を求めること等の必要な調査を行うことができ、前記(2)に違反したと認められる者、前記(3)の勧告に従わなかったと認められる者又は前記(5)のインターネット表現活動を行ったと認められる者に対し、書面により意見を述べる機会を与えることができる。また、その指名する委員に前記の必要な調査を行わせることができる。
(7)表現の自由等への配慮
この4の欄に記載の項目の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意する。
5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
(1)報告及び質問
ア 市長は、前記4(2)に違反したと認められる者、前記4(3)の勧告や命令に従わなかったと認められる者に対し報告を求めることができ、また、その職員に、関係者に質問させることができる。
イ 質問を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯する。
ウ 前記アの権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(2)委任
この条例の実施のため必要な事項は、規則で定める。
(3)罰則
前記4(3)の命令に違反した者は、500,000円以下の罰金に処する。また、法人等の場合には、行為者を罰するほか、法人等も罰する(両罰規定)。
(4)施行期日
ア 公布の日 次のイとウ以外のもの
イ 令和2年4月1日 「人権尊重のまちづくり推進協議会」、インターネット表現に係る拡散防止措置及び公表並びに「差別防止対策等審査会」に関するもの
ウ 令和2年7月1日 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消に向けた取組に関するもののうち、禁止、勧告、命令、公表、報告及び質問並びに罰則
(以下略)
(2019年8月1日)
本日(3月19日)の赤旗社会面に、「ユダヤ人大虐殺は史実」「現地博物館が高須氏に反論」という記事。さして長いものではないので、全文を引用する。
「第2次大戦下でのナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)についてのアウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館(ポーランド南部)が14日、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長のアウシュビッツは「捏造(ねつぞう)」とのツイート(2015年10月)に対し、公式にツイートで「史実」だと反論しました。
博物館は高須氏への「返信」に、異例の日本語で「アウシュビッツは世界中の人々の心に絶えず忠告する史実です。ナチス・ドイツによって造られたその強制・絶滅収容所の史跡は、人類史上最大の悲劇を象徴しています」と述べました。博物館の公式ツイートは主に英語やポーランド語です。
博物館はナチスが推定約110万人を虐殺したアウシュビッツ強制収容所(1940?45年)を管理し、歴史教育の活動などを行っています。ホロコーストや虐殺の否定論についてはホームページで、「多くの国で社会の秩序を脅かすと認識され、法的にも処罰されている」と指摘し、虐殺者こそ虐殺を否定してきたと警戒を呼び掛けています。」
通信社の配信記事だろうが、赤旗は掲載に値するニュースと判断したのだ。私も、この件を見過ごしてはならないと思う。
高須克弥という人物については、かつて当ブログで1度だけ取りあげたことがある。できれば、こちらもお読みいただきたい。「『落とし前をつけます』と宣告して始められた、議員に対するスラップ訴訟」という表題のもの。(2018年4月24日)
https://article9.jp/wordpress/?p=10258
この人は医師だというが、この人の発言は、およそ医学的な専門性とは無縁。自然科学的教養に裏付けられたものでもない。一市民として、政治や経済あるいは歴史や社会や文学や芸術に、傾聴に値する見識があるかといえば、その片鱗も窺うことができない。
「売られたら買います。僕はアホで馬鹿です。喧嘩強いです」というのが、この人自身の言葉だが、おそらくはその言葉のとおりなのだろう。典型的な、「トンデモ医者」の「トンデモ発言」の類なのだ。
この人はツイッターで、こんな発言をしている。
その時代に生きていた人は真実を知っています。
洗脳された人たちは真実がわかりません。
誤解された父祖の名誉を回復するのは子孫の義務だと思います。
僕はこのドイツを祖国に持つ女性に負けず、従軍慰安婦も徴用工も南京大虐殺も捏造だと勇気を持って世界に叫びます。
投獄されてもかまいません
「このドイツを祖国に持つ女性」とは、ホロコーストを否定することで刑事訴追された人物を指している。周知のとおり、国際人権B規約(20条2項)には、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」とある。
これを具体化するかたちで、ドイツだけでなく、フランス、オーストリア、ベルギーなど10か国が、「ナチスドイツの犯罪」を「否定もしくは矮小化」したことを構成要件として刑事罰を科している。イスラエルには、「ホロコースト否定禁止法」があり、外国に対して「ホロコースト否定」の言動をした者の身柄引渡しを要求できるという法制が整備されている。
なぜ、このような犯罪類型が必要になるのか。歴史を真っ当に見ようとしない民族的偏見の持ち主が、差別の言論を繰り返すからである。夥しい証拠に目を背けて、歴史の真実を否定し、あるいは修正しようという勢力が絶えないからである。たとえば、高須克弥のごとき。
前記の高須の舌足らずのツイートは、こう読むことができる。
ナチスの時代に生きていた人だけが、ホロコーストがなかったという真実を知っています。
後世の史観で洗脳された、ホロコーストがあったといっている人たちには真実がわかっていないのです。
あたかもホロコーストがあったかのごとくに誤解された父祖の名誉を回復するのは子孫の義務だと思います。
僕はこの「ホロコーストはなかった」と言うドイツの女性に負けず、従軍慰安婦も徴用工も南京大虐殺も捏造だと勇気を持って世界に叫びます。
要するに、高須の発言は、ホロコーストの史実を言葉の上で抹殺することによって、最悪の民族差別、最大のヘイトクライムを隠蔽し、その犯人を擁護しようとするものである。のみならず、同じ手法で朝鮮や中国に対する近代日本の歴史的罪科を免責しようというものなのだ。これが、歴史修正主義者の常套手段。
「従軍慰安婦も徴用工も南京大虐殺も捏造だと世界に叫びます」が、彼の発言の本意なのだ。残念ながら、いま、歴史修正主義的発言は、「勇気を持って」言わねばならない時代ではない。むしろ、歴史的真実に基づいて、天皇の戦争責任や、9・1朝鮮人虐殺、3・1独立宣言運動大弾圧、従軍「慰安婦」、徴用工、南京大虐殺、三光作戦等々の責任に言及することの方が、ある種の覚悟を要する時代になってはいないか。
高須のホロコースト否定発言は、耳を傾けるべき根拠に基づくものではない。にもかかわらず、歴史修正主義派の有象無象がこれを持ち上げる構図が、時代の空気を物語っている。この時代の空気が、歴史修正主義派の首魁である安倍晋三を首相にまでまつりあげたのだ。この時代の空気を作ってアベを支えている連中の中に、歴史の認識において甚だしく知性に欠けた高須や、これを取り巻く無知蒙昧の輩が位置している。
赤旗は、たかが高須の言動と言わずに、社会面の記事として取りあげた。面倒ではあっても、機敏に反論することが求められている。そして、あらためて、政府の介入によらない歴史教育と、日韓や日中の民間交流の必要性を痛感する。民族差別を露わにした、トンデモ発言を許さないために。
(2019年3月19日)
本日(1月14日)は「成人の日」。数少ない、天皇制とは無縁の、戦後に生まれた祝日。「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日(祝日法)とされている。関東は天気も晴朗。「みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」にふさわしい日となった。私も、この日に、若者諸君に祝意と励ましの言葉を贈りたい。
何をもって「成人」であることを自覚するかは、社会によって時代によって異なる。かつての日本では徴兵検査だった。その時代、すべての成人男子には否応なく兵役の義務が課せられた。男子にとって大人になるとは、天皇の赤子として、天皇の軍隊の兵士になる義務を負うことだった。軍人勅諭を暗唱し、行軍と殺人の訓練を受けた。戦地に送られ、命じられるままの殺戮を余儀なくもされた。
その時代、主権は天皇にあって国民にはなかった。立法権も天皇に属し、帝国議会は立法の協賛機関に過ぎなかった。女子には、その選挙権も被選挙権もなかった。その時代、天皇制を支えた家制度において女性は徹底的に差別され、民事的に「妻は無能力者」とされていた。
あり得ないことに、天皇は神を自称していた。もちろん、神なる天皇は操り人形に過ぎなかった。この天皇を操って権力や富をほしいままにした連中があって、その末裔が今の日本の保守政治の主流となっている。
天皇、戦争、女性差別は一体のものだった。そのような非合理な国は亡ぶべくして亡びた。国の再生の原理は、新しい憲法に確固として記載された。国民主権、平和、そして自由と平等である。徴兵制はなくなった。天皇に対する批判の言論も自由である。女性差別もなくなった…はずである。その憲法の「改正」をめぐって、いませめぎ合いが続いている。
平和も、国民主権も、性差のない平等も、言論の自由も、昔からあったものではない。これからずっと続く保障もない。現実に、憲法は一貫して「改悪」の攻撃に曝されている。徴兵検査のない成人式も、主権者の意識的な努力なければ、今後どうなるか定かではない。
私たち戦後間もなくの時代に育った世代は、日本国憲法の理念を積極的に受容して、今日までこの憲法を守り抜いてきた。しかし、この憲法をよりよい方向に進歩させることは今日までできていない。いま、せめぎ合っているのは、憲法を進歩させようという改正問題についてのことではない。大日本帝国憲法時代の「富国強兵」の理念を復活させようという勢力が力を盛り返そうとしているのだ。言わば、「成人男子には徴兵検査を」という時代への方向性をもった「憲法改悪」なのである。
今の若者は保守化していると言う言葉をよく聞く。しかし、今のままでよいじゃないかというほどの社会はできていない。今のままでは将来が不安だと若者たちも気付いているはずだ。
この世の不正義、この世の不平等、権力や資本の横暴、人権の侵害、平和の蹂躙、核の恐怖、原発再稼働の理不尽、沖縄への圧迫。格差貧困の拡大、過労死、パワハラ、セクハラ…。この世の現実は理想にほど遠い。若さとは、この現実を変えて理想に近づけようという変革の意志のことではないか。
若さとは将来という意味でもある。社会がよりよくなればその利益は君たちが享受することになる。反対に社会が今より悪くなればその不利益は君たちが甘受しなければならない。
君たちには多様な可能性が開けている。未来は、君たちのものだ。君たち自身の力で、未来を変えることができる。これから長く君たちが生きていくことになるこの社会をよりよく変えていくのは君たちだ。
さて、今年は、選挙の年だ。君たちの一票が、この国の命運を決める。とりわけ7月に予定の参院選。いまは、自・公・維・希の改憲勢力が、かろうじて議席の3分の2を占めている。この3分の2の砦を突き崩せば、安倍改憲の策動は阻止することができる。君たちの肩に、主権者としての責任が重くのしかかっている。
投票日だけの主権者であってはならない。常に、主権者としての自覚をもって、民主主義や人権・平和のために何ができるかを考える人であって欲しいと思う。
一つ、主権者としての自覚における行動を提案したい。DHCという、サプリメントや化粧品を販売している企業をご存知だろうか。その製品を一切購入しない運動に参加して欲しい。商品の積極的不買運動、ボイコットでこの企業に反省を迫ろうというのだ。
DHCとは、デマとヘイトとスラップをこととする三拍子揃った企業。その会長である吉田嘉明が在日や沖縄に関する差別意識に凝り固まった人物。電波メディアを使って、デマとヘイトの放送を続けている。そして、吉田嘉明とDHCは、自分を批判する言論に対するスラップ(言論抑圧を動機とする高額損害賠償訴訟)濫発の常習者でもある。詳しくは、当ブログの下記URLを開いて、「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズをお読みいただきたい。
https://article9.jp/wordpress/?cat=12
あなたがなんとなくDHC製品を買うことが、デマとヘイトとスラップを蔓延させることになる。あなたの貴重なお金の一部が、この社会における在日差別の感情を煽り、沖縄の基地反対闘争を貶める。また、安倍改憲の旗振りに寄与することにもなる。
言論の自由を圧迫するスラップ訴訟は、経済合理性を考えればあり得ない。しかし、DHCの売り上げの一部が、こんな訴訟を引き受ける弁護士の報酬にまわることにもなる。
DHC製品不買は、「消費者主権」にもとづく法的に何の問題もない行動。意識的にDHC製品を購入しないだけで、この社会からデマとヘイトとスラップをなくすることができる。若者たちに訴える。ぜひ、主権者としての自覚のもと、「DHC製品私は買わない」「あなたも買っちゃダメ」と多くの人に呼びかけていただきたい。投票日だけの主権者ではない、自覚的な主権者の一人として。
(2019年1月14日)