澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論は、2020年1月27日(月)午前11時? 511号法廷。― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第167弾

DHCスラップ「反撃」訴訟では、本年(2019年)10月4日に一審東京地裁民事第1部での勝訴判決を得た。

判決主文は、請求の一部を認容して、DHC・吉田嘉明にして110万円(+遅延損害金)を支払えと命じるもの。訴訟費用負担は、原告(澤藤)が6分の1、被告ら(DHC・吉田嘉明)が6分の5という興味深い割合。

この判決にも被告(DHC・吉田嘉明)が控訴して、東京高等裁判所第5民事部に継続した。12月4日付で控訴理由書が提出され、第1回口頭弁論期日が、2020年1月27日(月)午前11時に指定されている。場所は地裁・高裁庁舎の5階、511号法廷。是非、傍聴にお越し下さい。

あらためて、この訴訟の概要についてお伝えし、ご支援をお願いしたい。

この事件は、典型的なスラップ訴訟である。スラップ訴訟とは、法に関わる社会現象であって、成文法に出てくる用語ではなく、厳密な定義があるわけでもない。常識的に理解されているところでは、「特定の表現を封殺する目的で提起される民事訴訟」を指す。封殺目的の「表現」の多くは言論だが、個人の行為や集団行動を対象とすることもある。その多くは、「社会的強者から」の「社会的に有益な表現」に対する攻撃である。その提訴という手段を通じて表現者を威嚇・恫喝せしめる側面に着目して、「威嚇訴訟」「恫喝訴訟」とも呼ばれる。典型的には、被告を威嚇・恫喝するにふさわしい、高額の損害賠償請求となっている。まさしく、DHC・吉田嘉明が私(澤藤)を被告として提起したDHCスラップ訴訟がそのような典型としての、世のイメージのとおりの訴訟である。

スラップは、その意図と効果において表現の自由封殺の反社会性をもちながら、国民の権利とされている民事訴訟提起を手段とするところに、スラップ特有の違法性判断の困難さがつきまとう。また、それが、スラップ提起者の付け目でもある。

私は、当ブログを毎日書き続けている。権力や権威、社会的強者に対する批判で一貫している内容。「当たり障りのないことは書かない。当たり障りのあることだけを書く」をモットーとして、連続更新は本日で、2459回である。
2014年春、このブログでサプリメント販売大手DHCのオーナー吉田嘉明を批判した。彼自身が週刊新潮の手記「さらば、器量なき政治家・渡辺喜美」で暴露した、みんなの党の党首(当時)渡辺喜美に政治資金として8億円の裏金を提供した事実を、「政治を金で買おうという薄汚い行為」と手厳しく批判したもの。

そして、吉田の裏金政治資金提供の動機を「利潤追求のために行政規制の緩和を求めたもの」として消費者問題の視点から批判した。
DHC・吉田嘉明がスラップ訴訟で、違法と主張したブログ記事の主要な一つが、次の記載である。
「大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される。スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。『抵抗勢力』を排して、財界と政治家が、旦那と幇間の二人三脚で持ちつ持たれつの醜い連携。
これが、おそらくは氷山の一角なのだ。」

これは、消費者に有益な情報である。このような言論が違法として封殺されてはならない。スラップ訴訟とは、市民に有益な情報を遮断しようというものである。スラップは本来表現の自由に敵対する違法な行為なのだ。

私は、突然に、生まれて初めて被告とされた。提訴時の請求慰謝料額は2000万円。私は、「黙れ」と恫喝されたと理解し、弁護士として絶対に黙ってはならないと覚悟を決めた。同じブログに、猛烈に「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズを書き始めた。本日がその第167弾にあたる。

このシリーズを書き始めたとたんに、DHC・吉田嘉明側の弁護士(今村憲・二弁)から警告があり、慰謝料請求金額は6000万円に拡張された。吉田自ら、提訴の動機を告白しているに等しい。
スラップの対象となった私のブログは、政治とカネをめぐっての政治的言論であり、「消費者利益擁護の行政規制を緩和・撤廃してはならない」と警告を発するもので、社会に許容される言論というよりは、民主主義社会に有益な言論にほかならない。

当然のことながら、このスラップ訴訟は、私の勝訴で確定した。しかし、DHC・吉田側が意図した、「DHCを批判すると面倒なことになるぞ」という恫喝の社会的な効果は残されている。スラップを違法とする「反撃訴訟」が必要と考えた。

こうして、DHCスラップ「反撃」訴訟が提起され、去る10月4日、その一審勝訴の判決を得た。先行の「DHCスラップ訴訟」の提起を違法として、慰謝料等110万円の賠償を命じたもの。係属裁判所は東京地裁民事1部(前澤達朗裁判長)である。

この判決は、大要次のように判断している。
「DHC・吉田嘉明が澤藤に対して損害賠償請求の根拠としたブログは合計5本あるが、そのいずれについての提訴も、客観的に請求の根拠を欠くだけでなく、DHC・吉田嘉明はそのことを知っていたか、あるいは通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。にもかかわらず、DHC・吉田嘉明は、敢えて訴えを提起したもので、これは裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に当たり、提訴自体が違法行為になる」

私の側は控訴しなかったが、DHC・吉田嘉明の側が控訴した。これから、控訴審が始まる。その第1回が、1月27日である。決定的に勝ちたいと思う。ご支援をお願いしたい。表現の自由の確立のために。
(2019年12月25日)

Info & Utils

Published in 水曜日, 12月 25th, 2019, at 23:21, and filed under ヘイトスピーチ, DHCスラップ訴訟.

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