澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

《NHK文書開示請求訴訟》上田良一・森下俊三両氏の尋問を申請

(2022年12月22日)
 NHKと森下俊三経営委員長の両者を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第6回口頭弁論が、下記のとおり開かれた。

     日時 12月21日(水) 14時
     法廷 東京地裁415号

 パワーポイントを使っての法廷での原告代理人意見陳述は、原告第7・第8準備書面の主張と、それに対する両被告の応答を整理した上で、4名の人証の申請をし、その採用の必要性を強調した。

 ことの発端は、NHK「クローズアップ現代+」が、「かんぽ生命保険」の不正販売を追求する番組を報道したことにある。この報道に日本郵政から圧力がかかってきたとき、NHKの最高意思決定機関である経営委員会は、番組制作の現場を守ろうとせず、日本郵政と一体となって、報道の妨害に手を貸した。その手段が、経営委員会の席上における「NHK会長に対する厳重注意」というもの。公共放送としてのNHKの歴史的な汚点であり、明らかな放送法(32条2項)違反でもある。

 114名の原告らが開示を求めているのは、この「会長厳重注意」を言い渡した経営委員会議事録にほかならない。「厳重注意」部分を除いた不完全なものではなく、法規に則った完全な議事録。そしてその議事録の正確性を確認するために必要な、会議録音の生データ。

 原告の主張は、この文書開示請求妨害の先頭に立ってきたのが、現経営委員長(当時は委員長代行)の被告森下俊三であり、同人こそが一連の不祥事の元兇として不法行為損害賠償の責めを負うというもの。

 この日、裁判所は、原告と両被告に対しそれぞれの主張は尽くしたものであることを確認し、証拠調べの段階に入りたいと述べた。そのうえで4人申請の人証の内、原告1人と、経営委員会事務方の責任者の2名の採用は問題がないとして、残る証人・上田良一(元NHK会長)と、被告本人・森下俊三(経営委員会委員長)両名の採否について、各被告代理人に口頭での意見を求めた。

 これに対して、被告森下の代理人からは、「当方から人証申請をして主尋問をしたい」旨が述べられ、被告NHKの代理人は「NHKに対する請求は文書開示に尽きるもので当該文書の存否は会長に聞いても分からない。従って証人としての採用は無用」との意見だった。

 若干の意見交換の後に、裁判所は森下側には「次回までに被告森下の本人尋問申請書を提出し、併せて陳述書を準備するよう」指示。NHK側には、「上田証人採否についての意見を文書にして提出するように。原告はこれに反論を。その後に採否を決したい」との意向を明らかにした。

 以下に、両名の立証趣旨と尋問事項を抜き書きして掲載する。

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第2 立証趣旨
 1 証人 上田良一(元NHK会長)
・NHK会長以下の執行部が、経営委員会の違法な指示にも従わざるを得ない立場にあること
・被告NHKが視聴者からの開示の求めに対して開示すべき文書を、経営委員会委員長の指示によって義務不履行、あるいは遅滞とした経験があったこと
・被告NHKの本件各文書の開示義務不履行あるいは遅延が被告森下の指示によるものであること
・本件開示請求対象である議事録及び会議録音記録の存在

 2 被告本人 森下俊三(経営委員会委員長)
・被告森下において、被告NHKに対して、本件各文書の開示をしないように働きかけたこと及びその動機が放送法違反行為の隠蔽にあったこと
・開示対象である本件議事録及び会議録音記録の存在

第3 尋問事項
 1 証人 上田良一元NHK会長
(2017年1月25日?2020年1月24日)
・経営委員会による「会長厳重注意」に至った事情
・「厳重注意」がどのような意図・目的でなされたと理解したのか
・公表すべき「厳重注意」に関する議事録が未公表のまま放置された経過とその理由
・甲1-2?1-4(以下「粗起こし」とする。)について被告NHKの開示義務履行が遅延した事情
・その他関連事項

 2 被告本人 森下俊三(経営委員会委員長)
・本件開示の求めへの対応についての協議のために、被告森下から被告NHKに対しどのように接触したか
・上記接触に対する被告NHKの反応はどのようなものであったか
・本件開示請求に関して、経営委員会から被告NHKに対する接触の有無
・本件開示請求に関して、被告森下から被告NHKに対する接触の目的ととその結果
・通常の経営委員会議事録作成手順
・通常の経営委員会における議事録音の手順
・通常の経営委員会における議事録音記録の保存
・本件経営委員会議事録作成手順
・本件経営委員会議事録音の手順
・本件経営委員会議事録音記録の管理
・録音記録を消除した具体的な経緯
・その他関連事項

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