澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

スガ政権による学問の自由侵害の、その先にあるもの

(2020年10月8日)

スガ新政権の日本学術会議への強権的な人事介入。この報に接して以来、首筋に薄ら寒さが消えない。秋風のせいばかりではない。あの、戦前のイヤーな歴史の記憶が、甦るからだ。

思い出されるのは、1933年の京都帝大・「滝川幸辰」事件、35年の東京帝大・美濃部達吉に対する「天皇機関説」事件である。政府の強権と右翼の暴力とが学問の独立や自由を蹂躙した後に、全体主義の国家と社会が完成した。そして、38年の国家総動員法から40年大政翼賛体制確立を経て、41年の太平洋戦争開戦へとつながっていく。

苛酷な戦争の惨禍を体験した戦後日本は、以下の「日本学術会議法」前文のとおりに科学を位置づけて学術会議を設立した。

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。

科学の使命は、「わが国の平和的復興と人類社会の福祉への貢献」だというのである。日本学術会議の主要な役割は、平和憲法と軌を一にして、再び科学が戦争の惨禍をもたらすことのないようにすることであった。今、国の産学官一体となっての防衛産業興隆策に、学術会議は科学者の良心を結集してよく抵抗してきた。

下記の「軍学共同反対連絡会」(共同代表、池内了・香山リカ・野田隆三郎)による「菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、撤回を求める」声明の、下記抜粋に全面的に賛意を表する。

http://no-military-research.jp/

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2020年10月5日

菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、撤回を求める

軍学共同反対連絡会
共同代表 池内 了 (名古屋大学名誉教授)
同    香山 リカ  (立教大学教授)
同    野田隆三郎(岡山大学名誉教授)

 私たち軍学共同反対連絡会は、戦前の日本の科学者たちが軍国主義政府に追随して侵略戦争に加担した歴史を反省して、科学者が軍事研究に手を染めることに反対する活動を続けてきた。その際に、日本学術会議が発した「軍事研究には絶対に従わない」との二度の決議と、それを継承する2017年の声明が大いなる導きとなってきた。今回の(菅首相による会員候補)任命拒否には、日本学術会議声明が大学における軍事研究を抑制している現状を変えようとする狙いも込められていると報じられており、その点でも私たちは断じて許すことはできない。

 日本学術会議は、単に日本の学術を代表する機関であるにとどまらず、科学者に対して自らの学問的良心と科学者としての倫理を想起させるとともに、広く学問の在り方を点検するための重要な機関である。私たちは、日本学術会議が任命拒否に怯むことなく、また学問の論理を追求することを怠らず、これまで通り学術の独立性を保つ姿勢を毅然として持ち続けることを強く期待している。

スガ新政権の日本学術会議に対する強権的な人事介入は、学術会議の独立の破壊であり、学問の自由の侵害である。さらにその先にあるものは、軍事研究に反対し、軍産学複合体制の確立に抵抗する学術会議への権力的掣肘なのだ。そのことが、首筋の薄ら寒さが消えない理由である。

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