澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「改憲発議許さず」―72年目の憲法公布記念日の集会

11月3日。文化の日である。戦後、明治節を廃しての「文化の日」とは意味深のネーミング。睦仁の誕生日を祝う時代は「野蛮」であった。天皇制の野蛮と訣別した今こそ「文化」の時代との宣言。そう理解したいところ。しかし、明治帝の時代に開花した文化の恩恵が今につながっている、その確認の意味をもった日と解する余地もないではない。どちらにも受け取れる。要するに曖昧なのだ。

1946年11月3日を選んで新憲法を公布したのは、吉田内閣である。形式的には天皇(裕仁)が公布した。せっかく欽定憲法を民定憲法に変えたのに、天皇の公布である。要するにうやむやなのだ。

日本国憲法には、前文の前に、「朕」から始まる以下の「上諭」が付いている。

朕は、日本國民の總意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、樞密顧問の諮詢及び帝國憲法第七十三條による帝國議會の議決を經た帝國憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。天皇署名 天皇印

 あくまで、大日本帝国憲法の改正という体裁なのだ。主権者を国民とする憲法が、天皇主権の大日本帝国憲法の改正手続きに則って、主権者天皇が裁可し、天皇が公布せしめたのだ。どう考えても、奇妙奇天烈。

日本国民の権力奪取によって制定された憲法ではないという弱みを随所に抱えた日本国憲法である。とりわけ、天皇制を温存したヌエのごとき憲法。すべての人を平等とし、出自や門地による差別を禁じながらの世襲の天皇制を残置した大いなる矛盾。すべての人に、職業選択の自由や居住地選択の自由を認めながら、天皇という人格にはこれを否定した人権の不徹底。なによりも、天皇の「貴」を認めれば、当然にその対極に「賎」を想定せざるを得ない。日本国憲法とは、拠るべき原理において曖昧模糊、守るべき人権において不徹底なもの。これを、70年余の間に、日本国民は、改悪策動を阻止しつつ、次第に使いこなしてきたのだ。

日本国民は、日本国憲法を改悪させず護ってきただけでなく、これを育ててもきたことを誇ってよいと思う。

もっとも、日本国憲法を快く思わぬ諸勢力の策動も活発である。いま、アベ政権による改憲策動のさなかであるが、市民と野党の対抗勢力がこれを押しとどめている。そのような幾度目かの危機の中での憲法公布72周年の記念日。

好季の好天である。野外集会日和、デモ日和。
「止めよう!改憲発議-この憲法で未来をつくる 11・3国会前大行動-」に足を運んだ。「ウソだらけの安倍政治を変えよう!辺野古新基地建設を止めよう!」というサブスローガンが付いている。

正午集合で12月3日集会のチラシを撒いた。集会開始の1時間前、あっという間に、チラシは捌けてなくなった。もっと持ってくれば良かった。

ところで集会は、参加者1万8000人という発表。この好天を、屋外集会日和と喜んだは浅はかだった。若者や家族連れには、この上ない行楽日和。行楽地が賑わったか。参加者の多くは、高齢者のようだった。

集会に、緊迫感はなかった。沖縄知事選勝利の余韻が漂う雰囲気。辺野古の工事再開への怒りはあっても、レームダック状態のアベ政権には改憲発議の力はなかろう、という、自信がみなぎっている。それが、運動疲れや弛緩もあって、集会規模にも盛り上がりにも微妙に反映している。

アベ改憲の思惑外れには、幾つもの報道がある。たとえば…。
山本幸三といえば、元地方創生担当相。アフリカ人を指して、「何であんな黒いのが好きなんだ」との一言で、一躍有名になった政治家。アベノミクス礼賛のリフレ派としても知られた人。昨日(11月2日)、その人が改憲について、思わぬ発言をしたと報じられている。

「(山本幸三は)憲法9条改正について『9条改正の前に戦争回避の議論が先決』として不要だとする考えを明らかにした。安倍晋三首相が9条改憲を掲げるなか、首相とも近い自民党の閣僚経験者が不要論を展開した。」
「山本氏は、9条1項と2項を維持して自衛隊を明記する案、9条2項を削除する案のいずれも『自衛隊はどこまで出かけるのかという議論が噴出し、国民の理解と支持が高まっている自衛隊が翻弄され、怨嗟の的になる』と懸念。9条については新条創設も含め一切手を付けるべきではないと主張した。」
「自衛隊の文字を憲法に書き込みたいのならば、自衛権の範囲などの議論を起こさないよう憲法73条(内閣の職務)に『自衛隊を指揮・監督すること』と『そっと書き込むことで十分』と提案した。」「自衛隊を憲法に明記しても戦争に勝てるわけではなく、9条2項を削除して他国と同じ軍事力を持っても戦争は回避できないとも強調した。」(毎日)

また、憲法公布72年 改憲議論、自民に孤立感 他党冷ややか」という見出しの、こんな報道も。

「日本国憲法は3日で公布72年を迎える。安倍晋三首相は今国会で憲法改正論議の加速を目指すが、与党・公明党の山口那津男代表は前のめりな発言を慎むようけん制。野党は改憲の賛否を呼びかけるテレビCMの規制を求めるなど、懸案の国民投票法改正案の成立さえ不透明だ。各党とも来年の参院選をにらんで「首相ペース」に乗る気配はなく、むしろ自民党が他党から孤立しつつある。」
「2日の衆院予算委員会。国民民主党の階猛氏から『改憲は急ぐべきでない』と批判された首相は『各党が案を持ち寄って議論しなければ、国民に判断材料を提供できない。まず持ち寄って議論すべきだ』と反論した。」
「首相は、自身に近い新藤義孝元総務相を衆院憲法審査会の与党筆頭幹事に起用。自民の下村博文憲法改正推進本部長は、全国の党支部に改憲推進本部を設けるよう求め、機運を高めようと躍起だ。だが、他党との距離は広がる。公明党には政権がごり押しすれば『おごり』批判が参院選を直撃しかねないという懸念があり、『改憲議論を進めよう』と誘った自民幹部を、公明幹部が『参院選の後でしょう』と一蹴する場面もあった。」
「衆参とも野党第1党となった立憲民主党は『まず国民投票法の不備を補う』(枝野幸男代表)と同法改正案の徹底審議を求め、歩み寄る気配はない。『少なくとも主要野党のどこかとは協調したい』と狙う自民がそこで目を付けたのは、野党第2党の国民だった。」
「国民が条件付きで改憲論議に応じると踏んだ下村氏は10月19日、国民の原口一博国対委員長と会談して秋波を送った。ところが国民はその後、CM規制強化の独自法案を発表。自民党重鎮は『憲法の議論を遅らせようとしている』と不快感を示したが、当てが外れたのは否めない。」
「行政府の長である首相がしばしば改憲に踏み込むことにも、自民以外の与野党には『改憲を発議するのは立法府の国会だ』と批判があり、公明の山口氏は『政府は余計な口出しをしないでほしい』とけん制。9条への自衛隊明記などを訴えてきた首相だが、2日の衆院予算委では『(過去の発言は)私の考え方であり、自民の(改憲条文)案にコメントしたことはない』と苦しい釈明を展開した。」(毎日)

アベ改憲、八方ふさがりである。だが、まだトドメを刺していない。手負いのレームダックとて、何をしでかすかの危険がある。油断してはならない。
(2018年11月3日)

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