「有権者の皆さん目覚めてください。立ち上がってください」
本日の毎日新聞第12面「オピニオン」の頁。「みんなの広場欄」の投書が目にとまった。「有権者の皆さん立ち上がろう」という、まことにストレートで、けれんみのないタイトル。投稿者は、滋賀県東近江市にお住まいの(無職・小西恵美子さん・70)。
まずは、その全文を引用させていただく。
内容が不十分にもかかわらず、まともな審議もせずに国の方向を左右する法案の採決を強行。さらに、体を張って「美(ちゅ)ら海」を守ろうとする沖縄の人たちを排除し、埋め立て工事を強行。これが我が国の政府のやり方です。どこに良識があるのでしょうか。
「さすがにこれでは良くない」と思っていても、長いものには巻かれろとばかりに「1強」になびき、異を唱えることさえできない与党の面々。しかし、その人たちは私たちが選んだ議員なのです。
有権者の皆さん、目覚めてください。立ち上がってください。こんな政治を静観せず、改めさせることができるのは有権者の一票一票なのです。それを無駄にせず、「物事を正しく考えて発言できる」人に投票しましょう。
来年は参院選が行われます。一人一人が政治に関心をもちましょう。そして、国民が安心して暮らせる平和な社会をつくるため、棄権せず、「正しい投票」をしましょう。
何とシンプルで力強い呼びかけだろうか。全面的に賛同したい。私も、「目覚めよう。立ち上がろう」と思う。そして、多くの人に、この思いを伝えたい。
この投書者は、今の政治に怒り心頭なのだ。よほど腹に据えかねている。しかし、絶望してはならないと自分に言い聞かせ、自分にできることを探して、新聞投稿という手段に訴えたのだ。まず、自らが立ち上がり、人に呼びかけることで一歩を踏み出したのだ。立派なことだと思う。
しかも、安倍や麻生を罵倒したい気持ちを抑えて、表現を抑制している。何よりも、多くの人の共感を得たいと考え抜いてのことだろう。
この投書者の現政権に対する危惧と批判は、何よりも議会制民主主義の劣化にある。誰が見ても明らかなとおり、重要法案の中身がいい加減だ。法案を必要とする根拠に関する資料は、捏造され、隠蔽され、改竄される。それでいて、まともな審議もすることなく、数を恃んでの採決強行が常套化している。議会は明らかに、形骸化させられている。恐るべき事態なのだ。これを「与党も野党もどっちもどっち」などと傍観していてはならない。真っ当な議会を、民主主義を取り戻さなければならない。
さらに、「体を張って「美(ちゅ)ら海」を守ろうとする沖縄の人たちを排除し、埋め立て工事を強行」。これは、住民の声を聞こうとしない権力の暴走以外のなにものでもない。しかも、公有水面埋立法では、海面の埋立は県知事の許可または承認が必要なのだ。その権限をもつ沖縄県知事が、国の埋立を違法と言っている。にもかかわらず、安倍政権は、問答無用で「沖縄の人たちを排除し、埋め立て工事を強行」しているのだ。誰もが納得できないことを「安倍一強」政権は強行している。いまや、安倍政権に一片の良識も見出すことはできない。
この劣化した政治の責任を負うべきは、まず「一強」と言われる安倍首相やその取り巻きにあり、次いで「長いものには巻かれろとばかりに「一強」になびき、異を唱えることさえできない与党の面々」にある。そのとおりだ。しかし、投書者の言いたいことはその先にある。
しかし、与党議員も、与党議員が選出した安倍内閣も、実は私たちが選挙で選んだ議員なのです。選挙で選んだ議員であり政権なのだから、選挙で覆すことができるはず。こんな、民意から離れた、あぶなくて、薄汚い政治は、有権者の意思で変えられるはずではないか。
だから、投書者の痛切な訴えとなる。「有権者の皆さん、目覚めてください。立ち上がってください。」という、声が絞り出される。改めて、その通りだと思う。「こんな政治を静観せず、改めさせることができるのは有権者の一票一票なのです。」
最近数回の国政選挙では、有権者は間違えた選択をしてしまった。自民党や公明党に多数の議席を与えてしまったのだ。残念ながらこの議員たちは、「物事を正しく考えて発言できる」人たちではなかった。この与党議員に対する投票は無駄になってしまった。いや、無駄どころか、その投票が腐敗した一強政治を育んでしまったのだ。民主主義の破壊、住民自治の破壊、憲法理念の破壊の進行をもたらしてきたのだ。今度こそ、自民党や公明党の候補者に投票することで過ちを繰り返してはならない。今度こそ、一票を無駄にすることなく、「正しい投票」をしなけれはならない。
「正しい投票」とは、一人一人が政治に関心をもち、政治を見つめ、話し合い、候補者を見極めての投票のことだ。具体的に、どの政党、どの政治勢力への投票が「正しい」投票であるかは、見解が分かれよう。しかし、今確実言えることは、諸悪の根源である安倍一強政治を生きながらえさせる投票であってはならないということだ。
来年(2019年)の4月には統一地方選挙、7月には参院選がある。現与党に大きな反省を迫る投票こそが、民主的で平和な社会を作るための「正しい投票」であると、私は確信する。
小西恵美子さん、ご活躍を。
(2018年12月20日)