堺市長選における「政党間共闘」の在り方
堺市長選挙についての「赤旗」報道の力の入れようは相当なもの。あたかも、この一地方選挙が天下分け目の決戦でもあるかのごとき扱いぶり。本日は、一面トップだけではない。2面に「市田書記局長竹山事務所を訪問」の記事、4面の半分のスペースで「堺市長・市議補選市田書記局長の訴え」、さらに社会面にも「堺市長選 無党派宣伝 ザビエルも『都構想ハンタイ』」の報道。東京版でこれなのだから、地元ではさらにさぞかしと思わせる。
昨年末の東京都知事選などとは格段の差だ。あの選挙の出口調査(朝日)では、宇都宮候補に投票したのは共産党支持者の64%に過ぎなかった。信じがたいことだが、共産党支持者の3分の1以上が、石原後継の猪瀬や極端な新自由主義者松沢に投票したのだ。選挙運動に全力を尽くさずには、既得勢力の確保もできないという現実がある。
市田さんの訴えは、さすがに市長選の争点に具体的に切り込む切れ味鋭い内容となっている。たとえば次のように。
「竹山市長のモットーは「市民目線」「現場主義」です。市民とひざ詰めで対話を重ね、出された声を市政運営に生かすという政治姿勢を貫いています。18号台風による大雨で、大和川周辺に「避難勧告」がだされました(16日)。竹山市長はただちに選挙活動を中止し、現場に出向き、陣頭指揮をとりました。
対岸の大阪市はどうか。市政初の避難勧告が朝8時30分に発令されましたが、そのとき橋下徹大阪市長は自宅でツイッターをやっていました。9時32分に「久しぶりのツイッターだな?」とつぶやいたかと思うと、10時までの28分間に14回つぶやき、それが夕方まで延々と続きました。中身は、台風被害ではなく、竹山市長や共産党への悪口ばかりです。
どちらの候補者が市民のくらしや安全を守れるのかはっきりしたのではないでしょうか。」
争点に具体的に切り込む切れ味が鋭い反面、この選挙の全国的な、あるいは歴史的な意義について語るところが乏しい。堺の有権者に向けての選挙演説だからと言えばそれまでのことだが、共産党がこの選挙をかくも重要視しているかの理由を語る点に物足りなさが残る。なにゆえ、独自の候補を擁立せず、革新・リベラル連合でもなく、自民党とまで手を組んでの主敵が「維新」であり、再重要課題が「反維新」なのかを、もっと積極的に語ってもらいたいところ。
もっとも、維新の側にとっては、文字通り党の命運を懸けた背水の陣の選挙。橋下徹は堺に張り付き、平沼赳夫代表、松野頼久幹事長ら執行部が相次いで堺入りしている。それでも、あらゆる調査が維新の劣勢を報告している。自主投票公明支持層の6?7割が竹山支持となってもいる。とすれば、維新逆転の頼みの綱は、「反共攻撃」の一本槍である。しかし、反共攻撃は諸刃の剣、却って墓穴を掘ることになるかも知れない。維新が、政策論争のできる理性的な政党ではなく、感情に訴えるしか能のない反共政党としての本質を露わにすることになるからだ。
堺市長選での維新の敗北は、大阪都構想の破綻を意味する。おそらく、橋下は党の代表を降りることになるのだろう。そうなれば日本維新の会は存続しえない。野党右派の再編や糾合、新党構想にも打撃が生じる。安倍自民は、改憲策動のパートナーを失うことになる。このようなプラスのスパイラルが動き出す…かも知れない。
ところで、堺のような政党間共闘もあり得ることに注目したい。各政党が連携しつつ、独自に無所属候補の選挙運動をするというものだ。現実に、自・民・共・社の4党が連携している。謂わば「政党版勝手連方式」である。これに無党派市民も独自に応援する。
昨年の東京都知事選挙のように、市民団体が主導して、政党に「この指とまれ」と呼び掛ける、その方式だけが現実的な共闘の在り方ではない。堺市長選の共闘の在り方とその運営の実態について、選挙結果が出てからじっくりと学びたい。
************************************************************************
「想像を絶する地下水?その2」 (9月19日付けブログの続き)
9月19日のブログに詳しく書いたとおり、福島第1原発は3・11の事故前、地下水の浮力を防ぐため、毎日850トンの地下水を汲み上げていたとのこと(元電力中央研究所主任研究員本島勲さんによる)。もともと福島原発の敷地は地下水のわきやすい場所で、造成自体が難工事であった。事故後の地下水と混ざり合った汚染水のコントロールはさらに想像を絶する難問で、安倍首相が言うように「ブロックされている」とか「コントロールされている」となどは到底いえない危機的状態にある。
本日(9月23日)のしんぶん赤旗には、元日本地下水学会会長藤縄克之さん(信州大学教授)の話が載っている。汚染水ブロックの困難さについて本島勲さんの意見を補強するものだが、専門家の説得力ある内容だけに、読後途方に暮れるような気分にならざるを得ない。それでも現実から目を背けることはできない。以下に藤縄克之さんの記事を要約する。
「地下水は陸側から海側に流れるという単純なものではない。海岸部の地下では、真水地下水と海水地下水とが交流している。重い海水が軽い真水の下を海側から陸側に向かってもぐりこむのが基本。海岸付近での真水地下水と塩水地下水の交流は半世紀以上前から研究され、大学では地下水学の初歩として教えられている。
このような場所(まさに原発事故現場)で真水地下水を抜くと必ず海水地下水が流入してくるので、水のコントロールは非常に難しい。もし、原発敷地の山側で真水地下水を汲み上げると、海側から海水地下水が原発敷地に逆流することになる。原発の事故現場では、海側に遮水壁が作られているというが、その壁の基部が透水性の低い泥岩層まできちんと入っていないと、その下の隙間や脇から海水が逆流して入り込んでくることになる。
だから、大きなプロジェクトでは必ず地下水についての予備調査が必須である。適切な場所に井戸を掘り、事前に、流路、流速、水位をきちんと調査しなければならない(原発建設時に、地下水学の水準を踏まえた適切な調査は行われたのであろうか。そうした資料は残っているのだろうか。今の泥縄の事故対策を見ていると甚だ疑問ではないか)。
原発の事故対策としては、加えて、放射性物質の水質成分調査、海水と真水の塩分濃度調査、メルトダウンした燃料の影響を知るために地下水の温度分布調査が必要となる。海水と真水の交流状態・放射性物質の移動・熱の移動、これら三位一体の調査をし、実効性のある対策を考える作業は、学会で人材を集めてやっても5年はかかる挑戦となる」
藤縄さんは凍土壁でブロックする計画については、確実性が低いとみている。その理由は凍土壁には、海側から平均18℃の海水が迫り、山側から平均13?14℃の地下水が流れ、内側ではメルトダウンした燃料と使用済み燃料の崩壊熱がかかる。それらの熱を除去して、マイナス40℃を保ち続けるのに、どのくらいの電力が必要で、それをどこから調達するのか。どのくらいの年月続けなければならないのか。ランニングコストはどのくらいかかるのか。確実なことは何も分かっていないからだ。
以上が藤縄さんの見通しである。真面目に考えれば考えるほど、絶望的な気分になる。安全神話に乗っかって、安易に原発の建設をしたツケがこの始末である。再稼働や原発輸出など絶対してはいけない。誰にも責任などとれることではない。この事態は、責任をとるつもりもない人間が寄ってたかって招いた、「我がなき後の洪水」なのだ。
(2013年9月23日)