澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

森友文書 虚偽の情報不開示に慰謝料認容判決

大阪地裁が、昨日(3月14日)「森友文書 国の不開示違法の判決」を言い渡したと、話題になっている。森友事件はまだ終わっていないのだ。

この訴訟は、「国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会」(略称真相解明の会」)の活動の一端としてのもの。周知のとおり、近畿財務局が学校法人森友学園に、鑑定価格9億5600万円の国有地をわずか1億3400万円で売却した。ごみ撤去費用8億1900万円を控除するという名目での値引きであるが、これを信用する者はない。その真相とは、安倍晋三・昭恵夫妻の関与があればこその違法な値引き以外には考えがたい。地道にこれを究明しようという目的で設立されたのが、「真相解明の会」。

この会の設立に関する事情は、下記URLを参照いただきたい。
http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/purpose/
私も、その呼びかけ人の一人となっている。2017年4月21日付の当ブログ「『森友への国有地低額売買をうやむやにしてはならない』ー そのための具体的提案」も、併せてご覧いただきたい。
https://article9.jp/wordpress/?p=8476
「真相解明の会」が、昨日の判決について、以下の報告をアップしている。これを引用しておきたい。判決文の全文も、問題の公開請求対象文書も引用されている。「森友問題でやっと国民の常識が通用した判決がでました。」というタイトル。
http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/7695/2019年3月14日
原告・弁護団一同

本日(3月14日)大阪地裁で判決があり、原告は勝訴しました(資料1判決)森友問題では官邸、政府与党、財務省官僚達、検察庁まで安倍総理に忖度し、国民の大多数がおかしいという批判にまともに対応せず、うやむやに終わらせようとしていました。やっと今回、国民の大多数がおかしいという常識が通用した判決がでました。

本件事件の概要です

原告は2017年5月に森友問題の発端となった「小学校設置趣意書」の情報公開請求を近畿財務局にしたら、同年7月に近畿財務局長が真っ黒な文書を開示してきました(資料2)。不開示の理由は森友学園の経営上のノウハウが記載されているからという理由でした。そこで原告はマスキングした内容の情報公開請求裁判を提訴したところ国は敗訴確実と思い、真実の文書(資料3)を開示してきました。4ヶ月も真実の文書を隠蔽した近畿財務局の責任を追及した訴訟です。裁判所は、本件文書にはおよそ「経営上のノウハウ」の記載がないのに、漫然と不開示にしたということで国家賠償上も違法であり、国に損害賠償を認容しました。認容金額の多い、少ないことは論点ではなく近畿財務局の違法行為の確認が目的であったので、森友問題でやっと国民の常識が通用した判決に満足しています。

現在、私達は森友問題で検察庁が不起訴にした財務省の官僚達の背任、公文書変造、毀棄罪について大阪の検察審査会に審査申立をしているところです。近いうちに議決が出ると思われます。これらの刑事事件も裁判所という公開の法廷で審理するならば、今回のように公正な判断がなされることは確実です。

検察審査会の各委員は森友問題をうやむやにした検察官の不起訴処分を許さず、「起訴相当議決」の英断をしてくれるものと期待しています

以上のとおり、この訴訟はやや特異な経過で、提訴されている。
まずは、上脇博之さん()の近畿財務局に対する情報公開請求から始まっている。上脇さんご自身の報告を中心にまとめると、以下のとおりである。
(1)森友学園小学校設置趣意書の情報公開請求(2017年3月14日)
(2)一部開示(事実上ほぼ全部非開示)(同年7月10日)
(3)非開示処分の取消を求めて大阪地裁に提訴(同年10月2日)
(4)近畿財務局長、「開成小学校設置趣意書」を全部開示(同年11月24日)
(5)国家賠償請求の訴訟を大阪地裁に提起(同年11月30日)
(6)大阪地裁認容判決(認容額55000円)(2019年3月14日)

以上のとおり、まず国は公開請求の文書(小学校の設立趣意書)を事実上不開示とした。不開示の理由は「設置趣意書に小学校名や教育理念などの『経営上のノウハウ』があるから、というのである。納得できない、上脇さんは「不開示処分取消」の行政訴訟を提起した。

ところが提訴間もなく、観念した国は、当該文書を全面公開した。その公開文書の内容は、不開示の理由とされた『経営上のノウハウ』などとはまったくの無関係なものだった。

普通、ここで追及はやめることになる。公開請求した文書が出てきたのだから、これで満足となる…はず。ところが、上脇さんと、阪口徳雄君を団長とする弁護団は、追及の手を緩めなかった。「なぜ、素直に文書の公開をしなかったのか」「なぜ、ウソをついてまで文書公開を拒否したのか」を問題にして、慰謝料の国家賠償請求訴訟を提起した。ここらが、真似のできないところ。そして、昨日の勝訴判決である。森友事件は未解決だ、と大きく世論アピールすることにもなり、情報公開制度の重要性再認識の機会ともなった。

裁判長は判決理由の要旨を読み上げ、設置趣意書に小学校名や教育理念などの「経営上のノウハウ」があるとして不開示にした財務省近畿財務局の判断について、「(趣意書の)教育理念は概括的かつ抽象的で、実質的に公になっている。同じ校名を使用した学校は他にも存在し、独自性はない。近畿財務局長はなんら合理的根拠がないのに誤った判断をした」と、述べた旨報じられている。

結局は安倍夫妻の関与あればこその不開示決定としか考えられないところ。この一連の情報公開手続で、森友問題の真相解明はまた半歩前進した。

いま、森友事件解明の鍵は、大阪検察審査会の手中にある。11人の審査委員のうち8人が「起訴相当議決」に賛意を表明すれば、強制起訴の道が開ける。

今回の判決は、検察審査委員を励ますものとなったと思いたい。
(2019年3月15日)

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