安倍晋三は考えた ― 「桜の疑惑を、コロナでかわせ」
常軌を逸した安倍晋三による全国の小・中・高・特別支援校に対する休校要請。そのせいで、本日から全国の家庭も教育現場も大混乱に陥っている。「場当たり」「思いつき」「無責任」「大ブレ」「ちぐはぐ」「やってる感だけ」「支離滅裂」「独りよがり」と、安倍への辛辣な不信・批判が全国に渦巻いている。既に、「安倍ウィルス」「安倍コロナ」という呼称も見える。後に、「悪夢のような安倍の時代」の象徴的事件と振り返られることになるのだろう。問題は、彼が何ゆえこのような愚策を持ち出したのかということである。
「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の見解発表が2月24日である。ここには、「感染の拡大のスピードを抑制することは可能だと考えられます。そのためには、これから1?2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります。」「この1?2週間の動向が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際であると考えています。そのため、我々市民がそれぞれできることを実践していかねばなりません。」という文言がある。この表現が後の全国一律休校の根拠とされるが、明らかに大きな無理がある。
この見解の別の個所には、「新型コロナウイルスに感染した人は、ほとんどが無症状ないし軽症であり、既に回復している人もいます。」「これまでに判明している感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染と接触感染が主体です。空気感染は起きていないと考えています。ただし、例外的に、至近距離で、相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性が否定できません。」という叙述もあり、全体に相応の事態の緊急性は感じられるものの、慌てふためいた切迫感はない。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00006.html
2月24日専門家会議の見解を受けて、翌25日「新型コロナウイルス感染症対策本部」は「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定した。その内容は、前日の専門家会議の見解に平仄を合わせた落ちついたものだった。
「国民に対する正確で分かりやすい情報提供や呼びかけを行い、冷静な対応を促す」ことを基調として、「イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛要請を行うものではないが、専門家会議からの見解も踏まえ、地域や企業に対して、イベント等を主催する際には、感染拡大防止の観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討するよう要請する。」とされ、国民心理を撹乱するものではない。 とりわけ、「冷静な対応を促す。」という文言を基調に据えたものとの印象が強い。
ところが、翌2月27日の安倍総理名による【イベントの開催に関するお願い】から、おかしくなる。安倍の暴走が始まる。
「政府といたしましては、この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請することといたします。」というのだ。
いったいどうしたことだ。昨日は「全国一律の自粛要請を行うものではない」といった舌の根も乾かぬわずか一日で、「多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請」とは。このブレについての説明はどうした。と不信感を募らせていたところへの追い打ち。翌27日には驚天動地の「全国一律休校要請」である。もはや、何をか言わんやである。あきらかに、合理的客観的な根拠を欠く乱暴極まる愚策。
安倍乱心の理由の一つは、数々の説明不可能な疑惑についての世論の追及をそらせることにあるものと考えざるをえない。安倍自身の責任が追及されている「桜を見る会」疑惑が最も大きい。さらに、カジノ汚職、河合杏里事件、菅原一秀疑惑もある。国民の政権批判は厳しく、2月の各社世論調査では、内閣支持率が軒並み急落である。最新の【産経・FNN合同世論調査】(22、23両日実施)では、「1年7カ月ぶり不支持上回る」と報じられた。
「安倍晋三内閣の支持率は、前回調査(1月11、12両日実施)より8.4ポイント減の36.2%で、不支持率は7.8ポイント増の46.7%だった。不支持率が支持率を上回ったのは1年7カ月ぶり」という。
また、同調査では、「首相主催の「桜を見る会」をめぐる安倍首相の説明について「納得していない」との回答は78.2%に上った。ただ、国会は「桜を見る会」と新型肺炎の問題のどちらを優先して審議すべきかを聞いたところ、89.0%が「新型肺炎」と答えた」という。
このあたりに、安倍の取り巻きが目を付けたのではないか。「桜疑惑に付き合っていると政権の命取りになる」「しかし、国民の関心は桜よりコロナだ」。ならば、「桜の疑惑を、コロナでかわせ」という作戦が有効ではないか。
しかも、政権のコロナ対策は、後手後手にまわったと悪評さくさくだった。ダイアモンド・プリンセス号では、対策を誤って船内大量感染をもたらしたと批判された。「今度は、先手先手だ」と前のめりになったことも考えられる。
できるだけ、コロナ問題を大ごとにすることで「やってる感」を演出したい。そうすることで、桜疑惑による支持率低下を挽回することができるのではないか。安倍の考えそうなことではないか。
おそらく、この窮余の一策に安倍が乗ったのだ。もちろん、練られた策ではない。参院の予算委員会質疑では、冒頭からボロボロだ。それでも、国民がひとときなりとも桜疑惑や数々の閣僚の不祥事を脇に置いてくれる効果はあったとほくそ笑んでいるのではないか。そして、桜が咲く頃には、国民は桜疑惑を忘れてくれる。そう思い込んでいるに違いない。こんな、安倍晋三流の悪あがきを許してはならない。
(2020年3月2日)