《小池百合子》と《学歴詐称》は密接・密着・濃密な関係。 ー 野党にチャンス、『プランB』ではなく『プランA』の候補者を。
(2020年6月6日)
6月18日告示の都知事選が目前である。私は、差別を容認し思想・良心を蹂躙して顧みない石原慎太郎知事以来の都政に我慢がならない。小池百合子都政を変えるために有力な「勝てる候補」の擁立を心から願っている。
「市民と野党の共闘」が高揚するいま、その課題は現実的なものと考えていたのだが、どうやら期待外れになりそうだという。報じられているところでは次のような事情だという。
野党四党は当初、統一候補の擁立を目指した。立民の蓮舫参院議員や前川喜平元文部科学次官の名前が挙がったが、いずれも立ち消えになった。新型コロナの感染が拡大し、都の対策の陣頭指揮を執る小池氏の存在感が一気に高まったからだ。れいわ新選組の山本太郎代表も統一候補としての出馬を検討したが、立民と合意に至らなかった。
立民が独自候補にこだわって小池氏に惨敗すれば、衆院選の野党共闘に痛手となることから…共産、社民との共闘の形を整えるため、無所属で出馬を表明している宇都宮氏の支援を事後に決める「プランB」(同)に落ち着いた。(東京新聞)
「プランA」があったのだ。そのプランでは、蓮舫・前川喜平・山本太郎などの錚々たる顔ぶれがリストアップされていた。しかし、結局のところ意中の人は首を縦に振らず、「プランA」は儚く潰えた。やむなく、勝てそうにもない候補者だが、不戦敗よりはマシの形作りのために、「プランB」としての候補者選択を余儀なくされたということなのだ。「プランB」とは言い得て妙だが、意中の人ならぬ「Bクラス」「Bランク」「B面」の候補者の擁立である。
注目すべきは、「プランA」を採用できなかった理由が、「新型コロナの感染が拡大し、都の対策の陣頭指揮を執る小池氏の存在感が一気に高まったからだ」ということである。はたしてその通りだろうか。
確かに、コロナを追い風にした現職の強みは圧倒的で不戦勝に等しいというのが、つい先日までのもっぱらの下馬評だった。ところが、いま雲行き急変の様子がある。猪瀬直樹や舛添要一に対する突然のバッシングの嵐が記憶に新しい。小池百合子が「排除いたします」というたった一言でそのカリスマ性を喪失した事件もあった。この妖しい雲行き、突然の豪雨にもなりかねない。
本日(6月6日)の毎日新聞朝刊に、伊藤智永論説委員の「時の在りか=小池都知事再選を危ぶむ」が衝撃的である。その一節を引用する。なお、全文が、下記URLで読める。
https://mainichi.jp/articles/20200606/ddm/005/070/029000c
女性評伝の名手である石井(妙子)氏が、3年半かけて取材した新著は、5月末刊行の「女帝 小池百合子」。即重版の売れ行きらしい。3カ月前から東京オリンピック延期やコロナ感染症対策で張り切る東京都知事の半生を徹底的に跡付けた力作だ。
一読、暗たんとなる。400ページを超える長編で、何人もが次々と小池氏に同じ言葉をぶつける。
「裏切り者! ウソつき!」
政治家の恨み言なら同情もしないが、これが国会議員時代前半に地元だった兵庫県の阪神大震災被災者、環境相当時の水俣病認定漏れ患者、アスベスト(石綿)被害者、築地中央卸売市場の豊洲移転に反対した「築地女将さん会」メンバーの叫びなら、そうはいかない。
政治にウソや裏切りはつきもの、といった訳知り顔にはくみしない。例えば故野中広務元官房長官は政争をいとわず、怖がられ、孤独でも、有権者からこのようにののしられることはなかった。仮にあったら、何とかしようと骨折ったはずだ。
小池氏はほったらかす。追いすがる相手に手ひどい矢を放つ。そんなエピソードがふんだんにある。
震災被災者の陳情を、議員会館で指にマニキュアを塗りながら顔を上げずに聞いて言ったそうだ。
「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます?」
昨日(6月5日)の講談社のネット記事。《「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する》 「『女帝 小池百合子』著者が真相を語った。」というインタビューも、インパクト十分である。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73063
インタビュアー近藤大介と、石井妙子とがこんな遣り取りをしている。
近藤 小池百合子氏は、生まれてこの方、一体いくつのウソをつき続けてきたのだろうと、石井さんの本を読みながら数えていったものの、50くらいまで来てやめました。「嘘八百」という言葉があるけれど、本当にこの本には800くらいのエピソードが詰め込まれているかもしれません。まさに「虚飾の政治家」です。
石井 この政治家(小池百合子)は、ウソにウソを塗り重ねたことで現在があるということが、次第にはっきりとわかってきたんです。ある時は自己顕示欲を満たすため、ある時は自己防衛のためにウソをつく。その後、それを隠そうと土を掘って埋めるけれど、隠そうとするあまり、土をかぶせすぎてしまうので、かえって、土が盛り上がり、そこにあるウソが透けて見える。そんなイメージでした。
具体的問題は、小池百合子の学歴詐称「カイロ大学首席卒業」の嘘である。実は、「首席」が嘘というだけではない。そもそも「卒業」が嘘というのだ。
近藤 「(小池氏は)カイロ大学は1976年の進級試験に合格できず、従って卒業はしていません」はっきりとこう述べている。これが事実なら、小池氏は完全な公職選挙法違反です。
石井は、この点の取材の様子を詳細に語って説得力十分である。
石井と並んで、これまで小池百合子の学歴詐称問題を追及してきたのが、作家の黒木亮。5月30日に、ネットに以下の記事を出している。これも、説得力十分である。
カイロ大学の深い闇…小池百合子が卒業証書を「出せない」理由 「捏造」が当たり前の驚くべき実態
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72912
この二人の調査を前提に、6月2日元検事の郷原信郎がこんな記事を書いている。
小池百合子氏「卒業証明書」提示、偽造私文書行使罪の可能性
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20200606-00182101/
「都知事選、小池百合子氏は「学歴詐称疑惑」を“強行突破”できるか」
その記事の中で、郷原はこう語っている。
「カイロ大学卒」の学歴が虚偽である疑いが、石井氏の著書、黒木氏のネット記事で、改めて指摘されている中、疑問に答えることなく、これまでどおり・選挙公報の経歴欄に「カイロ大学卒」と堂々と記載することができるのだろうか。
しかし、それを記載しないで、「正直」に、「カイロ大学中退」などと記載した場合、それまで、「カイロ大学卒業」としてきたことの虚偽性を認めることになる。小池氏にとって、それは政治生命の終焉を意味する。
小池氏にとっての選択肢は、何らかの理由を付けて再選出馬を断念するか、立候補し、従前どおり「カイロ大学卒業」の学歴を選挙公報に記載して都知事選「強行突破」を図るかの、いずれかである。
わずか4日前のこの指摘が、今にわかに注目度を上げている。小池百合子はこの都知事選に、いかなる学歴を記載して立候補するつもりだろうか。どのように学歴を記載しても、小池百合子と学歴詐称とは、密接・密着・親密・濃密な関係として定着するだろう。
かつて、立花隆の調査報道になる「田中角栄研究 その金脈と人脈」が、田中角栄を退陣に追い込んだ事件を思い出す。既に、この書を引いての小池百合子の学歴詐称追及が始まっている。もしや、と思わせる展開である。
そこで、申し上げたい。今や、小池百合子はけっして強い候補者ではない。「プランAの候補者」であれば十分に勝機はある。まだ、時間はのこされている。せっかくの勝機をみすみす逃すことのないよう、市民運動と野党の皆さんには賢明な再考を願う。