澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

松元ヒロ・「憲法くん」の語りに脱帽

憲法フェスティバル、略称「憲フェス」に足を運んだ。40回目の憲法記念日となった1987年に、青年法律家協会が企画して第1回を開催。以来連綿と続いて、今年は28回目となっている。実行委員会は、年に1度のイベントを開催するだけでなく、通年の憲法運動の担い手となっている。これが立派なところ。

今年のテーマは、子どもの日にちなんで「この子らに託すもの」。大林宣彦監督作品「この空の花ー長岡花火物語」の上映と、同監督のトークがメインの企画だが、私のお目当ては、松元ヒロさん。「今年の憲フェスに、あの『憲法くん』が帰ってくる!」という惹句に惹かれて、「憲法くん」に会いに行った。

素晴らしいステージだった。45分間の熱演を堪能した。…という程度では言葉が足りない。脱帽した。ショックさえ感じた。そして、その姿勢に学びたいと思った。こんな風に、楽しく、分かりやすく、大切なことを上手に語れるようになりたいものと思う。

私は、ヒロさんの「憲法くん」の初演を観ている。あのときもすごいと思ったが、あれから遙かに芸が磨かれ、洗練されている。同じ古典落語をくり返し聞いていると、簡潔だが実に的確な言葉の組み立てになっていることに気づかされる。言葉の贅肉を殺ぎ落として成り立つ芸。そういう芸を聞かせてもらった。

ヒロさんは、「テレビには出演することのない」芸人として定着している。政権への批判や皇室への物言いにも遠慮がない。そこが、観客にウケる所以だが、決して言葉にどぎつさを感じさせない。政権の要人や天皇を揶揄して笑い飛ばしても、その人格を貶めてはいない。だから、会場全体で安心して笑える。

いくつかのセリフに感心した。憲法の本質を語り、自民党改憲草案の危険性の本質をよく語っている。以下は、私の記憶の限りでのトークの一部の再現。

「私たち国民が国の主人公なんですよ。戦前とはそこが違う。だから本当は私たち国民自身が、どのように国を動かしていくか話し合って決めなければならない。だけど、私たち、みんな忙しいですよね。仕事もしなければならない。だから、私たちの代わりに話し合いをする人を選んで、その人たちにきちんと国を動かすように頼むんです。その頼む相手が代議士・国会議員。その中から、国を動かす責任者も出てくる。別にエラクもなければ、先生と呼ぶ必要もない。」

「私たちはこういう人たちに、しっかりと国を動かしてくれよ、と頼むんです。だけど丸投げで頼むわけじゃない。頼まれたから何でもできると思って戦争なんか始めちゃダメだよ。そのために、憲法にしっかりと9条を書いてこれをわたす。この憲法に書いてあることをしっかり守って、頼まれごとをやってくれ、と」

「この世の中の歪みの犠牲者として、貧しい人が出てきますよね。不幸な境遇の方もいる。そういう人を、社会全体で支えてあげたいと思いますよね。お互いさまですから。私たちは、国の主人公として、そういう風に国民のお金を使いたい。だけど、私たち一人一人はみんな忙しいですよね。仕事をしなくちゃならない。だから、みんなからお金を集めて、困っている人に配分する仕事を頼むんです。そのときに、『ハイ、これが25条。これに基づいてみんなのお金を使ってくれ』と渡す。これが憲法というものなんです」

私も、ヒロさんに学んで分かりやすく語ることの修行を積み重ねよう。分かりにくいのは、語る側がよく分かっていないからだ。あるいは、分かってもらおうという情熱に欠けるから。聞き手に、あるいは読み手に分かってもらうため工夫を重ねよう。そして、話しも文章も、長すぎないように心掛けよう。原則として…、だけど。
(2014年5月5日)

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Published in 月曜日, 5月 5th, 2014, at 21:03, and filed under 未分類.

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