澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「すくっと 立ち上がる」言葉を

かごめかごめ
籠の中の鳥は
いついつ出やる
夜明けの池で
晋と朋が滑った
後ろの政治家だあれ?

「右派言論ウォッチャー」を自ら称する佐藤恵美さんの作。「靖国・天皇問題 情報センター通信」の最新号(通算517号)の「新編右翼事情」欄の末尾に載っていたもの。

「かごめかごめ」の元歌がなにやら不可解で、不可解ながら不気味で陰鬱な色合いをにじませている。「籠の中の鳥は いついつ出やる」とは、囚われ人の溜息が言葉になったものだろう。こんな、絶望の雰囲気に満ちた童謡がまたとあろうか。

佐藤恵美版「かごめ」は趣を異にする。「籠の中の鳥」とは、アベ政治のおぞましさ、まがまがしさの根源にある行政を私的にコントロールする仕組みの秘密。「晋」は極右の「朋」には、ねぎらい、振る舞うのだ。行政機構は、忖度を重ねて「晋の朋」のために、大判振る舞いをする。おぼえめでたきを良しとして、見返りを期待するというわけだ。

籠の中に閉じ込められて、なかなか外からはうかがい知れない。この「鳥」が、もう一息でうまく出そうなのだが、出そうでいて実はなかなか出てこない。そのもどかしさが、「いついつ出やる」と愚痴になる。

それにしても、「晋」と「昭」と、その「朋」らが、みっともなくも滑ったことは間違いない。籠からは真実を開け放ち、代わって「晋」と「昭」らを逃さず閉じ込めなければならない。

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何の解決も見ることなく、事態生煮えのままやや下火になった「アベ友学園」問題。このままでよいはずはない。ようやく、このところ再燃の兆し。新たな資料も出てきた。「『森友』音声記録 土地交渉中 昭恵氏に言及〈籠池氏、財務省と面会時〉」(東京)、「森友の国有地取得、財務局が手助け 書類の案文も添付」(朝日)などと、新資料に基づいて、問題解明に積極的に切り込む報道が増えている。

本日(4月27日)の東京新聞「こちら特報部」は、出色。「共謀罪」と「森友問題」をならべて、「ふたつの共通項とは?」と記事にしている。「政府・与党 禁じ手連発」「揺らぐ法の支配」「機能不全の国会」「説明できぬ大臣 反対意見抑圧」「野党の資料要求も拒む」と、大きな活字の見出しが並ぶ。

特報部記事の中に、「デスクメモ」という囲み記事がある。ここに「息苦しい新たな『戦中』がかたちになり始めている。押し返さねば、塗り固められる。いたるところで抵抗を」と書かれている。切実な思いの込められた重い言葉。

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4月21日の当ブログ「森友への国有地低額売買をうやむやにしてはならない」ーそのための具体的提案」で話題にした、近畿財務局への第三者委員会の設置等を求める要請行動。この短期間に、弁護士と学者の要請賛同者は280名を超えた。

本日、代表者が、近畿財務局に要請書を提出し、連休明け5月10日までの回答が約束されたという報告。

MBS(毎日放送)が下記のように取り上げている。
http://www.mbs.jp/news/kansai/20170427/00000023.shtml

「学校法人「森友学園」が大阪府豊中市に小学校を建設するために国有地を取得したいきさつについて、弁護士らのグループが近畿財務局に対し、第三者委員会の設置を求める要望書を提出しました。
去年6月、森友学園は小学校を建設するために豊中市の国有地を買い受けましたが、約8億円が値引きされた算定根拠などは今も不透明なままです。このため、弁護士や法学者など約280人のグループは 土地を売却した近畿財務局に対して交渉経緯などを調査する第三者委員会の設置を求めています。

『国民の大多数は疑問に思っている。法的な手段で可能なものを全てやる』(阪口徳雄弁護士)
グループは、国が交渉記録を廃棄したことについて行政訴訟を起こすことも検討しているということです。」
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この報道のタイトルが、「『法的な手段全てやる』弁護士ら森友問題で要望書」というもの。阪口徳雄君の、「国民の大多数は疑問に思っている。法的な手段で可能なものを全てやる」発言は、短くて歯切れがよい。

ところで、本日の東京新聞「筆洗」からの引用である。

捨てる。捨てない。
忘れる。忘れない。
戻る。戻れない。
帰りたい。帰れない。
遠い。近い。
どうする。どうしようもない。
陽炎の 向こうに。
ゆれて見える。

これは、福島県相馬市に住む根本昌幸さん(70)の詩集『荒野に立ちて』に収められた詩「わが故郷」だという。微妙で複雑な気持ちが、そのまま言葉になっている。
また、根本さんは、こういう詩も書いているという。

人が人を 虫けらや獣のような 扱いをしたとき。
言葉はすくっと 立ち上がるだろう。
そして人に向かって行くだろう…。

復興相の「東北でよかった」発言にちなんでの、「筆洗」の引用であって、まことに適切である。だが、この詩はそのような状況を越えて、普遍性の高い、立派な作品であり、言葉だと思う。

『荒野に立ちて』も、東京新聞「デスクメモ」も、阪口君の「法的な手段で可能なものは全てやる」発言も、言葉がすくっと立っている印象がある。

そういえば、最近「すくっと 立ち上がった」、見事な言葉を聞いた。

多喜二多喜二 総理の夢に現れよかし  山路家子(81)東京都

東京新聞4月20日の「平和の俳句」である。いとうせいこうが、「特高警察に殺された小林多喜二の命日、2月20日にさまざまな句が寄せられた。共謀罪の閣議決定に私たちは過去を見る。そして歌う」と解説している。この句の凜々しさ、厳しさに、解説が追いつかない。

私も、「すくっと 立ち上がる」言葉を発したい。切実にそう思う。
(2017年4月27日)

102歳の治安維持法犠牲者が語る共謀罪の危険性

日本国民救援会の「救援新聞」(月3回刊)が、共謀罪の問題点を衝く記事で充実している。

最近の4月15日号(通算1853号)の一面に、シリーズ「私も反対です『共謀罪』」として、治安維持法犠牲者杉浦正男さんのインタビュー記事がある。同氏は、2014年生まれの102歳。改正治安維持法5条の目的遂行罪で、1942年に検挙され、懲役3年の実刑判決を受けて敗戦後の45年10月に釈放されている。下獄中に、「私の妻は3月10日の東京大空襲で爆死したと聞かされ、房で大声をあげて泣きました」という体験をもった方。

「特高警官5人が竹刀手にリンチ」という小見出しで、逮捕された際の体験が、次のように綴られている。
「『貴様ら、共産主義運動をやりやがって、日本を赤化しようなんて大それたことをやらかすとは、どういうことだ。戦地では兵隊さんがお国を守るために必死に戦っているんだぞ。国賊め、貴様らの一人や二人殺しても、誰のとがめも受けないんだ。たたき殺してやる』
 横浜の警察の道場に連れて行かれ、竹刀や樫の棒を持った警官5人が代わる代わるメッタ打ちにし、髪をつかんで引きずり回し、樫の棒で膝を、竹刀で頭を打ち、正座させては膝の上に何人もが乗り、飛び跳ね、蹴飛ばすなど、凄惨なリンチを受けました。」

おそらく、何の誇張もない証言。「国賊め、貴様らの一人や二人殺しても、誰のとがめも受けないんだ」とは、特高の本心だったろう。治安維持法がこの世にあった20年間(1925年~45年)に、送検された者7万5681人だが、現実に特高の手で「たたき殺された」犠牲者は90人。拷問、虐待などによる獄死者1600人余とされている(治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟調べ)。

杉浦さんは、実刑を受けた受刑者5162人の一人。リンチで殺された90人にも、拷問虐待死者1600人余にもはいらなかったが、同様の手荒い扱いは受けたわけだ。戦前の野蛮きわまる天皇制のもとでの狂気の振る舞い、というほかはない。

しかし、こんなことをした特高は、実は鬼でも蛇でもない。おそらくは仕事が終われば妻と花見もし、子連れで花火の見物もする実直な下級公務員であったろう。むしろ、「父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信シ」という徳目の実践者であったとも考えられる。天皇に逆らう非国民・国賊を痛い目に遭わせることは、「君のため、国のため」の正義の鉄槌だと本気で信じていたに違いない。3・1万歳事件や南京事件で他国の民を虐殺した皇軍兵士も同様だ。これが、人間の恐いところ。教育勅語に象徴される戦前の教育(というよりは洗脳)を受けて作りあげられた人格の現実の姿を冷静に見据えなければならない。

「1925年に制定された治安維持法は、天皇制と資本主義を否定する結社とその活動を取り締まることが目的で、制定の3年後には最高刑を死刑に引きあげ、目的遂行罪が導入され、これが猛威をふるいました。禁止されている結社に加入していなくても、その結社の目的を助けたと警察が判断すれば検挙されたのです。」

実は、杉浦さん自身には、治安維持法が禁止する天皇制と資本主義を否定するという考えはなく、共産党員でもなかった。
「私はただ、悲惨な印刷出版労働者の現状を何とかしたいと思って活動していたら、特高警察に共産主義を信奉して、大衆を集めて教育した犯罪者にされてしまった」という労働運動活動家であった。これが、天皇制政府の戦争遂行政策に邪魔者とされたのだ。

そのような体験を振り返って、杉浦さんがこう語っている。
「『共謀罪の中身を見ると、これは治安維持法と同じだと思います。警察が目を付けた人間を監視し、話している内容を知ろうと捜査する。いったん、法律ができてしまうと、治安維持法と同じく、拡大解釈されたり、改悪される可能性は大きいのです』
杉浦さんは噛みしめるように訴えます。
『私は、治安維持法の恐ろしさを知っている生き証人として訴えます。共謀罪は間違いなく、戦前の治安維持法と同じ、国民の話し合いの自由を奪うものです。必ず、廃案にさせましょう』」

共謀罪の恐ろしさは、構成要件が曖昧なことだ。犯罪実行行為着手のずっと手前で、「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の…準備行為」の段階で共謀参加者を一網打尽にしようというのだから、当然に曖昧となる。ことさらに曖昧なことが政権にとっての使い勝手の良さなのである。物の購入や金銭の出し入れなど、普通の人の日常の行動を犯罪にすることができるのだ。

これが、改正治安維持法第5条「(結社)ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ1年以上10年以下ノ懲役ニ処ス」の、「目的遂行のためにする行為」という、何でもしょっ引ける構成要件と瓜二つなのだ。

治安維持法が猛威を振るったことに関して、内田博文・九州大学名誉教授が、その拡大解釈を許した法曹の責任を「治安維持法の育ての親」と厳しく問うている。その責任を負うべき「天皇の裁判所」の裁判官たちは、追放されることなく戦後新憲法の司法を受け継いだ。いま、忖度の流行る世の中。裁判官も例外ではない。「信頼できる裁判所があるから大丈夫」などとノーテンキなことを言っていてはならない。102歳翁の「共謀罪必ず、廃案にさせましょう。」の訴えを噛みしめたい。
(2017年4月18日)

共謀罪ーその危険な本質と狙いー 日本共産党都・区政(文京)報告学習会レジメ

はじめに

「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」
ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった私は共産主義者ではなかったから社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった私は社会民主主義ではなかったから彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった私は労働組合員ではなかったからそして、彼らが私を攻撃したとき私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった
マルティン・ニーメラー

共謀罪とは?
共謀・・・二人以上の者が、共同でたくらむこと(広辞苑)

共謀罪とは、その名のとおり、「たくらみ(話し合い)」自体を犯罪とするもの

近代刑法において、犯罪とは、人の「行為」に対し、刑罰を科すもの

共謀罪は、近代刑法の基本原理と相反する

刑法の大原則
行為責任主義
違法な「行為」を罰すること
→「行為」がないのに罰する
法益侵害
保護法益を守ることが刑事法の目的
→何の法益侵害もない
罪刑法定主義
どんな行為が犯罪なのか、事前に明示する
→どこまでが犯罪なのかわからなくなる

共謀罪法案、廃案の歴史
2003年に最初に国会に法案提出され、その後合計3回提出されたが、いずれも廃案。2009年以降、法案提出の動きはなかった

2016年8月突然の法案リーク。安倍政権は、2017年3月21日に法案(政府の呼称は「テロ等準備罪」 )を国会に提出した。会期は6月18日まで。今のところ延長はないと思われる。

従来の法案    ⇒       今回の法案
犯罪主体     団体の活動として⇒組織的犯罪集団の団体の活動として
対象行為     共謀 ⇒  2人以上で計画、準備行為を行う
対象犯罪     長期4年以上の懲役禁固(676罪)⇒676罪から絞り込み277罪

組織的犯罪準備罪は共謀罪
安倍首相は、「これまでの共謀罪法案とは違う」と言うが・・・・
国会に提出された法案では、「共謀」という言葉が消え、「テロ等準備罪」とされたが・・・
まず、日本の法定刑は幅が広い
長期4年以上の犯罪は対象犯罪は676 過失犯等除いても637?
これを91法律の277罪にしたとしても「五十歩百歩」

要件は厳格となったか?
①組織的犯罪集団
→しかし、定義なし(あらゆる団体が組織的犯罪集団になりうる)
②準備行為を要求している
→しかし、準備行為に限定はなく、あらゆる行為を「準備行為」とみなすことが可能。しかも準備行為を行っていない者も処罰できる。

法案の共謀罪の規定(組織的犯罪処罰法の新設規定)

(組織的な犯罪の共謀)第6条の2の骨格

「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、…団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、…準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮」

組織的犯罪集団
組織的犯罪集団とは、共同の目的が重大な犯罪を実行することにある団体のこと(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第2条1項)

しかし、労働組合・市民団体・政党の目的が、途中で変更されたと認定されることも

予備行為って何?
予備罪は既に刑法に存在
殺人(さ) / 通貨偽造(つ) / 外患(が) / 内乱(な) / 私戦(し)/ 現住建造物等の放火(ほ) / 強盗(ご) / 身代金目的略取誘拐(しろ)

思考 → 共謀 → 予備 → 未遂 → 既遂
刑法44条 「未遂を罰する場合は、各本条で定める」

既遂の処罰が原則。未遂処罰は、特別の規定があるときの例外。
予備罪は、例外の例外。  では、共謀罪は?

予備行為って何?
未遂
刑法第43条(未遂減免)
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。実行の着手なくては、未遂罪にならない。

実行の着手
法益侵害の危険発生の現実的危険性の発生するとき

予備行為って何?
「実行の着手に至る前の行為」(一般的定義はない)
何でも入るの? 「共謀を裏付ける客観的行為」

移動するための交通チケット購入
口座からの現金の引き出し
道具の購入
文書の作成
メール・手紙の送付
・・・etc.

共謀罪は条約締結に必要不可欠か?

安倍政権は「共謀罪の創設は、国際社会からの要請」と言うが・・・・
2000年採択のTOC条約(国連組織犯罪防止条約・Convention against Transnational Organized Crime)締結のために、共謀罪が必要か?
しかし・・・
条約34条1項は「自国の国内法の基本原則に従って」必要な措置を講じるよう求めているだけで、4年以上の自由刑を法定刑に該当するすべての罪の共謀罪の処罰を求めているわけではない

なお、条約は、マネーロンダリング対策などが主目的
→テロ対策ではない(そもそも911テロ前の採択)
→条約締結と共謀罪創設とテロ対策は連動していない!
共謀罪がないと、テロを防げないか?

安倍首相は、「テロを防げない」「オリンピックが開催できない」と言うが・・

しかし・・・
①日本は、「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」などの5つの国連条約及びその他の8つの国際条約につき、国内立法を整備して、すべて締結している。
②判例理論としての共謀共同正犯の存在
③殺人等の重大犯罪の準備罪・予備罪の存在
④リオ五輪(ブラジル)は???

→テロ防止と共謀罪は、別個の問題!

共謀罪が成立しうるケース①
職場の忘年会を翌日に控え、いつも付き合いの悪い新入社員Vを2次会まで付き合わせようと、上司X・先輩Yら4人が雑談がてら話していたところで、上司Bが、「一次会で全員ジョッキ10杯をノルマにして、帰れないくらいべろべろになってしまえばいい。飲みたくないといっても、無理にでも飲ませよう」と言い出し、他の者も笑いながら、席順やジョッキカウント係を決めようなどと同調(共謀・計画)

翌日、当然のようにテンションが下がった状態で、先輩Yが、新人Vの分も含めて5名で二次会の会場を予約(準備行為)

忘年会は開催されたが、誰もジョッキ10杯など飲むどころか、言い出すこともなく終了、新入社員Vは1次会で帰宅した( (組織的)強要罪不成立)

→組織的強要罪の共謀罪成立

共謀罪が成立しうるケース② 
労働組合員X~Wが、翌日の団交の作戦を検討中、Xが高揚して、「もし、社長が要求を呑まないなら、部屋に鍵をかけて、缶詰にしよう!要求を呑むまで、一晩中でも団交してやろう!」と呼びかけ、Yも盛り上がり「そうだ!そうだ!」、Zも頷き、Wは沈黙(共謀・計画)

翌日、前夜の盛り上がりをすっかり忘れていたZが、予定されていた団交のために、要求書を作成(準備行為)

予定された18時からの団交では、要求を受け入れてもらえなかったが、特に鍵をかけることもせず、19時には終了((組織的)監禁罪不成立)

→組織的監禁罪の共謀罪成立

共謀罪が成立しうるケース③
米軍基地の建設に反対している市民団体。ついに本格的工事着手が3日後に迫ってきた。メンバーのXYは、今度は工事現場のゲートに座り込んででも、美しい自然を守ろうと話し合った
(共謀・計画)

翌日、Yはゴザを購入
(準備行為)

台風のせいで海が荒れ、当面工事は延期になったので
座り込みはしなかった
( (組織的)業務妨害罪不成立)
→ 組織的威力業務妨害罪の共謀罪成立

これらの例は誇張か? 

そんなことじゃ逮捕されないんじゃないかな、と思われる方に・・・・

捜査段階では、判断するのは捜査機関。特に警察。

いずれも監禁罪・組織的強要罪違反行為を計画する
「組織的犯罪集団」
仮に、盛り上がった話し合いの内容を実現・実行していれば
「犯罪」
実際には実行に移していない。しかし、話し合いはある。

→共謀罪は、犯罪が実行されていなくても、話し合いだけを取り出して犯罪とするという危険がある!

捜査機関が共謀罪を切望する理由 何故、共謀罪にこだわるのか・・・

広い範囲の人・行為を捜査の対象とすることができる
→これまでは、客観的・公然とした「捜査の端緒」が必要だった

・「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」
(刑事訴訟法199条逮捕)
・「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」
(同法218条捜索差押)
といった要件を簡単に充足できる

情報収集目的の違法捜査の横行を招く!さらには高度監視社会へ

別府事件では
隠しカメラが設置された別府地区労働福祉会館。カメラの一つは、入り口などが見えるように木の幹(手前左側)の高さ約1.5メートルの所にくくりつけられていたという=大分県別府市で2016年8月3日午前9時7分、大島透撮影

参院選の選挙期間中に設置 人の出入りなど録画
7月10日に投開票された参院選大分選挙区で当選した民進党現職らの支援団体が入居する大分県別府市の建物の敷地内に、同県警別府署員が選挙期間中、隠しカメラを設置し、人の出入りなどを録画していたことが、3日分かった。カメラの設置は無許可で、建造物侵入罪などに該当する可能性があり、県警の捜査手法に批判の声が出るのは必至だ。
県警や関係者によると、隠しカメラが設置されていたのは、別府市南荘園町の別府地区労働福祉会館。連合大分の東部地域協議会や別府地区平和運動センターなどが入居しており、参院選の際には大分選挙区で立候補した民進党現職の足立信也氏(59)や、比例代表に出馬した社民党の吉田忠智党首(60)の支援拠点になっていた。
カメラは参院選公示前の6月18日深夜から敷地内に2台設置され、同会館の玄関と駐車場の出入りを録画していたとみられる。公示翌日の同23日、敷地内で草刈りをしていた別の施設の職員が発見した。1台は敷地内の斜面に、もう1台は木の幹にくくりつけられていたという。
内蔵のSDカードを確認したところ、別府署員がカメラを設置する様子も映っていたため、同会館の関係者が同署に連絡。署幹部が謝罪に訪れ、同24日にカメラを撤去したという。県警によると、カメラを仕掛けたのは別府署刑事課の署員2人。同署が設置を決め、場所も同署で判断したという。設置した署員は「雑草地だったので、(同会館の)管理地だとは思わなかった」と話したという。毎日新聞2016年8月3日10時55分

堀越事件では
国家公務員法違反事件
社会保険庁の年金相談係の堀越さん。衆議院選挙前の時期に、仕事と無関係に、職場から離れた自宅周辺で、休日に、赤旗やビラをポスティングしていた。
偉大な無罪判決!
のべ171名の公安警察官が、29日間連日、多いときは11人体制で、堀越さんを尾行。ビラを配りそうとなると、尾行した警察官の鞄や覆面車両に隠した多くのビデオカメラで盗撮。

監視社会が進行している! 今は戦前とは違うと安心されている方に・・・(治安維持法との類似点)

特定秘密保護法の成立(2013年12月)
盗聴法の拡大、司法取引制度の導入を内容とする改悪刑事訴訟法の成立(2016年5月)

・司法取引による免責を前提とするスパイの潜入・扇動の危険
・盗聴法の拡大による、広く電話・メール等が傍受される危険
・新たな捜査手法の導入
・共謀罪によって、実行に移されなかった話し合いが処罰される危険

→突然、犯罪と言われる危険、自由にモノを言えない危険が広がる!
→現代型監視社会の成立

共謀罪創設に反対する!

およそ現在の日本の法体系において、テロの防止の目的で共謀罪を創設する必要性はない。

→要件が「厳格」になったとしても、反対!

 

終わりに 

「自由と安全」

Those who would give up essential Liberty, to purchase a little temporary Safety, deserve neither Liberty nor Safety.
By Benjamin Franklin

わずかな一時の安全を得るために、かけがえのない自由を
放棄する者は、そのどちらも得られない
- ベンジャミン・フランクリン -

2017年4月15日 作成者 弁護士 澤藤 大河

(2017年4月17日)

ある日の国会・法務委員会でー文京区・共謀罪学習会(寸劇シナリオ)

委員長…静粛に願います。
定刻になりましたので開会し、「テロ等準備罪法案」の審議を始めます。

質問者、福手ゆう子君。
Q 日本共産党の福手ゆう子でございます。
本日は、今、国民の関心が最も高い「共謀罪法案」。その基本構造について、法務大臣の見解をお尋ねします。
大臣。なぜ、今、共謀罪の新設が必要なのでしょうか。
この共謀罪法案が成立すれば、広範な犯罪について、実行行為がなくとも共謀あるいは準備行為の段階で刑罰を科すことが可能になります。当然に、捜査も可能となります。つまりは犯罪の着手がなくとも、常に一般の市民に逮捕や捜索の危険が生じることになります。私たちの生活が、常に捜査機関の監視のもとにおかれることにもなりかねません。
とりわけ、政府が好ましくないとする団体の行動については、恣意的に監視し取り締まることができるようになってしまいます。つまり、治安立法として、また弾圧法規として利用される危険な法案ではありませんか。だから、国民の強い反対を受けて、過去に3度も提案されながら、その都度廃案に追い込まれてきたではありませんか。
にもかかわらず、今回、4度目の法案提出となったその理由を明確に述べていただきたい。

委員長…澤藤大河法務大臣。
A 答弁のまえに、一言申しあげます。
今、委員のご質問に「共謀罪法案」という法案名が出てきました。しかし、「共謀罪法案」ではございません。正確には「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」でありまして、これを提案者である内閣は「テロ等準備罪法案」と略称しているわけでございます。
法律の名称は、正確におっしゃっていただきたい。あなた方は、すぐにレッテルを貼りたがるが、これまで3度廃案となった「共謀罪」と今回提案の「テロ等準備罪法案」とはまったく違うものであることを最初に申しあげておきます。

委員長…福手ゆう子君、どうぞ。あとはお二人で、時間まで適宜質疑と答弁を。

Q 今の答弁聞き捨てなりません。これまで3度廃案となった「共謀罪」と、今回提案の内閣が「テロ等準備罪法案」という法案が、どう違うのか。そこから、ご説明をいただきましょう。
A まず、分かり易いところでは、テロ等準備罪の対象となる犯罪の数が違います。
共謀罪法案では、実行行為への着手がなくても共謀の段階で処罰される犯罪の数は、676もあったのです。今回は、これをわずか91の法律の、たった277罪に絞り込んだのです。どうです。676を277ですよ。全然違うでしょう。

Q 大した違いではありません。これこそ現代版「五十歩百歩」というべきでしょう。刑法や憲法の大原則を崩していることが問題なのではありませんか。
A それだけではありません。何が犯罪で、何が犯罪ではないかが、大変明瞭になったのです。今ある組織的犯罪処罰法に、6条の2という、分かり易い条文を新設することにしました。どんなに分かり易くなったか、新しい条文を読み上げてみましょう。
「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮」
どうです。分かり易いでしょう。あとは、別表四と、別表三に書いてある277の罪のリストを探し、条文をよく読めばよいのです。しかも、捜査機関が濫用しないよう、厳格にいくつもの縛りがかけられていることがよくお分かりでしょう。

Q ちっとも、分かり易くないじゃないですか。
分かり易いというのは、「人を殺す」「人を傷つける」「財物を窃取(せっしゅ)する」という条文のことをいうのです。ことさらに分かりにくく作られているこんな条文がどう使われるのか、不安でなりません。
本筋に戻って、いったいなぜ、いま4度目の法案提出となったのかその理由をお聞かせいただきたい。

A これは、国際組織犯罪防止条約の批准のために必要な法案であると考えております。
この法案が成立すれば、条約の批准ができます。そうすることで、効果的に国際的な組織犯罪を防止し、テロをも防止することができます。
この条約は平成15年9月に発効しています。この条約については、同年5月にその締結について国会の承認を得ておりますが、我が国としても、早期に批准することが必要です。我が国も、国際社会の一員として、この条約を早期に批准し、国際社会と協力して、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため、この条約が義務付けるところに従い、「テロ等準備罪」を新設する必要があることをご理解ください。

Q 国際組織犯罪防止条約、これはテロ対策とは無関係でしょう。だいたい何年に締結された条約ですか。
A 平成12年です。
Q 西暦2000年ですね。2001年の9・11事件の前年じゃないですか。テロが国際的な関心事になる前の条約ですよ。この条約はパレルモという都市で締結されて、パレルモ条約とも呼ばれているわけですが、パレルモとは、イタリア、シチリア島の最大都市でマフィアの本拠地といわれているところ。マフィアやヤクザ、そういう組織犯罪を対象にした条約ではありませんか。経済的なマネーロンダリングを防止することを主たる目的とした条約であって、政治的なテロを対象にした条約ではないことをお認めいただきたい。
A 委員は、よく勉強なさっているようですが、組織的な犯罪に対する対応は、経済的なマネーロンダリング防止だけではなく、この際、今や待ったなしのテロ対策を盛りこんだ方がよいに決まっていると考えています。

Q 新たな刑罰法規を作ろうというのですから、立法事実つまり差し迫った必要性がなくてはならないわけです。我が国に、テロの危険が差し迫っているというのでしようか。日本がテロの脅威にさらされているという具体的な根拠をお示しください。
A 世界中で、不安定な地域がたくさんあります。これだけ安全保障体制が揺らいでおるわけでありまして、先進諸国、たとえばアメリカでの9・11事件、イギリス・ロンドンでの連続爆破テロ、フランス・パリでの出版社襲撃事件などが起こっているわけです。
日本だけが、これらの事件に目を背けていていいのでしょうか。自由と民主主義・人権という共通の価値を守るために、憎むべきテロリストとの戦いに、日本だけが安穏としていることはできないのです。

Q 世界の情勢を聞いているのではありません。立法事実として、つまり、新たな法律を作らなければならない根拠として、日本にテロの具体的な危険があるかとお聞きしています。
A それはいろいろな考え方がありえます。日本人が、イラクやシリアで誘拐され、殺害される事件も起こっている。

Q 日本でテロの危険が差し迫っているのか。
A 我々は、テロの脅威から、国民を守るべき責務を負っております。常に備えなければならないのです。オリンピックも迫っております。安全なオリンピックを開催するためにも、どうしてもテロ等準備罪は必要なのです。

Q 日本にテロが迫っていると、あなたですら言えないような状態で、どうして包括的な共謀罪が必要と言えるでしょうか。
個別的なテロ対策としては、国連のテロ防止関連条約は13件あり、日本はすべてその批准を終え、それに対応した国内法の整備もできているではありませんか。たとえば、「テロリズム資金供与防止条約」「プラスチック爆薬探知条約」「核物質の防護に関する条約」「空港不法行為防止議定書」「海洋航行不法行為防止条約」「爆弾テロ防止条約」などなど。テロ対策の法整備はきちんとされており、共謀罪法案が成立しなければテロ対策がされていない訳ではありません。
どうして、屋上屋を重ねるような、「共謀罪」の新設が必要でしょうか。
A 政府といたしましては、国民をテロから守る責務を負うものです。屋の上に何重に屋を重ねても、念には念を入れて、国民の安全を守る法律を作ろうとしているわけでございます。

Q 問題は、不必要な法律というだけのものではなく、国民の人権を侵害する有害な法律であるということなのです。この共謀罪法案、もし成立してしまったら、犯罪を実行することなどなく、ただ話し合っただけで処罰されてしまうのではありませんか。
A そういう印象操作はやめていただきたい。絶対にそんなことは、ないのであります。先ほど読み上げた条文に書いてあったとおり、まずは、組織的犯罪集団の団体の活動でなければ、処罰されることはありません。しかも、共謀が成立しただけ、つまり計画しただけでは犯罪が成立しないことは、法文上明らかであります。「準備行為」が必要なのです。一般の方が話しているだけで犯罪者になるなど、絶対にあり得ません。

Q では「組織的犯罪集団」から、お伺いしましょう。労働組合や、市民団体が組織的犯罪集団に当たることはないのでしょうか。
A 組織的犯罪集団だけしか、対象とならないことは、明文で規定しております。
適法な活動をしている労働組合や、その他の団体は、その目的が犯罪はないのですから、当然対象とはなりません。繰り返しますが、この法律はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団を取り締まるのが目的で、一般の方には無関係なのです。

Q 更にお尋ねします。既に存在する適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化したと認定することはあり得ないのですか。
A 一般論としてお答えすると、この法律は組織的犯罪集団の組織的行為だけを処罰対象とし、一般人は対象とならないことは申しあげたとおりです。しかし、もしこれまでは合法的な活動をしていた団体が、ある時点から犯罪を企む集団となったとすれば、すでにその集団の構成員は一般人ではないのです。適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化することがないとは言えません。

Q 今、大変な答弁が出た。つまり、「この法律が罰するのは、一般国民ではない」という意味は、「この法律が罰するときには、既に一般人ではないからだ」と、こういうことではないか。これでは、何の縛りにもならないではありませんか。
A 委員の解釈は、あまりに一方的で偏っているのではないでしょうか。重大犯罪を目的とする団体に、それと知って属しているということは、一般国民の目から見て、一般人とは呼べないことは通常の感覚ではないですか。

Q 企業でも、市民団体・労働組合、サークルでも、適法な通常の団体が、ある時点から犯罪目的だと認定されることはありうるのだから、国民誰でも、共謀罪の犯罪者になり得るということじゃないですか。
A 重大な犯罪を計画している団体に属して、具体的な重大犯罪を計画していたらできるだけ早期に、処罰せられるべきは当然ではありませんか。

Q ついに、国民の誰もが共謀罪適用の対象になりうることがよく分かりました。しかも、犯罪目的があるかどうか、計画があるかどうか、捜査段階では、判断するのは、裁判所ではなく、捜査機関。つまりは警察になるわけです。その結果、警察が、国民生活に監視の目を光らせ、あらゆる団体が犯罪目的をもっていないかを調べる。これは、まさに現在の治安維持法ではないか。
A 全くそうではございません。
治安維持法は、私有財産制を否定し、国体を変革しようとするという、思想そのもの、つまり、犯罪とは切り離して、特定思想を有する団体を結成すること、加入することを処罰する法律でございます。
今回の、テロ等準備罪は、思想のみを処罰するのものではありません。準備行為という外に表れた具体的行為の存在を要求しています。
また、団体も重大犯罪を目的とするという、犯罪集団に限って対象とするものですから、ご指摘はあたりません。
捜査についても、捜査機関は、刑事訴訟法、その他関連法令を遵守し、裁判所の令状審査を経て、適法な捜査を行うことになりますので、委員のご指摘はあたらないものと思います。

Q 結局は捜査機関が、最初の判断をする。政府に批判的な活動をしていると、犯罪を行っているとして、捜査の対象とされかねない。しかも、計画と準備で犯罪が成立するのだから、団体監視を常に行うことが主たる捜査方法になることは明白ではないか。団体に対する警察の監視、団体内部でも密告を恐れて活動が萎縮する。これこそ治安維持法そのものではないですか。
A 委員は、少し感情的になっておられる。お答えしたとおり、一般人が処罰されることはないのです。
治安維持法だって、一般人は処罰されることはなかったわけですよ。天皇制を否定したり、革命をたくらむような、当時の言葉でいえば、国賊・非国民を取り締まったわけで、けっして善良な一般人が取り締まりの対象となったわけではないのです。

Q 「共謀罪が現代の治安維持法」といわれているいみが、とてもよく分かりました。
処罰範囲拡大の危険性について、以下の具体例を想定してお聞きします。次の設例で、共謀罪は成立するのでしょうか。
米軍基地の建設に反対している沖縄の市民団体。ついに本格的工事着手が3日後に迫ってきた。市民団体幹部メンバーのXYZは、今度は工事現場のゲート前に座り込んででも、美しい自然を守ろうと話し合った。
翌日、Xはゴザを購入した。2日後、台風のせいで海が荒れ、結局工事は延期となり、座り込みは中止された。
どうですか。これで、一網打尽にXYZを、組織的威力妨害罪の共謀罪で逮捕し有罪にできますか。
A 細かい点がわからないため、具体的な事案ではお答えしかねる。

Q どこがわからないというのですか。
A 市民団体が団体の活動として多人数でゲート前に座り込んで現実に工事を妨害すれば、組織的威力業務妨害罪が成立することになります。問題は、この場合座り込みはないのですから、「テロ等準備罪」の要件としての共謀が成立したといえるのかは議論の様子を調べなければならない。準備行為があったと言えるためには、ゴザの購入目的なども検討しなくてはならない。犯罪の成否は軽々に答えられない。

Q つまり、犯罪が成立しうるから検討が必要だということですね。
A それはそのとおり。犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んでいるのであります。
最終的には裁判官が判断するわけでありまして、今、この事例についてどうかということは、大変難しく、諸般の事情をよく調べなければならない。

Q この例はどうでしようか。
「認可保育所の設置を求める文京ママの会」の会合で、区の保育所認可設置の問題も老人対策もいっこうに進展せず、もう我慢できない。みんなで区庁舎に押しかけて区長をカンヅメにして徹夜になっても徹底して談判しよう、同時に世論に訴えようという相談をした。決行の日を決めてその前日に、区長室を下見に行くまではしたが、決行予定の日が子どもたちの行事と重なることが分かってやっぱりやめた。
これも、組織的監禁罪の共謀罪ということになりませんか。
A 乱暴なママさんたちですね。日常的な監視対象とすることが必要だとは思いますが、「テロ等準備罪」として処罰可能かどうか、なんともお答えのしようがない。

Q つまり、犯罪は成立しうるから検討が必要だということですね。
A それはそのとおり。現実的に犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んで諸般の事情をよく調べなければなりません。

Q 諸般の事情をよく調べるとは、つまり、とりあえず逮捕や家宅捜査をしなければならないと言うことではありませんか。
A それは、そのとおりであることもあれば、そうではないこともある。一概には申しあげられないところです。

Q 結局、どちらの事案も共謀罪が成立しうること、少なくとも、絶対に共謀罪が成立しないわけではないという答弁であることを確認しました。
共謀罪は、国民の自由な団体活動のみならず、表現の大幅な萎縮を生み出し、思想・信条の自由を侵害する、違憲なものであることが明白になりました。けっして成立させるわけにはいきません。
治安維持法で大弾圧を受けた経験をもつ日本共産党は、絶対にこのような弾圧法規の成立を許さない。この法案の廃案を求める国民運動の先頭に立つ覚悟を述べて、私の質問を終わります。

(2017年4月15日)

 

「理不尽に慣らされない」ためにー共謀罪、その廃案を目指してどう訴えるか。

「国民は、自身にふさわしい政府をもつ」とか。情けない話だが、アベ政権が我々国民にふさわしい政府なのだろうか。さらには、共謀罪だ。これが、われわれ国民にふさわしい法律ということなのだろうか。まっぴらご免だ。何としても、この法案は廃案に追い込みたい。この法案には暗さが伴っている。アベの旧体制復古願望のもつ暗さだ。あるいは、腐臭がする。いやな時代の前兆としての腐った臭い。

私も何度か、共謀罪の講師活動を引き受けた。現在も幾つか予定を抱えている。定番のとおり、法案の内容を説明し、刑法の保障機能や罪刑法定主義、そして構成要件論をお話しすることになる。そのキモは、類推解釈を許さない厳格な構成要件の解釈こそが、権力の市民生活への介入の歯止めになるということ。権力の側は、できるだけ曖昧な構成要件がほしいのだ。必要あればいつでも、市民生活に介入できるように。

そのうえで、戦前の治安維持法や国防保安法などの実例を挙げ、今回の共謀罪法案が成立した際には、どんなことが起こるか想定例をお話ししてみる。短時間ではなかなか伝わらないもどかしさが残る。

次の機会には、どう工夫すればよいだろうか。集会やすぐれた発言に学びたいと思う。そんな問題意識で、幾つかの集会名や発言内容を拾ってみた。それぞれがどこに力点を置いているか、自ずから伝わってくるものがある。

第1 ズバリ本質をえぐるキャッチフレーズ
「現代の治安維持法・共謀罪反対!」
「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める大集会」
「マジありえない共謀罪」
「共謀罪創設は国民の『思想・信条の自由』を奪う」
「あなたも犯罪集団の一員に!?共謀罪を考える市民集会」
「共謀罪はいらない!~自由に考え、集まり、話がしたい~」
「『安全・安心』な社会に『監視』される?~どうして監視社会が止まらないのか?~」
「合意だけで処罰!?~共謀罪法案を考える~」
「市民の行動が筒抜けに?~高度化する捜査手法と共謀罪で社会が変わる前に~」
「-進む監視社会化について考える-」
「-あなたの想いが閉じ込められる!?-」
「会話しただけで犯罪に!? 監視される社会 -共謀罪・通信傍受法・特定秘密保護法の向かう先-」
「またも共謀罪法案が!-電話・メール・SNSが監視され、つぶやきが犯罪に!?」
「その会話で逮捕?~共謀罪を考える~暗黒の社会への道を許すな」
「共謀罪を考える市民集会 あなたの会話がのぞかれる!?~市民生活を脅かす共謀罪と盗聴~」
「テロ等組織犯罪準備罪?気を付けよう、そのひと言が犯罪に~」
「共謀罪は『テロ対策』に騙されるな! 国家権力の暴走を監視せよ」
「共謀罪の狙いはテロ対策ではない! スノーデンの警告に耳を傾けよ」
「話し合うことはテロ?」
「国民を監視 自由脅かす『共謀罪』」
「『共謀罪』は、憲法で保障された思想・信条、内心の自由を侵します。
『共謀罪』は、広く市民、団体を監視することになります。
『共謀罪』は、警察の日常的監視、『密告』社会を招きます。」
「国民の思想・信条や言論・表現の自由を脅かす希代の悪法」

第2 政府のウソをあばくフレーズ
「共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます」
「組織的な共謀罪を設けるのは、国際組織犯罪防止条約を締結するためではない」
「そもそも、共謀罪法案はテロ対策法案でない」
「テロ対策に必要というのも有効というのも嘘だ」
「『テロ等』というネーミングは羊頭狗肉、看板に偽りありの詐欺商法」

第3 具体例想定示タイプ
沖縄の平和運動に対する『共謀罪』弾圧シナリオ
労働組合の団体交渉のこじれが「共謀罪」に
パワハラ上司をとっちめろ
「保育問題・介護問題で区役所に押しかけよう」が、組織的威力業務妨害の共謀罪に

第4 時代の危機を語るタイプ
時代状況に敏感な作家たちの発言が身に沁みる。
4月8日の東京新聞に、日本ペンクラブ(浅田次郎会長)が7日夜に、「共謀罪は私たちの表現を奪う」と題する集会を開いたと報じた。作家や漫画家、写真家ら14人が登壇して時代への危機感を語ったという。

報道の見出しが、「『共謀罪、心の萎縮招く』『今抵抗しないと』作家ら声上げる」となっており、リードに、「平和のために言論、表現の自由を守る」「四度目の廃案を目指す」「作家や若者らから相次いで『NO!』の声」などとされている。

作家の浅田会長は「平和のために言論、表現の自由を守っていくことが使命で、共謀罪は看過できない大問題。人間には命があっていずれ死ぬが、法律は死なない。子や孫の代にこの法律がどう使われるか。今が大事なときです」と強調した。

同紙は、日本ペンクラブの声明のタイトルを、「共謀罪によってあなたの生活は監視され、共謀罪によってあなたがテロリストに仕立てられる」と紹介されている。

14人のコメントが短くまとめられているが、印象的な幾つかを転載しておきたい。
◆金平茂紀さん(テレビキャスター) まだやっていないことが取り締まりの対象になる共謀罪は特別に危ない法律だ。沖縄で基地反対運動のリーダーが逮捕されたが、これは共謀罪を先取りした予行演習だ。
◆香山リカさん(精神科医) メールやツイッターをするだけでも、もしかしたらまずいんじゃないかといちいち忖度していくと、考えることすらいけないんじゃないかとだんだんなっていく。
◆田近正樹さん(日本雑誌協会) 共謀罪によって、いつでも捜査ができるような状況が、市民を萎縮させ、社会を変えてしまう。さらに単独テロ対策のために1人で計画することも犯罪になるかもしれない。
◆ちばてつやさん(漫画家) 日本は今、ゆっくりとした大きな渦の淵にいる。戦争とかどす黒いものがたくさん入っていて、その渦に巻き込まれるかどうかの境目だと思うので、非常に危惧している。
◆長谷部恭男さん(早稲田大教授) 犯罪というのは、やり終わったものを裁くのが基本原則。それが277の大量の罪について計画段階で捜査の対象になる。市民生活に直接にかかわるもので危険性も高い。

そのときの中島京子さんの発言要旨が、本日の赤旗に写真入りで掲載されている。とても、印象的な内容。こう語れるようになりたいと思う。

理不尽に慣らされない(タイトル)
 森友学園の問題と共謀罪は裏表だと思います。
 権力が味方だと思えば、ありえない利益を供与するのが森友学園のケース。権力が敵だと思えば、ありえない方法で取り締まれるのが共謀罪。公文書を公表せず、破棄するような権力が共謀罪をつくる。本当に恐ろしい。
 テロ対策と言われていますが、対象となる277の犯罪がテロとどう関係があるのか分からない。むしろこれは誰かを取り締まりたいときに、277の犯罪からどれかを選んで使うための法律ではないでしょうか。国会で審議されると聞いた時は、また強行採決かというあきらめの気持ちがありましたが、理不尽に慣らされることに抵抗しなくてはいけない。
 安保法制の時のように反対の声を上げ続け、4度目の廃案にもっていきたいと思っています。
(2017年4月13日)

「共謀罪」は、なんとしても廃案に。

本日(4月6日)、共謀罪法案の審議入り。衆院本会議に上程されて、法案審議が始まった。もっとも、「共謀罪法」という法律があるわけではない。組織的犯罪処罰法という既にある法律の改正という形で、包括的に犯罪実行行為の着手がなくとも、共謀段階で処罰出来るようにしようというもの。

犯罪実行行為は、それぞれが犯罪としての固有の定型性を持っている。誰が見ても、「悪い」「危険な」行為。「人を殺す」「人の身体を傷害する」「他人の財物を窃取する」という実行行為に着手の有無は、それぞれ比較的明瞭だ。だから、捜査権の発動というかたちでの権力の発動は、恣意的には出来ない。ところが、「そんな悠長なことを言っていては社会の安全は保てない」「もっと早い段階で犯罪を未然に防がなくては安心できないだろう」と、犯罪の実行着手以前の「共謀」段階で処罰しようとするのが「共謀罪」。これが、権力にとっては、批判勢力を取り締まるのに便利この上ない。

しかし、権力にとっての利便は、国民にとっての危険となる。何しろ、犯罪の実行行為はまだ行われていない段階での取り締まり、それも一網打尽なのだから、国民にとってはいつなんどきなにを理由に逮捕されるか分からない。とりわけ、立憲主義も、民主主義も、人権思想も理解してないアベ政権。こんな危険なものを作らせてはならない。今国会最大の対決法案、廃案にする以外にない。

その組織的犯罪処罰法の改正案(正確な名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」)のキモは、同法に新たに「6条の2」を新設しようということ。これが「共謀罪」創設の根幹部分。民主主義にとっての天敵となりかねない条文。まずは、その「問題の6条の2」の条文そのものをじっくりとお読みいただきたい。但し、読みにくい。10分以上の読解努力は精神衛生上有害と思われる。なお、本当にこんな悪文が法案になっているのだろうかとお疑いの方は、原文を法務省ホームページにアクセスしてご確認いただきたい。
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00142.html

第六条の二(新設)
「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
 二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。」

当ブログでは、以前にも「『共謀罪』とは、曖昧模糊な条文をもってなんでも処罰可能とすることを本質とする。」(2017年2月28日)と書いた。こんな条文を読んで、「よく分かった」という人の頭脳の構造はおかしい。読んで分からないように、書いているのだから。
http://article9.jp/wordpress/?s=%E6%82%AA%E6%96%87

ところで、刑法の条文は一般的に分かり易い。普通に読んで分からなければならないのだ。典型例は次のようなもの。
「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」(刑法199条)

これが条文の基本形。これならだれにでも分かる。主語(主題語)と述語が明瞭で文意明解である。何をしてはいけないかがはっきり分かることが大事で、そのことは刑罰権の発動というかたちでの権力行使の限界が明瞭ということでもある。これと比較して、「6条の2」の読みにくさ、わかりにくさが理解いただけよう。そのことは、とりもなおさず、刑罰権の発動というかたちでの権力行使の限界が不明瞭極まりないということでもある。権力にとって、使い勝手がよいということなのだ。

その分かりにくい条文を、できるだけ意味が通じるように、日本語としての文章を整えてみたい。主語と述語という、おなじみの文の構造に当て嵌めて条文を見直すと、

6条の2・第1号関係の条文の主語は、
「別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役・禁錮の刑が定められているものについて、組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者(は)」
である。

述語は、
「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、五年以下の懲役又は禁錮に処する。」

文の構造がおぼろげながら分かっても、条文を理解したことにはならない。国民には、何が禁止されているのか、国家権力が介入できるか否か、自分に逮捕の恐れがあるのか否かが分からなければならないのだ。

具体例を挙げてみよう。刑法204条は、傷害罪を次のとおり定める。
「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
傷害罪は、組織的犯罪処罰法改正案の別表四に掲げられている277の罪名の一つ。したがって、今は「人の身体を傷害する」行為に着手ない限り、つまりは刃物を振り回すとか、人に殴りかかるとかする実行行為に着手のない限り、処罰対象とはならない。ところが、この法案が成立すると、傷害の実行行為なくても、一定の場合には「傷害の共謀あったとして」逮捕され、起訴され有罪になって「五年以下の懲役又は禁錮」に処せられることになる。

その要件とは、まずは、主語中の「組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画」することである。共謀を「二人以上で計画」と言っている。何を計画すると処罰対象となるか。「組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を」という。これは、分かりにくい。分かりにくいだけでなく、厳格な歯止めとはならない。

さらに、述語のなかにも要件が定められているとされる。さすがに、「共謀」や「計画」だけでの処罰規定には世論の反発が強かろうとの忖度がつくり出した要件である。
「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは」というのだ。

つまり、共謀や計画だけでは、処罰できない。共謀や計画をした犯罪を実行するための「準備行為」のあることが必要だというのだ。その準備行為とは何か。「その計画に基づく『資金又は物品の手配』、『関係場所の下見』『その他』」と例示されている。これは、日常にありふれた普通の生活上の行為が刑罰権行使の対象となることを意味する。

「別表第四に掲げる罪」は、数えるのもたいへんだが91法律の277罪だという。従来案では676に上ったが、今回法案ではここまで絞ったと手柄顔をする向きもあるが、これを現代版「五十歩百歩」という。刑法の人権保障機能を崩していることが、大問題なのだ。

今国会に延長はない。6月18日の会期末まで。2か月半の反対運動の盛り上がりでこの法案を廃案に追い込みたい。幸い、4野党の足並みは、よく揃っている。勝機は十分にあるように思う。
(2017年4月6日)

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