人としての資質と、政治家としての能力に欠けた我が国のリーダー
政治家とは因果な商売だ。商品は自分自身。これを高く売り付けたいから、セールストークが過剰となる。悪徳商法まがいの自己宣伝が横行する。「粉骨砕身、国民のために働かせていただきます」なんちゃって。所詮はセールストークなのだから馬脚を表すことになって、「嘘つき」と呼ばれる。その代表格が、「嘘つき総理」の安倍晋三。
政治家稼業は楽でない。行住坐臥、常に国民の目が光る。安閑と酒を飲んでもおられない。ときに、「こんなときに酒など飲んでいる場合か」と叱責される。とりわけ、危機管理が必要なときには国民の見方が厳しくなる。いま安倍晋三の「宴会優先」姿勢が指弾を受けている。
7月5日の夕刻、安倍晋三は東京・赤坂の議員宿舎で開かれた自民党議員との宴会に出席した。参加議員たちの楽しげに盛り上がっている様子を、何人もの参加議員自らがツイッターに投稿していた。
最初、この宴会は「安倍首相と法相が オウム死刑執行前夜の“乾杯”に批判噴出」(日刊ゲンダイ・7月7日)という形で批判の対象になった。
「正気なのか――。オウム真理教の教祖・麻原彰晃死刑囚ら7人の死刑が執行される前日の5日夜、安倍首相が、執行を命令した上川陽子法相らと共に赤ら顔で乾杯していたことが発覚した。ネット上で批判が噴出している。
安倍首相は同日夜、東京・赤坂の議員宿舎で開かれた自民党議員との懇親会に出席。上川法相や岸田文雄政調会長ら40人超と親睦を深めた。
この時の様子を、同席した片山さつき参院議員が写真付きでツイッターに投稿。〈総理とのお写真撮ったり忙しく楽しい!〉と呟いている。写真では、上川法相の隣で破顔一笑の安倍首相。とても、死刑執行前夜とは思えない。
さすがに、片山議員のツイッターには、〈どういう神経でどんちゃん騒ぎができるのか〉〈普通は気が沈んで口が重くなる〉〈ゾッとする〉と批判の声が寄せられている。
安倍首相と上川法相は一体、どんな気分だったのか。翌日、7人を処刑するのに酒を片手に笑顔、笑顔とは……この2人、人としておかしい。」
これは辛辣。政治家としての資質や能力の以前に、「人としておかしい」という根底的な批判。生命に対する畏敬の念を欠いた、「こんな人たち」が権力を司っていることに寒気を覚える。〈ゾッとする〉の表現に深く同感だ。
グリコは「一粒で2度おいしい」。一つの宴会が2度目の批判をうけることとなった。今度は、「自民議員ら『宴会ツイッター』の波紋 豪雨『想定外』で済むのか」(東京新聞・7月11日)という角度から。
さすが、「こちら特報部」。「安倍政権対応ちぐはぐ」「危機管理強調なのに緊張感なし」「緊急事態条項は不要」と大きな見出しが続いている。
「懸命な救助対策が続く西日本豪雨では、自民党幹部らが「初動」の釈明に追われている。関西などで避難指示などが相次いでいた五日夜、自民党議員が宴会を開き、安倍晋三首相らも出席。参加議員たちが楽しげな模様をツイッターに投稿していたためだ。42人の死者・行方不明者が出た九州北部豪雨はちょうど一年前だ。「想定外」で済む災害なのか。」というリード。
?「5日と言えば、近畿地方を中心に大雨が降り続け、気象庁が『記録的な大雨となる』と警告していたさなかだ。同日夜までに計16万人に避難勧告が出ており、あまりに場違いなツイッターには批判が殺到。」「そんな宴会を危機管理担当の西村官房副長官が喜々としてツイッターで報告するあたり、安倍政権の緊張感のなさを露呈している(政治ジャーナリスト鈴木哲夫)」…。
中にこんな一節が。これは書き留めておかねばならない。
「2016年の熊本地震の際には、前震の段階で、避難所の体育館から出て避難者が外にいるのを見た安倍首相が、『青空避難をやめさせて体育館に入れろ』と指示したが、館内の状況を判断した現場責任者が拒否。この体育館は本震の際、天井が落下した首相のリーダーシップで危うく数百人が義性になるところだった」
政治家一般が因果な商売だが、総理ともなればなおさらのことだ。その一挙手一投足が国民の監視の的となり、批判にさらされる。が、その失敗が明瞭になることは必ずしも多くはない。この熊本地震の際の愚かなリーダーシップ発揮の失敗は極めて分かり易い。そして、7人死刑前夜の宴会、大災害徴候ある中での大はしゃぎ。
結局は、安倍晋三の人間性に問題があり無能で嘘つきという資質が露わになっているのだ。しかも、こんな首相のやることの失敗が、実は国民の目につかぬ形で積み重なっているのではないか。あらためて、〈ゾッとする〉。
(2018年7月11日)