SF(催眠)商法によく似た安倍政権の政治手法
商売と政治とはよく似ている。どちらも、人を説得し「その気」にさせる技術を伴う。悪徳商法と安倍政治手法とはよく似ている。どちらも、詐欺すれすれ。うっかり乗せられると、どちらも被害甚大である。賢く身を守る術を心得ねばならない。
独立行政法人国民生活センターが、5月21日付で、「高齢者が支払えなくなるまで次々に販売するSF商法」と、悪徳による「次々販売」「過量販売」被害の増加に警告を発した。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20150521_1.html
「SF商法」とは、集団催眠商法と言った方が分かり易い。50年ほども前の「新製品普及会」なる悪徳グループを元祖とするところから、ローマ字の頭文字をとって「SF」。この安直な業界用語がお役所用語としても定着した。会場に顧客を集めサクラが雰囲気を盛り上げる。最初は安物をただ同然で配って消費者の気持をつかんだあとに、本命の高額商品を売り付ける。被害額の大きな悪徳商法の典型のひとつとされる。
売り手は脅すわけではない。明らかな詐欺とも言いにくい。仕掛けは、ウソすれすれの話術とプロとしての演出が作りだす昂揚した雰囲気にある。消費者の心理が完全に操作された状態となり、先を争って我勝ちに商品を買おうとすることになるのだ。
もちろん、「集団催眠状態」から覚醒すれば、消費者は悔やむことになる。なぜあのときはあんなにも、こんなつまらぬものが欲しいと思ったのだろう。どうしてあんな奴の言うことを信用してしまったのだろう。不要なものを買わされた。明らかにたぶらかされた。こんな商品は引き取ってくれ。金を返せ。
商売とは、所詮そんなものだという考え方も根強い。上から目線で消費者の自己責任論が説かれもする。われわれ消費者弁護士は、このような場面での「業者擁護論」「消費者自己責任論」と闘い続けてきた。「あるべき賢い消費者像を想定し、これを基準とするようなことがあってはならない」「消費者被害は、現実の弱い消費者像に寄り添うところから立論しなければならない」というのが、基本の考え方だ。
この理は、実は政治にも当てはまる。悪徳業者は政権を握る政治家に、集団催眠に陥る消費者は煽動された国民にちょうどピッタリなのだ。
安倍晋三の政治手法を「SF政治」と名付けてよいだろう。安倍が国民をあからさまに脅しているわけではない。明確な詐欺とも言いにくい。問題は、ウソすれすれの話術と、プロとしての演出が作りだした政治的雰囲気にある。国民の心理を巧みに操作して、このままでは近隣諸国の不埒な跳梁を許すことになると不安を煽り、国民生活を守るためと信じ込ませて、支持と得票を獲得しているのだ。
もちろん、この先「集団催眠状態」から覚醒すれば、国民が悔やむことは目に見えている。なぜあのときはあんなにも、こんなつまらぬことにこだわったのだろう。どうしてあんな奴の言うことを信用してしまったのだろう。近隣諸国を挑発する不要な法律を作ることに加担させられた。明らかにたぶらかされた。こんな立法は廃止せよ。平和と国際友好を取り戻せ。
政治とは、所詮そんなものだという考え方も根強い。上から目線で国民の自己責任論が説かれもする。そんな、「政権擁護論」「国民の自己責任論」とは、断固闘わねばならない。悪徳政治家の口車に乗せられると、どこまでもっていかれるやら見当もつかない。眉に唾を付けて慎重にかからないと、取り返しのつかないことになる。
だから、私は、次のように警告したい。
最近では、国政選挙が間近にないため、長期政権の兆しとともに、平和の危機と、貧困・格差拡大の被害が目立っています。株価釣り上げに目眩ましされた国民に対し、戦争法案や企業利益確保政策への支持が掠めとられようとしています。初めは警戒していた国民も、与党や政権から、繰りかえし、「あなたのための政治をしている」「平和のためです」「国の安全のためです」「そのうちきっとおこぼれがまわってきますよ」などと思いやるような言葉を掛けられて説得されてしまう。説明を聞いているうちに、良いことをしてくれそうな錯覚に陥って、投票してしまうなどの事情がうかがえます。
最近のこのような手法では、国民が長期間欺されて、たいへん危険な法案が次々と提案され、次々と成立しかねないことが危惧されます。SF政治に欺される人の特徴からは、戦争体験の受継の不十分や、孤独、貧困などからの絶望、判断能力の低下といった問題が関係してくるため、事態はたいへんに深刻です。そこで、国民がSF政治の被害に遭遇して手遅れにならないため次のようにご注意ください。
違憲違法な危険法案は、次々にやって来ます。早期に食い止めないと、切りがありません。放置しておくと、最終的にはリアルな戦争被害が生じるまで続くこことになります。一刻も早く食い止めなければなりません。
次々に法案が提出され、成立していくうちに、何が憲法原則で何が平和なのかが、分からなくなり、気が付いたら平和がなくなってしまい、戦争に突入していたということになりかねません。むしろ、そのような国民意識の混乱が政権の付け目なのですから、しっかり見極めましょう。
安易に為政者の言うことを鵜呑みにしてはいけません。昨日まで神様だった人が、突然「実は私は人間ですよ」と宣言したり、神風の吹くはずが吹かなかったり、鬼畜だった米英が民主主義の先生になったり。最近も「原発は安全」だとか、「完全にブロックされコントロールされている」だの。いくらも身近な実例があるではありませんか。
権力者が甘いことを言うときは、隠れたウソを嗅ぎつけなければなりません。「うまい話には裏がある」「甘い話しには落とし穴」「タダより高いものはない」こういう庶民の知恵を発揮して、政府や与党の嘘を見抜き、支持と票の要求には、きっぱりと断りましょう。大切な平和に関わる問題です。くれぐれも、慎重な対応を。
以下は催眠商法についての識者(社会心理学者)のコメントの私流の解釈
SF政治の個々のテクニックは一般的な政治的言論でも用いられてはいる。しかし、SF政治では、政治家がこれらのテクニックを意識的に合わせ技で国民に働きかけているのが特徴となっている。特に、社会心理学的に根拠のある「承諾誘導」のテクニックが多用されている。このテクニックによって、国民は当該政治判断の必要性や妥当性などといった重要な点に注目を払わないように誘導され、政権からの働きかけに何ら違和感を持つことなく、政治選択をしてしまう。
理性ではなく感性レベルへの訴えかけであり、テクニックによる国民意識操作なのだから、民主主義は完全に形骸化したものとなっている。
問題は、民主主義の成熟度にあるのだが、悠長に自然な熟成を待っておられるほどの時間的な余裕があるかは疑わしい。
(2015年5月23日)