澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

今国会を締めくくる言葉 ― 「憲政史上最悪の国会」「国民を愚弄するにも程がある」

第196通常国会が、昨日(7月20日(金))事実上閉会した。思い起こせば、アベ政治の醜態極まれりという、「憲政史上最悪の国会」。これでいよいよアベ政権も終わりかと思わせる事態は何度もあった。が、膿にまみれ満身創痍となりながらも、アベ政権は持ちこたえた。内閣支持率は下げ止まり、やや上昇の傾向さえ見せている。アベ政治を許し、アベを政権の座にから追い落とせない、これが日本の民主主義の水準なのだ。

本日の朝日は、「通常国会、事実上閉会」「森友・加計など疑惑解明置き去り」「政権の強引さ、際だった」「野党『憲政史上、最悪の国会』」の見出しで、こう報じている。

 公文書が改ざん、廃棄され、「ない」とされた文書が見つかる。答弁のうそが明らかになる。国会審議の前提は根底から覆された。過労死を招きかねないと指摘された制度やギャンブル依存症が増えかねないカジノ新設を認める法律も野党の反対を押し切って成立。安倍政権の国会軽視が際立つ通常国会だった。

 巨大与党に少数野党。野党が提出した内閣不信任決議案が否決されるのは目に見えている。それでも憲法に基づいた手続きであることには変わりない。
 立憲民主党の枝野幸男代表が不信任案の趣旨説明をしている最中、安倍晋三首相は隣の閣僚と談笑した。「何笑ってんだよ」。野党席からヤジが飛んだ。「憲政史上、最悪の国会になってしまった」。枝野氏は2時間43分にわたった趣旨説明をこう締めくくった。

毎日新聞は、「政府強引、国会に禍根」「森友・加計、疑惑解明至らず」「働き方・参院6増・カジノ… 重要法熟議なく」とよく似た見出しで、今国会をこう総括している。

 通常国会は20日に事実上閉会した。学校法人「森友学園」「加計学園」を巡る問題で、政府・与党は疑惑解明に後ろ向きな姿勢を取り続け、真相究明には至らなかった。約半年にわたった国会論議が深まることはなく、与党は働き方改革関連法や参院定数を「6増」する改正公職選挙法など、問題を数多く抱える法を熟議なく強引に成立させた。政府が提出する法案や行政機関に対する立法府としてのチェック機能に課題を残した。

 立憲民主党の枝野幸男代表は20日の衆院本会議で、安倍内閣不信任決議案の趣旨説明を2時間43分にわたって行った。枝野氏は、不信任の理由は「数え切れないほどある」としたうえで、森友・加計学園問題など7点を挙げて「この国会は民主主義と立憲主義の見地から憲政史上最悪の国会になってしまった」と批判した。

そして、東京新聞。本日(7月21日)の社説が、厳しく力のはいったものとなっている。

国会あす閉会 政権の横暴が極まった

通常国会があす閉会する。与党は延長会期中、国民への影響が懸念される「悪法」の成立を強行する一方、森友、加計問題の解明にはふたをしてしまった。安倍政権の横暴が極まったのではないか。

 あす会期末を迎える通常国会はきのう事実上閉会した。実質的な最終日、与党が成立を図ったのがカジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)整備法案だった。
 そもそも刑法が禁じる賭博を一部合法化する危険性や、ギャンブル依存症患者を増やす恐れがある法案だ。地域振興や外国人の集客に本当に役立つのか、審議を通じても疑問は解消されない。法案成立後に政令などで決める事項が約三百三十項目にも上る。そんな法案を成立させていいのか。
 延長国会の期間中、西日本を豪雨が襲い、二百人以上が亡くなった。猛暑の中、多くの被災者が生活再建を急ぐ。避難生活を余儀なくされている方は依然多い。
 生活再建や復旧、復興に向けた策を練り、法の不備を補い、予算を確保することこそが、国会が優先すべき課題ではなかったか。
 しかし、会期末の限られた時間は安倍政権が優先した「カジノ法案」の審議に費やされ、寸断された道路や鉄道、堤防が決壊した河川を所管する石井啓一国土交通相が答弁に追われた。災害対策より賭博か、との批判が出て当然だ。
 西日本豪雨では、気象庁が厳重警戒を呼び掛けた五日夜、自民党議員が「赤坂自民亭」と題する宴会を開き、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相らが参加していた。
 豪雨発生時から緊張感を持って災害対応に当たっていたのか、疑問を抱かせる振る舞いだ。
 与党は延長国会で参院議員定数を六増やし、比例代表の一部に優先的に当選できる「特定枠」を導入する改正公職選挙法も成立させた。法律が求める抜本改革に程遠く、「合区」対象選挙区で公認漏れした自民党現職議員の救済策にほかならない。こんな制度をつくり、恥じることはないのか。
 森友学園をめぐる問題では財務省の公文書改ざんが明らかになり、佐川宣寿前国税庁長官による国会での偽証も指摘されている。加計学園は愛媛県に嘘(うそ)をついたと主張する。国民の多くが疑念を抱くのに、与党はなぜ事実を解明しないのか。政治権力を集める首相や官邸への配慮なのか。
 国会で多数を占めれば、何をやっても許される。政権がそんな考えで国会を運営したとしたら、国民を愚弄するにも程がある。

確かに、数を恃んだアベの横暴の国会。しかし、当初はこの国会に「憲法改正原案の発議」がなされる恐れが報じられていたのだ。1か月余の会期を延長してなお、今国会に憲法改正原案の発議はできなかった。衆参両院の憲法審査会も実質審議の場となっていない。そもそも、自民党案さえ確定に至っていない。

 昨夕、安倍晋三は、通常国会の実質閉会を受けて、官邸で記者会見し、改憲について「九月の自民党総裁選で大きな争点になる」と強調した。自民党がまとめた自衛隊明記など改憲四項目の条文案に関しては「(各党間で)取りまとめを加速すべきだ」と述べ、与野党に発議に向けた議論を呼び掛けた。と報道されている。

何度でも繰り返したい。改憲派にとっては、「アベが総理総裁でいるうち、改憲派の議席が両院ともに3分の2を超えているうち」が千載一遇のチャンスなのだ。
「アベが失脚する」か、「改憲派の議席が衆参のどちらかで3分の2を割る」ことになれば、改憲の危機は遠のくことになる。

アベ政権は、今国会で悪法成立の強行と引き換えに、「憲政史上最悪の国会」「国民を愚弄するにも程がある」との酷評にも晒されているのだ。アベ改憲の阻止は、十分に可能と考えられる。
(2018年7月21日)

「嘘つき内閣が嘘に嘘を重ねている」「ご意向内閣総辞職!」「改竄・隠蔽のアベやめろ!」

昨日(5月3日)の憲法記念日。各地の改憲阻止集会は、どこも意気盛んで大いに盛り上がったようだ。当面の課題は「アベ改憲」阻止だが、このような集会や行動の積み重ねは、当面の危機を乗り切る効果をもつにとどまらない。憲法の理念を国民の血肉として獲得する術となるのだ。その意味で、昨日は素晴らしい一日だった。

有明の中央集会のメインスピカーは落合惠子。参集の6万人にこう語りかけている。

「嘘つき内閣が嘘に嘘を重ねています。私たちはすでに知ってしまいました。安倍内閣は『総理のご意向内閣』ではありませんか。忖度がなければ維持もできない内閣ではありませんか」「彼らは福島を忘れ、沖縄を苦しめ、1機800億のイージスアショアなどを米国から喜々として買って国内では貧困率や格差を拡大している。戦争大好き内閣と呼ぶしかありません。公文書の改竄も隠蔽も何でもあり。何でもやるのが現内閣であり、やらないのは福祉と平和と命のためのしっかりした対策であると私は思います」

まったくそのとおりではないか。どの集会のどの発言者も、メッキが剥げて地金が露わになったアベ内閣の本質を衝いている。ジコチュー内閣、行政私物化政権、えこひいき首相、隠蔽・改竄・口裏合わせ、嘘つき・忖度総理…。実はそれだけではない。特定秘密保護法・戦争法・共謀罪そして、行き着く先がアベ改憲だ。だから、「安倍ヤメロ!」「総辞職!」なのだ。

「嘘つき内閣が嘘に嘘を重ねている。安倍内閣は『総理のご意向内閣』」。そこまで言われる内閣も珍しい。こう言われて、そのとおりだよなあと共感が広がる政権もまた珍しい。アベにもその取り巻きにも、怒る理由も気迫もないだろう。もう末期症状だ。「アベのいる内、3分の2ある内」が千載一遇のチャンスなのだから、アベの末期症状は、憲法の元気回復チャンスである。そして、アベ政治の臨終こそが、憲法の再生である。

全国津々浦々に「アベの嘘つき」「アベやめろ」の声が響いたに違いないが、昨日私が講演した立川の憲法集会もその一つ。「市民のひろば・憲法の会」は毎年憲法記念日に集会を開いて今年(2018年)が第32回。今年のタイトルが「やめよう改憲 生かそう平和憲法」というものだった。昨日も述べたとおりの熱気あふれた立派な集会だった。平和で豊かな社会を築くために憲法をどう生かすべきなのか、学び、考えようという気迫にあふれていた。

私の講演の前のプログラムが「朝鮮の楽器演奏と民族舞踊」。西東京朝鮮第一初中級学校(小学生・中学生)の部活動の成果の披露だという。みごとなもので、大喝采だった。

https://www.facebook.com/292497987574541/photos/pcb.992697737554559/992697444221255/?type=3&theater

憲法記念日の憲法集会に朝鮮学校の演舞。まことに時宜を得て結構なことではないか。国際協調、法の下の平等、民族差別の解消、教育を受ける権利、教育行政の責務…等々の憲法理念の実現の課題を考えさせる。このような懸命な子供たちの演技を見ていると国籍や民族などの違いはなんの障壁にもならずに、心の通い合いを感じる。伸びやかな子供たちの豊かな可能性に観客の心が熱くなる。

幕間に慎基成(シンキソン)校長が落ちついてコメントした。

「今の演技は、部活動としての民族舞踊の披露です。わが校は、民族教育の特徴はありますが、日本の小学校と特に変わった教育をしているわけではありません。
 地域の皆様にはご理解をいただけるよう努力をしているつもりですが、それでも先日、日本の中学校とのサッカーの対抗試合の際に、相手校の選手から『おまえら、みんなキンジョンウンなんだろう』と言われたという報告がありました。
 私は、腹を立てるのではなく、もっと私たちの日常を見てもらい理解していただく努力をしなければならないと思っています。たびたび、学校見学の日を設定していますが、その日に限りません。いつでもけっこうです、皆様どうぞ見学にお越しください。私自身も授業をもっています。どんな授業を行っているか、ぜひごらんいただきたいと思います。そのようにして、私たちも地域の一員であることにご理解をいただきたいのです」

堂々と立派な、共感を呼ぶ挨拶だった。 **************************************************************************
昨日の集会後、実行委員を中心に20人余りの人々の交流会がもたれた。お茶とお菓子、参加費300円の交流会で、多彩な人々の熱い思いが語られ、貴重な時間となった。

その交流会の際に、内閣総理大臣の衆議院解散権の行使に制約が必要ではないか、党利党略の随時解散権など認めるべきではないとの話題が出た。

解説を求められて、戦後の解散が憲法69条によらずに、7条3項による解散として実務が定着していること。「7条解散は違憲」と提訴のあった苫米地事件で、最高裁大法廷は統治行為論で判断を回避し、結局7条解散にお墨付きを与えることとなったことは解説し、英国の法改正についても触れたが、「その余の各国の制度については調べて当ブログでお返事する」こととした。以下がその回答である。

《アメリカ》上院・下院とも、制度上解散がない。したがって、大統領の解散権もない。

《ドイツ》
上院に解散はない。下院では、首相の信任投票が否決された場合にのみ、首相が解散権を行使できる。留意すべきは、内閣の不信任決議は同時に後継首相を決定しなければならない制度となっており、解散理由とはならない。

《イギリス》
2011年に「固定任期議会法」が成立し、首相による下院の解散権行使というシステムは大きく制限された。議員の任期5年固定を原則とし、解散には下院議員の定数の3分の2以上の賛成が必要となっている。

《フランス》
大統領は、首相及び両議院議長の意見を聴いた後、国民議会を解散できる。

《オーストラリア》
上下院とも、首相がいつでも解散することができる。

《カナダ》
下院は首相がいつでも解散することができる。

(2018年5月4日)

憲法記念日に平和的生存権を語る

2018年5月3日。日本国憲法施行から71年目となる憲法記念日。アベ改憲策動のせめぎ合いの中でこの日を迎えている。改憲派・改憲阻止派ともボルテージは高いが、公平に見て改憲阻止派の勢いが圧していると言って差し支えなかろう。

本日の両勢力のメインとなる集会について、毎日新聞は次のように伝えている。
改憲を目指す「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のフォーラムには約1200人(主催者発表)が参加。安倍晋三首相のビデオメッセージが流され、気象予報士でタレントの半井小絵氏が「北朝鮮の核・ミサイル開発など危機的な状況にもかかわらず、国会では大切な議論が行われていない」と述べた。

改憲反対の署名活動を展開する護憲団体などの集会では、野党4党トップも演説。約6万人(主催者発表)が参加して安倍政権退陣を訴え、和光大の竹信三恵子教授は「平和ぼけという言葉があるが、憲法のありがたみが分からなくなっている」と警鐘を鳴らした。

本日の朝刊各紙の社説のタイトルを並べてみよう。
朝日新聞 「安倍政権と憲法 改憲を語る資格あるのか」
毎日新聞 「引き継ぐべき憲法秩序 首相権力の統制が先決だ」
日本経済新聞 「改憲の実現にはまず環境整備を」
読売新聞 「憲法記念日 自衛隊違憲論の払拭を図れ」
産経新聞 「憲法施行71年 『9条』では国民守れない 平和構築へ自衛隊明記せよ」
東京新聞には本日社説の掲載はない。が、一面トップの大見出しが「9条 世界の宝」である。社会がもっている各紙のイメージどおりの内容の社説となっている。

朝日・毎日・共同の各世論調査が、いずれも安倍政権下での改憲には、過半数が反対している。そして、安倍政権がなくなれば、改憲は遠のくことになる。「アベのいるうち、各院に3分の2の改憲議席があるうち」。これが、千載一遇の改憲のチャンスなのだ。

昨日(5月2日)発表の朝日の調査の一節。
今回の憲法に関する全国世論調査(郵送)では、2020年までの改憲をめざす安倍晋三首相と国民との隔たりがはっきり表れた。国民が求める政策優先度でも「憲法改正」は最下位。安倍首相は「新しい時代への希望を生み出すような憲法を」と語るが、その意気込みは国民に広く伝わっていない。
◆次の政治課題の中で、あなたが安倍首相に優先的に取り組んでほしいものに、いくつでもマルをつけてください。
景気・雇用      60
高齢者向けの社会保障 56
教育・子育て支援   50
財政再建       38
震災復興       34
外交         23
安全保障       32
原子力発電・エネルギー16
憲法改正       11
その他・答えない    4

朝日が9項目上げた政治課題の中での最低の数字。しかも、「いくつでもマルを付けてください」に、わずか11%の選択。「景気・雇用」「 高齢者向けの社会保障」「教育・子育て支援」が国民にとっての最優先課題であるのに比して、「憲法改正」は最劣後課題と言ってよい。「アベのいるうち」でなくては、改憲問題が喫緊の政治課題になるはずはないのだ。

また、産経新聞・阿比留瑠比(論説委員兼政治部編集委員)の署名記事が興味深い。「国会は国民の権利を奪うのか 憲法改正の時機を失っては悔やみきれない」と題するもの。

同記事は、こう言う。

「そもそも、国会でかつてなく改憲派・改憲容認派の議員が多い今は、千載一遇のチャンスである。与党内からは『国民世論が盛り上がっていない』という声も聞くが、国会が論議をリードしなければ、世論が高まるきっかけも生まれない。」「ポスト安倍候補に挙げられる政治家の中に、安倍首相ほど憲法改正に意欲を示す者はいない。安倍政権のうちにやらなければ、もう憲法改正はずっとできないというのは、衆目の一致するところである。この機を逃して、自民党はいつ『党の使命』を果たすつもりなのか。今やらなければ、長年にわたり、『やるやる詐欺』で有権者をたばかってきたといわれても仕方がないだろう。」「もちろん、改憲を使命とする自民党と長く連立を組んできた公明党にも、議論を前に進める義務と責任があるのは言うまでもない。」

 「現行憲法は施行71年を迎えたが、この間、国会は一度も改正の発議をしていない。従って国民は、憲法に関して意思表示をする機会を、今まで全く与えられてこなかった。憲法は改正条項(96条)を備えており、社会の必要や時代の要請に応じた改正を当然の前提としている。そして国会が発議した改憲案に対し、是非の意思表示をするのは国民の権利であり、その機会はつくられてしかるべきだ。憲法改正の国民投票が実施されれば、独立後初めてのことであり、画期的な意義を持つ。」「自民党をはじめとする国会の不作為でその時機を失うことがあれば、悔やんでも悔やみきれない。」

「アベのいるうち、3分の2の議席があるうち」が千載一遇のチャンスとの認識のもと、改憲世論が盛り上がらないことを焦りもし、嘆いてもいるのだ。

私には、「他人の嘆きは蜜の味」という趣味はない。が、産経の焦りや嘆きを、人権や平和への朗報と認識する理性は持ち合わせている。

本日は、有明に参集の6万人の内の1人にはならなかった。 立川の柴崎学習館で行われた憲法集会に招かれた。「やめよう改憲 生かそう平和憲法」というメインタイトル。例年続けて、32回目となる地域の「手作り憲法集会」。参加者は200人弱といったところ。熱気のあふれる立派な集会だった。

私は、求められたタイトル「憲法を支える平和的生存権」での2時間余の講演。いささかくたびれた。
以下は、レジメの一部
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第1 憲法記念日にちなんで
1 日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正手続によって成立している。
主権者が、国民投票という形での直接の関与をしていない。
2 第90帝国議会が日本国憲法の制憲議会となった。貴衆両院の審議を経て46年10月29日枢密院が「修正帝国憲法改正案」を可決。同日、天皇がこれを裁可した。その後、11月3日(明治節)を選んで、国民主権を明記した日本国憲法を、旧主権者である天皇が公布した。
その日天皇(と妻)が出席した「日本国憲法公布記念祝賀都民大会」開催。
3 その6か月後の47年5月3日、日本国憲法施行。皇居前広場で「日本国憲法施行記念式典」開催(天皇出席)。官民あげての祝賀ムード。翌年から5月3日は国民の祝日・憲法記念日(「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」)とされている。
4 戦後の「逆コース」以来、政権を担う陣営が憲法に冷淡で「改憲」を掲げ、野党陣営が「改憲阻止」「護憲」のスローガンを掲げる図式が定着。改憲(阻止)問題は、一貫して、最大級の政治課題となってきた。
5 天皇制の残滓が染みついている憲法だが、まぎれもなく人権尊重・国民主権・平和主義に立脚した普遍性をもつ現代憲法。これを後退させてはならない。
6 日本国憲法は「勝ち取った憲法」と「与えられた憲法」の両側面がある。権力側からの改憲策動に抵抗する国民運動の積み重ねが、徐々に日本国憲法の「勝ち取った憲法」としての側面を拡大しつつある。

第2 日本国憲法が危ない(改憲スケジュールの現段階)
1 これまでも、憲法の危機は何度もあった。
憲法敵視の保守政権が続く限り、革新派が「護憲派」となる「奇妙な」構図。
(自民党は、立党以来「自主憲法の制定」を党是としている)
そのたびに、国民は改憲を阻止することで、憲法を自らの血肉としてきた。
(日本国民は、日本国憲法制定に際して国民投票をしていないが、権力に抗して、70年余これを守り抜くことで、日々、自らの憲法として獲得してきた)
2 今回の「安倍改憲」は、前例のない具体的スケジュールをもっての改憲案。
◎手続的法制が整備されている。国民投票法・国会法の改正済み。
⇒参照・別添資料Ⅰ 「改憲手続き法(概要)」
同   Ⅱ 「改憲手続き概要図」
◎両院とも「改憲派」の議席が、3分の2を超えている。
◎「アベのいるうち」、「3分の2の議席あるうち」が千載一遇のチャンス。
(つまり、「アベの退陣」「国政選挙の護憲派勝利」が改憲を阻止する鍵)
3 経過
※2017年5月3日 右翼改憲集会へのビデオ・メッセージと読売紙面
「アベ9条改憲」提案 9条1項2項は残して、自衛隊を憲法に明記。
その種本は、日本会議の伊藤哲夫「明日への選択」論文。
「力関係の現状」からの現実性ある提案というでなく、
意識的に「護憲勢力の分断」を狙う戦略的立場を明言している。
「自衛隊違憲論派」と「自衛隊合憲(専守防衛)派」の共闘に楔を。
実質的に「自衛隊違憲論派の孤立化」が狙われており、警戒を要する。
※同年12月20日 自民党 憲法改正推進本部とりまとめ
改憲4項目 「9条改憲」「緊急事態」「参院合区解消」「教育の充実」
⇒参照・別添資料Ⅲ 「法律家6団体声明(抜粋)」
※自民党憲法改正推進本部・3月14日役員会
細田博之本部長は9条2項(戦力不保持)を維持、削除・改正する七つの条文案を提示。
▼現行9条
1項 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄
2項 陸海空軍その他の戦力を保持しない。国の交戦権を認めない
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▽2項削除案
(1)総理を最高指揮官とする国防軍を保持(9条の2)
(2)陸海空自衛隊を保持(9条2項)
▽2項維持案(自衛隊を明記)
(3)必要最小限度の実力組織として、自衛隊を保持(9条の2)
(4)前条の範囲内で、行政各部の一として自衛隊を保持(9条の2)
(5)前条の規定は、自衛隊を保持することを妨げない(9条の2)
▽2項維持案(自衛権を明記)
(6)前2項の規定は、自衛権の発動を妨げない(9条3項)
(7)前2項の規定は、国の自衛権の行使を妨げず、そのための実力組織を      保持できる(9条3項)
※以上の(3)案が最有力とされたが、この日細田本部長一任取り付けに至らず。3月22日までに、(3)から、「必要最小限度の実力組織として」を削除した案で一任取り付けとの報道。しかし、党大会での発表に至らず。
※予定では、3月25日自民党大会までに「改正原案」自民案を党内一本化
その後に、改憲諸政党(公・維・希)と摺り合わせ  →改正原案作成
今通常国会(6月20日まで)に原案発議⇒18年末までに改正案発議。
⇒19年春国民投票⇒20年のオリンピック開会までに改正憲法施行。
※改憲派の思惑のとおりには、進行していない。
アベの求心力弱体化で、3月25日自民党大会条文化は不発。
※国会での手順は、
衆院に『改正原案』発議→本会議→衆院・憲法審査会(過半数で可決)
→本会議(3分の2で可決)→参院送付→同じ手続で可決になると
『改正案』を国民投票に発議することになる。
60~180日の国民投票運動期間を経て、国民投票に。
国民投票運動は原則自由。テレビコマーシャルも自由。
有効投票の過半数で可決。
※19年の政治日程は詰まっている。
統一地方選挙・元号発表・天皇退位・次期天皇の即位の礼・大嘗祭
・参院選(7月)・消費税値上げ。
※今が、勝敗を分ける運動のときだと思う。
19年4月までに国民投票を実施させないためには、3000万署名の成否が鍵。そして、参院選に護憲野党の選挙共闘が3分の1を超す議席を獲得すれば、アベ改憲の当面の危機は乗り切ることになる。

第3 憲法記念日に平和的生存権を語る
1 日本国憲法は平和憲法である。
9条だけではなく、前文から本文・補則の103条まで、丸ごと平和憲法である。過ぐる大戦における惨禍を繰り返さないという決意から生まれた。加害・被害両面の責任の自覚と反省から、戦争と軍備を放棄しようと決意した。
再び負けない強い国家を作ろうという「反省」ではない。
「平和を望むなら戦争の準備をせよ」という思想をとっていない。
2 日本国憲法の構造は、人権保障を基軸に組み立てられている。
近代憲法は「人権宣言(人権カタログ)」の章と「統治機構(制度)」から成る。人権こそが根源的な目的的価値であり、その他は手段・手段的価値と言ってよい。個人の尊厳を価値の根源とし、国家の制度は人権侵害のないよう設計されている。(個人主義・自由主義が根幹で、国家主義・全体主義を排斥している。)
※三権分立とは権力の集中強大化を防止して人権侵害を予防する基本原則。
※信教の自由という人権を保障するために、政教分離という制度がある。
※学問の自由という人権を保障するために、大学の自治という制度がある。
※言論の自由という人権保障のために、検閲の禁止という権力への命令がある。
3 平和も手段的価値であって、人権としての平和的生存権こそが目的価値ではないか。
平和を制度の問題ととらえるのではなく、国民一人ひとりが、平和のうちに生きる権利をもっていると人権保障の問題として再確認する。
※前文第2段落末尾に、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。これを人権保障規定として読み直そうという、先進的憲法学者からの提案。
4 平和を制度の問題とすれば民主的手続によって具体化すべき課題となり、国民個人は選挙を通じた間接民主主義の土俵でしか、関与し得ないことになる。しかし、平和を人権の問題とすれば、民主的手続(≒多数決)によって個人の平和に生きる権利を侵害することは許されない。
5 平和的生存権の、主体、客体、内容、外延はいまだ定まっておらず、生成途上の基本権と言ってよい。これを裁判規範として活用し、政府の戦争政策を法廷活動でストップさせようという試みが、果敢に繰り返されている。
⇒参照・別添資料Ⅳ 「イラク訴訟名古屋高裁判決(抜粋)」
類似のものとして、首相の靖国参拝や、公的行事としての大嘗祭を差し止めの根拠として、宗教的人格権の構想が用いられている。

第4 「ピースナウ・市民平和訴訟」の経験
1「湾岸戦争」への日本の加担と平和訴訟の概略
1991年1月17日、アメリカを中心とする多国籍軍はイラク軍に対する攻撃を開始した。「砂漠の剣」作戦と名付けられた爆撃と地上戦。これが「湾岸戦争」の始まりとなった。
日本はこの戦争に戦費負担で加担した。90億ドル(当時のレートで約1兆1700億円)の支出は多国籍軍総戦費の2割に当たる巨額。次いで現地への自衛隊機派遣の動きが報じられ、戦闘終熄後にはペルシャ湾まで自衛隊掃海部隊を派遣した。
アメリカが主導する戦争への事実上の参戦である。平和憲法のもとでは許されるはずのない政府の行為を「平和的生存権」を根拠に、訴訟で阻止したいと考える人々が各地で原告団を作り、その総数は3000人を超えた。その中で、最も大きなものが「戦争に税金は使わせない・ピースナウ市民平和訴訟」グループで、東京(原告1067人)・大阪(原告420人)・名古屋(原告542人)・鹿児島(原告2人・本人訴訟)の5地裁に「ピースナウ市民平和訴訟」を提起し訴訟と運動を連携しながら進行した。私は、東京地裁提訴事件の弁護団事務局長を務めた。その他のグループとして、大阪地裁「掃海艇派遣違憲訴訟」(原告212人)、福岡地裁「掃海艇入港住民訴訟」の本訴があり、これとは別に各地に差し止め仮処分の申立があった。
その後、この一連の訴訟を担った人々が「カンボジア派遣違憲訴訟」(大阪)、「PKO違憲訴訟」(東京・名古屋)、「ゴラン高原PKF違憲訴訟」(東京・大阪)、「思いやり予算違憲訴訟」(東京・大阪)、「テロ特措法違憲訴訟」(さいたま)などを提起した。さらに、イラク戦争開戦時には各地でイラク派兵差止訴訟が提起され、名古屋高裁が傍論ではあるが違憲の判断をした(2008年4月17日)ことが記憶に新しい。
さらにいま、全国各地(24地裁)に安保法制違憲訴訟が提起されて、平和的生存権活用の動きが継承されている。

2 「市民平和訴訟・東京」経過の概要
全訴訟の中心となった東京訴訟は、1991年3月4日原告571名が第一次提訴をした。弁護団は88名を数えた。当初通常部の民事13部に配点され、民事2部(行政部・涌井紀夫裁判長)へ回付された。
請求の趣旨は下記のとおりで、国を被告とする民事訴訟としての、「自衛隊機の派遣」差し止め(但し、結局派遣は回避された)請求と国家賠償請求訴訟であって、行政訴訟ではない。
「1 被告国は、湾岸協力会議に設けられた湾岸平和協力基金に対し90億ドル(金1兆1700億円)を支出してはならない。
2 被告国は、「湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令」に基づいて自衛隊機及び自衛隊員を派遣してはならない。
3 被告国は、原告らそれぞれに対し各金1万円を支払え。」
同年4月23日の第二次提訴(原告277名)で、「掃海部隊派遣差止等請求」事件となった。請求の趣旨の概要は以下とおりで、行政訴訟ではない。
「1 掃海部隊派遣差し止め
2 原告一人につき1万円の慰謝料請求」
第三次、第四次提訴は、国家賠償請求だけ、全部併合されて原告総数1067名になった。
差し止め対象の戦費支出が完了し、掃海部隊が派遣先から帰国した後、請求の趣旨を変更して、請求は次の二項目になっている。
1 90億ドルの支出と掃海部隊派遣の違憲違法確認請求
2 一人1万円の損害賠償請求
計20回の弁論を経て、しかるべき証人調べも原告本人尋問も行ったが、敵性証人の採用はなかった。96年5月10日に判決が言い渡され、違憲違法確認請求は却下(門前払い)。国家賠償請求は棄却された。
これを不服として控訴したが97年7月15日控訴棄却の判決となった。
上告の是非については意見が分かれ、多くは断念したが、56名が上告。98年11月26日上告棄却の判決があって、事件は全部終了した。

3 訴額問題「3兆4千億円の印紙を貼れ」
本件では、提訴後第1回弁論以前に、訴額と印紙問題が大きな話題となった。
訴状には、裁判所を利用する手数料として、訴額に応じて所定の印紙を貼付しなければならない。担当裁判所から弁護団に訴額についての意見照会があった。弁護団から、裁判所の意向を打診すると驚くべき回答があった。
裁判所は自らの見解を表明して、訴額は「原告各自について90億ドル」、全体は「その合算額」(90億ドル×571人分)と言った。原告571人の訴額合計を、なんと685兆円とし、訴状に貼付すべき印紙額は3兆4260億円とすべきではないか、としたのだ。
司法の年間総予算が2500億円の規模であった当時のこと。試算してみたら、10万円の最高額印紙を東京ドームの屋根全面に貼り尽くして、まだ面積が足りない額なのだ。これは格好のマスコミネタとなった。
厳しい世論からの批判を受けて、裁判所は態度を軟化。大幅に譲歩して、267万9000円の印紙の追貼命令を出した。差し止めの訴額については、算定不能の場合に当たるとして一人90万円とし、これに原告数を乗じての計算。弁護団は予定の対応として、前記一次訴訟の請求の趣旨1・2項の差し止めにつき二名だけを残して、その余の原告は差し止めを取り下げた。二名を除く他の原告は国家賠償請求だけにしたわけだ。これは必要に迫られて編み出した現場の知恵で、「代表訴訟方式」などと呼んだ。
結局、この対応で印紙の追貼納付は、4000円だけでことが収まった。3兆円から4千円に、壮大なダンピングだった。第二次訴訟についても差し止め請求は二人だけ、あとは国家賠償請求と、同様の手続きとした。
この件は、その後の司法改革論議の中でも話題となっている。

4 後日韓国憲法裁判所訪問の際に、類似の訴訟提起がなされたことを知った。10万人を超す原告数で手数料は無料という。事情を説明した最高裁の判事が、「原告たちは違憲の行政を正そうという有益な行為を行っているのですから」と言ったのが印象的だった。
なお、当時韓国でも平和的生存権の思想と実務での活用があることを知った。「9条をもたない韓国憲法」下の平和的生存権は、個人の尊厳条項から導かれており、一部認容されている判決もあるとのことだった。

5 平和的生存権の構成
※裁判規範性有無の論争
長沼ナイキ訴訟一審判決が訴えの利益の根拠として裁判規範性を認めた。
その後は、2008年4月27日、名古屋高裁民事3部(青山邦夫裁判長)において、
個人的には極めて貴重な経験だった。9条についても、平和的生存権についても、三権分立の構造についても、考えさせられた。法廷と運動の結合、毎回の法廷をどう演出するか、平和的生存権とは何か、三権分立の理念、素晴らしい証人尋問・原告本人尋問…。
しかし、その限界についても考えざるをえなかった。

6 内部的議論の数々
☆原理的に司法で解決すべき問題か。あるいは、司法解決に馴染む問題か。
☆請求権は何か。
平和的生存権とは、具体的な給付請求権たりうるのか。
人格権で政府に対する作為・不作為の請求が可能か。
☆違憲国賠訴訟の共通の悩み→主として宗教的人格権
法的保護に値する利益の侵害があったといえるか
☆現職自衛隊員が原告となった安保法制違憲訴訟(自衛隊員の「予防訴訟」)における控訴審で訴の利益を認めた東京高裁第12民事部の判断。
(2018年5月3日)

朝鮮半島の平和は困る ― 9条改憲の好機を逃してしまいそう

最近、鏡に映る自分の姿がどうもはっきりしない。後ろの壁がぼんやりと透けて見えるんだ。久しぶりに陽の当たる道を歩いてみたら、自分の影だけが妙に薄いことに気がついた。こんなこと、以前にもあったっけ。そうだ、2007年夏に第1次アベ政権が崩壊したあのあたりのことだ。また胃が痛い。いや腸がキリキリと痛んできた。

内政外交とも八方ふさがりだ。森友・加計・南スーダンだけでない。イラク日報、財務省セクハラ問題で、内政は最悪だ。嘘つき内閣・改ざん政権・公私混同首相・行政私物化総理とさんざんだ。「アベ・やめろ」とうるさくてならない。こんなにまで言われる私には人権はないとでもいうのだろうか。とりわけ、右腕と便りにしてきた麻生さんが、セクハラ次官をかばって火だるまだ。それに、元首相秘書官だった柳瀬が国会で洗いざらいしゃべったら私はいったいどうなることか。どちらも気が気でない。

これまでは、内政の失敗を外交で挽回してきた。安倍得意の外交とさえ言われてきたが、そのメッキが完全に剥げ落ちてしまった。北朝鮮問題こそが私の独壇場だった。トランプ政権と一緒に、ヒトツオボエで「圧力・圧力」「最後までアツリョク」と言ってりゃよかったのだから、楽なもんだった。それで、選挙に勝てたのだから、北朝鮮様々だ。南の文政権に出過ぎたことをするなと釘を刺す役を馬鹿正直に務めていたんだ。

ところが、なんてこった。トランプの奴め、こっそり北と水面下の対話を進めていたんだ。アベの面子など眼中になく、「国際信義よりは中間選挙ファースト」と言うことだった。これまでトランプを「一貫して支持」し、「日米は100%共にある」と繰り返してきたことが、われながら情けなくも恥ずかしい。トランプも金正恩も馬鹿ではなかった。馬鹿を見たのは、私ばかり。今や、トランプが上機嫌で、「南北対話を100%支持する」「アメリカとそのすべての国民は今、朝鮮半島で起きていることをとても誇りに思う」なんて言っている。文在寅の株が大いに上がった。トランプは抜け目なく、習近平まで持ち上げている。私の面目は丸つぶれじゃないか。

さりとて、スネ夫の宿命としてジャイアンには逆らえない。トランプには「拉致問題をよろしく」って、辞を低くしてお願いするしかない。そのお願いはトランプにだけじゃない。南北会談の設定で意気揚々の文在寅にも、頭を下げるしかない。これまで、「最終的かつ不可逆的な合意と言ったろう」などと居丈高な物言いをしてきたように思うんだが、あれは夢の中のことだったのか。

トランプには、頻繁に電話をして日米の緊密をアピールするしかないが、奴はその電話の最中に、ツイートを発信していることがあとになって分かった。私だって、一国の首相だ。あまりに無礼な態度だとは思うが、抗議もできないことがなんとも歯がゆい。

そんなことから、南北会談の前には、「拉致問題が前進するよう、私が司令塔となって全力で取り組む」と言ってみたし、事後には「南北首脳会談はわれわれが決めていたラインにのっとって行われたことが確認できた」と虚勢をはってもみたんだ。こう言わざるを得ない私の立場は、支持者の右翼の諸君には理解も同情もしてもらえるだろうという読みでの発言。右翼以外の「あんな人たち」や「こんな人たち」には、さぞやバカにされることになるんだろうな。だから、キリキリと腸が痛い。

関係国は、みんなそれぞれ主体的に問題に関わっている。中朝首脳会談を皮切りに、南北会談、そしてもうすぐ米朝会談だ。日本だけが蚊帳の外。私の影がうすーくなっている。何とか蚊帳の中に入れてくださいと言わなきゃならないのが癪のタネ。拉致問題の解決には、ピョンヤンに行かねばならないのだが、気が重い。腰も重くなる。うまく行くだろうか。なんと言っても、植民地支配の清算ができていない相手だ。どんな条件を持ち出されることになろうやら。「最終的かつ不可逆的」などと一方的に言って通じる相手ではなさそうだ。

何よりも、思惑外れは北の核やミサイルについての態度の豹変だ。これには心底困った。昨年10月の総選挙は、「国難選挙」と名付けて闘うことができた。与党が勝てたのは、核やミサイルで挑発的な姿勢をとり続けた北朝鮮のお陰だ。Jアラートは頼もしい武器になった。ところがどうしたことだ。南北会談で一気の平和ムードだ。これでは、軍拡の口実もなくなる。防衛予算の拡大もできない。9条改憲進展も棚上げになってしまうではないか。下手をすると、国民世論は、「安倍こそ国難」と盛り上がりかねない。

今こそ、自衛隊増強と改憲の絶好の機会だったはずではないか。「アベのいるうち」「両院の改憲派議席が3分の2あるうち」が千載一遇のチャンスだったはず。このままでは、みすみすとその好機を逃してしまいそうだ。何とかしなければならないが…、よい考えも浮かばない。ああ、腸がキリキリ痛むばかりだ。これが、断腸の思いというものだろうか。
(2018年4月30日)

アベ改憲策動の現段階 ― 改憲阻止に楽観論と慎重論と

自民党の改憲策動は今どうなっているんだい。もう、アベ改憲はとても無理だろう。

いや、それは甘い。新聞に「改憲遠のく」の記事が出ているが、運動体には迷惑な話だ。気を抜いてはならない現状だと思う。

そうかな。常識的にはアベ政権は死に体じゃないか。こんな政権に、憲法改正などという力業ができるとは到底思えない。むしろ、運動の成果に自信をもつべきではないのか。

改憲は、内閣の仕事ではない。改正案の審議も発議も、もっぱら国会の仕事だ。アベの力が衰えても、与党がやる気になればできることだ。9月の総裁選でアベ三選が阻止されても、後継総裁が「アベなきアベ改憲」を強行しないとも限らない。

今、アベが火だるまになっているのは根底に改憲強行姿勢があるからじゃないか。アベが追い落とされれば、次の総裁が誰であれ改憲は仕切り直しで、しばらくはおとなしくするだろう。そのような、硬軟おりまぜた柔軟性が自民党のしたたかさだと思うがね。

アベ9条改憲は、12年4月の「改憲草案」よりは、ずっと妥協し後退したものだ。党内には、これを不満とし「改憲草案」の国防軍案を主張する強硬派も少なくない。アベなきあとも、せめてアベ改憲の実現をと、まとまる可能性を否定できない。

自民党が、そんなイデオロギー政党だろうか。自民党の議員が、憲法が票になると思っているはずはない。景気対策、産業振興、震災復興、雇用や年金、教育費援助、農林漁業支援などの現実的な政策に傾斜せざるを得ないところだろう。

いや、今両院ともに、改憲派の議席が3分の2を超している。党内には、いまこそ千載一遇のチャンスという雰囲気が横溢していると見るべきだろう。

その一方で、今のアベ総裁のままでは選挙は戦えないという声が党内に満ちているとも報じられている。アベのバスに乗り遅れまいと有象無象が群がった時代は夢のまた夢。今は、沈みそうなアベ丸から、みんなわれ先に逃げ出そうとしている図ではないか。

党内には、「この連休で気分が変わる。」「内閣支持率も5月中旬にはV字回復」という楽観論もある。これまで何度もの危機を乗り切ってきたアベのしたたかさを過小評価してはならない。

聞きたいのは、アベ改憲スケジュールの現段階だ。もともとは「2020年東京オリンピックまでに改正憲法施行」で、逆算すると、今通常国会中に国会に「改正原案」を発議し、今年の末までに、国会が「改正案」を国民投票に発議しなければ間に合わない。それが頓挫したということではないのか。

当初予定のスケジュールが、かなり難しくなっていることは疑いない。しかし、頓挫したということではない。

少し、詳しく説明してくれないか。

3月14日に、自民党改憲本部が9条改正案の7案を提示した。この中には、9条2項削除案と存続案が混在しているが、初めから最有力だったのは、「9条1項2項はそのまま残して、自衛隊を憲法に明記する」というアベ提案に沿った、「9条2項を維持して、9条の2に、『必要最小限度の実力組織として、自衛隊を保持』」という案だった。

それでまとまらなかったのか。

3月15日が自民党改憲本部の全体会議だった。細田博之本部長は、一任を取り付けようとしたが、まとまらなかった。第2項維持派が「自衛隊」明記案と「自衛権」明記案に分かれたためだと言われている。ここで、アベの求心力低下が表面化した。

その後に、一任を取り付けたと報道されたんじゃないのか。

3月22日に再度の全体会合が開かれた。報道では、「安倍晋三首相の意向に沿って9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持しつつ自衛隊の存在を明記する憲法改正について、これまでの有力案から『必要最小限度』を削除する修正案が提示された。会合では修正を支持する意見が多数を占め、同本部は今後の対応を細田氏に一任。細田氏は修正案に基づき条文化を進める。」となっている。確かに、一任取り付けとはなった。

これまでの有力案から、「必要最小限度」を削除すると、「実力組織として、自衛隊を保持する」ということか。

おそらくは、条文としてはこうなるだろうということだ。
「9条の2第1項 前条(註・現行9条1・2項)の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
同第2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」

「おそらくは」って、3月25日の自民党大会までに条文案を一本化して、この党大会を具体的な改憲発議に向けての決起集会にするはずだったのだろう。

それが、そうはならなかった。翌日の朝日新聞の一面トップの見出しが、「改憲発議 年内厳しく 支持急落 日程窮屈に」。「党改憲推進本部が急いでまとめた『改憲4項目』の条文案が大会で披露されることはなかった」と報じられている。

改憲テーマは、「9条」・「緊急事態」・「参院選の合区」・「教育充実」の4項目だった。どの項目についても、改憲本部長からの条文化が示されなかったのなら、改憲スケジュール頓挫、ということではないのかね。

いや、今のところは「日程窮屈に」なった程度ということだろう。水面下では、公明党との摺り合わせが進行しているはずだ。

ボクは、3月2日に神風が吹いたと思っている。その日の朝日新聞・朝刊のトップ記事が、森友・決裁書「書き換え疑い」の報道だった。「書き換え疑い」は、すぐに「疑い」がとれ、「改ざん」となった。

その記事がもとで3月27日佐川証人喚問までは漕ぎつけたが、尋問では官邸の責任を否定し、細部は証言の拒否だった。

さらに加計問題だ。愛媛県の文書が出てきて、15年4月2日の官邸での面会が話題となった。これに「首相案件」とあった。さらには農水省、内閣府、文科省から内部文書が出てきた。当時の首相秘書官だった柳瀬が窮地に立たされている。

法的な問題としては、イラク派兵の日報が出てきたことは大きい。1万5000頁もの文書が報告されていなかった。シビリアンコントロールはどうなっているのか。

統合幕僚監部の三佐が、国会前の路上で民進党小西洋之参議院議員の「国民の敵」と罵倒した事件はもっと大きい。こんな、危険な自衛隊を憲法上の組織として位置づけるなど、とんでもないことだ。

このことへの反論として、「憲法に自衛隊の規定も、自衛隊へのシビリアンコントロールの規定もないことが問題だ。憲法に規定すればよい」などという珍論がある。

そして、おまけは財務事務次官福田淳一のセクハラ報道だ。福田の言動もひどいが、麻生の対応が致命的だった。これは、安倍内閣の断末魔の図ではないかね。

アベにとっての起死回生の望みが日米首脳会談だった。結局はなんの土産も持ち帰ることができなくて、安倍外交の失敗が際立つ結果となった。朝鮮半島をめぐる国際問題で、まさしく日本は蚊帳の外だ。

アベが倒れれば、アベ改憲策動はなくなる。アベの失点は、護憲勢力に朗報だろう。

アベが取りこぼして、「オウンゴールでアベ政権が倒れた」ではダメなんだ。改憲阻止の国民運動がアベを打倒したという構図にならなければ、アベ後継の改憲策動が始まることになる。

いま、アベが倒れたとして、これを「オウンゴール」というのは引っかかる。アベを糺弾する運動や言論があってのアベ退陣だろう。アベ改憲阻止とは、何よりもアベ政権を倒すこと。行政を私物化し、隠蔽・改ざん・捏造の、腐敗したアベ政権を糺弾することが今大切だろう。

何よりも、「改憲にこだわっていたのでは、選挙民がアベ自民党を見限る」「改憲論では選挙に勝ち目がない」という世論喚起の運動を高めなければならない。3000万署名を積み上げることが、喫緊の課題だ。

そこのところは異論がないね。いかなる改憲策動も、衆・参どちらかの議院で、護憲派が3分の1の議席をとればよい。今の世論分布なら、護憲野党の共闘で可能となるはずだ。それまで頑張ればよい。

もちろん、そのとおりだ。私は油断せぬよう、楽観せぬよう、世論喚起の運動を押し進めたい。

ボクの方は楽観しながら、市民と野党の共闘が実現するよう運動に参加するつもりだ。
(2018年4月23日)

「安倍9条改憲」の危険を語る。

今、安倍改憲のたくらみが進行しています。日本国憲法が危ない。とりわけ9条が危ない。そのことによる平和が危ない。そう思わざるを得ません。

これまでも、憲法の危機は何度もありました。戦後、政権を担い続けてきた保守政党が、憲法を敵視し続けてきましたから、潜在的には常に憲法は危機にあったことになります。ときおり、その潜在的危機が顕在化し、その都度改憲反対の運動が危うく、改憲を阻止してきました。

とりわけ自民党は、立党以来「自主憲法の制定」を党是としてきた政党ですから、自民党が議会内の多数派である限り、保守の側が「憲法を改正せよ」と言い、革新派が「憲法を守れ」と言う、奇妙な構図が続くことになります。

ご存じのとおり、憲法96条は「改正手続」を定めています。憲法自身が、国民の意思で憲法改正をすることを想定しています。ですが、憲法が想定する「改正」とは、本来が憲法がコアの価値とするもの、人権や民主主義や平和などを、より確かに、より深く、より実効的に保障する方向での、本当の意味での改正を意味していたはずです。たとえば、民主主義や平等に反することが明らかな天皇制を廃止することや、現行憲法の形式的な平等を実質的な平等に高めること、などが予想される典型と言ってよいでしょう。

しかし残念ながら、革新派に真の意味の憲法改正を発議する力量がないため、保守派が憲法「改悪」を発議し、革新派が改憲を許さず、憲法を守り抜いてきた、という「奇妙な構図」が作られてきたのです。

しかし、このことは大きな意味のあることだったと思います。改憲の危機が訪れるたびに、国民は改憲を阻止する運動を展開することで、日本国憲法を自らの血肉としてきました。

日本国憲法は、形式的には大日本帝国憲法の改正手続を経て成立しています。ですから、国民主権の憲法の制定(文言上は「改正」)を天皇が裁可して交付せしめる、という奇妙キテレツなこととなっています。ですから、このとき日本国民は、日本国憲法制定について主権者として、国民投票をしていません。しかし、その後70年余年、権力に抗して、保守派が嫌う日本国憲法を幾たびの危機から守り抜くことで、自らの憲法として獲得してきたものと胸を張ってよいと思います。

もっとも、今回の「安倍改憲」は、前例のない具体的スケジュールをもっての改憲案と言えます。それだけに、深刻なのです。

深刻だという理由の第1は、手続的な法制が整備されていることです。改憲手続き法(国民投票法)とともに、国会法の関係規定の改正が済んでいます。手続的に、泥縄ではなく、しっかりと舞台は整えられていることが重要です。

しかも、両院とも「改憲派」(自・公・維+α)の議席が、3分の2を超えています。数え方によっては、改憲派の議席は80%にもなると報じられています。国民意識と乖離した恐るべき事態といわざるを得ません。かつて、国会の中に厳然としてあった、3分の1の護憲の壁がないのです。

そして、今、保守派というよりは右翼陣営の頭目が、改憲の実現に血道を上げています。右翼陣営は、「アベのいるうち」「3分の2の議席あるうち」こそが、千載一遇のチャンスだと改憲世論の喚起に躍起になっています。

このことは、アベがいなくなれば、改憲派が3分の2の議席を失えば、右翼のいう「千載一遇の改憲チャンス」は潰えることになります。彼らも、危機感を持っているということです。

この、安倍改憲の経過をまとめておきましょう。
昨年(2017年)5月3日、安倍晋三は右翼改憲集会へのビデオ・メッセージを送り、また同日の読売新聞紙上で、「アベ9条改憲」の提案を行いました。「9条1項2項はそのまま残して、自衛隊を憲法に明記する」という、今問題の改憲案です。

この提案の種本は、伊藤哲夫(日本会議)「明日への選択」論文です。この案は、一面「力関係」を見据えた現実的提案ではありますが、けっしてそれだけではありません。護憲派の運動の分断という狙いを明確にしています。

つまり、戦争法反対運動が盛りあがったのは、「自衛隊違憲論」派と「自衛隊合憲論を前提とする専守防衛派」の共闘があったからだ。この両派に楔を打ち込むことが肝要で、この案なら、両派を分断することができる、というのです。

自衛隊を合憲化するだけの9条改憲案だから、「専守防衛」派は大きな反対はしないだろう。とすれば、「自衛隊違憲論」者を孤立させることができる、という思惑なのです。

自民党憲法改正推進本部は、この案を中心に議論を重ね、同年12月20日に、次のようにとりまとめました。
改憲4項目 テーマは、「9条」・「緊急事態」・「参院選の合区」・「教育充実」
9条改正案は下記の両論併記
※現行憲法9条1、2項を変えず、
自衛隊を明記する条文を新設する安倍晋三首相(党総裁)の提案
※9条2項を削除して「国防軍」を盛り込む-2012年の改憲草案

9条改正案については、2018年3月14日。改憲本部が、7案を提示しました。
そして、当初の見込みとしては、3月25日の自民党大会において、党内一本化した条文案を作りあげようと予定していました。3月25日党大会を改憲運動の出発点とし、その後は改憲諸政党(公・維・希)と案文を摺り合わせて、『改正原案』を作成し、今国会中に改正原案を衆議院に発議し、今秋、あるいは遅くも年内には憲法改正案を発議して、国民投票を実現したい。これが彼らのスケジュールでした。

憲法改正発議までの手続の概要を確認しておきましょう。
用語が混乱しやすいのですが、まずは衆院に『改正原案』発議が行われることになります。本会議を経て、衆院の憲法審査会で実質的な審議をすることになります。そして、過半数で可決されて本会議に戻り、今度は3分の2以上の特別多数決で可決となり、参院に送付となります。衆院と同じ手続で可決になると、成立した『改正案』が国民投票に発議されることになります。

発議後、60~180日の国民投票運動期間を経て、国民投票となります。
この国民投票運動は原則自由。新聞広告もテレビコマーシャルも自由です。カネに飽かせた、「自由な」運動が氾濫することになるでしょう。国民投票は、有効投票の過半数で可決となります。投票率の有効要件はありません。

いま、決定的に重要なのは、改正原案を作らせない運動です。2019年の政治日程は、元号制定・天皇退位・次天皇即位の礼・大嘗祭・参院選・消費税値上げと目白押しです。

19年の4月までがヤマ場で、19年7月参院選で、護憲野党共闘が勝利すれば、このヤマ場を乗り切れることになります。

「憲法に自衛隊を明記する」という安倍9条改憲案は、
①2項を削除し「通常の軍隊」を保持
②9条1項と2項を維持し「自衛隊」を明記、
③9条1項と2項を維持し「(自衛隊ではなく)自衛権」を明記、
の3案が検討されてきました。
3月14日自民党憲法改正推進本部役員会の7案とは以下のようなものです。
▽2項削除案
(1)総理を最高指揮官とする国防軍を保持(9条の2)
(2)陸海空自衛隊を保持(9条2項)
▽2項維持案(自衛隊を明記)
(3)必要最小限度の実力組織として、自衛隊を保持(9条の2)
(4)前条の範囲内で、行政各部の一として自衛隊を保持(9条の2)
(5)前条の規定は、自衛隊を保持することを妨げない(9条の2)
▽2項維持案(自衛権を明記)
(6)前2項の規定は、自衛権の発動を妨げない(9条3項)
(7)前2項の規定は、国の自衛権の行使を妨げず、そのための実力組織を保持できる  (9条3項)

ずいぶん対立しているようですが、結局は安倍提案の「2項維持案(自衛隊を明記)」の(3)案が最有力と報じられています。

なお、自衛隊(あるいは自衛権)の明記は、現行の9条1項2項のあとに、「9条3項」として書き加えるか、あるいは9条と10条の間に「9条の2」を新設して、ここに書く案の両者があります。「9条の2」新設案は、「従前の9条はそのまま」という印象を強く出すねらいがあると思われます。

問題は、安倍9条改憲は、「9条2項を残す」案なのだから、自衛隊を明記したところで現在と実質的に変わらないのではないか。「戦力不保持を定めた9条2項」が憲法に残れば、後々この残った9条2項を有効なものとして使えるのではないか、軍拡の歯止めになるのではないか、とごまかされるおそれです。それは間違いと、考えざるをえません。

まずは、「後法は前法を破る」という法解釈の原則があります。明らかに矛盾する法が、あるいは条項が存在する場合、後法が有効になります。後法に反する限りで、前法は無効とならざるを得ません。

「自衛隊は戦力に該当して違憲』という前法は、「自衛隊は憲法上の存在」という後法によって、無力化されるおそれが高いのです。

もともと自衛隊は合憲と考えていた専守防衛派にとっても、「戦争法によって変質し、集団的自衛権行使可能な自衛隊の追認」となるおそれがあります。「憲法では専守防衛の原則が貫かれているはず」が通用しなくなるおそれが高いのです。

いま、自民党や右翼勢力にとっても、事態は芳しくありません。3月22日に、改憲本部会合で「本部長一任」を取り付けましたが、3月25日自民党党大会では、誤算に終わった模様です。朝日の報道では、「改憲発議 年内厳しく 支持急落、日程窮屈に」「党改憲推進本部が急いでまとめた「改憲4項目」の条文案が大会で披露されることはなかった」というものとなっています。

9条改憲を除く、その他の改憲テーマは次のようなものです。
1.いつでも武力攻撃時に適用可能な緊急事態条項
2.選挙制度の基本原則を破壊する「合区解消」改憲案
3.教育の充実につながらない26条改憲案

改憲をめぐってせめぎ合いが続いています。私たちがすべきこと、できることは、こんな改憲案にこだわっていたのでは、自民党は民意から離れて選挙で大敗するだろう。という世論を作りあげること。それには、改憲反対の3000万署名を積み上げなくてはなりません。

是非とも、今回の憲法の危機を乗り越えて、この憲法をさらに国民のものとしたいものと念じています。
(2018年4月7日)

土俵は女人禁制ーまるで「自民党改憲草案」並みのばかばかしさ

自民党は、2012年4月に「日本国憲法改正草案」を発表した。これは、自由民主党という戦後の日本を主導してきた政党が、いったい何者であるかを遺憾なく示す記念碑的重要文書である。のみならず、現在の政権党がいったいどんな政治社会の建設を意図しているのか、そのホンネを赤裸々に語った文化財的文書として定着している。この貴重な文書をゆめゆめ粗末に扱ってはならない。軽々に改竄させたり、隠蔽させてはならない。できることなら、額装して朝に夕にこれを復誦し、現政権のホンネはここにあることを肝に銘ずべき代物なのだ。

私も、「アベ改憲・4項目」だの、「アベ9条改憲7案」だのと、政権や自民党の本心ならざるフェイントにごまかされて、この貴重文書の存在を忘却の彼方に押しやっている日常に反省しきりである。

しかし、ありがたいことに、折に触れて、この自民党改憲草案の存在を想起せざるを得ない事態に遭遇する。そのたびに、ああ、自民党とはこんな党だったではないか、と自分に言い聞かせるのである。

そのようなことは、天皇制や「日の丸・君が代」や、政教分離や、緊急事態や、防衛問題などのテーマに多いが、一昨日(4月4日)のニュースに接して、「歴史・伝統・文化」というキーワードで、自民党改憲草案を想起した。

4日、京都・舞鶴市で行われた大相撲春巡業で、舞鶴市の多々見良三市長が、土俵上であいさつ中に体調を悪化させて倒れた。くも膜下出血の発症だったという。一刻を争う緊急事態に、医療の心得のある女性が、機敏に土俵上で市長の心臓マッサージを行った。場内アナウンスは、この女性の行為に感謝するどころか、「女性は土俵から降りてください」と複数回の指示をしたという。

「救命行為を直ちに中止せよ」というアナウンスは信じがたい。その行為が犯罪になることさえ考えられる。バカげた事態というのは適切ではない。誇張ではなく、恐るべき事態と言うべきだろう。問題は、なぜこんなことが起きたのかだ。

この問題について、日本相撲協会の八角理事長が、4日下記のコメントを出した。

本日、京都府舞鶴市で行われた巡業中、多々見良三・舞鶴市長が倒れられました。市長のご無事を心よりお祈り申し上げます。とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。
応急処置のさなか、場内アナウンスを担当していた行司が「女性は土俵から降りてください」と複数回アナウンスを行いました。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます。

以上が全文。「人命にかかわる状況には不適切な対応」とは、「人命にかかわるほどの状況でなければ、不適切な対応とは言えない」という含意が見え見えである。

この「女性は土俵から降りてください」発言は、「人命にかかわる状況には不適切な対応」だったと責められるべきではない。「人命にかかわる状況においてまでも女性差別を貫徹しようとしたことは、相撲協会の徹底した女性差別体質を現したものとして不適切な対応」なのだ。

今回の件は、「人命にかかわる状況」だったから例外的に臨機応変の対応をすべきだった、のではない。女性を土俵に上げてはならないなどという差別の愚かさ、ばかばかしさを如実に示したものと受けとめなければならない。女性という、社会の半数をなす人々を、穢れたものとする思想と行動の払拭が求められているのだ。

本日(4月6日)兵庫県宝塚市で開かれた予定の大相撲の地方巡業「宝塚場所」で、同市の中川智子市長が巡業の実行委員会に「土俵上であいさつしたい」との意向を伝えたが断られ、やむなく土俵下であいさつをした。「私は女性市長ですが人間です。女性であるという理由で、市長でありながら、土俵の上であいさつができない。悔しい。つらい」と訴えると、観客から拍手が起こったという。

この興行の主体は公益財団法人相撲協会である。「公益法人」でなくとも、大相撲は、十分に社会的な存在となっている。社会的な存在である以上は、性による不合理な差別は許されない。

協会に聞いてみたいものだ。
「なぜ、土俵は女人禁制なのか」「その女人禁制の理由は現在なお妥当性をもつのか」と。

女性差別の理由は、それが伝統とか文化であるから、というものでしかなかろう。伝統も文化も曖昧模糊。実はなんの実体もない。伝統とは因習に過ぎず、文化とは野蛮にほかならず、合理的理由を説明できないときの説明拒否の逃げの一言でしかないのだ。相撲協会は、こうはっきり言えるだろうか。「相撲は神事であり、神事では女性は穢れたものとされているから」と。そんな神は、敗戦時に、大日本帝国とともに滅亡して死に絶えたのだ。差別を合理化する神も神事も、生き返らせてはならない。どだい、女から生まれなかった横綱も大関もいないのだから。

こんなふうに考えると、自ずから「自民党改憲草案」が思い浮かぶのだ。党の公式解説書である、「Q&A」に、こんな文章がある。

(憲法)前文は、我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた文章であるべきですが、現行憲法の前文には、そうした点が現れていません。

人権も民主主義も平和も、人類史的に普遍的な理念などと考えてはいけない。「日本の憲法は、日本固有の歴史・伝統・文化を踏まえたものでなくてはならない」という屁理屈の布石である。この「日本固有の歴史・伝統・文化」の尊重とは、とりもなおさず、天皇制であり、天皇制を支えた家制度であり、男性中心の女性差別である。究極には、個人の尊厳ではなく、国家や全体主義社会を優越的価値とする為政者に好都合な秩序観のことである。

念のため、「自民党改憲草案」の前文(抜粋)を掲記しておこう。
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。」

土俵は女人禁制、それこそは、長い歴史と固有の文化の所産であり、男性である天皇を戴く国家での当然のありかたである。日本国民は、「和」とされる上下・貴賤の秩序を尊び、家族や社会全体をこのヒエラルヒーに組み込んで国家を形成する。
自民党は、この良き伝統を墨守して、ここに、土俵は女人禁制の良俗を守り抜くことを宣言する。

自民党・安倍政権と相撲協会、まことによく似ているではないか。
(2018年4月6日)

アベ退陣を要求する。アベを退治して、憲法を救え。

本郷三丁目交差点をご通行中の皆さま、こちらは「本郷・湯島9条の会」です。昼休みのこの時間に平和を守るための訴えをさせていただいています。少しの時間、耳をお貸しください。

「森友学園」への国有地売却をめぐる「決裁文書」の改竄が明るみに出て、国会が揺れています。アベ政治の腐敗が露わになって、政権が軋んでいます。

改竄書面は、「貸付決議書」「売払決議書」「特例承認の決議文書」などの14点。78ページ、改竄個所は300個所にも及ぶものです。

改竄前にあって、不都合として削除された文章の中には、森友学園との交渉経緯に関連した「安倍昭恵首相夫人から『いい土地だから前に進めてください』とのお言葉をいただいた」との記述があったことも判明しました。籠池さんの、「日本会議大阪支部代表」の名刺のコピーも消されていました。

「不都合なことはなかったことにしよう」。これが、歴史修正主義者のやり口です。なるほど、公文書の改竄は歴史修正主義者・安倍晋三のやり口にふさわしい。

しかし、公文書とは何でしょうか。公文書管理法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」としています。公文書の正確さは、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」の命です。これが改竄されて約1年。関係者がだんまりを決めこんでいたのです。朝日新聞のスクープがなければ、闇に葬られかねないところでした。

改竄は、なんのために行われたか。明らかに、安倍晋三と昭恵の夫婦をかばうためにです。
ご承知のとおり、安倍首相は昨年2月17日の国会答弁で、「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれはもう私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。全く関係ないということは申し上げておきたいと思います」と明言しました。

ここから、文書の改竄が始まったのです。つまり、「私や妻が関係していた」という歴史は抹消しなければならない。そうしなければ、「もう間違いなく総理大臣も国会議員もやめ」ざるを得ないからです。

さあ、隠されていた文書が暴かれて、「妻が関係していた」ことが明らかになったではありませんか。ここに至っては、自分が国会で公言したとおりに、「総理大臣も国会議員も」やめていただくほかはありません。

今や、国民の怒りが爆発しています。「アベはやめろ」「アベ内閣は総辞職せよ」「アベ政治は、もう終わりにさせよう」という声が沸き起こっています。この声を政権打倒に結びつけようではありませんか。

森友学園事件とはなんだったのでしょうか。首相の妻が極右の教育者の教育方針に感涙した。首相自身もこれを容認していた。そのご威光を忖度した官僚によって、極端な右翼教育を掲げる小学校建設のために、国有地をただ同然で払い下げられたというものではありませんか。

加計学園問題とはなんでしょうか。これも、首相のお友達に、特別の便宜をはかって、所轄の文科省と農水省の反対を押し切って、官邸主導で半世紀ぶりに獣医学部の設置認可がなされたのです。手練手管を弄して、権力者のお友達に巨額の利益が転がり込むという薄汚い事件。

アベ晋三の、政治の私物化、行政の私物化そのものではありませんか。

こんなアベ政権に、日本国憲法の改正を論じる資格はありません。自民党は3月25日の党大会で、憲法改正の自民党原案を具体化すると言っていますが、とんでもない。とっとと退場してもらいましょう。

今や、森友・加計問題を徹底して追及することが、安倍内閣を退陣に追い込むことであり、アベ改憲を阻止することにもなっています。

私たちは、安倍晋三首相、即刻退場せよと声を大にして叫びます。
《安倍はやめろ!》《アベ政治を許さない!》と。
皆さん!全国の広範な市民と共に安倍政権の9条改憲の野望を断固阻止する大波を起こそうではありませんか!
そのための、《アベ9条改憲阻止・3000万人署名》にご協力をお願いいたします。!
(2018年3月13日)

「日の丸・君が代」強制拒否訴訟から見える憲法状況

なんともお寒い晩ですが、こんな日に雪の残る悪路を踏み分けて「『日の丸・君が代』強制に反対!板橋のつどい・18」に足を運んでいただき、まことにありがとうございます。本日は、「日の丸・君が代」強制拒否訴訟から見える憲法状況というタイトルで、1時間余のお話しをさせていただきます。

はじめに、「日本国憲法が危ない」ということについて認識を共有していただき、次いで「日の丸・君が代」強制拒否訴訟の到達点と現在の課題を確認し、そこから見えてくる自民党改憲案(「日本国憲法改正草案」)の問題点や、天皇退位と「明治150年」問題、そして最後に「アベ9条改憲問題」との関わりについて触れたいと思います。

まず申しあげなければならないのは、いま憲法は危機にあると言うことです。とりわけ、9条が、つまりは平和主義が危ないということです。

これまでも、度々憲法は危機にあると言われてまいりました。自民党は、立党以来自主憲法制定を党是とする改憲指向政党です。政権与党が改憲指向政党なのですから、これまでも憲法は、恒常的に危機にあったとはいえるでしょう。しかし、今日のように具体的な改憲スケジュールが提示されたことは、かつてなかったことです。

今、国民投票法があり、それに伴う国会法も整備され、憲法改正案を作成し国民投票を発議する手続は調っています。しかも、衆参両院とも、改憲勢力が議席数の3分の2を超えています。改憲勢力は今がチャンスと意気込んでいるのです。

いま、アベ晋三は9条改憲案を提示しています。憲法の遵守に、最も忠実でなくてはならない人物が、憲法の攻撃に最も前のめりになっています。2017年5月3日、アベは右翼の改憲集会にビデオ・メッセージを送り、9条改憲を提案しました。9条の1項と2項はそのままとして、第3項を加えることで「憲法に自衛隊を明記する」という、「加憲的9条改憲案」です。

12月22日には、自民党は正式に改憲案の整理を行いました。そのとりまとめでは4項目についての改憲案が提示され、そのうち9条改正については2案が併記されています。2案の違いは、9条2項を残すか削除するかの点。2項を残すアベ9条改憲案は、対案と比較してマイルドに見える仕掛けとなっています。

この提案には、種本があります。右翼のシンクタンク日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」16年9月号の伊藤哲夫論文。この日本会議常任理事という肩書を持つ人物が、加憲的9条改憲案の発案者です。

彼は、「加憲」を「あくまでも現在の国民世論の現実を踏まえた苦肉の提案でもある」「まずはかかる道で『普通の国家』になることをめざし、その上でいつの日か、真の『日本』にもなっていくということだ」と、現実主義の見地からの妥協案であるとしていますが、実はそれだけではない。彼は、その狙いが「護憲派の分断」にあると明言しています。

自衛隊違憲論者と、専守防衛に徹する限り自衛隊は合憲であると考える勢力の間に楔を打って分断するのだというのです。アベは、これに乗ったわけです。この点の警戒が重要だと思います。

本年1月4日、アベは伊勢神宮での記者会見の年頭所感で改憲に意欲を見せ、1月22日の施政方針演説でも、改憲の論議を活発にと言っています。3月25日の自民党大会には両案併記だった9条改憲案を党内で一本化し、改憲諸政党(公・維・希)と摺り合わせて、今国会中に改正原案を作成し、国会に改正原案発議をすることになります。

衆院には100人の賛成を付すことで、『改正原案』が発議されます。本会議で趣旨説明のあと、衆院の憲法審査会の審議に付され、過半数の賛成で本会議に報告となり、本会議で3分の2以上の賛成で衆院を通過し、参院に送られます。同じ手続を経て参院も3分の2以上の賛成で通過すると、改正原案は国会の『憲法改正案』となって発議されて、国民投票にかけられることになります。国民投票運動期間として、60日~180日が設定されて、国民投票での過半数の賛成で憲法改正が成立することになります。

しかし、実はこのスケジュールは極めてタイトだと言わざるを得ません。2019年の後半には、重要な政治日程が立て込んでいます。元号・退位・即位の礼・大嘗祭・参院選・消費税値上げなど。とすれば、勝負は今年ということになります。改憲勢力としては、来年4月頃までに国民投票の実施に漕ぎつけたいところ。

今、超党派で提起されている「9条改憲阻止の3000万署名」の成否が鍵となります。改憲にこだわっていたのでは、参院選には勝てないという空気を作り出さねばなりません。

そして、来年の参院選では、改憲反対を掲げる野党の共闘によって改憲勢力を3分の2以下に落とすことは、前回参院選の結果から見て十分に可能だと思われます。

そのような憲法情勢を念頭に、「日の丸・君が代」強制問題から見えてくるものをお話ししたいと思います。

第1は、「日の丸・君が代」強制拒否訴訟の到達点と課題です。
私は、次のように、訴訟の時期の区分ができると思っています。
1 高揚期(予防訴訟の提訴~難波判決)
※再発防止研修執行停止申立⇒須藤決定(04年7月)研修内容に歯止め
※予防訴訟一審判決(難波判決)の全面勝訴(06年9月)
2 受難期(最高裁ピアノ判決~)
※ピアノ伴奏強制事件の最高裁合憲判決(07年2月)
⇒これに続く下級裁判所のヒラメ判決・コピペ判決
難波判決 高裁逆転敗訴(11年1月)まで。
3 回復・安定期(大橋判決~)
※取り消し訴訟(第1次訴訟)に東京高裁大橋判決(11年3月)
全原告(162名)について裁量権濫用として違法・処分取消
※君が代裁判1次訴訟最高裁判決(12年1月)
君が代裁判2次訴訟最高裁判決(13年9月)
君が代裁判3次訴訟最高裁判決(16年7月)
間接制約論(その積極面と消極面)
*「間接」にもせよ、思想・良心に対する制約と認めたこと
*2名の裁判官の反対意見(違憲判断) とりわけ宮川意見の存在
*多数裁判官の補足意見における都教委批判

残念ながら、「10・23通達」や懲戒処分の違憲判断は回避され、戒告処分の違法性は否定されました。他方、 減給・停職は裁量権濫用として違法とされ、裁判による取消が定着しています。これによって、当初石原教育行政がたくらんだ累積加重システムは破綻し、教員の抵抗は続いています。

訴訟が抱えている現在の課題について一言します。
第4次訴訟では、17年9月に一審判決があり、間もなく18年2月に控訴審第1回期日を迎えようとしています。
そこで、違憲判決を勝ち取る努力を続けています。
間接強制論は、国旗国歌への起立斉唱を、「儀式的行事における儀礼的所作」に過ぎないから、「思想良心への直接制約に該らない」といいます。しかし、果たしてそうでしょうか。今、権威ある宗教学者の助力を得て、「儀式的行事における儀礼的所作」が思想・良心の自由をいかに傷つけることになるかの意見書をまとめていただきました。近々、裁判所に提出し、これを基軸に判例を批判し違憲論を展開したいと考えています。

違憲論以外にも課題は山積しています。最高裁判例の枠の中で可能な限り憲法に忠実な判断を求めなければなりませんし、国際人権論からのアプローチも必要です。

そして、石原や小池のような右翼に都政を任せるのではなく、都政を都民の手に取り戻して、憲法の生きる都政を実現する運動が不可欠だと痛感しています。

第2 自民党改憲案(「日本国憲法改正草案」)との関わり

2012年4月の自民党改憲案は、かなりの程度にまで、自民党のホンネを語るものとなっています。その自民党改憲案第3条は、「(国旗及び国歌)とされ、
第1項 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
第2項 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。と明記されています。

自民党の公式解説(Q&A)では、さらに次のようになっています。
「我が国の国旗及び国歌については、既に「国旗及び国歌に関する法律」によって規定されていますが、国旗・国歌は一般に国家を表象的に示すいわば「シンボル」であり、また、国旗・国歌をめぐって教育現場で混乱が起きていることを踏まえ、3条に明文の規定を置くこととしました。
当初案は、国旗及び国歌を「日本国の表象」とし、具体的には法律の規定に委ねることとしていました。しかし、我々がいつも「日の丸」と呼んでいる「日章旗」と「君が代」は不変のものであり、具体的に固有名詞で規定しても良いとの意見が大勢を占めました
また、3条2項に、国民は国旗及び国歌を尊重しなければならないとの規定を置きましたが、国旗及び国歌を国民が尊重すべきであることは当然のことであり、これによって国民に新たな義務が生ずるものとは考えていません。

国旗国歌法には盛りこむことができなかった国旗国歌(日の丸君が代)尊重の義務を憲法に書き込もうというのが、自民党のホンネなのです。
ここに見えるものは、「国権」と「人権」の相克における、国権至上主義にほかなりません。

そもそも、日本国憲法否定の「自主憲法の制定」が自民党本来の党是であり使命とされています。これを正直に述べた改憲草案こそがアベ自民のホンネ。石原・小池ら右翼のホンネでもあります。自民党の人権なし崩し策動に、一歩の譲歩も許してはならないと思っています。「日の丸・君が代」強制に対するたたかいは、そのような改憲勢力のホンネとの切り結ぶ局面だと思っています。

 

第3 天皇退位と明治150年
「日の丸」も「君が代」も、天皇制とあまりに深く結びついた歴史をもっています。否定されたはずの、天皇の権力や権威が再び利用されようとしている今、「日の丸・君が代」強制への闘いは新たな意味を持つに至っています。
※天皇の生前退位表明は、明らかに越権。
※明治150年のイデオロギー攻勢
※自民党改憲草案前文冒頭
「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
※草案第1条 「天皇は、日本国の元首であり…」
※草案第4条(元号について)
「元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。
解説(Q&A) 4条に元号の規定を設けました。この規定については、自民党内でも特に異論がありませんでしたが、現在の「元号法」の規定をほぼそのまま採用したものであり、一世一元の制を明定したものです。」

第4 アベ9条改憲問題との関わり
教育における国旗・国歌の強制とは、国家と国民の対峙の場において、国家の存在が国民の人権に優越するという全体主義思想の表れです。また、「日の丸・君が代」の強制とは、歴史的に國體思想(天皇崇敬)に無反省な公権力の行使として許されることではありません。

戦前の「日の丸・君が代」強制は、とりわけ戦時色が強くなって以来、学校と軍隊とで忠君愛国が強調され、「日の丸・君が代」は愛国のシンボルとなりました。

愛国心教育や民族差別教育とは、戦争をしようという国の常套手段です。「戦争は教場から始まる」という名言を今再度噛みしめなければなりません。戦争の歴史とあまりに深く結びついたこの旗と歌、その押しつけを許さないという抵抗は、アベ9条改憲への反対と通底するものがあるはずだと思います。

(2018年1月27日)

アベ改憲提案は無理筋だ。もう引っ込みたまえ。

本日(1月21日)のNHK「日曜討論」は、「明日から通常国会 与野党論戦の焦点は」というタイトル。その番組紹介は次のとおり。

「通常国会が22日に召集され、論戦が始まります。各党は国会審議で何を訴えるのか? 予算案の評価は? 働き方改革は? そして憲法をめぐる議論は? 与野党の幹部が討論します。」

今次通常国会最大のテーマは、アベ改憲発議の有無とその内容だ。自民党は、国民に向かって、説得的に改憲案の内容と必要性を説明しなければならないが、改憲案の必要性を説得的に説明するなどは無理筋の話し。

NHKオンライン(NHKの公式ホームページ)によれば、本日の「日曜討論」では、「憲法改正について、自民党は自衛隊の存在を明記すべきだとして、3月の党大会までに党としての方針をまとめたいとしたのに対し、立憲民主党などは9条の改正には反対する考えを強調しました。」と述べている。

討論における各党の発言を眺めておこう。
自民党の柴山筆頭副幹事長
「憲法学者の多くは、まだ、自衛隊は違憲だということを言っているので、混乱をなくすために自衛隊を明記することを、しっかりと進めていくべきだ。党大会がある3月の終わりには党の方針をなんとかまとめる方向で進めていけたらいい。与野党が衆参の憲法審査会でそれぞれの考え方を戦わせ、一定の方向性が見られればベストだ」
と述べたという。

「憲法学者の圧倒的多数が、自衛隊は違憲だと言っている」という自民党の認識は正確で、まことにそのとおりだ。しかも、それは今に始まったことではない。憲法学者に限らず、日本語をまともに読む能力のある者が憲法を素直に読んで、自衛隊の実態と照らし合わせれば、「正気の日本人の圧倒的多数が、自衛隊は違憲」だと判断するだろう。

だから、本来は憲法という規範に照らして、「違憲の自衛隊をなくす」「あるいは、縮小する」ことが正しい。少なくとも、これ以上は自衛隊を増強しないよう心がけなければならない。にもかかわらず、「混乱をなくすために自衛隊を明記することを、しっかりと進めていくべきだ」とは、「違憲の事実が明らかなようだから、憲法の方を変えてしまえ」ということではないか。何とご無体な。これが、自民党の憲法観。これでは何のための憲法か、存在の意味がなくなる。

公明党の斉藤幹事長代行はこうだという。
「憲法改正で最も大切なのは、やはり幅広い合意だ。衆議院、参議院それぞれで3分の2以上の賛成を得て、そのうえで国民投票にかけるので、国論を二分しない幅広い国民合意を作り上げていく姿勢こそ、今、われわれ国会に求められていると思う」

アベ自民よりよっぽど理性的で、真っ当な姿勢ではないか。もっとも、これまで何度も経験していることだが、いつの間にか大事なところで、自民党に擦り寄り屈服して変節する「下駄の雪」体質が、この党の政権にとっての利用価値。前回総選挙での国民の批判が骨身に応えているうちは、軽々にアベ自民の改憲策動に擦り寄ることはできまい。

立憲民主党の長妻代表代行
「安倍総理大臣は、9条について『自衛隊を書き込んだとしても一切、武力行使の限界は変わらない』と言っているが、2項を削らずに自衛隊を明記しても違憲の議論は消えないので、説明自体が間違っている」
と述べたという。「9条2項を削らずに自衛隊を明記しても違憲の議論は消えない」はそのとおりだろうが、全体として、えらく理論的に難しいことをおっしゃる。もう少し、端的に分かり易くできないだろうか。

希望の党の岸本幹事長代理
「安倍総理大臣は『9条に自衛隊を書き込んでも何も変わらない』と言っており、立法事実がない。立法事実がない改正はありえず、安倍総理大臣が言う9条改正には反対だ。議論はするが優先順位は相当、後ろにくる。期限を切る必要は全くない」と述べたという。

希望の党のこの発言はまことに興味深い。これまで、小池百合子党と見られたことが裏目に出て、権力に擦り寄る姿勢を批判されたことが堪えているのだ。右転落は、実は大きく支持を失うということ。この発言を読む限り、立派なものではないか。

民進党の川合幹事長代理は、
「9条の改正について、少なくとも、『国民の多くは安倍政権下で憲法改正することを望んでいない』という世論調査の結果も出ている。国民が望んでいないことに政府や政治が血道を上げ、発議を無理やり行うことが果たして適切なのか」
と述べたという。

「国民が望んでいないことに政府や政治が血道を上げ、発議を無理やり行うことが果たして適切なのか」は、まったくそのとおりだ。アベ政権の改憲路線に対峙する立場を明示するところなくては野党としての存在の意味はない。

共産党の小池書記局長は、
「自衛隊が書き込まれれば9条の1項と2項は死文化し、何の制約もなく海外で武力行使ができるようになる。憲法の不戦の概念が根本的に変わる。市民と力を合わせて絶対に発議を許さない」
と述べたという。

「自衛隊が書き込まれれば9条の1項と2項は死文化する」「憲法の不戦の概念が根本的に変わる」は、あり得ることだろう。「後法は前法を破る」のが原則なのだから。「市民と力を合わせて絶対に発議を許さない」には賛同する。

日本維新の会の馬場幹事長は、
「『9条が改正されれば戦争に巻き込まれるのではないか』という漠然とした不安を持つ人がいるが、根本的な原因は安全保障法制にあり、存立危機事態の中身を絞り込むべきだ
と述べたという。

いかにも、獅子に対する狐の論理。「存立危機事態の中身を絞り込むこと」で、9条改憲に対する国民の不安を払拭しようというのが維新案。「一応9条改憲反対派」という立場。

自由党の森幹事長代理は、
国家の私物化が強く疑われている安倍総理大臣が、権力を抑制する憲法の改正を提唱していくことに国民は怒らなければならない
と述べたという。

各論における批判では、全面的な批判たりえず時間も足りない。ズバリと、核心を衝いたアベ政治への基底的な批判。そのとおりではないか。

社民党の又市幹事長
「9条2項の戦力の放棄、交戦権の否認を有名無実化しようという狙いがあって、やろうとしているのは明らかだ」
と述べたとのこと。まったくそのとおりではないか。

9条改憲を狙っているのはアベ自民だけ。アベ自民の改憲提案は明らかに孤立している。アベ自民をさらに孤立させよう。たとえ保守でも真っ当な保守は9条改憲など主張してはいない。アベ君、もうキミの出番はない。アベ自民に引導を渡そう。
(2018年1月21日)

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