澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

覚えておこう、安倍晋三が語るべくして語らなかったこと。

昨日(1月20日)、第201回通常国会が開会した。さあ、いよいよウソとゴマカシの安倍政権に引導を渡して、改憲断念の駄目を押す機会だ。

それにしても、「無内容」、「薄っぺら」、「我田引水」、「つまみ食い」、「手前勝手」、「厚顔無恥」と悪評のみ高い施政方針演説だった。

印象に残るのは、随所にオリンピックへの言及が繰り返されたこと。安倍が引用する2020オリンピックなのだから、薄汚いに決まっている。ますます、東京オリンピック(安倍は、「日本オリンピック」と言った)の印象が悪くなる。嫌いになる。

そして最後に、何の論理の脈絡もなく、唐突に「憲法改正」が叫ばれる。この部分を官邸のホームページから引用しておこう。

七 おわりに
 「人類は四年ごとに夢をみる」
  一九六四年の記録映画は、この言葉で締めくくられています。新しい時代をどのような時代としていくのか。その夢の実現は、今を生きる私たちの行動にかかっています。
  社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく。令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時です。先送りでは、次の世代への責任を果たすことはできません。
  国のかたちを語るもの。それは憲法です。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないでしょうか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。
  世界の真ん中で輝く日本、希望にあふれ誇りある日本を創り上げる。その大きな夢に向かって、この七年間、全力を尽くしてきました。夢を夢のままで終わらせてはならない。新しい時代の日本を創るため、今日、ここから、皆さん、共に、スタートを切ろうではありませんか。
  御清聴ありがとうございました。

 何ともアホラシくも、出来の悪いシラけた演説。論理でも情念でも、聞く人に訴える内容をもっていない。オリンピックが改憲のダシに使われるのなら、人類は四年ごとに悪夢をみる」というしかない。その悪夢実現阻止の成否は、自立し自覚した主権者国民の行動にかかっている。安倍ごときの、浅薄きわまる煽動に乗せられてはならない。

言うまでもないことだが、憲法99条は、天皇と内閣総理大臣を筆頭とする公務員に憲法尊重擁護義務を課している。安倍晋三は、憲法を擁護しなければならない。彼は、施政方針演説において、主権者から命じられるとおり、憲法に準拠して、憲法を拳拳服膺する姿勢を見せなければならない。

にも拘わらず、令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控えた今こそ、改憲審議を実行すべき時」と敢えて言うのだ。憲法に対する理解を欠いた行政府の長、内閣総理大臣として不適格も甚だしい。

「令和」やオリパラについては、明るい話題として取りあげながら、彼は不都合なことは語らない。安倍に不都合なことは、憲法と民主主義に大切なことなのだ。語られるべくして語られぬことを、しっかりと確認しておかねばならない。

忘れちゃならない、もり・かけ・さくら、テストにカジノ。辺野古にイランと中東派兵。環境破壊と原発推進。大事な文書は隠匿・改竄・廃棄して、丁寧に丁寧に、何も説明しないこと。それに加えて菅原一秀・河井克行・河井案里のやったこと。
(2020年1月21日)

明けましておめでとうございます。

あらたまの歳のはじめ。さて、本当にめでたいと言うべきか。あるいは、めでたくもないのだろうか。

今、表立っての軍事衝突はなく、国内には曲がりなりにも平和が続いている。軍国主義の謳歌という状況もなく、独裁というほどの強権支配もない。国民の多くが飢えに苦しんでいるわけではなく、国家財政の目に見える形での破綻もない。国民がなだれを打って海外に逃れるような現象はなく、近隣隣国からの大量難民の流入もない。国民の平均寿命は延びつつある。これをめでたいと言って、おかしくはない。

しかし、この「平和」には危うさがつきまとっている。嫌韓ヘイト本が書店の棚を埋めつくしている。国威を興隆せよ、そのための軍事力を増強せよ、自衛隊を闘える軍隊にせよという乱暴な声が大きい。その勢力の支持を受けた安倍晋三という歴史修正主義者が、いまだに首相の座に居座り続けている。しかも彼は、この期に及んでなお、改憲の策動を諦めていない。少なくとも、諦めていないがごとき言動を続けている。

のみならず、天皇という存在が、民主主義の障害物として大きな存在感を示し始めてもいる。表現の自由が侵蝕されつつあり、三権分立は正常に機能せず、政権におもねる司法行政が裁判官の独立を侵害して「忖度判決」が横行している。明らかに格差が広がり貧困が蔓延している。人の自律性は希薄になって、政治への参加や、デモ・ストは萎縮している。社会を革新する労働運動の低迷はどうしたことだろうか。教育は競争原理を教え込むことに急で、連帯や団結を教えない。社会変革の主体を育てるという視点はない。保守政権が望むとおりのものとなっている。これがめでたいとは、とうてい言えない。

改めて思う。実定憲法とは、法体系全体の理想でもある。この理想に照らして、今現実は理想との距離を縮めつつあるのか、それとも拡げつつあるのだろうか。常に、その意識が必要なのだ。

分野によって一律ではないが、現政権の悪法ラッシュによって、この乖離は確実に拡大しつつあるといわざるを得ない。手放しで「お目出度い」などととうてい言ってはおられないのだ。

しかも、この理想そのものを変えてしまえと言うのが安倍政権であり、これを支える人々の乱暴な意見なのだ。まずは、改憲志向政権を退陣に追い込んで、掲げる理想を守ることが、なににもまして重要な今年の課題というべきであろう。

昨年は天皇交替と元号変更の騒がしい歳だった。この騒がしさは、今年も東京五輪に引き継がれる。国威発揚の舞台としてのオリンピック、ナショナリズム発揚のためのオリンピックを批判し続けねばならない。

毎日更新を宣言して8年目となる当ブログ。温かいご支援をいただくようお願いを申しあげます。
(2020年1月1日)

「安倍改憲スケジュール断念」という当面の勝利。

今朝(12月7日)の毎日朝刊が、大きく報道している。「改憲『20年施行』断念」「首相、任期中こだわらず」

 安倍晋三首相は憲法改正を巡り、自らが目指した「2020年改正憲法施行」を断念した。相次ぐ閣僚の辞任や首相主催の「桜を見る会」の問題で野党の反発が高まり、改憲の手続きを定める国民投票法改正案の成立が見送られ、20年施行が困難となったためだ。首相は自民党総裁任期が満了する21年9月までに国民投票実施を目指す目標に事実上修正する方針。任期中の施行にこだわらない姿勢を示し、野党の協力を得たい考えだ。複数の与党関係者が明らかにした。

 ニュースソースの「複数の与党関係者」が誰かは不明だが、毎日がこう書くのだから間違いはなかろう。また、毎日がこう書けばこのような流れになるだろう。2017年の5月3日に始まった「安倍改憲」の妄動は、とりあえず押さえ込んだ。ひとまずは、「バンザイ」と小さく叫ぼう。

今臨時国会の会期は12月9日(月)に会期末を迎える。野党は結束して、「桜疑惑」追求をテーマに40日間の会期延長を求めているが、与党は応じようとしていない。予定どおりに9日閉会となれば、またまた、改憲手続きは1ミリも進むことなく、次の会期に持ちこされることになる。

今国会では、参院憲法審査会での実質審議はなかった。衆院憲法審査会では、衆欧州各国調査議員団の報告を踏まえてのフリートーキングは3回開かれたものの、自民党改憲案の提示も、国民投票法の改正案審議もまったくできなかった。来年(20年)の通常国会での改憲策動に警戒は必要だが、安倍改憲策動に勢いはない。

2年前の5月3日、安倍晋三は日本会議幹部の口移しに、9条1項と2項に手をつけることなく、自衛隊を憲法に書き込む「安倍9条改憲」を打ち出した。彼なりに、「改憲実現のために大きく譲歩した現実性ある改憲案」のつもりであったろう。しかし、それでも国民から「改憲ノー」を突きつけてられたのだ。

安倍がぶち上げたのが「2020年施行」である。「東京五輪・パラリンピックが開催される2020年を日本が新しく生まれ変わるきっかけにすべきだ」というわけだ。五輪と改憲、どう関わるのかさっぱり分からぬが、「東京五輪・パラリンピック」がダシに使われ、結局は思惑外れとなった。

安倍晋三はようやく、自らの改憲提案実行の不可能なことを認めて、「20年施行断念」「首相、任期中こだわらず」となったわけだ。もちろん、彼は「改憲断念」とは言えない。言えば、彼を支えている右派・右翼から見離される。

毎日はこうも報道している。

 首相はスケジュールを見直し、時間をかけて野党の協力を得る方針に転換した。自民党幹部は「首相は改正憲法の施行までいかなくても、改憲の道筋を付けたいと考えている」と述べた。

 何げない書きぶりの記事だが、安倍晋三の改憲への執念が伝わってくる。国民が望んで憲法改正の論議が始まっているのではない。国民の改憲を求める声は極めて小さいのだが、首相だけが突出し、焦って改憲策動に必死なのだ。もとより、改憲は、首相の仕事ではない。首相は、主権者である国民から与えられた命令である憲法を、尊重し擁護すべき立場ではないか。気に入らない憲法は遵守せずに改憲するのだ、というのだから、まことに困ったアベ晋三なのである。

モリ・カケに続いての桜疑惑。そして閣僚辞任、入試問題、FTAに給特法である。改憲提案など、やれる状況であるはずもない。

さて、ここまでは、改憲阻止勢力の優勢で水入りである。改めて、仕切り直して、通常国会での取り直しの一番が始まる。先行きに安易な楽観は許されないが、見通しけっして暗くはない。ほのかに桜色さえ、見えるではないか。
(2019年12月7日)

「山高きが故に貴からず」「アベ長きが故に大きな迷惑」

9月8日深夜から9日未明に、台風15号が関東を直撃した。週明けの9日(月)には首都圏一円の交通機関混乱一色の報道となり、10日以後本日(9月12日)に至るも、千葉の大規模停電と断水が大きな話題となっている。

第4次安倍再改造内閣は、このような時期を見計らったように発足した。慌てふためいて首相自ら災害地に飛んで見せ、組閣を遅らせるなどというパフォーマンスも不要とする政権の傲慢ぶりを見せつけてのことである。「何をしようが、内閣の支持率は下がらない」。そう、国民は完全に舐められている。国民は、そんな内閣の存続を許してきたのだ。

昨年(2019年)の「赤坂自民亭」事件を思い出す。7月5日夜、熊本が未曾有の水害に襲われたその最中に、安倍晋三以下の与党首脳がこぞって,赤坂の議員宿舎で酒盛りをしていたというあの事件。世人がこれを知ったのは、西村康稔なる自民党議員(当時官房副長官)がツイッターで赤い顔の安倍晋三以下のスナップをネットにアップしてのことである。言わば、証拠写真の社会への提供。その西村が、今度は経済再生担当大臣である。

さて、今回の組閣ならびに党役員人事に関して、昨日(9月11日)の首相記者会見冒頭のコメントでこう発言した。

 内政、外交にわたる各般の挑戦を進め、令和の時代の新しい日本を切り開いていく。そして、その先にあるのは、自民党立党以来の悲願である憲法改正への挑戦です。いずれも困難な挑戦ばかりでありますが、必ずや、成し遂げていく。そう決意しています。

 「内政、外交にわたる各般の挑戦を進め、令和の時代の新しい日本を切り開いていく」は、この人らしい、まったくの無内容。要は、「自民党立党以来の悲願である憲法改正への挑戦」「困難な挑戦でありますが、必ずや、成し遂げていく。そう決意しています」とだけ言いたいのだ。

幹事社質問に対する彼の回答が次のとおりである。

「さきの参議院選挙では、常に私は、この選挙において、しっかりと憲法の議論を進めていくのか、あるいは議論すらしないのか。それを決めていただく選挙ですとずっと訴えてまいりました。その結果、私どもは国民の信を得ることができたと思いますし、最近の世論調査においても、議論はしなければいけないという回答が多数を占めているというふうに承知をしております。正に議論は行うべきというのが国民の声なんだろうと考えています。

 そうではなかろう。自民党は9議席を減らしたではないか。自民党が改憲についての国民の信を得るこことができたとの強弁は見苦しい。また、共同通信社が8月17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍首相の下での改憲に反対が52・2%と、賛成の35・5%を大きく上回っている。
さらに、最近のNHK世論調査でも次の結果が出ている。
 安倍総理大臣は、9月11日に内閣改造を行います。新しい内閣が最も力を入れて取り組むべきだと思うことを、6つの選択肢をあげて聞いたところ、
 「社会保障」が28%で最も多く、次いで、
 「景気対策」が20%、
 「財政再建」が15%、
 「外交・安全保障」と、
 「格差の是正」が11%、
 「憲法改正」が5%でした。
「正に議論は行うべきというのが国民の声」も、牽強付会と言うほかはない。

選挙でお約束したことを実行に移していくことが政治の責任であり、自民党としては本日発足をした新しい体制の下で憲法改正に向けた議論を力強く推進していく考えであります。それは党四役を含め、自民党の役員あるいは自民党の議員共通の考え方だと考えています。

約束とは当事者双方の意思の合致をいう。自民党が、「改憲をお約束した」と一方的に言っても、国民の側が改憲を依頼した覚えはない。成立していない「約束」を実行に移していくことは政治の責任ではない。自分だけがやりたいことを勝手にやらせていただくと駄々をこねているだけのこと。

 なお、質問には、「党の憲法改正推進本部長にはどのような人物を起用するお考えなのでしょうか。」があったが、これには答えない。完全スルーだ。質問者も、重ねての質問をしない。これでは困ったものだ。

令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定に向かって、衆参両院の第一党である自民党、今後、憲法審査会において強いリーダーシップを発揮していくべきだろうと、私は考えております。

 安倍くん、今キミは首相として記者会見をしている。お分かりかね。キミは、憲法99条によって、憲法の尊重擁護義務を負っている身だ。それが、勝手に国民の声を僭称して改憲の議論を進めようとは、なんたること。少しは、自分の立場を弁えたまえ。

自民党は、既に憲法改正のためのたたき台を示しています。このたたき台については、既に党大会で承認をされた党としての意思となっていると思いますが、立憲民主党を始め、野党各党においても、それぞれの案を持ち寄って憲法審査会の場で憲法のあるべき姿について、与野党の枠を超えて活発な、国民が注視している、注目をしているわけでありますから、その期待に応えるような議論をしてもらいたいなと期待をしています。
また、国民投票法の改正案については、憲法審査会の場で、与野党でしっかりと議論していただきたいと期待をしていますが、同時に、憲法改正の、先ほど申し上げましたように、中身についても議論をしていくことが、やはり国民の皆様に求められているのではないかと、このように思います。」

 「自分の方は、憲法改正案のたたき台を作った」「だから、あなたも作るのが当然」だという、何と身勝手な世間には通用しない議論。何を焦っているのやら。

安倍首相は2019年11月には在職期間が戦前の桂太郎を超え、歴代一位となる見込みだという。東京新聞社説は、これを「長きをもって貴しとせず」といい、「国民やその代表たる国会と謙虚に向き合い、政治の信頼を回復する。そんなまっとうな政治姿勢こそ安倍政権には求められている」と結んでいる。まことにそのとおり。

 安倍晋三ほどに尊敬されざる政治家も少ない。政治の私物化、行政の私物化、ウソとゴマカシ、食言、歴史修正主義、オトモダチ優遇,上から目線、トランプ追随、詐欺的演説でのオリンピック誘致…。これほどの批判、非難にかかわらず、永らえてきたことの不思議。もう、いい加減に終止符を打ちたい。

たまたま手許に、映画『記憶にございません!』のチラシがある。チラシのトップに、「この男に任せて」
「あなたは、第127代内閣総理大臣 国民からは、史上最悪のダメ総理と呼ばれています。総理の記憶喪失は、トップシークレット、我々だけの秘密です」

もちろん架空の設定だが、「史上最悪のダメ総理」は大いに現実とかぶるところ。まことに「アベ長きがゆえに迷惑」ではないか。
(2019年9月12日)

安倍改憲阻止のために(その1)

※はじめに
本日(8月17日)の学習会。ご指定のタイトルが、「改憲阻止のために」。
そして、次のテーマに触れるよう、事前のご注文をいただいています。
第1 改憲の危機・情勢等
第2 立憲主義・個人の尊厳等
第3 天皇代替わり関連のこと

以上の第1が、「憲法をめぐる政治情勢」。第2が「憲法の構造をどう理解するか」という基本問題。そして、第3が象徴天皇制をめぐるトピックのテーマと理解して、報告を進めます。

なお、かなり長いので、第1を本日(8月17日)、第2・第3を明日(8月18日)の各ブログにアップいたします。

第1 改憲の危機・情勢等
1 憲法をめぐる大状況
実は、改憲の危機はこれまで常にあったし現にある、と言わねばなりません。日本国憲法成立以来、憲法は一貫して危機にあったのです。
自民党が、「自主憲法制定は結党以来の党是」としている如く、戦後の保守政権は、一貫して憲法を敵視し、あわよくば改憲を狙い続けてきましました。
ほぼ一貫して、このような保守政権を支え続けてきたのが国民であり、また、改憲策動を許さず、憲法を守り抜き、定着させてきたのもまた国民です。
改憲反対の側から見れば、保守が邪魔とする憲法であればこそ、護るべき意義があると言えると思います。

2 安倍政権の改憲志向
その保守のホンネを語る貴重な文化財が自民党改憲草案(12年4月27日)です。そのようなホンネを恥ずかしげもなく実現しようとする真正右翼・改憲主義者が政権を把握しました。それが、安倍晋三です。
安倍政権とは、
国家主義・軍事大国主義・歴史修正主義・新自由主義を理念とし、
「親大日本帝国憲法・叛日本国憲法」路線の政権です。

3 「安倍改憲」提案の経過
☆安倍ら改憲派にとっては、明文改憲が必要なのです。戦争法(安保関連法)はようやく成立させたけれど、憲法9条の壁を乗り越えられず、「不十分なもの」にとどまっている。「フルスペックの集団的自衛権行使」はできないままとなってる。今のままでは、同盟国・アメリカの要請に応じての海外派兵はできない。だから、何とかしての「9条改憲」なのです。
☆しかも、改憲ができそうな情勢ではありませんか。改憲派が、各院の3分の2を超える議席をもっている。今のうちなら、改憲の現実性がないとは言えません。
☆2017年5月3日 安倍は、右翼改憲集会へのビデオ・メッセージを送り、同時に読売新聞紙面で、「アベ9条改憲」を提案します。ご存じのとおり、現行の9条1項2項には手を付けず、そのまま残して、「自衛隊を憲法に明記するだけ」の改憲案です。この改憲を実現して、2020年中に施行するというのです。
☆実は、その種本は、日本会議の伊藤哲夫「明日への選択」に掲載された論文です。
彼は、一方では、「力関係の現実」を踏まえての現実的提案としていますが、もう一つの積極的な狙いを明言しています。「護憲派の分断」という戦略的立場です。
つまり、これまでの護憲派の運動は、「自衛隊違憲論派」と「自衛隊合憲(専守防衛)派」の共闘で成立している。この両者の間に楔を打ち込むことが大切だというのです。
☆その1年後の2018年3月25日、自民党大会がありました。予定では、この大会までに党内意見を一本化して、華々しく9条改憲を打ち上げる手筈でした。何とか、改憲原案については党内の「憲法改正推進本部長一任」までは取り付けましたが、全然盛り上がらない。現実には4項目の「たたき台・素案」作成にとどまるものでした。
☆その後速やかに、改憲諸政党(公・維)と摺り合わせ→「改正原案」作成、の予定とされていましたが、現在与党内協議さえ、まったく緒についていない現状です。
☆当初は、2018年秋の臨時国会にも、「改正原案」上程の予定でした。
衆院に『改正原案』発議→本会議→衆院・憲法審査会(過半数で可決)
→本会議(3分の2で可決)→参院送付→同じ手続で可決
『改正案』を国民投票に発議することになる。
☆60~180日の国民投票運動期間を経て、国民投票に。
国民投票運動は原則自由。テレビコマーシャルも自由。
有効投票の過半数で可決。
☆「安倍のいるうち、両院で3分の2の議席あるうち」が、改憲派の千載一遇のチャンスなのです。裏から見れば、安倍を下ろすか、各院どちかでも3分の2以下にすれば良い、と言うことなります。
☆そのような視点からは、2019年7月の参院選→改憲派の3分の2割れは由々しき事態です。しかも、自民は9議席減らして、相対的に公明の発言力が強くなっていますが、その公明が世論の動向を気にして、改憲協議に応じようとはしないのです。
☆しかも、現在、衆参両院の憲法審査会は機能していません。これを無理やり動かそうとした下村博文が、却って与野党の関係者から批判を浴びている現状です。大島衆院議長を批判した萩生田光一も肩身の狭い思いを強いられています。

4 「安倍9条改憲」の内容と法的効果
★「自民党改憲草案・9条の2」は、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。」という勇ましいものです。自衛隊ではなく、堂々の国防軍をもちたいのです。これが、安倍晋三のホンネ。
★さすがにそれは無理。「たたき台素案・9条の2」はこうです。「前条(現行憲法9条)の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛隊を保持する。」
☆安倍改憲では、堂々の国防軍は持たない。「自衛のための実力組織」としての自衛隊しか持ちません。しかし、よく読めばお分かりのとおり、9条1項2項の規定はそのまま置かれることにはなりますが、新しい定義の自衛隊を持てるというのです。これは、現行の9条を死文化することになります。自衛隊の中身は、時の多数派の意向次第。
「従って、本来ないはずの軍事力」が明文で合憲化されます。軍事の公共性が認められることにもなります。自衛隊員募集協力への強制や、土地収用法・騒音訴訟・戦争被害賠償訴訟にも、沖縄・辺野古基地関連訴訟にも大きく影響します。
☆しかも、戦争法を合憲化し、集団的自衛権行使が可能となり、海外派兵も容易になります。

5 緊急事態条項の危険性
制憲国会での金森徳次郎の次の答弁が示唆的です。
「緊急事態条項は、権力には調法だが、民主主義と人権には危険」

だから、新憲法には、緊急事態条項を盛り込まなかったのです。

権力と民主主義、調法と危険は、相反するのです。

(2019年8月17日)

74回目の「敗戦の日」を目前に

ご近所の皆様、本郷三丁目交差点をご通行中の皆さま。こちらは平和憲法を守ろうという一点で連帯した行動を続けております「本郷・湯島九条の会」です。私は近所に住む者で、憲法の理念を大切にし、人権を擁護する立場で、弁護士として仕事をしています。

真夏の真昼時、まことに暑いさなかですが、平和を守ろう、憲法9条を大切にしようという熱い願いの訴えです。少しの時間耳をお貸しください。

74年前の8月、東京は度重なる空襲で焼け野原となっていました。1945年8月15日正午、国民に敗戦を知らせる天皇の言葉が、NHKラジオの電波に乗って焼け跡の東京に響きました。国力を傾け尽くし、310万人の自国民死者と、2000万人にも及ぶ近隣諸国の犠牲者を出した末に、ようやくにして悲惨な侵略戦争は終わりました。

こんな戦争を始めなければ、もっと早く戦争を終わらせていれば、何百万もの貴重な命が失われずに済んだはずなのです。多くの人の戦死による記録が残されていますが、とりわけ住民を巻き込んでの地上戦となった沖縄の体験は悲惨でした。沖縄では、多くの中学生・女学生が戦場に動員されなくなりました。

第一高女と師範女子部からなる「ひめゆり学徒隊」の悲劇が有名ですが、実は9校あったすべての高等女学校の生徒が動員されています。第二高女の4年生は、45年の3月から「白梅学徒隊」として、第24師団の野戦病院に配属されました。

読売新聞社会部が1980年に「沖縄 白梅の悲話」という記録集を出版しています。その中から、戦死した二人の女学生の例を紹介いたします。いずれも、15才か16才の年齢。その若さで認めた家族への手紙が事実上の遺書となって記録されています。その内容に驚かされます。

お一人は、大嶺美枝子さん。
白梅学徒隊は、6月4日に現地解散し、「各自行動」の指令となります。その後間もない9日の夜、大嶺さんは直撃彈で戦死。彼女は、動員直前に、母親宛の手紙を書いています。

「お母様、いよいよ私達女性も出動できますことを心から喜んでおります。お母様も喜んで下さい。『皇国は不滅である』との信念に燃えて生き延びてきました。軍と協力して働けるのはいつの日かと待っておりましだ。いよいよそれが報いられたのです。いま働かねばいつの日働きますか。私は暖かいお母様のお教えを生かして一人前の立派な日本女性となる覚悟で居ります。
お母様、私の身軆のすべてを大君に捧げたのです。男でも女でも忠を尽くす信念は一つです。私達の身軆は国が保証して下さるのです。何の心配もなさらないで下さい。散る時には立派な楼花となって散って行きます。その時には家の子は偉かったと賞めて下さいね。」

母親の感想は、掲載されていません。心中いかばかりだったことでしょう。

もう一人は、仲村渠幸子さん。終戦の前年1944年夏頃に、姉(第一次女子挺身隊として沖縄から滋賀の近江航空に動員されていた)に宛てた手紙が遺されています。
姉さん、戦いも益々熾烈を極め、サイパン島玉砕の報を知った時には熱い涙がこみあげ、宿敵米撃ちてし止まむの意気旺盛になり、今迄の生ぬるい生活を断然、制裁しております。
……那覇では近頃、疎開騒ぎで荷車や荷馬車が夜昼となくガラガラと大通りを行くのを見るにつけ此の沖縄が戦場化されると思うと私達が玉砕するのも今年中でせう。おばあさんは相変わらず頑固で、疎開なんかしませんので頼もしい。他府県の人は総引き上げで、級友は6名も転校してしまいました。私達は純粋なる琉球人ですから居残って、ヤンキー共の首の二つや三つは竹槍で刺し殺してから玉砕する覚悟です。上級学校希望も捨てました。代わりに女子整備兵を希望して大いに運動して居ります。~」

彼女の最期については、このようだったと言います。
「彼女は防衛隊の父の戦死を知った夜、『仇を討ってやる』と、石部隊の兵に混じり軍服を着てハチマキを締め斬り込みに行った。家族が止めても止めても聞かなかったという。どの様な最後であったか不明のままである。」

生き残った元学徒からは、その悲劇の原因として、皇民化教育が語られています。無数の悲劇を重ねて、1945年8月15日、戦争が終わります。1931年から始まった長い長い戦争でした。再び、この戦争の惨禍を繰り返してはならない。多くの人々の切実な思いが、平和憲法に結実しました。とりわけその9条が、再びの戦争を起こさないという国民の決意であり、近隣諸国への誓約でもあります。

大日本帝国憲法は戦争を当然の政策と考えた、軍国主義憲法。主権者である天皇の名による戦争を神聖で正当なものとし、国民に戦争参加の義務を押し付けた憲法でした。戦後の日本国民は、きっぱりとこの好戦憲法を捨て去り、平和憲法を採択したのです。以来74年、私たちの国は戦争をすることなく、過ごしてきました。

日本国憲法は、戦争を放棄し戦力を保持しないことを憲法に明確に書き込みました。それだけではなく、この憲法には一切戦争や軍隊に関わる規定がありません。9条だけでなく、全条文が徹頭徹尾平和憲法なのです。戦争という政策の選択肢を持たない憲法。権力者が、武力の行使や戦争に訴えることのないよう歯止めを掛けている憲法。それこそが平和憲法なのです。

ところが、歴代の保守政権は、この憲法が嫌いなのです。とりわけ、安倍政権は憲法に従わなければならない立場にありながら、日本国憲法が大嫌い。中でも9条を変えたくて仕方がないのです。

彼が言う「戦後レジームからの脱却」「日本を、取り戻す」とは、日本国憲法の総体を敵視するという宣言にほかなりません。「戦後」とは、1945年敗戦以前の「戦前」を否定して確認された普遍的な理念です。人権尊重であり、国民主権であり、議会制民主主義であり、なによりも平和を意味します。戦後民主主義、戦後平和、戦後教育、戦後憲法等々。戦前を否定しての価値判断にほかなりません。安倍首相は、これを再否定して「戦前にあったはずの美しい日本」を取り戻そうというのです。

戦後74年、日本国憲法施行以来72年、国民は日本国憲法を護り抜いてきました。それは平和を守り抜くことでもありました。そうすることで、この憲法を自らの血肉としてきました。平和は、憲法の条文を護るだけでは実現できません。国民の意識や運動と一体になってはじめて、憲法の理念が現実のものとして生きてきます。平和憲法をその改悪のたくらみから護り抜き、これを活用することによって恒久の平和を大切にしたいと思います。

そのため、安倍9条改憲を阻止して、「戦後レジームからの脱却」などというふざけたスローガンを克服して行こうではありませんか。夏、8月、暑いさなかですが、そのような思いを新たにすべきとき。憲法9条と平和を大切にしようという訴えに、耳をお貸しいただき、ありがとうございました。

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各 位

「本郷・湯島九条の会」石井 彰

強烈な炎天下での昼街宣になりました。平和運動の方、文京労連の方もご参加いただき13名の方々がマイクでの訴え、署名、リーフ配布とみなさん大活躍でした。みんな汗びっしょりです。ほんとうに頭が下がります。

三度の大戦許すまじの熱い思いた熱暑を払い除けての活躍です。こんな素晴らしい仲間がいることを誇らしく思います。お盆でいつもより人通りは少なくても多くの方が訴えに耳を傾けていただきました。

来月は9月10日(火)12時15分~です。多くの方のご参集をお待ちしています。炎暑はまだ続きます。御身専一にお過ごしくださるようお願い申し上げます。

(2019年8月13日)

第58回日本民主法律家協会定時総会 ― 新たな憲法情勢をめぐって。

昨日(8月4日)、一入暑い夏の盛りに、日本民主法律家協会・第58回定時総会が開催された。自ずと主たる議論は、改憲情勢と、改憲情勢に絡んでの参議院選挙総括に集中した。そして、「相磯まつえ法民賞」受賞対象の各地再審事件弁護団が語るホットな再審審理状況と裁判所のありかた、さらに降って湧いたような「表現の不自由展」の中止問題が話題となった。

冒頭に、渡辺治・元協会理事長から、「参院選の結果と安倍改憲をめぐる新たな情勢・課題」と題した記念講演があった。参院選の結果は安倍改憲を断念させるに至っていない。情勢は引き続いて厳しいという大筋。「法と民主主義」(8・9月合併号)に掲載の予定となっている。

政治状勢も、国際情勢も、憲法情勢も、けっして明るくはない。それでも、総会や法民賞授賞式、懇親会での各参加者の発言が実に多彩で、元気に満ちていた。年に一度、こうして集う意味があることを確認した集会となった。

名古屋から参加した会員が、「表現の不自由展」の中止問題を生々しく語り、誰もが由々しき問題と受けとめた。右翼に成功体験をさせてはならない。現地での取り組みにできるだけの支援をしたい。

伝えられる内容の脅迫電話による展示の中止は、明らかに威力業務妨害である。脅迫電話の音声を公開し、速やかな告訴があってしかるべきで、刑事民事の責任を追及しなければならない。こんなときこそ警察の出番ではないか。この件の経験を今後の教訓とすべく、詳細な報告が欲しい。

採択された、憲法問題と司法問題での2本の「日本民主法律家協会第58回定時総会特別アピール」をご紹介して、総会の報告とする。

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 2019参院選の成果を踏まえ、市民と野党の共闘のさらなる前進で、安倍改憲に終止符を

 2017年5月3日の安倍首相の改憲提言以来、自民党は、改憲勢力が衆参両院で3分の2を占める状況に乗じて、さまざまな改憲策動を繰り返してきました。しかし、市民の運動とそれに支えられた野党の奮闘により、改憲発議はおろか改憲案の憲法審査会への提示すらできずに2年が過ぎ、この参院選で改めて3分の2の維持をはかるしかなくなりました。選挙戦での安倍首相の異様な改憲キャンペーンは、その証左です。
ところが、改憲勢力は発議に必要な3分の2を維持できませんでした。この3分の2を阻止した直接の要因は、市民と野党の共闘が、安倍政権による改憲反対、安保法制廃止をはじめ13の共通政策を掲げて32の一人区全てで共闘し、前回の参院選並みの10選挙区で激戦を制して勝利するなど、奮闘したことです。また、「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」が提起した3000万署名の運動が全国の草の根で取り組まれ、私たち日民協も参画する「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は、自民党の改憲案の危険性をいち早く解明し、政党やマスコミへの働きかけ、バンフの発行や集会などを通じて、安倍改憲に反対する国民世論を形成・拡大する上で大きな役割を果たしてきました。
それでも、安倍首相は改憲をあきらめていません。それどころか、選挙直後の記者会見で「(改憲論議については)少なくとも議論すべきだという国民の審判は下った」などと述べて、改憲発議に邁進する意欲を公言しています。「自民党案にこだわらない」とも強調することで、野党の取り込みをはかり3分の2の回復を目指すなど、あらゆる形で改憲の強行をはかろうとしています。しかし、参院選の期間中もその後も、「安倍政権下の改憲に反対」が世論の多数を占めていることに確信を持ちましょう。
いま、安倍9条改憲を急がせる国内外の圧力が増大しています。アメリカは、イランとの核合意から一方的に離脱して挑発を繰り返した結果、中東地域での戦争の危険が高まっています。トランプ政権は、イランとの軍事対決をはかるべく有志連合をよびかけ、日本に対しても参加の圧力を加えています。こうしたアメリカの戦争への武力による加担こそ、安倍政権が安保法制を強行した目的であり、9条改憲のねらいです。辺野古新基地建設への固執、常軌を逸したイージスアショア配備強行の動きも9条破壊の先取りにはかなりません。
私たち日本民主法律家協会は、こうした安倍改憲の企てに終止符を打つべく、今後とも「改憲問題対策法律家6団体連絡会」や「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」の活動に邁進するとともに、市民と野党の共闘のさらなる前進に協力していくことを、ここに宣言します。

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「国策に加担する司法」を批判する

 司法の使命は、憲法の理念を実現し、人権を保障することにあります。司法は、立法からも行政からも、時の有力政治勢力からも毅然と独立して、憲法に忠実にその使命を果たさなくてはなりません。その司法の使命に照らして、長く司法の消極性が批判されてきました。違憲判断があるべきときに、司法が躊躇し臆して、違憲判断を回避してきたとする批判です。その司法消極主義は、戦後続いてきた保守政権の政策を容認する役割を果たし、憲法を社会の隅々に根付かせることを妨げてもきました。
そのため、砂川事件大法廷判決(1959年12月16日)に典型的に見られる司法消極主義を克服することが、憲法理念実現に関心を寄せる法律家の共通の課題と意識されてきました。ところが、近時事態は大きく様変わりしていると言わねばなりません。
2018年10月に開催された、当協会第49回司法制度研究集会のメインタイトルは「国策に加担する司法を問う」というものでした。司法は、その消極主義の姿勢を捨て、むしろ国策に積極的に加担する姿勢に転じているのではないか、という衝撃的な問題意識での報告と討論が行われました。
その先鞭として印象的なものが、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う「海面埋め立ての可否をめぐる一連の訴訟です。とりわけ、国が沖縄県を被告として起こした「不作為の違法確認訴訟」。国は、翁長雄志知事(当時)による「前知事の埋立承認取り消し」を違法として、撤回を求める知事宛の指示を出し、知事がこれに従わないとして提訴しました。一審となった福岡高裁那覇支部への提訴が2016年7月22日、判決が9月16日という異例の超スピード判決。その上告審も、国への手厚い慮りで、同年12月20日判決となり国の勝訴が確定しました。「海兵隊航空基地を沖縄本島から移設すれば、海兵隊の機動力、即応力が失われることになる」とする国の政治的主張をそのまま判決理由とした福岡高裁那覇支部の原判決を容認したのです。
また、同じ時期に言い渡された、厚木基地騒音訴訟最高裁判決は、夜間早朝の飛行差し止めを認めた1、2審判決を取り消し、住民側の請求を棄却しました。「自衛隊機の運航には高度の公共性がある」としてのことで、国策の根幹に関わる訴訟での、これまでにない積極的な国策加担と指摘せざるを得ません。
以来、原発訴訟、「日の丸・君が代」強制違憲訴訟などで、最高裁の「親政権・反人権」の立場をあからさまにした姿勢が目立っています。最近では、地裁・高裁での再審開始決定を破棄した上「再審請求棄却」を自判した大崎事件の特別抗告審決定(2019年6月25日)、また、現職自衛官が防衛出動命令に従う義務はないことの確認を国に求めた戦争法(安保法制)違憲訴訟において「訴えは適法」とした2審・東京高裁判決を「検討が不十分」として破棄し、厳しい適法要件を設定して、審理を同高裁に差し戻した最高裁判決(同年7月22日)があります。
このような最高裁の姿勢は、最高裁裁判官人事のあり方と無縁なはずがありません。既に、最高裁裁判官の全員が第2次以後の安倍内閣による任命となっています。人権擁護の姿勢を評価されてきた弁護士出身裁判官が、必ずしも日弁連推薦枠内から選任されていないとも報道されています。最高裁裁判官の人事のあり方が重大な課題となっています。
私たち日本民主法律家協会は、こうした政権に擦り寄った司法を厳重に監視するとともに、国民のための司法制度確立のために、努力を重ねていくことを宣言します。

 (2019年8月5日)

前川喜平「僕の憲法改正案」を読む

一昨日(7月28日)の『東京新聞』「本音のコラム」欄に、前川喜平さんの「僕の憲法改正案」が掲載されている。これが興味深いので、ご紹介して多少のコメントを付したい。

まずは、最初に前川さんの断り書きがある。

 僕は安倍政権下での改憲には反対だ。4項目改憲案には、国民主権、平和主義、法の下の平等など柱となる原則を破壊する危険がある。改憲を議論するより、現行憲法が求める人権保障や国際協調を実現する努力をする方が先だ。

 「改憲の議論よりも、現行憲法理念実現の努力が先だ」というご意見。まったく、同感。この当然の発言が、安倍政権には、きつい皮肉になるという現実がある。
なお、解説するまでもなく、「安倍改憲4項目」とは、「自衛隊の明記(9条改憲)」「緊急事態条項」「合区の解消」「教育無償化」である。「安倍晋三の改憲提案だから危険で反対」でもあり、「提案されている具体的内容が憲法の柱となっている原則を破壊するものだから反対」でもあるというのだ。教育行政の専門家で人権保障を熱く語る前川さんが、「安倍の掲げる教育無償化」には反対ということに重みがある。

ただ、将来国民の中から憲法改正の機運が本当に盛り上がったときには、僕にも提案したい改正点がある。

前川さんは、改憲提案を語る前に、慎重に「将来国民の中から憲法改正の機運が本当に盛り上がったときには」という条件を置くことを忘れない。現実と理想をごっちゃにするとおかしくなるからだ。理想を語ることが許される環境においては、誰にも、自分なりの憲法を作ってみたい思いがある。かつて、自由民権運動は多くの私擬憲法を作った。けっして、日本国憲法が理想の憲法ではない以上、今なお、自分なりの理想の憲法案を作ってみることには、大きな意義がある。

さて、前川改正案の具体的内容だが、日本国憲法の全面改正構想の披瀝ではない。コラムのスペースの制約から最小限の「部分改正」提案にとどまるもので、内容は計7点ある。

 まず、第3章の標題を「国民の権利及び義務」から「基本的人権の保障」に変える。国民が国に義務を課すのが憲法なのだから、国民の義務を書く必要はない。

 まったく異存ない。「第3章 国民の権利及び義務」という標題はいかにも不自然。これは、現行憲法が大日本帝国憲法の改正手続としてなされた名残なのだ。旧憲法の第2章は、「臣民権利義務」であった。旧章名の「臣民」を「国民」に直して新章名としたのだ。臣民には主権者天皇に対する義務があって当然と観念されていた。中でも、20条の「兵役の義務」は、重要な憲法上の臣民たるの義務とされていたから、当時は「臣民義務」に何の違和感もなかった。
今、立憲主義の立場からは、第3章の表題を「基本的人権の保障」とすべきは当然であろう。
なお、旧憲法の第1章は当然ことながら「天皇」であった。新憲法では、第1章を天皇とするのではなく「国民主権」あるいは「基本的人権の保障」とすべきが当然。しかし、敢えて「第1章 天皇」が踏襲された。これも、実質は「新憲法の制定」ではあっても、形式は「旧憲法の改正」とされたからだ。新憲法では、天皇には何の権限も権能もないのだから、「天皇」の章は、「人権」「国会」「内閣」「司法」の後に置くべきであったろう。

 基本的人権はすべての人が生まれながらに持つ権利だから、その主体は国民に限られない。現在の10条(国民の要件)は、「基本的人権は国籍の如何を問わず保障する」と変える。

 現行憲法第3章の冒頭が「10条(国民の要件)」である。普通、この条文は「日本国籍」取得の要件と解されており、人権享有主体の要件を定めた条文とは考えられていない。では、この条文を受けた「国籍法」によって日本国籍を取得している「国民」以外は基本的人権の享有主体たり得ないか。そんなはずはなく、「外国人にも権利の性質上適用可能な人権規定はすべてその効力が及ぶ」とされている。
問題は参政権である。あるいは、公務員となる権利。「基本的人権は国籍の如何を問わず保障する」との条文明記となれば、外国籍の国内居住者にも、国政・地方を問わず選挙権・被選挙権を認め、あらゆる公務員職への採用を保障することが、条文改正の実益となろう。

 14粂(法の下の平等)では性的指向・性自認による差別も禁止し、24条の「両性の合意」は「当事者の合意」として同性婚を明確に認める。26条2項(義務教育)は「国は、すべての人に無償の普通教育を受ける機会を保障する義務を負う」とする。「義務教育」という言葉は消える。「知る権利」も明示する。

 14条・24条・21条・26条2項に関しての具体的条文改正提案。いずれも、文意明瞭であって、分かり易い。余人ならぬ、元文部科学次官の改正案として極めて興味深い。

 首相の解散権は制限する。53条の「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」があった場合の内閣の臨時国会召集義務に、20日間の期限を忖す。この点だけは自民党の改憲案と同じだ。

 蛇足だが、「自民党の改憲案と同じ」とは、「安倍4項目改憲案」のことではなく、2012年4月に公表された「自民党憲法改正草案」のこと。

自民党の公式Q&Aでは、こう解説されている。
53条は、臨時国会についての規定です。現行憲法では、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないことになっていますが、臨時国会の召集期限については規定がなかったので、今回の草案では、「要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない」と、規定しました。党内議論の中では、「少数会派の乱用が心配ではないか」との意見もありましたが、「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である」という意見が、大勢でした。

ところが、安倍内閣は、「当然なはずの、臨時国会の召集要求権を無視して、憲法上定めた少数者の権利を蹂躙」している。2017年6月22日、加計学園問題をめぐって野党4党は臨時国会の召集を要求したが、安倍内閣は「応じない方針」を押し通して同年9月28日の衆議院解散に至っている。

安倍内閣は、憲法軽視内閣なのだ。自党の憲法改正案も無視。前川改正案は、このときの怒りに基づいたもの。

いつの日か、前川喜平さんの「僕の全面憲法改正草案」を見たいものと思う。天皇制をどうするのか、権力による教育への不当な支配をどう制御するのか。在日外国人の民族教育の権利をどう条文化するか。また、安倍晋三第1次内閣によって改悪された教育基本法の復旧案についても。
(2019年7月30日)

交代すべきは衆議院議長ではない。政権こそ交代を。

今朝(7月28日)の毎日新聞朝刊の記事。萩生田・自民幹事長代行が、『改憲滞れば衆院議長交代』異例の言及」という見出し。「国会での改憲手続きが滞るようなら、衆院議長を交代させるぞ」という恫喝なのだ。なんたることか。

「自民党の萩生田光一幹事長代行は26日夜のインターネット番組で、国会で憲法改正の議論が停滞したままであれば大島理森衆院議長が交代する可能性に言及した。萩生田氏は安倍晋三首相の側近。改憲を巡る議論を進展させたいとの思惑があるとみられるが、衆院議長の交代は総選挙後に行われるのが慣例で、首相が意欲を示す改憲議論の停滞を理由に議長の進退に触れた発言は波紋を広げそうだ。」

朝日「『有力な議長置いて国会が改憲シフトを』 自民・萩生田氏」という見出しで、こういう記事にしている。

自民党の萩生田光一幹事長代行は26日夜のインターネット番組で、憲法改正に向けた国会運営について「憲法改正をするのは総理ではなく国会で、最終責任者は総理ではなく議長。有力な方を議長に置いて、憲法改正シフトを国会が行っていくのは極めて大事だ」との考えを示した。
出演者から改憲に向けた衆院議長の重要性を問われて答えた。そのうえで萩生田氏は、大島理森衆院議長について「立派な方だが、どちらかというと調整型。議長は野党に気を使うべき立場だが、気を使いながら(憲法審査会の)審査はやってもらうように促すのも議長の仕事だったと思う」とも指摘した。
安倍晋三首相は参院選を受け、改憲に向けた議論を加速させようとしている。首相側近として知られる萩生田氏が議長の役割の重要性に言及したことは、波紋を広げそうだ。

一議員が、自党から出している衆院議長の国会運営に注文を付け、交代もあり得ると脅かしたのだ。虚飾を剥いで分かり易く言えば、こういうことだ。

「大島理森議長よ、憲法改正問題の国会審議が停滞しているではないか。いったい何をグズグズしているんだ。あんたの姿勢は野党に対して弱腰に過ぎるではないか。事態がこのままで、憲法改正審議がこれ以上遅滞するようなら、審議促進のために、有力政治家に交代させることを考えねばならん」

到底、普通の議員ができる発言ではない。萩生田がこんなことを言えるのは、普通の議員ではないからだ。萩生田といえば、安倍晋三の伝声管。「萩生田氏は安倍首相が白いといえば黒でも白というほど忠誠心が厚い」と、言われる人物である。自分の声はなく、ひたすら安倍晋三の声を拡声して振りまくのが役どころ。

萩生田は単なるスピカーの音声。マイクに向かって喋っているのは安倍晋三。誰もがこう思っているから、首相発言として「波紋を広げそうだ」ということになる。

もっとも、波紋は二通りに考えられる。
ひとつは、安倍の思惑通りに大島議長が動くことだ。議長が改憲審議促進に積極的となり、憲法審査会もその意を体して動き出すという、安倍の意に沿った筋書きの通りの波紋。

しかし、そうなるとは限らない。むしろ、この発言は、改憲策動が進展しないことへの安倍の焦りとも、八つ当たりともとられる公算が高い。大島議長の反発を招くことは必至だし、安倍晋三の驕りに自民党内の結束が乱れる方向への波紋も考えられる。何よりも、野党と国民の反安倍感情を刺激することにもなる。

参院選の評価は人によって様々だが、自民党は大きく議席を減らし、改憲勢力が3分の2の議席をとれなかったことは厳然たる事実である。民意が、改憲を望むものでないことははっきりした。あらゆる世論調査や、候補者・議員アンケートが、改憲は喫緊の課題ではないことを明確にしている。

にもかかわらず、何ゆえ異例の議長交代までさせて改憲審議促進にこだわるのか。民意よりも、自分のイデオロギー優先の安倍晋三とその取り巻きへの批判が必要である。

言うまでもなく、内閣総理大臣とは、憲法を遵守し擁護しなければならない立場にある。にもかかわらず、自分の思いに適わぬ憲法条項を変えてしまえというトンデモ総理が、安倍晋三なのだ。

季節は、冷たい梅雨が去って猛暑の夏到来の様子である。生ものは、早く処理をしないと腐敗する。政権も、本来長くは持たないものだ。アベ政権は、疾うに賞味期限も消費期限も過ぎている。

促進すべきは、議長交代論議でも改憲論議でもなく、政権交代論議である。

なお、赤旗は「“安倍改憲へ衆院議長交代も”ネット番組 自民・萩生田氏が発言 憲法議論加速へ任期途中に」という見出しでの、一面トップ記事だった。

(2019年7月28日)

参院選、自民の後退で、改憲には一応の歯止め。

参院選が終わった。開票結果はけっして得心のいくものではない。祭りの後は大抵淋しいものだが、今回はまた一入。森友問題の追及にあれ程活躍した辰巳孝太郎(大阪選挙区)、弁護士として緻密な質疑を重ねてきた仁比聡平(比例区)両候補の落選に歯がみする思いで一夜を過ごした。

が、今朝になってすこしだけ落ち着きを取り戻している。まあ、最悪の事態は免れた。改憲策動にはブレーキを掛けた選挙結果とは言えるだろう。野党共闘の一定の成果は、今後の展望を開いたと言えなくもない。

選挙の総括は、多様な立場や視点でなされるが、今回は何よりも日本国憲法の命運の視点からなされなければならない。

参議院の定数は法改正あって248人だが、前回までは242人。今回は半数改選の定数が3増して124となった。非改選の121と合わせると、選挙後の議席総数は245となる。

だから、憲法改正発議に必要な3分の2は、164以上ということになる。

改憲勢力を自・公・維の3党と定義すれば、改憲3党の選挙前議席総数は160(自122・公25・維13)だった。これが、選挙後は157(自113・公28・維16)となった。定数3増での3議席減である。改憲発議に必要な議席数164には、7議席足りない。自・公・維以外に、無所属改憲派として3人を数えることができるとされているが、それを加えてもなお4議席足りない。

各党の消長は以下のとおりである。
 自民 選挙前総議席122 ⇒ 選挙後総議席113(9議席減)
     改選66議席 ⇒ 当選57(9議席減) 

 公明 選挙前総議席 25 ⇒ 選挙後総議席 28(3議席増)
     改選11議席 ⇒ 当選14(3議席増) 

 維新 選挙前総議席 13 ⇒ 選挙後総議席 16(3議席減)
     改選 7議席 ⇒ 当選10(3議席増) 

今朝の各紙トップの見出しは、「自公改選過半数」とならんで、「改憲勢力2/3は届かず」である。自民党の当選者数9減が、9条に追い風となっている。

「東京新聞」の論調が注目に値する。その見出しを拾ってみよう。
1面の黒抜き横の大見出しに「改憲勢力3分の2割る」。縦に「自公改選過半数は確保」。「20年改憲困難に」。2面と3面を通した横見出しに、「首相の悲願遠のく」「野党共闘一定成果」。社会面には、「9条守る決意の一票」。立派なものだ。

注目すべきは、共同通信の出口調査。見出しが、「安倍政権下での改憲 反対47% 賛成上回る」という記事。

「安倍政権下での改憲賛否」が、支持政党別にグラフ化されている。
自民党支持層では賛成73.7%だが、公明支持層では46.6%に落ちる。さらに意外なのは、維新支持層でも44.9%に過ぎないのだ。これでは、少なくとも「安倍政権下での改憲」は無理筋と言うほかはない。

安倍晋三よ。今回の選挙結果を「しっかりと(改憲の)議論をして行け、との国民の声をいただけたと思う」などと、ごまかしてはならない。改憲発議可能な議席は与えられなかったではないか。改憲を唱える自民党の議席を減らしたではないか。単独過半数も失った。「安倍政権下での改憲反対」と言うのが民の声なのだ。政権は、現行憲法に従わねばならない。政権の思惑で、改憲に先走ってはならない。民意が熟すのを待たずに、政権も与党も改憲を煽ってはならない。ましてや、民意が反対を明示しているにもかかわらず、改憲を強行しようなどとは、けっして許されざる所業である。
(2019年7月22日)

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