特定秘密保護法案ー反対世論は沸騰しつつある
本日(11月12日)の「毎日」は、一面トップに「特定秘密保護法案『反対』59%」の大見出し。これに「審議『慎重に』75%」と続いている。同紙が11月9、10両日に実施した世論調査の結果だ。心なし、誇らしげな紙面。
「毎日」は、特定秘密保護法案賛否の世論調査結果を10月4日にも発表している。その前回調査結果へのブーイングを同日付の当ブログで取りあげた。
https://article9.jp/wordpress/?p=1286
10月冒頭の前回調査では、特定秘密保護法「必要でない」は15%に過ぎず、「必要だ」が57%を占めた。同じ「毎日」が本日発表した調査結果は、賛否の数値が劇的に逆転している。秘密保護法案「反対」59%、「賛成」29%である。質問事項が精密になったこともあるが、明らかに世論はこの1か月で大きく動いた。「毎日」自身が、「国会審議などで法案の問題点が明らかになりつつあり、世論の慎重論につながったとみられる」と解説している。いっそうの宣伝活動を強めることによって、反対世論はさらに大きくなる。もうすぐ廃案に手が届く。その確かな手応えが感じられる。
毎日の今回調査は、1か月前の前回調査と比較して詳細であり、質問項目も増えている。今国会での審議の在り方についての質問と回答は重要だ。結果は、以下のとおり。
「今の国会で成立させるべきだ」 8%
「今国会にこだわらない慎重審議」 75%
「廃案にすべきだ」 11%
解説は、「(合わせて)86%が会期内成立に否定的」。しかも、「安倍内閣を支持する層では「慎重審議」は81%とさらに上昇し、自民支持層でも79%に達した。法案に賛成する層でも「慎重審議」は76%を占めている」としている。当ブログで「風向きが変り始めた」と紹介した共同通信の調査結果(10月28日)と符節が合っている。
さらに興味深いのは、「法案成立後、政府が都合の悪い情報を隠すおそれがあると思うかどうかを尋ねたところ、「思う」が85%を占め、政府の「情報隠し」への懸念が強いことを裏付けた」ということ。これは心強い。政府を信頼できないとする世論が85%で、「思わない」という頑固な政府信頼派の10%は除くとしても、この法案反対には9割の国民の声を揃えることが可能だとの示唆ではないか。
なお、「毎日」は、本日も「秘密保護法法案を問う」シリーズの社説第6弾を掲載している。「歴史研究」について「検証の手立てを失う」というもの。締めくくりが、「歴史研究が妨げられることは単に専門家たちの問題ではない。研究の積み重ねが、やがて教科書にも生かされ、国民全体に共有されていく。現代の専門家が困ることは、未来の国民が困ることにつながる」と、さすがに説得力がある。
「朝日」も本日の紙面で世論調査の結果を公表した。ここでも、次のとおり「反対」が「賛成」を上回っている。
特定秘密保護法案の賛否について聞いたところ、
「賛成」は30%で、
「反対」の42%の方が多かった。
「その他・答えない」は28%だった。
また、特定秘密保護法ができることで、秘密情報の範囲が広がっていく不安をどの程度感じるか、4択で尋ねると、「感じる」と答えた人は「大いに」19%、「ある程度」49%を合わせて68%にのぼった。「あまり感じない」は22%で、「まったく感じない」は5%だった。
本日は朝日も社説を書いている。「秘密保護法案 極秘が支えた安全神話」というもの。16年前に朝日が入手して報じた「原発テロ対策」から話しを始め、「原発の安全神話を支えたのは、秘密をつくりたがる官僚体質と、それを許した政府の不作為ではなかったか」と問題を提起している。これも肯ける。
その朝日に、「週刊朝日」の広告。その中に、「本誌は特定秘密保護法に反対します」との宣言文があって「運命の人 西山太吉氏の警告」の記事が掲載されている。これは良い。私も、「当法律事務所は特定秘密保護法に反対します」と宣言しよう。多くの人に続いてもらいたい。
また、各紙が、昨日(11日)なされた、テレビ番組に出演しているキャスターやジャーナリスト8人の記者会見と反対声明を大きく報じている。自発的に集まったという8人は、鳥越俊太郎、金平茂紀、田勢康弘、田原総一朗、岸井成格、川村晃司、青木理、大谷昭宏。これに、赤江珠緒、吉永みち子も名を連ねているという。この顔ぶれは凄い。どう凄いかはともかく、新聞を読まないテレビ族に影響は大きい。
この件を報じた「東京」は、「国家のヒミツ『息苦しく非民主的』ジャーナリスト会見」と見出を打った。
「田原さんは『秘密をチェックする機関もなく、内閣の承認で永遠に情報公開されない。こんなばかばかしい法律があってはならない』と厳しく批判した」「会見では秘密の範囲のあいまいさなどに不安の声が噴出。田勢康弘さんは『いつの時代も政府は拡大解釈し、隠し、ウソをつく。これを前提に考えるべきだ。これほど危ない法案はない』と述べた」「川村晃司さんは『正当な取材なら罪に問わないというが、正当かどうかを決めるのは国。メディア規制の法案だ』と指摘し、報道する側の萎縮効果を懸念した」「声明は『秘密の多い国家は息苦しく、非民主的。特定秘密保護法案の法制化を黙視できない』としている。声明に同調するが、名前を出せないというテレビ関係者もいるといい、金平茂紀さんは『この息苦しさこそ秘密保護法の本質。修正ではなく、廃案にすべきだ』と主張した」と報じている。
さらに、各紙が日本外国特派員協会(東京都千代田区)の、昨日(11日)付けの声明発表を報じている。日本外国特派員協会(東京都千代田区)とは、日本で取材する外国報道機関の特派員の団体で、約2千人が所属しているという。その特派員たちが日本の国会議員にもの申すのは、極めて異例のこと。日本で取材活動をする外国人記者にとって、他人事ではなく、自らの職業的使命に抵触し、場合によっては逮捕・起訴の危険を感じざるをえないということなのだ。
赤旗の報道は以下のとおり。要約しようと思ったが、ハサミを入れがたい。赤旗を講読していない方はぜひ目をお通しいただきたい。
日本外国特派員協会(ルーシー・バーミンガム会長)は11日、日本の国会議員にたいし、「『特定秘密保護法案』は報道の自由および民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告する」とした会長名の声明を発表しました。
声明は、同法案に「強い懸念を持っている」と表明。その理由として、記者を起訴と懲役刑の対象にしかねない条文と、それに準ずる一部与党議員の発言をあげています。
また、「政府と政治家の活動に関する秘密を明らかにして、国民に知らせることが調査報道の真髄だ」と述べ、「調査報道は犯罪行為ではなく、むしろ民主主義の抑制と均衡のシステムに不可欠な役割を果たしている」と強調しています。
声明は、法案の条文では「報道の自由」が憲法上の権利ではなく、「政府高官が、『充分な配慮を示すべき』案件にすぎなくなっていることを示唆している」と指摘。ジャーナリストへの脅し文句も含まれ、「これは報道メディアに対する直接的な威嚇であり、個別のケースにおいて許せないほどに拡大解釈ができる」「政府・官僚が存分にジャーナリストを起訴できるよう、お墨付きを与えることになる」と批判しています。
その上で、同法案の全面的な撤回または、「将来の日本の民主主義と報道活動への脅威をなくすような大幅な改定」を求めています。
以上のとおり、特定秘密保護法案に対する反対世論は沸騰し始めている。しかし、与党と安倍政権とは、反対世論の盛り上がりを恐れて、審理の打ち切りと早期の強行採決に持ち込むおそれがある。「自民党国対幹部は、『21日までに参院に送付する』と述べ、会期内成立の方針に変わりはないことを強調した」というのが、現在報じられている政府与党の審議予定状況。
11月21日(木)夕刻には、特定秘密保護法反対陣営総決起の日比谷野音大集会とデモ行進が予定されている。それまでの10日間に、どれだけの世論形成ができるか、時間との勝負の様相だ。
(2013年11月12日)