澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

祝・サガン鳥栖のユニフォームから「DHC」の文字が消えた ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第177弾

佐賀県の東端に位置して鳥栖市がある。「鳥栖(とす)」という地名には、他にない独特の古代の響きがある。昔は「鳥の巣」と言ったとのこと。九州陸路での交通の要衝であり、朝鮮通信使の立ち寄る場所でもあったという。

鳥栖は、私には懐かしい地名だ。父が奉職していた宗教団体の立教の地としてである。この教団は、戦前大きな勢力を誇っていたが、教義が不敬にあたるとして、天皇制政府から徹底した弾圧を受けて壊滅した。初代教組は不敬罪確定前に死亡し、2代目は有罪確定して下獄したが敗戦で釈放された。その2代教祖が、敗戦の翌年1946年に教団を再建した。その本部が置かれたのが鳥栖であった。幼いころ、父から、鳥栖という地名を何度も聞かされた。

その鳥栖をホームタウンとして、「サガン鳥栖」というプロサッカークラブが誕生したことは知っていた。しかし、誰がスポンサーであるかに関心はなかった。私が、DHCからスラップ訴訟を提起された後に、「サガン鳥栖」のメインスポンサーがDHCであることを知った。そのユニフォームの胸に、「DHC」の3文字が入っているのだ。

「DHC」とは、言うまでもなく「デマとヘイトのカンパニー」である。これにスラップまで加わって、3拍子揃った珍しい企業。そのDHCが「サガン鳥栖」のスポンサーになった事情については知らない。おそらくは吉田嘉明が唐津の出身であった縁からであつたろう。

鳥栖は、さして大きな街ではないが、「サガン鳥栖」はまぎれもなく、佐賀県を代表するスホーツチームである。今スポンサー一覧のリストを眺めるとなんと「佐賀大学」(国立)まで入っている。その佐賀県代表の選手の胸に「デマとヘイトのカンパニー」なのだから、佐賀県の恥ではないか。さすがに、文字には書きにくいが、佐賀に縁のある人にはそうしゃべってきた。

ところが、目出度いことに、DHCと「サガン鳥栖」との縁が切れた。2020年1月でDHCがスポンサーから撤退。2月からの「胸スポンサー」は佐賀新聞となった。「サガン鳥栖」の選手の胸に、DHCの3文字はなくなり、「佐賀新聞」が取って代わっている。

「デマとヘイトとスラップ」のDHCとの縁が切れたことを、佐賀県民のために、心から「おめでとう」と申しあげたい。これからは、サガンの選手から目を背けなくてもよくなるのだから。

なぜ、DHCがサガンから撤退したのか、その理由はよく分からない。よく分からぬままにネットを検索していたら、次の記事にぶつかった。2020年2月1日付のもの。原文のまま、一部を転載する。

【悲痛】J1鳥栖スポンサー相次ぐ撤退その真相は?胸スポのDHCまで!
DHCの吉田嘉明会長
DHCの吉田会長を調べると…色々なスキャンダルが出てきました。
吉田会長が政治家に資金をを貸し付けた事を弁護士がブログで批判した事で、吉田氏側から自由な言論を封じる脅し目的の訴訟を起こされ、精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めている。
吉田会長といえば、2014年にみんなの党・渡辺喜美氏に8億円もの供与し大問題に発展。渡辺氏を通じて安倍晋三首相にも接近しようとしていたとも言われている。
吉田氏が自社株を買い戻したときの金額を国税局が低すぎるとし約6億円の追徴課税を行った際には、処分取り消しの訴訟を起こしただけでなく、国税庁職員の調査によって精神的な苦痛を受けたとして国を相手に約1億4000万円の損害賠償訴訟を起こすなど、『けんかっ早いフィクサー』『ワンマン経営者』などと呼ばれてきた吉田会長。
1992年には六本木に元社長秘書をママに据えた会員制クラブを開店したことが「週刊新潮」で取り上げられている。
このようなスキャンダルが今回のスポンサー撤退理由になのかは解らないがDHC側に有るに[の]では無いかなとも思ってしまう。
DHCの商品は僕は好きなのでなんだか微妙な気分ですね。
DHC商品を一つ買えば、デマとヘイトの番組作りを後押しして、日本の民主主義が一歩後退することになる。反対に、DHC商品の購入を控えれば、デマとヘイトの番組作りは一歩後退し、日本の民主主義が一歩前進することになる。『DHC不買』運動は、デマとヘイトを抑制する民主主義運動なのだと2017年1月18日に記事になっていた。

このブロガーは率直に述べている。「このような吉田嘉明の度重なるスキャンダルが今回のスポンサー撤退理由だと断定はできないが、DHC側に問題があるのだろうと思えてしまう」と言うのだ。

《DHC商品を一つ買えば、デマとヘイトの番組作りを後押しして、日本の民主主義が一歩後退することになる。反対に、DHC商品の購入を控えれば、デマとヘイトの番組作りは一歩後退し、日本の民主主義が一歩前進することになる。『DHC不買』運動は、デマとヘイトを抑制する民主主義運動なのだ》は、私の文章である。このように拡散されていることは欣快の至りである。

「DHCスラップ訴訟」を許さない・シリーズを重ねて本日が第177弾。書き続ければ何らかの影響を確認できるようになる。書かなければ何も生まれない。DHCとの闘いはまだしばらく終わらない。本シリーズもまだまだ終わらせるわけにはいかない。
(2020年4月19日)

DHCスラップ反撃訴訟控訴審判決理由の素晴らしき判断 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第176弾

3月18日(水)に言い渡された「DHCスラップ『反撃』訴訟」控訴審判決。一審判決も会心の内容だったが、控訴審判決はさらに素晴らしいものとなった。これを不服としたDHC・吉田嘉明は、上訴期限最終日の4月1日(水)に、最高裁宛の上告状兼上告受理申立書を原審裁判所(東京高裁)に提出した。

4月7日(火)、東京高裁第5民事部から私宛に、上告提起通知書・上告受理申立通知書の特別送達があった。5月28日が、上告理由書・上告受理申立理由書の提出期限となる。

DHC・吉田嘉明が不服とする控訴審判決の主文は、「(DHC・吉田嘉明両名は連帯して、澤藤に対して)165万円を支払え」とするだけの素っ気ないものであるが、その判決理由において、DHC・吉田嘉明のスラップ提訴の違法を一審以上に明確に認めている点で、私にとって極めて満足度の高いものとなっている。

言うまでもないことだが、『スラップ訴訟の提起を受けて被告の立場で闘って請求棄却の勝訴判決を得ること』と、『スラップを違法と主張してスラップの張本人に損害賠償請求の『反撃』訴訟を提起して勝訴判決を得ること』とは、ハードルの高さが決定的に異なる。

スラップをかけられれば、売られたケンカ」として受けて立たざるを得ない。しかし、圧倒的にハードルの高い『反撃』訴訟を提起することには、誰しも躊躇を感じるところ。万が一にも高いハードルを乗り越えられないときのデメリットの影響を慮ってのことである。さらに、その背景には現在の裁判所への不信がある。判例の傾向が決して表現の自由という民主主義社会の根幹をなす大原則の擁護に親和的とは思えないのである。

私の場合も、『DHCスラップ訴訟』の判決が勝訴として確定したあと、直ちにDHC・吉田嘉明に対する『反撃訴訟』を提起したわけではない。いずれ時効完成までにはと思いつつも、煩わしい訴訟の提起には躊躇がなかったわけではない。ところが、DHC・吉田嘉明の方から、債務不存在確認訴訟の提起があって、2度目の「売られたケンカ」を買わざるを得ない立場となり、結果として満足すべき一審判決を得るに至った。

そして、『反撃』訴訟の一審判決に満足した私は、弁護団の意見もあって、敢えて控訴を見送った。DHC・吉田嘉明にとっては、わずか110万円の給付判決。これで確定するだろうという思いが強かった。ところが、DHC・吉田嘉明は控訴した。言わば、3度目の「売られたケンカ」である。私は、附帯控訴して一審以上に満足すべき控訴審判決を得た。

以上のとおり、この極めて満足すべき控訴審判決は、半ばはDHC・吉田嘉明の提訴・控訴のお蔭で獲得に至ったものなのだ。具体的には以下のとおりである。

DHC・吉田嘉明が、私のブログを名誉毀損と決めつける理由の最たるものは、以下のとおりである。

「控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が主張する(吉田嘉明の渡辺喜美に対する8億円貸付の)動機は,《脱官僚,規制緩和を掲げる政治家を応援するために8億円を貸し付けた》というものであるのに対して,被控訴人(澤藤)は、貸付動機を《金儲けのためだと断定している》ことが名誉毀損である。」

この8億円という巨額の裏金(政治資金収支報告書にも、選挙運動収支報告書にも未記載)の貸付動機についての私のブログでの記載が、DHC・吉田嘉明のいう「名誉毀損」言論であった。私はこう言ったのだ。6年前のブログの一部をそのまま抜粋する。

吉田嘉明なる男は、週刊新潮に得々と手記を書いているが、要するに自分の儲けのために、尻尾を振ってくれる矜持のない政治家を金で買ったのだ。ところが、せっかく餌をやったのに、自分の意のままにならないから切って捨てることにした。渡辺喜美のみっともなさもこの上ないが、DHC側のあくどさも相当なもの。両者への批判が必要だ。

DHCの吉田は、その手記で「私の経営する会社にとって、厚生労働行政における規制が桎梏だから、この規制を取っ払ってくれる渡辺に期待して金を渡した」旨を無邪気に書いている。刑事事件として立件できるかどうかはともかく、金で政治を買おうというこの行動、とりわけ大金持ちがさらなる利潤を追求するために、行政の規制緩和を求めて政治家に金を出す、こんな行為は徹底して批判されなくてはならない。

選挙に近接した時期の巨額資金の動きが、政治資金でも選挙資金でもない、などということはあり得ない。仮に真実そのとおりであるとすれば、渡辺嘉美は吉田嘉明から金員を詐取したことになる。
この世のすべての金の支出には、見返りの期待がつきまとう。政治献金とは、献金者の思惑が金銭に化したもの。上限金額を画した個人の献金だけが、民意を政治に反映する手段として許容される。企業の献金も、高額資産家の高額献金も、金で政治を歪めるものとして許されない。そして、金で政治を歪めることのないよう国民の監視の目が届くよう政治資金・選挙資金の流れの透明性を徹底しなければならない。

DHCの吉田嘉明も、みんなの渡辺喜美も、まずは沸騰した世論で徹底した批判にさらされねばならない。そして彼らがなぜ批判されるべきかを、掘り下げて明確にしよう。不平等なこの世の中で、格差を広げるための手段としての、金による政治の歪みをなくするために。(2014年3月31日)

この点を反撃訴訟の控訴審・秋吉判決は、こう判断している。

「控訴人吉田自身が,
平成20年3月27日付け日本流通産業新聞への特別寄稿において,控訴人会社の創業以来成長のー途をたどってきた健康食品市場の停滞につき指摘し,その主要な原因が厚労省による監視の強化にある旨を述べた上で,その解決のため,健康食品に関する議員立法を目指す国会議員の動きにつき「先生方には藁にもすがりたい思いである」として,立法による解決を期待する旨の意見を表明していたこと,

本件手記において,控訴人会社の主務官庁(厚労省)による規制が煩わしいものであったことを述べ,官僚機構の打破こそが今の日本に求められる改革であり,それを託せる人こそが私の求める政治家であると述べて,脱官僚を主張し,行政改革に取り組む渡辺議員と意気投合し,その選挙資金融資の依頼に応じて8億円を貸し付けたこと,

その後渡辺議員と決別したが,その志を援助するために行った貸付の意義についてもう一度彼自身に問うてみたいと記載していたことに照らせば,

本件貸付の動機,目的は,窮極的には規制緩和を通じて控訴人会社(DHC)の利益を図るものと推認できるのであって,仮に本件各記述が本件貸付の動機についての事実を摘示したものであったとしても,これが真実に反するということはできない。(中略)

前示のとおり,被控訴人(澤藤)の本件各記述が,いずれも公正な論評として名誉殼損に該当しないことは控訴人ら(DHC・吉田嘉明)においても容易に認識可能であったと認められること

それにも関わらず控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が,被控訴人(澤藤)に対し前件訴訟(DHCスラップ訴訟のこと)を提起し,その請求額が,当初合計2000万円,本件ブログ4掲載後は,請求額が拡張され,合計6000万円と,通常人にとっては意見の表明を萎縮させかねない高額なものであったこと,

控訴人吉田が自ら本件手記を公表したのであれば,その内容からして,本件各記述のような意見,論評,批判が多数出るであろうことは,控訴人らとしても当然予想されたと推認されるところ(なお,前件訴訟の提訴前に,控訴人らの相談に当たった弁護士から,本件貸付が規制緩和目的のためなのか,私利私欲のためなのか分からない人たちから批判が出ることは当然あり得るとの意見が出ていたことが認められる(証人内海〔原審〕35頁)。),控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が,それに対し,言論という方法で対抗せず,直ちに訴訟による高額の損害賠償請求という’手段で臨んでいること,

ほかにも近接した時期に9件の損害賠償請求訴訟を提起し,判決に至ったものは,いずれも本件貸付に関する名誉毀損部分に関しては,控訴人らの損害賠償請求が認応られずに確定していることからすれば,

前件訴訟(DHCスラップ訴訟)等の提起前に控訴人会社(DHC)の担当者と弁護士との間で訴訟提起等に関する相談がされたこと等を考慮しても,前件訴訟(スラップ訴訟)の提起等は,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が自己に対する批判の言論の萎縮の効果等を意図して行ったものと推認するのが合理的であり,不法行為と捉えたとしても,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の裁判を受ける権利を不当に侵害することにはならないと解すべきである。

したがって,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の前件訴訟の提起等は,請求が認容される見込みがないことを通常人であれば容易に知り得たといえるのに,あえて訴えを提起したものとして,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものということができ,被控訴人(澤藤)に対する違法行為と認められる。

まことに胸のすく判決理由の説示である。これなら、スラップ訴訟を提起された言論人は、勇気をもってスラップ訴訟の提起者に対して、反撃訴訟を提起できるではないか。私は、素晴らしい判決であると思う。DHC・吉田嘉明は、あらためてこの判決をよく噛みしめて、自分のしたことの誤りを反省しなければならない。
(2020年4月10日)

DHC・吉田嘉明 展望なき上訴 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第175弾

3月18日(水)に言い渡された「DHCスラップ『反撃』訴訟」の控訴審判決。その上訴期限最終日の昨日(4月1日・水)、DHC・吉田嘉明が最高裁に上訴した。控訴審判決の「連帯して165万円を支払え」とする命令を不服としてのもの。

高裁の控訴審判決に不服ある場合の上訴(上級審への不服申立)には、「上告提起」と「上告受理申立」の両手段がある。「上告提起」は、原判決に憲法違反や重大な訴訟手続の違法があることを理由とする場合、「上告受理申立て」は、原判決に判例違反や法令の解釈に関する重要な間違いがあることを理由とする場合に認められる。DHC・吉田嘉明は、両手段を併用して申し立てている。

「上告提起」も「上告受理申立」も最高裁宛となるが、上告状兼上告受理申立書の提出先は、原審の東京高裁第5民事部である。これから速やかに、同民事部から両当事者に「上告」「上告受理申立」の受理通知が送付される。その通知が到達後50日以内に、DHC・吉田嘉明は、「上告理由書」「上告受理申立理由書」を作成して同民事部に提出しなければならない。一件記録が最高裁にまわるのは、その後のことになる。

実務家の常識からは、このDHC・吉田嘉明の上告も上告受理申立も、無理筋の展望のない上訴というほかはない。最高裁が耳を傾けるはずもない。敗訴確定先延ばしに過ぎない無駄な努力。かくて、圧倒的な優勢のうちに、DHC・吉田嘉明と私との訴訟上の争いは、最終第6ラウンドを迎えることになった。

2014年4月16日 DHC・吉田嘉明は、私(澤藤)を被告とする訴状を東京地裁に提出した。その請求の趣旨において、私の3件のブログ記事の削除を求めるとともに謝罪を要求、さらに2000万円の損害賠償金を支払えとした。この訴状が私に届いたのが、同年5月13日。この日、私は初めてDHC・吉田嘉明から、無謀な宣戦布告があったことを知らされた。そして、DHC・吉田嘉明にその愚行を後悔させなければならないと受けて立つことを決意した。これが第1ラウンドの始まりである。

私はこの提訴を、DHC・吉田嘉明の「黙れ」「オレを批判するな」という野蛮な恫喝と理解した。絵に描いたような悪役登場の典型的スラップ訴訟である。まずは、黙ってはならないと決意し、ブログに「『DHCスラップ訴訟』を許さない」シリーズを書き始めた。

もちろん、私憤がエネルギーの原動力である。吉田嘉明ごときに、脅せば黙り込むだろうと舐められたのが腹に据えかねたのだ。もっとも、怒りは私憤ばかりでもない。スラップは表現の自由の敵である。その意味では、スラップとの闘いは大いに公共の意義をもつ。また、DHC・吉田嘉明はヘイトとデマの源泉であることも少しずつ分かってきた。この闘いのエネルギーには、私憤だけでなく公憤も加わった。

こうしてブログに「『DHCスラップ訴訟』を許さない」シリーズを書き始めたら、DHC・吉田嘉明の代理人弁護士今村憲から警告があり、続いて請求が拡張された。同年8月29日に、なんと請求額は4000万円跳ね上がった。あらためて、6000万円を支払えというのだ。DHC・吉田嘉明・今村憲が、一体となってこの訴訟提起の動機を自白しているに等しいではないか。

今は175弾に及んでいる「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズの最初は下記のとおりである。私のブログを検索していただければ、すべてを読むことができる。
http://article9.jp/wordpress/?cat=12

2014年7月
 13日 第1弾「いけません 口封じ目的の濫訴」
 14日 第2弾「万国のブロガー団結せよ」
 15日 第3弾「言っちゃった カネで政治を買ってると」
 16日 第4弾「弁護士が被告になって」
 18日 第5弾「この頑迷な批判拒否体質(1)」
 19日 第6弾「この頑迷な批判拒否体質(2)」
 20日 第7弾「この頑迷な批判拒否体質(3)」
 22日 第8弾「グララアガア、グララアガア」
 23日 第9弾「私こそは『幸せな被告』」
 25日 第10弾「『表現の自由』が危ない」
 27日 第11弾「経済的強者に対する濫訴防止策が必要だ」
 31日 第12弾「言論弾圧と運動弾圧のスラップ2類型」
同年8月
  3日 第13弾「スラップ訴訟は両刃の剣」
  4日 第14弾「スラップ訴訟被害者よ、団結しよう。」
  8日 第15弾「『政治とカネ』その監視と批判は主権者の任務だ」
 10日 第16弾「8月20日(水)法廷と報告集会のご案内」
 13日 第17弾「DHCスラップ訴訟資料の公開予告」
 20日 第18弾「満席の法廷でDHCスラップの口頭弁論」
 21日 第19弾「既に現実化しているスラップの萎縮効果」
 22日 番外「ことの本質は『批判の自由』を守り抜くことにある」
 31日 第20弾「これが、損害賠償額4000万円相当の根拠とされたブログの記事」
同年9月
 14日 第22弾「DHCが提起したスラップ訴訟の数々」
 15日 第23弾「DHC会長の8億円拠出は『浄財』ではない」
 16日 第24弾「第2回口頭弁論までの経過報告」
 17日 第25弾「第2回口頭弁論後の報告集会で」
(以下略、現在175弾まで)

以上のとおり、私は怒りを持続して猛烈にDHC批判のブログを書き継いで本日に至っている。その怒りが訴訟にの経過にもみなぎっているはずだ。怒りこそが、エネルギーの源泉である。今、読み直すと、このブログはなかなかに読み応えあって面白い。吉田嘉明も読んでいるだろうか。未読であれば、ぜひお読みいただきたい。感想文などいただけたら、なおありがたい。

こうして、2015年9月2日 東京地裁での請求棄却判決言い渡しがあった。当然に私(澤藤)全面勝訴であった。これが第1ラウンドの勝利

DHC・吉田嘉明はこれを不服として控訴したが、2016年1月28日控訴審は控訴棄却判決を言い渡した。再びの私の全面勝訴である。第2ラウンドの勝利

DHC・吉田嘉明は、なんの成算もないまま無意味な上告受理申立をしたが、2016年2月12日最高裁はこれを不受理とした。第3ラウンドの勝利

さらに、2017年9月4日、DHC・吉田嘉明は私を被告として、債務不存在確認請求訴訟を提起した。つまりは、スラップ提起による損害賠償債務はないことの確認を求める訴訟。これが、第4ラウンドとなった。これに、澤藤から反訴提起を行い、これを前訴と区別して「DHCスラップ『反撃』訴訟」と名付けた。2019年10月4日、反訴について一審判決言い渡しがあり、明確にスラップの違法を認め、認容額110万円とした。第4ラウンドの勝利である。

これに、DHC・吉田嘉明が控訴し、澤藤が附帯控訴したのが、第5ラウンドである。2020年3月18日東京高裁511号法廷で、DHCスラップ反撃訴訟控訴審判決言い渡しがあった。DHC・吉田嘉明の控訴を棄却し、澤藤請求の認容額を165万円に増額した。第5ラウンドにおける、赫々たる勝利である。これで、5選5勝となった

さて、第6ラウンドがどうなるか。DHC・吉田嘉明は、控訴審判決を不服として上訴するのだが、控訴審判決は手堅い。唐突にこれまでと違うことは言いようもなく、さりとて同じことを述べて判決を覆すことなどできようはずもない。

控訴審判決の核心部分は以下のとおりである。

前示のとおり、
 被控訴人(澤藤)の本件各(ブログでの)記述が、いずれも公正な論評として名誉毀損に該当しないことは控訴人ら(DHC・吉田嘉明)においても容易に認識可能であったと認められること、
 それにも関わらず控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が、被控訴人(澤藤)に対し前件訴訟(DHC・吉田嘉明によるスラップ訴訟)を提起し、その請求額が、当初合計2000万円、本件ブログ4(「DHCスラップ訴訟を許さない・第1弾」)掲載後は、請求額が拡張され、合計6000万円と、通常人にとっては意見の表明を萎縮させかねない高額なものであったこと、
控訴人吉田が自ら本件手記を公表したのであれば、その内容からして、本件各記述のような意見、論評、批判が多数出るであろうことは、控訴人ら(DHC・吉田嘉明)としても当然予想されたと推認されるところ⦅なお、前件訴訟の提訴前に、控訴人らの相談に当たった弁護士(今村憲)から、本件貸付が規制緩和目的のためなのか、私利私欲のためなのか分からない人たちから批判が出ることは当然あり得るとの意見が出ていたことが認められる(証人内海〔原審〕35頁)。⦆、

 控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が、それに対し、言論という方法で対抗せず、直ちに訴訟による高額の損害賠償請求という’手段で臨んでいること、
ほかにも近接した時期に9件の損害賠償請求訴訟を提起し、判決に至ったものは、いずれも本件貸付に関する名誉毀損部分に関しては、控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の損害賠償請求が認められずに確定していることからすれば、

……前件訴訟(DHCスラップ訴訟)の提起等は、控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が自己に対する批判の言論の萎縮の効果等を意図して行ったものと推認するのが合理的であり、不法行為と捉えたとしても、控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の裁判を受ける権利を不当に侵害することにはならないと解すべきである。

 したがって、控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の前件訴訟の提起等は、請求が認容される見込みがないことを通常人であれば容易に知り得たといえるのに、あえて訴えを提起するなどしたものとして、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものということができ、被控訴人(澤藤)に対する違法行為と認められる。」

この判決は、以上の認定において、表現の自由保障についての貴重な一石を投ずる判決となり得ていると私は満足している。私の6年間の怒りは無駄ではなかったという充実感がある。

そのような圧倒的に優勢な状態で、第6ラウンド開始のゴングが鳴った。私は、もうしばらく余裕の怒りを持続しつつ、守勢に回らずDHC・吉田嘉明を攻撃し続けることができる。消費者問題としての観点から、あるいは忌まわしいデマとヘイト規制の観点から、また政治資金や選挙資金規正の視点から、そして何よりも表現の自由擁護の立場から、DHC問題・吉田嘉明問題を語ってゆきたい。
(2020年4月2日)

DHCスラップ反撃訴訟最終法廷で5度目の勝訴 ―「DHCスラップ訴訟」を許さない・第174弾

本日(3月18日)、コロナ禍のさなかの東京高裁511号法廷で、DHCスラップ反撃訴訟控訴審判決言い渡しがあった。おそらくはこれが、DHC・吉田嘉明と私との一連の訴訟において開かれる最後の法廷となる。

この事件が起きたのが2014年の春。あれから6年にもなる。あのとき私はDHC・吉田嘉明に怒り、今日まで怒り続けてきた。その怒りのエネルギーで、5度の訴訟を継続してきた。まずはDHC・吉田嘉明の起こした典型的なスラップ訴訟を被告として受けて立って、一審に勝訴し、2審も勝訴した。DHC・吉田嘉明は、最高裁への上告受理申立までしたが不受理となって、私の勝訴が確定した。これで3勝。続いての攻守ところを替えた反撃訴訟での一審勝訴に続く、本日の控訴審勝訴。これで、5選5勝である。

控訴審判決は、DHC・吉田嘉明が起こしたスラップの違法を再確認の上、一審では110万円であった損害賠償認容額を、165万円に増額した。一審では認めなかった前件訴訟(DHC・吉田嘉明のスラップ訴訟)における応訴弁護士費用負担分を50万円だけ認めたもの。

金額はともかく、明確にDHC・吉田嘉明がしたスラップ提訴の意図と違法を認めた判決に満足している。反撃訴訟をやってよかった。附帯控訴もやった甲斐があった。

一審判決は、スラップの違法を明晰に認定してはいたが、私のブログによる言論を恫喝し萎縮させる意図の有無には無関心だった。本日の控訴審判決の理由はこの点に踏み込んでいる。判決の末尾の部分をやや長文だが引用しておきたい。なお、以下の()は、私の書き足しである。

「前示のとおり,被控訴人(澤藤)の本件各(ブログでの)記述が,いずれも公正な論評として名誉毀損に該当しないことは控訴人ら(DHC・吉田嘉明)においても容易に認識可能であったと認められること,それにも関わらず控訴人らが,被控訴人に対し前件訴訟(DHC・吉田嘉明によるスラップ訴訟)を提起し,その請求額が,当初合計2000万円,本件ブログ4(「DHCスラップ訴訟を許さない・第1弾」)掲載後は,請求額が拡張され,合計6000万円と,通常人にとっては意見の表明を萎縮させかねない高額なものであったこと,控訴人吉田が自ら本件手記を公表したのであれば,その内容からして,本件各記述のような意見,論評,批判が多数出るであろうことは,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)としても当然予想されたと推認されるところ⦅なお,前件訴訟の提訴前に,控訴人らの相談に当たった弁護士から,本件貸付が規制緩和目的のためなのか,私利私欲のためなのか分からない人たちから批判が出ることは当然あり得るとの意見が出ていたことが認められる(証人内海〔原審〕35頁)。⦆,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が,それに対し,言論という方法で対抗せず,直ちに訴訟による高額の損害賠償請求という’手段で臨んでいること,ほかにも近接した時期に9件の損害賠償請求訴訟を提起し,判決に至ったものは,いずれも本件貸付に関する名誉毀損部分に関しては,控訴人らの損害賠償請求が認められずに確定していることからすれば,……前件訴訟(DHCスラップ訴訟)の提起等は,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)が自己に対する批判の言論の萎縮の効果等を意図して行ったものと推認するのが合理的であり,不法行為と捉えたとしても,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の裁判を受ける権利を不当に侵害することにはならないと解すべきである。したがって,控訴人ら(DHC・吉田嘉明)の前件訴訟の提起等は,請求が認容される見込みがないことを通常人であれば容易に知り得たといえるのに,あえて訴えを提起するなどしたものとして,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものということができ被控訴人(澤藤)に対する違法行為と認められる。

以上の認定で、私の6年間の怒りは無駄ではなかったという充実感がある。表現の自由保障に一石を投ずる判決を得たと思う。

DHC・吉田の側から本日の判決を不服とする上告受理申立があるか否かは予想の限りではない。しかし、仮に申立があったとしても、もう不受理決定を待つだけで、精神的な負担感はまったくない。
あらためて、私は日本一幸福な被告であったことを再確認している。

弁護団の皆様、お世話になりました。支援をしていただいた皆様、本当にありがとうございました。

この勝訴判決が確定したときには、記念のイベントを企画したいと思います。その際には、ぜひともご協力をよろしくお願いいたします。
(2020年3月18日)

DHCスラップ反撃訴訟最終(控訴審判決)法廷 ー 3月18日(水)13時15分。東京高裁511号 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第173弾

来週の水曜日・3月18日13時15分。東京高裁511号法廷で、DHCスラップ反撃訴訟控訴審判決言い渡しがある。おそらくはこれが、DHC・吉田嘉明と私との一連の訴訟において開かれる最後の法廷となる。

事件が起きたのが、2014年の春。あれから6年にもなる。あのとき私は怒り、その怒りを持続してきた。不当・不正義・愚劣・愚昧・傲岸・不条理に対する憤りである。これまで、その怒りのエネルギーで訴訟を継続してきた。

まずはDHC・吉田嘉明の起こした典型的なスラップ訴訟を被告として受けて立った。圧倒的に優秀な弁護団の力量で一審を勝訴し、2審も勝訴した。敗訴のDHC・吉田嘉明は、通常はあり得ない最高裁への上告受理申立までしたが不受理となって、私の勝訴が確定した。

ついで、攻守ところを替えた「反撃訴訟」を準備中に、DHC・吉田嘉明から、「損害賠償債務不存在確認の請求」が提起された。これに私が反訴を提起して、「DHCスラップ反撃訴訟」一審の審理が展開され、裁判所は澤藤側からの申請にもとづく吉田嘉明の尋問を決定して呼び出した。彼にとっては、堂々と自説を述べるチャンスであったが、彼は出廷命令に応じなかった。私は、心底がっかりした。私が怒りを燃やした相手が怒りをぶつけるに値する人物ではなく、なんともプライドを欠いた、口ほどにもない怯懦な小物に過ぎないありさまをさらけ出したからだ。

こうして、昨年(2019年)10月4日、反訴(反撃訴訟)について判決言い渡しがあり、DHC・吉田嘉明のスラップ提起の違法を認めて110万円の支払いを命じた。4度目のDHC・吉田嘉明の敗訴である。

この判決を不服として、DHC・吉田嘉明が控訴を提起し、澤藤が附帯控訴した。本年(2020年)1月27日控訴審は、第1回口頭弁論期日を開いて、同日結審した。

以上の経過で、3月18日(水)の控訴審判決言い渡し期日を迎えることになる。判決が、DHC・吉田嘉明の控訴を棄却することは確実である。私からの附帯控訴に対する一審の110万円を上回る金額の損害賠償命令が期待される。

この判決は、DHCスラップ訴訟一審判決・控訴審判決・上告受理申立不受理決定、DHCスラップ反撃訴訟一審判決に続く、5回目の裁判となる。このあとに、最高裁への上訴が考えられないではないが、原則として最高裁の審理では法廷は開かれない。来たる18日が最後の法廷となる。

目には見えないコロナウィルスが心配の折柄ですが、できたら、判決法廷の傍聴に足をお運びください。閉廷後、懇談いたしましょう。

下記は、控訴審における私の陳述書(抜粋)の再掲である。

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2020年1月27日

意見陳述要旨

東京高裁第5民事部御中

 2014年5月、私は突然に不法行為損害賠償訴訟の被告とされました。吉田嘉明という人物が、私のブログでの批判を快く思わぬことからの提訴で、2000万円の慰謝料を支払えというものです。

 裁判官の皆様には、違法とされた私の3本のブログの全文に改めて目を通していただきたいのです。万が一にも、私のこのような言論が違法とされるようなことがあれば、誇張ではなく民主主義は死滅してしまいます。また、このような言論を民事訴訟を道具として攻撃することが許されてはならないことをご確認いただきたいのです。

 前件提訴(DHCスラップ訴訟)が、私を恫喝して批判の言論を封殺しようという典型的なスラップ訴訟であることは明らかというべきです。私は、大いに怒りました。こんな訴訟を起こす人物にも、そしてこんな訴訟提起の代理人となる弁護士にも、です。
 そして、怒るだけでなく徹底して闘うことを決意しました。これは私一人の問題ではない。けっして、この恫喝に屈してはならない。この提訴が違法であることを法廷で明らかにしなければならない。DHC・吉田嘉明のスラップ提訴の試みを失敗させ、反省させなければならない。まさしく、表現の自由を守るために。

 私は、自分のブログに、「DHCスラップ訴訟を許さない」というシリーズを猛然と書き始めました。そうしたら、代理人弁護士からの警告に続いて、DHC・吉田嘉明は請求を拡張しました。2000万円の請求を6000万円にです。DHC・吉田嘉明も代理人弁護士も、言論封殺の目的を自白しているに等しいと指摘せざるを得ません。

 当然のことながら、前件訴訟は請求棄却の判決となり確定しました。そして、前件訴訟の提訴を違法とする本件訴訟の提起となり、その一部認容の原判決を得るに至っています。原判決の責任論に異存はありません。吉田嘉明のスラップ提訴を明確に違法と断じた判断には、半分までは提訴の目的を果たし得たとの感慨があります。

 しかし、問題は損害論です。経済的強者によるスラップを違法とする判決の認容額がわずか110万円では、ペナルティとしてあまりにも低廉で、十分な違法行為の抑止効果を期待し得ません。とりわけ、応訴費用をまったく認めていない点は、原判決の誤りとして是正されなければなりません。これには、最近の「N国」という政党関係者のスラップに対する判決例が参考になります。N国側がNHKを被告として提起した《10万円請求のスラップ訴訟》に対して、東京地裁は応訴のための弁護士費用54万円満額を損害として認容しているのです。こうした判断あってこそ、DHC・吉田嘉明らスラップ常習者に対する適切なペナルティとなり、スラップ防止の実効性のある判決となりえます。

 スラップの本質は「民事訴訟という《市民の公器》を、《強者の凶器》として悪用する」ことにあります。司法が毅然たる態度で、公共的言論をして「不当な裁判から免れる権利」を保障しなければなりません。
 まさしく、本件において司法の役割が問われています。控訴審判決が、スラップの害悪を防止し、表現の自由を保障するものとなるよう期待してやみません。
(2020年3月13日)

本日「DHCスラップ『反撃』訴訟」控訴審結審。判決言い渡しは3月18日(水) ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第172弾

 本日(1月27日)、DHCスラップ「反撃」訴訟の控訴審が、第1回口頭弁論で結審となった。
 判決言い渡しは、3月18日(水)13時15分から。東京高裁511号法廷で。
DHC・吉田嘉明の控訴を棄却し、私からの附帯控訴では一審の110万円を上回る損害賠償命令が期待される。

 本日の進行は以下のとおり。
  DHC・吉田嘉明側 控訴状・控訴理由書の陳述
  澤藤側       控訴答弁書の陳述
  澤藤側       附帯帯控訴状の陳述
  DHC・吉田嘉明側 附帯控訴に対する答弁書の陳述
  DHC・吉田嘉明側 1点の書証提出
  澤藤側       4点の書証提出
  被控訴人(附帯控訴人)本人 口頭での意見陳述
  当事者双方とも新たな人証や追加の証拠提出の予定はなく、
 結審して判決言い渡し期日の指定

私の意見陳述は、以下のとおり。

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2020年1月27日

意見陳述要旨

東京高裁第5民事部御中

澤 藤 統一郎    

 2014年5月、私は突然に不法行為損害賠償訴訟の被告とされました。吉田嘉明という人物が、私のブログでの批判を快く思わぬことからの提訴で、2000万円の慰謝料を支払えというものです。

 裁判官の皆様には、違法とされた私の3本のブログの全文に改めて目を通していただきたいのです。万が一にも、私のこのような言論が違法とされるようなことがあれば、誇張ではなく民主主義は死滅してしまいます。また、このような言論を民事訴訟を道具として攻撃することが許されてはならないことをご確認いただきたいのです。

前件提訴が、私を恫喝して批判の言論を封殺しようという典型的なスラップ訴訟であることは明らかというべきです。私は、大いに怒りました。こんな訴訟を起こす人物にも、そしてこんな訴訟提起の代理人となる弁護士にも、です。
そして、怒るだけでなく徹底して闘うことを決意しました。これは私一人の問題ではない。けっして、この恫喝に屈してはならない。この提訴が違法であることを法廷で明らかにしなければならない。DHC・吉田嘉明のスラップ提訴の試みを失敗させ、反省させなければならない。まさしく、表現の自由を守るために。

私は、自分のブログに、「DHCスラップ訴訟を許さない」というシリーズを猛然と書き始めました。そうしたら、代理人弁護士からの警告に続いて、DHC・吉田嘉明は請求を拡張しました。2000万円の請求を6000万円にです。DHC・吉田嘉明も代理人弁護士も、言論封殺の目的を自白しているに等しいと指摘せざるを得ません。

当然のことながら、前件訴訟は請求棄却の判決となり確定しました。そして、前件訴訟の提訴を違法とする本件訴訟の提起となり、その一部認容の原判決を得るに至っています。原判決の責任論に異存はありません。吉田嘉明のスラップ提訴を明確に違法と断じた判断には、半分までは提訴の目的を果たし得たとの感慨があります。

しかし、問題は損害論です。経済的強者によるスラップを違法とする判決の認容額がわずか110万円では、ペナルティとしてあまりにも低廉で、十分な違法行為の抑止効果を期待し得ません。とりわけ、応訴費用をまったく認めていない点は、原判決の誤りとして是正されなければなりません。これには、最近の「N国」という政党関係者のスラップに対する判決例が参考になります。N国側がNHKを被告として提起した《10万円請求のスラップ訴訟》に対して、東京地裁は応訴のための弁護士費用54万円満額を損害として認容しているのです。こうした判断あってこそ、DHC・吉田嘉明らスラップ常習者に対する適切なペナルティとなり、スラップ防止の実効性のある判決となりえます。

スラップの本質は「民事訴訟という《市民の公器》を、《強者の凶器》として悪用する」ことにあります。司法が毅然たる態度で、公共的言論をして「不当な裁判から免れる権利」を保障しなければなりません

まさしく、本件において司法の役割が問われています。控訴審判決が、スラップの害悪を防止し、表現の自由を保障するものとなるよう期待してやみません。

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これまでの経過概要は以下のとおり。

2020年1月27日

DHCスラップ訴訟・反撃訴訟経過の概略

 発端は、吉田嘉明自身の週刊新潮手記の掲載である。
自らの渡辺喜美への8億円裏金提供を暴露する記事となっている。その直後に、私がブロクで吉田嘉明を批判する3件のブログ記事を書いた。この「言論」を封殺する意図で、吉田嘉明と株式会社DHCの両名が原告となって、私を被告とする名誉毀損損害賠償請求訴訟を提起した。これが先行の「DHCスラップ訴訟」。同訴訟の請求額は提訴時2000万円だったが、提訴直後に請求が拡張されて6000万円となった。
DHCスラップ訴訟では、東京地裁一審判決が請求を全部棄却し、東京高裁の控訴審が控訴を棄却、さらにDHC・吉田嘉明は最高裁に上告受理を申立てたが不受理となって私の勝訴が確定した。
確定後、私からDHC・吉田嘉明の両名に、スラップ提起を違法として訴訟外で600万円の損害賠償請求をしたところ、この両名から債務不存在確認請求訴訟が提起され、再び私は被告の座に着くこととなった。
「反撃」訴訟はその反訴としてなされたもので、「DHCスラップ訴訟」の提起を違法として、私からDHC・吉田嘉明に損害賠償請求を求めたのもの。判決は、手堅くきっぱりとスラップの違法性を認定した。
なお、私の吉田嘉明批判は、吉田自身の週刊誌の手記の内容を対象とするもので、同様の批判の言論は数多くあった。吉田は、そのうちの10件を選んで、同時期にスラップの提訴をしている。時系列での経過は下記のとおり。

2014年3月27日 吉田嘉明手記掲載の週刊新潮(4月3日号)発売
2014年3月31日・4月2日・4月8日 違法とされた3本のブログ掲載
2014年4月16日 DHCスラップ訴訟提起(請求額2000万円)
7月13日 ブログ「『DHCスラップ訴訟』を許さない」開始
8月29日 請求の拡張(2000万円から6000万円に増額)
2015年9月 2日 請求棄却判決言い渡し 被告(澤藤)全面勝訴
2016年1月28日 控訴審控訴棄却判決言い渡し 被控訴人全面勝訴
2016年2月12日 最高裁DHC・吉田嘉明の上告受理申立に不受理決定
2017年 9月 4日 DHC・吉田嘉明が債務不存在確認請求訴訟を提起
2017年11月10日 澤藤から反訴提起。その後、吉田嘉明ら本訴取り下げ
2019年10月 4日 反訴について判決言い渡し。スラップの違法を認める。
2019年10月15日 反訴被告ら控訴。
2020年1月14日 澤藤側、附帯控訴状提出
2020年1月27日 (本日)控訴審口頭弁論期日 結審
2020年3月18日 控訴審判決(予定)

(2020年1月27日・連続更新2492日)

1月27日(月)は本件最後の法廷に? ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第171弾

長かったDHCスラップ訴訟も、先が見えてきた。DHC・吉田嘉明が昨日(1月24日)附帯控訴に対する答弁書を提出した。分量は1ページのみ。その内容から見て、1回結審となる公算が高い。

 1月27日(明後日・月曜日)午前11時、東京高裁511号法廷での《DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論期日》が、弁論の行われる最後の機会となると思われる。あとは控訴審判決を待つだけ。

 この日の進行予定は以下のとおり。
  控訴状・控訴理由書の陳述
  控訴答弁書の陳述
  附帯帯控訴状の陳述
  附帯控訴に対する答弁書の陳述
  DHC・吉田嘉明側が1点の書証提出
  澤藤側が4点の書証提出
 当事者双方とも新たな証拠提出の予定はなく、
 結審して判決言い渡し期日の指定

DHC・吉田嘉明が、私(澤藤)を被告としてスラップ訴訟を提起したのが2014年4月16日。あれからもう少しで6年にもなる。

2014年4月16日 DHCスラップ訴訟提起
同年7月13日 ブログ「『DHCスラップ訴訟』を許さない」開始
同年8月29日 請求の拡張(2000万円から6000万円の請求に増額)
2015年9月 2日 請求棄却判決 被告(澤藤)全面勝訴
2016年1月28日 控訴審控訴棄却判決 被控訴人(澤藤)全面勝訴
2016年2月12日 最高裁DHC・吉田嘉明の上告受理申立に不受理決定
2017年9月 4日 DHC・吉田嘉明が債務不存在確認請求訴訟を提起
2017年11月10日 澤藤から反訴(『反撃』訴訟)提起。本訴取り下げ
2019年10月 4日 反訴について判決。スラップの違法を認める。
            澤藤一部勝訴。110万円の認容。
同年10月15日 DHC・吉田嘉明控訴。
2020年1月14日 澤藤附帯控訴。
2020年1月27日 DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論期日。

月曜日・1月27日午前11時、東京高等裁判所511号法廷(高裁庁舎5階)には、是非、多くの方の傍聴をお願いします。どなたでも、何の手続もなく傍聴できます。閉廷後のミニ集会にもご参加ください。

控訴答弁書と附帯控訴状作成のための弁護団会議のなかで、だんだんと分かってきたのは、原判決における、「責任論についての切れ味の良さ」と、「損害論についての出来の悪さ」のコントラスト。

原判決の責任論の構成は、弁護団の主張とはスタンスが違う。
弁護団は、提訴の違法判断の要件として「意図・目的」という主観的要素を重視すべきと主張した。DHC・吉田嘉明の本件スラップ提訴の目的が「吉田嘉明の批判者を恫喝して言論を萎縮せしめるところにある」ことを違法の第一要件とすべきだという、スラップの本質論からの立論である。

しかし、一審判決は「提訴の意図・目的」の有無など問題とするまでもない、勝訴の見込みのない提訴をしたという客観違法ある以上は、主観要素としては「故意・過失」のレベルだけを問題にすることで十分、という構成だった。

控訴審が、この原判決の責任論の枠組みを変更することは考えにくく、責任論での逆転はあり得ないと意を強くしている。

問題は損害論。DHC・吉田嘉明のやったことについて、違法の認定があっただけでは足りない。110万円の賠償命令ではペナルティとして軽すぎる。違法行為の抑止機能を持ち得ない。賠償額の上積みをしたい。そうしてこそ、スラップ防止の実効性のある判決になる。

最近のN国のスラップ違法判決が参考になる。N国側がNHKに対して提起した《10万円請求のスラップ訴訟》に対して、東京地裁は54万円の弁護士費用を損害として認容している。こうした判断あってこそ、DHC・吉田嘉明らスラップ常習者に適切なペナルティを課し、スラップ抑止、即ち表現の自由の保障を期待しうることになる。

(2020年1月25日)

スラップの本質は、「社会の公器」を「強者の凶器」とすることにある。 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第170弾

DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論期日が1週間後に迫った。来週の月曜日・1月27日の午前11時開廷となる。法廷は、東京高等裁判所511号法廷(高裁庁舎5階)である。是非、多くの方に傍聴いただきたい。どなたでも、何の手続もなく傍聴できる。閉廷後のミニ集会にもご参加をお願いする。

この訴訟の、ことの中心は表現の自由という問題だが、政治とカネの問題とも関わり、消費者の利益侵害という問題でもある。

DHCというサプリメント製造の大手企業と、そのオーナー経営者である吉田嘉明が、私(澤藤)を被告として、6000万円の高額慰謝料請求訴訟を提起した。私のブログ記事がDHC・吉田嘉明の名誉を毀損するというのだ。これが典型的なスラップ訴訟である。DHC・吉田嘉明は、私のブログ記事の内容が面白くないのだ。「黙れ」という代わりに、裁判を起こしたのだ。

吉田嘉明にしてみれば勝訴の見込みの有無などどうでもよい。高額の賠償請求をすれば、被告にされた者は驚いて批判の言論を慎むことになるだろう。被告にされた本人だけではなく、被告にされなかった多くの人々が、「DHC・吉田嘉明を批判すると裁判までされて面倒なことになる」「DHC・吉田嘉明に対する批判は遠慮した方が賢明だ」と思うだろう。そこが狙いだ。自分に対する批判の言論の封殺、あるいは萎縮を狙っての民事訴訟の提起なのだ。

DHC・吉田嘉明は、スラップ訴訟の常習者として知られる。今回も、甘い気持で、スラップを掛けて来た。事件の発端は、吉田嘉明が週刊新潮に独白手記を掲載したことにある。この記事の内容が凄まじいものだった。厚労省の規制下にあるサプリメント製造の大手企業経営者が、規制緩和をスローガンとする政治家に、8億円もの選挙資金を用立てたというのだ。もちろん、裏金である。

カネを渡した方が吉田嘉明。受け取ったのが「みんなの党」(当時)の渡辺喜美である。政治を金で操ろうというこの汚いやり口を、私だけでなく、多くの言論が批判した。DHC・吉田嘉明はこのうち、10人を選んで、スラップを提起したのだ。もちろん、こうすれば、黙るだろうとの思惑あってのこと。

しかし、私はけっして黙ってはならないと決意した。むしろ、徹底してDHC・吉田嘉明の批判を続けようと覚悟を決めた。日本国憲法の表現の自由は、私の言論を保障している。その権利を行使しないでは、せっかくの表現の自由が錆び付いてしまうことになる。こうして始めた、DHC・吉田嘉明を批判するブログの「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズは、本日で第170弾となった。

そして、スラップ訴訟に被告として勝訴しただけでは足りない。DHC・吉田嘉明のスラップ訴訟提起を違法行為として、損害賠償を求める反撃訴訟を提起した。そして、一審では勝訴し、これを不服とするDHC・吉田嘉明の控訴を受けて、被控訴人として控訴審に臨もうというのが、今の段階である。

なお、私の吉田嘉明批判の言論の内容は、経済的強者がそのカネで政治を動かしてはならないと言うことにある。一人の富者がカネで政治を動かしてはならない、政治に絡むカネの動きには透明性を確保して、国民の批判に曝さなければならない。こういう理念にもとづく法が、政治資金規正法である。吉田嘉明の行為は、明らかにこれを僣脱している。改めて批判が必要なのだ。

また、吉田嘉明は、その手記の中で、無邪気に「厚労省の規制が厳しすぎる」と表白している。常識的に推論して、吉田嘉明の渡辺喜美への8億円の裏金提供は、DHCへの行政規制を嫌ってのものである。

言うまでもなく、薬品や食品に対する行政規制は、消費者の健康を擁護するためにある。私の言論は、消費者利益擁護のために有益なものなのだ。

この訴訟において私が勝つことは、言論の自由の勝利であり、民主主義の勝利であり、また消費者利益擁護の理念の勝利でもある。仮に、DHC・吉田嘉明が勝つようなことがあれば、敗北するのは、言論の自由であり、民主主義であり、また消費者の利益である。

スラップとはなんであるか。弁護団長の光前幸一弁護士が、いみじくもこう言っている。「『社会の公器』を『強者の凶器』とすることにほかならない」と。

民事訴訟は、本来『社会の公器』である。権利を侵害された者は、法や司法の助力を得て侵害された権利を回復することが可能となる。しかし、経済的な強者が私益のためにこの公器を凶器として濫用することがある。それがスラップである。

民事訴訟を『強者の凶器』とさせてはならない。今、控訴審を迎えているDHCスラップ「反撃」訴訟では、DHC・吉田嘉明の意図を挫いて、『強者の凶器』としての制度利用が許されないことを確認しなければならない。
(2020年1月20日)
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 DHC・吉田嘉明の控訴理由書に対する反論の書面を本日提出した。
 その中の一部だけを抜粋してご紹介したい。

本件ブログは人身攻撃ではない
(澤藤の)本件ブログは,控訴人吉田が公表した政治家への金8億円の密かな貸付行為について,「民主政治とお金」という視点から警鐘を鳴らす公共性の高いものであり,その批判は峻厳なものとならざるをえない。このテーマにおいて,生半可な批判は論評として価値を持たないし,さりとて,生硬な表現のみでは一般読者の関心や理解は得難い。
この観点から,本件ブログについて控訴人らが問題視する表現を見れば,いずれも,あくまでも控訴人吉田が公表した吉田自身の行為への徹底した批判にとどまるものであって,これを超えた人身攻撃ではない。
勿論,行為は人柄の表出という側面を否定できないから,当該行為の批判は行為者の人格評価の低下につながる可能性があることは避けがたい。しかし,上記最判や控訴人らが引用する東京地裁判決が言明するとおり,論評の本来的性格や役割を重視すれば,その表現が論評を超えた人身攻撃を意図していると評価されるのは,極めて例外的な場合に限られ,本件ブログの表現が,論評としての域を超えていないことは,上記各裁判例の判断を踏まえれば明らかなことであり,先例を検討すれば,容易に判断できたことである。

民事訴訟法208条の適用について
控訴人ら(DHC・吉田嘉明)は,吉田が原審裁判所の呼び出しに応じず,出頭しなかったものの,内海証人の証言及びその他の証拠によって,不当提訴でないことは明らかで,民訴208条(不出頭のペナルティとして、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる)を適用することは相当でないという。
すなわち,控訴人らは,名誉毀損となる記述について訴訟提起することの判断は控訴人吉田によることを認めつつも,具体的に違法性のある記事をピックアップし,どの記事が違法となり,損害賠償請求額をいくらにするかの判断は証人らがしており,控訴人吉田はその過程に関与していないし,そのことについては,内海証人の法廷証言等で明らかとして,民事訴訟法208条の適用を否定する。
しかし,内海証人は,弁護士から確実に勝てるとの助言を受けたものを提訴対象としたと述べているが(内海証人尋問調書17頁),「確実に勝てる」とされた根拠について,「法的に名誉毀損の程度が著しいので。」と答えた以外の点については何ら言及しなかった(同17頁)。また,「法的な評価は弁護士のほうに任せて,我々は事実無根ここが違うというようなことの説明をいたしました。」とも述べているが(同19頁),「事実無根」以外の点について相談したという証言はなかった。さらに,内海証人は,控訴人吉田は弁護士との相談には参加していなかったとも証言しており(同12頁),控訴提起についても内海証人と弁護士が決めたことを控訴人吉田に「追認」してもらうだけで(同27~28頁),訴訟の遂行の経緯について「会長に聞いたところで本件訴訟の細かいことは全然わからない」という(同26頁)。
加えて,内海証人は,「吉田の視野は,凡人とは異なる高いところにあり,これまで同人の意見や指示が不合理であったことなど一度もなく,いつも日本国をよりよくしたいという大きな視点から,社会に問題提起しているのである。」(原審での控訴人らの準備書面3)との主張は会社の共通認識であり,控訴人吉田の言うことは絶対であるとも述べ(同25~26頁),控訴人吉田の権威が,いかに批判を許さない絶対的なものであるかを強く示唆した。
いずれにしても控訴人吉田は本件手記を自ら公表した者であり,本件手記に記載された事実の真偽について最もよく知っているはずの者である。
この絶対的存在である控訴人吉田を差し置いて,一社員である内海証人の上述のあいまい且つ不合理な証言などを信用することなどできないのであり,内海証人の証言などをもって訴訟提起に至る控訴人吉田の内心を立証できたとは到底言い得ない。

本件訴訟(原審)は,控訴人吉田の正当な理由なき不出頭により,証人内海のあいまい且つ不合理な証言だけを残して終了した。控訴人吉田の不出頭は,それ自体が被控訴人の主張を立証する重要な間接事実であるが,これに加えて,民事訴訟法208条の適用によっても,尋問事項に関する被控訴人の主張を真実と認めることができるものである。
すなわち,被控訴人は,控訴人らがその主張する権利等が根拠を欠くものであることを知りながら,言論封殺の不当な目的をもってあえて前件訴訟等を提訴し追行してきたものであると主張し,その具体的な意思決定過程において十分な検討がなされていないことを明らかにするために控訴人会社の代表者でもある控訴人吉田本人の尋問を請求し,裁判所はこれを採用した。しかるに、控訴人吉田は正当な理由なく出頭を拒否したのである。したがって,控訴人らが被控訴人の言論封殺のため十分な検討を行うことなくあえて前件訴訟等を行ったことは,民事訴訟法208条に基づき真実と認めることができるものである。

DHCスラップ「反撃」訴訟・附帯控訴状 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第169弾

DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論は、1月27日(月)午前11時~ 511号法廷でおこなわれる。ことは、表現の自由にも、政治とカネの問題にも、消費者の利益にも関わる。是非、多くの方に傍聴いただきたい。

昨年(2019年)10月4日、東京地裁民事第1部で一審の勝訴判決を得た。この判決は、DHC・吉田嘉明が私(澤藤)を訴えたスラップは違法であると明確に断じた。だから、認容の金額(110万円)にかかわらず、勝利感の強い判決で、当方から積極的に控訴する気持にはならなかった。

ところが、被告側DHC・吉田嘉明が控訴し、私は被控訴人となった。控訴審に付き合いを余儀なくされる立場に立つと、660万円の請求に対する110万円の認容額の少なさに不満が募る。そこで、昨日(1月14日)、弁護団の議を経て、弁護団長の光前さんから附帯控訴状を提出してもらった。その抜粋を掲載する。

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附 帯 控 訴 状(抜粋)

2020年(令和2年)1月14日

東京高等裁判所第5民事部 御中

附帯控訴人(被控訴人、第1審原告) 澤 藤 統一郎
附帯被控訴人訴訟代理人弁護士    光 前 幸 一 外

附帯被控訴人(控訴人、第1審被告) 吉 田 嘉 明
附帯被控訴人(控訴人、第1審被告) 株式会社ディーエイチシー
代表者代表取締役          吉 田 嘉 明

損害賠償請求附帯控訴事件
訴訟物の価額    550万円
貼用印紙額   4万8000円

被控訴人(附帯控訴人)は、上記当事者間の東京高等裁判所令和1年(ネ)第4710号損害賠償請求控訴事件に附帯して、同控訴事件の第1審である東京地方裁判所平成29年(ワ)第38149号損害賠償請求反訴事件について2019年(令和1年)10月4日に言い渡された判決に対して控訴を提起する。

第1 附帯控訴の趣旨
1 原判決中附帯控訴人敗訴部分を取り消す。
2 附帯被控訴人らは、附帯控訴人に対し、連帯して660万円及びこれに対する2014年(平成26年)8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審とも附帯被控訴人らの負担とする。
4 仮執行宣言

第2 附帯控訴の理由
1 原判決に対する附帯控訴人の不服
(1) 原判決は、附帯被控訴人両名による前件訴訟等(東京地方裁判所平成26年(ワ)第9408号事件、およびその控訴事件ならびに上告受理申立事件)の提起を附帯控訴人に対する違法な行為と認め、不法行為の成立を認定した。
従って原判決は、本来当該違法行為から生じた被害者(附帯控訴人)の全損害の賠償を加害者(附帯被控訴人)に命じなければならないところ、そうなっていない。財産的損害をまったく認めなかった点において、そのような体裁さえとっていないものと指摘せざるを得ない。
(2) 差額説に立つ限り、不法行為に因果関係を有する積極消極の全損害の金銭賠償によって、不法行為被害者の経済状態が不法行為以前に回復されなければならない。しかし、原判決は、その視点を欠き、附帯被控訴人(原審被告)の有責を認めながら、被害者(附帯控訴人)が打撃を受けた経済状態を回復しようとの観念がない。
原判決には、誠実に被害者の財産的・精神的損害の内容や深刻さに思いを致すところはなく、損害を金額に見積もる際の慎重さも欠いて、名目的あるいは象徴的な損害賠償額を命じる判決をもって足りるとしている。この原審裁判所の姿勢は、その点において明らかに誤っており、原判決の損害に関する判断は是正されなければならない。
(3) さらに、不法行為損害賠償制度の理念には、同種違法行為の再発予防の効果と機能を期待する側面がある。同種の違法行為の再発を予防するためには、相応の金額の賠償を命じる判決が必要である。
附帯被控訴人吉田嘉明は自らの経済力を誇示する人物であって、いわゆるスラップ訴訟の常習者でもある。経済力とスラップ訴訟常習とは無関係ではない。通常の金銭感覚をもつ者にとっては、弁護士費用や民事訴訟費用法に定められた手数料(以下、「貼用印紙」)などの費用負担が障壁となって、勝訴の見込みが薄い提訴には軽々に踏み切ることができない。経済的強者であって、かつ勝訴を目的とせず被告となる者に多大な負担を与える目的をもつ者のみが、いたずらに高額請求の提訴に及ぶことになる。これがスラップ訴訟であり、前件訴訟はまさしくその典型にほかならない。
前件訴訟の訴額は金銭請求部分だけで6000万円であった。その標準的な弁護士費用は、現在なお弁護士界で標準的な規準とされている「(旧)日弁連報酬等基準」によって算定されるべきであり、附帯被控訴人もこの規準に従って弁護士費用を負担したものと推認することに合理性がある。
附帯被控訴人らは、勝訴の見込みのない事件の提訴を訴訟代理人弁護士に依頼したのであるから、弁護士費用としては着手金の支払いだけが負担になるところ、同基準によれば、各審級ごとに必要な着手金額は、249万円である。結局、その3倍である747万円が前件訴訟において附帯被控訴人らが負担した弁護士費用である。確実な反証のない限り、そのように推認すべきである。
また、前件訴訟の訴状に貼付すべき印紙額は、6000万円の損害賠償請求部分に限っても20万円を要し、控訴状には30万円、上告受理申立書には40万円が必要となる。附帯被控訴人らは、少なくとも合計90万円の印紙貼付費用を負担した。
以上のとおり、弁護士費用と貼用印紙とを併せて計837万円となる。附帯被控訴人らはこの支出を負担と感じることなく、勝訴の見込みのない前件訴訟の提訴に及んだものである。
原判決が請求を認容した110万円は、この附帯被控訴人らの実費負担金額に比してまことに過小というほかはない。837万円の費用負担に110万を上乗せしても947万円である。見方によっては947万円の出捐を覚悟しさえすれば、同様のスラップ訴訟の提起を繰り返すことが可能ということなのである。同種事件を10件も提起した附帯被控訴人らにとって、自分を批判する言論を封じるための費用として、さしたる負担ではない。結局、附帯被控訴人らには、この程度の認容金額では到底同種違法行為再発の予防効果を期待することができないことになる。
この点からも、原判決の損害賠償認容額はまことに不十分で、再考を要するものと言わねばならない。

2 原審における損害額の主張(略)
(4) 以上の損害合計金額の内金として、660万円の賠償を請求する。

3 損害額についての原判決の認定
以上の請求に関する原判決の判断は以下のとおりである。
(1) 原告は、前件訴訟に係る弁護士費用500万円を損害として主張する。
しかしながら、原告は、前件訴訟及び本件訴訟を通じて、訴訟追行に関して原告自身が出捐した費用の総額が200万円である旨を供述している(原告本人14頁、15頁)。
当該供述を前提とすると、上記出捐に係る費用には、前件訴訟に係る弁護士費用以外の費用が相当程度含まれるものと推認するほかなく,一方で,原告は、前件訴訟に係る弁護士費用のうち、自らが出損した部分について、他の客観的証拠を提出していない。
以上によれば、前件訴訟の弁護士費用に係る損害の発生を認めるに足りる証拠はないものというほかない。
(2) また、被告らによる前件訴訟の提起等については、原告において、応訴の負担等があったものと認められる反面、以上述べたところに照らせば、敗訴の可能性(多額の損害賠償債務の負担)の観点から、原告の精神的な損害を過大に評価することは困難である。その他、本件に現れた一切の事情を総合すると、原告の精神的損害に対する慰謝料として100万円を認めるのが相当である。
そして、原告が本件を提起せざるを得なかったことについての弁護士費用としては、上記損害額合計100万円の1割に相当する10万円を認めるのが相当である。

4 前件訴訟による財産的損害を認めない原判決の誤り
(1) 以上のとおり、附帯控訴人が主張する損害費目と損害額は次のとおりである。
①前件訴訟応訴のための財産的損害(弁護士費用)少なくとも500万円
②前件訴訟提起による精神的損害(慰謝料)      少なくとも500万円
③本件訴訟提起のための弁護士費用            100万円
④損害合計1100万円の内金660万円の請求
これに対する、原判決の認定は、以下のとおりとなっている。
①前件訴訟応訴のための財産的損害(弁護士費用)   ゼロ
②前件訴訟提起による精神的損害(慰謝料)      100万円
③本件訴訟提起のための弁護士費用        10万円
④合計認容額                 110万円
(2) 以上の3費目の内、前件訴訟提起等による財産的損害(応訴費用)をまったく認めなかった原判決の判断が際だって不当というべきである。
弁護士を依頼して民事訴訟を追行する場合、その費用負担がゼロであることはあり得ない。しかも、原判決は「原告は、前件訴訟及び本件訴訟を通じて、訴訟追行に関して原告自身が出捐した費用の総額が200万円である旨を供述している(原告本人14頁、15頁)。」ことまでは認定している。にもかかわらず、前件訴訟に関しての訴訟追行のための弁護士費用出捐についての特定に欠けるとして、この費目での損害をまったく認めなかった。これは、極めて偏頗な認定というしかない。原告(附帯控訴人)自身が出捐した費用の全額が、違法な被告(附帯被控訴人)らの前件訴訟提起がなければ出捐の必要のない、相当因果関係を有する出捐であることが明らかだからである。
仮に原審裁判所が当該費目の損害額の認定のためには、出捐実額の主張と立証が必要だと考えたとすれば、その旨の釈明を求めるべきであった。あるいは、民事訴訟法248条の活用によって、相当な金額を認定すべきでもあった。このような手続のないまま、不意打ちでのゼロ認定は、民事訴訟におけるあるべき裁判所の姿勢ではない。
(3) 原審での原告(附帯控訴人)の応訴費用の損害額についての主張は、出捐の実額ではなく「通常生ずべき相当額」をもって認定すべきであり、その相当額の認定は「旧弁護士会報酬規程」における「弁護士報酬標準額」によるべきであるとの主張であった。附帯控訴人は、当審においてなお、主位的にはこの主張を維持するものである。
不法行為による損害の有無や金額の認定には、個別性の高いものとして、実損害額の証明を必要とする範疇のものと、損害実額の証明には馴染まず、規範的な相当額を認定すべき範疇のものとがある。
民事訴訟の被告とされた者が訴訟追行のために弁護士を依頼することはごく自然なことであり、その依頼には費用の負担が伴うことも自明である。必然的に生じるこの負担を損害として把握するに際しては、その額は実出捐額ではなく、規範的な相当額として認定すべきものである。
仮に、弁護士費用としての出捐実額が相当額を超えたとしても、その超過分は相当因果関係ある損害とは見なしがたい。また、仮に、実出捐額が相当額に満たないとしても、その偶然的事情を不法行為者の利益とすることは許されない。
また、不法行為制度における違法行為抑止の効果を期待する側面からも、被害者の出捐実額によらない「通常生ずべき相当額」を損害として認定することが求められる。そのことが、いたずらに高額な請求におよぶ不当訴訟の横行を抑止することになるからである。
(4) 原判決も、本件訴訟提起の弁護士費用については10万円を認めているが、これに関して出捐実額の証明を求めてはいない。個別の具体的証明ないまま、「相当の」損害額を10万円として、同額の賠償請求を認容している。
これは、不法行為被害者が、訴訟追行を余儀なくされたことに付随する財産的損害である訴訟追行費用を、出捐の実額を損害とするものではなく、規範的に定まる「通常生ずべき相当額」を損害と把握していることを示している。
本件訴訟の訴訟追行費用をこのように認めながら、前件訴訟の訴訟追行費用をまったく認めなかった原判決の判断には、明らかな矛盾がある。
(5) 前件訴訟における附帯被控訴人ら(前件訴訟・原告ら)の一連の違法行為は、提訴だけでなく、請求の拡張であり、控訴であり、上告受理申立でもある。本来訴訟委任契約は各審級ごとになされ、弁護士費用の負担も各審級ごとになされる。応訴費用の「相当額」は、各審級ごとの着手金と事件終了後の成功報酬となる。附帯控訴人は、依頼した弁護士の努力によって勝訴を得たのであるから、当然に標準的な各審級ごとの着手金と成功報酬を支払わねばならないことになる。旧弁護士会報酬規程から、その標準額を算出すると、
着手金は、249万円×3=747万円
成功報酬は、6000×0.06+138万円=498万円
総計では、1245万円となる。
この訴額を設定したのは、附帯被控訴人ら自身である。それに相応する負担を甘受すべきである。そのようにして始めて、違法行為を抑止し、再発防止を期待することが可能となる。
(6) これまで、違法な提訴による損害賠償を認容した判決例において、応訴費用(弁護士費用)を損害と認定することについて論じたものは極めて少ない。
しかし、最近いわゆるスラップ訴訟が横行する状況下に、応訴費用を違法な提訴の損害として認定する判決が現れている。
その典型判決が、判例時報2354・60に紹介されている、2017年(平成29年)7月19日東京地方裁判所民事第41部判決(平成28年(ワ)第29284号損害賠償請求事件)である。
同誌は、同判決の「判示事項」として、「NHKの受託会社の従業員が放送受信契約締結勧奨のために訪問したことが不法行為に当たるとして提起された別件訴訟につき、権利が事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、業務を妨害する目的であえて提訴したもので、裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠く不当訴訟であるとして、別件訴訟の原告と提訴を促し訴状の作成に関与した者との共同不法行為責任を認めた事例」と紹介しているが、より注目すべきはその損害の認定である。
同事件においては、原告の請求が「別件訴訟」の応訴費用についてだけのものであり、判決は訴訟追行に必要な弁護士費用として原告(別件訴訟被告)が支払った54万円の全額を、「相当」と認めた。
このNHKを被告とする「別件訴訟」は、訴額10万円に過ぎない。しかも、本人訴訟である。松戸簡裁に提起されて、千葉地裁松戸支部に移送されたのが2015年(平成27年)10月8日。その後NHKが弁護士費用を支払い、翌16年(平成28年)2月19日には判決に至っている。考えうる限り迅速に審理が終了して判決に至った簡易な事案であって、この判決は控訴なく確定している。
引用の東京地裁民事41部判決は、訴額10万円の損害賠償請求事件における被告NHK側の応訴費用である弁護士費用54万円全額を損害として認定し、その賠償を命じた。
これに比して、本件附帯被控訴人DHCと吉田嘉明が提起した、本件における前件訴訟は訴額6000万円の損害賠償請求事件である。しかも原告側は本人訴訟ではなく訴訟代理人が付いている。さらに、一審だけでなく、控訴審も上告受理申立審まである。それでいて、応訴に不可欠な弁護士費用の負担を損害額としてまったく認めず、その部分の認容額がゼロだという。この極端な不権衡は明らかに不当というほかはない。
(7) なお、同判決の損害額に関する下記の判示が注目される。この考え方は、本件においても、十分に斟酌されるべきである。
「被告らは、訴額が10万円にすぎない別件訴訟の弁護士費用として54万円もの費用をかける必要はなく、因果関係がない旨主張する。しかしながら、応訴の費用として通常生ずべき金額は、弁護士に対する委任の有無、当該訴訟における訴額及び当該訴訟の有する社会的影響力等の諸要素を考慮して判断すべきものであるところ、受信契約締結の勧奨が不法行為に該当するとして、原告に対する損害賠償請求訴訟が相当数提起されており、その勝敗が、係属中の他の訴訟や今後同種の訴訟が提起される可能性に影響を及ぼし得るものであること等を踏まえれば、前記認定金額が不相当であるとか相当因果関係がないということはできず、被告らの主張は採用することができない。」
以上のとおり、同判決も、応訴費用の損害額を「応訴の費用として通常生ずべき金額」としている。また、その通常生ずべき金額の多寡を決するには、「当該訴訟における訴額及び当該訴訟の有する社会的影響力等の諸要素を考慮して判断すべきもの」「原告に対する損害賠償請求訴訟が相当数提起されており、その勝敗が、係属中の他の訴訟や今後同種の訴訟が提起される可能性に影響を及ぼし得るものであること等を踏まえ」るとしていることが、重要である。本件においても、前件訴訟の勝敗がスラップ訴訟提起常習者としての附帯被控訴人らが今後同種訴訟を繰り返し提起する可能性に影響を及ぼし得るものであるからである。
(8) 附帯控訴人は、違法な前件訴訟を提起されたために220万円の出捐を余儀なくされた。
なお、原審での本人尋問では附帯控訴人は自らの出捐額を200万円と述べているが、これは正確な金額ではない。同人は確実な記憶だけを控えめに述べたもので、その後確認したところでは、合計出捐額は220万円である。具体的には後述する。
これに対して、原判決が経済的損害として認めたものは、わずかに10万円に過ぎない。2件の民事訴訟の追行を弁護士に依頼し、しかも、いずれも上訴の審級を重ねるに至っている。その弁護士費用が10万円で済むはずはない。
違法な行為あれば、それに起因する損害を賠償せしめるということが法の正義である。原判決がその正義を実現をしていないことがあまりに明かというべきである。
前述のとおり、そもそも前件訴訟で成算もないままに6000万円という高額な訴額を設定したのは、違法な訴訟を提起した両名の反訴被告(附帯被控訴人)自身である。裁判所が、この不当訴訟の高額請求についての応訴費用負担の重大性を看過して、これに対する標準的な弁護士費用の損害賠償を認めないのでは、違法なスラップ訴訟の横行を黙認するばかりか、スラップ訴訟提起を奨励するに等しい。経済的強者である反訴被告(附帯被控訴人)らは自由に不当訴訟を提起することができる一方、訴訟提起を受けた者は応訴費用の負担をまかなうことができなくなるからである。このことは、表現の自由が逼塞した恐るべき社会を招来するすることに繋がる。
以上のとおり、附帯控訴人の前件訴訟における弁護士費用負担の損害は、出捐実額ではなく、標準的な弁護士費用である(旧)日弁連報酬等基準によって算定されるべきであり、その額は少なくとも500万円を下らない。

5 前件訴訟における精神的損害
(1) (略)
(2) なお、原判決は「敗訴の可能性(多額の損害賠償債務の負担)の観点から、原告の精神的な損害を過大に評価することは困難である。」と説示する。
つまりは、一見して請求認容となり得ない訴訟なのだから、こんな提訴の被告とされたところで痛痒を感じるところはなく、精神的被害が大きいとは言えない、との趣意だが、それは一面的な見方に過ぎない。
敗訴の可能性が小だということは、提訴の違法性がより大であることを意味する。一方敗訴の可能性が大だということは違法性の程度が小ということを示している。とすれば、原判決は、違法性が大なる場合には慰謝料額を低額とし、違法性が小なる場合には慰謝料額が高額になるという奇妙な相関を認めていることになる。通常の法感覚も、訴訟実務もその逆である。違法性の高い行為による被害には、高額の慰謝料をもって、精神的損害の慰藉が行われなければならない。
また、現実には、不当訴訟の被害者は、当該不当訴訟における敗訴可能性の有無・濃淡にかかわらず、応訴のためには全力を尽くさざるを得ず、その割くべき時間や労力にさしたる差異はない。荒唐無稽な不当提訴であればあるほど煩わしさや腹立たしさは募るものでもあって、精神的な被害は大きいというべきである。

6 本件訴訟追行費用について
(1) 原判決は、慰謝料として認容した損害額100万円の10%を本件訴訟追行費用とみとめた。当然に十分な金額ではない。10万円の弁護士費用で、訴訟追行が可能であるはずはなく、まったく非現実的で形式的な「損害」の認定である。
原審裁判所のこのような姿勢は、違法行為による損害回復のために不可欠な費用を非現実的で形式的なものにとどめるものとして、違法な被害を被った被害者に対して、被害回復の法的措置への意欲を抑制して、加害者の立場に加担するものと言わざるを得ない。
(2) この点についても、前記引用の2017年(平成29年)7月19日東京地方裁判所民事第41部判決の次の説示を参考にすべきである。
「応訴の費用として通常生ずべき金額は、弁護士に対する委任の有無、当該訴訟における訴額及び当該訴訟の有する社会的影響力等の諸要素を考慮して判断すべきものである」
これは本件訴訟追行費用については、次のように読み替えることができる。
「不法行為による損害を賠償すべき訴訟追行のための弁護士費用として通常生ずべき金額は、当該訴訟における訴額及び当該訴訟の有する社会的影響力、事件の複雑さ等の諸要素を考慮して判断すべきものである」
前述のとおり、同引用判決では訴額10万円の事件で、応訴費用として54万円の弁護士費用を損害として認めた。この程度の費用なくしては、弁護士を依頼しての本格的な訴訟追行は現実的に不可能なのである。この理は、本件訴訟追行費用においても、生かされなければならない。
(3) 事件の規模、社会的影響力、複雑さ等々の諸要素を考慮すれば、前件訴訟による損害額の如何にかかわらず、本件訴訟追行費用たる弁護士費用としては、100万円が相当である。

7 前件訴訟追行費用についての主張の追加
(1) 附帯控訴人は、前述のとおり、飽くまでも前件訴訟追行費用としての損害額は、現実の出捐額ではなく、規範的な意味での損害と把握して、当該訴訟に必要な標準的弁護士費用額とすべきことを主位的主張として維持する。
しかし、貴裁判所の心証が必ずしも附帯控訴人の主位的主張に与しない場合に備えて、以下の負担実額の主張を追加する。
(以下略)
8 結論
以上のとおり、損害額の認定において過小な原判決の附帯控訴人敗訴部分は取り消されなければならず、改めて附帯被控訴人ら両名に、附帯控訴人に対して連帯して660万円及びこれに対する2014年(平成26年)8月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう、求める。

附 属 書 類

附帯控訴状副本                  2通

(2020年1月15日)

 DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審では、附帯控訴を予定 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第168弾

DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論は、1月27日(月)午前11時~ 511号法廷でおこなわれる。ことは、表現の自由にも、政治とカネの問題にも、消費者の利益にも関わる問題である。是非、多くの方に傍聴いただきたい。

昨年(2019年)10月4日、東京地裁民事第1部で一審の勝訴判決を得た。この判決は、DHC・吉田嘉明が私(澤藤)を訴えたスラップは違法であると明確に断じた。だから、請求認容額(110万円)にかかわらず、勝利感の強い判決で、当方から積極的に控訴する気持にはならなかった。

ところが、被告側DHC・吉田嘉明が控訴し、私は被控訴人となった。控訴審に付き合いを余儀なくされる立場に立つと、660万円の請求に対する110万円の認容額の少なさに不満が募るようになった。そこで、附帯控訴をすることとなった。

原審で原告が請求した損害は以下の3費目である。なお、前件訴訟というのが、DHC・吉田嘉明が私に仕掛けたスラップ訴訟のことであり、本件訴訟が反撃訴訟のことである。
①前件訴訟応訴のための財産的損害(弁護士費用)
②前件訴訟提起による精神的損害(慰謝料)
③本件訴訟提起のための弁護士費用
この三者を合計した損害の内金として660万円を請求した。

これに対する、原判決の認定は、以下のとおりとなっている。
①前件訴訟応訴のための財産的損害(弁護士費用)ゼロ
②前件訴訟提起による精神的損害(慰謝料)     100万円
③本件訴訟提起のための弁護士費用        10万円

まず慰謝料の額が低い。その理由を判決は、「敗訴の可能性(多額の損害賠償債務の負担)の観点から,原告の精神的な損害を過大に評価することは困難である。」という。噛み砕いて言えば、「こんな荒唐無稽の訴訟をされたところで、被告(澤藤)が負けるはずもないのだから、大した心配をすることはなかったでしょう」というのだ。それはなかろう。訴訟が荒唐無稽であればあるほど腹立たしさは募るものなのだ。また、敗訴可能性の濃淡にかかわらず、応訴のための時間と労力を割かねばならない煩わしさには多大なものがある。到底100万円では納得しがたい。

なによりも、前件スラップ訴訟に応訴のための弁護士費用負担分を認めなかったことが不服である。

この金額は本来多額である。訴額6000万円の事件だと弁護士費用の標準額は旧弁護士会報酬規程に則って着手金が247万円である。しかも、これが各審級で必要となる。成功報酬は678万円である。私が、この標準額を弁護団に支払うとなれば、1425万円となる。その一部でも、違法なスラップを提訴したDHC・吉田嘉明に支払わせなければならない。

実は、これまで、違法なスラップ提訴による損害賠償を認容した判決例において、弁護士費用を損害と認定したものは極めて少ない。ところが、最近N国がこの種の判例を作ってくれている。その典型が、判例時報2354号60頁に紹介されている、2017年7月19日東京地方裁判所民事第41部判決。

同判決は、「NHKの受託会社の従業員が放送受信契約締結勧奨のために訪問したことが不法行為に当たるとして提起された別件訴訟につき、権利が事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、業務を妨害する目的であえて提訴したもので、裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠く不当訴訟であるとして、別件訴訟の原告と提訴を促し訴状の作成に関与した者との共同不法行為責任を認めた事例」と紹介されている。

端的に言えば、N国の指示に従って、視聴者の一人がNHKを被告とする10万円の損害賠償訴訟を提起し,当然のごとくに敗訴した。ところが問題はそれで収まらない。この訴訟をスラップと考えたNHKが、逆に54万円の弁護士費用について損害賠償訴訟を提起してその全額が認容されたという事件である。

注目すべきはNHKの請求が「別件訴訟」の応訴費用についてだけのものであり、判決は訴訟追行に必要な弁護士費用としてNHKが弁護士に支払った54万円の全額を、「相当」と認めた。「別件訴訟」は訴額10万円に過ぎない。しかも、原告2人(視聴者とN国幹部)とも弁護士をつけない本人訴訟である。考えられる限り迅速に審理が終了して判決に至った簡易な事案であって、この判決は控訴なく確定している。

それでも、東京地裁民事41部は、訴額10万円の損害賠償請求事件における被告側の応訴費用である弁護士費用54万円全額を損害として認定し,その賠償を認定した。

これと比較すれば、DHC・吉田嘉明の私(澤藤)に対する前件スラップ訴訟は、訴額6000万円の大型損害賠償請求事件である。しかも原告側は本人訴訟ではなく弁護士が訴訟代理人として付いている。さらに、一審だけでなく、控訴審も上告受理申立審までフルコースを闘った。それでいて、応訴に不可欠な弁護士費用の負担を損害額としてまったく認めず、その部分の認容額がゼロだという。この極端な不権衡は明らかに不当というほかはない。

 N国事件判決中に次の説示がある。不当提訴の応訴費用を相当な損害として認定するには、「当該訴訟における訴額及び当該訴訟の有する社会的影響力等の諸要素を考慮して判断すべきもの」「原告に対する損害賠償請求訴訟が相当数提起されており、その勝敗が、係属中の他の訴訟や今後同種の訴訟が提起される可能性に影響を及ぼし得るものであること等を踏まえ」る、というのである。

DHC案件においても、DHC・吉田嘉明から私(澤藤)に対する前件訴訟の勝敗が、スラップ訴訟提起常習者としてDHC・吉田嘉明の行動に、大きく影響する。私が十分な勝ち方をすれば、吉田嘉明はこれに懲りて、今後同種のスラップ訴訟の提起を断念することになろうる。しかし、私が十分な勝ち方をしなければ、吉田嘉明は懲りることなく、またスラップを続けるだろう。

私の勝訴は社会を益することになり、吉田嘉明が勝てば社会を害することになるのだ。
(2020年1月8日)

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