澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

DHCと吉田嘉明は、なんの反省もしていない。ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第105弾

本日(6月9日)、DHCと吉田嘉明から、内容証明郵便による「回答書」(6月8日付)が届いた。私からのDHCと吉田嘉明への5月12日付各内容証明郵便による損害賠償請求に対する返答である。予想されたとおりの内容ではあるが、あらためてDHCと吉田嘉明が自らの行為をまったく反省していないことが確認できる。

私が発送した5月12日付損害賠償請求書は、「『DHCスラップ訴訟』を許さない・第105弾」(5月12日)としてアップしているが、これを再掲してDHC・吉田の回答書を掲載する。
なお、第102弾のURLは下記のとおりである。
http://article9.jp/wordpress/?p=8539

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損害賠償請求書
2017年5月12日
住所
被通知人 株式会社ディーエイチシー
代表者代表取締役 吉田嘉明殿

通知人 澤 藤 統一郎

2014年4月16日、被通知人は、吉田嘉明とともに原告となって、通知人を被告とする東京地方裁判所平成26年(ワ)第9408号損害賠償等請求事件を提起した。その請求の趣旨は、相原告と併せて2000万円の支払い請求と、通知人のブログ記事の削除ならびに謝罪文掲載の各請求であり、その請求原因は、通知人のインターネット上のブログ記事が被通知人らの名誉を毀損し侮辱するものとの主張であった。
同事件の訴状は同年5月16日に通知人に送達され、7月11日の進行協議を経て、8月20日が事実上の第1回口頭弁論期日となったが、その直後の同月29日請求の拡張がなされ、請求金額は相原告と併せて6000万円となった。
同事件は、2015年9月2日に請求を全部棄却した判決言い渡しとなったが、被通知人ら両名は東京高等裁判所に控訴し、控訴審は第1回口頭弁論期日に結審して、2016年1月28日控訴棄却の判決言い渡しとなった。
被通知人らはさらに最高裁に上告受理を申立てたが、同年10月4日の同裁判所不受理決定によって、本件は確定した。
以上の被通知人の本件提訴と提訴後の訴訟追行の経過は、被通知人らが民事訴訟本来の権利の救済や回復を目的として提訴したものではなく、明らかに通知人の正当な言論を嫌忌して、これを妨害し封殺しようとしたものと断じざるを得ない。何人にも裁判を受ける権利が保障されているとはいえ、かかる民事訴訟本来の趣旨目的を逸脱濫用した提訴は違法というしかない。
したがって、被通知人は、故意又は過失によって通知人の法律上保護される利益を侵害した者として、民法709条および同719条1項に基づき、吉田嘉明と連帯して通知人に生じた全損害を賠償する責任を負うものであるところ、通知人に生じた損害は、応訴の費用や職務への支障、ならびに高額賠償請求を手段とした恫喝的態様による表現の自由侵害による精神的損害等を合算して、その金額は600万円を下回るものではない。
よって、通知人は被通知人ならびに吉田嘉明に対し、連帯して、600万円の支払いを求める。
なお、仮に、被通知人が本損害賠償請求に応じない場合には、損害賠償請求の提訴をすべく準備中であることを申し添える。

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平成29年6月8日

澤藤統一郎殿

吉田嘉明及び株式会社ディーエイチシー代理人
弁護士今村憲

当職は、吉田嘉明及び株式会社ディーエイチシー(以下「当方」といいます。)の代理人として、貴殿作成の平成29年5月12日付け損害賠償請求書について、次のとおり回答します。
貴殿は、当方の提訴は、貴殿の正当な言論を忌避して、これを妨害し封殺しようとしたものと断じざるを得ないなどと主張し、同様の主張を裁判においてもしていました。
しかし、東京地方裁判所平成27年9月2日判決は、かかる貴搬の主張について、次のとおり判示しました。「被告は、本件訴訟について、いわゆるスラップ訴訟であり、訴権を濫用する不適法なものであると主張する。この点、本件訴訟において名誉毀損となるかが問題とされている本件各記述には、断定的かつ強い表現で原告らを批判する部分が含まれており、原告らの社会的評価を低下させる可能性があることを容易に否定することができない。また、本件各記述が事実を摘示したものか、意見ないし論評を表明したものであるかも一義的に明確ではなく、仮に意見ないし論評の表明であるとしても、なにがその前提としている事実であるかを確定し、その重要な部分が真実であるかを確定し、その重要な部分が真実であるかなどの違法性阻却自由(澤藤註・事由の間違い)の有無等を判断することは、必ずしも容易ではない。そうすると、本件訴訟が、事実的、法律的根拠を全く欠くにもかかわらず、不当な目的で提訴されたなど、裁判制度の趣旨目的に照らして許容することができないものであるとまで断ずることができず、訴権を濫用した不適法なものということができない。このことは、本件各記述が選挙資金に関わることによって左右されるものではない。したがって、本件訴訟をスラップ訴訟として却下すべき旨をいう被告の主張は、採用することができない。」
以上のとおり、貴殿の主張は、2年前に既に裁判所において排斥されており、今更これを蒸し返すことは信義則により遮断されるものです。
そもそも、貴殿は、第1審の当初に提出した平成26年6月4日付け「事務連絡」において、「次々回(第2回期日)の日程は、2か月ほど先に指定いただくようお願いいたします。その間に、弁護団の結成と反訴や別訴等の準備をいたします。」などと書き、訴訟係属中も反訴すると言いながら、結局反訴しませんでした。
当方が名誉毀損だと指摘した貴殿のブログの記述は、違法性阻却事由により裁判においては違法でない旨判示されたものの、同時にその大半の記述が、当方の社会的評価を低下させるとも判断されており、貴殿が弁護士でありながらも当方の名声や信用を一般読者に対して著しく低下させたことは事実であり、このような事実無根の誹膀中傷をネットに書き散らす行為が許容される事態は社会的に問題であり、当然600万円を支払えという貴殿の不当な請求にも応じられないことをここに回答します。 以上

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私は、DHC・吉田によって、6000万円請求の民事訴訟の被告とされた。その訴訟の提起とその訴訟追行のあり方が違法で、不法行為にあたるということでの損害賠償を請求した。

この不当・違法な提訴による損害は600万円とした。6000万円を基準額とする提訴への応訴の弁護士費用(地裁・高裁・最高裁各審級の着手金と成功報酬)だけで、600万円を下らない。通常、このくらいはかかる。

もとより、裁判を受ける権利は誰にも保障されている。民事訴訟を提起して敗訴したからというだけで、その提訴が違法で被告に生じた応訴のための損害賠償の責任が生じるわけではない。しかし、飽くまで民事訴訟という制度は、侵害された権利の救済を目的とするものである。その趣旨・目的を逸脱して、正当な言論を抑圧し封殺して、萎縮効果をねらった恫喝的な提訴となれば違法というしかない。不法行為が成立して因果関係が認められる限りの全損害を賠償しなければならないのだ。

DHC・吉田の、私に対する6000万円請求は、典型的なスラップであり、その濫発は連鎖的に模倣者を輩出しかねない。言論の自由に対する脅威であり、民主主義の基礎を揺るがしかねない大きな問題でもある。

本日受領した回答では、DHC・吉田は、この点についての反省も自覚もない。敗訴判決を受けて、自らの提訴について反省の弁を述べるところはない。

DHC・吉田のもの言いは、相変わらず、「このような事実無根の誹膀中傷をネットに書き散らす行為が許容される事態は社会的に問題」などという、独善きわまるものである。

なお、回答書において、一審判決が引用されているのは、被告が「本件提訴は不適法として却下を求める」とした部分の判断で、提訴が損害賠償の対象となるか否かの判断ではない。

むしろ、確定判決において、私の問題とされたブログでの言論は「いずれも意見ないし論評の表明であり」「公共の利害に関する事実に限り」「その目的がもっぱら公益をはかることにあって」「その前提事実の重要な部分について真実であることの証明がされており」「前提事実と意見ないし論評との間に論理的関連性も認められ」「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものということはできない」と認定されている。

この期に及んで「事実無根の誹膀中傷をネットに書き散らす」などと言い募るDHC・吉田の態度は、敗者の潔さに欠けている。吉田は敗訴に至った自らの提訴の不当を理解していない。もちろん、表現の自由の意義も、表現の自由を妨害する不当・違法もまったく分かっていないようなのだ。

もっとも、DHC・吉田が「当方が名誉毀損だと指摘した貴殿のブログの記述は、…その大半の記述が、当方の社会的評価を低下させるとも判断されており、貴殿が弁護士でありながらも当方の名声や信用を一般読者に対して著しく低下させたことは事実」というのは、そのとおりである。

表現の自由とは、誰をも傷つけない無害の言論を表明する自由のことではない。そのようなものは、権利とも自由ともいうに値しない。権力者や社会的強者を批判し、その名声や信用を傷つけることが許容されることを言うのだ。まさしく、私の吉田嘉明についての言論はそのようなものだった。法は、吉田の名声や信用よりも、その批判の言論に優越的な価値を認めたのだ。

実は、そのことは自明なことであった。にもかかわらず、DHC・吉田は敢えて高額な訴訟提起の恫喝をもって、自分への批判を封じようとしたのだ。これについての制裁がなければならない。

102弾でも申しあげたとおり、訴訟開始の暁には、経過を当ブログで逐一ご報告したい。民主主義を大切に思われる多くの方々に、関心をお寄せいただきたい。そして、応援していただきたい。
(2017年6月9日)

スラップ被害・戦友との邂逅ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第104弾

日民協の機関誌「法と民主主義」に、「あなたとランチを」という見開き2ページの続きものコーナーがある。佐藤むつみ編集長が、毎号しかるべき人物を選定してランチをともにしつつインタビューを行い、その人の来し方や現在の活動を紹介する。ランチをともにしつつと言う、くだけた雰囲気が売りもので、なかなかの評判。

さて、2017年6月号(6月下旬刊)の「あなた」(ランチ・メイト)は、明治大学商学部教授(会計学)の野中郁江さん。本日、明治大学リバティタワー23階のレストランでの、「ランチ」となった。私も、佐藤編集長の付録としてランチをともにした。

初めてお目にかかった野中さん。そのインタビューは陪席していて楽しいものだった。この方、東洋史専攻の学生だったが、労働組合運動に役立とうと志して会計学の専門家になったという。実践と学問とがマッチした、稀有な幸せの人。その詳細は「法民」に譲るとして、私が臨席した理由は、野中さんがスラップ訴訟の被告として闘った方だからだ。私の関心は、もっぱらその件。読者の立場からではなく、同じスラップの被害者としての立場からの聞き役。職権を濫用しての役得だった。

昭和ホールディング(の役員)から5500万円の損害賠償請求訴訟を提起されて最高裁まで争って勝訴した野中さんと、DHC・吉田から6000万円の損害賠償請求訴訟を提起されて同じく最高裁まで争って勝訴した私とは、戦友にほかならない。けっして、同病相憐れむの仲ではない。

野中さんは、雑誌『経済』(2011年6月号)に掲載した、学術論文「不公正ファイナンスと昭和ゴム事件 問われる証券市場規制の機能まひ」と、東京都労働委員会に提出した鑑定意見書の記述が「名誉毀損にあたる」とされた。これはひどい話。(「昭和ゴム」は、現「昭和ホールディング」の旧商号)

政治家への8億円裏金提供を批判されてスラップに及んだDHC・吉田嘉明も相当にひどいが、学術論文をスラップで訴えた昭和ホールディングもひどさでは負けていない。名誉毀損訴訟実務では、違法と主張された表現を、「意見ないし論評部分」と「事実摘示部分」とに分類する。前者は、根拠とした事実が真実である限り原則として違法性がないとされる(表現の自由が最大限尊重される)。後者は、公共性・公益性・真実性(ないし相当性)が備わっている限り違法性が阻却される。

学術論文は、明らかに「意見ないし論評」にあたる。その「意見ないし論評」の根拠となる事実の真偽は問題となり得るが、会社が発表した財務諸表や有価証券報告書等を資料として分析を行う限り、名誉毀損の問題が生じうるとは考え難い。よくもまあ、提訴をしたものだ。

野中さんは、昭和ゴム労組の依頼を受けて、昭和HDなどが発表する投資家向けの資料や有価証券報告書などをもとに、約30億円もの金が、短期間に昭和ゴムからAPFにわたったその資金の流れやからくり、経営実態などを分析・研究し、同論文をまとめた。

この件で、野中分析によって違法行為を炙り出されたのは、昭和ホールディングス(HD)と同社を事実上支配する親会社アジア・パートナーシップ・ファンド(APF、所在はタイ)。HDの資金約30億円が流出しこれがAPFに還流している。

訴状で「名誉毀損」とされたのは、たとえば同論文の次の個所。
「昭和ゴム事件の特徴は、ファンドによる企業からの財産収奪が行われている、あるいはその危険性が高いという点にあり、その被害者は一般投資家であるとともに、200名余の労働者、さらには取引先、地域経済である」

こんな研究論文の一節が高額損害賠償請求のターゲットになって、研究発表が萎縮したのでは、大きな社会的損失ではないか。どのスラップにも特徴がある。野中事件では、「学問研究とその発表の自由」阻害の問題なのだ。

一審段階の赤旗に野中さんのコメントが紹介されていた。
「ファンドにかかわっていま、証券市場の規制がどういう役割を果たせるか、が問題になっています。この分野の研究は、私の従来の研究テーマであるとともに、大学教員としての社会貢献活動でもあります。こうした不当な訴えを許せば、研究も社会貢献活動もできなくなります」「ファンドの問題点について論文を書いて訴えられれば、研究そのものが萎縮させられます。学問の自由を守るためにも、社会的に包囲する運動をすすめたい」

また、科学者会議の米田貢事務局長(中央大学教授)のコメントも紹介されている。
「学問は、自由な知的な活動と研究成果の自由な発表、それに基づく学術的な討論によって発展してきました。自分に不利な内容の研究成果の発表を、高額な損害賠償請求で抑え込もうとする今回の提訴は、典型的なスラップ訴訟です。真理の探究をめざす学問の自由に対する許しがたい挑戦であり、野中氏個人ではなく、学術世界、研究者全体にかけられた不当な攻撃です」

野中さんは、最初に訴状を手にしたときの気持をこんな風に語った。
「こんな裁判に絶対に負けるはずがないとは思いましたよ。しかし、これからいったい何年こんな裁判に付き合わなければならないのか。どれだけ、時間と労力をとられるのか。それを考えると暗澹たる気持になりました」「以来、最高裁で勝訴確定するまで、仲間や支援のみんなに『よろしくお願いします』と頭を下げっぱなし。このストレスも大きかった」

こんな気丈な方にして、スラップはいやなもの。スラップはストレス。そして、それゆえにスラップは社会に言論萎縮効果をもたらす。言論の萎縮効果は文明の敵、人類進歩の阻害物だ。スラップを退治して一掃しなければならない。
(2017年6月7日)

イナダ敗訴確定の名誉毀損訴訟は、DHCスラップ訴訟と同じ構造。ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第103弾

豊穣な日本語の言語空間の片隅に、「藪蛇」という言葉がある。この「藪を突いて蛇を出す」の出典が分からない。小学館の「故事・俗信・ことわざ大辞典」にも、用例は出て来るが出典の記載はない。

出典など分からなくても、「しなくてもよいことをしたことで災難を招いて臍を噛む」ことは、誰にも憶えのあること。とりわけ、イナダさんご夫妻には、思い当たることが多々ありそう。

夫君稲田龍示弁護士の「藪蛇」については、当ブログに「『弁護士バカ』事件で勇名を馳せたイナダ防衛大臣の夫は防衛産業株を保有」(2016年9月18日付)の記事を書いた。
http://article9.jp/wordpress/?p=7458
もっとも、このブログは揶揄の記事ではない。防衛大臣の家族が、特定の防衛産業企業株を購入していることの問題点の指摘と恐ろしさへの警告である。ではあるが、見事に藪を突いて立派な蛇を、突つき出した好例でもある。この人の「弁護士バカ」なる一語への反応と提訴がなければ、稲田龍示の蛮名がとどろくことはなかっただろう。

さすがは教育勅語信奉者の防衛大臣。「夫婦相和シ」の精神で、こちらも夫と同様、損害賠償請求訴訟で大いに藪を突ついた。そして、夫君同様の敗訴。敗訴の都度、何度も「藪」を突ついて、さらなる「蛇」を出した。

この訴訟事件の発端は、サンデー毎日2014年10月5日号「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」と題する記事。この記事が、イナダの資金管理団体「ともみ組」への献金者の中に在特会幹部らとともに活動する人物が8人いて、その献金額合計が21万2000円となると指摘し、「在特会との近い距離が際立つ」と書いた。

これがイナダのお気に召さなかった。翌15年3月になって、「『在日特権を許さない市民の会』(在特会)と近い関係にあるかのような記事で名誉を傷つけられた」として、「サンデー毎日」の発行元の毎日新聞社に550万円の慰謝料と謝罪記事の掲載を求めた訴訟を大阪地裁に提起した。

これが、最初の「藪を突ついた」という行為。「サンデー毎日」の読者は限られている。しかし、この提訴で「サンデー毎日」記事が指摘した「イナダと在特会との蜜月」は広く知れ渡った。このことが、一匹目の「蛇」だった。

2016年3月11日に大阪地裁で言い渡された一審判決は、当然のことながら原告イナダ側の全面敗訴だった。「記事は論評の域を逸脱しない」「論評の前提となった事実には真実性の証明がある」「しかも記事の内容は公共の利害に関わるもので、公益を図る目的で掲載された」との認定。これが2匹目の「蛇」。人々は、イナダと極右レイシスト集団との深い関わりをあらためて思いだすこととなった。アベ政権自身が、このような輩と親密な集団だとも。

さて、これでやめておけばよかったのに、イナダは敢えてもう一度もっと深く、2度目の藪を突ついた。大阪高裁に控訴したのだ。その控訴審判決が、2016年10月12日に出た。当然のごとく控訴棄却である。またまたのイナダ全面敗訴。これが3匹目の「蛇」だ。常識的には訴訟はこれで終わり。

ところが、防衛大臣は事態の収束も撤兵も考えなかった。「藪がある限り、徹底して突つきまくる」「撃ちてし止まん」以外の策をもたないのだ。彼女は、またまた果敢に藪を突ついた。3度目である。それが上告受理申立。ウワバミが針の穴を通るくらいに困難な作戦。

そして、昨日(6月1日)の報道によれば、あえなく作戦は失敗。上告受理申立は最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)が5月30日付で不受理としてその旨を通知した。訴訟は、予想のとおりに、イナダ敗訴で確定した。この報道が4匹目の「蛇」である。「グリコは一粒で2度美味しい」、「イナダは一件で4度も蛇を出す」。たいしたものだ。

この事件は、DHC・吉田が私(澤藤)を被告として提起した「DHCスラップ訴訟」に酷似している。標的とされた「サンデー毎日」の記事の題名が「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」であり、私のブログが「『DHC8億円事件』大旦那と幇間 蜜月と破綻」というもの。

両事件の判決はともに、「記事は原告(イナダ・吉田嘉明)の社会的評価を低下させ名誉を傷つけた」と認めた。そのうえで、表現の自由保障の観点から、記事は公共にかかる事項について公益目的をもってなされた「論評」であり、論評の基礎となった事実は真実であると認定して、その言論に「違法性はない」と結論づけた。

判決の帰趨は、提訴前から分かっていたというべきであって、なにゆえむやみに何度も藪を突ついて、何匹も「蛇」を出し続けたのか。信じがたい愚挙と言わざるを得ない。これが、わが国の防衛大臣。

「むやみに何度も藪を突ついて、何匹も「蛇」を出し続けた」については、DHC・吉田もまったく同じこと。だから、スラップであり、不当訴訟といわれるのだ。

それにしても、在特会は形無しだ。イナダに擦り寄って政治献金をしたにもかかわらず、「在特会と近しいなんて言われるのは名誉毀損」とイナダに袖にされた。加えて、裁判所の判決でも「在特会と近しいなんて言われたら社会的評価は下がる」とお墨付きをもらったのだ。自業自得とはいえ、少々気の毒でもある。
(2017年6月2日)

DHCと吉田嘉明への損害賠償請求書(内容証明郵便)ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第102弾

損害賠償請求書
2017年5月12日
住所
被通知人 株式会社ディーエイチシー
代表者代表取締役 吉田嘉明殿

住所

通知人 澤 藤 統一郎

2014年4月16日、被通知人は、吉田嘉明とともに原告となって、通知人を被告とする東京地方裁判所平成26年(ワ)第9408号損害賠償等請求事件を提起した。その請求の趣旨は、相原告と併せて2000万円の支払い請求と、通知人のブログ記事の削除ならびに謝罪文掲載の各請求であり、その請求原因は、通知人のインターネット上のブログ記事が被通知人らの名誉を毀損し侮辱するものとの主張であった。
同事件の訴状は同年5月16日に通知人に送達され、7月11日の進行協議を経て、8月20日が事実上の第1回口頭弁論期日となったが、その直後の同月29日請求の拡張がなされ、請求金額は相原告と併せて6000万円となった。
同事件は、2015年9月2日に請求を全部棄却した判決言い渡しとなったが、被通知人ら両名は東京高等裁判所に控訴し、控訴審は第1回口頭弁論期日に結審して、2016年1月28日控訴棄却の判決言い渡しとなった。
被通知人らはさらに最高裁に上告受理を申立てたが、同年10月4日の同裁判所不受理決定によって、本件は確定した。
以上の被通知人の本件提訴と提訴後の訴訟追行の経過は、被通知人らが民事訴訟本来の権利の救済や回復を目的として提訴したものではなく、明らかに通知人の正当な言論を嫌忌して、これを妨害し封殺しようとしたものと断じざるを得ない。何人にも裁判を受ける権利が保障されているとはいえ、かかる民事訴訟本来の趣旨目的を逸脱濫用した提訴は違法というしかない。
したがって、被通知人は、故意又は過失によって通知人の法律上保護される利益を侵害した者として、民法709条および同719条1項に基づき、吉田嘉明と連帯して通知人に生じた全損害を賠償する責任を負うものであるところ、通知人に生じた損害は、応訴の費用や職務への支障、ならびに高額賠償請求を手段とした恫喝的態様による表現の自由侵害による精神的損害等を合算して、その金額は600万円を下回るものではない。
よって、通知人は被通知人ならびに吉田嘉明に対し、連帯して、600万円の支払いを求める。
なお、仮に、被通知人が本損害賠償請求に応じない場合には、損害賠償請求の提訴をすべく準備中であることを申し添える。

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損害賠償請求書
2017年5月12日
住所
被通知人 吉田嘉明殿

住所
通知人 澤 藤 統一郎

2014年4月16日、被通知人は、株式会社ディーエイチシーとともに原告となって、通知人を被告とする東京地方裁判所平成26年(ワ)第9408号損害賠償等請求事件を提起した。その請求の趣旨は、相原告と併せて2000万円の支払い請求と、通知人のブログ記事の削除ならびに謝罪文掲載の各請求であり、その請求原因は、通知人のインターネット上のブログ記事が被通知人らの名誉を毀損し侮辱するとの主張であった。
同事件の訴状は同年5月16日に通知人に送達され、7月11日の進行協議を経て、8月20日が事実上の第1回口頭弁論期日となったが、その直後の同月29日請求の拡張がなされ、請求金額は相原告と併せて6000万円となった。
同事件は、2015年9月2日に請求を全部棄却した判決言い渡しとなったが、被通知人ら両名は東京高等裁判所に控訴し、控訴審は第1回口頭弁論期日に結審して、2016年1月28日控訴棄却の判決言い渡しとなった。
被通知人らはさらに最高裁に上告受理を申立てたが、同年10月4日の同裁判所不受理決定によって、本件は確定した。
以上の被通知人の本件提訴と提訴後の訴訟追行の経過は、被通知人らが民事訴訟本来の権利の救済や回復を目的として提訴したものではなく、明らかに通知人の正当な言論を嫌忌して、これを妨害し封殺しようとしたものと断じざるを得ない。何人にも裁判を受ける権利が保障されているとはいえ、かかる民事訴訟本来の趣旨目的を逸脱濫用した提訴は違法というしかない。
したがって、被通知人は、故意又は過失によって通知人の法律上保護される利益を侵害した者として、民法709条および同719条1項に基づき、株式会社ディーエイチシーと連帯して通知人に生じた全損害を賠償する責任を負うものであるところ、通知人に生じた損害は、応訴の費用や職務への支障、ならびに高額賠償請求を手段とした恫喝的態様による表現の自由侵害による精神的損害等を合算して、その金額は600万円を下回るものではない。
よって、通知人は被通知人ならびに株式会社ディーエイチシーに対し、連帯して、600万円の支払いを求める。
なお、仮に、被通知人が本損害賠償請求に応じない場合には、損害賠償請求の提訴をすべく準備中であることを申し添える。

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本日、上記2通の内容証明郵便による損害賠償請求書を提出した。宛先は、吉田嘉明ならびに株式会社ディーエイチシー、請求の賠償金額は合計600万円である。損害賠償請求の根拠は、吉田とDHCが私を被告として提起した民事訴訟の提起とその訴訟追行のあり方が違法で、不法行為にあたるというものである。

もとより、裁判を受ける権利は誰にも保障されている。民事訴訟を提起して敗訴したからといって、その提訴が違法で被告に生じた応訴のための損害賠償の責任が生じるわけではない。しかし、飽くまで民事訴訟という制度は、侵害された権利の救済を目的とするもの。その趣旨・目的を逸脱して、正当な言論を抑圧し封殺して、萎縮効果をねらった恫喝的な提訴となれば違法というしかない。不法行為が成立して因果関係が認められる限りの全損害を賠償しなければならないのだ。

この件は、いずれ訴訟になる。DHC・吉田のごときスラップの濫発は、連鎖的に模倣者を輩出しかねない。言論の自由に対する脅威であり、民主主義の基礎を揺るがしかねない問題でもある。

訴訟開始の暁には、経過を当ブログで逐一ご報告したい。関心をお寄せの上、ぜひともご支援をお願い申しあげる。

(2017年5月12日)

DHCサプリメントを買ってはいけないー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第101弾

沖縄が心配だ。辺野古新基地建設の工事が本格的な進行を始め、巨大なコンクリートブロックがつぎつぎと海に沈められて珊瑚礁を破砕している。反対派の現地リーダー山城博治さんは逮捕されて勾留4か月にも及ぶ。そして、本土からの沖縄に対する差別意識丸出しで、沖縄の平和運動に対するデマを垂れ流したMXテレビのニュース女子報道に対する制裁が見えてこない。

本土の我々がもっと沖縄に目を向けなければならない。政権と対峙している沖縄の平和運動を支援しよう。そのような無数にある運動体の一つとして、「基地のない平和な沖縄をめざす会」がある。私は、会費を払って機関誌を読むだけの会員だが会の発足直後から20年近く、手作りの機関紙『沖縄』を読み続けている。典型的なミニコミ紙だが、今号が236号。ともかく、継続していることに頭が下がる。

この『沖縄』のメインスローガンは、「沖縄の心を一つに~『建白書』を実現し、未来を拓く『オール沖縄』のたたかいに連帯します。」というもの。そして、毎号下記のサブスローガンが並んでいる。

オスプレイ配備撤回!
普天間無条件返還!
沖縄基地全面返還!
辺野古新基地建設阻止!
憲法改悪反対・日米安保条約廃棄!
高江ヘリパッド建設阻止!
伊江島基地拡張反対!

曖昧さなく、「普天間無条件返還」「沖縄基地全面返還」「日米安保条約廃棄」と言っているところに好感。

2017年2月20日発行の第236号の最も目につく記事が、「DHCとTOKYO MXテレビ」と標題した、次の寄稿。じっくりお読みいただきたい。

「DHCの化粧品を見かける機会は少ないが、DHCの『健康食品』とやらはコンビニエンスストアにいっぱい並んでいる。これらの売り上げ利益で、真っ赤なウソ番組をつくってそれを東京MXテレビが流し、『人を殺す基地は、もういらない』と崇高なたたかいを続ける沖縄の人々、身銭やカンパで遠くからも駆けつける人々を侮辱した。侮しくて涙が出る。
あの『健康食品』とやらには毒がはいっている、そんな気がしてしまった。日当を払って情け容赦もない人権無視の弾圧をさせているのは、安倍政権である。
ますます負けられないたたかいになった。思いだけがつのってかけつけられないのがツラいけど、私は、DHCと東京MXテレビに抗議する!!
『私達は、私達の上地に、海に、基地をつくるな』と当たり前のことを言っているだけである。それを踏みにじるモノに抗議しているだけである。みっともない番組をつくって国民をだまさないで下さい!」(上原文子)

気持ちのあふれた一文ではないか。まったくそのとおりだと肯かざるをえない。寄稿者については知らない。「上原」は沖縄に多い姓。「私達の土地に海に、基地をつくるな」という言葉遣いからは沖縄出身者かも知れない。市井のひとりの声として、人々を励ます文章になっている。

その指摘のとおり、「DHCは『健康食品とやら』の売り上げ利益で、デマ番組をつくっている」。まったくそのとおりだ。だから、DHCの製品を買ってはならない。DHCの『健康食品とやら』を買うことは、デマとヘイトの番組の作成に加担することだ。沖縄に新基地を作らせてはならないと思う人、大浦湾の美ら海を守ろうと思う人は、けっしてDHCの製品を買ってはならない。

その『健康食品』とやらには毒がはいっている気がする」。これも同感だ。もちろん、比喩としての「毒」。平和運動への猛毒だ。また、それだけでなく、あらゆるサプリメントがけっして安全を保障されてはいないことが、今や健全な常識になっている。食品から普通に摂取している限りは安全な成分も、サプリメントに高濃度に詰め込まれれば、生体に危険ものとなりうる。その意味では「毒」は適切な表現なのだ。

本土から派遣の警察官に日当を払って、情け容赦もない人権無視の弾圧をさせているのは、安倍政権である」。これもご指摘のとおりだ。平和運動への敵意の点で、アベ政権と、DHC、TOKYO MXとはつがっている。それだけではない。安全性確認不十分なサプリメントの出荷量拡大をアベノミクスの第3の矢に位置づけている点でも、アベ政権とDHC、TOKYO MXとは利益を共通にしているのだ。

私も、一緒になって声を上げよう。平和のためのたたかいを続ける沖縄の人々やカンパで遠くから駆けつける人々を侮辱したDHCと東京MXテレビへの抗議の声を。そして、根本原因を作っているアベ政権への抗議も。

「みっともない番組をつくって国民をだまさないで下さい!」。
そして、「人を殺す基地は、もういらない」と。
(2017年2月27日)

橋下徹の対野田医師訴訟 最高裁で敗訴確定

昨晩(2月2日)のこと、久しぶりに野田正彰医師から電話をいただいた。「橋下徹から訴えられていた名誉毀損訴訟で最高裁の判断が出た」「これで、勝訴判決が確定した」とのことだった。

控訴審(大阪高裁)の野田医師逆転勝訴判決言い渡しが、昨年(2016年)4月21日のこと。常識的には、これで勝負あった。上告も上告受理申立も通るはずがない。とはいえ、当事者の心情としては最高裁決定が出るまでは、「もしや」「万が一」「万々が一」の心配をせざるを得ないのだ。この心境は、私自身がDHCスラップ訴訟で味わったところ。野田医師の安堵の気持ちは、おそらくだれよりも私がよく分かる。わざわざの電話は、同病相哀れむの気持からであったろう。そのためか長電話となった。

本日の朝刊では、共同配信の記事を毎日が小さく報道している。それによると、橋下からの上告受理申立にたいする不受理決定は2月1日付だったようだ。2月1日決定の通知が同日発送されて翌2日に到着したということだ。

毎日の判決内容についての情報は以下が全文で、これ以上はない。

「確定判決によると、橋下氏が大阪府知事だった2011年10月発売の同誌(「新潮45」)は「大阪府知事は『病気』である」とのタイトルで、橋下氏に精神疾患の特徴が当てはまるとする記事を載せた。1審大阪地裁判決は、記事内の橋下氏の高校時代のエピソードに裏付けがないとして、新潮社と野田氏に計110万円の支払いを命令。2審大阪高裁は、当時の教諭への取材などから真実と信じる理由があったと認め、請求を棄却した。」

これだけでは面白くない。せっかくの機会、野田医師の診断内容や訴訟の経過を多くの人に思い起こしてもらわねばならない。再確認しようとネットで検索したら、まず私のブログ(2016年4月22日)が出てきた。その引用をベースに、多少補いたい。

タイトルは、「野田正彰医師記事に違法性はないー大阪高裁・橋下徹(元知事)逆転敗訴の意味」

野田正彰医師は硬骨の精神科医として知られる。権力や権威に遠慮するところのない歯に衣着せぬ言動は、権力や権威に安住する側にはこの上なくけむたく、反権力・反権威の側にはまことに頼もしい。

その野田医師が、大阪府知事当時の橋下徹を「診断」した。「新潮45」の誌上でのことである。誌上診断名は「自己顕示欲型精神病質者」「演技性人格障害」というもの。この診断のどちらも、医学的に確立した歴とした疾患名である。橋下が、この誌上診断を名誉毀損に当たると主張して、損害賠償請求訴訟を起こした。

一審大阪地裁は一部認容の判決となったが、2016年4月21日大阪高裁は逆転判決を言い渡し、橋下徹の請求を全面的に棄却した。欣快の至りである。

高裁判決は、野田医師の誌上診断は、橋下の社会的評価を低下せしめるものではあるが、その記述は公共的な事項にかかるもので、もっぱら公益目的に出たものであり、かつ野田医師において記事の基礎とした事実を真実と信じるについて相当な理由があった、と認め記事の違法性はないとした。橋下知事(当時)の名誉毀損はあっても、野田医師の表現の自由を優先して、橋下はこれを甘受しなければならないとしたのだ。

橋下が上告受理申立をしても、再逆転の目はない。判断の枠組みが判例違反だという言い分であれば、上告受理はあり得ないことではない。しかし、本件の争点は結局(野田医師が真実と信じることについての)相当性を基礎づける事実認定の問題に過ぎない。これは最高裁が上告事件として取り上げる理由とはならないのだ。

「新潮45」2011年11月号が、「橋下徹特集」号として話題となった。この号については、当時新潮社が次のように広告を打っている。
「特集では、橋下氏の死亡した実父が暴力団員であったことに始まり、『人望はまったくなく、嘘を平気で言う。バレても恥じない。信用できない』(高校の恩師)、『とにかくカネへの執着心が強く、着手金を少しでも多く取ろうとして「取りすぎや」と弁護士会からクレームがつくこともあった』(最初に勤務した弁護士事務所の代表者)といった、橋下氏を知る人の発言や、『大きく出ておいてから譲歩する』『裏切る』『対立構図を作る』という政治戦術、そして知事就任から府債残高が増え続けている現実、またテレビ番組で懇意になった島田紳助氏との交友についても触れるなど、橋下氏の実像をわかりやすくまとめた構成になっています。是非ご一読を。」

この特集記事の1本として、「大阪府知事は『病気』である」(野田正彰・精神科医)が掲載された。病気の「診断」名が「自己顕示欲型精神病質者」「演技性人格障害」というもの。その診断根拠は、橋下に対する直接の問診ではなく、それに代わる高校時代の橋下の恩師の証言等である。

この記事によって名誉を傷つけられたとして、橋下が新潮社と野田医師を提訴した。損害賠償請求額は1100万円。この請求に対して、2015年9月一審大阪地裁(増森珠美裁判長)は、一部記載について「橋下氏の社会的評価を低下させ、名誉を毀損する内容だった」として、新潮社と野田医師に110万円の支払いを命じた。「精神分析の前提となった橋下氏の高校時代のエピソードを検討。当時を知る教諭とされる人物の『嘘を平気で言う』などの発言について『客観的証拠がなく真実と認められない』」との判断だった。

控訴審逆転判決の内容については、朝日の報道が分かり易い。
 「橋下徹・前大阪市長は『演技性人格障害』、などと書いた月刊誌『新潮45』の記事で名誉を傷つけられたとして、橋下氏が発行元の新潮社(東京)と筆者の精神科医・野田正彰氏に1100万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21日、大阪高裁であった。中村哲裁判長は、記事は意見や論評の範囲内と判断。110万円の賠償を命じた一審判決を取り消し、橋下氏の訴えを退けて逆転敗訴とした。
 同誌は、橋下氏が大阪府知事時代の2011年11月号で「大阪府知事は『病気』である」とする野田氏の記事を掲載し、高校時代の橋下氏について「うそを平気で言う」などの逸話を紹介。「演技性人格障害と言ってもいい」と書いた。高裁判決は、記事は当時の橋下氏を知る教員への取材や資料に基づいて書かれ、新潮社側には内容を真実と信じる相当の理由があり、公益目的もあったとした。」

また、焦点の「記事の内容を真実と信じる相当の理由」の有無については、次のような報道がなされている。
「高裁判決は野田氏が橋下氏の生活指導に当時、携わった教諭から聞いた内容であることなどから、『真実と信じた相当の理由があった』と判断した(時事通信)」

「中村裁判長は、野田氏が橋下氏の生活指導に関わった高校時代の教諭に取材した経緯などを検討した。その結果、記事内容を裏付ける証明はないものの、『野田氏らが真実と信じる理由があり、名誉毀損は成立しない』と判断した(毎日)」

「野田氏の精神分析の前提となった橋下氏のエピソードについて、1審判決は『客観的証拠がなく真実と認められない』として名誉毀損を認定したが、高裁判決は別記事での取材内容も踏まえ『真実との証明はないが、真実と信じるに足る理由があった』とした(産経)」

「2015年9月の1審判決は、記事の前提になった橋下氏の高校時代のエピソードを『裏付けがない』としたが、高裁の中村哲裁判長は『複数の人物から取材しており、真実と信じる相当の理由があった』と指摘した(読売)」

以上のとおり、原審と控訴審ではこの点についての判断が逆転した。橋下はこれに不服ではあろうが、憲法判断の問題とも、判例違反とも主張できない。結局は事実認定に不服ということだが、それでは上告審に取り上げてはもらえないのだ。

「新潮45編集部は『自信を持って掲載した記事なので当然の判決と考える』とコメント。橋下氏側は『コメントを出す予定はない』とした。」と報道されている。

名誉毀損訴訟においては、表現者側の「表現の自由」という憲法価値と、当該表現によって傷つけられたとされる「『被害者』側の名誉」とが衡量される。この両利益の調整は、本来表現内容の有益性と「被害者」の属性とによって判断されなければならない。野田医師の橋下徹についての論述は、有権者国民にとって、公人としての知事である橋下に関する有益で重要な情報提供である。明らかに、「表現の自由」を「橋下個人の名誉」を凌駕するものとして重視すべき判断が必要である。

総理大臣や国会議員・知事・市長、あるいは天皇・皇族・大企業・経営者などに対する批判の言論は手厚く保護されなければならない。それが、言論・表現の自由を保障することの実質的意味である。権力や権威に対する批判の言論の権利性を高く認めることに躊躇があってはならない。この点についての名誉毀損訴訟の枠組みをしっかりと構築させなければならない。

現在の名誉毀損訴訟実務における両価値の調整の手法は、名誉毀損と特定された記事が、「事実の指摘」であるか、それとも「意見ないし論評であるか」で大きく異なる。野田医師の本件「誌上診断」は、典型的な論評である。基礎となる事実(高校時代の恩師らの取材によって得られた情報)の真実性が問題になる余地はあるものの、その事実にもとづく推論や意見が違法とされることはあり得ない。これは「公正な論評の法理」とされるもので、我が国の判例にその用語の使用はないが、事実上定着していると言ってよい。

そして、実は野田医師の論評が、知事たる政治家の資質に関するものであることから、真実性や相当性の認定においてハードルの高いものとしてはならない。同判決は、真実性はともかく、真実相当性認定のハードルを下げるやり方で表現の自由に軍配を上げたのだ。政治家や政治に口を差し挟もうという企業や経営者が、名誉毀損訴訟を提起する時代ではないことを知るべきなのだ。

なお、同じ「新潮45」の特集記事に関して、以下の産経記事がある。
「橋下徹前大阪市長が、自身の出自などを取り上げた月刊誌『新潮45』の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社とノンフィクション作家の上原善広氏に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が(2016年3月)30日、大阪地裁であり、西田隆裕裁判長は橋下氏の請求を棄却した。判決によると、同社は新潮45の平成23年11月号で、橋下氏の父親と反社会的勢力とのかかわりについて取り上げた。西田裁判長は判決理由で「記事は政治家としての適性を判断することに資する事実で、公益目的が認められる」とした。

私見であるが、「記事は政治家としての適性を判断することに資する事実で、公益目的が認められる」は、単なる違法性阻却の必要条件ではない。判決理由に明示していなくても、その公益目的の重要性は、真実性や真実相当性認定のハードルを低くすることにつながっているはずである。

野田医師の逆転勝訴とその確定は、私のDHCスラップ訴訟の結果にも響き合う。何よりも、憲法上「精神的自由権」の中心的位置を占める表現の自由擁護の立場から、まことに喜ばしい。
(2017年2月3日)

「DHC」「DHCシアター」「東京MXテレビ」そして「長谷川幸洋」に、『デマ』と『ヘイト』の刻印をーDHCスラップ訴訟を許さない第100弾

本日(2月2日)の東京新聞1面に、「『ニュース女子』問題 深く反省」と、社としての謝罪記事が出ている。いささか遅きに失した感は否めないが、さすがに東京新聞。誠実に詫びるべきを詫びている。

記事には、「論説主幹・深田実が答えます。沖縄報道 本紙の姿勢は変わらず」とサブタイトルがついている。この記事掲出まで社内でいかなる論議がなされたかは知る由もないが、社としての本格的な取り組みとの姿勢を窺うことができる。これなら、読者の信頼を繋げるのではないか。

謝罪記事の全文を引用しておこう。
「本紙の長谷川幸洋論説副主幹が司会の東京MXテレビ『ニュース女子』1月2日放送分で、その内容が本紙のこれまでの報道姿勢および社説の主張と異なることはまず明言しておかなくてはなりません。
 加えて、事実に基づかない論評が含まれており到底同意できるものでもありません。
 残念なのは、そのことが偏見を助長して沖縄の人々の心情、立場をより深く傷つけ、また基地問題が歪めて伝えられ皆で真摯に議論する機会が失われかねないということでもあります。
 他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演していたことについては重く受け止め、対処します。
 多くの叱咤の手紙を受け取りました。 
 『1月3日の論説特集で主幹は「権力に厳しく人に優しく」と言っていたのにそれはどうした』という意見がありました。
 それはもちろん変わっていません。
 読者の方々には心配をおかけし、おわびします。
 本紙の沖縄問題に対する姿勢に変わりはありません。」

続けて、東京新聞自身が、「『ニュース女子』問題とは」と解説をつけている。
「東京MXテレビは1月2日放送の番組『ニュース女子』で冒頭約20分間、沖縄県東村高江の米軍ヘリコプター離着陸帯建設への反対運動を取り上げた。本紙の長谷川幸洋論説副主幹が司会を務めた。『現地報告』とするVTRを流し、反対派を「テロリストみたい」「雇われている」などと表現。反ヘイトスピーチ団体「のりこえねっと」と辛淑玉(シンスゴ)共同代表(58)を名指しし「反対派は日当をもらってる!?」「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」などのテロップを流した。辛さんは取材を受けておらず、報告した軍事ジャーナリストは高江の建設現場に行っていなかった。
 MXは「議論の一環として放送した」とし、番組を制作したDHCシアターは「言論活動を一方的に『デマ』『ヘイト』と断定することは言論弾圧」としている。辛さんは名誉を侵害されたとして、1月27日、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会に申し立てた。
 のりこえねっとは沖縄の現場から発信してもらう『市民特派員』を募集、カンパで捻出した資金を元手に、本土から沖縄までの交通費として5万円を支給。昨年9月から12月までに16人を派遣した。」

関連記事が5面の「読者部便り」に掲載されている。「読者部長・榎本哲也」による「読者の批判重く受けとめ 『ニュース女子問題』」と題するもの。これも、貴重な記事として、全文を引用しておきたい。

 特定のニュースや問題について、同じ趣旨のお問い合わせや要望が多くの方から読者部に相次ぎ、関心が高いと判断した時は、紙面で紹介したり、関連記事を掲載するよう心掛けています。ですが、年明け以来、1カ月にわたり連日、ご意見が相次いでいることに、きょうまでお答えしていませんでした。まず、深くおわび申し上げます。
 東京MXテレビの1月2日放送の番組「ニュース女子」に、沖縄県の米軍施設建設に反対する人々を中傷する内容があり、その番組の司会を長谷川幸洋・本紙論説副主幹が務めていたことです。厳しいご批判や、本紙の見解表明を求める声は、読者部にいただいた電話やファクス、メールや手紙だけでも250件を超えました。重く受け止めており、きょうの1面に論説主幹の見解を掲載しました。
 新聞は、事実に基づいて、本当のことを伝えるのが使命です。編集局では現在、沖縄の在日米軍基地問題を取材するために、社会部や政治部の記者を沖縄に派遣し、東村高江や辺野古などで、住民の方々などの取材を重ねています。近く、紙面でご報告いたします。
 また、「沖縄ヘイト」問題の本質を問う識者インタビュー連載記事を、きょうから始めました。
 沖縄で今、何が起きているのか。本当のことをお伝えする努力を、これからも続けていきます。

この記事のとおり、3面に「『沖縄ヘイト』言説を問う」の第一回として、津田大介が、それなりのインパクトのある記事を書いている。
今回の「ニュース女子」の報道を「メディアが、間違いだらけで、偏見と憎悪に基づく番組を放送してしまった。…根底にあるのは沖縄への差別意識以外のなにものでもない」「ほかのメディアはこの問題に対して、もっと怒るべきだ。そうしないと、政府が放送に介入するきっかけを作ってしまう」と言っている。

幾つか、感想を述べておきたい。
先に今回の謝罪を評価すると述べたが、必ずしも満足しているわけではない。東京新聞が、読者に何を謝り何を反省しているのかが、必ずしも明確でないのだ。自社の幹部の肩書きを持つ者の不祥事として、監督不行き届きを謝罪しているのだろうか。あるいは、何らかの内規違反なのだろうか。さらには、ジャーナリストの風上におけぬ輩を社内のしかるべき地位に就けていたことなのだろうか。

この件の反省と謝罪は、真っ先に長谷川幸洋(論説副主幹)自身がすべきであろう。本日の紙面には、長谷川幸洋が自らの責任を認めている記事がない。おそらくは、長谷川は反省していないのだ。であれば、東京新聞として、その責任を明確にしなければなない。いったい、どのような経過で、沖縄ヘイト番組が作られ、その制作に長谷川がどう関わったのかが、明らかにされなければならない。今のところ、その作業がなされた形跡はない。

私は、1面の謝罪記事の「他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演していたことについては重く受け止め、対処します。」の部分を、最初は迂闊にも「処分します」と読んで、あとで間違いに気が付いた。「対処」は、「処分」も含むのだろうが、処分以外の対処もあり得る。さて、東京新聞は、これからこの問題にどう対応するだろうか。

もう一つ、この問題の対応には、大手の広告スポンサーであるDHCが絡んでいる。「ニュース女子」は、東京MXテレビの制作番組ではない。DHCの子会社であるDHCシアター制作の持ち込み番組である。DHCは東京MXテレビの最大スポンサーであるとともに、ヘイトスピーチを恥じない吉田嘉明が主宰する企業でもある。スラップ訴訟を提訴して恥じない企業である。明らかにDHCの息のかかったこの番組にたいする批判は、DHC批判に直結する。東京新聞も広告スポンサーであるDHCを意識せずには批判を徹底できない事情がある。それでも、経済事情よりはジャーナリズムの使命を優先して、ブレないことを示してもらいたい。

そして、反省皆無のDHCシアターに、腹の底からの怒りの一言を記しておきたい。「言論活動を一方的に『デマ』『ヘイト』と断定することは言論弾圧」だと? その開き直りに、開いた口が塞がらない。

報道とは、真摯な取材によって確認された正確な事実を伝えることである。そして、正確な事実に基づく公正な論評をすることでもある。放送メディアは、そのことを放送法(4条)で義務付けられてもいる。ところが、DHCシアターのやったことは、取材もせずに不正確な事実を伝えた。これを『デマ』という。さらに、不正確な事実を前提に差別感情丸出しの偏見を述べたのだ。これを『ヘイト』という。DHCシアターの「ニュース女子」こそは、真正の『デマ』と真正の『ヘイト』というべきなのだ。ヘイトは「沖縄ヘイト」と「在日ヘイト」の両者を含んでいる。

「DHC」と「DHCシアター」と「東京MXテレビ」と、そして東京新聞論説副主幹「長谷川幸洋」の4者に、『デマ』『ヘイト』の刻印を押そう。真摯な謝罪があるまでは、その『デマ』『ヘイト』の刻印を強く深く押し続けよう。
(2017年2月2日)

「ヘイト・デマ ニュース番組」の元凶・DHCとの闘いにさらなるご支援をー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第99弾

よく晴れた、暖かい土曜日の午後。DHCスラップ訴訟勝利報告集会にご参集いただき、ありがとうございます。
本日講演いただいた田島泰彦先生、弁護団の皆さま、貴重な発言をいただいた皆さま、そしてこれまでのご支援をいただいた皆さまに心からの感謝を申しあげます。

元来が気の小さな私。多くの方からの応援の声に支えられて持ちこたえ、ようやく降りかかった火の粉を払うことができました。
嬉しいことに、この間多くの方から「DHCは怪しからん」「今後DHCの製品は絶対に買わない」「DHCのコマーシャルにはスイッチを切る」「機会あるたびに、周りの人にDHCや吉田嘉明の酷さを知ってもらうようお話ししている」と言っていただいています。不愉快な思いはさせられましたが、負けずにがんばった甲斐があったというものです。

とはいえ、考えてみれば、今のところは「降りかかった火の粉を払う」ことができただけ。もしかしたら、「斬りかかってきた刃を、ようやくかわした」だけというべきかも知れません。斬りかかった者には、相応の制裁がなされなければなりません。でなければ、この「犯人」からの再びの理不尽な攻撃の恐れは払拭されないからです。

斬りつけられ、あわや傷つくところだった被害者は、私一人ではありません。斬りつけられた刃が狙った真の被害者は、文明の基本原則である「言論の自由」であり、言論の自由に支えられた民主主義や人権など市民社会の普遍的な原理であったと思うのです。

DHCスラップ訴訟の勝訴によって、その被害は救済されたでしょうか。実は、多くの人が、DHC・吉田への批判に口をつぐみ、言論を萎縮している状況に変化はありません。DHC・吉田は刃を振り回すことによって、既に大きく「言論の自由」を傷つけているというべきではないでしょうか。

スラップとは、「勝訴による被害救済を目的とする訴訟」ではなく、「提訴自体がもつ批判の言論への萎縮効果を狙う訴訟」にほかなりません。ですから、DHC・吉田は、本件の提訴そのものによって既にその目的を遂げているのです。

DHC・吉田は、高額損害賠償請求訴訟の提訴で何人かの被告を恫喝し、そのことを通じて、自分を批判しようとしている多くの人たちの言論を萎縮させているのです。この事態において、「言論の自由」の被害を回復するには、反撃の訴訟が必要だと思います。

時はまさによし。この集会にタイミングを合わせた如くに、DHC・吉田嘉明のヘイト体質がいま大きな話題となっています。TOKYO MXテレビの「ニュース女子」沖縄ヘイト番組を制作放映した元凶はDHCにほかなりません。吉田嘉明とは、単に行政規制を嫌ってその緩和・撤廃を求めるネオリベ事業者であるだけでなく、在日差別の広言者として、また沖縄の平和運動への敵対者として私たちの目の前に姿を現しています。「澤藤被告始め数十名の反日の徒より、小生および会社に対する事実無根の誹膀中傷をインターネットに書き散らかされました」と、自分の批判者には「反日」とレッテルを貼る真正右翼以外の何者でもありません。

多くの方に、ご支援を得る条件が調っているではありませんか。私は、2年半の『被告業』を営んでまいりましたが、あらためて『原告業』『スラップ糾弾業』に転進することを宣告いたします。
新たな訴訟を通じて、スラップ訴訟が言論の自由に及ぼす害悪を告発し、闘い続けることで、スラップの「言論萎縮効果」ではなく、「反撃誘発効果」の成功例を作りたいと考えています。

もっとも、本日の議論でも繰り返されたとおり、DHC・吉田のスラップに対する制裁として、660万円程度の損害賠償請求訴訟では、経済的強者にとっては痛くも痒くもないだろう、という見方も当然にあり得ます。しかし、ホームページで自白しているとおり、吉田嘉明は自分への批判に対する耐性が脆弱なように見受けられます。他からの批判や反論が的を射たものであれば、十分に「痛くも痒くもある」ように思われます。訴訟という公正な場と手段による批判や反論は、それなりに有効で有益なスラップ抑制効果をもちうるのだと思っています。

もちろん、DHCのスラップやヘイトを阻止するために、真に実効性ある批判の手段としては、経済的な制裁が必要と考えるのが常識でしょう。スラップ常習企業として知られた武富士が結局は企業の体をなさずに没落したように、スラップやヘイトを繰り返す企業には、賢明な消費者による消費者主権の行使としての制裁が期待されるところです。そのことによってはじめて、現実的に企業の違法を是正することができると思うのです。

世論にそのような訴えを継続するためにも、DHC・吉田によるスラップの問題をいま獲得した勝訴の確定で終らせず、闘い続ける意義があると思うのです。私は、これまで『被告業』を営んでいる間を通じて、「幸せな被告」でした。ぜひ、皆さまの重ねてのご支援で「幸せな原告」にしていただけますようお願い申しあげます。

なお、下記のコンセプトで報告文集を作成します。
☆DHCスラップ訴訟の経過と勝利を記録し世に広める。
☆スラップ対策実務に役立つものとする。
☆読者対象は、市民+ジャーナリスト+弁護士。
☆発行主体はDHCスラップ訴訟弁護団(光前団長)
☆B5版横組み 本文144頁+表紙 1500冊を作成
頒価は1000円(+消費税)とし、利益は弁護団会計にいれる。
☆内容の概要(4部構成)
(1) 経過報告
(2) 感想・祝意・メッセージ
(3) 論文(弁護団長・田島先生・常任弁護団員)
(4) 資料(訴訟に提出されたものを主として)
本日の田島先生の講演は、論文として全文掲載いたします。
☆2月末発刊を目標とする。遅れても、3月上旬に。
まだ間に合います。この報告文集への寄稿をお願いします。論文・感想・エッセイ・メッセージ…、なんでも結構です。長さも問いません。こちらもよろしくお願いいたします。
(2017年1月28日)

DHC吉田への逆風のさなかに「勝利報告集会」ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第98弾

タイミングよく、DHCと吉田嘉明に対する世の批判の風が強く吹く中で、明後日(1月26日・土曜日)の午後、「DHCスラップ訴訟勝利報告集会」が行われる。

その集会の目玉は二つある。
一つ目は、田島泰彦上智大学教授(メディア法)の記念講演。タイトルが、「国際動向のなかの名誉毀損法改革とスラップ訴訟」。田島さんご自身が、「おそらく日本ではそういう議論がほとんどなかった論点と思います」という意気込みの講演。

二つ目が、反撃訴訟の概要発表と解説。攻守ところを変えて、今度はこちらが原告となってDHC・吉田に損害賠償請求訴訟を提起することになる。その訴訟の内容を明らかにする。

さて、DHC・吉田に吹く批判の風である。
本日の赤旗社会面(15面)のトップに、「沖縄デマ番組『ニュース女子』」「『事実まげた』放送せず」「ミヤギテレビ、社内考査で判断」の見出し。DHC提供のデマ・ヘイト番組『ニュース女子』のこの回の放映を、ミヤギテレビは放送しないと決めたのだという。その記事を紹介しておきたい。

 沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設に反対している人は「金で雇われている」などとデマのリポートをしたテレビ番組「ニュース女子」を東京MXテレビが放送したことに批判が集中しています。この問題で、「ニュース女子」の放送枠があるローカル局「ミヤギテレビ」(仙台市)が社内の考査でこの回の番組を「事実をまげている」と判断、放送しないことを決めていたことが24日、本紙の調べで明らかになりました。
「ニュース女子」は化粧品・健康食品製造販売のDHC(吉田嘉明会長)が地方テレビ局から時間枠を買い取り、子会社「DHCシアター」が制作した番組を持ち込み、地上波で放送しています。ミヤギテレビは毎週水曜日の午前2時29分からの深夜時間帯に「ニュース女子」を放送しています。
 沖縄のデマリポートを合む回の「ニュース女子」について、同局が事前に行った考査では、放送法が定める「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」という規定に照らして、放送できないと判断しました。(以下略)。

DHC・吉田嘉明のヘイト体質については、先日(本年1月17日)「吉田嘉明の驚くべきヘイトスピーチ-『DHCスラップ訴訟』を許さない・第93弾」で、DHCの公式ホームページに掲載されている、下記の会長メッセージをご紹介した。
http://article9.jp/wordpress/?p=7992
http://top.dhc.co.jp/company/image/cp/message1.pdf

もう一つ紹介しておきたい。同じサイトの同じコーナーにもう一つの「会長(吉田嘉明)メッセージ」がある。昨年(2016年)の2月21日付けのもの。実はこれが、DHCスラップ訴訟で、書証として提出されている。吉田嘉明の認識によれば、「いま日本に驚くほどの在日が住んでいます。」「似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう。」「問題なのは日本人として帰化しているのに日本の悪口ばっかり言っていたり、徒党を組んで在日集団を作ろうとしている輩」「法曹界(裁判官、弁護士、特に東大出身)には特に多い」というのだ。「似非日本人が跳梁跋扈する世の中の、特に問題の法曹界の、その中枢に位置する最高裁に提出されているのだ。(第93弾参照)極めて興味深い内容なので、ご注目いただきたい。

標題は、「スラップ訴訟云々に関して」というもの。念のためだが、「云々」は「うんぬん」と読む。昨日(1月25日)アベ首相が予算委員会答弁で官僚の作文を棒読みした「でんでん」では何のことだか分からない。どだい、漢字が違っている。

記事の内容は、私(澤藤)への中傷に徹したもの。しかし、そのなかに幾つか重要な情報が含まれている。

https://top.dhc.co.jp/company/jp/cp.html

澤藤被告が「吉田嘉明が自分の儲けのために、尻尾を振ってくる矜持のない政治家を金で買った」とか「大金持ちが更なる利潤を追求するために、行政の規制緩和を求めて政治家に金を出した」とか、その他諸々の悪口雑言をインターネットに並べ立て小生を悪罵していたために提訴したわけですが、そのどこがスラップ訴訟なのでしょうか。事実無根の、全く根拠のない嘘でたらめを、しかも悪意を持って世間に広言されたら誰もが怒りに震えるのは当然のことでしょう。
私(澤藤)が、「事実無根の、全く根拠のない嘘でたらめ」を言った事実はない。このことは、訴訟で決着済みだ。また、私が「(吉田に)悪意を持って世間に広言」したこともない。「必要で適切な、徹底した批判」をしたに過ぎない。その批判の言論は、健全な民主主義社会における不可欠な構成要素として、発表の自由が保障されなければならない。

渡辺氏のことを矜持のない政治家だと贅言していますが、無名の弁護士が売名のために騒ぎまくっている行為こそが矜持のない醜態だといえるのではないでしょうか。…虚名の三百代言ごときに矜持がないなどとは言われたくはありません。
おやおや、「無名の弁護士」「売名」「騒ぎまくっている」「醜態」「虚名の三百代言ごとき」…。文脈から見て、これは明らかに私についてのこと。この原稿の掲載には、弁護士のチェックがはいっているのだろうか。相当にヤバイ。人格攻撃として、侮辱になり得る表現。提訴材料としてストックしておこう。2019年2月までは時効にかからない。

「行政の規制緩和を求めて政治家に金を出した」などと妄言していますが、小生がただの一度でも当時の渡辺議員に行政への橋渡しを依頼したことがあるのか、直接渡辺氏なり、厚労省の担当官に尋ねてみればわかることです。
この児戯に等しい立論に唖然とする。こんな程度の議論で、世の中に通用すると思いこんでいることが恐ろしい。

渡辺騒動の後、澤藤被告始め数十名の反日の徒より、小生および会社に対する事実無根の誹膀中傷をインターネットに書き散らかされました。
おやおや、唐突に「反日の徒」のレッテル。私も、「反日の徒」の一員のようだ。DHC・吉田を批判すれば「反日の徒」だという非論理で根拠のない決め付け。そして、相手に「反日の徒」とレッテルを貼れば、相手が恐れ入るだろう、あるいは社会が自分に味方してくれるだろうという、思考の幼児性。困ったもの。

当社の顧問弁護士等とともに、どのケースなら確実に勝訴の見込みがあるかを慎重に熟慮検討した上で、特に悪辣な十件ほどを選んで提訴したものです。専門の顧問弁護士が確実に勝てると思って行ったことです。やみくもに誰も被もと提訴したわけではありません。
これは、大切な情報。「専門の顧問弁護士が確実に勝てるとアドバイスした」から、「特に悪辣な十件ほど」を選んで提訴したという。それなら弁護士の責任が重大。

提訴後、澤藤被告の言論を封じたどころか、彼は連日のごとく悪口雑言をブログに書きまくっているではありませんか。全く萎縮などしていません。
これは吉田の指摘のとおり。確かに私は萎縮していない。むしろ怒って、批判を続けている。しかし、それは例外に過ぎない。社会の普通人は6000万円請求の提訴には萎縮せざるを得ない。私以外に被告とされた9人も、その周辺の被告にされなかった多くの人々も、「DHC・吉田を批判すると、むやみな高額損害賠償請求訴訟を提訴されることになる。提訴されては面倒この上ない。だからDHC・吉田の批判は控えた方が利口だ」ということになってしまっているのだ。

(澤藤は)そもそもスラップ訴訟の意味すら分かっていません。拡大解釈も甚だしい。SLAPP と はStrategic Lawsuit Against Public Participationの略で「社会参加を邪魔するための戦略的訴訟」ということですが、今回の訴訟のどこが被告の社会参加を邪魔しているのか、どこが戦略的なのか笑ってしまいます。
ホントに嗤ってしまう。だれから教えこまれたのか、受け売りの聞きかじりを、分かった風に言わない方がよい。Public Participationの典型が公的な言論である。公人、あるいは公的人物の公的事項に関する言論こそがPublic Participationであり、民事訴訟によるその妨害こそが、SLAPPといわれる訴訟類型の典型なのだ。

名誉棄損の裁判を起こすのは驚くほどの金銭を要し、普通の人はお金のことを考えただけで身を引いてしまいます。
ほう。吉田嘉明が「驚くほどの金銭」とはいくらの金額なのだろうか。いったい弁護士にいくら払ったのか、次の訴訟で問い質してみたいものだ。

インターネットの醜さはどうでしょうか。人間生活を完全に壊しています。
そのとおりだ、インターネットの世界では、匿名のネトウヨ諸君が百鬼夜行のありさまだ。植村隆さんの娘さんに対する中傷誹謗の醜さは、「人間生活を完全に壊しています」と言って過言でない。ここだけは見解が一致したようだ。

共同通信も最近では朝日に劣らず反日メディアなのではと危惧され始めています。どこの国の人かわからないような似非日本人が跳梁跋扈している世の中…。
この人の文章には、脈絡なく「反日」「似非日本人」が繰り返される。私(澤藤)も、「反日」「似非日本人」なのだ。

そして嘘、悪口の言いたい放題が許されている世の中には私は断固反対します。嘘つきは信用できません。
おそらくは、私(澤藤)の、DHC・吉田批判の言論を「嘘、悪口の言いたい放題」と言いたいのであろう。そして、私が裁判に勝ったことを「言いたい放題が許されている世の中」と憤懣やるかたないとし、その上で「そのような世の中」には「断固反対」というのだ。悔しさが滲み出ていることは察するが、吉田は裁判から何も学んでいないようだ。

私(澤藤)と、DHC・吉田とは同じ平面にいる対等の法主体ではない。私の吉田に対する批判の許容度は大きく、吉田の私に対する批判の許容度は小さいのだ。

吉田は大企業の経営者で、サプリメントや化粧品という消費者の健康に直接関わる商品の製造と販売に責任を負う立場にある。それゆえに、行政規制に服し、政治や行政に関与せざるを得ない公的立場にあるのだ。しかも、厚生行政に服することに公然と不服を表明し、行政規制の緩和や撤廃を政策として掲げる政治家に、巨額の裏金を提供してもいる。こういう人物にこそ、批判の言論が必要であり、こういう人物であればこそ言論による手痛い批判を甘受しなければならない。
吉田嘉明に限らず、同様の立場にあるものには、その理をよく弁えた言動が必要なのだ。
(2017年1月26日)
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「DHCスラップ」勝利報告集会は明後日の土曜日午後
弁護士 澤藤統一郎
私自身が訴えられ、6000万円を請求された「DHCスラップ訴訟」。その勝訴確定報告集会が明後日の土曜日に迫りました。その勝訴の意義を確認するとともに、攻守ところを変えた反撃訴訟の出発点ともいたします。ぜひ、集会にご参加ください。

日程と場所は以下のとおりです。
☆時 2017年1月28日(土)午後(1時30分~4時)
☆所 日比谷公園内の「千代田区立日比谷図書文化館」4階
 「スタジオプラス小ホール」
☆進行
弁護団長挨拶
田島泰彦先生記念講演(「国際動向のなかの名誉毀損法改革とスラップ訴訟(仮題)」)
常任弁護団員からの解説
テーマは、
「名誉毀損訴訟の構造」
「サプリメントの消費者問題」
「反撃訴訟の内容」
☆会場発言(スラップ被害経験者+支援者)
☆澤藤挨拶
・資料集を配布いたします。反撃訴訟の訴状案も用意いたします。
・資料代500円をお願いいたします。
言論の自由の大切さと思われる皆さまに、集会へのご参加と、ご発言をお願いいたします。

「DHCスラップ訴訟」とは
私は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」を毎日連載しています。既に、連続1400日になろうとしています。
そのブログに、DHC・吉田嘉明を批判する記事を3本載せました。「カネで政治を操ろうとした」ことに対する政治的批判の記事です。
DHC・吉田はこれを「名誉毀損」として、私を被告とする2000万円の損害賠償請求訴訟を提起しました。2014年4月のことです。
私は、この提訴をスラップ訴訟として違法だとブログに掲載しました。「DHCスラップ訴訟を許さない」とするテーマでの掲載は既に、90回を超します。そうしたら、私に対する損害賠償請求額が6000万円に跳ね上がりました。
この訴訟は、いったい何だったのでしょうか。その提訴と応訴が応訴が持つ意味は、次のように整理できると思います。
1 言論の自由に対する攻撃とその反撃であった。
2 とりわけ政治的言論(攻撃されたものは「政治とカネ」に関わる政治的言論)の自由をめぐる攻防であった。
3 またすぐれて消費者問題であった。(攻撃されたものは「消費者利益を目的とする行政規制」)
4 さらに、民事訴訟の訴権濫用の問題であった。

私は、言論萎縮を狙ったスラップ訴訟の悪辣さ、その害悪を身をもって体験しました。「これは自分一人の問題ではない」「自分が萎縮すれば、多くの人の言論の自由が損なわれることになる」「不当な攻撃とは闘わなければならない」「闘いを放棄すれば、DHC・吉田の思う壺ではないか」「私は弁護士だ。自分の権利も擁護できないで、依頼者の人権を守ることはできない」。そう思い、自分を励ましながらの応訴でした。
スラップ常習者と言って差し支えないDHC・吉田には、反撃訴訟が必要だと思います。引き続いてのご支援をお願いいたします。

スラップを受任する弁護士の責任を問うー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第97弾

DHC・吉田に対する反撃の訴訟に、共同不法行為者として、原告代理人として訴訟を担当した弁護士も被告にするかどうか。まだ結論に至っていない。考え方は、次のようなものだ。

専門家責任という成熟しつつある法律用語がある。専門家には、非専門家(素人)とは異なる高度の水準の注意義務が求められ、契約責任も不法行為責任も厳格に論じられなければならない、とする考え方。具体的には、医師・弁護士・公認会計士・不動産鑑定士・税理士などの有資格者、あるいは原発や石油プラント、航空機などの危険物の設計者などに、それぞれの専門家としての高度のあるいは厳格な責任があるとされる。

医療過誤訴訟において、診療の過程における医師の注意義務の水準が激しく争われ、次第に厳格なものとして定着してきた。実は、同じことが弁護士の執務遂行についても言えることなのだ。弁護士は、実務法律家として専門家たる力量と倫理性をもたなければならない。そのいずれかの欠如は弁護過誤として法的責任を生じうる。依頼者との関係では債務不履行となり、係争の相手方との関係では不法行為となりうるのだ。

加藤新太郎(元裁判官)は、弁護士の執務における弁護過誤の類型を、〔A〕依頼者に対する責任と、〔B〕第三者に対する責任とに大別した上、各々を3類型に分類している。

〔A〕依頼者に対する弁護過誤の類型
(1) 不誠実型
(2) 単純ミス型
(3) 技能不足型

〔B〕第三者に対する弁護過誤の類型
(1) 不当訴訟型
(2) 違法弁論型(名誉毀損型)
(3) 違法交渉型

依頼者に対する弁護士の責任は自明で分かり易い。「弁護士さんが勝てると言ったから、提訴を依頼したのに、ぶざまに負けた。話が違うじゃないか」という局面での責任。しかし、第三者に対する責任の方は必ずしも自明とは言いがたいかも知れない。この点について、加藤新太郎の説くところは、以下のとおりである。

「弁護士は、訴訟追行又は強制執行に際して損害を与えた場合、不法行為責任(民法709条)を追及される。
弁護士としては、『専門的知識・技能を活用して依頼者の利益のみならず関わりを生じた第三者の利益をも害することのないようすべき注意義務』(一般的損害発生回避義務)を負う。これは、弁護士の公的役割に由来するものであるが、実定法上の根拠としては、弁護士法1条2項にいう誠実義務と考えてよいであろう。すなわち、弁護士の誠実義務は、依頼者に対する関係のみならず、弁護士の執務のあり方全般を規律するものである」(「新・裁判実務体系 専門家責任訴訟法」)」

法律に素人である依頼者は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」の記述によって、自分の名誉が傷つけられたとして、専門家としての力量を備えているはずの、資格を持った弁護士に提訴の可否を相談する。このとき、相談を受けた弁護士には専門家として、提訴の可否・当否を吟味し判断すべき義務があり、そのための力量と倫理が求められる。

相談を受けた弁護士はこう言うべきだったのだ。
「この提訴は勝ち目がない。かえって、訴訟の提起自体が不法行為責任を生じかねない。提訴という方法ではなく、あなたがもっている言論の手段を行使して反論すべき。威嚇効果を狙っているとしか考えられない非常識な高額請求などはもってのほか。」
「もちろん、訴訟を受任すれば、訴訟の帰趨にかかわりなく、私には多額の着手金が手に入ることになる。しかし、それは弁護士の倫理としていただくわけにはいかない。」

さて、この提訴が違法であるとして、だれに最も重い責任があるのだろう。専門家として、提訴の可否・当否の判断を誤った弁護士にこそ責任があるのではないだろうか。

ごく最近、ある事件をきっかけに、この点についての弁護士の責任が大きな話題となっている。
産経は、この件を次の見出しで報じた。「日弁連・AV出演拒否で女性に賠償請求 提訴の弁護士『懲戒審査相当』」「日弁連異例の決定 『正当な活動』反論も」

少し字句を補うとこういうことだ。「AV出演拒否で女性に賠償請求訴訟提訴を担当した弁護士の行為について、日弁連は懲戒審査に付することが相当と判断を示した」「日弁連としては異例の決定で、弁護士の行為を正当な活動とする反論もある」

報道によれば、ことの経過は、こんなところだ。
「アダルトビデオ(AV)出演を拒否した20代の女性に所属事務所が約2400万円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、日本弁護士連合会(日弁連)が、所属事務所の代理人を務めた60代の男性弁護士について『提訴は問題だった』として、『懲戒審査相当』の決定をした。」

「この女性は『タレントになれる』と18歳でスカウトされ、事務所と契約。その後、AV出演を求められ、拒否すると事務所から『違約金を支払え』などと脅された。女性が契約解除を求めると、事務所は男性弁護士を代理人として損害賠償訴訟を東京地裁に起こした。」「2015年9月の東京地裁判決は『事務所は高額の違約金を盾にAV出演を迫った』と指摘。『女性には契約を解除するやむを得ない事情があった』として請求を退けた。事務所側は控訴せず、判決は確定した。」(産経)

「損害賠償訴訟の判決によると、女性はAV出演を拒否すると会社から『違約金が1千万円かかる』と言われた。契約解除を求めると、会社はこの男性弁護士らを代理人として東京地裁に提訴。地裁は2015年9月、『強要できない仕事なのに、多額の違約金を告げて出演を迫った』として請求を棄却し、確定した。」(朝日)

問題は、この弁護士の提訴が、「女性を恫喝したAV出演強制を助長する行為」として、弁護士の非行にあたるかである。この弁護士が所属する第二東京弁護士会の綱紀委員会は非行にあたらずとして、懲戒審査に付さないことを決定した。しかし、日弁連の綱紀委員会はこの決定に対する異議を認めて、二弁の決定を取り消した。このため二弁の懲戒委員会は今年1月、懲戒審査を始めた、という。

日弁連の逆転決定の理由として、産経の報道では、
(1) 提訴はこの女性や同様の立場にいる女性にAV出演を強制する行為とみなされる恐れがある
(2) 請求額の妥当性や、提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない

朝日の報道は、
(1)「高額請求の訴訟はAV出演を強制する威圧効果がある」
(2)「女性への影響の大きさ、請求内容を考慮すると問題がないとは言えない」
の各2点を挙げている。

両記事とも、「高額請求」が問題の一つとして挙げられている。また、識者のコメントとして、「弁護士は依頼者の利益だけでなく、社会的利益の実現も求められていることを理解すべきだ」「『弁護士職務基本規程』が不当な目的の訴訟の受任を禁じるなど、一定の制限が設けられており、提訴自体が懲戒対象になることもあり得る」などが掲載されている。

さて、DHCスラップ訴訟に当て嵌めてみるとどうだろうか。
(1) スラップの提訴は、吉田嘉明の行為を批判する政治的言論の発言者である被告(澤藤)や、同様の立場の発言者に言論抑制を強制する行為とみなされる恐れがある。
(2) 高額請求の訴訟は、言論抑制を強制する威圧効果がある。
(3) 受任弁護士は、請求額の妥当性や、提訴が言論の自由に与える圧力などをおよそ検討していない。

いまDHCスラップ訴訟弁護団が検討しているのは、原告代理人弁護士の不法行為責任であって、懲戒事由該当性ではない。しかし、先に見たとおり、提訴を不法行為とする弁護士の専門家責任の根拠は、弁護士倫理にある。日弁連の決定が、「提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない」「高額請求の威圧効果」「請求額の妥当性」を問題にしていることに留意されなければならない。私に対する損害賠償請求額は、6000万円だった。その高額請求の意図にも鑑み、こんなことが許されてよかろうはずはない。

「弁護士職務基本規定」の2か条を引用しておきたい。

(違法行為の助長)
第14条 弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。
(強者による言論の自由抑圧は「不正な行為」である。弁護士は、提訴を手段とする不正な行為を助長しているのではないか)

(不当な事件の受任)
第31条 弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない。
(吉田嘉明の依頼の目的は言論抑圧にあり、その提訴は「不当な事件」として受任してはならない)

弁護士が弁護士倫理を弁えれば、スラップ訴訟の大半はなくなるのだ。

念のため、付け加えておきたい。医師には患者からの診療の求めに応ずべき義務(応招義務)がある。医師法19条が「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定めているところである。弁護士にはこれがない。スラップの依頼などは、断固として断ってよい。むしろ、断るべきなのだ。

もっとも、刑事事件の受任はまったく別問題である。いかなる被疑者も被告人も、有罪の判決確定までは無罪の推定を受ける。また、いかなる被疑者も被告人も、国家権力による訴追を受ける場面では、弱者としてその人権が擁護されなければならない。刑事事件の受任が不当な事件の受任とはならない。
(2017年1月23日)

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     「DHCスラップ」勝利報告集会は今週土曜日
弁護士 澤藤統一郎
私自身が訴えられ、6000万円を請求された「DHCスラップ訴訟」。その勝訴確定報告集会が次の土曜日に迫りました。この問題と勝訴の意義を確認するとともに、攻守ところを変えた反撃訴訟の出発点ともいたします。ぜひ、集会にご参加ください。

日程と場所は以下のとおりです。
☆時 2017年1月28日(土)午後(1時30分~4時)
☆所 日比谷公園内の「千代田区立日比谷図書文化館」4階
 「スタジオプラス小ホール」
☆進行
弁護団長挨拶
田島泰彦先生記念講演(「国際動向のなかの名誉毀損法改革とスラップ訴訟(仮題)」)
常任弁護団員からの解説
テーマは、
「名誉毀損訴訟の構造」
「サプリメントの消費者問題」
「反撃訴訟の内容」
☆会場発言(スラップ被害経験者+支援者)
☆澤藤挨拶
・資料集を配布いたします。反撃訴訟の訴状案も用意いたします。
・資料代500円をお願いいたします。
言論の自由の大切さと思われる皆さまに、集会へのご参加と、ご発言をお願いいたします。

       「DHCスラップ訴訟」とは
私は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」を毎日連載しています。既に、連続1400日になろうとしています。
そのブログに、DHC・吉田嘉明を批判する記事を3本載せました。「カネで政治を操ろうとした」ことに対する政治的批判の記事です。
DHC・吉田はこれを「名誉毀損」として、私を被告とする2000万円の損害賠償請求訴訟を提起しました。2014年4月のことです。
私は、この提訴をスラップ訴訟として違法だとブログに掲載しました。「DHCスラップ訴訟を許さない」とするテーマでの掲載は既に、90回を超します。そうしたら、私に対する損害賠償請求額が6000万円に跳ね上がりました。
この訴訟は、いったい何だったのでしょうか。その提訴と応訴が応訴が持つ意味は、次のように整理できると思います。
1 言論の自由に対する攻撃とその反撃であった。
2 とりわけ政治的言論(攻撃されたものは「政治とカネ」に関わる政治的言論)の自由をめぐる攻防であった。
3 またすぐれて消費者問題であった。(攻撃されたものは「消費者利益を目的とする行政規制」)
4 さらに、民事訴訟の訴権濫用の問題であった。

私は、言論萎縮を狙ったスラップ訴訟の悪辣さ、その害悪を身をもって体験しました。「これは自分一人の問題ではない」「自分が萎縮すれば、多くの人の言論の自由が損なわれることになる」「不当な攻撃とは闘わなければならない」「闘いを放棄すれば、DHC・吉田の思う壺ではないか」「私は弁護士だ。自分の権利も擁護できないで、依頼者の人権を守ることはできない」。そう思い、自分を励ましながらの応訴でした。
スラップ常習者と言って差し支えないDHC・吉田には、反撃訴訟が必要だと思います。引き続いてのご支援をお願いいたします。

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