澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

漁業法大改悪の日に ― 「浜の一揆」訴訟第3回法廷

本日、浜の一揆訴訟第3回法廷。仙台高裁401号室での本日の弁論テーマは、「漁業の民主化」や「漁業調整のあり方」、あるいは「漁協の組合員に対する責務」などという抽象的なものではない。非常に具体的な、「延縄漁」と「刺し網漁」の比較の問題。

三陸沿岸の漁民は、サケ漁を禁止されているが、釣り針にエサを付けた延縄漁でならサケを獲ってよいことになっている。それなら、延縄で漁をすればよいじゃないか。刺し網漁の許可は必要ないことにならないか。そのような観点からの「延縄」と「刺し網」の比較。

下記が法廷での代理人陳述要旨。その後の進行協議の場では、「延縄」と「刺し網」の実物を持ち込んで、原告漁師が裁判官に雄弁に説明をした。裁判官諸氏は、興味深そうによく話しを聞いてくれた。これだけのことで、原告たちの裁判所に対する信頼感が醸成される。

その後、仙台弁護士会の会議室を借りて2時間余。具体的な話題になると、原告らの発言が実に活発になる。「延縄」はコストに見合った漁獲を見込めず経済的にペイしないことが縷々語られた。「なぜ、一部のものにせよ、延縄での出漁をする者がいるのか」という問に、いくつもの答が返ってきた。

「数値を見ればバカげた漁のように見えるが、それは結果論」「出漁するときは、今日こそは大漁になるかも知れないと思うのが漁師なんだ」「他の漁師はダメでも、自分だけはうまく行くと考える」「漁師は博打打ちみたいなもので、一山当てたいのさ」「当たれば、うんと獲れることもある」「過去の栄光の経験が忘れられない」「過去の夢もあり、将来の夢も見るのが漁師」「その時期、ほかの漁ができないからやらざるを得ない」「おれは、延縄なんかやらない」「いまごろ、延縄やっている者の気が知れない」「どうしても刺し網でなくてはダメだ」

出漁日数がどうなるか、どんなに家族労働に頼っているか、油代が幾らかかるか、魚価がどうなるか、水揚げに対して各種付加金がどうなるか…。話は尽きない。

そして、他の漁師の寄り合いと違うのは、漁業法改正問題の国会審議が話題になること。「県漁連会長が、おれは個人的には賛成だと」「なんでだ。県漁連会長が漁協潰しになぜ賛成する」「反対してもダメだ。いずれ企業参入の流れができている、っていうことらしい」「企業を入れて、その売り上げから漁連が口銭を取れると思っているんじゃないのか」「漁協の頭越しに、知事から企業に許可が行くのだから、漁連は口銭取れないだろう」「すっかり欺されているんじゃないのか」「全漁連の会長もおんなじだ」「漁協の将来はどうなるだろう」

これからの漁業はどうなる? 漁業者の誰もが不安を持つ漁業法大改悪が、今日にも国会で成立しそうである。

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意 見 陳 述 要 旨

仙台高等裁判所第1民事部 御中

控訴人ら訴訟代理人弁護士  澤 藤 大 河

※本日陳述の準備書面(2)は、裁判所から求釈明のありました「延縄漁と刺し網漁の比較」について回答するものです。
おそらく、裁判所はこうお考えなのでしょう。
「控訴人らは、サケ刺し網漁の許可を求めているが、必ずしも刺し網ではなく、延縄でもサケはとれるのではないか。延縄でのサケ漁の許可が取れるのなら、刺し網許可の必要性は低いのではないか」。「岩手県漁業調整規則3条1項にいう、漁業許可申請に対する不許可要件としての『漁業調整の必要』の有無を判断するに際しては、延縄が許可される方針だということも考慮に入れる必要があるのではないか」。

※もし、「サケ延縄漁」が「サケ刺し網漁」に代わるものとして十分な内容をもつ漁法であるとすれば、特にサケ刺し網漁を許可する必要性は希薄となります。しかし、それなら、控訴人ら漁民が、サケ刺し網漁の許可を求める必要もないことになります。
結論から言えば、両漁法に互換性も代替性もありません。サケ延縄漁が許可されることをもってサケ刺し網漁を不許可とする根拠とはなり得ないのです。
被控訴人岩手県の水産行政と県内大規模定置網業者とが、サケ刺し網漁を許可できないとしてきたのは、サケ刺し網漁が定置網漁と競合して、定置漁の漁獲量を減殺させるというものでした。この主張が、サケ延縄漁に向けられることはありません。サケ延縄漁は定置網漁の漁獲に影響を与えるほどの漁獲がありえないからです。控訴人らが求めているものは、収益性の低いサケ延縄漁ではなく、飽くまでも刺し網漁の許可なのです。

※延縄漁は「釣り漁法」の1種であり、刺し網漁は「網漁法」の1種です。
一般に、漁獲効率の比較において、「釣り漁法」は「網漁法」に劣ります。岩手沿岸におけるサケ延縄漁の効率はサケ刺し網漁の効率に数段劣ります。
それだけでなく、それぞれの漁を実施できる海域も時期も異なります。延縄漁は、海面付近で行う漁であって、海面付近での魚が餌に食いつかなくては成立しません。サケ延縄においても海面付近でサケが餌に食いつく活発さが必要であるところ、その活発さは海水の温度に依拠することが知られており、その海水温の適温はおよそ14度です。つまり、海面付近の海水温が    14度程度になっていなくては延縄漁を行うことはできません。
近年の地球温暖化の影響で、海面の温度は上昇しており、サケ漁の適期にサケ延縄漁が可能であるのは岩手県では県北部に限られています。県南部では「秋サケ」の適漁期に海面付近の水温が高すぎるため、延縄漁はできないのです。
もちろん、真冬ともなれば、県南でも海面水温は下がってきますが、そのころには、サケが沿岸で回遊する漁の適期は過ぎています。とりわけ、サケの人工増殖事業は、シーズン初期のサケの漁獲を重視し、その時期の採卵を繰り返してきたため、サケ回帰の早期化が進んでいます。このことは原審に提出した井田齊意見書に詳しく述べられていいます。
これに対して、固定式刺し網漁は、海底付近にサケがいれば実施することができます。 海底においてサケが好む水温となるような水深の場所を選ぶことによって、固定式刺し網漁は、より広範な水域で、延縄漁に比較して時期も長く実施できることになります。

※延縄漁は、1本の幹縄に多数の枝縄をつけ、枝縄の先端に付けられた一つ一つの針に餌をつけて魚を釣る漁法です。漁の準備には、針の一つ一つに餌をつけていく必要があります。サケ延縄漁の場合、体長7cm程度の鰯を餌として使用します。餌付けは出漁の前日などに漁師の家族総出で行います。この労働は漁家の家族労働として金銭対価なく行われてきました。一回の操業は、潮の変わり目の魚が活発な時間帯を狙って行われます。
潮の変わり目にサケの行動は活発になり、その時間帶はわずか20分程度です。この時間帯の見極めが肝要で、これを逃すと漁果皆無となります。
サケ漁の漁期は、10月中旬からから1月中旬までの約3ヶ月90日間程度です。そのうち気象条件と準備が整って出漁可能なのは半分程度、年間45日が標準的なものです。
巻き上げられた幹縄の約7割は再利用ができません。海流や潮の満ち引きで揉まれた延縄は、ひどく絡まるからです。特に、他の漁船が敷設した延縄と絡まると、切断するしかないこともあります。ひどい絡まりようになると、幹縄とナイロンテグスが絡まった団子状態になり、漁民の家の庭先に山となって積まれることになります。サケ延縄漁を行っている漁師の家族は、これを延々とほどき続けるのです。

※サケ延縄は、効率が悪く高コストで収益性が低く、その上苛酷で無償の家族労働なしでは成り立たない漁法です。経済的にはおよそペイしない漁法と言わざるを得ません。
準備書面に詳述していますが、サケ延縄漁を開始する場合、船を別として初期費用として560万円ほどが必要です。次年度以後は毎年400万円あまりの経費が必要となります。また、金額に見積もれない労働と労働の過酷さも考えなくてはなりません。
生産地におけるサケのキログラムあたりの単価は平均すると400円程度なので、年間3.4トンの水揚げを想定すれば、136万円程度の収入となります。しかし、合理的な試算では年間コストが387万円にもなります。到底経済的になりたつ漁業ではありません。

※刺し網漁の網の価格は標準的なもので76万円。巻き上げ機は120万円から200万円程度。船を別にすれば、初期費用は安ければ200万円程度で可能です。
また、刺し網漁は、サケ以外の魚種に広く行われている漁法であるため、現役の小型漁船漁師の多くは、既に刺し網を所有しています。現在、刺し網漁許可を有している漁師は当然刺し網を所有しているし、刺し網漁の許可を受けていなくとも、過去に刺し網漁をしていたり、廃業した仲間から譲り受けて、刺し網を所有している者は多いのです。
燃料費は、延縄漁の1/3程度です。長大な縄を投入するために走り回る必要がないからです。仮に10tの水揚げがあれば、400万円の収入を得ることができます。
操業コストの年間支出は43万5000円程度であり、300万円台の収入が見込めることになり、十分に経済的に成り立つ漁法となります。

※以上のとおり、サケ延縄漁の許可が可能とされていることを、サケ刺し網漁申請の不許可理由として考慮する合理性は皆無なのです。十分なご理解をいただきたいと思います。

(2018年12月7日)

「漁業栄えて漁民は亡ぶ」で良いのか― アベ政権の水産改革批判(その5)

私はテレビを観ないが、ラジオは聞く。いま、自ずと選局はTBSに落ちついている。朝は森本毅郎スタンバイ、夜はセッション22。いずれも、その姿勢や良しである。さすがと感嘆させられることも多い。しかし、いつも同感というわけにはいかない。

10月30日徴用工訴訟・韓国大法院判決を、森本毅郎が批判したのには驚いた。虐げられた無念の思いをようやく晴らした老齢の元徴用工に祝意を表すべきところ、虐げた側の日本政府や日本企業の立場に立っての判決批判。あらためて、この問題での日韓の意識の溝を認識させられた。

セッション22での荻上チキのインタビュー。いつもは感心してばかりだが、漁業法改正問題では大きな違和感をもった。世論をミスリードしたと言っても差し支えない。勝川俊雄(東京海洋大学准教授)を招いての解説では、法改正礼賛の論調。改革の方向は正しい。遅ればせながらも、この法改正でようやく世界の水準に近づくことができる、というもの。これまでこの研究者には比較的良いイメージを持っていただけに、落胆した。

その解説は、今回の改正のポイントを水産資源の持続可能性とした。彼は、現行の漁業法には、水産資源の「持続性」や「持続可能性」という語彙が全く存在しないことを、「驚くべきこと」として、ようやくこれを盛り込んだ法改正を肯定した。政権にとって有り難い学問であり学者というべきだろう。

荻上チキはこれに切り込まなかった。このあたり、「漁民の要求ではなくアベ政権が提出した法案だから、どうせ碌なものではない」「しかも規制改革推進会議が出所だ、財界の要請に決まっている」という感覚があって当然なのに鈍感。アベ政治への警戒感が希薄なのだ。

漁業法制定時、法に「持続性」の文言は確かになかった。しかし、法65条には、「主務大臣または都道府県知事は水産動植物の繁殖保護のため一定の事項に関して、省令または規則を定めることができる。」とあり、この規定が「水産資源枯渇防止法」、さらに現行の「水産資源保護法」に受け継がれている。今回の法改正のポイントは、資源の「持続性」や「持続可能性」ではない。それだけの法改正であれば、漁民の中からこんな反対運動が出てくるわけはないのだ。

今、ようやくメディアは、勝川流の欺瞞から脱して、今次漁業法改正のポイントを、「漁場の企業への開放」「企業の漁業参入の促進」ととらえるようになった。企業の漁場への参入は漁民にとっての生業の危機にほかならない。企業のチャンスは、漁民のピンチなのだ。

ネットに大きく、西日本新聞の記事が紹介されている。漁業権を企業に開放、70年ぶり大改正案」「臨時国会の焦点に浮上」「漁業者は反発」という見出し。一昨日(11月26日)の配信。九州のブロック紙は、有明海の漁業に関心をもたざるを得ない。各地方紙とも、それぞれに事情は同じだ。

漁業への企業参入を促す漁業法改正案が、入管難民法改正案と並ぶ臨時国会の焦点に浮上している。地元漁協に漁業権を優先付与する規定を廃止し、沿岸水域の利用を企業に「開放」するもので、成立すれば約70年ぶりの大改正となる。だが「水産業の成長産業化に不可欠」と成立を急ぐ政府に漁業者は反発。野党も「沿岸漁業のあり方を根本から崩す法案だ」と批判を強める。

政府が想定するのは養殖業への企業参入だ。企業の投資でマグロ養殖などが大規模化すれば、水産業が成長産業になり、従事する漁業者が増え、所得も上がる-とシナリオを描く。

 漁協からは懸念の声が上がる。ノリ養殖が盛んな有明海では、色落ちなどを防ぐため、一部の漁場を使わないなど漁協が生産調整をしてきた。佐賀県有明海漁協の徳永重昭組合長は「漁業者が共同管理し、生産調整してきたが、新規参入企業が空いた区画で勝手に作られると困る」と話す。

法改正の目的の把握に関して、まことに正鵠を射た報道である。学者の解説よりも数段正確ではないか。さらに、同紙の記事はこうも続ける。

改革のもう一つの柱は資源管理の強化だ。魚種ごとに漁獲上限を定める漁獲可能量(TAC)制度は現在、サンマやクロマグロなど8魚種が対象だが、これを他の魚種にも広げる。漁船のトン数や隻数を制限してきた管理制度も、実効性を高めるため個別の漁船ごとに漁獲枠を割り当てる方式に改める。

この方式では、資金力のある企業が多数の漁船を確保し、漁獲枠が集約される恐れもある。小規模漁業者でつくる全国沿岸漁民連絡協議会の二平章事務局長は「大きな事業者を有利にする制度変更だ。小規模事業者が淘汰されかねない」と危ぶむ。

ここで、描かれているのは、「企業対漁民」「大規模事業者対小規模事業者」の対抗関係の構図である。

官邸(アベ政権)の考え方はこうだ。

大切なのは生産性の向上である。それが国民全体の利益となる。漁業の衰退とは漁業における生産性の低下ということだ。企業が漁民よりも、大規模事業者が小規模事業者よりも、効率的で生産性の高い漁業を行うことが可能なのだから、企業による漁業経営の道を開き、大規模事業者に存分に活躍してもらうことが国民全体に利益をもたらすことになる。これができていない現状は、既得権益擁護の岩盤規制があるからにほかならない。この岩盤規制にドリルで穴を開けて、企業あるいは大規模事業者を送り込むことが、漁業活性化の唯一の途であり、アベノミクスの普遍的目標でもある。企業に出番を与えることが、漁民の生業を奪うことになるかも知れないが、それは常に社会の進歩に伴う犠牲というべきで甘受してもらうしかない。

こんな法案、漁民・漁協が猛反対すべきが当然である。政府、与党は全国の漁民・漁協を敵にまわす覚悟での法案提出である。深い審議をされる事態になってはたいへんなのだ。メデイアの注目度が低いうちに無理にでも通してしまえ、という態度。臨時国会での成立を目指し、野党4党派は入管難民法と並ぶ対決法案と位置付けて、本格審議を求めている。

ようやくことの本質が見えてきた。政権が漁業を立て直すというのは、零細漁民によってではない。零細漁民を押しやって、企業あるいは大規模事業者の参入をさせようということなのだ。まさしく「ビジネスチャンス創設の漁業改革」であり、漁業栄えて漁民亡ぶ」「漁民なきあとの漁場に、企業こそ栄えよ」なのだ。本当にこれでよいのか。
(2018年11月28日)

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ウソとごまかしの『安倍政治』総検証!

12月3日(月)18時~20時(開場17時30分)

衆議院第1議員会館 地下1階「大会議室」

最寄り駅は、丸ノ内線・「国会議事堂前」、または有楽町線・「永田町駅」です。
(集会にはどなたでもご参加いただけます。議員会館ロビーで、担当の者が入館証を配布していますので、お受け取りのうえ入館下さい。)

「企業のための海づくり」を許さない ― 「沿岸漁民緊急フォーラム」報告

一昨日(11月19日)、盛岡で「東北沿岸漁民緊急フォーラム」が開催された。東北各県から80名を越える参加者があって、盛況だったという。二平章さん(茨城大学客員研究員・北日本漁業経済学会/会長)からいただいたご報告を紹介したい。

プログラムは以下のとおり。
■開催趣旨説明 二平 章
■主催者挨拶 瀧澤英喜(全国沿岸漁民連絡協議会共同代表・大船渡)
■報告「漁民に知らせず成立ねらう改定漁業法案の驚くべき内容」
      長谷川 健二(福井県立大学名誉教授)
   「沿岸漁家・漁協経営を破綻に導く改定漁業法案に反対」
      濱本 俊策(香川海区漁業調整委員会会長)
■意見表明 赤間廣志(宮城県漁業調整委員会委員)
      菅野修一(岩手県漁業調整委員会委員)
      片山知史 (東北大学教授)
      綱島不二雄 (元 山形大学教授) そのほか参加者より

長谷川福井大学名誉教授、濱本香川県漁業調整委員会会長の講演で「改正」漁業法案の問題点を学習、綱島山形大学名誉教授、横山岩手大学教授、赤間宮城県調整委員会委員、管野岩手県調整委員会委員、鈴木千葉県調整委員会委員らから、漁業法「改正」に反対する立場から意見表明があり、活発な質疑が行われた。

なお、昨日(11月20日)の河北新報は、「漁業権見直しに異議 東北の漁師が緊急集会『漁業者に一切説明のない改定許せぬ』」と次のとおり報じている。

 企業などに漁業への新規参入を促す水産改革関連法案の閣議決定を受け、漁業法改定に反対する「東北沿岸漁民緊急フォーラム」が19日、盛岡市であった。全国沿岸漁民連絡協議会などが主催し、約70人が参加した。
 改定案は、地元漁協や漁業者を優先していた漁業権の割り当てを廃止する方針。長谷川健二福井県立大名誉教授(漁業経済学)は「漁協による漁場の利用調整が働かなくなり、混乱を招く。企業利益は地元に還元されない」と指摘した。
 各都道府県の海区漁業調整委員の選任を選挙から知事の任命に変更する政府案には、塩釜市の漁師で宮城海区の赤間広志委員が「漁業者が自分の意見を主張する機会を奪う」と反対を表明した。
 岩手海区の菅野修一委員は「海の資源は効率化を求める企業だけのものではない。漁業者に一切説明のない改定は許せない」と表明。全国海区漁業調整委員会連合会が「地方議会に改定反対の意見書を提出するよう働き掛けてほしい」と呼び掛けた。

下記は、このフォーラムに配布された、二平さんの報告資料。分かり易く、問題点を鋭く指摘している。少し長いが、貴重な資料として全文をご紹介しておきたい。

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東北沿岸漁民緊急フォーラム資料(2018・11・19)

「漁業法改悪と沿岸家族漁業」

二平 章(茨城大学客員研究員)

●はじめに  
安倍首相は2018年10月24日の臨時国会冒頭で「70年ぶりに漁業法を抜本的に改正し、
①漁獲量による資源管理を導入する。
②船のトン数規制をなくして大型化を可能とし漁業の生産性を高める。
③漁業権の付与は法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業への新規参入、規模拡大を促す。」との施政方針演説をしました。
続いて11月6日には「漁業法の一部を改正する等の法律案」(以下、改正漁業法案)を閣議決定し、国会に提出したのです。
規制緩和で企業活動を刺激することなどを柱とした成長戦略は2012年12月から始まった第2次安倍内閣が掲げた経済政策「アベノミクス」の3本の矢のうち、大胆な金融緩和、機動的な財政出動に続く政策でした。それに基づき、安倍首相は2013年の第183国会で施政方針演説し「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指し、聖域なき規制改革を進め、企業活動を妨げる障害を一つひとつ解消する」として「規制改革会議(座長:岡素之 住友商事相談役)」を設置しました。
規制改革会議は、翌年の2014年5月には農業分野において、
①農業委員会の等の見直し、
②農地を所有できる法人の見直し、
③農業協同組合の見直し
の3本を柱とする「農業改革に関する意見」を提言し、安倍内閣は企業参入の障壁になるとして農協法、農業委員会法、農地法を「改悪」しました。
さらに、規制改革会議を受け継ぎ2016年9月に発足した規制改革推進会議(座長:大田弘子 政策研究大学院大学教授)にも提言を出させ、安倍政権は2017年5月に「農業競争力強化支援法」など8法案を国会で可決・成立させたのです。
その主な目的は「生産、資材、流通、種子など食の安定供給を支えてきた制度の変更や収入保険の導入によって競争力のある一部の農業経営体に資源を集中させ、川上・川下部門における民間参入を促すもの」(植田2018)であり、また「自主・自立の農協組織に過剰介入して民間企業に農業・農村でのビジネスチャンスを拡大し農業には全く似合わない新自由主義の効率化と市場競争原理を農村社会に持ち込むもの」(松澤2017)でした。

●漁業権と漁協への攻撃
「農業改革」の名のもとに、農協組織を弱体化させ、農業への大企業の参入・支配力を強め、家族農業経営を破壊へと導く法案を次々と成立させていった安倍内閣は、次には漁業関連法の見直しに乗り出します。
規制改革推進会議は、2017年5月23日に「第一次答申」を発表し、「岩盤規制改革に徹底的に取り組み、ここで一気にアクセルを踏み込む」とし、「漁業改革」について答申は「漁業の成長産業化等の推進と水産資源の管理の充実」を掲げ、2017年に検討を開始し2018 年に結論を出し、結論を得次第速やかに措置するとしたのです。この第一次答申では直接漁業権問題には触れていませんが、答申直前の5月10日に開かれた規制改革推進農業ワーキンググループ(WG)会合では、水産庁に対して「沿岸の漁業権が漁協を通じて管理されていることについての見直し」についてヒヤリングをおこなっており、当初から規制改革推進会議の狙いは、漁業権の見直しにあったことは明瞭でした。
2017年の9月からは規制改革推進会議の中に「漁業改革」を専門的に議論するための水産WG(座長:野坂美穂 多摩大学経営情報学部専任講師)がつくられ、2018年5月までに17回の会合を重ねて、6月に最終答申を行っています。
この水産WGがスタートする直前の2017年7月27日には、安倍内閣の漁業改革への意向を公表する形で、行政改革推進本部行政改革レビューチーム水産庁特別班が、河野太郎行政改革推進本部長、平将明、中西健治、小林史明行政改革本部役員らの出席のもと横やりを入れる形で「区画漁業権の運用見直し」と題する提言をわざわざ記者発表しています。
その内容は、クロマグロ養殖業や真珠養殖業などの区画漁業権の運用について、「漁業法で定められた区画漁業権の優先順位などの参入ルールが漁業への新規参入の障壁となっている。(新規参入にあたっては)企業などが漁業協同組合の組合員となって参入せざるを得ない状況にある。養殖業への参入に際しては、養殖漁場の運用管理上で優位な立場にある漁業協同組合との交渉や調整などで、参入事業者は膨大な時間や労力を費やしている。こうした状況は、養殖業を営む漁業経営者の不必要なコスト増につながり、漁業の成長産業化などの政策推進の妨げになっている。意欲と能力のある者が漁業に円滑に参入できるよう参入ルールや養殖漁場の運用管理について見直しを検討すべき」としたのです。つまり、企業が活躍しやすい海面利用のためには、漁業権や漁業協同組合は企業活動を妨げる障害であり、その影響を排除することが安倍政権の行政改革推進であることを明確に述べたのです。
「農業改革」でなされた実績から見てもわかるように、漁業における「規制改革推進」=「水産改革」のねらいが、企業活動の妨げになる漁業協同組合の弱体化と公選制である漁業調整委員会の権限を縮小し、海面での大規模養殖や風力発電などの企業活動や諫早湾などの開発行政、辺野古などの軍事基地建設での海面埋め立てなど、これまで様々な開発事業の物理的・経済的障害となってきた「漁業権」をなくし、「企業資本が自由に海と資源を利用できる体制に作り変えること」にあることは明瞭といえます。
「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」と公言し、農業や林業つぶしの悪法を次々と成立させてきた安倍政権が、最後の漁業分野で漁民から海を取り上げ「企業のための海づくり」を狙っていると言えるのです。

●「改正漁業法案」の問題点
改正漁業法案は、
第1に水産資源管理手法の見直し、
第2に許可漁業の見直し、
第3に漁業調整委員会制度の見直し
を主要な改革としています。
「法案」は「水産資源の保存および管理」を筆頭に掲げて、あたかも「水産資源の持続的な利用」をめざした法案であるかのような装いを凝らしていますが、その一番のねらいは、企業資本が自由に海面を利用し利潤追求の場にできる漁業権制度の見直しです。
漁業権には共同漁業権、定置漁業権、区画漁業権とよばれる3種類の漁業権があります。戦後民主化の動きの中、1949年にできた戦後漁業法では、地元に居住し、海で働く沿岸漁民に優先的に漁業権を与え、そのために地元漁民が加入する漁協を地元海面の漁業権の一括した受け手とし、漁協内の合議のもとに漁場の円満な利用をはかろうとしました。それは戦前の不在地主的企業免許制度下では、地元漁民は地元資源を利用することができずに、企業の利潤が都市に流出していった反省からつくられた制度でした(加瀬,2018)。
今回の改正漁業法案では、養殖のための区画漁業権を漁協を通さずに企業に直接免許したり、定置漁業権についても、申請が重複した場合これまでは漁協や地元漁民に優先的に与えられていた漁業権を知事の裁量で企業に直接免許することができるようになっています。まさに戦前の「不在地主的企業免許制度」に逆戻りの内容といってもよいものです。

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●漁業権制度の歴史と現状
魚は海の中を自由に泳ぎ回り、漁民はそれを追って漁を営むことから、海面には農業のような排他的な個人所有の「農地」は存立しえません。江戸時代から小さな舟でヒラメを釣る、地引網でイワシを捕る、目の前の磯や浜でアワビやハマグリを捕るといった地先の海がその漁村の専有的な漁場とされ、地元漁民がルールをつくり共有で利用してきました。村と村の境界が地先漁場の境界でもありました。カツオなどの回遊魚が来遊する沖の漁場は少数の大きな舟しか行けず、広大な海なので各船の競合もなく調整も必要ではないことから、各漁村から自由に入り会える自由な漁場として利用されました。現在の漁場利用制度も、基本的にはこのような江戸時代からの「磯は地付、沖は入会(いりあい)」の制度が受け継がれてきていたのです。
地元漁村の漁業者が優先して地先の漁場を利用できる制度としてできた漁業権漁場制度ですが、距岸距離で漁場利用をながめると、日本漁船だけが利用でき、他国の漁船が操業できないのが排他的経済水域(EEZ)で、国連海洋法会議で決められています。これが200海里ラインといわれ岸から370kmで、200海里の外が公海となります。ちなみに日本の領海は12海里で22.2kmです。これに対して漁業権漁場は各地で若干の違いもありますが、おおよそ距岸3~5km以内で極めて狭い範囲に限定されています。

●漁業権の種類
先に述べたように漁業権には漁場の利用の仕方によって、共同漁業権、定置漁業権、区画漁業権があります。
共同漁業権は一定の水面を多数の漁業者が利用する漁業権で、アワビやサザエ、ハマグリやアサリ、ワカメやコンブ、フノリなど地域的な資源を守りながら一定地区の漁民が皆で漁業を営む権利です。一定漁場を多くの漁民で集団的に利用することから漁民の間で混乱が生じないよう利用上の規則をつくり、資源の増殖・管理のために漁場造成、種苗放流、密漁対策などを行っています。そのためにその地区の関係漁民全員が加入している地元漁業協同組合に対して知事が免許を与え、漁協が組合内協議の上で希望漁民に免許を与えています。 定置漁業権は、一定の水面で定置網などの漁具を設置して漁業を営む権利で、網の目合を変えてブリやマグロからサバ・イワシまでをねらう大型定置網および北海道ではサケ定置を営む権利で、経営者の申請に対して県知事が免許します。広い範囲の地先海面を長期間独占することから、その収益を地元漁村・漁民に還元させる趣旨から、商人よりは漁民、個人よりは団体、よそ者よりは地元人を優先する優先順位が現行漁業法には定められています。 区画漁業権は、海面にブリやタイ、最近ではクロマグロ育成用の大型生簀(いけす)や、カキやホタテをつるす筏(いかだ)を設置して、養殖業を営む権利です。養殖業では多数の漁民が内湾など限られた静穏な一定海面に入り会いながら集団的に利用することから、共同漁業権同様、漁場利用のためのルールづくりや漁業者間調整、監視や監督が必要となります。そのため、関係漁民全員が加入している地元漁業協同組合に対して知事が免許を与え、漁協が個人を決定しています。多数の組合員が免許申請することから、県では漁民一人ひとりのことも、漁場の条件も判断できないことから、漁民が全員加入している地元漁協内で協議のうえで養殖施設の台数や設置場所を組合員合意のもとで決定しているのです。ただし、企業などの個別経営であっても漁協の組合員となれば養殖業を営むことは可能で、現在も企業は地元に子会社をつくり、漁協組合員になって養殖業を行っています。

●クロマグロ養殖と企業
海面養殖業は多岐にわたりますが、大多数が小規模・家族経営の形態です。そこに近年、マルハニチロやニッスイ、双日などの大手企業資本が現地に子会社を設立し、漁協に加入してクロマグロ養殖業に参入してきています。「世界6位の排他的経済水域(EEZ)を有効に活用し持続可能で成長力ある漁業を実現する」と規制改革推進会議水産WGの審議事項(2018年9月20日)では「広い海」を喧伝しています。しかし、クロマグロ養殖漁場も、実は多数の沿岸漁民が漁業を営む内湾など狭い共同漁業権内の沿岸域なのです。混乱を起こさずに養殖業を行うためには、内湾域を利用する企業経営体も漁民もすべてが地元漁協に加入した上で、全組合員合意でその水面の有効利用と環境管理につとめることは至極当然のことといえるでしょう。
漁協では養殖漁場を利用する組合員からは個人であれ企業であれ、漁場使用料や市場出荷・販売した場合の販売手数料を徴収しています。これは漁協の運営経費にあてられます。漁場利用にあたっては組合内調整のための協議や漁場管理の労役義務も当然、漁協組合員としては義務となります。また、漁協は漁船登録などの行政代行業務や、種苗放流、漁場監視や海難事故対策などいろいろな公益的な役割も果たしています。まさに協同組織として地先の海の環境と地域漁業を守る役割を担っているのが漁協なのです。利潤追求の企業資本にとっては、漁業権免許を漁協からでなく知事から直接受けることにより、漁協から離脱して、漁協に対する費用負担や調整協議、労役負担をなくし、地元漁民や漁協に制約を受けることなく、企業本位に海面を自由に利用して利潤追求したいというのが本音でしょう。行政改革レビューチームの自民党議員からの提言内容もそのままです。

●企業資本優先の海づくり
沿岸漁場の中に地元漁協と無関係の直接経営者免許の企業養殖が出現すれば、どうなるでしょう。これまでは漁協内で組合員である養殖漁家が協議して海を汚染しないよう過剰な餌やりを防止したり、価格暴落を起こさないように養殖魚の数量調整を行ってきました。その漁場に漁協には所属しない経営者免許の企業養殖ができてきたら、彼らは漁協には無関係に企業の論理で養殖生産することができます。そうなれば漁協を中心とする沿岸の共有海面利用の秩序と体制が崩壊し、沿岸漁場には混乱と対立が生じるのは必然です。株主の利益を優先し、ともすると「今だけカネだけ自分だけ」となる企業論理では、利潤を最優先して共有漁場環境を荒廃させ、利潤がなくなればさっさと撤退して他へ資本を投下するのは、これまで各地で営まれた参入企業養殖の事例をみても明らかです。漁協に支払う各種負担金がいらないとなれば、個別養殖漁家からも直接経営者免許に切り替える経営体が出現し、漁協を中心とした地域の共同体制は壊され、無秩序な養殖生産から次第に小規模・家族経営の養殖漁家は駆逐され、地域漁協も組合員や収入が減少することから縮小していくことになります。地域資源から生み出される富が企業資本によって中央に流出する戦前の状況が生み出されることになり、地域自治体も一層衰退していくことは明らかです。
漁民と漁協の努力でブランドのブリやマダイ養殖業を成功させ豊かな漁村を築いてきている愛媛県うわうみ漁協の佐々木譲組合長も、今回の水産改革について「知れば知るほど正に漁業の成長を企業にゆだねるものであり、歴史的に連帯・協調・相互協力の精神を基本に漁業・漁村社会を守るため、浜の力を漁協に結集し、将来にわたって、その役割を果たすべき零細漁民の救済・成長とは逆に企業の成長を促進するものであり絶対に許せない改革だと思う」とし「協同漁業権区域内に経営者免許での企業参入で漁場行使すれば、生産のすべてにおいて調整不能となる。魚類養殖の免許は組合免許である現状を変更しないこと。共同漁業権内には企業参入を認めないこと」と提言する意見書をまとめています(2018年9月4日意見書)。
定置漁業権でもこれまで、地元漁民や漁協に優先的に免許された定置漁業権が、行政の裁量で企業的経営に直接免許されることになります。また、全国の漁業調整委員会の反対意見を無視して漁業調整委員会委員を公選制から知事の任命制に変更します。今回の漁業法改正は、養殖漁業権や定置漁業権における漁協の漁場管理や漁場調整の権限を無くし、漁業調整委員を任命制にして地方の行政機構にその責任を負わせ、企業資本に優先的に漁場利用権を与え、沿岸漁場を企業資本に明け渡す企業のための海づくりなのです。

●漁船の規模撤廃で強まる漁獲圧力
次に、漁船漁業の企業資本のために「規制緩和」をねらって盛り込まれたのが、大臣許可漁業・沖合漁業における「漁業許可制度の見直し」です。「漁船の数や船の大きさである総トン数規制をなくして船の大型化を可能とし漁業の生産性を高める」条項です。一般的に魚類資源に対する漁獲圧力は漁船の数や漁船の大きさに比例します。現代の漁獲行為は最新鋭の漁網漁撈装置、遠くの海中の魚群を探索できる高性能な魚群探索機器類を用いて行われます。漁船のトン数規模が多くなればより大きなエンジンを積み込み、より高度な魚群探索機器を導入して、魚群を探索する範囲と能力を高め、より大きな漁網を曳く力も強くなります。一隻あたりの漁獲効率が上昇するのは歴然です。漁獲効率をめぐって企業間では漁船装備の船間競争も激化します。高額な漁撈装置や探索機器類ですので導入コストも上昇するでしょう。国は漁獲可能量(TAC)制度を導入するので心配は要らないと言うのでしょうが、企業資本同士が競争する海の上の世界はそう単純にはいかないのが現実の世界です。海上では制限された漁獲量の元、低価格の小型魚は海上廃棄され高価格の魚だけを漁獲したり、資源豊富な沿岸漁場へ違法侵入することが起きてくるでしょう。漁獲効率を高める沖合漁業の出現で沿岸漁業・漁船との間で今以上に資源と漁場をめぐる軋轢が一層顕在化してくると思われます。
また、知事許可漁業・沿岸漁業にたいしても、「制限措置など、大臣許可漁業に関する所要の規定を準用する」となっています。知事許可漁業である県まき網漁業や底びき網漁業においても、トン数規定が外されていったならば、大臣許可船同様、漁獲効率の高い船が地域内漁場に出現し、沿岸資源に対する漁獲圧力は一層強まり、釣り漁業など小規模沿岸漁業は窮地に追い込まれていくことは必然です。現に、今でもM県では一本釣りの天然礁漁場に夜間、灯火で魚を集めて一網打尽に魚をまく、まき網船が出現、一夜にして小規模漁民の釣り漁場が消滅したり、まき網船が一度に多量に魚を水揚げすることから、小規模漁民が水揚げする魚の単価が下落したりする事例が生じて議会でも問題化しています。また、C県では内湾で操業していた県知事許可のまき網が漁船装備を高度化してそれまで操業できなかった外海漁場へ進出、深場のつり対象魚種を漁獲して、小規模つり漁民の操業を不安に落とし入れている事例もあります。漁船のトン数規模制限の廃止は漁船間競争を一層激化させ、小規模漁民が多数で利用していた海を、次第に資本力のある企業の船だけが独占する海につくりかえていくことにつながるでしょう。

●TACによる資源管理
海洋生物の資源管理手法には
①漁船隻数や漁船のトン数規模制限、操業期間の制限、漁船の馬力制限など漁獲圧力を入口で制限する投入量規制(インプットコントロール)、
②漁船設備や漁具の制限による技術的規制(テクニカルコントロール)、
③漁獲可能量(TAC)の設定による漁獲量を制限する漁獲量規制(アウトプットコントロール)の3つがあります。
日本では従来、①の投入量規制や②の技術的規制により漁業管理が行われてきました。③の漁獲量制限管理(TAC管理)は欧米で普及した方法で、魚種ごとに総漁獲可能量(TAC)を決めて、最大持続生産量(MSY)を直接実現しようという管理手法です。
MSY理論とは、ある資源水準に資源を維持しておけば、毎年、最大の漁獲量(MSY)が得られるという理論で、国連海洋法条約では加盟国に資源をMSY資源水準に維持し、MSYを達成することを奨励しています。日本では1996年に国連海洋法条約の批准を行い、TAC法(海洋生物資源の保存及び管理に関する法律)を成立させTAC制度の導入が始っています。 TACによる漁獲量規制はこれまで、サンマ、マアジ、サバ類、マイワシ、スルメイカ、スケトウダラ、ズワイガニの7種で行われていましたが、2018年からクロマグロが8番目の魚種として加わっています。
改正漁業法では、8割の漁獲量魚種にTAC管理を拡大し、魚種ごとの総漁獲可能量(TAC)を計算、個々の漁船へ漁獲量を割り当てる制度(IQ制度)にするとしています。
規制改革推進会議の議論のなかでは2017年9月の水産WGのスタートにあたり野坂美穂座長が「水産ワーキンググループにおける今期の主な審議事項」を示し、第1項の「漁業の成長産業に向けた水産資源管理の点検」において、「産出量規制や個別割当の積極的活用を含め、必要な見直しを行う」としました。これは社団法人日本経済調査協議会の「提言」(2007)以来、規制改革論者が賛美してきた西欧型漁業における出口管理や個別漁獲割当IQ/譲渡制ITQ論を引き継ぐものでした。第6回WGに提出された、「これまでの議論の整理」文書には、「インプットコントロールを重視する漁業許可制度のあり方について検証し改革することが重要」とし、「漁業資源管理の方法は、アウトプットコントロールを基本に・・・可能な限り個別割当(IQ)方式を活用することが重要」と記しています。
しかし、個別漁獲割当であるIQ方式だけで、漁獲権利を商品化して自由に売買できる譲渡制ITQの導入がなければ、漁業資本にとっては「規制緩和」ではなく「規制強化」の面だけが強く出ることになり、必ずしも「一番企業が活躍しやすい国」になるわけではありません。そこで第7回WGに出席した太田弘子規制改革推進会議座長は、「これまでの議論の整理文書」に不満を示して、「これで漁業が成長産業になるかというと、心もとない」と述べ、経営力、資金力、技術力をもつ能力ある担い手(企業資本)が円滑に漁業参入できるよう、漁業資源管理、漁業許可制度、漁業権の配分権を持つ漁協機能の見直しについて、さらなる具体的方策を提示するよう求めました。ここに規制改革推進会議のめざす本質が端的に現れていたと言って良いでしょう。

●TAC管理とMSY理論
MSY理論は密度効果の存在を前提に成り立つ概念で、密度(個体数)の増大により、増加率、死亡率、成長率が変化し、密度効果によって持続生産量に最大値が存在する場合にしか適用可能ではありません。密度効果は親の量と子供の量との関係性で判断されますが、世界中の海洋生物資源のうち親魚量と子供の量に関係性が認められるのは224魚種のうちわずか36種(16%)との報告もあり、近年はMSY理論そのものに科学者たちの批判が高まっています。
川崎(1996)は、FAOはじめ西欧で用いられている水産資源管理理論=MSY理論は、漁業資源の変動を漁業努力量と資源量だけの関係としてとらえ、環境変動が水産生物資源にあたえる影響を無視している。資源変動には環境変動(=レジームシフト)影響の方が一般的であり、日本も世界の漁獲量変動も「乱獲」による「資源枯渇」とするMSY的乱獲理論では説明できないとし、渡邊(2017)は海洋動物の特性は、小型の卵を多量にばらまき、低い生残確率を持つ個体の寄せ集めに次世代を依存するため、当たり年とはずれ年が生じやすく、資源量の変動が大きい。このような特性を持つ資源の安定化にはMSYは使えない。親と子の量的な関係に依拠して加入量を予測することはできないとしています。
片山(2017)は、沿岸資源は「親を獲り残せば増える」例は極めて少なく,もともと親子関係に依存しないで変動する資源特性を持つとしています。産卵親魚量確保のためにIQ等で出口管理を徹底する「ノルウエー型漁業管理」を行っても、加入量の増加は保障されないと述べています。さらに桜本(2018)は、西欧型資源管理手法であるTAC管理の基本にあるMSY理論については、「マユツバ」ものであり、MSY理論に基づいて管理を行おうとすること自体が、管理を失敗させる主因となっていると厳しく批判しています。

●資源乱獲論の流布
FAO(国連食糧農業機関)は、1992年に世界の海産魚類資源の3分の2以上が、乱獲か、これ以上漁獲すると乱獲になるレベルであると発表し,2004年には、「資源が枯渇状態に近い」種類が8%、「過剰な漁獲に陥っている」種類が16%、「これ以上の漁獲圧力が加わると乱獲で資源減少の危機にさらされる」種類が52%、「まだ、漁獲量を増加させる余地がある」種類が24%であると評価しています。また、FAOは1995年12月に京都で開催された「食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する国際会議」において、世界の水産物の供給量の横這いは乱獲の結果だとし、その原因は不適当な漁業管理制度であるとする基調報告を提出しました。まさに近年の日本における規制改革会議の水産資源乱獲論議と同様です。
FAOの報告のあと2000年代に入り,国内外で水産資源の乱獲を「告発」する出版物(例えばC.Clover,2004・井田2005,小松2007)が相次いで刊行されます。これらの著書に特徴的なことは、資源減少の著しい魚種を事例的に取り上げる傾向が強く、増加傾向を示す魚種があることについてはほとんど触れていない点と、資源減少の主な要因を過剰漁獲におき、乱獲の危機を強調する傾向にある点です。
このような漁業資源問題を規制改革推進のための政策作りの一環として、取り上げたのが日本経済調査協議会水産業改革高木委員会でした。「魚食をまもる水産業の戦略的な抜本改革を急げ」とする緊急提言を2007年2月に、ついで提言を同年7月に発表します。これらの提言は同年12月に政府審議会である規制改革会議の「規制改革推進のための第二次答申」に、そのまま盛り込まれます。答申には、わが国水産業は悪循環に陥っており、その背景には、水産資源が枯渇状態にあること、そのことが漁業の衰退と過剰漁獲を招き、さらには漁業の衰退に拍車をかけていると記載されています。現在の規制改革推進会議の議論もまさにこの流れの上にあったと言って良いでしょう。

●日本周辺の魚類資源の動向
規制改革会議の「規制改革推進のための第2次答申」(2007)に盛り込まれた抽象的な「乱獲による資源枯渇論」に対して、「日本沿岸域における漁業資源の動向」を具体的に調べる調査研究委員会(座長:二平章)が組織され、日本沿岸・沖合の漁業資源の個別動向が調査され、結果が東京水産振興会報告書(2011,2012,2013)にとりまとめられました。
そこでは、マイワシ、マサバ、スルメイカ、サンマ、ブリ、ニシン、カタクチイワシなどの浮魚類は1970年代に起きた温暖から寒冷、80年代末に起きた寒冷から温暖への海洋環境のレジームシフトによって資源変動が起きたことが改めて明らかにされています。
さらに、資源変動は比較的安定で漁獲努力量の調節で資源量はコントロールされると長く考えられてきた底魚類についても検討され、漁業が盛んな東北太平洋岸および日本海北部における底魚類、イシガレイ・マガレイ・キアンコウ・ヤナギムシガレイ・アカガレイ・キチジ・ソウハチ・スケトウダラなどが、浮魚類と同様に20年規模の海洋環境のレジームシフトによって資源変動したことが示されました。
また、高木委員会の資料・データ集に「3年間の禁漁で回復させた」として漁業管理成果とされた1990年代の日本海北部のハタハタ資源の復活についても、他魚種の同時的増加現象もふまえ、基本的要因は海洋環境のレジームシフトにあったとされました(二平2013)。

●自然環境破壊による漁業資源の減少
また、東京水産振興会報告書には魚類資源の減少要因として、人為的な環境改変(開発行為)が重要魚種を減少に追い込んだ事例が数多く報告されました。
魚介類資源の減少を続けている瀬戸内海の貝類では、西部のアサリが1973年、サルボウが1976年で消滅、その要因は干拓事業による底質環境の悪化とされています。また、山口県周防灘での底魚類やクルマエビの減少は貧酸素水の影響、兵庫県のカレイ類の減少は、ポートアイランドの二期工事や神戸空港建設工事による潮流の弱勢化による貧酸素の影響、大阪湾のシャコの減少は関西空港工事の影響とされました。兵庫県播磨灘、山口県沿岸でも、埋め立てによりアサリやカレイ・エビが減少し、貝類減少が、植物プランクトン利用の物質循環を遮断し、貧酸素水塊形成を助長、また、埋め立てが多くの魚類の産卵場と幼稚魚の成育場を奪ったと指摘されました。また瀬戸内海の重要資源であるイカナゴは、砂中で夏眠する生態から生息場は海砂の存在に依存します。その瀬戸内海の海砂採取は1960年代から顕著となり6億立米(?)もの膨大な海砂が採取されました。海砂採取実績のない和歌山・大阪、初期に採取禁止にした兵庫県と、岡山・香川・広島・愛媛の4県のイカナゴ漁獲量の比較によれば、前3府県の漁獲量は変動が少ないか増加傾向を示すのに対して、後の4県の漁獲量は1980年代に急減したまま回復することなく低迷していることが明らかにされました。海砂採取の窪地の回復は容易でなく4県でのイカナゴ資源への影響は長期におよぶと報告されています。
伊勢・三河湾では、①埋め立てによる浅海環境の喪失による産卵場、幼稚魚の成育場の減少、②浅海環境の喪失による水質浄化機能の低下、貧酸素化、③資源減少による漁民側の漁獲圧力の増加が起こっているとされ、干潟の埋め立てによる二枚貝資源の減少が海水交換に匹敵する生物ろ過機能を低下させていることが指摘されています。伊勢・三河湾のカレイ類資源では1980年代半ば以降漁獲量の低迷が著しく、休漁しても資源増加はなく、その要因は貧酸素水塊の形成や長良川河口堰建設にともなう海水流動の停滞による泥の堆積など環境悪化にあるとされました。
人為的環境改変の影響は、海面ばかりでなく、湖沼や河川にも現れています。全国第2位の湖水面積をもつ霞ヶ浦の魚類生産量は1970年代半ばの18000トンから現在の2000トンレベルまで低下したが、その要因は河口堰水門の閉鎖による湖水の停滞が湖内の物質循環機能を変化させ魚類群集の構成を変化させたことによるとされました。また、利根川・霞ヶ浦流域は日本でも有数の天然ウナギの生産地でしたが、河口堰建設にともない400トンあった霞ヶ浦の漁獲量は10トンに、700トンあった利根川での漁獲量は50トン以下に減少しています。ウナギ資源の回復には、河口堰建設や河川・湖沼のコンクリート護岸化などで喪失したウナギの生息環境の復元が大きな課題であるとされました。
環境悪化による沿岸資源の生物生産量の低下は、内湾域ばかりではなく、外海域でも起きています。外海域では河川からの砂の供給量の減少や大型港湾建設による砂浜海岸の浸食が全国で問題化しています。鹿島灘のハマグリ漁業は漁業管理の優良事例として有名でしたが、港湾建設による大規模な海岸侵食の影響でハマグリの生育環境はほとんど喪失したことが示されています。

●資源管理と漁業者の合意形成
親子関係に依存しないで変動する資源特性を持つ水産資源についてどのような管理方策を講じるのかが現代の資源管理に問われている課題です。大事な点は海洋環境の変動にも注意を払いながら、毎年の新規加入資源の動向をしっかりとモニタリングし、新規加入の幼魚が確認された場合はできるだけ小型魚の漁獲を控えながら、最大限の経済効果を生み出すような漁獲管理(成長管理)を実行できるよう関係漁業者間で協議・実行すれば良いのです。小型・若齢魚の漁獲実態がある場合、小型魚の漁獲を控えれば単価の高い大型魚に成長するのは明らかです。ただ、漁業現場には資源計算の理屈通りに「管理」の方向に操業が転換できない様々な要因が存在します。小型魚の「管理方策」を実現するには、生産者である漁業者らと徹底した議論を積み重ねながら、実施を阻む様々な課題を漁業者合意のもとで解決しながら「管理方策」の実現に向かうべきです。東北6県の30㎝以下のヒラメ小型魚管理宣言は県水産試験場の資源担当者らが、利害が複雑にからみあう各地区沿岸漁業者らと小型魚保護効果について度重なる協議を重ねて実現にこぎ着けたものです。コンピュータ上の資源計算結果だけを上意下達に示して、このとおりに操業しない漁業者は「乱獲」をする「悪者」であり許可を取り消すなどと脅すような議論だけでは、問題の解決にはなりません。行政や資源研究者たちが漁業現場に降りて実践化のための具体的論議を漁業当事者らと徹底して行うことがなくては、合意形成はつくられず、資源管理体制へ向けた「改革」にはなりません。また、漁業現場との意見交換がなければ資源計算の元となる数字の信憑性や計算結果の妥当性の検証も不十分になりがちであり、西欧型TAC管理だけが資源管理の唯一の方策であるなどという「西欧崇拝主義」の誤りにも気づかないのです。現在のクロマグロの規制をめぐる国内の混乱も現場実態を精査せず上意下達に実行させようとした点に最大の問題があると言えます。

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●国連家族農業(漁業)10年に向けて
我が国の海岸線の総延長は35,308kmありますが、離島も含め、その海岸線に6,298の漁業集落が存立します。平均して海岸線5.6kmごとに漁業集落が立地しています。漁業集落が条件不利地と言われる島々や半島も含め海岸にくまなく立地することにより、国境を監視し、海岸環境を守り、国土の保全とその均衡ある発展に寄与しています。
また、雇用機会の限られる条件不利地にあって、漁業は地域経済を支える重要な産業の役割を果たしています。養殖漁業を含めると全漁業従事者の79%が沿岸漁業に従事し、全漁業経営体数の94%、漁船漁業の78%が地域に根ざす沿岸漁業を営む経営体となっており、文字通り沿岸漁業が日本の漁業、漁村を支える存在になっています。
これまで沿岸漁業・家族漁業が一方的に衰退してきた背景には、大規模漁業に偏重した対策や土木・開発企業向けの海の公共事業を重視し、小規模・家族漁業経営体の振興対策・所得対策をなおざりにしてきた国の水産政策にその原因があります。
いま国の水産政策に必要なのは、規制改革推進で利潤追求の一部企業資本に漁業権を開放し、沿岸漁場を崩壊させることではありません。沿岸漁場の管理主体として重要な役割をはたしてきた協同組織である漁業協同組合の機能強化をはかり、地域の主体である小規模・家族漁業を育成し、地域漁村を活性化させていくことこそが大切です。このことが、真の「地域創生」であり、島々を含め海に囲まれる日本の国境を守り、国土を守る「安全保障」につながるのです。
 国連は来年から10年を「家族農業10年」と決議し、世界でも9割以上を占める小規模家族農業・漁業の振興を打ち出しました。日本漁業でも94%は小規模沿岸家族漁業です。今回上程された改正漁業法案は日本の沿岸漁業・家族漁業を衰退に導く意味で国連の決議に背を向ける法案といえるでしょう。(にひらあきら)

文献
Clover.C(2004)飽食の海.岩波書店,pp318.
井田哲治(2005)サバがトロより高くなる日.講談社現代新書,pp280.
加瀬和俊(2018)沿岸漁業への企業参入と漁業権..経済,No.269,118-126,新日本出版社.
片山知史(2017)資源操作論の限界.漁業科学とレジームシフト,.東北大学出版会,432-449.
川崎 健(1996)世界の漁業生産量の停滞は乱獲の結果なのか.漁業経済研究,41,114-139.
小松正之(2007)これから食えなくなる魚.幻冬舎新書,pp199.
松澤 厚(2017)戦後農政の総決算へ暴走する安倍政権.労農のなかま,2017年5月号,28-36.
二平 章(2013)秋田県産ハタハタの資源動向と漁業実態.日本沿岸域における漁業資源の動向と漁業管理体制の実態調査.東京水産振興会.87-109.
桜本和美(2018)マグロ類の資源管理問題の解決に向けて.水産振興,605,pp55.
東京水産振興会(2011,2012,2013)日本沿岸域における漁業資源の動向と漁業管理体制の実態調査.各年度版.
植田展大(2018)農業競争力強化に向けた制度改革と農業政策の課題.農林金融,2018年1月号,27-41.
渡邊良朗(2017)自然変動する海洋生物資源の合理的利用..漁業科学とレジームシフト,東北大学出版会,395-412..

(2018年11月21日)

 

東北沿岸漁民緊急フォーラムのご案内 ― 『漁業法改定』は沿岸漁業に何をもたらすか(その4)

国会で審議入りした漁業法等の改正案。漁民対企業の対決法案となっている。これは、けっして革新対保守の対決ではない。「浜の生活」派と「新自由主義」派との争いなのだ。かつては、地元の保守政治家が漁民の生活の守り手だった。いま、安倍自民党は、漁民の生活を企業に売り渡そうとしている。

この問題で「東北沿岸漁民」の緊急フォーラムが、19日(月)午後盛岡で開かれる。本日はそのご案内。
この案内チラシに、具体的な問題点が次のように指摘されている。
 ①養殖用漁業権免許を漁協を通さず知事が企業に直接免許
 ②地元漁民に優先的に与えられた定置漁業権を知事裁量で直接企業に免許
 ③海区漁業調整委員会を公選制から知事の任命制に変更
 ④沖合漁業の漁獲効率を一層高め、沿岸資源圧迫につながる漁船トン数制限撤廃
 ⑤大規模漁業を優遇し小規模漁業を困窮化へ導く漁獲量割当(TAC)制度の導入

この法案が成立すれば、やがて沿岸漁業は、大企業に取って代わられることになる。個人経営、家族経営が主体の地域経済は確実に衰退する。浜はさびしくなる。ちょうど、商店街のにぎわいが消えて枯れ葉の舞うシャッター街になったように。

これを、漁業資源の持続性のための望ましい改革とミスリードしてはならない。
関心ある方、条件の許す方は、ぜひご参加を。
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東北沿岸漁民緊急フォーラム

『漁業法改定』は沿岸漁業に何をもたらすか
【日時】2018年11月19日(月)14:00 ~ 17:00
【会場】サンビル7 階 ホール
(岩手県盛岡市大通1丁目2. 1 岩手県産業会館)
安倍内閣は11月6日に、沿岸漁民の漁業権を企業に売り渡す「漁業法改定案」を閣議決定。「今国会で成立させる」と表明しました。
この法案では
①養殖用漁業権免許を漁協を通さず知事が企業に直接免許
②地元漁民に優先的に与えられた定置漁業権を知事裁量で直接企業に免許
③海区漁業調整委員会を公選制から知事の任命制に変更
④沖合漁業の漁獲効率を一層高め、沿岸資源圧迫につながる漁船トン数制限撤廃
⑤大規模漁業を優遇し小規模漁業を困窮化へ導く漁獲量割当(TAC)制度の導入
…などを行うとしています。
この案が通れば沿岸漁家・漁協の経営はいっそう困難になり、地域経済も疲弊してしまいます。地域創生とは真逆の悪法だと言わざるをえません。漁業関係者に「ていねいな説明」もせず、声も聞かずにすすめている改定案。その内容と問題点をさぐります。

資料代:1000 円 どなたでも参加いただけます

『漁業法改定』は沿岸漁業に何をもたらすか
主催:JCFU 全国沿岸漁民連絡協議会,
漁業法改正法案に反対する漁業経済研究者の会,
NPO 法人21 世紀の水産を考える会
連絡先:JCFU 全国沿岸漁民連絡協議会事務局

〒299-5241 千葉県勝浦市松部1963-2 千葉沿岸小型魚船漁協内 事務局長:二平章 080-3068-9941(携帯)
〔開催地 事務連絡先〕FAX:019-635-9753 E-mail:Iwate.Nouminren@kamogawa.seikyou.ne.jp(岩手県農民連)

プログラム

■開催趣旨説明 二平 章(茨城大学客員研究員)
■報告「漁民に知らせず成立ねらう改定漁業法案の驚くべき内容」
      長谷川 健二(福井県立大学名誉教授)
   「沿岸漁家・漁協経営を破綻に導く改定漁業法案に反対」
      濱本 俊策(香川海区漁業調整委員会会長)
■意見表明 赤間廣志(宮城県漁業調整委員会委員)
      菅野修一(岩手県漁業調整委員会委員)
      片山知史 (東北大学教授)
      綱島不二雄 (元 山形大学教授) そのほか参加者より
■各党地元国会議員要請

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(2018年11月16日)

漁業法改正は対決法案に ― アベ政権の水産改革批判(その3)

昨夕(11月14日)NHKラジオ「Nらじ」に、二平章さん(JCFU全国沿岸漁民連絡協議会事務局長・茨城大学客員研究員)が出演し、今回の水産改革について沿岸漁民の立場からの解説をされた。19時30分からの約25分間。落ち着いた語り口で分かり易く説得力があった。下記のURLで、2か月間聞けるという。
http://www4.nhk.or.jp/nradi/24/

「アベ様のNHK」という揶揄は、最高幹部や政治部には当てはまっても、その決め付けが必ずしも常に正しいわけではない。一緒に出演していたNHKの専門解説委員も司会者も、公平な態度だった。

先日、TBSラジオ・荻上チキの「セッション22」が、このアベ水産改革を手放しで礼賛していたのに驚いたが、これに較べてNHKの姿勢が遙かに真っ当なのだ。

また、NHKは下記のURLで聴取者の意見を募集している。ネトウヨの世界とは違った、真面目な意見が寄せられている。反響が大きければ、また「Nらじ」は水産改革関連問題をとりあげたいとの意向だという。
http://www6.nhk.or.jp/nradi/bbs/commentlist.html?i=54038

そして、本日(11月15日)衆院本会議で、漁業法改正案が審議入りした。

本日衆院本会議で各党の代表質問質問に立ったのは以下の議員。

細田健一(自由民主党)  
神谷裕(立憲民主党・市民クラブ)  
緑川貴士(国民民主党・無所属クラブ)
金子恵美(無所属の会)
田村貴昭(日本共産党)
森夏枝(日本維新の会)

下記のURLで、動画を見ることができる。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=48459&media_type=fp

維新を除く全野党が、明確に漁業法「改正」案に反対の立場からの質問。立憲民主党の神谷裕などは迫力十分。緑川貴士もなかなかのもの。そして、田村貴昭の質問も鋭い。

メディアはこう報道している。

日経の見出しが、「漁業法、企業参入で与野党対決 衆院審議入り」というもの。
「企業が新規参入しやすいように漁業権制度などを見直す漁業法改正案が15日、衆院本会議で審議入りした。漁業権を地元の漁業協同組合に優先する仕組みなどを見直し、漁業を成長産業に育てる狙いがある。野党は小規模漁業者への影響が大きく拙速だと批判しており、今国会で対決型法案となりそうだ。」

「企業の参入規制を緩和して漁業を成長産業に」がアベ水産改革のスローガンだ。これに対して、野党が「小規模漁業者への影響」の立場から反対という図式。明らかに法案の狙いは、「漁民のための漁業法」から、「資本のための漁業法」に、というものだ。

この構図、一見すると「漁民」対「企業」の角逐のごとくである。多くの国民にとっては、「『漁民』の獲った魚も『企業』が獲った魚も、味に変わりはなさそうだ」「それなら、どちらでも廉い方がよい」のだろうか。実はそうではない。

多くの国民は、消費者であると同時に勤労者でもある。かつ勤労者はそれぞれの分野で、企業と共存しつつも対峙している。労働者として、自営業者として、商店主として、農民として、そして漁民として。あるいは、小規模経営者として、より大きな企業と。資本の放縦に対する規制においては、利害を共通にしているのだ。

労働に関する規制をなくして企業が小児労働を雇用すれば、その企業の商品は安価となる。しかし、消費者がこのような商品を安価だからとして歓迎することはできない。アンフェアーな企業の商品流通を許せば、たちまち多くの労働者の賃金の引き下げ圧力として波及する。大店法の規制があった時代には、各地の商店街が賑わった。いま、その規制がなくなって大規模スーパーとショッピングモールに席巻されて、商店街のにぎわいが消えた。多くの商店主の稼働の場が失われたのだ。

規制の緩和ないし撤廃は、一面効率と生産性を向上させるが、他面多くの勤労者の生計の場を奪う。消費者は、市場における適正な競争原理の働きを歓迎はするが、規制の撤廃や過度の緩和は望まない。結局、それは自分の首を絞めることにつながるのだから。漁業の参入規制を緩和して企業に漁業を営ませる。それは、けっして多くの消費者(=勤労市民)にとって歓迎すべきことではない。

いずれにせよ、アベ政権とその取り巻きの思惑のとおりにはことが運んでいない。漁業法改悪問題は、対決法案となってきた。
(2018年11月15日)

「漁民のための漁業法」から、「資本のための漁業法」に ― アベ政権の水産改革批判(その2)

経済という言葉の語源は、「世経済民」《世を經(おさ)め民を濟(すく)う》なのだという。むべなるかな。経済政策は、常に民の生活の安定を第一義とするものでなければならない。

しかし、いま世は資本主義の時代である。この社会の主は、資本ないし企業であって、民ではない。資本の恣の利潤追求の衝動に、政治的な民主主義がどれだけの掣肘を課することが可能か。そのことによって、民衆の福利をどれだけ向上させることが可能か。それが、この社会の最も中心的で基本的な課題である。

もし、法による規制をまったくなくして資本の放縦を許せば、この世は資本という怪獣が民を食い尽くす修羅の巷とならざるを得ない。「世経済民」とは、資本に規制を課することによって「民を済う」ことにほかならない。

規制緩和・規制撤廃とは基本的にそのような、資本の欲求による修羅の巷への一歩である。労働分野や消費生活の分野における規制とその緩和が分かり易いが、至るところに資本対民(生身の人)との対立構造の中で、どこにも規制があり、規制緩和との闘いがある。

漁業法「改正」問題も同様だ。漁業法は戦後の経済民主化策の賜物である。財閥解体と農地解放に続いた、漁業分野の民主化が漁業法に結実した。その目的に「漁業の民主化を図ること」が明記された意味は重い。

1949年の制定当時、「漁業調整」と「水産資源の保護培養」が漁業法の2本の柱であった。その後、「水産資源の保護培養」の課題は水産資源保護法に移され、漁業法と水産資源保護法の両者が漁業を規制してきた。

「漁業調整」が漁業法の最大課題である。農業と異なり、不可避的に水面の総合的利用が必要な漁業においては、他の水面利用者との利害関係の調整が不可欠である。しかし、どのように漁業調整をなすべきかを法自体は語っていない。

法が語るものは、漁業調整の究極理念としての「漁業の民主化」と、「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」である。この漁業調整機構は、海区漁業調整委員会として具体化されている。つまり、法はそれぞれの地元に設けられた「各海区漁業調整委員会」の運営によって漁業調整をすることにより、漁業の民主化を達成せよというのだ。

「漁業の民主化」という目的規定、そして「海区漁業調整委員会」という漁民の意思反映手続の制度、これが漁業法の眼目、言わば「両目」である。今回の漁業法『改正』は、この両目を共に潰そうというものなのだ。納得できるはずがない。

改正法案では、「漁業の民主化」という目的規定の文言はなくなる。そして、「海区漁業調整委員会」は公選制から知事の任命制になる。

「民主化」とは、弱い立場の者が強い者と同等に権利主張ができることではないか。政治的、社会的、経済的な弱者が堂々と権利主張をし、相応の権利主張が認められるべきことである。海区漁業調整委員会は、零細漁民、少数派漁民が堂々と権利主張できる場でなくてはならない。その活性化こそが課題なのに、改正法案は、この「民主化」を潰して、弱い立場の者の権利主張を抑えて、強い者の権利を通しやすくしようとするものである。

「民主化」は効率化を意味しない。零細漁民の漁法の生産性は、大規模な企業的漁業に劣ることになるだろう。効率や生産性を規準にすれば、企業的漁業が勝ることは当然のことだろう。しかし、農業も漁業も市場原理だけに任せておくべき産業分野ではない。

なによりも、零細漁業者の経営の安定が第一である。まさしく「経世済民」を優先しなければならないのだ。

大切なことは、効率でも生産性でも、資本の利益でもない。漁民が生計を維持し次世代に繋げる漁業経営を可能にすることこそ大切なのだ。そのような漁業政策を手続的に保障するものが海区漁業調整委員会である。これを骨抜きにしてはならない。

経済原則に任せることでよいのか。外部資本の参入規制を緩和して零細漁民の経営を潰し、浜の地域経済を潰し、漁民の生活を窮地に追いやってよいのか。効率の名で、人の生活を奪うことが許されるのか。

今次水産改革は、そのような問題を提起している。
(2018年11月14日)

「漁民のための漁業法」から、「資本のための漁業法」に ― アベ政権の水産改革批判(その1)

11月6日、政府は「漁業法等の一部を改正する等の法律案」を閣議決定するとともに、国会に上程した。

次のように「改正の趣旨」が説明されている。

「漁業は、国民に対し水産物を供給する使命を有しているが、水産資源の減少等により生産量や漁業者数は長期的に減少傾向。他方、我が国周辺には世界有数の広大な漁場が広がっており、漁業の潜在力は大きい。適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、資源管理措置並びに漁業許可及び免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直す。」

私には、次のように読めてしまう。

「漁業は、国民の水産物需要に対する供給産業として魅力的な利潤追求の場であるところ、現行の規制だらけの水産行政では参入が不自由だし魅力に乏しい。しかし、資源の減少等により生産量や漁業者数は長期的に減少傾向にある今こそ、規制緩和による資本参入の絶好のチャンス。我が国周辺には世界有数の広大な漁場が広がっており、儲けのための漁業の潜在力は大きい。参入規制を排して、《適切な資源管理》と《水産業の成長産業化》を両立させるとの名目をもって資本が自由に活動できるよう、資源管理措置並びに漁業許可及び免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を、外部資本のために抜本的かつ一体的に見直す。」

これは、「アベノミクス」の一端としての「水産改革」における法的整備である。資源管理措置、漁業許可・免許制度等の基本的制度を見直すって? いったい何をどう見直すというのか。誰のために、何を目指して? 貫く理念はなんなのか? 問題は根が深く大きい。「アベ政権が出してくる法案だ。どうせ碌なものではない」という程度では看過し得ない。重大な危険を孕んだ法案として、反対の立場を明確にしておきたい。

私は、「浜の一揆」訴訟を担当する中で、漁民と接し漁業の実態に触れる機会を持つようになって驚いている。あまりに急速な浜の衰退に、である。漁業人口の減少と、漁家の収入の低下、そしてそれがもたらす後継者不足。漁業自体は魅力的な職業であっても生計の維持すら困難になりつつあるのだ。2018年11月1日を基準日として5年ぶりの漁業センサスの作成作業が始まっている。その統計が明らかになれば、世の耳目を惹くことになるだろう。

日本の沿岸漁業を守るための改革が必要なことは明らかだ。だが、それは飽くまで漁民・漁家・漁村・地域社会を守るという方向の改革でなくてはならない。効率の悪い現行の漁業をご破算にして、効率重視の大資本の儲け口とすることこそが漁業の再生」という規制緩和政策の餌食にしてはならない。

今回の水産改革法案は、漁業法・水産業協同組合法・水産資源保護法をメインに、48の法改正を伴う大規模なものとなっている。しかし、なによりも留意すべきは、これだけの改革が、漁民・漁家からの要望で出てきたものではないことである。水産物の消費者の要求でもない。いや、漁民を支持母体とする保守政治家からの提案ですらない。

この改革の出所は、例の如く「規制改革推進会議」である。つまりは、財界の要求であり、財界の走狗たる「有識者」の発案なのだ。その発想の基本に新自由主義がある。資本ないしは企業利益最優先の立場。

昨年(2017年)11月17日、規制改革推進会議水産ワーキング・グループが、この問題についての「議論の整理」を公表している。

「漁業の成長産業化と漁業者の所得向上に向けた担い手の確保や投資の充実のための環境整備」という項目があり、下記のようにあけすけに語られている。

・漁業資源管理や調整を目的とする漁業許可制等について、意欲と能力があり将来の成長産業化に向けた担い手が円滑に漁業に参加し得る制度とその運用を実現する観点から、全面的に検証し改革することが重要。
・近隣諸国漁業者に比肩する競争力の維持・強化の観点から、現在のインプットコントロールを重視する漁業許可制度のあり方について検証し改革することが重要。
・船舶職員及び小型船舶操縦者法、船舶安全法など、船舶に関する一般的なルールに関し、海技士の数や、トン数、船の長さなどに関連する基準や閾値について、漁業の競争力強化の観点から、実態に即した検証、評価をすることが重要。
・区画漁業権、定置漁業権など、大型の設備投資を行い、相当程度の事業規模となる漁業を営む権利について、資金調達時の担保としての利用や、より付加価値の高い漁業を営む能力を有する担い手への引継ぎなどを円滑に行う観点から、検討することが重要。

回りくどい言い方をやめ、修飾を排して直截・端的に言えばこういうことだ。

「現行の漁業は、意欲も能力も欠ける担い手によるものとなっている。だから、能率が悪く、生産性が低い。その結果、競争力も弱く、投資の対象としての旨味はない。漁業の外部から、新たな資本と経営を参入させ、企業に魅力ある制度に変えてしまうことが重要」

その規制緩和の意図が法案になった。漁業法の第1条の目的規定はこう書き換えられようとしている。

現行法 (この法律の目的)

第1条 この法律は、漁業生産に関する基本的制度を定め、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によつて水面を総合的に利用し、もつて漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化を図ることを目的とする。

改正法案

第1条 この法律は、漁業が国民に対して水産物を供給する使命を有し、かつ、漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、水産資源の保存及び管理のための措置並びに漁業の許可及び免許に関する制度その他の漁業生産に関する基本的制度を定めることにより、水産資源の持続的な利用を確保するとともに、水面の総合的な利用を図り、もつて漁業生産力を発展させることを目的とする。

よくお読みいただきたい。新自由主義者たちはどこをどう変えようというのか。
現行漁業法の制定は、戦後経済改革の目玉の一つだった。財閥解体と農地解放につづく、「漁民中心の経済民主化」を顕現したもの。だから、「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整」との文言があり、「漁業の民主化」が輝かしい理念として掲げられた。

改正法案からは、漁業者及び漁業従事者を主体とする」との文言が消え、「漁業の民主化」も抹殺された。その結果、「漁業生産力を発展させること」だけが究極の目的となったのだ。

アベ政権。その主要な政治手法は、「隠し」と「欺し」である。まずは「隠し」。これまで漁民にはひた隠しにされていた漁業法「改悪」案。いつまでも隠してはおられない。これからは「欺し」のテクニックが駆使される。私も、眉に唾付けながら、漁民の立場からこの「漁業法改悪」に対する見解を書き連ねて行きたい。
(2018年11月10日)

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 「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」からの訴えです。
「会」は、麻生財務大臣の辞任を求める<署名運動>と<財務省前アピール行動+デモ>を呼びかけています。

財務省前アピール行動+デモ
11月11日(日)
13時~ 財務省前アピール行動
14時  デモ出発

■<署名>と<財務省前アピール行動+デモ>の資料一式をまとめたサイト■
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/1111-5336-1.html
ぜひ、これをメールやツイッタ-で拡散してください。

■できるだけメッセージを添えてネット署名を■
上記の「まとめサイト」の右サイド・バーの最上段に、
1.署名用紙のダウンロード http://bit.ly/2ygbmHe
2.ネット署名の入力フォーム http://bit.ly/2IFNx0A
3.ネット署名のメッセージ公開 http://bit.ly/2Rpf6Pm
が貼り付けられています。

なお、署名の第1次集約は11月7日で締めきり、9日に財務省へ出向いて麻生財務大臣の罷免を求める10,699筆の署名簿を提出しました。

引き続いて署名を重ね、11月28日(水)を最終締め切り日と予定しています。

ぜひとも、ご協力をよろしくお願いします。
なお、署名の文面は以下のとおりです。
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財務大臣 麻生太郎 様

無責任きわまりない麻生太郎氏の財務大臣留任に抗議し、即刻辞任を求めます

森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会

10月2日に発足した第4次安倍改造内閣で麻生太郎氏が財務大臣に留任しました。しかし、第3次安倍内閣当時、財務省では、佐川宣寿氏が理財局当時の国会での数々の虚偽答弁、公文書改ざんへの関与の責任をとって国税庁長官の辞任に追い込まれました。また、福田淳一氏は女性記者への破廉恥なセクハラ発言を告発され、事務次官の辞職に追い込まれました。いずれも麻生氏が任命権者の人事でした。
しかし、麻生氏は厳しい世論の批判にも居直りを続け、事態を放置しました。それどころか、森友学園への国有地の破格の安値売却について、録音データなど動かぬ証拠を突きつけられても、なお、「処分は適正になされた」「私は報道より部下を信じる」と強弁し続けました。
福田次官のセクハラ行為については、辞任が認められた後も「はめられたという意見もある」などと暴言を吐きました。
なによりも、第3次安倍内閣当時、財務省では公文書の隠蔽、決裁文書の改ざんという前代未聞の悪質きわまりない国民への背信行為が発覚しましたが、それでも麻生氏は、会見の場で記者を見下す不真面目で下品下劣としか言いようがない答弁を繰り返しました。
こうした経歴の麻生氏が私たちの税金を預かり、税金の使い道を采配する財務省のトップに居座ることに、私たちと大多数の国民は、もはや我慢の限界を超えています。
麻生氏を留任させた安倍首相の任命責任が問われるのはきわめて当然のことですが、任命権者の意向以前に私たちは、麻生氏自身が自らの意思で進退を判断されるべきだと考え、次のことを申し入れます。

申し入れ

麻生太郎氏は財務省をめぐる数々の背任、国.に対する背信の責任をとって直ちに財務大臣を辞任すること

私は上記の申し入れに賛同し、以下のとおり、署名します。

(2018年11月10日)

「浜の一揆」訴訟、仙台高裁の法廷で ― 「漁業の民主化」とは何か

控訴人ら訴訟代理人弁護士澤藤大河から口頭で意見を申しあげます。

本日陳述の準備書面(1)は、本件の主たる争点である漁業調整のあり方に関して下記4点の主張を行うものです。
第1 漁業調整の基本理念は漁業法の目的規定にある「漁業の民主化」にこそあって、「漁業民主化」の観点から適切な漁業調整が行われるべきであること。
第2 漁協の立場には、対外的に行政や大企業などの強者と対峙する側面と、対内的に弱者である組合員に対する側面との二面性があって、本件は後者の局面における問題として、弱者である零細漁民保護の漁業調整が行われるべきであること。
第3 漁業統計は、岩手県内の個人漁業が崩壊の危機にあることを示しており、控訴人らの本件サケ刺し網漁許可の必要性は喫緊の切実なものであること。
第4 公開されている限りでの県水産行政幹部職員の県内漁業団体への天下りの実情。

第1 アジア太平洋戦争の敗戦は、わが国の制度と文化を根底から変革しました。大日本帝国憲法時代の「旧体制」は崩壊し、あらゆる分野の「民主化」が進展しました。漁業法も戦後改革立法のひとつとして、民主化を高く掲げたものです。
その第1条は、「漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化を図ることを目的とする。」と定めています。周知のとおり、終戦直後GHQは日本政府に対して、わが国の民主化のための5大改革指令を発しました。そのなかに「経済の民主化」があり、財閥解体と農地解放が断行され、続いて漁業の民主化が実行されました。
「経済民主化」とは、政治的社会的強者の利益独占を許さぬことであり、利益の平等配分を意味しています。零細漁民にも、漁獲による生計の維持を保障することこそが、権利の実質的平等に支えられた「民主化」の理念にほかなりません。漁業調整とはこのような漁業者相互間の権利関係の調整の理念なのです。そのことが甲21の漁業法法案審議における農林大臣の答弁によく表れています。
また、漁業経済学者である二平章氏の意見書(甲22)では、漁業調整の具体的理念として、「弱小漁民の保護」の原則が強調されています。強大な事業者と零細な漁民の軋轢があれば、零細漁民を優先することが想定されているのです。これは、戦後の一時期の特別な政策ではなく、近時国連が積極的に押し進めている「家族農漁業の保護」「小規模伝統漁業の保護」など、零細漁民の経営の保護は今日的な世界の潮流でもあります。
いま、岩手県のサケ漁は、大規模定置網漁業者に独占され、零細漁民が排除されています。強者の利益を全面的に擁護して弱者の側を切り捨てた現状。法的正義が要求する「漁業の民主化」という視点からは、倒錯した漁業調整の現状というほかありません。

第2 次に漁協の二面性について述べ、ご理解をいただきたいと思います。
岩手県内の定置網漁の過半が漁協の経営するものです。したがって、漁民と漁協との漁業調整が問題とならざるを得ません。もちろん、漁協は保護しなければならない大切な組織です。しかし漁協が大切なのは、漁民の利益を実現するための自主組織であるからであって、漁民の利益と相反する局面で漁民に優越して保護を受けるべき立場にはありません。
漁協の根拠法である水産業協同組合法第4条は、「組合は、その行う事業によってその組合員のために直接の奉仕をすることを目的とする」と定めています。水協法は、漁業法とともに漁業民主化を担う法律ですが、その法案審議における水産庁の法案の趣旨説明が、甲23の衆議院水産委員会議事録です。「協同組合というものは、その組合員が組合の経営に参加をし、組合員がその組合の営む事業から直接に便宜を受けるような組織、それが協同組合の本質であります」と解説しています。
また、二平章氏の意見書(甲22)は次のように「漁協の二面性」を強調しています。
「漁協には二面性があります。漁民が、国家や自治体と対峙する局面では、個々の漁民は無力です。多くの漁民が漁協に結集することで要求を実現させることができるのです。また、公害を垂れ流す企業や、資源を取り尽くす巨大事業者と対峙する場合にも、漁協や漁連は、漁民にとって頼りになる存在です。しかし、中間団体の常として、構成員に対しては権力的な側面があります。漁協も漁民と対立する存在となり得るのです」「組合員の漁業を直接侵害する自営事業を行うことは、法的な目的に反するというほかありません」
漁協の自営定置漁の漁獲高を確保するために、組合員の刺し網漁を禁止するなどは、法の想定するところではなく、本末転倒も甚だしいと言わざるを得ません。

第3 次に、漁業統計から見た、岩手県沿岸漁業の実態について述べます。
「2013年漁業センサス(岩手県分)」(甲20)によれば、2013年の県内個人経営漁業者数は2008年に比較して、実数にして1926人の減、減少率37%となっています。さらに注目すべきは、県内漁業者の高齢化と後継者不足の実態です。20代の個人漁業者は全県でわずかに24人。0.7%に過ぎません。70歳以上が28.6%、60代が33.6%。県内漁民の62.2%が60歳以上なのです。しかも、高齢化している漁業者に後継者がありません。調査に後継者なしと回答した者が76.7%です。
その原因となっているのが、漁民の低所得です。漁獲物・収穫物の販売金額の規模別調査の結果では、年間売上高100万円以下が46.6%。また、売上高500万円~1000万円の中堅クラスに当たる漁民層が、2008年の989人から2013年には325人と、実数にして664人、率にして67%も激減しています。岩手県の沿岸漁業崩壊の危機を物語る数値と言わざるをえません。
この事態を打開する最も有効で現実的な危機回避策が、サケの固定式刺し網漁の許可にほかなりません。これは、漁業調整判断の重要な公益的要素であって、岩手県は、控訴人ら零細漁民の本件許可申請に対しては、積極的に許可をしなければなりません。大規模定置網漁者の操業を禁止するのではありません。まさしく、利害の「調整」なのです。

第4 最後に岩手県水産行政幹部職員の、県内漁業団体への天下りについて述べます。
大規模な定置網漁によるサケ漁の独占こそが、県漁業界最大の権益です。零細漁民をサケ漁から閉め出して、合法的にその利益を独占するには県政の協力が不可欠であるところ、長年の業界と県政との癒着がこれを可能としたものと指摘せざるを得ません。
岩手県内の漁業界と県水産行政との癒着を象徴する事象が、水産行政幹部職員の県内各漁業関係団体の要職への天下りです。岩手県水産行政のトップが、農林水産部・水産振興課総括課長職です。昨年3月末までその職にあった職員は同年6月岩手県内水面漁業協同組合連合会の専務理事に天下りしています。その前任者は、2013年3月末に総括課長の職を辞して同年5月社団法人岩手県漁港漁村協会の専務理事に就任し、さらにその2年後の2015年5月には、社団法人岩手県さけ・ます増殖協会の専務理事となって現在に至っています。なお、両氏とも、県漁連理事または監事を経験しています。
その余については、控訴人らにおいては調査しがたいので、最近5名の元総括課長について、県職員を離職後の職歴について明らかにするよう、被控訴人に求めます。

以上です。

(2018年10月2日)

国連「家族農業の10年」と「小規模伝統漁業・養殖業に関する国際年」

「浜の一揆」訴訟の控訴審。第2回法廷が来週火曜日。10月2日(火)午後1時30分、仙台高裁101号法廷である。

当方(控訴人・漁民側)が準備書面を提出し主張を述べることになる。この法廷で、二平章氏(北日本漁業経済学会会長)の意見書を提出する。

この訴訟の主要な論点は、漁業調整の名のもとに、「大規模定置網漁業者の利益を確保するために、弱小零細な漁民のサケ刺し網漁業の許可申請を排斥してよいのか」ということに尽きる。二平氏は、「弱小零細な漁民をこそ保護すべき」という立場から、立論している。そのうちの一節をご紹介したい。

 より弱小零細な漁民を保護するべきとの第2の理念は、憲法学でいう実質的平等の考え方と同様です。
経済活動の自由を保障さえすれば、すべてがうまくいくというのは、既にあやまった考えであることが明らかになっています。合理的な制約と介入を権力が行わないと、大変な不公平が社会に生じることは公知の事実です。
漁業法は、漁業の「民主化」を目的に掲げています。強大な事業者と零細な漁民がいれば、零細漁民を優先することを想定しているのです。
これは、戦後の一時期の特別な政策という訳ではありません。2017年12月20日、国連総会は、2019年から2028年までを「家族農業の10年」とすることを採択しました。この「家族農業」とは、農場の運営から管理までの大部分を、1戸の家族で営んでいる農業のことです。現在、世界の食料のうち約8割が家族農業による生産でまかなわれており、世界中の食糧共有の中で重要な役割を担っています。持続可能性の観点からも、自然を収奪する大規模農業ではなく、自分や自分の子孫が耕し続けると考えながら自然に働きかける家族農業こそ鍵だと考えられるようになったのです。
実は、国連が掲げるこの「家族農業」には家族漁業も含まれています。国連では、「家族農業」を「農業労働力の過半を家族労働力が占めている農林漁業」と定義しています。必ずしも血縁によって結びついた家族による農林漁業のみではなく、非血縁の家族も、一人で営む個人経営も、家族農業に準じて議論されています。資本的つながりによって結合した企業的農業に対置する概念として理解されています。
さらに国連は2022年を「小規模伝統漁業・養殖業に関する国際年」と定め、各国が小規模家族漁業者の重要性を認識し、その保護政策を確立するよう訴えようとしています。
持続可能性という観点からも、零細な家族漁業を保護することは極めて現代的で正しい政策といえるのです。

 国連「家族農業の10年」は家族漁業も含むのか。知らなかった。2022年が国連の「小規模伝統漁業・養殖業に関する国際年」。これもまったく知らなかった。これこそが、国際潮流なのだ。心強い。

この国際潮流は、生産性至上主義とはまったく無縁の思想に基づくもの。人は、人を搾取し収奪するために生くるにあらず。もちろん、人は搾取され収奪されるために生くるにもあらず。どちらの生き方も、結局は資本の奴隷としての生き方ではないか。

搾取・収奪とは無縁の「家族労働による農林漁業」。これこそ人間本来の生き方ではないか。国連による零細な農林漁業の支援は、豊かな人生観・社会観に満ちている。
(2018年9月25日)

「浜の一揆」訴訟控訴審の始まりに当たって ー 仙台高裁101号法廷で

控訴人ら漁民側の訴訟代理人となっている弁護士の澤藤大河です。

漁民が「浜の一揆」訴訟とネーミングした、本件サケ刺網漁不許可取消・許可義務付け請求控訴事件控訴審の審理開始に当たり、貴裁判所に控訴人らの主張をご理解いただきたく、控訴人らを代表して瀧澤英喜さんと、代理人の私から、口頭で意見を申しあげます。

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 大船渡市三陸町越喜来の瀧澤英喜です。
 私たち、この訴訟の原告は、岩手県沿岸全域の小型漁船漁業者です。東日本大震災の津波で、たくさんの漁師仲間を亡くしました。そして、原告団の漁師たちも、船や漁具・住まいなど、それぞれに大きな被害を受けました。私自身、住まいは津波をまぬがれたものの、船3艘と倉庫・養殖施設・資材がすべて被害をうけました。
 津波を機に、漁業をやめざるをえなかった漁師もたくさんいます。ですが、私たちは「復興のかなめは、沿岸の漁業だ」と考えています。船をつくり、漁具を入手して、漁を再開しています。
 私は今、ホタテ養殖を通年、そして季節ごとのカゴ漁をやっています。サケ刺網漁が認められれば刺網漁も再開したいと考えて、準備をしています。
 私たちの仲間も、同じようにカゴ漁や刺網などをやっています。春先はイサダ、5月はシラス、夏場はタコ、1月はタラ刺網など、季節ごとにかわる魚種をくみあわせて、一年間の生計をたてています。
 毎年、苦労するのが9月から11月です。獲れる魚が激減します。唯一、頼りになるのがサケです。サケのように値段がしっかりしていて、魚体が大きいものをとることができれば、漁業者の意欲にもつながります。
 ところが、岩手県では刺網でサケをとることが許可されていません。とってしまうと「6カ月以下の懲役、もしくは10万円以下の罰金」に処せられます。「漁業許可の取り消し」、「漁船・漁具の没収」といった制裁もあります。ですから、網にサケがかかれば、海に捨てなければなりません。しかも捨てれば不法投棄ということになります。
 網を入れればサケが入る時期ですので、実質的に、他の魚種をねらった刺網漁も秋はやれないというわけです。秋から冬にかけての収入が断たれてしまっています。
隣の宮城県ではサケ刺網漁が認められており、小型漁船漁業者が堂々と刺網でサケをとっており、私たちはずっと悔しい思いをしてきました。
 「サケ刺網漁を認めてほしい」という私たちの声に、県はまったく耳を貸そうとしません。サケ刺網漁を認めれば、「獲りつくされて資源がなくなる」「孵化放流と一体にすすめてきた定置網でとるはずのサケがなくなる」と言うのです。そして、その根拠としているのが「定置網に比べて、刺網漁は攻撃的な漁法だ」という誤解です。
 サケ資源をめぐって、むしろ問題が大きいのは定置網漁です。定置網は、海底から海面までを水深70mから100mぐらいにわたって覆います。長さは1㎞ぐらいに及ぶものもあります。これを、春と秋の入れ直しはありますが、基本的に数か月の間、ずっと設置しています。
 いっぽうで、刺網漁は海底に高さ5m、長さは上限でも1800mの網を立てるというものです。これを早朝に数時間入れたら引き上げるというものです。
 このように、刺網漁はまったく攻撃的な漁法ではありません。定置網のほうがはるかに大規模に長期間、海域を遮断して資源を多くとる漁法です。その結果、「本来は獲ってはならない魚種が定置網にかかっている」という話は、浜では常識となっています。定置網にかかってしまうのは、例えばサケの稚魚や、いま話題のマグロから、クジラまで、挙げればきりがありません。「それを海に捨てている」という話が、あちこちの浜できかれます。資源保護をはかるうえでは、むしろ定置網のありかたを改めることのほうが必要です。
 また、サケを狙って刺網を入れる場合、沖合の水深が深い200m前後のところに設置することになります。遡上をひかえて陸に近づいてきたサケを狙う定置網とは、獲る魚の群れも、獲る時期も異なります。定置網の漁獲を大きく損なうものではありません。
 
 刺網でサケをとりたいというのは、岩手の漁師にとって長年の悲願です。以前は、県による規制はありながらも、実態として刺網にサケがかかっても見逃されてきました。ところが徐々に規制が強まり、これに抗議して1990年11月に漁師たちがサケをいっせいに大船渡漁港にあげ、県庁に陳情するという行動を起こしました。2011年2月、震災の直前にも、「岩手県沿岸漁船漁業組合かご漁業部会」で県へ要請しました。このほかにも、何度も県に対してサケ刺網漁の許可を求めています。しかし、いずれも県からまともな回答はありませんでした。
 そもそも県の漁業政策は、現場の漁師の声をきいてつくるものになっていません。たとえば、数年前にもイカ釣り船漁業をめぐって、岩手・宮城境界の見直しがありました。漁船漁業者にとっても、漁具を壊されかねない大きな問題です。ところが、現場の漁師に対しても、漁師の集まりである「岩手県沿岸漁船漁業組合かご漁業部会」に対しても、なんのことわりもなく県は話を進めてしまいました。ことごとく、この調子なのです。
 一審の証人尋問で、県側の証人が、サケ刺網許可をめぐる論議を「水産課3人でやった」と証言しました。大事なことをそんな一部で論議しているのかと、おどろくと同時に、「やっぱり」という感じです。
 県の海区漁業調整委員会も、漁師の意見を反映してきませんでした。この間に原告団の一員である藏德平さんと菅野修一さんが入って積極的に発言していますが、それまでは漁協の代表がほとんど論議もなく議題をこなしていくというのが実態でした。
 そしてその漁協は、漁船漁業にたずさわっていない一部の幹部の意向で、多くのことを決めています。現場の漁師の声を代表する漁協になっていません。理事会や総代会で声をあげても、論議されません。漁協直営の定置網など、一部の利益を優先するものになってしまっています。そのうえ、漁船漁業にとっても定置網にとっても問題が大きい、トロール船や巻き網船による乱獲など、大きな問題に対しては声をあげられない組織になってしまっています。 
 このように、漁師の意見が反映されない県政、漁協によって、「サケ刺網漁をしたい」という私たちの要求は排除されているのです。

 東日本大震災のあと、海の様子はすっかり変わってしまいました。資源が減り、魚がとれなくなってしまっています。赤字ギリギリの漁師がほとんどです。「船は来たが魚をとれない」というのが実態です。
 サケ刺網漁をやれれば、一定の収入ができ、別の魚種・漁法にも手を付ける可能性が開けます。しかし、これがなければこのまま経営は先細りです。次世代につなぐことができません。震災前後に、決意をして浜に帰って来た若者もいます。この世代が希望をもって漁業をやれるようにする責任が私たちにはあります。
 漁船漁業がなければ浜の未来はありません。漁船漁業は、「船にのる青壮年」そして「それを岡でサポートする経験豊かな高齢者」や、「選別・加工などで活躍する女性」など、幅広い雇用を生んでいます。そして浜の環境に常に目を配っているのが漁船漁業者です。
 いま、県の漁業政策は定置網と養殖に偏っています。しかし貝毒などのリスクがある養殖だけではなく、通年で魚種・漁法をかえながら多様な資源を生かす小型漁船漁業はやはり必要です。
 岩手の漁業にいま求められているのは三陸の海の幸をアピールし、浜に活気を取り戻すことです。そのためには、量をとる定置網だけではなく、特色のある魚種,高い品質の魚をとる小型漁船漁業を育成することが欠かせません。とりわけ、サケ資源が減っていることは明らかです。だからこそ、遡上を控えたサケを定置網でとるだけではなく、よい品質のサケをとる刺網漁も活かすことが大事なのです。そうやって、高品質な岩手のサケを消費者に届けることを本気になって考えなければなりません。
 
 私たちが漁師として生きていくために、豊かな浜を次世代につないでいくために、サケ刺網漁の許可を私たちは切に求めています。裁判官の皆様の最善のご判断を心からお願いしまして、私の意見陳述といたします。

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訴訟代理人の澤藤大河です。

本件訴訟の、最大の争点は「漁業調整」のあり方です。ですから、まず何よりも「漁業調整の現状」の極端なまでの不平等・不合理を正確にご認識いただきたいのです。
本件で問われている「漁業調整」とは、三陸沿岸におけるサケの採捕について、「大規模定置網漁業者」と「控訴人ら零細な小型船漁民」との間の利害調整を行政処分庁である岩手県知事がどう判断すべきかの問題です。
被控訴人岩手県は、本件許可をすれば、「両者に摩擦が生じる」。だから、「漁業調整」のために、本件固定式刺し網によるサケ漁は許可できない、と言います。
しかし、大きな摩擦が既に生じているのです。そして、その現状は沿岸漁民に耐えきれないものとまでになって、訴訟提起となったのです。だから、本件を「浜の一揆」訴訟と形容するにふさわしいのです。
現状、岩手県では刺網でのサケ漁は厳しく禁止されています。違反には、「6月以下の懲役、もしくは10万円以下の罰金」が科せられます。「漁業許可の取り消し」「漁船・漁具の没収」といった制裁もあります。いったい、こうまでして、大規模定置網漁者を保護し、零細漁民の要求に背を向ける必要があるのでしょうか。
瀧澤さんの意見陳述にもあったとおり、3・11の被災以来、漁民の生活は苦しい。廃業者が続出し、後継者が育たないというこの現状が、到底「漁業調整」ができている状態ではあり得ません。
しかも、漁民の要求は、「刺し網漁の邪魔になるから、定置網はやめろ」などと乱暴なものではありません。本件許可をしても、定置網漁の継続は可能なのです。許可された区域での漁獲の独占になんの支障も生じません。
定置網漁と刺し網漁、大規模業者と零細漁民、その共存を図るべきこと、適正な利益配分を実現すべきが常識的な水産行政のありかたではありませんか。
ところが被控訴人は、「定置網漁の邪魔になるから、刺し網漁で一匹のサケを獲ることもまかりならん」というのです。こんな不平等・不公正が納得を得られるはずはありせん。法が予定する「漁業調整」とは到底言えない。従って、不許可処分は違法で取り消されなければならないのです。

問題は、この明らかに不平等・不公正な漁業調整の現状を合理化する何らかの理由があり得るか、と問題設定がなされることになります。結論から申しあげれば、それはあり得ない、と言わざるを得ません。

まず、控訴人らの請求は、憲法上の基本権として保障されている「営業の自由」を根拠とするものです。軽々に制約されてよいはずはありません。原判決には誤解があるようですが、三陸沿岸を回遊するサケは無主の動産です。井田齊証言が明らかにしているとおり、サケは大いなる北太平洋の恵みが育てたものであって、誰のものでもありません。養殖による漁獲物とは決定的に異なるものとして、そもそも誰が採捕するののも採るのも自由。これが大原則であり、議論の出発点です。
この基本権を制約しうるものとして、法が定めたのが、漁業法における「漁業調整の必要」と、水産資源保護法における「水産資源の保護培養の必要」の2点にほかなりません。
「漁業調整」の本来の指導理念は、漁業法第1条に、「この法律は…漁業の民主化を図ることを目的とする」という、漁業法が特別に明記した「漁業の民主化」でなくてはなりません。経済的強者である定置網漁業者にサケ資源捕獲の独占を許し、零細漁民にこれを禁止することは、明らかに「民主化」に逆行することではありませんか。
また、控訴人ら漁民と調整を要する関係にある87ケ統の大規模定置網業者のうち、過半は漁協が経営する自営定置です。水産業協同組合法第4条は、「組合(漁協)は、その行う事業によつてその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを目的とする」と定めます。これが漁協本来の役割です。定置網漁の自営はその本来の役割ではありません。漁民のために直接奉仕するどころか、漁協の自営定置を優先して、漁民のサケ漁禁止の理由とする、これは法の理念に真っ向から反することではありませんか。
では、水産資源の保護培養の必要を理由に不許可とできるか。これは、実はできないことは決着済みです。原審における専門家証人井田齊の証言とその意見書(甲12)を虚心にお読みいただけば、自ずから明らかです。孵化事業で求められる卵を採取するためには、河川親魚をどれだけ確保できるかが問題なのであって、誰がどのように成鮏を採捕するかは、サケ資源の保護培養の観点からは実は問題となりません。本件訴訟との関係で述べるならば、申請を許可することがサケ資源の保護培養に支障をきたすかどうかだけですが、支障をきたすことはありません。
残る問題は、孵化事業の主体に成鮭を採捕させることの合理性をもって本件申請を不許可とすることができるか、につきます。原判決は、結論先にありきの思い込みから、これを肯定しました。しかし、あきらかに誤っています。

判決要旨に、原審裁判所のこの点についての考え方が要約されています。
「県沖合で採捕されるサケはほぼすべて、手間と費用を要する人工ふ化事業に起因する資源であり、これを同事業と無関係の固定式刺し網漁業者が採捕することは、著しく不公平である」というのです。これは、率直に申しあげて一驚に値する判断というほかはありません。明らかに、幾重にも間違っています。
まず、原判決は養殖事業と人工増殖事業の区別を理解していません。甲12に目を通していないからです。人工増殖である孵化放流事業では、放流された以後は、太平洋の自然の恵みで育ちます。養殖ならば、自分を育てた魚を自分で捕るのは当然ですが、増殖はそうではないのです。育成全過程を人間の管理下で「養殖」とは異なり、「増殖」では人間の関与は限定的なものに過ぎません。
また、孵化放流事業とサケの採捕とはそれぞれ独立した別事業なのです。「手間と費用を要する人工ふ化事業者だけに採捕の権利がある」との理屈は立てようがありません。そもそも、現在定置網漁業の許可を得ている事業者全てが人工孵化事業に関与している訳ではありません。「人工ふ化事業」だけを行って、サケの採捕を行わない事業者もいれば、「人工ふ化事業」とは無関係の定置網漁業者もいます。
「人工ふ化事業者と無関係の者が採捕することは、著しく不公平である」もあり得ません。「人工ふ化事業者」の事業は、毎年稚魚を孵化放流することで完結します。親魚の確保から採卵し、これを孵化して稚魚を成育し、河川に放流するサイクルで事業として成立するよう経済設計ができればよいだけのことです。控訴人らは人工孵化事業にただ乗りしようとしているのではなく、水揚げに応じた分担をすることは当然だと考えています。

是非とも、貴裁判所には、虚心に丁寧に、控訴人らの主張と立証に耳を傾けていただくよう、お願いいたします。

(2018年7月24日)

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