澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

野党選挙共闘に期待する―「改憲阻止絶対防衛圏」を守り抜くため

各紙の「野党 参院選全1人区で候補一本化」との見出しが目にまぶしい。
香川選挙区で民進党が擁立を断念し、共産党の候補予定者への一本化が決定。これを受けて共産党は近く、民進党と調整中の三重、佐賀で公認候補を取り下げる方向だという。これで事実上、今夏の参院選「1人区」(32選挙区)すべてで、民進・共産・社民・生活4党による候補者一本化実現となった。

各選挙区の候補者と所属は以下のとおりである。
 青森   田名部匡代   民・新
 岩手   木戸口英司   無・新
 宮城   桜井 充     民・現
 秋田   松浦大悟    民・前
 山形   舟山康江    無・前
 福島   増子輝彦    民・現
 新潟   森ゆう子    無・前
 富山   道用悦子    無・新
 石川   柴田未来    無・新
 福井   横山龍寛    無・新
 山梨   宮沢由佳    民・新
 長野   杉尾秀哉    民・新
 栃木   田野辺隆男   無・新
 群馬   堀越啓仁    民・新
 岐阜   小見山幸治   民・現
 三重   芝博一      民・現 
 滋賀   林久美子    民・現
 奈良   前川清成    民・現
 和歌山  由良登信    無・新
 鳥取島根 福島浩彦   無・新
 岡山   黒石健太郎   民・新
 山口   纐纈 厚     無・新 
 徳島高知  大西聡    無・新 
 香川   田辺健一    共・新
 愛媛   永江孝子    無・新
 長崎   西岡秀子    民・新
 佐賀   中村哲治    民・元
 熊本   阿部広美    無・新
 大分   足立信也    民・現
 宮崎   読谷山洋司   無・新
 鹿児島 下町和三     無・新
 沖縄   伊波洋一    無・新

これまで相争う関係にあった各党の候補者調整である。困難が大きいのは当然のこと。「岡田克也(民進党)代表は20日の会見で、香川について『共産党との関係は現時点で白紙だ』と述べた。共産党の候補予定者を民進党が推薦する可能性は低く、正式な協力態勢が整った石川や熊本などとは温度差がある」(毎日)と報じられている。各党がこぞって、統一候補を推薦というきれいな図を描くには至っていない。

それでも、全一人区で与野党一騎打ちの構図になる。この意義は大きい。「改憲か、その阻止か」という対抗軸が明瞭になるからだ。いくつかの選挙区では、野党共闘の成果としての議席の獲得が現実化するだろう。その新たな獲得議席が、明文改憲を阻止し、解釈改憲も是正する貴重な存在となるだろう。

明文改憲の阻止と戦争法廃止の両者を統一するスローガンが、「日本の政治に立憲主義を取り戻そう」である。日本国憲法の存在を前提として、いま、安倍政権の、反憲法的政治姿勢は目に余る。憲法が政権を縛り政権の方向を定めているのに、政権はこれを嫌って、憲法をねじ曲げようとしている。あまつさえ、憲法そのものを書き換えようとしている。このアベ政権の姿勢を「立憲主義に反する」と批判し、「立憲主義を取り戻せ」とスローガンを掲げているのだ。

憲法擁護義務を無視した安倍政権は、強引に憲法9条の解釈を変えて戦争法の成立を強行し、それでも足りずに、明文改憲を狙っている。政権の目指す憲法が、「自民党改憲草案にあることは自民党の広言するところ。これまで国民が共通の認識としてきた憲法価値である、平和・人権・民主主義の擁護が「立憲主義を取り戻せ」のスローガンに包含されている。表現の自由も、福祉も、労働も、歴史認識も、その具体的課題となる。

参院選での野党共闘態勢の構築は、正式な共闘成立公表とともに、メディアの大きな話題となるだろう。また、今後に大きな影響を与えることにもなるだろう。まずは、5月27日告示6月5日投開票の沖縄県議選を励ますことになり、衆院選の小選挙区共闘を促すことになるだろう。

今回参院選の統一候補の内訳が、「政党公認16、無所属16」である。政党公認16のうち、「民進15、共産1」というのが、現実的な落としどころなのだろう。このように現実化した参院1人区共闘が、総選挙でできないはずはない。世論が求め、そうしなければ勝てないという現実があるからだ。しかも、ここで「各院の3分の1」という「絶対防衛圏」を破られては、後戻りできない禍根を残すことになるではないか。

参院とは対照的に、衆院の野党共闘協議は進んでいないのが実態。民進党の態度が消極的だといわれてきた。しかし、「国会会期末が迫るなか、野党内には首相が参院選に合わせて衆院解散に打って出るとの警戒感が高まり、民進も態度を変えた。」「民進の岡田代表は、『衆参ダブル選挙の可能性もかなり高い。幹事長レベルでよく話し合っていく』と述べ、衆院小選挙区での候補者調整を急ぐ考えを示した。21日には愛媛県新居浜市で記者団に『特に一本化すれば勝てる可能性があるところは、一本化の努力はすべきだ』と述べた」「仮に衆参同日選となれば調整に残された時間は少なく、選挙協力がどこまで進むかは不透明だ。民進幹部は『いざとなったら「えいや」でやるしかない』と語る」(朝日)と報じられている。

ことは、憲法の命運に関わる。憲法の命運とは、国民の権利と自由と平和の命運にほかならない。「野党は共闘」「野党は真剣に共闘に取り組め」と声を上げ続けねばならないと思う。
(2016年5月22日)

改憲阻止を目指す野党選挙共闘実現の流れー32の一人区のうち、あますところはあと3区。

参院選の野党統一候補擁立の動きに注目し続けている。その成否が改憲阻止の成否に直結するからだ。アベ壊憲政権の与党勢力に3分の2の議席を与えてはならない。そのためには、明文改憲阻止の一点で野党の選挙共闘が不可欠だ。民進・共産・社民・生活の野党4党間で進んでいる、候補者統一が改憲を阻止しうる院内勢力を形づくることになる。そして、参院選後の総選挙での選挙協力にも道を切り開くことになる。

注目の一人区は全部で32(県数では34)。このところ、5月15日に鹿児島、16日に奈良、そして昨日(18日)和歌山と岩手の野党統一候補擁立の発表があった。残るは3選挙区、三重・香川・佐賀のみである。ここまでくれば、一人区全部で野党統一候補擁立実現の見通しが高くなってきた。がぜん、参院選は伯仲模様、熱を帯びたものとなってきている。

岩手は、民進が生活に譲った形での共闘成立。協議難航した生活と民進両党を説得したのが、間にはいった社民・共産の両党だったと報道されている。「野党共闘は衆参一体で捉えるべきだ」との立場から、生活推薦候補を参院選の共闘候補とし、民進推薦候補を次期衆院選岩手2区候補とする案を提示して、打開につなげたという。これで、野党4党対自公の一騎打ちとなる。注目選挙区の一つである。

和歌山の共闘模様は、やや複雑だ。すんなりの全野党合意ではない。
まず、安全保障関連法廃止を掲げる「市民連合わかやま」の主導で、統一候補者が模索された。「市民連合わかやま」が、各野党に呼びかけた政策の合意は次の3点である。
①安全保障関連法の廃止
②集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回
③日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻す

結局、「市民連合わかやま」は、この3項目の政策で参議院選挙の和歌山選挙区予定候補に由良登信弁護士(元和歌山弁護士会会長)を推薦することを決定し、民進、共産、社民の各野党に「野党統一候補として推薦いただきたい」と申し入れた。市民組織先行での野党への呼びかけは、「この指止まれ方式」だ。

これに対し、共産・社民・生活の3党は、この指にとまって、由良推薦を決めた。共産は独自候補を比例区に回してのこと。民進党県連の、この指への止まり方は微妙だった。自党の参院選予定候補者を「次の衆議院選挙の和歌山2区で候補とする」と「転戦」を発表はしたが、由良候補推薦とはならなかった。「基本的な理念や政策に違和感がある。野党の統一候補とは言えない」として、参議院選挙では、自主投票としたという。

複雑な事情は知り得ないが、民進も既に決めていた候補者を下ろしたのだ。由良候補を、「事実上の野党統一候補」と言ってよいだろう。

私は、由良さんをよく知る一人だ。日弁連の消費者委員会で活動をともにした。信頼のできる人だし、社会的弱者の立場に立つことを鮮明にしている人。到底、自ら国政に出ようというタイプには見えなかったが、この人が選挙に出るなら、なるほどよい候補者だ。人当たりが柔らかで、誰の意見にも穏やかに耳を傾ける。何よりも声がよい。歯切れがよいし、滑舌が滑らかで聞きやすい。そして、話が分かりやすい。説得力がある。
がんばれ、由良さん。がんばれ、和歌山野党共闘。

「野党は共闘」とは、市民の声であり、今や天の声でもある。野党はこの天の声に耳を傾けざるをえない。なんと言っても、これが大義なのだ。この大義が、由良さんのような無所属候補を擁立したのだ。これで、「野党共闘+市民の陣営」対「与党(自公)の陣営」の対立構図が明確になってきた。対立軸は、明文改憲と解釈改憲の是非である。「憲法擁護の、野党+市民」対「改憲の自公」の対立なのだ。

典型例としての愛媛県の例。無所属の候補と、これを擁立した市民組織「安保法制(戦争法)の廃止を求める愛媛の会」と4野党(ここでは、民進、共産、社民、新社会)との合意内容は以下のとおりである。
①憲法違反の安全保障関連法廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を公約する
②安倍政権の打倒をめざす
③自民党改憲案にもとづく憲法改正を阻止する
④立憲主義と民主主義の回復をめざし、その姿勢を貫く

こうして、日本国民は、憲法12条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」を実践し、日本国憲法とその理念を、日々選び取り血肉化しているのだ。憲法を排撃すること厳しいアベ政権が、国民の憲法意識を鍛えているとも言えるだろう。

最後に、もう一度。がんばれ、由良さん。がんばれ全国の野党統一候補者の皆さん、そして共闘を支える野党と市民の皆さん。
(2016年5月19日)

「壊憲か、活憲か」(ロゴス社)購読のお願い

村岡到さんが主宰するロゴス社が、「ブックレット・ロゴス」というシリーズを出している。
  http://logos-ui.org/index.html
このほど、そのNo.12として、「壊憲か、活憲か」が刊行された。村岡到編で、村岡到・澤藤統一郎・西川伸一・鈴木富雄の共著。

「壊憲か、活憲か」のタイトルについて、冒頭に村岡さんが次のように書いている。なかなかに面白く読ませる。

「硬い内容にならざるをえないので、最初は言葉のクイズから始めよう。
 憲法の「憲」の付く熟語をいくつ知っていますか? 誰もが知っているのは、賛否は別にして「護憲」だろう。「憲法を守る」を二文字にすれば「守憲」となるが、「主権」と同音なので、「護る」を選んだのであろう。
 その対極に「改憲」があると思われている。だが、いわば「左からの改憲」もあり得るので、「護憲」の対極は「壊憲」のほうが分かりやすい。「違憲」は、憲法に違反していることを意味する。「違憲立法審査権」は法律用語である。「違憲」の反対は「合憲」。公明党は「加憲」と主張している。
 近年は「立憲主義」が流行り言葉になっている。「活憲」=「憲法を活かす」も浮上しつつある。「婚活」になぞらえて「憲活」という人もいる(杜民党の吉田忠智党首)。「創憲」を見ることもあるが、「送検」されることを好む人はいない。憲兵はもういないが、憲政記念館はある。
 今や国会議員がわずか5人となった社民党の前身である社会党は最盛期には250人も議員がいたが、1996年に解党するまで自他ともに「護憲の社会党」と称していた。そのころは、日本共産党はけっして「護憲」とは言わなかった。社会党が解党した後、共産党は「護憲」と言うようになった。だが、「活憲」は好まないようである。だから、ほとんどの場合に「憲法を生かす」と表記する。「生かす」だと「生憲」となるが、これでは「政権」と紛らわしいから、こう書く人はいない。「制憲」の2文字はほとんど使われないが「制憲会議」はある。
 しかし、共産党系の運動でも「活かす」が使われることがある
。…以下略。」

前書きに記された問題意識は、以下のとおりである。
「戦争法は施行されたが、市民による戦争法廃止の闘いは依然として全国で大きな規模で展開されている。そこでは『立憲主義』が強調されている。だが、この言葉は、少し前まではほとんど使われていなかった。憲法について真正面から考え、自らの生活や活動のなかで活かす努力は不十分だったのではないか。この反省のなかから、私は、『壊憲か、活憲か』を基軸として、憲法について明らかにしなければならないと考えるようになった。
 すでに自民党の『日本国憲法改正草案』に対しては、多くの批判が提出されている。このブックレットでは、それらとは異なる角度から問題を提起する。
 この小さな本は、この危険な壊憲策動に対して、憲法はなぜ大切なのか(村岡到論文)、岩手靖国訴訟を例にした訴訟を手段として憲法を活かす活動(澤藤統一郎論文)、自民党は立党いらい『改憲』を一貫して掲げていたのか(西川伸一論文)、さらに今から140年以上も前の明治維新の時代に千葉卓三郎によって書かれていた憲法草案の先駆性(鈴木富雄論文)について明らかにする。
 ぜひとも、一読のうえ検討とご批判を切望する。」

面白そう。続きを読んでみたいと思われる方は、下記にご注文を。
2016年5月3日刊行で、四六判128頁、価格は1100円+税。

ロゴス〒113-0033東京都文京区本郷2-6-11-301
  tel  03-5840-8525
  fax 03-5840-8544

ついでに、私の執筆部分もお読みいただけたらありがたい。
目次は以下のとおり

まえがき
〈友愛〉を基軸に活憲を  村岡 到
  はじめに 〈活憲〉の広がり
  第1節 〈活憲〉の意味
  第2節 憲法の意義
  第3節 憲法や「市民」を軽視してきた左翼
  第4節 共産党の憲法認識の揺れ、確たる転換を
  第5節 「立憲主義」用語の曖昧さ
  第6節 〈友愛〉の定立を
  つなぎに

訴訟を手段として「憲法を活かす」
 ──岩手靖国訴訟を振り返って  澤藤統一郎
  はじめに
  「憲法を活かす」ことの意味
  岩手靖国訴訟の発端
  「政教分離」の本旨とは
  靖国問題とは何なのか
  岩手靖国訴訟──何をどう争ったのか
  原告らの法廷陳述から
  最低最悪の一審判決 
  勝ち取った控訴審での違憲判断
  安倍政権下特有の靖国問題
  「活憲」運動としての憲法訴訟
  おわりに

自民党は改憲政党だったのか
 ──「不都合な真実」を明らかにする  西川伸一
  はじめに
  第1節 党史にはどう書かれてきたのか
  第2節 綱領的文書にはどう書かれてきたのか
  第3節 自民党首相は国会演説でどう発言してきたのか
  むすび

日本国憲法の源流・五日市憲法草案  鈴木富雄
  第1節 五日市憲法草案の先駆的中身
  第2節 五日市憲法草案が発見された経過
  第3節 起草者・千葉卓三郎
  第4節 五日市の気風と五日市学芸講談会
  第5節 GHQが憲法原案作成に着手した背景
  第6節 「五日市憲法草案の会」の活動
  あとがき


著者紹介
村岡 到 季刊『フラタニティ』編集長
澤藤統一郎 弁護士
西川伸一 明治大学教授
鈴木富雄 五日市憲法草案の会事務局長

そして、小著には過分の出版記念討論会が予定されている。
 と き  2016年9月3日(土)午後1時30分
 ところ  明治大学リバティタワー6F(1064教室)
 報 告  村岡 到 澤藤統一郎 西川伸一 鈴木富雄
 司 会  平岡 厚
 参加費  700円

以上、伏してお願い申し上げます。
(2016年5月13日)

「文明社会とは価値観を共有し得ない」櫻井よしこの改憲論

日本国憲法は、1946年11月3日に公布され、翌47年5月3日に施行となった。本日は69回目の日本国憲法施行の記念日である。

かつては、政府が憲法記念の祝賀行事を主催した。いま政府の祝賀行事は皆無である。昨今はそれどころではない。憲法擁護義務を負う首相自身が「憲法改正」への積極意欲を口にしてはばからない。政府・与党による憲法と立憲主義攻撃の中で、緊張した雰囲気に包まれた憲法記念日となっている。

日本国憲法は保守政権にとっての厄介者である。アベ政権に至っては天敵扱いである。当然に、この軛から逃れたいという衝動をもっている。

しかし国家権力にとっての憲法とは、常にいやいやながらも従わざるを得ないもの。押しつけられたものだ。戦後連綿と続いてきた保守政権にとって、かつては戦勝国から押しつけられたものではあろうが、いま、アメリカからの憲法遵守要求の圧力はない。代わって国民が、政権に憲法を押しつけている構図となっている。国民の意思や運動が、政権に改憲を許さず、憲法理念の遵守要求圧力となっているのだ。

政権に憲法を押しつけているもの。「むかしGHQ、いま国民」ではないか。日本国憲法は、政権から嫌われたが故に、国民のものになってきたのだ。政権から歓迎される憲法では、存在価値はない。政権から疎まれ、嫌われる憲法であってこそ存在の意味がある。アベ政権から疎まれ、国民から大切にされる憲法。改憲の攻撃を受けつつ、これとせめぎ合い、守り抜く運動の中の憲法。緊張感の中ではあるが、こうして日本国民は日本国憲法を血肉化しているのだと実感する。

69回目の憲法記念日で、政府に代わって憲法攻撃を広言しているのが右翼勢力。

「東京・平河町の砂防会館別館であった改憲派の集会には、約1100人(主催者発表)が出席。有識者でつくる民間憲法臨調と『美しい日本の憲法をつくる国民の会』の共催で、同臨調代表のジャーナリスト、桜井よしこさんは改憲について『緊急事態条項を入れるところから出発するのがよい』と主張した。」(朝日)

その集会に参加した友人から次のメモの報告を受けた。

第18回公開憲法フォーラム・各党に緊急事態に対応する憲法論議を提唱する-すみやかな憲法改正発議の実現を!

まず、櫻井よしこさんの主催者代表挨拶。
国と国民の対立構造はない。
この国には国を縛るルールという考えはない。
3.11で命を救うために動けなかったのは憲法が元凶。
財産権の保障があるから助かる命が救えなかった。
日本らしさ、歴史、伝統、文明、価値観を守るのが憲法。
穏やかで公正な国のあり方。
緊急事態条項から出発しよう

安倍首相のビデオメッセージ
自衛隊が違憲と思われていて遺憾

中曽根康弘氏ビデオメッセージ
厭戦感に対し説得しなければならない

下村博文衆院議員(自民党)
どんな想定外のことでも対応できるように緊急事態条項を作らなければならない

松原仁衆院議員(民進党)
我々が憲法を作ったという事実がない
戦勝国の価値観を受け入れざるを得なかった
憲法の勘違いは近隣に平和を委ねること

江口克彦参院議員(おおさか維新の会)
マッカーサーは日本人は12歳だと言った
12歳の日本人を対象に作った憲法
護憲派は日本人は12歳だと言っているのと同じ
作成された時代で止まっている
法は時代の流れとともに変えていかなければならない
現実に合わない
解釈改憲は時の政権の解釈によることになるのでよくない

中山恭子(日本のこころを大切にする党)
拉致事件などが起きた国にすべてをまかせる、
自分の国を他国の力で守ろうとする甘ったれた国
前文を変えたい

この後緊急事態条項新設の必要性の提言
青年からの意見表明

1000万目標の署名が、5月3日時点で700万筆集まっている。」

メモには、「カルチャーショックでした!」という感想が添えられていた。これが、アベ政権提灯持ちの実態であることを国民は知らねばならない。

櫻井よしこの「あいさつ(要旨)」が産経に紹介されている。そのさわりは、以下のとおり。

「『立憲主義』という言葉に関して、国というものが国民と政府の対立であるかのように捉えられています。しかし、日本国の統治の仕方を振り返ってみるときに、国と国民が対立してきた、そしてその国を縛るための基本ルールが憲法であるというような考え方は、私たちにはなじみません」「憲法を論ずるときに、あたかも政府と国民の対立構造の中でものを考えるのは、間違いであると思います

これには驚いた。およそ、櫻井よしこの頭の中は、「17か条の憲法」のレベルである。あるいは、全体主義国家のイデオロギーで固まっている。思想も表現も自由ではあるが、これでは現代世界の文明国との「価値観の共有」は到底できない。「一番大事なことは、国民の共同体としての国家」と、国家権力と国民との緊張関係をことさらに否定する「思想」は、全体主義や軍事独裁のプロパガンダである。改憲派の本音と危険性を露わにしたことことにおいて、櫻井発言は、まさしく「カルチャーショック!」というべきであろう。

櫻井は、こうも言っている。
「私たちはあの3・11から、何を学んだのでしょうか。十分にお年寄りを助けることができましたでしょうか。体が不自由な人を助け出すことができたでしょうか。…もし、私たちができうることができなかったのであれば、それはなぜだろうかと真剣に考えなければなりません。その問題は憲法に元凶があるのではないでしょうか。緊急の道路を造るのに、荷物、車、がれき、片付けようとしても、現場は戸惑いました。なぜならば、それは憲法で財産権の保障などをしていて、もしかしてこれは憲法に抵触するのではないか。そのような思いを現場の人が現に持ったんです。そのことは、助けることのできる命が助からなかったということをも、意味しています。このようなことを繰り返してはなりません」

恐るべきこじつけの論理、いや非論理というほかはない。この非論理を前提にして、櫻井はこう結論する。

憲法は根本から変えなければなりませんけれども、各政党の最大公約数といってよい緊急事態条項を入れましょうというところから出発するのがよいのではないかと思います。日本国の明るい未来というものを目指して、みんなで頑張って憲法改正を実現していきたいと思います」

これが、本日の改憲派集会の趣旨のようだ。

憲法という存在をどう理解することも、発言することも自由だ。しかし、人類の叡智が長年積み上げてきた思想や経験知の体系に、いささかなりとも敬意があってしかるべきではないか。憲法に関する常識を無視しての、勝手放題の発言に説得力はない。驚くべきは、首相や元首相のメッセージまで寄せられた1000人規模の改憲派集会での主催者代表挨拶の知的レベルがこの程度だということ。

こんなレベルの改憲論だから恐るに足りず、というべきだろうか。それとも、こんなレベルの改憲論が国会内では多数派を形成しているのだから恐るべし、なのだろうか。
(2016年5月3日)

「野党は共闘」という市民の声による、アベ政治を許さない選挙共闘

この夏の参院選は、日本国憲法の命運を大きく左右する。アベ政権の改憲策動実現への第一歩となるか、それとも改憲を阻止することによってさらに国民に定着したものとするのか。

その参院選の日程が、いよいよ「6月22日公示、7月10日投開票」と本決まりの模様。そして、衆院の解散によるダブル選挙はなくなったというのが各紙の報ずるところ。寝たふり解散や抜き打ち選挙もあり得ないではないが、解散権を持つ側にとって、「ダブル選挙必ずしも有利ならず」と読ませる状況があるということだ。

選挙をめぐる関心の焦点は、自公の改憲勢力で、改憲発議のできる3分の2をとれるか否か。それは野党共闘の成否にかかっている。とりわけ、32ある一人区で、どこまで野党統一候補の擁立ができるかがカギとなる。いま、その動きが全国に浸透しつつあるが、改憲派から見て、「野党の選挙共闘恐るべし」なのだろうか、それとも「恐るに足りず」なのだろうか。本日の産経がこの点を語っている。しかも、北海道5区補選の彼らなりの教訓を踏まえてのこと。「2016参院選 本紙シミュレーション」という記事である。

右翼と自民党に支えられた産経である。スポンサーに失礼あっては社運に関わる。徹底して、改憲派の側からの分析であり、表現となっている。それでも、危機感横溢の内容となっている。おそらくは、この危機感が保守層の本音なのではないか。

メインのタイトルは「野党共闘効果は限定的 本紙が前回結果から試算」となっているが、サブのタイトルは、「与党、無党派で苦戦も 閣僚不祥事・失言など影響大」というもの。つまり、「野党統一候補は一部地域で善戦する可能性があるとはいえ、効果は限定的ともいえる」とスポンサーのご機嫌を伺いながらも、「補選の結果をみれば、無党派層の動向いかんでは野党共闘に勢いがつきかねない」「自民党は保守層の支持基盤を強化するとともに、無党派層の取り込みに向けた対策を進める必要がありそうだ」と献策している。この大事な選挙、自民党は安泰なのか、危ういのか。タイトルではなく、記事を読む限りは、大いに危ういのだ。

産経が、「野党共闘ができたとしても効果は限定的」という根拠は、3年前の参院選における有権者の投票行動を基礎としてのもの。これはたいして当てになるものではない。それでも、野党が一本化すれば、それだけで自民党候補に勝つところが7選挙区になるという。

さらに、次の記事が北海道5区補選の保守側の衝撃をよく表現している。
「自民党にとって枕を高くして寝ていられる状況でもない。夏の参院選の帰趨を占うとされた4月の衆院北海道5区補欠選挙で、野党統一候補が自民党公認候補を相手に健闘したからだ。
 補選は参院選の構図とほぼ同じ「与党候補」と「野党統一候補」の一騎打ち。両候補の得票数を市町村別に分析すると、支持政党を持たない無党派層が多い都市部で与党候補の得票数が野党統一候補を下回った。
 共同通信の出口調査では無党派層の約7割が野党候補に投票しており、自民党に大きな衝撃を与えた。自民党は政策がバラバラな「民共合作」を批判する戦術で辛くも制したが、無党派層の投票率が伸びれば与党候補が逆転されることもあり得た。もともと革新系が強いとされる北海道とはいえ、「堅調な内閣支持率のもとで党の支持層を固めれば、無党派層もそれほど取りこぼさない」というセオリーが覆された形だ。
 ある自民党選対幹部は『民進、共産両党にほぼきっちり支持層の票を積み上げられ、結果的に「1+1=1・9」になった。0・1は誤差の範囲内。勝ったものの、恐ろしい結果だ』と警戒感をあらわにする。」

要は、野党共闘のあり方次第で、参院選を制することで改憲を阻止し、アベ政権を窮地に追い込むことは可能なのだ。

誰がどう考えても、主敵・アベ政権を倒すには、野党の選挙共闘しかありえない。その基本枠組みは、既に2月19日にできている。

民主、維新、共産、生活、社民の野党5党(現在は、民主・維新が民進となって4党)の党首は2月19日、安全保障関連法を廃止する2法案を同日共同で衆院に提出するに当たって国会内で会談。国会での対応や国政選挙などで協力を強化していくことなど、下記の4点の共闘項目についてあらためて合意している。

(1)安全保障関連法の廃止と集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の撤回
(2)安倍政権の打倒を目指す
(3)国政選挙で現与党とその補完勢力を少数に追い込む
(4)国会での対応や国政選挙などあらゆる場面で5党のできる限りの協力を行う

本年4月3日の毎日新聞が、その参院選における野党共闘進展の具体的模様を伝えている。見出しは、「野党一本化、15選挙区…32の1人区 本紙調査」というもの。

「夏の参院選に向け、全国で32の「1人区」のうち15選挙区で民進党と共産党を中心にした野党の候補者一本化が確実になったことが分かった。両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、「統一候補」はさらに増える可能性が高い。参院選では1人区の勝敗が選挙戦全体の結果を左右する傾向が強く、2013年の前回参院選で『自民党一強』を選んだ民意が変わるかどうかが注目される。」

同日の毎日記事は、32の「1人区」を野党の選挙協力成否に関して3分している。
合意成立 15区
 青森・宮城・山形・栃木・新潟・福井・山梨・長野・「鳥取島根」・山口・「徳島高知」・長崎・熊本・宮崎・沖縄

協議中 10区
 岩手・秋田・福島・富山・三重・滋賀・和歌山・岡山・佐賀・大分

難航 7区
 群馬・石川・岐阜・奈良・香川・愛媛・鹿児島

そして、昨日(5月1日)の赤旗が、最新情勢を伝えている。
「一人区野党統一候補が大勢に」「政権に危機感」というもの。

「夏の参院選にむけ、32の1人区での野党統一候補の擁立が20選挙区を数え、大勢になりつつあります。『野党と市民・国民』対『自公と補完勢力』という選挙の対決構図が鮮明になるなか、安倍政権・与党は警戒感を募らせています。」という内容。

「前回参院選(2013年)の野党票を合計すると、9選挙区で野党が勝利、3選挙区で接戦となる計算となります。前々回(10年)の野党票合計では、18選挙区で野党が勝利、5選挙区で接戦。市民とともに野党が団結し本気で選挙をたたかえば、自民を負かす可能性がみえています。」

「一方、野党は統一候補擁立とともに政策課題でも一致点を広げています。26日、徳島・高知選挙区で野党4党と大西聡統一候補は、消費税増税反対、TPP(環太平洋連携協定)批准反対、原発に依存しない社会の実現、辺野古新基地建設反対など11項目の共通政策を発表しています。」

赤旗が報じる参院選1人区での野党統一候補は以下のとおり。
 青森    田名部匡代          民進公認
 秋田    松浦大悟           民進公認
 宮城    桜井充             民進公認
 山形    舟山康江            無所属
 栃木    たのべたかお         無所属
 群馬    堀越啓仁           民進公認
 新潟    森裕子             無所属
 長野    杉尾ひでや          民進公認
 山梨    宮沢ゆか           民進公認 
 石川    柴田未来           無所属
 福井    横山龍寛           無所属
 滋賀    林久美子           民進公認
 岡山    黒石健太郎          民進公認
 鳥取・島根 福島浩彦           無所属
 山口    こうけつ厚           無所属
 徳島・高知 大西聡            無所属
 長崎    西岡秀子           民進公認
 宮崎    読谷山洋司          無所属
 熊本    あべ広美           無所属
 沖縄    イハ洋一           オール沖縄

残る一人区(12)は、 岩手 福島 富山 岐阜 三重 奈良 和歌山 香川 愛媛 佐賀 大分 鹿児島である。

日経(4月30日)によれば、「7月の参院選で勝敗のカギを握る32の改選定数1の選挙区を巡り、民進、共産、社民、生活の野党4党は全体の6割を超える20選挙区で統一候補の擁立に合意した。残る12のうち、9選挙区で一本化に向け最終調整に入っている。参院選で「自民1強」に歯止めをかけるには野党共闘の加速が欠かせないと判断。残る選挙区で協議を進め、5月中の決着をめざす」とのことである。

私は、無原則な選挙共闘の相乗効果を安易に信じる立場にはない。しかし、今回参院選に限っては、野党候補統一の相乗効果は大いに期待しうるのではないだろうか。『1+1=2』にとどまらず、『1+1=2.5』にも、あるいは『1+1=3』にもなり得ると思う。

「一人区では、どうせ野党候補に勝ち目はない」という雰囲気は、アンチ・アベ無党派層の投票意欲を著しく殺ぐことになる。ところが、第2位・第3位の候補者の共闘が実現して接戦に持ち込めるとなれば、反アベ・反自民・反公明の無党派層の投票行動へのインセンティブが跳ね上がるのだ。

前回参院選(2013年)は、野党陣営にとっては最悪の事態でのものだった。このときの票の分布を今回も同様と安易に決めつけてはならない。北海道5区で示された接戦状態が、至るところで現出するだろう。そして、その経験は来たるべき総選挙における小選挙区共闘につながることになる。

「野党は共闘」という昨年の戦争法案反対デモのシュプレヒコールが、まだ耳に響いている。あのコールが、ここまで政治を動かしつつあるのだ。もしかしたら、あのデモが、アベ政治を許さず、改憲を阻止することになるのかも知れない。
(2016年5月2日)

選挙に勝つためには「市民と野党各党の共闘」、これ以外の道はない。

昨夜から元気が出ない。北海道5区の補選の投票結果は、紙一重に肉薄しながらも、野党共闘が支援する市民派池田まき候補の敗北となった。残念でならない。

「いま一歩及ばずの敗北」である。いま一歩のところまで追い詰めた積極面の教訓と、もう一歩のところで勝利に届かなかった消極面の教訓と。その両面について多くの人からの、とりわけ直接選挙に携わった人たちからの報告や意見を聞きたい。

今回は、勝利に結びつかなかったが、差し迫っている憲法の危機を回避するには、市民と野党が大同団結して選挙で勝つしか方法がない。北海道5区補選で形づくられた「この道」「この形」しかないのだ。どのようにすれば、「この道」をもっと大きく広げ、多くの人に歩いてもらうことができるのか。その教訓を得たいと思う。がっかりはしているが、「結局共闘しても勝てない」と清算主義に陥ってはならない。私も、及ばずながら、分かる範囲で、考えてみたい。

北海道5区補選が注目されたのは、野党共闘の効果の試金石としてである。任意の一小選挙区で野党共闘候補が勝てれば、日本中の小選挙区で勝つ展望が開ける。北海道5区は、そのような意味の「任意の一選挙区」であっただろうか。

選挙結果でまず目についたのは、5区内での得票の地域的偏りである。区内各自治体は、札幌市厚別区・江別市・千歳市・恵庭市・北広島市・石狩市・石狩郡当別町・石狩郡新篠津村である。各自治体ごとの候補者別得票数は以下のとおり。
              和田     池田
札幌市厚別区     29,292   33,434
江別市         28,661   29,687
千歳市         25,591   14,439
恵庭市         19,447   13,062
北広島市        13,419   15,200
石狩市         13,103   13,133
市区計        129,513   118,955

当別町           5,023    3,902
新篠津村         1,306     660
北海道第5区     135,842   123,517

以上のとおり、池田候補は、札幌市厚別区、江別市、北広島市、石狩市では勝っているのだ。千歳市、恵庭市で大きく負け込んでいるのが敗因となっている。全体の票差は1万2300票だが、千歳市での1万1100票差、恵庭市での6400票差が大きい。言うまでもなく、この両市は基地の街である。自衛隊関係者の有権者が多い。安全保障問題が大きな争点となった今回選挙では、明らかに千歳・恵庭は「任意の一選挙区」ではなかった。

千歳・恵庭を例外地域とすれば、これを除いた札幌市厚別区・江別市・北広島市・石狩市と市部では野党共闘候補が勝っている。このことは、大いに勇気づけられるところではないか。

ところで、朝日・NHK・道新・共同通信が、それぞれの出口調査の結果を発表している。

朝日は、その結果の報道に「無党派層68%『池田氏に投票』」と見出しを付けている。
「池田氏の方が無党派層依存度が高く、無党派層で和田氏に大きく水をあける必要があった。この日の出口調査で、無党派層は32%が和田氏に、68%が池田氏に投票。池田氏善戦に見えるが、結果を見ればその差では不十分だった。」という分析が、正鵠を得ているのだろう。

NHKの調査は、「和田氏は、無党派層では30%余りの支持を集めました。これに対して池田氏は、また、無党派層からは70%近くの支持を集めました」と、ほぼ朝日と同じ結果を報じている。

道新の分析も同様である。「池田氏は、民進党支持層と、共産党支持層の9割以上を固めた。無党派層からも7割の支持を得たが、当選には及ばなかった。」

共同通信の調査結果では、「『支持政党なし』の無党派層は、73・0%が池田氏に投票した。」という。

朝日によれば、「自公の支持層は出口調査回答者の4割を超えるのに対し、4野党の支持層は3割に満たない」という。そもそも基礎票が「4割強」対「3割弱」と、我が方著しく劣勢なのだ。結局は無党派層の票を上積みするための奪い合いとなるが、野党陣営が勝つためには、基礎票の差を埋める以上の票差をつけて無党派層を取り込まなければならない。池田候補は、「68%」(朝日)、「70%近く」(NHK)、「7割」(道新)、「73%」(共同)と無党派層に浸透したが、基礎票の差を埋めるに至らず、いま一歩及ばなかったということなのだ。

道新の調査は、「野党統一候補で無所属新人の池田真紀氏も民進支持層の95・5%、共産支持層の97・9%の票を得ており、両候補とも支持層を手堅くまとめた。」と報告している。

野党陣営は、それぞれの自陣を固めきり、無党派層を取り込む相乗効果も上げた。共闘は成功したと言ってよい。しかし、千歳・恵庭を擁するこの選挙区では、基礎票が不足していた。そして、無党派層の取り込みが、勝つための高いハードルをクリアーするには十分でなかった。

さて、他の多くの選挙区であれば、基礎票の差は北海道5区ほどではないとして、勝てたのではないか。池田まき候補には、政見放送の機会が与えられなかったなどの無所属故のハンディもあった。このような不公平をカバーすることができれば、勝機があったのではなかろうか。

勝敗の分かれ目は、無党派層の取り込み如何である。さらに無党派からの支持率を上げるには、どのような訴えをすればよいのだろうか。また、投票率のアップは野党有利という図式が明確になった。投票率を上げる工夫はどうすればよいのだろうか。そして、いよいよ次からは18歳の有権者が登場する。この若者たちに、どのような訴えかけが有効なのだろうか。

「これ以外にはない」道を大道とするために、知恵を集めたいものである。
(2016年4月25日)

差し迫った参院選に向けて、「野党は共闘!!」という市民の声。

今、政治のすべてが7月参院選挙をにらんで動いている。総選挙との同日選になる可能性も高いとされ、7月政治決戦の重大性は高まるばかり。仮に同日選となり、両院とも改憲勢力が3分の2の議席を占めることになれば、一気に明文改憲の気運が高まることにもなりかねない。

明文改憲は、取り返しのつかない政治的後退と考えざるをえない。日本国憲法の「改正」とは、立憲主義・平和主義・人権保障・民主主義が大きく損なわれることにほかならない。「小異を捨てて大同につく」とした場合、「改憲阻止」以上の大同はない。いまや、安倍政権とその追随勢力が明文改憲を強行しようという事態である。すべての政治勢力は改憲派と護憲派に二分される。それ以外はないのだ。

7月政治決戦において改憲に必要な議席を獲得すべく、与党勢力は不人気の政策を選挙後に先送りして失政隠しに余念なく、ひたすらにバラマキを狙っている。一方、院内では守勢に立つ野党は、小異を捨てた選挙協力によって、改憲にストップをかけようとしている。いまや、日本の命運が野党の選挙協力の成否にかかっていると言って過言でない。

一昨日(4月3日)の毎日新聞トップ記事が、参院選の野党共闘進展の模様を伝えている。見出しは、「野党一本化、15選挙区…32の1人区 本紙調査」というもの。これが、全国の最新情勢と見てよいだろう。

「夏の参院選に向け、全国で32の「1人区」(改選数1)のうち15選挙区で民進党と共産党を中心にした野党の候補者一本化が確実になったことが分かった。両党による協議が進んでいる選挙区も10あり、「統一候補」はさらに増える可能性が高い。参院選では1人区の勝敗が選挙戦全体の結果を左右する傾向が強く、2013年の前回参院選で『自民党一強』を選んだ民意が変わるかどうかが注目される。」

毎日は、32の「1人区」を野党の選挙協力成否に関して3分している。

合意成立 15区
青森・宮城・山形・栃木・新潟・福井・山梨・長野・「鳥取島根」・山口・「徳島高知」・長崎・熊本・宮崎・沖縄

協議中 10区
岩手・秋田・福島・富山・三重・滋賀・和歌山・岡山・佐賀・大分

難航 7区
群馬・石川・岐阜・奈良・香川・愛媛・鹿児島

これはまずまずの朗報ではないか。昨年(2015年)の戦争法反対運動の中での市民のコール「野党は共闘」が、このような形で実を結びつつあるのだ。

毎日は次のようにもいう。
「13年参院選の1人区(当時は31選挙区)で29勝2敗と圧勝した自民党は、野党の動きに警戒を強めている。」

「単純には比較できないが、13年参院選の結果を基に試算すると、15選挙区のうち宮城、山形、栃木、新潟、山梨、長野の6選挙区で野党の合計得票数が自民党を上回る。」

なお、逆転は「協議中」の三重を入れれば7選挙区となる。他の選挙区も、共闘の相乗作用で勝機が出てこよう。参院一人区は小選挙区制なのだから、野党の選挙協力なき限り、与党圧勝となるのだ。明文改憲が日程に上る情勢では、野党は選挙協力をするしかなく、反自民で野党の選挙協力ができれば、小選挙区効果で底上げの議席に胡座をかいている与党に大きな打撃を与えうることになる。

アベノミクスの失敗による地方の疲弊。TPPのウソ。原発再稼働の強行。平和や民主主義の危機…。安倍政権に魅力的な政策はないでないか。共闘の成果は、大きく情勢を変えるものとなるだろう。

選挙協力しても野党に失うものはないように見えるところだが、合意成立難航の理由については、このように説明されている。
「逆に協議が難航しているのは7選挙区。民進党や連合の県組織に共産党へのアレルギーが強いのが主な原因だ。奈良では民進、共産両党が協力を探っているものの、おおさか維新の会が候補者を擁立するため、野党票が分散する。一方、愛媛では今後、民進党の元衆院議員擁立で野党がまとまる余地がある。」

市民が共闘を願っているこのときに、野党各党の改憲阻止本気度が問われている。共産党アレルギーが共闘の障害とは情けない。おそらくは、市民からの手痛い批判を免れないだろう。全国的に、野党の選挙共闘が進展すれば、「難航7区」の情勢も変化せざるを得ない。

本日(4月5日)になって、「難航7区」のうちの愛媛選挙区での野党統一候補擁立が報道されている。また、「協議中10区」のうちの富山でも、「今月中旬にも野党統一候補擁立へ」の報道がなされている。地元テレビが報じるその共闘協議のあり方が、たいへんに興味深い。

候補者調整の主役は、「アベ政治を許さない!戦争法反対!野党共闘を求める オールとやま市民会議」である。「オールとやま」が、民・共・社・生の4党に呼びかけて、協議を重ね、本日(4月5日)時点で、民・共ともに独自候補擁立を断念し、4党が「オールとやま」推薦の「政党色のない清新な統一候補」擁立に原則合意したというのだ。富山から目が離せない。毎日が報じた「最新情勢」も急速に動きつつあるのだ。

野党共闘の動きに与党は戦々恐々というところ。「ばらばらだったものがまとまった時に野党票が大きく上向く可能性はあり、脅威だ」というのが、ホンネのところ。タテマエとしては、「何のために野党共闘を作り上げるかの大義名分も不鮮明だ。国民の信頼は向かない」という野合論が語られている。

野党内の政策の違いは当然だ。当選した統一候補が、議会の審議において、民・共どちらの立場に立つか、難しい局面におかれることも当然にあるだろう。それでも、その程度のことを小異として共闘しているのは、もっと大きな大義があるからなのだ。その大義とは、「アベ政治を許さない!戦争法反対!」そして「憲法改悪阻止」である。

解釈改憲による戦争法に反対。その廃止法成立を求める立場においての共闘が必要であり、明文改憲阻止がその次の問題点。その理念で議員としての活動があれば、あとは各議員の判断に任せればよいことではないか。敏感に世論に耳を傾け、自分の判断で発言し行動する議員が増えることは大歓迎だ。

私はひそかに思っている。こうなるのではないか。
各地での選挙協力協議の推進⇒各地での選挙準備活動の活発化⇒各地相互の波及効果⇒全国での選挙協力合意促進⇒議会内での野党活動原則の確認⇒議会外での市民運動の活発化⇒各野党の党勢拡大⇒参院選勝利⇒総選挙への波及⇒改憲阻止⇒安倍退陣⇒日本の民主主義と立憲主義の前進
これこそ「好循環」ではないか。
(2016年4月5日)

自民党改憲草案「緊急事態条項」の危険性宣伝が緊急課題だ。

私も、依頼あれば学習会の講師を務める。テーマは、スラップ・「日の丸君が代」・政教分離・消費者・医療・教育、そして改憲問題。最近改憲問題は、ほとんどが緊急事態条項についてのもの。今年になってから緊急事態条項をテーマの講師活動は6回となった。そのレジメを掲載しておきたい。参考になるところもあろうかと思う。

訴えの骨格は、次の諸点。
☆今、安倍政権は、解釈改憲を不満足として明文改憲をたくらんでいる。
☆その突破口が「緊急事態条項」とされている。
☆しかし、緊急事態条項は必要ない。
☆いや、緊急事態条項(=国家緊急権条項)はきわめて危険だ。
☆現行憲法に緊急事態条項がないのは欠陥ではない。
 憲法制定者は緊急事態条項を危険なものとして意識的に取り除いたのだ。
☆意識的に取り除いたのは、戦前の旧憲法下の教訓から。
☆それだけでなく、ナチスがワイマール憲法を崩壊させた歴史の教訓からだ。
☆緊急事態条項(=国家緊急権条項)は、
 整然たる憲法秩序をたった一枚でぶちこわすジョーカーなのだ。

レジメ《緊急事態条項は、かくも危険だ》
本報告(レジメ)の構成  同じことを3回繰り返す。骨格→肉付→化粧
 第1章 骨格編 ビラの見出しに、マイクでの呼びかけに。
 第2章 肉付編 確信をもって改憲派と切り結ぶために。
 第3章 資料編 資料を使いこなして説得力を

第1章 スローガン編
  いま、緊急事態条項が明文改憲の突破口にされようとしている。
  しかし、緊急事態条項は不要だ。「緊急事態条項が必要」はデマだ。
  緊急事態条項は不要と言うだけではない。危険この上ない。
  緊急事態条項の導入を「お試し改憲」などと軽視してはならない。
  自民党改憲草案9章(98条・99条)が安倍改憲の緊急事態条項。
   98条が緊急事態宣告の要件。99条が緊急事態宣告の効果。
  緊急事態条項は、立憲主義を突き崩す。人権・民主々義・平和を壊す。
  緊急事態とは、何よりも「戦時」のことである。⇒戦時の法制を想定している。
  「内乱等社会秩序の維持」の治安対策である。⇒大衆運動弾圧を想定している。
  緊急事態においては、内閣が国会を乗っ取る。政令が法律の役割を果たす。
    ⇒議会制民主主義が失われる。独裁への道を開く。
  緊急事態条項は、国家緊急権を明文化したもの。
  国家緊急権は、それ一枚で整然たる憲法秩序を切り崩すジョーカーだ。
  国家緊急権は、天皇主権の明治憲法には充実していた。
  その典型が天皇の戒厳大権であり、緊急勅令(⇒行政戒厳)であった。
  ナチスも、国家緊急権を最大限に活用した。
  ヒトラー内閣はワイマール憲法48条で共産党を弾圧して議会を制圧し、
   制圧した議会で、悪名高い授権法(全権委任法)を成立させた。
   授権法は、国会から立法権を剥奪し、独裁を完成させた。
  最も恐るべきは、緊急事態条項が憲法を停止し、
   緊急時の一時的「例外」状況が後戻りできなくなることだ。

第2章 肉付編
1 憲法状況・政権が目指すもの
 ☆解釈改憲(閣議決定による集団的自衛権行使容認から戦争法成立へ)だけでは、
  政権は満足し得ない。
  彼らにとって、戦争法は必ずしも軍事大国化に十分な立法ではない。
  ⇒現行憲法の制約が桎梏となっている。⇒明文改憲が必要だ。
 ☆第二次アベ政権の明文改憲路線は、概ね以下のとおり。
  96条改憲論⇒立ち消え(解釈改憲に専念)⇒復活・緊急事態条項から
  改憲手続(国民投票)法の整備⇒完了 各院に憲法審議会
  そして最近は9条2項にも言及するようになってきている。
2 なぜ、緊急事態条項が明文改憲の突破口とされているのか。
 ☆東日本大震災のインパクトを利用
  「憲法に緊急事態条項がないから適切な対応が出来なかった」
 ☆「緊急事態への定めないのは現行憲法の欠陥だ」
  仮に、衆院が構成がないときに「緊急事態」が生じたら、
☆政権側の緊急事態必要の宣伝は、「衆院解散時に緊急事態発生した場合の不備」  に尽きる。「解散権の制限」や「任期の延長」規程がないのは欠陥という論法。
  しかし、現行憲法54条2項但し書き(参議院の緊急集会)の手当で十分。
 ☆それでも「お試し改憲」(自・公・民・大維の賛意が期待できる)としての意味。
 ☆あわよくば、人権制約制限条項を入れたい。
3 政権のホンネ
 ☆国家緊急権(規程)は、支配層にとって喉から手の出るほど欲しいもの
  大江志乃夫著「戒厳令」(岩波新書)の前書に次の趣旨が。
 「緊急事態法制は1枚のジョーカーに似ている。他の52枚のカードが形づく  る整然たる秩序をこの一枚がぶちこわす」
 ☆自由とは権力からの自由と言うこと。人権尊重理念の敵が、強い権力である。
  人権を擁護するために、権力を規制してその強大化を抑制するのが立憲主義。
  立憲主義を崩壊せしめて強大な権力を作るための恰好の武器が国家緊急権。
 ☆戦時・自然災害・その他の際に、憲法の例外体系を形づくって
  立憲主義を崩壊させようというもの。
4 天皇制日本とナチスドイツの国家緊急権
 ☆明治憲法には、戒厳大権・非常大権・緊急勅令・緊急財政処分権限などの
  国家緊急権制度が手厚く明文化されていた。
 ☆最も民主的で進歩的なワイマール憲法に、大統領の緊急権限条項があった。
  ナチス政権以前に、この条項は250回も濫発されていた。
 ☆ナチス政権は、この緊急事態法を活用して共産党の81議席を奪い、
  授権法(全権委任法)を制定して国会を死滅させた。
 ☆その反省から、日本国憲法は、国家緊急権(条項)の一切を排除した。
  戦争放棄⇒戦時の憲法体系を想定する必要がない。
  徹底した人権保障システム⇒例外をおくことで壊さない
5 自民党改憲草案「第9章 緊急事態」の危険性
 ☆旧天皇制政府の戒厳・非常大権規程が欲しい⇔「戦後レジームからの脱却」
  ナチスの授権法があったらいいな⇔「ナチスの経験に学びたい」
しかも、緊急事態に出動して治安の維持にあたるのは「国防軍」である。
 ☆自民党改憲草案による「緊急事態」条項は
  濫用なくても、「戦争する国家」「強力な権力」「治安維持法体制」をもたらす。
  しかも、濫用の歯止めなく、その危険は立憲主義崩壊につながる。
 ☆草案では、内閣が国会を乗っ取り、政令が法律の代わりを務める。
  内閣が、人身の自由、表現の自由を制約する政令を発することができる。
  予算措置もできることになる。
6 まずは、徹底した「緊急事態条項必要ない」の訴えと
  次いで、「旧憲法時代やナチスドイツの経験から、きわめて危険」の主張を

第3章 資料編
☆日本国憲法54条2項
「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」

☆自民党改憲草案(2012年4月27日)「第9章 緊急事態」
 98条 緊急事態の宣言
 1項 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる
 99条 緊急事態宣言の効果
 1項 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。

☆自民党「Q&A」(99条3項関連)
 現行の国民保護法において、こうした憲法上の根拠がないために、国民への要請は全て協力を求めるという形でしか規定できなかったことを踏まえ、法律の定める場合には、国民に対して指示できることとするとともに、それに対する国民の遵守義務を定めたものです。

☆民主党「憲法提言」(民主党憲法調査会 2005 年10 月31 日)
違憲審査機能の強化及び憲法秩序維持機能の拡充
国家非常事態における首相(内閣総理大臣)の解散権の制限など、憲法秩序の下で政府の行動が制約されるよう、国家緊急権を憲法上明示しておくことも、重ねて議論を要する。
国家緊急権を憲法上に明示し、非常事態においても、国民主権や基本的人権の尊重などが侵されることなく、その憲法秩序が確保されるよう、その仕組みを明確にしておく。

☆公明党憲法調査会による論点整理(公明党憲法調査会、2004 年6 月16 日)
「ミサイル防衛、国際テロなどの緊急事態についての対処規定がないことから、あらたに盛り込むべしとの指摘がある。ただ、あえて必要はないとの意見もある。」

☆大日本帝国憲法の国家緊急権規程
 第14条(戒厳大権)
  1項 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
  2項 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
 第8条(緊急勅令)
  1項 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
 第31条(非常大権)
   本章(第2章 臣民権利義務)ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ
 第70条(緊急財政処分) 
  1項 公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得

☆戒厳令(明治15年太政官布告第36号)
第一条 戒厳令ハ戦時若クハ事変ニ際シ兵備ヲ以テ全国若クハ一地方ヲ警戒スルノ法トス
第二条 戒厳ハ臨戦地境ト合囲地境トノ二種ニ分ツ
第三条 戒厳ハ時機ニ応シ其要ス可キ地境ヲ区画シテ之ヲ布告ス
第十四条 戒厳地境内於テハ司令官左ニ記列ノ諸件ヲ執行スルノ権ヲ有ス
     但其執行ヨリ生スル損害ハ要償スルコトヲ得ス
  第一 集会若クハ新聞雑誌広告等ノ時勢ニ妨害アリト認ムル者ヲ停止スルコト
  第二 軍需ニ供ス可キ民有ノ諸物品ヲ調査シ又ハ時機ニ依リ其輸出ヲ禁止スルコト
  第三 銃砲弾薬兵器火具其他危険ニ渉ル諸物品ヲ所有スル者アル時ハ
     之ヲ検査シ時機ニ依リ押収スルコト
  第四 郵便電報ヲ開緘シ出入ノ船舶及ヒ諸物品ヲ検査シ並ニ陸海通路ヲ停止スルコト
  第五 戦状ニ依リ止ムヲ得サル場合ニ於テハ人民ノ動産不動産ヲ破壊燬焼スルコト
  第六 合囲地境内ニ於テハ昼夜ノ別ナク
     人民ノ家屋建造物船舶中ニ立入リ検察スルコト
  第七 合囲地境内ニ寄宿スル者アル時ハ時機ニ依リ其地ヲ退去セシムルコト

☆1923年9月3日 関東戒厳令司令官通知
(同司令部は、9月2日緊急勅令による「行政戒厳」によって設置されたもの) 
一 警視総監及関係地方長官並ニ警察官ノ施行スベキ諸勤務。
 1 時勢ニ妨害アリト認ムル集会若ハ新聞紙雑誌広告ノ停止。
 2 兵器弾薬等其ノ他危険ニ亙ル諸物晶ノ検査押収。
 3 出入ノ船舶及諸物晶ノ検査押収。
 4 各要所ニ検問所ヲ設ケ
  通行人ノ時勢ニ妨害アリト認ムルモノノ出入禁止又ハ時機ニ依り水陸ノ通路停止。
 5 昼夜ノ別ナク人民ノ家屋建造物、船舶中ニ立入検察。
 6 本命施行地域内ニ寄宿スル者ニ対シ時機ニ依リ地境外退去。
二 関係郵便局長及電信局長ハ時勢二妨害アリト認ムル郵便電信ヲ開緘ス。

☆ワイマール憲法 第48条2項
 ドイツ国内において、公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、またはそのおそれがあるときは、大統領は、公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。
 この目的のために、大統領は一時的に第114条(人身の自由)、第115条(住居の不可侵)、第117条(信書・郵便・電信電話の秘密)、第118条(意見表明の自由)、第123条(集会の権利)、第124条(結社の権利)、および第153条(所有権の保障)に定められている基本権の全部または一部を停止することができる。

☆ナチスドイツの授権法(全権委任法)全5条
正式名称 「民族および国家の危難を除去するための法律」1933年3月23日成立
1.ドイツ国の法律は、ドイツ政府によっても制定されうる。
2.ドイツ政府によって制定された法律は、憲法に違反することができる。
3.ドイツ政府によって定められた法律は、首相によって作成され、官報を通じて公布される。特殊な規定がない限り、公布の翌日からその効力を有する。
4.ドイツ国と外国との条約も、本法の有効期間においては、立法に関わる諸機関の合意を必要としない。政府はこうした条約の履行に必要な法律を発布する。
5.本法は公布の日を以て発効する。本法は1937年4月1日までの時限立法である。

☆日本国憲法制定時の、対GHQ「3月2日」案
 明治憲法下の緊急命令及び緊急財政措置に代わるものとして、76 条において、「衆議院ノ解散其ノ他ノ事由ニ因リ国会ヲ召集スルコト能ハザル場合ニ於テ公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ必要アルトキハ、内閣ハ事後ニ於テ国会ノ協賛ヲ得ルコトヲ条件トシ法律又ハ予算ニ代ルベキ閣令ヲ制定スルコトヲ得」と規定されていた。GHQ側は、国家緊急権に関する英米法的な理解を根拠に、「非常時の際には、内閣のエマージェンシー・パワー(emergency power)によって処理すべき」としてこれを否定したが、その後の協議の結果、日本側の提案に基づき、参議院の緊急集会の制度が採り入れられることになった。(衆議院憲法審査会「緊急事態」に関する資料)

☆制憲国会(第90帝国議会)における政府(担当大臣金森徳次郎)答弁
「緊急勅令及ビ財政上ノ緊急処分ハ、行政当局者ニ取リマシテハ実ニ調法ナモノデアリマス、併シナガラ調法ト云フ裏面ニ於キマシテハ、国民ノ意思ヲ或ル期間有力ニ無視シ得ル制度デアルト云フコトガ言ヘルノデアリマス、ダカラ便利ヲ尊ブカ或ハ民主政治ノ根本ノ原則ヲ尊重スルカ、斯ウ云フ分レ目ニナルノデアリマス、ソコデ若シ国家ノ仲展ノ上ニ実際上差支ヘガナイト云フ見極メガ付クナラバ、斯クノ如キ財政上ノ緊急措置或ハ緊急勅令トカ云フモノハ、ナイコトガ望マシイト思フノデアリマス」
「民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、随テ特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時議会ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、…コトガ適当デアラウト思フ訳デアリマス」

☆法律による「緊急事態」への対処について(『改憲の何が問題なのか』(岩波、2013年)所収の水島朝穂「緊急事態条項」)水島さんのブログ「直言」から
 「日本の場合、憲法に緊急事態条項はないが、法律レヴェルには「緊急事態」という文言が随所に存在することである。例えば、「警察緊急事態」(警察法71条)、「災害緊急事態」(災害対策基本法105条)、「重大緊急事態」(安全保障会議設置法2条9号)である。これに「防衛事態」(自衛隊法76条)、「武力攻撃事態」(武力攻撃事態法2条)、「治安出動事態」(自衛隊法78、81条)が加わる。憲法9条の観点から合憲性に疑義のあるものもあるが、ここでは立ち入らない。」

☆東北弁連会長声明
災害対策を理由とする国家緊急権の創設に反対する会長声明
現在、与党自民党において、東日本大震災時の災害対応が十分にできなかったことなどを理由として、日本国憲法に「国家緊急権」の新設を含む改正を行うことが議論されている。
国家緊急権とは、戦争や内乱、大災害などの非常事態において、国民の基本的人権などの憲法秩序を一時停止して、権限を国に集中させる制度を言う。この制度ができると国は強大な権限を掌握することができるのに対し、国民は強い人権制約を強いられることになる。災害対応の名目の下に、国家緊急権が創設されることは、非常に危険なことと言わざるを得ない。
そもそも、日本国憲法の重要な原理として、権力分立と基本的人権の保障が定められたのは、国家に権力が集中することによって濫用されることを防ぎ、自由・財産・身体の安全など、国民にとって重要な権利を守るためである。大日本帝国憲法(以下「旧憲法」という)時代には国民の人権が不当に侵害され、戦争につながった経験に鑑みて、日本国憲法はかかる原理を採用している。また、旧憲法には国家緊急権の規定があったが、それが濫用された反省を踏まえて、日本国憲法には国家緊急権の規定はあえて設けていない。
確かに、東日本大震災では行政による初動対応の遅れが指摘された事例が少なくない。しかし、その原因は行政による事前の防災計画策定、避難などの訓練、法制度への理解といった「備え」の不十分さにあるとされている。例えば、震災直後に被災者に食料などの物資が届かなかったこと、医療が十分に行き渡らなかったことなどは、既存の法制度で対応可能だったはずなのに、避難所の運営の仕組みや関係機関相互の連絡調整などについての事前の準備が不足していたことに原因があるのである。東京電力福島第一原子力発電所事故に適切な対処ができなかったのも、いわゆる「安全神話」の下、大規模な事故が発生することをそもそも想定してこなかったという事故対策の怠りによるものである。つまり、災害対策においては「準備していないことはできない」のが大原則であり、これは被災者自身が身にしみて感じているところである。
そもそも、日本の災害法制は既に法律で十分に整備されている。例えば、災害非常事態等の布告・宣言が行われた場合には、内閣の立法権を認め(災害対策基本法109条の2)、内閣総理大臣に権限を集中させるための規定(災害対策基本法108条の3、大規模地震対策特別措置法13条1項等)、非常事態の布告等がない場合でも、防衛大臣が部隊を派遣できる規定(自衛隊法83条)など、災害時の権限集中に関する法制度がある。また、都道府県知事の強制権(災害救助法7~10条等)、市町村長の強制権(災害対策基本法59、60、63~65条等)など私人の権利を一定範囲で制限する法制度も存在する。従って、国家緊急権は、災害対策を理由としてもその必要性を見出すことはできない。
他方で、国家緊急権はひとたび創設されてしまえば、大災害時(またはそれに匹敵する緊急時)だけに発動されるとは限らない。時の政府にとって絶対的な権力を掌握できることは極めて魅力的なことであり、非常事態という口実で濫用されやすいことは過去の歴史や他国の例を見ても明らかである。国民の基本的人権の保障がひとたび後退すると、それを回復させるのが容易でないこともまた歴史が示すとおりである。
よって、当連合会は、東日本大震災において甚大な被害を受けた被災地の弁護士会連合会として、災害対策を理由とする国家緊急権創設は、理由がないことを強く指摘し、さらに国家緊急権そのものが国民に対し回復しがたい重大な人権侵害の危険性が高いことから、国家緊急権創設の憲法改正に強く反対する。
2015年(平成27年)5月16日
東北弁護士会連合会 会長 宮本多可夫
                  以  上
(2016年3月28日)

緊急事態条項は、日本国憲法の3本の柱を壊してしまう

本郷にお住まいの皆さま、ご通行中の皆さま。地元の「九条の会」です。少しの時間お耳を貸してください。

ご承知のとおり、日本国憲法は3本の柱で組み立てられています。
 まずは、基本的人権の尊重。
 そして、民主主義。
 さらに、平和主義です。

この3本のうち、人権と民主々義とは、どんな憲法にも書いてあります。これが欠けていれば憲法とは言えないのですから。しかし、3本目の「平和」の柱をしっかりと立てて、堅固な家を建てている憲法は、実はごく少ないのです。

日本国憲法の3本目の「平和主義」の柱は、「陸海空軍その他の戦力は保持しない」「国の交戦権は認めない」という徹底した平和主義に貫かれています。誇るべき非凡な憲法と言わなければなりません。しかも、日本国憲法の平和主義は、9条に戦争放棄・戦力不保持が書いてあるからだけでなく、その理念が前文から本文の全条文に貫かれています。戦争をしないこと、国の外交・内政の選択肢として戦争も戦争の準備もあり得ないことを憲法全体が確認しています。その意味で、日本国憲法は文字どおり「平和憲法」なのです。

日本国憲法の3本の柱は、互いに支え合っています。けっしてバラバラに立っているのではありません。そして、この3本の相性がとてもよいのです。とりわけ強調すべきは、「平和」を欠いた「人権」と「民主主義」の2本だけでは、実はとても座りが悪いのです。この点が世界各国の憲法の悩みの種でもあるのです。

多くの憲法の条項には、立派な「人権」と「民主主義」の柱が立てられています。しかし、見かけは立派でも、この2本の柱は完全な物ではありません。実は大きな虫喰いがあるのです。「人権や民主主義は平時の限り」という限定の大穴が開いているのです。「戦争になれば、人権や民主主義などと生温いきれいごとを言ってはおられない」「そのときは、戦争に勝つために何でもありでなくてはならない」と人権や民主々義尊重の例外が留保されているのです。この例外は、「戦時」だけでなく、「戦争が起こりそうな場合」も、「内乱や大規模なデモが起こった場合」も、「自然災害があった場合も」と、広範に拡大されかねません。これが、「普通の国の憲法」の構造なのです。

日本国憲法は、堅固な平和主義の柱を立てています。ですから、一切戦争を想定していません。そのため、人権や民主主義の例外規定をもつ必要がなかったのです。戦時だけでなく、内乱や自然災害に関しても、意識的に憲法制定過程で人権擁護や民主主義遵守の例外をおきませんでした。戦前の例に鑑みて、例外規定の濫用を恐れたからです。

典型的には戦時を想定した人権や民主々義擁護の例外規定を「国家緊急権条項」と呼びます。日本国憲法にその条項がないばかりか。曲がりなりにもこれまで平和主義を貫いてきた日本では、憲法に国家緊急権条項を入れる必要はありませんでした。しかし、戦争をする国を作ろうとなると話は別です。「お上品に人権や民主々義を原則のとおりに守っていて、戦争ができるか」ということになります。

いま、安倍政権が改憲の突破口にしようとしているのは、このような意味での国家緊急権を憲法に書き込もうということなのです。それは、戦争法の制定と整合するたくらみなのです。とうてい、「お試し改憲」などという生やさしいことではありません。

改憲勢力は、頻りに「東日本大震災時に適切な対応が出来なかったその反省から、災害時に適切な対応が出来るように憲法改正が必要だ」と言っています。これは、何重にもウソで固められています。なにせ、「完全にコントロールされ、ブロックされています」とウソを平気で言う、アベ政治です。自信ありげな顔つきのときこそ、信じてはなりません。

2012年4月27日決定の自民党改憲草案が、アベ政権の改憲案でもあります。ここに、書いてある緊急事態の要件は、真っ先に戦争です。書きぶりは、「日本に対する外部からの武力攻撃」となっていますが、まさか日本からの侵略とは書けません。ついで、「内乱」。内乱だけでなく、「内乱等による社会秩序の混乱」という幅広く読める書き方。3番目が「地震等による大規模な自然災害」ですが、それだけではありません。「その他の法律で定める緊急事態」と続いています。
自然災害は「三の次」で、実は、「緊急事態」は際限もなく広がりそうなのです。

誰が緊急事態宣言を発するか。内閣ではなく、内閣総理大臣です。これは大きな違い。国会での承認は事前・事後のどちらでもよいことになっています。

そして、その効果です。緊急事態を宣言すれば、内閣は国会を通さずに、法律と同じ効力のある政令を制定することができるようになるのです。いわば、国会の乗っ取りです。そして、国民は「国その他公の機関の指示に従わなければならない」という地位におかれます。

1933年制定の悪名高いナチスの全権委任法となんとよく似ているではありませんか。全権委任法は「内閣が法律を作ることができる」としました。ともに、非常に危険と言わざるを得ません。ナチスの全権委任法も、緊急時の例外として時限立法とされましたが、敗戦までの12年間、「例外」が生き続けることになったのです。

日本国憲法を形づくる3本の柱のうち、平和の柱を崩そうというのがアベ政治の悲願。そのための大きな仕掛けが緊急事態条項です。しかも、この緊急事態条項は人権や民主主義に後戻りできない傷をもたらす危うさを秘めているのです。

アベ政権になって以来、教育基本法が変えられ、特定秘密保護法が成立し、戦争法が強行されました。そして、今度は明文改憲に手が付けられようとしています。その突破口と目論まれているのが、緊急事態条項です。さらに、9条2項を変えて、「戦力」ではない自衛隊を、堂々たる一人前の国防軍とする。これが、アベ政治の狙いと言わざるを得ません。

60年の安保や、昨年の戦争法反対の国民運動が大きくなれば、国家緊急事態として、国防軍が治安出動もできるようになる。恐るべき近未来ではありませんか。

ぜひ皆さま、日本国憲法に対する本格的な挑戦である緊急事態条項創設に反対の世論形成に力を貸していただくよう、よろしくお願いします。

そして、その闘いの一環として、平和を擁護するための「戦争法廃止2000万人署名」にご協力ください。
(2016年2月9日)

「機密解禁文書にみる日米同盟」(末浪靖司著)から見えてくる、日米安保体制と9条擁護のたたかいの構図

本日は、日民協憲法委員会の学習会。末浪靖司さんを講師に、「『機密解禁文書にみる日米同盟』から読み解く日米安保体制と私たちのたたかい」というテーマ。

末浪さんは精力的にアメリカの公開された機密公文書を渉猟して、日本側が隠している安保関係の密約文書を世に紹介していることで知られるジャーナリスト。『機密解禁文書にみる日米同盟』は、その成果をまとめた近著である。

最初に、アメリカの文書開示制度と国立公文書館についての解説があった。
1789年フランス人権宣言15条には、「社会は、その行政のすべての公の職員に報告を求める権利を有する」と明記されている。フランス革命に先立って、独立革命をなし遂げたアメリカ合衆国第2代大統領アダムズ(独立宣言起草に参加)は、「政府が何をしているかを知るのは国民の義務」とまで述べ、これが公文書公開制度のモットーとなって、1967年制定の「情報の自由法」FOIA(The Freedom of Information Act)に生きている。その充実ぶりは、日本の外務省の外交文書公開の扱いとは雲泥の差。この10年アメリカ公文書館その他に通って、大要下記のことを確認した。

※アメリカ政府の憲法9条改憲の内的衝動と米軍の駐留
☆アメリカ政府内で最も早い時期に改憲要求を明確化したのは、ジョン・B・ハワード国務長官特別補佐官(国際法学者)である。
アメリカの核独占体制がソ連の核実験によって破られ中華人民共和国が成立するという状況下の1949年11月4日、機密文書「日本軍隊の復活に関する覚書」の中で、「日本再軍備の決定は、憲法の『戦争と軍隊の放棄』をどうするかという決定と無関係ではない」とし、同月10日には、国務長官宛の機密覚書で、「日本軍復活に関して国務省のとるべき態度」との表題をつけて「米の援助と日本の資金・労力は米軍の駐留と強力な警察部隊の維持にあてられるべき」と述べている。
ハワードは、国務長官をはじめ国務省、国防総省などに論文、報告書をばらまいて自分の考えを売り込んだ。彼は、9条改憲を望みながらも、改憲が実現する前に米軍駐留を合憲とする理屈を考えた。50年3月3日付の極秘報告「軍事制裁に対する日本の戦争放棄の影響」には、「外国軍隊は日本国憲法9条が禁止する戦力ではない」「外国軍事基地は憲法の範囲内の存在」という、その後の安保そして砂川判決の論理が明記されている。

☆日本の再軍備と改憲要求は米軍司令部から出てきている
1950年8月22日ブラッドレー統合参謀本部長から国防長官宛の機密覚書「主題:対日平和条約」には、「アメリカは非武装・中立の日本に生じる軍事的空白を容認し続ける立場にはない。それ(軍事的空白の解消)は、万一世界戦争が起きた際に、アメリカの戦略と世界戦争に良い結果をもたらすだろう」
また、同年12月28日付統合参謀本部への機密文書「アメリカの対日政策に関する共同戦略調査委員会報告」では、「米国の軍事的利益は日本の能力向上により得られる。そのために憲法変更は避けがたい」と9条改憲の意向が明確化されている。
さらに、51年3月14日統合参謀本部宛の海軍作戦部長の機密覚書には、「日本が合法的に軍隊を作れるようになる前に、憲法の改定が必要になる」とされている。

☆1951年8月8日 統合参謀本部から国防長官へ、極秘覚書、主題:対日平和条約に関する文書 「行政協定により、ダレス訪日団が準備した集団防衛に参加する」。12月18日統合参謀本部から国防長官宛の機密覚書には、「統合参謀本部は、戦時には、極東米軍司令官が日本のすべての軍を指揮する計画である」。52年2月6日文書には、「行政協定交渉で米側提案:軍事的能力を有する他のすべての日本国の組織は、米国政府が指名する最高司令官の統合的指揮の下に置かれる」とされている。
こうして、旧安保条約が成立した。

※安保改定秘密交渉で改憲問題はいかに議論されたか
1958年8月1日 マッカーサーⅡ(ダグラスマッカーサーの甥。)大使から国防長官へ、秘密公電は「適切な措置をとることが、安保条約を改定し、日本の軍隊を海外に送り出すことを可能にする憲法改定の時間をわれわれに与えてくれるだろう」としている。
8月26日 マッカーサーから国務長官への極秘公電には、「岸は自分が考えていることを大統領に知ってもらいたいと言って、友人としての最初のフランクな会話をしめくくった。——私は個人的には、岸が好む線で日本との安保関係を調整することが、われわれ自身の利益になると考える。」とある。
その岸は、同年10月15日に、NBC放送のインタビューで「日本が自由世界の防衛に十分な役割を果たすために、憲法から戦争放棄条項を除去すべき時がきた」と述べている。

☆58年10月4日帝国ホテルで藤山愛一郎とマッカーサーの秘密交渉が開始され、安保改定の原案が固まった。藤山は東京商工会議所会頭で、海軍省の顧問であり、東条内閣の終末を決めた岸とは親友の間柄。

折り合わなかったのは、藤山が安保条約第3,5,8条を「憲法の枠内」「憲法の制約の範囲内で」と提案。アメリカ側は「憲法の規定に従うことを条件として」という対案。結局アメリカ案で決着するが、この間の文書が興味深い。たとえば、59年6月18日マッカーサーからディロン国務長官への機密公電「われわれが提案した(「憲法の規定に従うことを条件として」などの)文言を[日本側が]受け入れることが難しいのは、憲法に自衛力に関するいかなる規定もないことからきている。反対に、憲法第9条では、陸海空軍を、その他の戦力とともに、日本が維持することを絶対的に禁止している。日本国憲法は、固有の自衛権を、したがって自衛隊の必要性を否定していないと解釈されている一方で、そうした能力が「憲法の規定に従うことを条件として」維持され発展させられるということは、法的に不可能である。なぜなら、憲法にはそうした規定がないからである。」

☆マッカーサー大使の情勢観
ダグラス・マッカーサーⅡ(駐日大使)は、沖縄をはじめ、九十九里浜、内灘、妙義山、砂川、北富士、横田、立川、新潟、小牧、伊丹、木更津などの基地反対闘争、原水爆禁止と核持ち込み阻止を求める日本国民の運動に手を焼いたジョン・フォスター・ダレスにより日本に送り込まれた。マッカーサーが57年2月に東京に着任した時、日本はジラード事件や米兵犯罪で米軍に対する怒りが渦巻いていた。
危機感をもったマッカーサーは、4月10日岸信介と長時間にわたり密談し、「このままでは、米軍は日本から追い出される」と長文の秘密公電で日本の情勢を報告している。

報告はもっと多岐にわたるが、上記のことからだけでも、以下の事情がよく分かる。
1947年に施行となった日本国憲法は、その直後の冷戦開始以来、日米両政府から疎まれ改憲が目論まれる事態となっている。そのイニシャチブは常にアメリカ側にあり、改憲論を裏でリードし続けたのがアメリカ政府の意向であった。旧安保条約、改定安保条約が基本的にそのようなものであり、そしてガイドライン、新ガイドライン、さらには新新ガイドラインも同様である。

憲法を侵蝕する安保条約、ないしは安保体制の実質的内容は、アメリカの意向と日本の国民の闘いとの力関係で形づくられてきた。これが、末浪報告の核心だと思う。アメリカの意向とは、アメリカの軍事的世界戦略が日本に要求するところだが、実は軍産複合体の際限の無い戦争政策である。そして、これに対峙するのが、核を拒否し米軍基地のない平和を願う日本国民の戦後の平和運動である。

アメリカにおもねりつつ、9条改憲をねらっていた岸政権を倒した60年安保闘争が、あの時期の改憲を阻止した。そしていま、また安倍政権が、9条改憲をねらっており、その背後にはこれまでのようにアメリカがある。

末浪報告で、戦後の歴史の骨格が見えてきたように思える。詳細は、「機密解禁文書にみる日米同盟-アメリカ国立公文書館からの報告」(末浪靖司・高文研)を参照されたい。
(2016年2月5日)

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