澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

河井夫妻起訴。公判では、その背後にある「真の主犯」の洗い出しを。

(2020年7月8日)
本日(7月8日)、東京地検は河井克行・案里の夫妻を、東京地裁に起訴した。起訴罪名は、公職選挙法違反(運動員買収)である。

この二人に関しての運動員買収の構成要件は、「当選を得、若しくは得しめ(る)目的をもつて、選挙運動者に対し金銭を供与した」(法221条1項1号)ことである。報道では、「2019年7月の参議院選挙に際し、被告人両名は、共謀の上、案里への選挙運動の報酬として5人に170万円を供与したほか、被告人河井克行は103人に対して合計2731万円を供与した」という。まことに大がかりな選挙違反事件。保守の選挙はどこでもこんなものか、あるいは安倍の庇護のもとの選挙だったから、特別にこうだったのか。

この犯罪の法定刑は、原則「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」であるが、案里は同条3項1号の「公職の候補者」に、克行は同項2号の「選挙運動を総括主宰した者」に当たり、「4年以下の懲役若しくは禁又は100万円以下の罰金」となる。

これだけでなく、公職選挙法違反事件について有罪となり罰金以上の刑が確定すれば、原則5年の公民権(選挙権・被選挙権)停止となり、国会法の規定に従って議員としての資格が失われる。河井夫妻はともに失職することになる。

また検察官は、起訴と同時に「百日裁判」を申し立てた。「当選人の公民権(選挙権・被選挙権)に関わる刑事訴訟については、訴訟の判決は事件を受理した日から100日以内にこれをするように努めなければならない」とされる。案里については当選人本人として、克行については選挙運動を取り仕切る「総括主宰者」として連座制の適用者となり、いずれも有罪確定すれば案里の当選が失効することになり、両被告人について百日裁判の適用となる。

この両名への起訴が注目されるのは、河井克行が安倍の側近であり、菅の子飼いでもあるからだ。検察がその存在意義をかけて、官邸との確執を覚悟での立件の行方が注目される。既に、官邸の守護神と異名をとった黒川弘務はない。次期検事総長には、林真琴現東京高検検事長が確定という状況である。この立件が、安倍政権の力量低下を象徴するものであり、決定的な政権崩壊への序章ともなり得る。

いったい、この莫大な買収資金の出所はどこなのか。誰が、どのような意図で、河井夫妻にこの大金を送金したのか。この大規模な選挙犯罪の全体像と、河井夫妻の背後にいてこの構図を描き実行した「真の主犯」を洗い出してもらいたいところである。

自民党本部から送金された1億5000万円は、自民党財政からの支出なのだろうか。それとも、巷間言われているとおり官房機密費からの支出なのだろうか。安倍秘書団はどのような働きをしたのだろうか。起訴はされても、モヤモヤは晴れない。

検察官が公判において官邸の関与にまで切り込んで初めて、失墜していた検察の権威復活と、国民からの信頼の回復が成就することになる。そのことを期待したい。

切られた尻尾のうごめきに目を奪われることなく、トカゲのアタマを押さえねばならない。

(2020年6月28日)
河井克行・案里の運動員買収の実態がほぼ明確になりつつある。検察のリークだけではなく、メディアによる追及もめざましい。何より、世論の糾弾が厳しく、被買収者が否定しきれない空気を作っている。そのことが、「買収ドミノ」「告白ドミノ」といわれる現象を生んでいる。

だが、これまで明らかになりつつあるのは、河井夫妻から地元議員への金の流れだけである。これは、事案の半分でしかない。もっと重要なのは、安倍晋三ないしは自民党中枢から河井夫妻への、買収原資となった金の流れの解明である。いったい誰が、どのような意図をもって、いつ、どのようにこの金額を決め、送金したのか。

この点については、検察のリークも、メディア追及の成果も表れてはいない。世論の糾弾も厳しさも不十分で「告白ドミノ」も存在してはいないのだ。はたして検察は、この点に切り込んでいるのだろうか。メディアはどうだろうか。

トカゲの尻尾切りを、生物学では「自切」というそうだ。非常の時に、トカゲは自ら尻尾を切る。尻尾は容易に切れる構造になっており、切っても出血はせず、やがて再生する。外敵に襲われたとき、自切し尻尾は、しばらく動き回ることで外敵の注意を引きつけ、その隙に本体は逃げることができるのだ、という。これ、アベトカゲの常套手法。本体を守るために、尻尾を切り捨てるのだ。「責任は尻尾限り」と言わんばかりに、である。

今また、安倍晋三は河井という尻尾を切り捨てた。この切り捨てられてうごめく2本の尻尾にばかり注意をとられていると、その隙に本体が逃げおおせてしまうことになりかねない。腐ったアタマをこそ、押さえねばならない。

ところで、たまたま明るみに出た広島の地方保守政界の選挙事情。ドップリ、金が動き金で動く体質をさらけ出した。これは、ひとり広島だけのことなのだろうか、また自民党だけの問題だろうか。広島だけの特殊事情であり、アベ・溝手確執の特殊事情故のこととは思いたいところだが、おそらくはそうではあるまい。

インターネットテレビ局ABEMAに、『ABEMA Prime』という報道番組がある。そこに、かの勇名を馳せた元衆議院議員・豊田真由子が出演して、埼玉4区(朝霞市・志木市・和光市・新座市)でも、事情は大同小異であったと語っている。一昨日(6月26日)のことだ。

埼玉4区は、関東都市圏の一角、けっして保守的風土が強い土地柄というわけではない。ここでの選挙事情は、日本中似たようなものであるのかも知れない。

豊田真由子は、「とある先輩議員から、『ちゃんと地元でお金を配ってるの? 市長さん、県議さん、市議さんにお金を配らなくて、選挙で応援してもらえるわけがないじゃないの』と叱られ、びっくりしたことがある。選挙の時に限らず、この世界は桁が違うお金が動いているんだと、5年の間に感じた」と告白したという。さらにこう言っている。

「私はお金も無かったので、(自民)党からの1000万円と親族からの借金などでやったが、収支報告書を見た他の議員さんに『本当にこれでやってんの? どうやって勝ったの? 市議会議員選挙並みだね』と笑われるくらいだった。ど根性で地べたを這いつくばることで、だんだんとお助けをいただけるようになっていったが、必ずしもそうではない地域があるし、『お金をくれないんだったらあなたを応援しないよ』という方もいる。やっぱりそういう風習のようなものが日本の政治にはあるし、国会議員の選挙というのは、地元の市長さんや県議さん、市議さんに応援してもらわないと、非常に戦いにくい、厳しいということだ。議員さんに世襲の方や大きな企業グループのご子息が多いのも、そうではないとやっていけない世界だからだ」。

わが国の政治風土と、有権者の民度を語る貴重な証言である。そのような、票と議席の集積の頂点に、腐ったアタマが乗っかっている。切られた尻尾のうごめきに幻惑されることなく、この際本体のアタマを押さえなければならない。

30万円の現金授受に添えられた『安倍さんから』の強烈なインパクト

(2020年6月26日)
昨日(6月25日)の中国新聞の報道が、「克行容疑者『安倍さんから』と30万円 広島・府中町議証言」というものだった。これは、強烈なインパクト。

この証言をしたのは、案里容疑者の後援会長を務めたベテラン府中町議・繁政秀子(78)。中国新聞の報道は、以下のとおり詳細でリアリティ十分である。なぜ、ここまで話す気持になったのか、その説明はない。

 繁政町議は中国新聞の取材に、参院選公示前の昨年5月、克行容疑者から白い封筒に入った現金30万円を渡されたと認めた。現金を受け取った理由について、自民党支部の女性部長に就いており「安倍さんの名前を聞き、断れなかった。すごく嫌だったが、聞いたから受けた」と振り返った。

 繁政町議によると、克行容疑者が現金を差し出したのは、案里容疑者が参院選前に広島市中区へ設けた事務所だった。克行容疑者から呼ばれ、2人きりになった時に白封筒を示された。

 気持ちの悪さを感じてすぐに「いただかれません。選挙できんくなる」などと断ったが、「安倍さんから」と言われ、押し問答の末に受け取ったという。現金は今も使っていないとして「返したい。とても反省している」と話した。

 繁政町議は同じ県内の女性議員として案里容疑者とつながりがあり、後援会長を引き受けたという。選挙戦では出陣式や個人演説会でマイクを握り「心を一つにして素晴らしい成績で当選させてほしい」などと支持を呼び掛けていた。

 今のところ、克行らが買収先に、金を渡した相手は94名に及ぶという。その中で、ひとり繁政町議だけに『安倍さんから』と言ったというのでは不自然極まる。その他の議員や首長にも、現金を交付する際に、『安倍さんから』と申し添えたものと一応の推認が可能である。

実際、昨年7月参院選公示前には、首相の秘書団が案里議員の陣営に入り、企業や団体を回っていたと報じられている。そのような事情のもとでの『安倍さんから』には自然なリアリティがある。『安倍さんから』ではなく、「総理からです」「総裁からのお金です」、あるいは「これ、党本部から」だったかも知れない。なにも言わないのが、よほど不自然であろう。いずれ、安倍晋三と結びつけられた現金の授受に意味があったのだ。

2019参院選広島選挙区(定数2)の選挙結果は、以下のとおりである。

1位当選 無所属現 森本真治 (推薦:立民・国民・社民)
得票 329,729(32.3%)

2位当選 自民新  河井案里 (推薦:公明)
得票 295,871(29.0%)

3位落選 自民現  溝手顕正 (推薦:公明)
得票 270,183(26.5%)

2位と3位の自民票の合計は、566,054票(55,5%)であって、自民(+公明)の総得票数は2議席獲得には足りない。河井と溝手とは、票を食い合って、2位争いをしたことになる。その結果、5期目を目指した長老の溝手が新人の案里の後塵を拝して落選した。前回までは無風だった選挙区で、自民の陣営内での票の食い合いでは、豊富な実弾と『安倍さんから』の意味づけが効いたということだ。

『安倍さんから』のインパクトは、日本の民主主義へというだけのものではない。日本の国民や広島県民に対してだけのものでもない。安倍晋三と検察に対して、インパクトが大きいのだ。まずは、政治責任のレベルでの問題がある。実弾の原資が公認料1億5000万円だったことは、今さら覆うべくもない。溝手憎しで溝手を追い落とすために案里を擁立し、選挙資金を投入し、秘書団を派遣し、自らも応援演説に奔走した安倍晋三の責任は重大である。

それだけではない。安倍晋三の法的責任が追及されなければならない。「買収目的交付罪」(公選法221条1項5号)に当たる恐れがある。

公職選挙法は分かりにくい。弁護士の私も、隅々までよく分かっているわけはない。かつて公職選挙法違反被告事件の弁護をかなりの件数受任し、その都度それなりの勉強をして原理原則は心得ているつもりだが、細かいことまでは知らない。

この問題での野党ヒアリングで、郷原元検事が指摘して以来、「買収目的交付罪」が俄然話題となってきた。私は、今回初めてその罪名を知った。

公職選挙法221条は、おなじみの選挙買収の処罰規定である。最高刑は懲役3年。
その1項1号によって、克行の「(案里の)当選を得しめる目的をもつて選挙運動者(94名の地方議員等)に対し金銭を供与することが犯罪となる。これが、典型的な、運動員買収罪である。

さらに、同条同項第5号は、克行の運動員買収罪成立を前提に、「運動員(地方議員等)買収をさせる目的をもつて選挙運動者(克行)に対し金銭交付をした」者を処罰する。これが、「買収目的交付罪」なのだ。買収資金の提供者を処罰して、クリーンな選挙を実現しようという立法趣旨と理解される。

では、いったい誰がこの買収資金の提供者なのだろうか。克行自身が口にした、『安倍さんから』の一言が有力が手掛かりとして浮上した。買収資金提供者は、安倍晋三ではないのか。案里選挙には、自民党内での常識的公認料の10倍の資金が注ぎ込まれた。これは、最高幹部の裁断なくしてはできないこと。安倍か、二階か、あるいは菅か。その3人の他にはあるまい。

しかも、この常識外の多額な選挙資金の提供は、実弾込みの金額として認識されていたのではなかったか。安倍晋三は、この疑惑を晴らさなければならない。そして、ここまで捜査が進展した以上、検察も引き下がれない。政権からの独立に関する国民の信頼がかかっているのだ。「『安倍さんから』と30万円」のインパクトは、とてつもなく大きいのだ。

朝日社説「『森友』再調査 この訴えに応えねば」を評価する。

(2020年6月25日)
本日(6月25日)の朝日社説が、「『森友』再調査 この訴えに応えねば」と訴えている。その姿勢を大いに評価したい。

「森友再調査」の必要は、亡くなられた赤木俊夫さんの手記が遺族によって発表され、この手記が多くの人の魂を揺さぶったことを理由とする。赤木俊夫さんは、自分にとって死ぬほど恥ずべき嫌なことを押し付けられたのだ。これを、自己責任として済ませるわけにはいかない。いったい、誰が、なんのために、どのように、彼に文書の改ざんを押し付けたのか。そして、究極の責任をとるべきは誰なのか。それを、明確にしなければならない。

そのための手段として、ひとつは遺族による民事訴訟が提起されている。また、国会による「予備的調査」も進行している。そして、然るべき第三者機関を設定しての「再調査」要求である。今のままで、よいはずはない。朝日の社説をご紹介して、コメントしてみたい。

 国会閉会から1週間。コロナ禍への対応のみならず、様々な課題が積み残された。なかでも、森友問題の再調査を安倍政権が拒み続けていることは見過ごせない。真実を知りたいという遺族の思いに応えずして、信頼回復も再発防止もない。

※ アベ首相は、数々の疑惑が問題となる度に、「ていねいに説明申し上げる」「説明責任を果たす」と言い続けて、その実何もしてこなかった。国民から、「嘘とゴマカシにまみれた」と指弾される珍しい首相。この度も、ごまかして、逃げた。しっかりと調査し、真実を明らかにしてこその信頼回復である。ことさらにそれをしないのは、真実が暴かれることで、政権に不利益がもたらされると考えているのではないのか。

 国会が閉じる2日前、35万2659筆にのぼる署名が、安倍首相、麻生財務相、衆参両院議長宛てに提出された。財務省の公文書改ざんに加担させられ、自ら命を絶った近畿財務局の赤木俊夫さんの妻雅子さんが、第三者委員会による公正中立な再調査を求めたものだ。

※35万2659筆とは、たいへんな署名の数である。これだけの人が、公正な第三者委員会を設置して、赤木さんの手記で明らかになった事実を確認せよと言っているのだ。前回の、仲間内による調査ではとうてい信頼に堪えない。公正中立な、信頼できる第三者による再調査が求められているのだ。

 雅子さんが3月、国と改ざん当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏に損害賠償を求める訴えを起こしても、首相や麻生氏は再調査に応じなかった。そこで、雅子さんはインターネットサイトで署名を呼びかけた。「このままでは夫の死が無駄になってしまう」という訴えに、共感の輪が広がったのだろう。

※ 世論はいま、赤木さんのご遺族の訴えに共感の輪を広げている。ということは、アベや麻生を信頼できないとしているのだ。遺された赤木さんの手記は、生前の赤木さんが直接体験したことを記してはいるが、改ざんの方針決定と指示は、赤木さんの知らないところで行われている。赤木さんには、推認された事実ということになる。赤木さんの手記に表れた直接体験事実の真実性を検証し、非体験の推認事実に関しては厳格に関係者から事情を聴取する調査が必要なのだ。国と佐川に対する民事損害賠償請求の訴訟は、判決に至るまで長い期間を要する。早期の調査が必要なのだ。

 それでもなお、首相と麻生氏の姿勢は変わらない。なぜ再調査は不要と言えるのか。
 麻生氏は記者会見でこう述べた。「財務省として調査を徹底してやり、関与した職員は厳正に処分した」。しかし、その調査は身内によるもので、佐川氏の具体的な指示内容は明らかになっていない。そもそも、国有地がなぜ8億円も値引きされたのか、首相の妻・昭恵氏が学園の名誉校長だったことが影響してはいないのか、問題の核心は一向に解明されていない。

※麻生の調査拒否が理由に挙げる「財務省として調査を徹底」が嘘なのだ。2018(平成30)年6月4日付の財務省報告書は、明らかに政治家の責任追及に至らぬよう配慮されたものなのだ。51頁のこの報告書で、誰もが真っ先に注目するのは、改ざんの目的である。34ページにこうある。「応接録の廃棄や決裁文書の改ざんは、国会審議において森友学園案件が大きく取りあげられる中で、さらなる質問につながり得る材料を極力少なくすることが、主たる目的であったと認められる」。政治家からの指示も、政治家への忖度も出てこない。この点を問題にした調査ではなく、この点の疑惑を糊塗するための調査と疑われて然るべきなのだ。

 首相は国会でこう述べた。「最強の第三者機関と言われる検察が捜査をした結果がすでに出ている」。これも筋違いというほかない。刑事責任を追及する捜査と、信頼回復や再発防止につなげるための事実の検証を同列にはできない。

※さて、検察は「最強の第三者機関」であったか。「捜査した結果が出ている」か。はなはだ疑問なのだ。検察は政権から独立した検察ではなく、「アベ政権の守護神を抱えた検察」でしかなかった。「最強のアベ政権守護機関」ではなかったか。その検察も、文書の改ざんに関しては、「嫌疑なしの不起訴」にしたのではない。「嫌疑不十分の起訴猶予」としたのだ。けっして、「結果がすでに出ている」わけではない。

 「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」という雅子さんのコメントを重く受け止め、政府は再調査に応じるべきだ。

※ これこそ名言である。アベも麻生も、「被疑者」である。当然に再調査はしたくない立場。そんな二人の言い訳を聞いている暇はない。したくなくても、させなくてはならないのだ。

 国会では新たな動きがあった。衆院財務金融委員会が野党の求めに応じ、公文書改ざんの経緯をつまびらかにするよう、衆院調査局長に調査を命じたのだ。国会のチェック機能を強化するため、97年につくられた「予備的調査」という制度で、委員会審議に役立てるための下調べという位置づけだ。少数会派に門戸を開くため、議員40人以上の要請で実施される。
 関連資料の提出など、政府に協力を求めることはできるが、強制力はない。政府は自ら第三者委を設けないのなら、国会によるこの調査に全面的に協力すべきだ。国会もまた、行政監視の本分を果たすために、全力で真相に迫らなければならない。

※ 「民事訴訟」、「予備的調査」、そして然るべき第三者機関を設定しての「再調査」。場合によっては、再告発もあるだろう。あらゆる手段を考えねばならないが、全ては世論の支持にかかっている。

河井夫妻逮捕、2本の尻尾切りで終わらせてはならない。

(2020年6月18日)
梅雨の晴れ間が今日で4日目。毎日気になる不忍池の模様。昨日には見あたらなかった蓮の華が、今朝は少なくとも3輪。6月18日を「開華記念日」と名付けよう。

アメリカでは黒人差別抗議デモが高揚し、朝鮮半島も中印国境も穏やかではない。北京でのコロナ蔓延の兆しも報道されている。国内も多事山積で騒然としてるが、この蓮池と周りの紫陽花ばかりは平和そのものである。

さて、昨日(6月17日)201通常国会が閉会となった。今朝の朝日の川柳欄に、「長居は無用と火事場泥棒(東京都 三井正夫)」との投句がある。あるいは、「はやばやと現場立ち去る火事場泥」と詠むべきか。火事場泥になぞらえられた一国の首相は、国会という現場から、早々と逃げたのだ。しかも、「検察庁法改正」という財物を盗み損ねた。会期最終日における内閣委員会での継続審議の提案はなく、結局審議未了で廃案となった。

検察幹部の人事を掌握して、検察庁に官邸支配の手掛かりを得ようとしたアベ晋三の目論見は裏目に出た。却って、世論は検察の官邸からの独立に大きな関心をもつこととなり、検察もこの世論の動向を意識して、官邸からの独立を見せなければならない立場となっている。

それあらぬか、本日(6月18日)の朝日のトップ記事が、「河井前法相・案里氏 逮捕へ」である。毎日もトップの扱いだが、「河井夫妻 きょう強制捜査」と、少し温和しい。東京新聞は社会面だが「河井前法相夫妻、きょう逮捕 検察当局、買収容疑」と、共同配信記事。いずれも、検察からのリークなければ書けない内容で、各紙とも容疑の内容が詳細である。このリーク記事のとおりに、本日河井夫妻の逮捕状請求となり、午後執行された。こちらも、「開華記念日」にふさわしい出来事。

しかし、課題は河井夫妻の逮捕・立件ではなく、その背後の「官邸の犯罪」にどこまで切り込めるかということにあり、検察にそれを暴く意気込みがあるのかが問われている。この点の示唆に富むのが、文春オンラインの「まもなく逮捕へ…河井克行・案里夫妻の“買収問題” 東京地検特捜部は全貌を解明できるか」という記事。概要を紹介したい。

 稲田伸夫検事総長の肝煎りで始まった捜査は、黒川弘務の辞任を受け新たに東京高検検事長に就任した林眞琴が、東京地検管轄の事件として本格捜査着手の指揮を執っている。

 捜査の焦点は言うまでもなく、昨年7月21日投開票の参院選に向け、自民党が河井夫妻陣営に振り込んだ1億5000万円の“公認料”である。同じ選挙区の溝手顕正に対する公認料の10倍という法外な金額。

 広島県選管が参院選挙費用として認めている上限は4726万9500円だから、そもそも“公認料”そのものが上限をはるかに超えていることになり、それ自体の問題もある。一方、河井陣営が選管に提出した収支報告書によれば、参院選の選挙運動費用は2405万円、チラシの作成費用などを含めた支出額を2688万9896円と計上している。

 克行は案里が参院選へ立候補を表明した昨年3月以降、95人の広島県議や後援会関係者に2400万円の現金を渡して票の取りまとめを依頼し、当の案里も克行の指示で5人に150万円を配ったとされる。選挙買収に使われたこの2550万円プラスアルファの2600万円の原資が、1億5000万円の法外な“公認料”だと見ていい。それでもまだ、1億円近くの行方が謎である。

 参院自民党の広島選挙区は溝手の出馬が決まっており、そこへ2人目の候補として河井案里を割り込ませた。そのための“公認料”である。「ポイントは安倍首相と菅官房長官のどちらが案里を担ぎ出したか。安倍首相側は菅官房長官が子飼いの河井の妻を擁立したんだといい、逆に菅官房長官側は溝手嫌いの安倍首相が判断したんだと互いをけん制している」と自民党関係者は言う。
 事件はもはや修復不可能といわれる官邸内の首相対官房長官の確執に飛び火しそうな雲行きだ。仮に黒川が東京高検検事長としてそのまま居座っていればどうなっていたか、とも囁かれる注目の捜査。検察の威信をかけた東京地検特捜部はどこまで全貌を明らかにできるか。

また、従来から「捜査で押収した携帯は『宝の山』。1億5000万円の使途、安倍首相秘書らの選挙中の動向が見えつつある」とも報道されてきた。「安倍首相秘書らの選挙中の動向」こそが、まさしく注目される捜査である。検察が忖度も遠慮もなく、政権に切り込むことができれば、その日を「蓮華満開記念日」としよう。

なお、本日(6月18日)都知事選の告示。なんとも論戦低調で盛り上がりに欠ける選挙戦の始まり。それにつけても、赤旗の選挙記事を見るだに、その大仰な支持候補者紹介にこちらが気恥ずかしくなる。売らんかなの商品の宣伝には誇大誇張が付きものではあるが、過剰に過ぎては白けて逆効果だろう。消費者としての商品の選択にも、選挙における候補者の選択にも、誇大広告に惑わされることのないよう、よくよくお気を付けを。

通常国会閉会後には、速やかな河井克行・案里両議員の徹底捜査と起訴を。

(2020年6月12日)
今国会(第201通常国会)の予定された会期終了が近づいている。野党は攻勢的に「この非常時に国会を閉じるな」とスローガンを掲げているが、与党側は徹底した逃げの姿勢である。国会での追及に自信を喪失した政権の末期症状。今のままでは17日(水)に閉会となる。

コロナと検察庁法に揺れた今国会、検察庁法改正の頓挫はアベ政権の凋落を象徴する出来事だった。コロナ禍のリアルなデモが成立しにくい不利な状況が、ツィッター・デモという新たな抗議の手法を生みだし、専門家を勇気づけた。

2度に渡る検察OBの連名の意見書の影響力も大きかった。このような、幾重もの政権包囲網の中で黒川検事長賭けマージャン疑惑発覚となって、法案は潰えた。まだ廃案確定とはなっていないが、政権には大きな痛手である。もしかしたら、致命傷になるかもかも知れない。というのは、政権の守護神喪失は今後への影響が大きいと考えられるからだ。当面、その影響は河井克行・案里両議員の刑事訴追の在り方に表れる。

国会会期中の議員に対する強制捜査はやりにくい。6月17日閉会となれば、その直後から昨年参院選での河合案里陣営における選挙違反捜査が本格化する。河井克行・案里両議員の不逮捕特権はなくなるから、その逮捕もあり得ないではない。

メディアは、「検察当局が公選法違反(買収)の疑いで河井克行氏を立件する方針を固めた」と報じている。少なくとも2000万円といわれる現金ばらまきの古典的「買収」の容疑である。これが、この間まで、法務大臣だった人物の容疑なのだ。

地方議員など多くの人が、被買収側として任意の調べを受けており、捜査進展の模様もリークされている。今のところ1億5000万円とされているこの選挙資金の出所は自民党本部であって、この異例の巨額支出に総裁安倍晋三が関わっていないはずはない。

参院広島選挙区で6選を目指した自民現職の溝手顕正は反安倍の急先鋒としてアベ晋三から嫌われ、そのために「安倍晋三が、自分に近い河井克行の妻案里擁立を画策した」とされる。だから金をばらまき、選挙事務の運営には、安倍事務所の秘書4人が投入された。アベ・菅らの党幹部が何度も広島へ応援に入ってもいる。河井夫妻起訴は、アベに対する最大限のダメージとならざるを得ない。

選挙では、案里が当選し溝手は落選という、アベ晋三の思惑通りの結果となったが、派手な金権選挙の付けがまわってきた。捜査と起訴がどこまで及ぶのか。安倍晋三としては、ここでの「官邸の守護神」の働きを期待していたはずだが、思惑がはずれて、今や守護神はない。世論と検察OBに背中を押されて、稲田検事総長は政権にとっての貧乏神となる肚を固めているのやも知れない。

問題は、単にアベ政権にとっての検察の在り方ではない。行政権力から独立して、権力に怯むことなく公正かつ厳正にその任務を遂行する検察本来の在り方が問われている。

「黒川検事長定年延長閣議決定を可能とした検察庁法解釈変更は、どのようになされたのか」 ― これを問い質す、情報公開訴訟を提起。

(2020年6月1日)
本日(6月1日)、上脇博之さん(神戸学院大学法学部教授・憲法学)が原告となって、注目すべき情報公開請求訴訟(開示・不開示決定取消請求訴訟)を大阪地裁に提訴した。被告行政庁は、法務省法務大臣、人事院事務総局給与局長、内閣法制局長官である。

情報公開請求者として原告適格をもつのが上脇さんお一人、阪口徳雄君ら大阪中心の情報公開訴訟ベテラン弁護士が中心の弁護団だが、何人か東京からの参加弁護士もあり、私もその一人となった。

この提訴を「注目すべき情報公開訴訟」というのは、上脇さんが開示を求めた文書が、いずれも黒川弘務元東京高検検事長の本年1月31日定年延長閣議に至る判断過程を明確にするためのものだからである。

このところの議論で知られところとなったのは、かつては一般公務員の定年制に関する規定は、検察官には適用ないものというのが関係各省庁での統一解釈であった。それが、どこかの段階で解釈変更となって、1月31日黒川検事長定年延長閣議決定となった。しかし、いつ、どのような議論を経て、誰がそのような判断をしたのかは定かでない。

上脇さんは、こう考えた。「閣議決定のための法務大臣請議(閣議を求める手続き)以前に、関係省庁で検察官の定年延長に関する解釈変更摺り合わせが行われたであろう。その摺り合わせの過程の文書の開示を得れば、どこの段階で、『検察官にも一般公務員と同じく定年延長の規定適用が可能』という解釈変更の決断に至ったかわかるはず」。その関連文書の開示を求めることで、解釈変更の過程と理由を明確にすることができる。仮にそのような文書が不存在なら、それ自体で閣議決定の違法を明らかにすることができる。また、閣議決定前に不存在なら、そのような文書は、閣議決定後には存在するはずではないか。

こうして、上脇さんは、本件解釈変更に関係する法務省・人事院・内閣法制局に、閣議決定以前の関係全文書、ならびに閣議決定以後の関係全文書を開示するよう情報公開請求をした。これに対する各行政庁の決定では、貧弱ながらも閣議決定以前の関係文書(各省庁各1点)は出てきた。しかし、これは内容・体裁から、本当に当時作成したものとは信じがたい。そして、閣議決定後の関係文書は、いずれも不存在として不開示決定となった。

そのため、この訴訟の事件名は、「開示及び不開示決定処分取消請求事件」とされている。閣議決定前に作成されたものとして開示された3件の文書についての開示決定と、閣議決定後には作成されていないとして不開示とされた求める3件の文書についての不開示決定を、いずれも違法として合計6件の処分取り消しを求める訴えである。請求が認容されて、取消の判決が確定すれば、各行政庁は改めて真正の開示決定をしなければならない。

分かり易く言えば、求めるものとは違う文書を開示した3件の処分は違法だから取り消せ、あるはず文書を不存在として不開示とした3件の処分も違法だから取り消せ、隠さずにもっとちゃんとした文書を出せ、と求めているのだ。

この情報公開請求は、いずれについても本年1月31日黒川定年延長閣議決定に至る判断過程を国民が知るために不可欠なものである。安倍政権発足以来、森友事件、加計学園事件、桜を見る会事件等々、政権の疑惑として報じられる案件において、当然なされるべき公文書の作成、管理及び情報公開が極めて杜撰である。本件黒川元検事長の定年延長問題もその例に漏れず閣議決定に至る経過が不透明極まる。

閣議決定前に作成された文書として、法務省、人事院、内閣法制局から上脇さんに開示された各行政文書については、真実、閣議決定前に作成された文書であることを示す内容が記載されていない。各省庁の協議の結論だけが一応記載されてはいるが、作成年月日、作成者、その結論に至るまでの協議内容、経過が全く記載されていない。公文書管理法、公文書ガイドライン、各省庁の公文書管理規則などに従えば当然に記載されているはずの、誰と誰が協議して、いつそのような結論に至ったかの「意思形成過程」を明確にする内容が開示されていないのだ。

公開された文書は、無責任に、誰でも、何時でも作成できるメモ的文書あるいは、「作文」に過ぎないと言って過言でない。閣議決定後の文書は不存在という決定であったが、開示された文書は実は閣議後に作成された文書とも思われる。

本件裁判は以上の疑惑を明らかにして、黒川元検事長の定年延長閣議決定過程における、法務省、人事院、内閣法制局の行政文書の作成や情報公開の在り方を問う裁判である。

平然とウソ ー これがアベ流印象操作

一昨日(5月25日)の緊急宣言解除首相記者会見。アベ晋三の自己弁護・自己宣伝に終始した白々しさだけが印象に残る不快なものだった。

その中での、記者との以下の遣り取りに注目したい。具体的な回答を求める記者の質問に、(1) まともに答えない、(2) 抽象的な言葉の羅列ではぐらかす、というアベ回答の常套手段がよく現れている。なお、引用は官邸のホームページから。

(記者)東京新聞、中日新聞の後藤です。
 政府の緊急事態宣言が出されているさなかの賭けマージャンで辞職した黒川前東京高検検事長の問題についてお伺いします。
 捜査機関や政府に対する信頼を大きく損なう重大な事案であるにもかかわらず、国民から処分が甘いという批判が相次いでおります。総理は先ほど、批判は真摯に受け止めるという発言がありましたが、そうした厳しい国民感情を踏まえても、今回の訓告の処分が適当で、満額で6,000万円とも言われる退職金がそのまま支払われることに何ら問題はないと考えているのでしょうか。
 また、法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していましたが、官邸が懲戒にはしないと結論づけたというような報道もありますが、処分の前にどのような協議が官邸となされていたのか、その点についても詳しくお聞かせください。

記者の質問は次の2点である。
(1) 6,000万円もの退職金を(満額)支払うことに問題はないと考えているのか。
(2) 処分の前に、(官邸と法務省との間で)どのような協議がなされていたのか。

敷衍するなら、(1)は、「これだけの問題を起こした黒川に、6,000万円もの退職金を(満額)支払う」ことについて、「アベさんよ、国民感情に鑑みて、あなたはそれでよいと考えているのか」という糾問である。回答は、「イエス」か「ノー」。あるいは「当然」、「やむを得ない」などを想定している。

(2) は、黒川処分の経過について、官邸の言ってることとは食い違う報道もあるから確認したい。官邸と法務省との間で、処分の前にどのような協議がなされたのか、詳しく聞かせていただきたい、というもの。こちらは、いわゆる「開かれた質問」。具体的な経緯についての詳細な説明が求められている。

これに対するアベ答弁はどうであったか。まず、端的に答えねばならない(1)をスルーして、(2)について答えようと、何かをしゃべっている。以下のとおり。

(安倍総理)
 黒川氏の処分については、先週21日に法務省から検事総長に対し、調査結果に基づき訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長においても訓告が相当であると判断をして、処分したものと承知をしています。
 私自身は、森法務大臣から、事実関係の調査結果を踏まえて処分を行ったこと、その上で、黒川氏本人より辞意の表明があったので、これを認めることとしたいとの報告がありまして、法務省の対応を了承したものであります。もちろん、対応を了承しておりますので、この処分について総理大臣として、行政府の長として、責任を持っているところでございます。
 国民の御批判に対しては、これも真摯に受け止めなければならないと、この上は、法務省、検察庁において信頼を回復するために全力を尽くさなければならないと、私も全力を尽くしていきたいと思っています。

 アベ晋三、「処分の前に、(官邸と法務省との間で)どのような協議がなされていたのか」と聞かれて、「処分の前に協議などなかった」とは言わない。言えないのだ。記者だけでなく、国民の多くが、「官邸と法務省との間で摺り合わせがあり、協議が調ったから、《検事総長において訓告とし、内閣に報告をした》と形を整えた、と考えている。記者の質問は、そんな分かりきったことを聞いていない。聞きたいのは形が整えられる以前の経過だ。それが、「処分の前にどのような協議がなされていたのか詳しく聞きたい」という問になっている。

これに対してみごとなまでの「ゼロ回答」である。国民を舐めているとしか、言いようがない。確かに、何かをしゃべってはいるのだが、聞かれたことにはけっして答えない。全ては、摺り合わせができた後の話ばかり。これは、無能の極みか、高等戦術なのだろうか。いずれにしても、こんなことを聞かされれば、大いに苛立つしかない。

「再質問禁止ルール」での、形ばかりの記者会見だったが、質問をスルーされて、さすがに記者が食い下がった。

(記者)退職金については、そのまま支払われることは問題ないでしょうか。

(安倍総理)退職金については、訓告処分に従って減額されているというふうに承知をしています。

これは、「高額な退職金が減額なくそのまま支払われることを、国民感情に照らして問題ないと考えているのか」という、重ねての質問。これに対する、アベの「訓告処分に従って減額されているというふうに承知をしています」は、噛み合わない変な答弁。噛み合わせようという意識があれば、「訓告処分に従って○○○万円も減額されていますから、国民も納得してくださるものと考えています」としなければならない。

ところが、アベはそうは言えないのだ。訓告は国家公務員法にもとづく不利益処分ではなく、《公務員の非違に対する上司の指導監督措置》に過ぎない。法的根拠を要せず、法的効果ももたないとされる。だから訓告には、行政手続法に定める事前の聴聞手続きも不要で、法的な救済手続も用意されていない。そもそも不利益性がないとされているからだ。

従って、「訓告処分に従って退職金減額」はありえない。それでも、あるかのごとく平然と言ってのけるのが、アベの常套手法。印象操作を得意とするアベのアベたる所以なのだ。

この点について、昨日(5月26日)の衆院法務委員会で、森雅子法相は、「自己都合退職」となるため定年退職の場合より約800万円減額されていると説明した。何のことはない、「自己都合の退職だから」「定年まで勤務して退職する場合に比較すれば、」「約800万円減額」になる、というのだ。訓告だから減額ではない。

アベ晋三が言った「訓告処分に従って退職金減額」は嘘なのだ。「減額」という言葉が意図的に使われている。訓告を受けたことは、退職金の額にまったく影響はしていない。だから訓告「処分」という言葉の使い方もおかしい。本来から言えば、黒川は2月7日定年退職だったはず、その時点での退職金から、金額を具体的に示せないが、かなりの金額を「増額されている」はずなのだ。

メディアは、慎重に「首相と法相の発言が食い違いを見せた」というが、「食い違い」ではない。法相の答弁のとおり、「(訓告の場合は)処分自体で支給額は影響を受けない」のだから、アベの印象操作は、明らかな嘘である。

なお、常習賭博の黒川を懲戒処分としなかったことは、どんな事前の協議があったにせよ、あるいはなかったにせよ、懲戒処分権者である内閣の責任である。これは免れようがない。にもかかわらず、その内閣の長の地位にあって、明らかな嘘をつき、軽い訓告で済ませたことを法務大臣・検事総長の責任と転嫁する印象操作を重ねるみっともない人物。そんな人物を、われわれは長年にわたって行政のトップに据えてきたということなのだ。
(2020年5月27日)

小池百合子さん、あなたは知事にふさわしくない。

お騒がせ検察官・黒川弘務の趣味は、「犬の散歩と麻雀とカジノ」だそうだ。「犬の散歩」は結構だが、「麻雀とカジノ」はいただけない。この人、休日にはマカオや韓国にカジノに出掛けることもあるとか。また、朝日新聞広報部の発表では、同社の社員が、緊急事態宣言が出た後に、黒川と計4回、金銭を賭けてマージャンをしていたことを認めたという。

朝日の社員とだけ、賭けマージャンをしていたわけでもあるまい。実はこの人の賭マージャンには常習性があるのではないか。また、この人、ギャンブル依存症というべきではないのか。

賭マージャンが、賭博にあたる犯罪行為であることは言うまでもない。現行刑法上単純賭博罪(185条)なら、法定刑は最高50万円の罰金だが、常習賭博罪(186条1項)となると最高刑は3年の懲役となる。「常習とは、犯行を反復する習癖の発現としての犯罪」を言い、「賭博の常習者とは、反復して賭博行為をする習癖のある者」なのだから、この人は、まさしく常習者であり、今回も常習として賭博行為をした者に当たるのではないか。さらには捜査の進展次第で、収賄罪にも該当しうる。到底訓告で済まされることではない。

今や地に落ちた検察の信頼を回復する方策としては、東京地検が被疑者黒川を、朝日・産経の記者とともに厳正に捜査し処罰することを措いてない。

また、「余人をもって換えがたい」として、黒川の違法な定年延長を強行したのは内閣である。内閣は、その責任をとらねばならない。口先だけの謝罪は、聞きたくもない。アベさん、もう、いいかげんにおやめなさい。

東京高検検事長という立場にある者にすらとりついて、職を棒に振らせるのがギャンブル依存症の恐ろしさである。そのことを印象強く教えられたその日に、東京都議会では、「カジノ反対 不採択」「都議会委陳情 都ファ自公など」という出来事。これはいったいどうしたことだ。本日(5月22日)の赤旗がこう伝えている。

 東京都議会経済・港湾委員会は21日、カジノ誘致に向けた取り組みを行わないよう求める陳情を、都民ファーストの会、公明党、自民党などの反対多数で不採択にしました。陳情は「カジノいらない!東京連絡会」が提出していたもの。

 共産党の、あぜ上三和子都議は、党都議団の請求で開示された文書で都が2018年度、委託調査会社に「IR(カジノを中核とする統合型リゾート)が2020大会(東京五輪)後の起爆剤の可能性」を持つ趣旨の記載を求めていたことが判明したと指摘。「IRをつくるかどうかで一番大事な都民の世論を調査したのか」とただすと、都港湾局の若林憲担当部長は「調査していない」と答えました。

 あぜ上氏は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大でカジノ業界が軒並み業績悪化し、最大手のカジノ運営会社も日本でのライセンス取得を断念したと強調。マスコミの世論調査でも6〜7割がカジノ誘致に反対していることを示し、人の不幸を土台に収益を上げるカジノ誘致はやめるよう求めました。

 国内の誘致先として、最有力候補と目されながら、まだ公式には名乗りを上げていない東京都。実はひそかにカジノ誘致への動きを進めてきているというのが、都民の常識となっている。昨日の委員会審議でもその一端が現れている。「都知事選のあとに、カジノ誘致を表明するのではないか」との評判のとおりなのだ。小池百合子知事だけでなく、「都民ファーストの会、公明党、自民党など」が誘致賛成派なのだ。

黒川のような依存症患者や犯罪者を大量に作らなければカジノは産業として成り立たない。もともと、バクチ場とは、不幸な人を生み出し続けるビジネスモデルである。きっぱりと、「都民の幸福のためには、カジノは不要」と言いきる都知事でなくてはならない。

小池百合子さん、おなたじゃだめなんだ。
(2020年5月22日)

官邸の守護神(黒川弘務検事長)失脚の日に、安倍晋三の刑事告発。

ときに、思いがけないことが起こる。本日(5月21日)、東京高検の黒川弘務検事長が辞表を提出した。時の人の、突然の表舞台からの退場である。

はからずも、この日に全国の弁護士・法学者659名が、「桜を見る会・前夜祭」問題について、東京地方検察庁に対して、安倍晋三らを刑事告発した。なんという絶妙のタイミング。

公然と言われてきたとおり、黒川はアベの守護神だった。本来政権と緊張関係を保たねばならない検察のトップが、官邸とはズブズブの間柄。そのことが、こんなにも世論の叱責を受けたのだ。その背景には、アベ内閣の不祥事の数々が刑事訴追されて然るべきなのに、甘い検察によってことごとく見逃されてきたという、国民の批判の高まりがある。

検察庁法改正案は、官邸の検察人事介入法案とも、検察人事コントロール法案とも、また端的に「黒川法案」とも言われてきた。その法案の審議が頓挫しても、なお居座るかに見えた官邸の守護神。それがかくもあっけなく、突然の辞表提出となった。守護神も辞表を出せばただの人。既にその通力は失われた。

官邸が守護神の加護を失ったその日に、安倍晋三に対する法律家659人の刑事告発である。見えざる神の御業というほかはない。守護神の庇護を失った安倍晋三、法の支配に服さなければならない。あらためて、検察の権威と信頼が試されている。

この告発、被告発人は、安倍晋三ら3名、罪名は「政治資金規正法違反」及び「公職選挙法違反」である。以下に、「桜を見る会を追及する法律家の会」ならびに告発人659名の声明と、告発状を掲載する。

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「桜を見る会・前夜祭」刑事告発にあたっての声明

本日、全国の弁護士・法学者659名が、「桜を見る会・前夜祭」問題について、東京地方検察庁に対して、安倍晋三首相ら3名を被告発人とする刑事告発を行いました。
総理主催の「桜を見る会」は、安倍政権のもとで参加者・経費が急増しただけでなく、多数の安倍晋三後援会員が招待され、招待者の中に消費者被害の加害者や反社会的勢力の人物もいるなど、安倍首相による公的行事・税金の私物化が問題とされ、すでに背任罪での告発もなされています。
また、その前日に安倍晋三後援会が主催して高級ホテルにおいて800人規模で開催された「前夜祭」についても、その収支報告を行わず、かつ、ホテルの正規の費用を大幅に下回る会費で実施されていたことが、政治資金規正法・公職選挙法に違反するとの指摘がなされていました。
安倍首相は当事者として国民に対して真摯かつ誠実に説明する義務があったにもかかわらず、国会で問題となるとすぐに「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄し、招待者についても、「個人情報」を口実に国会での説明を拒否し続けてきました。また、「前夜祭」の収支についても、明細書・請求書等の資料の開示を拒否し、主催は個々の後援会員なので後援会は収支報告をする必要がないなど、不自然かつ不合理な弁明を繰り返し、国民の疑問に誠実に答える姿勢がまったくみられません。
このような安倍首相の対応は、議会制民主主義の軽視にとどまらず、法の支配、法治主義をも踏みにじるものであり、到底容認できるものではありません。
「桜を見る会・前夜祭」問題は、日本の政治の最高責任者である安倍首相自身(安倍後援会と内閣府・内閣官房)に直接かかわるものであり、首相としての政治的・道義的な責任に止まらず、刑事責任を含む法的責任が問われる重大事件であり、その真相を明らかにし、責任を追及することが強く求められています。
安倍首相自身が説明責任を果さず、与党(自民党・公明党)の数の力によって国会での真相究明・責任追及が阻まれるという憂うべき状況を打開し、議会制民主主義、法の支配・法治主義を回復するためにも、検察による事実の究明と事件の徹底的な捜査を行う必要があります。
この思いで、本日、刑事告発を行いました。
私たちは、東京地方検察庁に対して、本件の重大性を真摯に受け止め、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現(刑事訴訟法1条)するため、政権に忖度することなく、厳正公平・不偏不党の立場を貫き、強制捜査も含む徹底した捜査を行い、真相の究明と刑事責任の追及を迅速に行うことを強く求めます。

2020年5月21日
「桜を見る会」を追及する法律家の会
告発人659名一同

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告 発 状

東京地方検察庁検事正曽木徹也殿

告発人住所
氏名 印

被告発人
住所 省略
(東京都千代田区永田町2丁目3番1号首相官邸)
氏名 安倍晋三
職業 衆議院議員・内閣総理大臣
生年月日 1954(昭和29)年11月12日

被告発人
住所 省略
氏名 配川博之
職業 安倍晋三後援会代表者

被告発人
住所 省略
氏名 阿立豊彦
職業 安倍晋三後援会会計責任者

第1 告発の趣旨
1 被告発人安倍晋三、被告発人配川博之及び被告発人阿立豊彦の後記第2-1の所為は、刑法60条、政治資金規正法第25条1項2号、同法12条1項1号ホ及び同2号に該当する。

2 被告発人安倍晋三及び被告発人配川博之の後記第2-2の所為は、刑法60条、公職選挙法249条の5第1項及び同法199条の5第1項に該当する。

よって、上記の被告発人らにつき、厳重な処罰を求め、告発する。

第2 告発の事実
被告発人安倍晋三(以下、「被告発人安倍」という)は、2017(平成29)年10月22日施行の第48回衆議院議員選挙に際して山口県第4区から立候補し当選した衆議院議員、被告発人配川博之(以下、「被告発人配川」という)は、安倍晋三後援会(以下、「後援会」という)の代表者、被告発人阿立豊彦(以下、「被告発人阿立」という)は、後援会の会計責任者であった者であるが、

1 被告発人安倍、被告発人配川及び被告発人阿立は、共謀の上、政治資金規正法第12条1項により、山口県選挙管理委員会を経由して総務大臣に提出すべき後援会の収支報告書につき、2019(令和元)年5月下旬頃、山口県下関市東大和町1丁目8番16号所在の安倍晋三後援会事務所において、真実は、2018(平成30)年4月20日、ホテルニューオータニ東京において開催された宴会である「安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭」(以下、「前夜祭」又は「本件宴会」という)の参加費として、参加者1人あたり5000円の参加費に参加者数約800名を乗じた推計約400万円の収入があり、かつ、上記前夜祭の前後に、ホテルニューオータニ東京に対し、少なくとも上記推計約400万円の本件宴会代金を支出したにもかかわらず、後援会の2018(平成30)年分の収支報告書に、上記前夜祭に関する収入及び支出を記載せず、これを2019(令和元)年5月27日、山口県選挙管理委員会に提出し、

2 被告発人安倍及び被告発人配川は、共謀の上、法定の除外事由がないのに、2018(平成30)年4月20日、ホテルニューオータニ東京において開催された前夜祭において、後援会を介し、被告発人安倍の選挙区内にある後援会員約800名に対し、飲食費の1人あたり単価が少なくとも1万1000円程度であるところ、1人あたり5000円の参加費のみを徴収し、もって1人あたり少なくとも6000円相当の酒食を無償で提供して寄附をし
たものである。

以下(第3~6)は表題のみ
第3 告発に至る経緯
第4 告発事実1(政治資金規正法違反25条1項2号違反)
第5 告発事実2(公職選挙法249条の5第1項違反)
第6 被告発人安倍に共謀共同正犯が成立することについて
第7 最後に
以上のとおり、被告発人らに上記の各犯罪が成立することは明白である。
前夜祭に関する収支の不記載は、政治資金の収支を公開することによって政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする政治資金規正法の趣旨(同法1条)に真っ向から反するものであり、極めて悪質である。
また、後援会による違法な寄附は、選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公正かつ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする公職選挙法の趣旨(同法1条)に真っ向から反するものであり、極めて悪質である。
しかも、前夜祭は1回だけの行事ではなく、後援会の恒例行事として、2013(平成25)年から2018(平成30)年まで6年連続(本告発の対象としていない2019(平成31)年4月を含めると7年連続)で行われている。従って、収支報告書に記載されなかった収入、支出及び後援会が違法に行った寄付の合計額は巨額に上り、この意味でも悪質性は高い。
内閣総理大臣たる被告発人安倍がこのような犯罪を犯していることは、民主政治の根幹を揺るがす事態であり、これを放置することは絶対に許されないことである。
本告発にかかる事実につき、捜査当局が公正かつ厳正な捜査を行い、事案の真相を解明し、被告発人らが厳重に処罰されることを強く希望する。

(2020年5月21日)

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