澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「落とし前をつけます」と宣告して始められた、議員に対するスラップ訴訟

遅ればせながら、「高須クリニック」(高須克弥院長)の大西健介衆院議員に対する名誉毀損訴訟の提訴について取り上げたい。昨日(4月23日)原告高須側に敗訴の判決言い渡しがあったとの報道だが、この判決の内容は、あまりに当然の「陳腐」なものとして論評に値しない。注目しなければならないのは「判決」ではなく、もっぱら「提訴」の事実である。もちろん、訴権濫用の提訴という観点からの注目である。なぜ、こんな事案で提訴までなされたのか。

信頼できるメディアが以下のとおり報道している。
「美容外科『高須クリニック』を運営する愛知県西尾市の医療法人が、大西健介衆院議員(希望)の発言が名誉を毀損したとして、大西氏と当時所属していた民進党などに計1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、請求を棄却した。
 判決によると、大西氏は昨年5月17日の衆院厚生労働委員会で、美容外科の広告規制問題に触れ「『イエスまるまる』と連呼するだけのCMなど非常に陳腐なものが多い」と発言した。
 河合芳光裁判長は、発言は高須クリニックを指していると指摘したが「直接評価を加えたものではなく、社会的評価を低下させるものではない」と判断した。(毎日新聞)

議員の院内での発言をとらえての提訴も乱暴極まるが、所属政党を被告にしたことはさらなる驚愕というほかない。議員の発言に対する請求の根拠は不法行為(民法709条)であろうが、所属政党に対してはどのような構成をしたのだろうか。使用者責任(715条)なのか、それとも共同不法行為(719条)か。いずれにしても、およそ原告側に勝訴の見込みがない。のみならず、良識ある社会人においてこのような訴訟は提起すべきではないのだ。議員や政党が、厳重に抗議をしないのが不思議である。

何よりも、名誉毀損とされた大西議員の発言は、議院(衆院厚生労働委員会)での演説または討論に当たる。仮に、その発言内容に、刑事・民事の違法があったとしても、責任を問われることはない。憲法51条は、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と規定するからである。

国会議員が、議院において自由に発言を行うことの保障がなければ、その職責を全うすることができない。院内における言論の自由を手厚く保障することによって、議員の自由な活動を促進し議会制度の適正を確保しようとする制度の趣旨である。

もちろん、不適切な議員の発言があれば、言論による反論は保障されている。議員のレイシズムにもとづく発言や、セクシャルハラスメントによる人権侵害には、断固言論で反論すればよい。高須クリニックは十分に言論による反論の力量を持っているではないか。

少し長くなるが、大西議員の当該の発言は後掲のとおりである。極めて真っ当であり、真摯な姿勢でもある。一見して、特定の医療機関や医師を攻撃の対象としたものではないことが明白である。美容整形外科診療という、消費者問題でもあり医療問題でもある特殊な分野において、現実に増大している患者・消費者の被害を、どう防止するかという観点からの法改正について有益な議論を展開している。むしろ、立派な質疑をしていると称賛してもよい。

大西議員の発言に、高須クリニックの名前は出てこない。問題の個所は、前後を端折ると分からなくなるので、まとまった文章として引用する。

  一方で、医療分野においては、先ほど言ったように、原則広告が禁止になっていて、非常に限定的な事項しか広告することが認められていない、医療機関名であったり、連絡先であったりということでありますので。だから、非常にCMも陳腐なものが多いんですね。
  皆さんよく御存じのように、例えば、イエス○○とクリニック名を連呼するだけのCMとか、若い女性が、〇一二〇で始まる電話番号とクリニックの名前を言いながらごろごろごろごろ転がっているCMというのを皆さん見たことがあるというふうに思います。あるいは、テレビでおなじみのニューハーフタレントが音楽に合わせて踊りながら○○美容外科というのをずっと言い続ける、こういうCMがよく見られるんですね。
  選挙でも、我々、名前の連呼というのをやります、名前の連呼というのを。確かに、知らない人の名前は書けませんから名前連呼するわけですけれども、ただ、名前連呼だけだったら、その候補者が何を考えているのかもわからない、誰に投票していいのかわからないということがあります。
  そういう意味では、こうしたクリニックの名前とか電話番号だけを連呼するこういう広告というのは、患者が医療機関や治療方法を選択する上では私は有用なものではないというふうに思うんですけれども、こういう広告というのは非常に陳腐だと思いますけれども、大臣はどのように思われますでしょうか。

 「たとえば、イエス○○」との言及は、消費者にとって適正な選択をするのに有益な宣伝広告はいかにあるべきかという議論のためで、これが名誉毀損となるとは、言いがかりも甚だしい。

ところで、社会には、特定の職業人に対する特定のイメージがある。政治家・官僚・教師・宗教者・文筆家・スポーツマン、それぞれである。弁護士のイメージはあまり良くはなかろうとの自覚はある。医師の職業人としてのイメージは、ヒポクラテスの誓詞を胸に収めている人ではないだろうか。教養人で軽挙妄動せず、患者第一と考えている人というのが、少なくとも私のイメージ。そのような多くの医師を見てきてもいる。

しかし、高須克弥という人物は、そのような医師のイメージからはほど遠い。ネットを検索すると、彼の提訴当時の発言が残されている。

 明日、顧問弁護士に連絡しておとしまえをつけます。ただでは済まさせません」

「今、顧問弁護士に民進党中西健介(ママ)議員に対して提訴するよう指示したぜ。」

 「売られたら買います。僕はアホで馬鹿です。喧嘩強いです」

 「ホテルニューオータニに顧問弁護士の伊藤先生に来てもらって作戦会議終了。 明日の朝、民進党大西健介議員と連坊(ママ)代表を提訴するぞなう」

  いったいこれが、人の命と健康を預かる医師の発言だろうか。本当に、いついかなるときでも冷静であることを要求される医療従事者の言なのだろうか。信じがたい思いである。おそらく、彼は、当日の厚生労働委員会の議事録に目を通していない。

「顧問弁護士の伊藤先生」なる人物がこの事件を受任したようだ。医師もいろいろあるように、弁護士もいろいろである。
先年、私がDHC・吉田嘉明から、スラップを仕掛けられたとき、たまたま逢った同期の弁護士に顛末を説明した。二弁の会長経験者である彼がこう言ったのが印象的だった。

「澤藤君。その手の訴訟は、僕なんかには何件も依頼がある。『悔しいから、慰謝料を請求したい。負けてもいいから引き受けてくれ』というんだな。もちろん一応は話しを聞いて、辞めた方がよいと説得する。もっと不愉快な思いをすることになりかねないとね。でも、どうしても聞き入れてもらえないときは、『僕はそういう弁護士ではない』と言って断るんだ」

高須クリニックの提訴に勝ち目はない。にもかかわらずの提訴には別の目的があったとしか考えられない。

 「弁護士に連絡しておとしまえをつけます。ただでは済まさせません」「売られたら買います。喧嘩強いです」という発言は、自らに対する批判を許さないという発信である。これが、批判の言論の萎縮を狙ったスラップである。「自分を批判すると面倒なことになるぞ」と恫喝する者に対する批判の言論に萎縮があってはならない。
(2018年4月24日)
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大西議員の発言は、2017年の第193回通常国会に提出された「医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第57号)」審議をめぐる厚生労働委員会でのもの。

問題とされた発言は5月17日のものだが、19日の議事録で、消費者委員会事務局長黒木理恵の答弁が、美容医療サービスの問題実態を簡明によく説明しているので、まずこれを抜粋する。

医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku%20/009719320170519021.htm

消費者委員会事務局長黒木理恵君
○黒木政府参考人 お答え申し上げます。
消費者委員会では、委員御指摘のとおり、平成二十三年の十二月二十一日に、エステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての建議を発出しております。その中で、美容医療サービスに関しましては、不適切なインターネット上の表示の取り締まりの徹底及び美容医療サービスを利用する消費者への説明責任の徹底等を求めたところでございます。
これを受けまして、厚生労働省では、ガイドラインを策定される等、一定の対策を講じられたものの、全国の消費生活センターに寄せられました美容医療サービスに関する相談件数は、平成二十三年度の約千六百件から平成二十六年度には約二千六百件に増加をいたしまして、対策の効果は十分とは言いがたい状況にございました。
このような状況を踏まえまして、消費者委員会において美容医療サービスに関する問題を再度調査審議いたしましたところ、消費生活センターに寄せられた美容医療サービスに関する相談事例において、そのきっかけとなった広告媒体がインターネット上のホームページなどの電子媒体が最も多く、その割合も平成二十三年度に比べ高まっていることや、美容医療のホームページにおいてガイドラインが遵守されていない事例が見受けられること、また、美容医療の事前説明同意に際して、あたかもリスクが少ない施術と勘違いさせるような説明等が見受けられることがわかりました。
そこで、これを踏まえまして、二十七年七月七日に、医療機関のホームページを医療法上の広告に含めて規制の対象とすること、少なくとも、医療法等で禁止されている、内容が虚偽にわたるものあるいは誇大なもの等についてはホームページについても禁止すること、また、消費者がリスクなどを正しく理解した上で施術を受けるかどうか判断できるよう、患者の理解と同意を得た上で施術を行うこと、説明を適切に行うこと等について建議を行ったところでございます。

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名誉毀損とされた大西議員の5月17日発言は、多岐にわたっているが、当該部分の前後だけを抜粋して紹介する。これだけでも、美容医療業界の問題点がよく出ている。全文は、下記URLをご覧いただきたい。

http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku%20/009719320170517020.htm

○大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。
テレビで盛んにCMをしている超有名な美容クリニックの医師のブログの中に次のような記述がありました。
最近は、美容クラークと呼ばれる専門のカウンセラーを雇っているクリニックも多く、美容クラークは個室で患者様と二人きりになって時間をかけて話し、括弧、これを専門用語でクロージングといいます、料金や効果の高い治療を受けるように説得し、場合によっては医療ローンを組ませるように促します。美容クラークさんは、生命保険の勧誘、セールスレディー出身の人が多く、人心掌握術にたけ、言葉巧みに勧めてきます。生命保険の勧誘と同じで、成約させた治療代金の何%かがインセンティブとして歩合給になるので、患者様の幸せよりも自分の利益を優先し、必死に勧めてきます。
これは実際にブログに書いてあるんです。有名な、テレビにも出ている美容クリニックの医師の先生が書いているブログです。その人は、うちはそういうことはやっていませんよということを書いているんですけれども。
消費者被害のパターンを実際に見ましても、無料カウンセリングを受けたらいろいろと強引に説得されて契約するまで長時間拘束されたり、廉価の、安い手術を受けるつもりだったのが、あなたの場合はこのコースでは効果が出ませんよと言われて、説得を受けて、オプションを追加するなど高額な契約に誘導されるというケースが多く見られるということであります。
私は、この後議論する広告のあり方もさることながら、こういう勧誘のあり方に問題があるのではないかというふうに思っていますが、こうした不当な勧誘行為に何らかの規制を行うことはできないんでしょうか。

○神田政府参考人 お答えいたします。
インフォームド・コンセントにつきましては、先ほど申し上げましたように、医療法に基づきまして、医師、看護師等の医療の担い手が医療提供するに当たっては、適切な説明を行って、医療を受ける者の理解を得るように努める旨、規定をしているところでございます。
厚生労働省では、美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取り扱い等について通知等を発出いたしまして、医療を受ける者の適切な選択を阻害することがないよう、実施しようとする施術の有効性、安全性、費用等について説明しなければならないというふうにするとともに、虚偽、誇大な情報を用いて説明してはならないというふうにいたしております。
それから、その中では、美容医療というのは即日施術をしなければならないというものではございませんので、即日施術を強要する等の行為は厳に慎むべきであるということもお示しして、指導をしているところでございます。
厚生労働省としては、個々の事例について問題があれば、地方公共団体と連携をして、行政指導等の適切な対応を行っていきたいというふうに考えております。

○大西(健)委員 ちょっと何か答弁が私はずれているような気がしますけれども。
言っているのは、まさに部屋に閉じ込めてなかなか出してくれない、契約をするまで、あるいは、初めは安いものを受けるつもりで、あるいは無料カウンセリングを受けるつもりで行ったのが、どんどんオプションを追加したらどうですかと説得される、こういうやり方がおかしいんじゃないかということなんです。
これは、先ほどの特商法の改正が今検討されているということでありますけれども、そうなれば、クーリングオフや中途解約と同時に、こういう不当な勧誘行為も私は特商法の方で問題になるんじゃないかというふうにも思いますので、そこは消費者庁と連携をしてしっかりやっていただきたいというふうに思います。

さて、広告の話にちょっと入っていきたいと思うんです。
今回の医療法では、医療に関する広告規制の見直しが含まれているわけですが、そもそも医療分野は人の生命身体にかかわるものであり、また専門性が高いということで、広告が原則禁止のような非常に強い規制がかかっているということであります。
ただし、美容医療というのは、今、医政局長の答弁の中にも少しありましたけれども、普通の医療とはちょっと違う。つまり、何かすぐ治さないといけない病気があるわけじゃなくて、客観的な医療の必要性ではなくて、患者の主観的な意向に沿って施術が行われる、また、結果についても、きれいになったかどうかは患者の主観で決まる、また、美容医療を受けたことがある人は普通は他人には余り自分から言いませんから、私、美容医療を受けたのよというのは、ですから、口コミというのが余り機能しない、それから自由診療であるので非常に金額が高くなる、こういういろいろな特徴が医療の中でも少し違うんだろうなと。だから、派手な広告であったり、強引な勧誘による集客行為が行われやすい傾向があるのではないかというふうに思います。

一方で、医療分野においては、先ほど言ったように、原則広告が禁止になっていて、非常に限定的な事項しか広告することが認められていない、医療機関名であったり、連絡先であったりということでありますので。だから、非常にCMも陳腐なものが多いんですね。

皆さんよく御存じのように、例えば、イエス○○とクリニック名を連呼するだけのCMとか、若い女性が、〇一二〇で始まる電話番号とクリニックの名前を言いながらごろごろごろごろ転がっているCMというのを皆さん見たことがあるというふうに思います。あるいは、テレビでおなじみのニューハーフタレントが音楽に合わせて踊りながら○○美容外科というのをずっと言い続ける、こういうCMがよく見られるんですね。

選挙でも、我々、名前の連呼というのをやります、名前の連呼というのを。確かに、知らない人の名前は書けませんから名前連呼するわけですけれども、ただ、名前連呼だけだったら、その候補者が何を考えているのかもわからない、誰に投票していいのかわからないということがあります。

そういう意味では、こうしたクリニックの名前とか電話番号だけを連呼するこういう広告というのは、患者が医療機関や治療方法を選択する上では私は有用なものではないというふうに思うんですけれども、こういう広告というのは非常に陳腐だと思いますけれども、大臣はどのように思われますでしょうか。

○塩崎国務大臣 テレビコマーシャルで、今お取り上げをいただいたようなのを私も見たことがございますけれども、医療法の広告規制の対象にテレビコマーシャルについてもなっているわけで、医療機関の名称については現行の広告規制において広告可能な事項ということに一応なっています。

現行の広告規制の範囲内でいかなる広告を行うかというのは個別の医療機関の判断でありますけれども、そこはどういう、何というか矜持を持ってやっているのかということがそこに出るものでありますので、法律に触れていない限りはやってはいけないということにはならないんだろうなと思いますけれども、それと少し違う価値観はあり得るというふうに私も思っております。

○大西(健)委員 私はバランスが悪いと思うんですよね。

だから、一方では電話番号と名前しか連呼しない。でも、これで今回法改正が入るわけですけれども、ホームページに行けば今はホームページはもう全くフリーになっている。あるいは、後で言いますけれども、では、チラシとか、雑誌に掲載されている広告とか、フリーペーパーに出ている広告というのはどうなのかというと、これはもうまたひどいものなんですよ、後でこれは指摘しますけれども。

ですから、これは何か、ある部分で非常に厳しくしているんだけれども、その分何か別のところで非常にゆがみが生じてしまっている。

ですから、さっき言ったように、本来は、患者さんが治療方法とかクリニックを選択する上で有用な情報であれば私は別にテレビCMでも流してもいい。ただ、先ほど来言っているような、間違った誘引をするようなとか虚偽のとか、そういう内容についてはしっかりチェックをかけていかなきゃいけないけれども、今言ったように、ある部分ではすごく厳しくしているからクリニック名だけ言っているんですけれども、ある部分ではめちゃくちゃやっているわけですよ。このアンバランスというのを、大臣、どのように思われますか。

○塩崎国務大臣 なかなか難しい問題だと思いますが、やはり誇大広告とか明示的にやってはいけないことをやっていない範囲内でいろいろなことを考えておやりになっている方がおられるんだろうというふうに思いますが、そこのところをどう規制するかというと、やはりなかなかそう、違法なことをやっていない限りは規制がしづらいというのが実態で、それを見てどう思うかということは、いろいろあろうかというふうに思いますので。

実態として、人を間違った方向に引っ張っていくようなことがあればそれは当然規制をしなきゃいけないことになろうかと思いますが、そうではない範囲内であれば、なかなか直接的な規制を加えるというのは難しいのかなというふうに思っているところでございます。

○大西(健)委員 私はやはり個人的にちょっと規制の仕方を見直した方がいいんじゃないかなと思っているんですね。

というのは、派手なテレビCMを流すことで名前を刷り込みして、テレビCMでもやっているあの大手だから大丈夫というように信じ込ませるという、これはブランド戦略だと思うんですけれども、それは、できるところはばんばん金かけてやるわけですよ。ですから、これがちょっとゆがんでいると思うんですね。

この派手な宣伝広告には当然多額の費用がかかります。

例えば、これもちょっとあれですけれども、あるものに書いてあったんですけれども、スーツ姿の医師たちが、好きな言葉は向上心です、好きな言葉は感謝です、私たちは○○美容外科のクリニックのドクターです、こういうことを言っている、またこれは意味不明のCMなんですけれども、ここは、月、放映料に四千万かけている。これだけの金がかけられているわけです。それで自由診療ですよ。

ですから、美容クリニックでは売上高に対する宣伝広告費が三〇%から多いところでは五〇%に達する、こういうふうな指摘があります。こうした多額の費用をかけてこれを回収しようとするから、無理な勧誘だとかさまざまなトラブルが生じるその要因になっているんじゃないかというふうに私は思います。

この点、売上高に占める宣伝広告費の割合について、美容クリニックのまず実態調査、今私が指摘したみたいに、いろいろなものを調べると、売上高の三〇%から五〇%、それぐらいの割合を広告費にかけているという話がありますけれども、本当にそうなのか。まず、これは実態調査していただきたい。その結果、もしそういうことがあるんだったら、私が言ったように、それだけ宣伝広告費をかけたらそれを回収しようとするわけですから。ですから、必要があれば広告費の総量規制とか、そういうやり方もあるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○神田政府参考人 広告宣伝費について実態調査をしてはどうかということでございますけれども、使途を規制するということについてはなかなか難しいのではないかと思いますけれども、美容関係の団体の連絡会をつくりまして、私ども、規制の周知ですとか、そういう取り組みを進めていきたいというふうに考えておりますので、そういった関係団体を通じて、どれぐらい広告宣伝費をかけているのかということについては調査をすることは可能かと思いますので、そういったルートを通じて把握について検討したいと思います。

○大西(健)委員 よく病院の経営実態調査とかをやられるわけじゃないですか。ですから、私は、ぜひ、美容医院がどれだけ広告宣伝費を使っているのか、これを一回調べてみたらいいと思いますよ。ぜひやっていただきたいというふうに思います。

テレビCM以外でも、折り込みやポスティングのチラシ、週刊誌やフリーペーパーなどに掲載された広告なども、当然のことですけれども、医療広告の規制の対象になっています。でも、さっき言ったように、テレビのCMは名前と電話番号しか言わないけれども、この今からお話しする週刊誌とかフリーペーパーに載っている広告というのは、これはもう大変野放しの状態だと私は言っていいと思います。

きょう、私、ここに女性週刊誌、それからうちの地元で普通の店に置いてあるフリーペーパーを持ってきましたけれども、この中を見ると、さまざまな美容医療の広告が打たれているんですけれども、そのうち幾つかを皆さんのお手元に資料としてお配りしました。

まず、資料のちょうど一枚目の裏ですけれども、これは週刊女性に掲載されていた広告ですけれども、ここに書いてあるこの「アクアミド注射」というのは、そもそも法律の承認を得た治療法ではないので書けないんです。「九九%の人が非常に満足」、こういう客観的な根拠に欠ける記述もできないはずであります。あるいは、「糸リフト」「片側一本で二歳ぐらい」「片側三~四本入れれば六~八歳」「片側五本入れれば十歳ぐらい若く見えるようになる」、これも主観的な話なので書けないんです。

それから、次のページ、次の広告、これは私の地元のグルメ情報とかが書いてある普通のフリーペーパーです。これに入っていた広告ですけれども、これは先ほどの、女性がぐるぐる床を転がる派手なCMをしている、全国に二十七院を展開している大手の美容医院の広告ですけれども、これは、違反表示のオンパレードですよ。丸をつけたところを見てください。

まず、一番上に豊胸手術、「豊胸術」のやつが載っていますけれども、それ以外にも全部ビフォー・アフターの写真が載せてあるんです。これはやっちゃいけないことになっているんです。しかも、これは、きのうちょっと聞いてみたら、この胸のところがきらきらっとしているんですけれども、こういうのもだめだそうです。こういうのもだめだそうです。

また、あちこちに「口コミサイト」「愛知県」「第一位」という優良性を示す記述があります。これもだめです。それから、「ヒアルロン酸注入法」「バストアップ」とか「サーマクールCPT」、これも承認を得ていない治療法で書けないはずであります。あるいは、「初回特別限定価格」という、実際、標準的な価格が幾らなのかよくわからない、何かいかにも安くてお得なように誘引するような言葉が並んでいる。

これは、本当に、最大手でテレビでばんばんCMを打っているところですよ。だから、さっきも言ったように、テレビCMは名前と電話番号しか言わないけれども、このフリーペーパーに載っている広告は違反表示のオンパレードなんですよ。ですから、これが私はおかしいんじゃないかと。

次のページも、これはフリーペーパーに載っていたものですけれども、「初回トライアル半額」「リピート率No.1」「切らずに十才若返り」「人気No.1」、それから「特別技術指導医」という、この特別医というんですかね、こういうのも書けない記述になっています。また、「今まで何をしても効果のなかった目の下の小じわが気にならなくなりました(四十代女性)」、こういう意図的な体験談まで載せてある。

厚労省にはこの広告を事前に渡して、目を通してもらっているはずですけれども、今私が指摘したような記述は全て違反表示ということでいいか。また、一つの広告についてもこれだけ多くの違反表示がある。また、こうした広告は、私がきょう持ってきているこういう週刊誌とかあるいはフリーペーパーにもうあふれているんですよ。こういう現実を今厚労省はどのように受けとめているか、医政局長から御答弁いただきたいと思います。

○神田政府参考人 先ほど先生から御指摘ございましたように、ここに掲載されているものは、多くは自由診療ということでございますので、まさに広告が制限されている事項でございます。

それから、リピート率ナンバーワンですとか、そういった比較広告も禁止されているものでありますし、十歳若返るとか、そういったことも誇大な広告に当たるのではないかというふうに考えております。

それから、特別技術指導医というものも、医師の専門性に関する事項については一定のものしか広告ができないということですので、実体のないような資格については広告できないということでございますので、いずれも先生御指摘のとおりかというふうに思っております。

それから、価格が今行うと安いというような費用を強調した広告につきましては、ガイドラインの中で、適切な選択を阻害するおそれがあるということで、医療に関する広告として適切ではないとして厳に慎むべきものとしているところでございまして、今後、こうしたものについてさらに指導の徹底を図っていく必要があるというふうに考えております。

○大西(健)委員 大臣も今、これはちょっとちっちゃいですけれども、見ていただいたと思うんですけれども、御感想があればいただきたいと思います。

○塩崎国務大臣 今局長から答弁したように、違反のオンパレードになっているわけでありますので、そういうところはやはり是正をしていかなきゃいけないというふうに思います。

○大西(健)委員 先ほどの繰り返しになりますけれども、お金をかけてテレビCMを打てるところは、ばんばんお金をかけてテレビCMを流して、そして名前を刷り込む。そうやってテレビでCMを打っている大手だから大丈夫だろうと思ったら、その大手が、今私が示したこの事例の二ページ目のこの表のやつ、その最大手ですよ、左の上に「TVCM好評放映中!!」と書いてあるじゃないですか。ここが、この違反のオンパレードの広告を平気でフリーペーパーに載せているんですよ。
資料の最後に東京都が行った調査というのをつけていますけれども、平成二十七年に、東京都がチラシ等における美容医療の広告調査の結果というのを発表しています。ここに「調査の目的」云々と書いてありますけれども、「調査対象」、新聞の折り込みチラシ、ポスティングチラシ、町中のカフェ、駅頭のスタンド、地下通路、郊外ではスーパーマーケットの店舗内で配布されているクーポン雑誌等のフリーペーパー、一般雑誌、今の週刊女性のような週刊誌ですね、これを調査対象としたと。
これは、右を見てください。百四十件の調査員の判断、不当と思われる表示百三十四件、不当と思われる表示なし六件ですよ。まともなやつは六件しかないんですよ、百四十件のうち。百三十四件、ほとんどが違反。これが野放しにされているんですよ。これが私は最大の問題だと思いますよ。
これを野放しにしておいて、今回、ホームページを今度規制の対象にします、そして、ウエブの監視体制を強化すると。これは、外部の業者に委託してウエブを監視してもらうと言っていますけれども、さっきから私が言っているように、私の地元で普通にどこにでも置いてあるフリーペーパーとか、みんなが、美容院に行ったら奥様方が読む女性週刊誌とかにこれだけ違反の広告が堂々と載っていて野放しになっている状況でそんなことを言っても、私は全く信憑性はないと思いますよ。信頼性がないと思いますよ。

ですから、これは都道府県がやるということですけれども、大臣、ちょっとこの個別のケースを、私が言ったやつを都道府県に伝えておきますときのう厚労省が言っていたけれども、そういう問題じゃないんです。さっきの東京都のやつに、百四十件調査して百三十四件は違反表示なんです。まともな表示の方が少ない。これをちゃんとやらないで新たにホームページを規制対象にしますと言っても、ちゃんちゃらおかしいと私は思いますけれども、大臣、いかが思われますか。(以下略)

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