澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

競争原理ではなく、協同・連帯の精神をこそ ― 開業医共済協同組合祝賀会で

開業医共済協同組合の「加入者2000名達成祝賀会」に祝辞を申しあげます。
私は、縁あって貴協同組合の顧問を務めておりますが、意気に感じて積極的にその任をお引き受けしたつもりです。その気持ちの一端をお話しすることが、加入者2000名達成の祝意を表明することになろうかと存じます。

私は、開業医の皆様と同じく個人経営の弁護士です。医師の皆様は専門診療科を標榜しておられますが、弁護士の業務にはそれがありません。幅広くなんでもやることになるのですが、自ずと専門分野というものが定まってきます。私の場合の専門分野は、消費者問題です。

消費者問題を扱う弁護士というと、過払い請求のサラ金弁護士を思い浮かべる方がいらっしゃるかも知れませんが、私はこの四半世紀、クレジット・サラ金債務整理の仕事はしていません。また、消費者問題として悪徳商法被害救済をイメージされる方も多いこととでしょう。それが間違いというわけではないのですが、私は消費者問題の基本テーマは、消費者が企業社会をどうコントロールすることができるのか、という課題だと思っています。

その意味では、対峙する相手は「悪徳」事業者であるよりは、経済社会の中枢に位置している大企業なのです。そして、個別の消費者被害の救済から一歩進んで、企業をあるいは企業社会をどう制御できるか、あるいはすべきかを考えなければならない。そう考えてきました。

私たちが現実に生きているこの資本主義社会というものは、企業社会ということでもあります。この社会の実力者である個々の企業が、それぞれ最大利潤を求めて競争にしのぎを削っている苛酷な社会。その競争の勝者には過大な利益がもたらされる反面、敗者は路頭に迷わねばなりません。企業という経済単位間の相互の関係は、生存を懸けた「競争」ということであって、けっして、連帯でも友愛でもありません。

また、企業はその内部で、あるいは商品生産や流通の過程で、労働者を雇用しなければなりません。あるいは弱小の企業に下請けをさせます。企業がその実力を恣にして、雇用する労働者や弱小企業に対して、最大利潤追求の衝動をむき出しにすれば、労働者や弱小企業の人間的な存在を否定することになることは見易いところですが、似た問題は消費市場でも生じていることを見落としてはなりません。

この社会では個別企業の需要見込みによって大量の商品生産が行われ、サービスの供給が行われます。その商品は、すべて最終的には消費市場で消費者に購入してもらわねばなりません。需要見込みによって作られた大量商品の最終消費なしには、再生産のサイクルが正常に稼働しません。何が何でも、消費者の消費意欲を喚起し、無駄なものでも、生産されたものを消費者に押しつけ買わせなければなりません。言わば、企業が消費者を操らなければならないのです。そこからさまざまな弊害が試用時ます。これが、消費者問題の基本構造です。

企業の要請に応じて、消費者操作のための技術が発達し専門化しています。まずは、消費者心理のマインドコントロールというべき宣伝・広告の巧妙化と大規模化。そして、商品購買に必要な金融・与信のシステムの構築。本当は必要のないもの、不要なものを買わせなければならないのです。そのための企業による対消費者コントロールが行われているのが、消費市場の力関係の現実と言わざるを得ません。

消費者運動・消費者問題とは、消費市場における企業による対消費者コントロールによる諸弊害をなくしていくこと。できれば根絶することですが、そのためには利潤追求至上主義の企業を、消費者の手でコントロールしなければなりません。それは、利潤追求第一を当然のこととして許容する社会ではなく、人間尊重をこそ大切にする社会のありかたを模索する運動の一分野だと考えられます。

ところで、この消費者運動における問題意識は、協同組合運動にも共通していると思うのです。協同組合という存在は、企業社会の中の飛び地のようなところに位置を占めています。企業と同様の経済行動の単位でありながら、利潤追求組織ではなく、その運営原則は、相互扶助であり、連帯であり友愛なのです。

企業の経営には民主主義原則はありません。徹底した効率追求です。しかし、協同組合は平等な成員の民主的手続によって運営されなければなりません。消費者運動とともに、協同組合運動が発展することは、相対的に企業の存在感狭小化につながります。企業を存立基盤とする保守政党の政策にも影響を及ぼさざるを得ません。社会の民主化度の進展につながります。

消費者問題の分野で企業の横暴をどう克服するかを考えてきた私にとって、協同組合運動への寄与は、これまでの活動の延長線上のものなのです。そう考えてお引き受けした、貴協同組合の顧問です。貴組合の発展こそは歓迎すべき、まさに慶事なのです。

念願であった、「加入者2000名達成」。貴組合の発展を心から喜びたいと存じます。おめでとうございます。
(2018年10月23日)

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