澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「ぐるみ・金権」選挙の徹底取り締まりを

各紙の報道によれば、医療法人「徳洲会」グループをめぐる選挙違反疑惑で、東京地検特捜部は本日(17日)、公職選挙法違反(運動員買収)の疑いで東京都千代田区の徳洲会東京本部などに家宅捜索に入るなど強制捜査に着手した。

事案は、昨年12月総選挙で3度目の当選を果たした徳田毅・自民党衆院議員(鹿児島2区)の選挙を巡り、徳洲会グループが系列病院の職員を選挙区に送り込んで選挙運動をさせ、見返りに報酬を支払った疑い。選挙に動員された職員は100人以上の規模とされるが、「選挙期間中に派遣された職員は延べ数千人」との関係者証言を伝える報道もある。

全国各地から動員された病院職員は、衆院が解散した昨年11月16日の直後から投開票日前日の12月15日まで、鹿児島2区(鹿児島市など)に入り、戸別訪問や電話によって徳田候補への投票を訴えた。この選挙運動で職場を離れていた職員に、給料が支払われていたという。

いうまでもなく、選挙運動は金をもらってやるものではない。当たり前のことだが、勤務先から給料をもらいながらの選挙運動もあり得ない。公選法は、選挙運動に対する報酬の支払いを禁じている。支払った方も、支払いを受けた方も選挙違反として犯罪にあたる。だから、徳州会から派遣された各職員は、所属する病院に1週間~1か月程度の欠勤や有給休暇を届け出た上で選挙運動を行っていた。もちろん、純粋に無給のボランティア活動であれば犯罪とはならない。「有給休暇中のボランティア」とするのが、カムフラージュの常套手段だ。実際のところは、欠勤・休暇は形だけで、欠勤で減額された給与分は、同月の賞与に上乗せして補填され、実質的な選挙運動の報酬が支払われていたという。鹿児島までの交通費やホテルの宿泊費なども、同会側が負担したとのこと。

選挙運動の自由は最大限保障されなければならない。一方、選挙の公正が金の力でゆがめられてはならない。金がものを言うこの世の中で、買収・供応等の金権選挙・企業ぐるみ選挙を許してはならない。経済的な格差を投票結果に反映させてはならず、取り締るべきは当然のこと。

金にものを言わせる公選法上の買収には、「投票買収」と「運動(員)買収」との2種類がある。「投票買収」は金で票を買うという古典的な形態だが、いまどきそんな事案はほとんどない。摘発されているのは、もっぱら「運動買収」である。これは、人に金を渡して選挙運動をさせるということ。選挙運動員に金を渡せば、あるいは選挙運動に従事している労働者に職務提供のない期間の給料を支払えば、運動買収になって刑事罰を科せられる。

最高裁は今年1月、民主党の落選候補者に対して、自分が経営する会社の社員に選挙運動の報酬を支払う約束をした(約束だけで支払いはしていない)として公選法違反を認め、懲役2年執行猶予4年とする有罪判決を確定させている。

当不当の議論は別として、車上運動員(ウグイス嬢)・手話通訳者と、ポスター貼り・封筒の宛名書きなど純粋に単純労務を提供する者には、所定の日当を支払っても良いことになっている。この人たちの氏名と日当額とは事前に選管に届出ることになる。もし、この人たちが、単純労務の範囲を超えて、少しの時間でも実質的な選挙運動に携わっていれば、運動買収(日当買収ともいう)が成立して、日当を渡した選挙運動の総括主宰者も、日当をもらった選挙運動員も、ともに刑事罰の対象となる。

報道されている限りで、「徳州会」側の行為は、公選法221条1項1号の「当選を得しめる目的をもつて選挙運動者に対し金銭の供与をした」に当たり、買収罪として最高刑は懲役3年の犯罪となる。選挙運動の総括主宰者または出納責任者の実質がある者が行った場合は公選法221条1項1号(運動買収)・3項(加重要件)に該当して、最高刑は懲役4年の犯罪に当たる。多数回の行為があったとされれば、さらに加重されて5年となる(222条1項)。仮に、候補者自身が関与していれば同罪である。また、「徳州会」から派遣された病院職員らは、同条1項4号の「第1号の金銭の供与を受けた」にあたり、被買収罪として同じく最高刑は懲役3年となる。

派遣職員の人数が大きい、病院経営者の社会的責任が大きい、などが強調されているが、被派遣者がたった1人でも、勤務先が病院でなくても、犯罪は成立する。なお、「法律を知らなかった」は言い訳にならない。アルバイト募集に応募したところが選挙運動をさせられ、結局有罪になったという気の毒な実例もある。徳州会側のみならず、派遣された職員の有罪も動かしがたい。その意味では、徳州会や徳田議員の罪は大きいと言わねばならない。とはいえ、派遣された地方病院の事務責任者は「派遣の指示を拒んだりすれば徳田家に対する反逆と見なされる。従わざるを得なかった」と証言しており、強制的な動員だった疑いが強い。このような事情を勘案すれば、派遣された職員の起訴は事実上見送れることになるだろう。

もし、徳田候補の選挙陣営が徳州会側に選挙を手伝う社員を出すよう依頼をしたのであれば、依頼した側の人物に刑事責任が生じる。221条1項6号の「前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき」に当たるか、あるいは依頼行為が教唆罪(刑法61条1項)に当たるからである。徳田議員自身が「周旋又は勧誘をした」とされる場合には、候補者であるが故の加重要件に該当して最高刑は懲役4年となり、有罪の確定と同時に公民権の停止も行われて議員資格を失う。選挙運動の総括主宰者あるいは出納責任者が有罪になった場合にも、連座制の適用によって徳田議員の資格が剥奪される。

私はかつて、このブログで、東京3区石原宏高議員の運動買収が検挙されないことに関して、次のように嘆いた。
「投票日を同じくした都知事選の宇都宮陣営では、ビラ配布をしていた70歳が公団住宅の廊下で住居侵入として逮捕され、勾留請求却下まで3泊4日を留置所で過ごした。革新陣営に対する選挙運動の自由にはかくも厳しく、保守陣営の金権選挙にはかくも甘いのが、警察・検察の実態なのであろうか。」

今回の徳州会選挙違反摘発は当選した与党議員に対するものとして、よくやったと思う。是非とも、石原宏高選挙違反にも、厳重な取り締りを期待したい。

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  『サンマ苦いか塩っぱいか』
友人が岩手県大船渡からサンマを送ってくれた。くちばしの黄色いトレトレの脂ののりきった立派なサンマだ。今年は収穫が少ないそうで、貴重品である。

おいしくいただいてしまった後で、サンマ発送用のトロ箱の上に貼ってあった「安全確認済」と印刷されたレッテルに気がついた。そういえば、昨年は放射能汚染を気遣って海産物はお休みしていたことを思い出した。サンマは回遊魚なので、心配ないと聞いていたけれど、あんまり仰々しいラベルなので、かえって興味を引かれて、記載の水産会社に電話をしてみた。

すると、やっぱり歓迎はされなかった。あちこち電話を回された末に、「目視と細菌検査と放射能検査で問題はなかったということです」との素っ気ない返事。それ以上知りたければ、連絡先の電話を教えてくれという。しばらくすると、「週一回サンプルアップして、業者に検査委託している。放射能検査項目はヨウ素131、セシウム134、セシウム137、その他のセシウム類の4項目です。そして、その数値は検出できないほど低い数値なので、安全です」という答えが返ってきた。
こちらも勉強不足で、それ以上の質問はできず、「おいしかったのでOK」と安易にその場は納得してしまったが、自分はともかく、子どもに食べさせる場合はそうはいかないと反省した。

今年4月1日から食品に関する放射能の規制値は基準が低くなった。これも自動的にそうなったわけではなく、たくさんの人の運動があって、ようやく改められた。
1キログラム当たり、水が200ベクレルから10ベクレルに、牛乳が200ベクレルから50ベクレルに、野菜・穀類・肉・卵・魚などの食料品が500ベクレルから100ベクレルへと新基準は厳しくなった。ではいったい我々は、3・11以来2年間は何を食べていたのか?

この4月からの新基準は、1年間の摂取量を1ミリシーベルト以下に抑えるというコンセプトで設定されたそうだ。たとえばサンマを1回50グラム、1年間に延べ150回、計7.5キログラム食べるとする。それが基準値最高100ベクレルに汚染されているサンマでも、人体への影響換算係数0.000013を掛けて、0.00975ミリシーベルトにしかならないからご安心をという計算になるようだ。

50g(サンマ)×150(日)=7.5㎏
100ベクレル×0.000013(人体影響換算係数)=0.0013ミリシーベルト/㎏
7.5㎏×0.0013ミリシーベルト/㎏=0.00975ミリシーベルト

しかし、「人はサンマのみにて生きるに非ず」である。水も牛乳も飲む。野菜もご飯も食べる。レントゲン検査もうける。飛行機にも乗る。自然界からの放射能も避けられない。放射性物質を食べ物として食べれば、体内に放射性物質は蓄積されていく。いくら換算係数(これも納得出来ないといえば納得できない)を掛けても、放射能は自然に浴びているのだといわれても、それならなおさら、余分の放射能などいらないというのが、当たり前の考え方だろう。

今日の朝刊は台風18号の降雨の影響で、福島の原発の汚染水貯蔵タンク周辺の漏洩防止用の堰が決壊し、汚染水が漏れ出てしまったと報道している。汚染水は雨水や海水で薄められるので、垂れ流しても大丈夫といわれても、納得できない。そしてこの頃チラチラ出てきているのが、恐ろしいストロンチウム90だ。今日の漏水にストロンチウム90のベータ線が1リットル当たり37ベクレル含まれていたと書いてある。だいたい、食物検査にストロンチウムやプルトニウムは含まれていない。分析に時間がかかるからというのがその理由。

私は放射能はどんな味がするのか知らない。セシウムはセシウムの、ストロンチウムはストロンチウムの、プルトニウムはプルトニウムの味や臭いがするのだろうか。

あわれ、秋風よ
情あれば教えてよ
放射能は苦いか塩っぱいか

どんどん薄めて、
限りなく薄味にしたって
サンマも鯨もイヤイヤするでしょう

地球も海も
無限ではない
やがてはセシウムの苦みや
ストロンチウムの塩っぱさが
広い海原を満たすのでは
(2013年9月17日)

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Published in 火曜日, 9月 17th, 2013, at 21:34, and filed under 未分類.

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