澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

日本は果たして民主主義国家か。 ― 「辺野古新基地建設NO!」の沖縄県民投票結果が問うもの。

日本は民主主義政体の国家である(はずである)。民主主義とは、民意に基づいて国家を運営することである(はずである)。特定のテーマで、圧倒的な民意が明確に示された場合には、政策の選択においてこれに従うべきが民主主義の常道でなくてはならない(はずである)。さて、日本は本当に民主主義国家なのであろうか。民意が尊重される国であるのだろうか。そのことが、今試されようとしている。

沖縄県民が、安倍政権に鋭い問を突きつけている。「中央政府は、民主主義の何たるかを理解しているのか」「ここまで明確になった沖縄の民意を無視できるのか」。43万余の積み上げられた辺野古新基地建設反対の投票数と、この得票によって明確となった県民の民意の存在はこの上なく重い。

注目の、辺野古新基地建設の可否を問う沖縄県民投票。昨日(2月24日)投開票が行われ、25日0時30分に開票が終了。ほぼ予想されたとおりの開票結果となった。

投票率は52・48%。辺野古沿岸部の埋め立てに「反対」が43万4273票、有効投票の72・2%となった。なお、「賛成」は19・1%、「どちらでもない」が8・8%であった。

県民投票条例に基づいて、玉城デニー知事は近く安倍晋三首相とトランプ米大統領に開票結果を通知することになる。当然に、辺野古新基地建設を断念するよう要請することになるが、果たして日米両政府はこの要請にどのように対応するであろうか。とりわけ、日本の政府の対応が注目される。沖縄県民が示した民意を真摯に尊重して大浦湾埋立を断念して、日本が民主主義国家であることを証明できるだろうか。それとも、明確に示された民意を歯牙にもかけずに蹂躙することになるのだろうか。安倍政権の民主主義に対する体質が根底から問われている。

本日(2月25日)の各紙の社説が興味深い。朝日・毎日・東京が「県民投票の結果を尊重せよ」との論陣。極めて常識的な見解と言えよう。産経だけが、「国は移設を粘り強く説け」という苦汁のレトリック。読売・日経は、社説を掲載していない。戦線離脱である。

タイトルだけで、各紙の立場はほぼ理解できる。

 沖縄県民投票 結果に真摯に向きあえ (朝日)

 「辺野古」反対が多数 もはや埋め立てはやめよ(毎日)

 辺野古反対 沖縄の思い受け止めよ (東京)

朝日社説は言う。「沖縄県民は「辺野古ノー」の強い意思を改めて表明した。この事態を受けてなお、安倍政権は破綻が明らかな計画を推し進めるつもりだろうか。」
毎日社説は言う。「もはや普天間の辺野古移設は政治的にも技術的にも極めて困難になった。政府にいま必要なのはこの現実を冷静に受け入れる判断力だ。」
そして東京社は言う。「民主主義国家としていま、政府がとるべきは、工事を棚上げし一票一票に託された県民の声に耳を傾けることだ」。いずれも、当然の理を述べている。

 沖縄県民投票 国は移設を粘り強く説け(産経)

産経は、「投票結果は極めて残念である。政府はていねいに移設の必要性を説き、速やかに移設を進める必要がある。」「県民投票に法的拘束力はない。辺野古移設に代わるアイデアもない。日米両政府に伝えても、現実的な検討対象にはなるまい。」という。

さて、産経は「埋立反対の県民投票の結果に法的拘束力はない」という。では、強引に大浦湾を埋め立てている政府の側には、何らかの「法的拘束力があるのか」といえば、やはり「埋立をしなければならない法的拘束力はない」のだ。

すべての法にとって、その「拘束力」の源泉は主権者の意思、すなわち民意にほかならない。「埋立反対」の側に民意のあることが明瞭であって、「埋立賛成」の側に民意はない。

以下に、運動の主体となった「『辺野古』県民投票の会」の声明を引用しておきたい。文中の「安全保障政策を支える基盤は、基地の所在する地域の民意である。安全保障問題が国の専権事項であることを理由に沖縄の民意を踏みつぶすことがあってはならない。」が、十分に産経論説への反論となっている。

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? 声  明

 本日実施の県民投票の結果が明らかになった。
投票率52.48%、米軍基地建設のための「辺野古」埋立てについて「反対」票43万4273票(72.2%)、「賛成」票11万4933票(19.1%)、「どちらでもない」票5万2682票(8.8%)となった。
 有権者の過半数を超える県民が投票所に足を運び、各人の意思を表明されたことにまず感謝を申し上げたい。
 投票者の72.2%にあたる43万4273名という多くの県民(全有権者の37.6%)が、埋立て反対票を投じ、明確な反対の民意を示したことの意味は大変重い。
 私たちは、今回の県民投票は、一つの争点につき明確な県民の意思を表明した点で、この国の民主政治の歴史に新たな意義ある一歩を刻んだと確信している。
 私たちは改めて、県民投票の実現に尽力された多くの県民に敬意を表するとともに、御礼を申し上げ、県民の皆様とともに県民投票の成功を喜びたい。

 今回の県民投票は、目前で強行されている「辺野古」埋立ての賛否を問い、審判を下すものであった。その本質は、辺野古への代替施設建設が普天間飛行場の危険性除去(基地返還)のための「唯一の選択肢」だと判断した国策の是非を問うものであった。
 それに対し、沖縄県民は県民投票により明確に反対の意思を示した。政府はこの民意を重く受け止め、民主主義の基本に立ち返り、直ちに「辺野古」埋立て工事を中止・断念すべきである。

 安全保障政策を支える基盤は、基地の所在する地域の民意である。安全保障問題が国の専権事項であることを理由に沖縄の民意を踏みつぶすことがあってはならない。
辺野古米軍基地建設のための埋立てに対し明確な反対の民意が示された今、これから問われるのは本土の人たち一人ひとりが沖縄の民意を踏まえて当事者意識を持ち、この国の安全保障及び普天間飛行場の県外・国外移転についての国民的議論を行うことである。
そして政府は、普天間飛行場の危険性除去(基地閉鎖・返還)を最優先に米国政府との交渉をやり直し、沖縄県内移設ではない方策を一刻も早く検討すべきである。

 県民投票は、当面する「辺野古」問題への沖縄県民の明確な民意を示すだけでなく、国策決定(辺野古米軍基地建設のための埋立て)における民主主義のあり方を問う実践の場でもあった。
私たちは、この国にはいまだ民主主義政治が健在であると信じたい。
今回の県民投票は、この国に住む全ての人たちに民主主義のあり方を改めて問うものでもある。国民一人ひとりが、この問題を真剣に考えるべきである。
そして、政府は、直ちに「辺野古」埋立て工事を中止・断念し、沖縄県内移設によらない普天間飛行場の危険性除去(基地閉鎖・返還)に向けた英断を行うことを強く期待する。

最後に、玉城デニー知事に対しては、「反対」票が全有権者の4分の1を超えたので、辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例第10条3項に基づき、速やかに、内閣総理大臣及びアメリカ合衆国大統領に対し、結果を通知するとともに、沖縄県民の民意に沿った諸行動をとることを切望する。

       2019年2月24日
             「辺野古」県民投票の会

(2019年2月25日)

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