澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

憲法記念日に訴える - 「憲法を活かしてこその有効なコロナ対策だ」

例年のごとく、はつなつの風薫る季節に憲法記念日である。しかし、今日吹く風にはコロナの臭気が混じっている。そのコロナ風のおかげで、メーデーも改憲反対大集会も「オンライン集会」となった。

正式な集会名は、「平和といのちと人権を!5.3憲法集会2020」。当初は有明公園での大集会を予定していたが、本日13時からの国会前集会をネット中継することに。主催者の御苦労と無念は察するが、気勢を殺がれること甚だしい。

今年も、憲法の受難を意識しながらの憲法記念日である。現行の日本国憲法を理想の憲法と持ち上げるつもりはさらさらないが、その根幹が人類の叡智の結実であることに疑いはない。天皇教の教典である大日本帝国憲法などとは、比較すべくもない。

本来なら、この根幹を大事にしつつも、より良い憲法を求めて正しい意味での「憲法改正」運動が展開されてしかるべきなのだが、如何せん革新陣営にはその力量に欠ける。保守勢力の「憲法改悪」の策動を阻止する運動を積み重ねて、ようやく日本国民はいま日本国憲法を自らのものとしつつある。

憲法の危機が叫ばれる都度、日本国民は、日本国憲法が想定する主権者として鍛えられてきた。いままた、その危機のさなかにある。考えてみれば、日本国憲法の基本精神は権力者性悪説である。もとより、近代立憲主義が権力を危険視し、危険な権力を規制しようとするものである。権力は、常に腐敗の危険を内包してというだけではなく、腐敗せぬ健全な権力も危険なのだ。

権力者から嫌われ、疎まれ、煙たがれ、何とか「改正」しようとの標的とされる憲法であってこそ、まともな近代憲法として存在価値がある。改悪阻止運動の高揚も必然となる。

治者としての権力と、被治者としての国民とは、常に緊張関係にある。憲法をはさんで、両者は対峙しているのだ。権力は憲法によって与えられた権限を最大限活用し、あわよくば暴走をしてでも国民を押さえ込もうとする。国民は憲法を武器として、危険な権力に対峙し規制しようとする。この対立の関係は永久運動である。

しかも、今権力を握っているのは、政治と行政を私物化し、嘘とごまかしの正真正銘の性悪政権、安倍内閣である。この安倍を権力に押し上げている勢力が、改憲をねらっている。日本国民が、こぞって危険な改憲阻止に立ち上がって当然なのだ。

そして、今や「新型コロナ感染対策」という「緊急事態」にあって、憲法の有効性が攻撃を受けている。もとより、感染症蔓延を阻止するための、合理的な私権の制約はありうることである。しかし、例外的な私権の制約は、合理性が確認された最低限のものでなくてはならず、国民の納得と同意がなくてはならない。また、厳密に時限的な措置でなければならず、事後の検証も不可欠である。これらは、すべて現行「日本国憲法」が当然とするところである。

特措法に基づく緊急事態宣言の効果として行政権力がなし得ることは万能ではなく限定的ではある。しかし、非常時において行政権が立法権の干渉を排し権力を行使して私権を制約し得るという「緊急事態条項」の基本形の具備は明確である。この事態での政府や自治体の暴走に対する警戒を軽視してはならない。

この事態に、「非常の事態なのだから政府の権限を強化すべきだ」「いまは権力批判のときではなく、一致して政府の施策を支持すべきだ」という類いの言論に与してはならない。非常時における国民の同調圧力に迎合してもならない。

考えてもみよ。合理的な「新型コロナ感染対策」が、強権から生まれることはあり得ない。強権の発動は施策の合理性を阻害するものでしかない。明らかに、専門家の知見を含む国民の意見の総意のみが、最も合理的な対策を形作る。そして、常に施策実行の過程は徹底した透明性を確保された検証にさらされなければならない。不十分であれば直ちに変更するためである。最も合理的な施策が、私権を制限することになることはありうる。国民が民主的に参加して合理性を確認した施策であればこそ納得が可能であり、スムーズな実行が可能となる。また、当然のことながら、全体のために個人の利益が犠牲になるときには、適正な補償が必要となる。

「現行憲法の立場でも、十分に新型コロナ蔓延の事態に対処できる」のではない。現行憲法の立場を十分に活かすことによってこそ、新型コロナ蔓延の事態に対処できる「信頼できない政権にお任せしたら、国民の命と家計は取り返しのつかないこととなる」のだ。この事態を改憲へのステップとして利用しようなどとは、見当違いも甚だしい、とんでもないこと。しっかりと眼を見開いて、危険な政権の暴走と、改憲策動に歯止めを掛ける言論が必要である。
2020年の憲法記念日。薫風心地よけれども、風波は高い。
(2020年5月3日)

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