澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「香港立法議員資格剥奪」と、「学術会議会員任命拒否」と。

(2020年11月12日)
昨夜(11月11日)の時事配信記事のタイトルが、「中国、『忠誠』なき議員を排除 香港民主派は抗議の辞職表明」である。権力がその本性を剥き出しに、権力に抵抗する者の排除を断行したのだ。中華人民共和国、さながら臣民に忠誠を求めた天皇制の様相である。しかし、果敢に抵抗する人々がいる。

民主主義社会では、民衆が権力をつくり、民衆の承認ある限りで権力の正当性が保たれる。だから、権力は民衆に「忠誠」を誓う立場にある。権力が民衆に「忠誠」求めることは背理である。権力が「反忠」の人物を排斥してはならない。

原理的に権力には寛容が求められる。民衆を思想・信条で選別し差別してはならない。政治活動の自由を奪ってはならない。権力に抵抗する思想や表現や政治活動を弾圧してはならない。いま、天皇制ならぬ、「人民」の「共和国」がそれをやっているのだ。

「今ごろ何を騒いでいるのだ。中国ではごく当たり前のこと」「香港が中国並みになったというだけのこと」という訳知りの声もあろうが、かくもたやすく、かくも堂々と、権力がその意に沿わない民主主義者を排除する図に衝撃を受けざるを得ない。

報道では、民主派議員19人が11日夕に会見し、4人以外の15人も抗議のため一斉辞職すると表明。定数70の立法会で21人いた民主派は2人に激減することになり、今後は親中派の独壇場になるという。

この民主派議員たちの抗議の辞職は、香港社会だけでなく、国際社会に向けての捨て身のアピールなのだ。この香港民主派の抵抗を支持する意思を表明しよう。

時事は、こんな報道もしている。
《「独立思想広めた」教師失職 当局、現場への介入強化―香港》(20年10月06日20時48分)

 香港政府の教育局は6日までに、「香港独立思想を広めた」として、九竜地区の小学校教師1人の教師登録を取り消したと発表した。独立派の主張を授業で扱ったことによる登録抹消は異例で、教育現場に対する当局の介入強化や教員への萎縮効果が懸念されている。

 この教師は、昨年、小学5年生の授業で独立派の活動家である陳浩天氏が出演したテレビ番組を紹介。「番組によると、独立を訴える理由は何か」「言論の自由がなくなれば香港はどうなってしまうか」などと尋ねる質問用紙を配布した、という。教師自身が独立を主張したとは報じられていない。
それでも、教育局は「教材が偏っており、生徒に害を与えた」と指摘。この教師は既に離職しているが、今後他の教師による「問題行動」が確認された場合、同様に処分はあり得ると表明した、と報じられている。

強権とたたかっている香港の人々に敬意を評したい。こんな社会はごめんだ。中国のようにはなりたくない。

いや、日本も危うい。菅政権は、政権批判の立場を堅持する日本学術会議を快く思わず、政権批判の発言をした6名の任命を拒否した。思想・良心の自由、表現の自由、学問の自由を侵害する行為だとの批判を覚悟しての強権の発動である。中国共産党の香港に対する強権的姿勢と、本質において変わるところはない。

まだ、私たちは声を上げることができる、政治活動もできる、選挙運動もできる。選挙で政権を変更することもできる。三権分立も何とか守り続けている。この自由や民主主義を錆び付かせないように、大切にしたい。まずは、粘り強く学術会議任命拒否を撤回させねばならない。

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