澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

宇都宮健児君、立候補はおやめなさいーその9

宇都宮君、今日はほかならぬ君自身の、公職選挙法違反の事実(運動買収罪)を指摘する。正直なところ、やや気が重い。しかし、やはり指摘しなければならないと決断した。今日指摘する君の行為は、徳洲会や石原宏高陣営が行った違反行為と変わらないのだから。

本日の赤旗が、君の「都知事選への出馬の意向を表明」を伝えている。奇妙なことだが、誰の推薦とも書かれていない。「人にやさしい東京をつくる会」の名さえまったく出てこない。昨年は、有識者40氏の声明を先行させて、候補者選定手続の正当性にそれなりの心配りをしたが、今回はそれもない。君の立候補によって、革新・リベラル陣営が、反石原・猪瀬、そして反改憲・反安倍・脱原発の勢力結集に、適任の候補者を探し出そうというプロセスが抑え込まれようとしている。「推す人もなしの出馬の意向」は、とにもかくにも「自分が出たい」という君の気持ちだけがぎらついて、他の候補者選びへの牽制の意図が見苦しい。

本日の赤旗は、共産党の宇都宮支持を報じてはいない。「政策を支持していただけるすべての団体、政党に支援を訴えたい」という君の言を紹介するだけだ。君は、これから政策を作って「この指とまれ」と声を上げるつもりのようだ。どなたが政策を作るのかは知らないが、その政策を実現するにふさわしい有能で魅力ある別の候補者を捜すべきではないか。

少し驚いたのは、君が記者会見で、「徳洲会からの5000万円裏献金疑惑について徹底解明し追及していく」と表明したとか。ほんとに、そんなことが君にできることなのか。君にそう言う資格があるのか。省みて、疚しいところはないのか。

同じ赤旗の別のページに、維新関連の不祥事が3件報道されている。一見すると「軽微」な事件、しかし、さすがに赤旗は政治がらみの違法に関する事件はきちんと報道している。

私は、選挙制度を大切に思っている。公選法の弾圧法規としての部分には断固反対し闘ってきたが、選挙の公正を確保するための公選法の規定は、大切にし、これを武器として保守陣営の金権政治の横行と闘ってもきた。

この点に、ダブルスタンダードがあってはならない。私は、自分のブログで、誰よりも熱心に、石原宏高を叩き、徳洲会を叩いてきた。宇都宮君、君の選挙だから例外というわけにはいかない。とりわけ、革新陣営には、高度な廉潔性、清廉潔白性が求められる。都知事選の候補者たらんとする革新統一候補となればなおさらのことだ。

ところが、君には廉潔性が欠けている。それどころではない。今日の赤旗が報道している事件と同列の疑惑がある。君が立候補の意向を表明したというのだから、そのことを指摘せざるを得ない。そして、まだ、宇都宮君を推すとは決めていない、各政党や政治勢力、各民主団体、そして選挙運動に参加しようという志をもつすべての市民に、警告を発したい。宇都宮君を推すことは、私が指摘するリスクを引き受けることになる、それでも敢えて宇都宮君を推すのかどうか。

本日の赤旗が報道する維新関連不祥事3件のうちの1件は、松井一郎大阪府知事が「政治資金収支報告書に、自分の会社からの『寄付』を記載しなかったこと」について告発された事件の不起訴の報道。これは、松井の政治団体への単純な金銭寄付の報告書不記載ではない。松井が経営する電気工事会社から二人の社員(秘書)が、政治団体の職員として派遣されていた。二人の給与全額は派遣元の電気工事会社から支払われていた。この、「給与相当分を寄付金として記載しなかったこと」が政治資金規正法違反に当たるとして市民団体から告発されたもの。その告発を支える法解釈は総務省見解に基づいてのものだ。不起訴の理由は「嫌疑不十分」だが、何がどう不十分だったのかは報道ではさっぱり分からない。

松井は、自分が経営する会社の社員を、自分が主宰する政治団体の職員として派遣して使ったのだ。松井の頭の中では、会社も政治団体も、自分が主宰し金を出しているのだから、何の区別もないのだろう。このことが良識ある市民からの大きな批判となった。松井の告発代理人には、私もなったし、宇都宮君もその一員だったではないか。

労働契約にだけ拘束される立ち場の労働者が、使用者の政治的立場を押し付けられてはならない。会社の従業員が、社長の主宰する政治団体に派遣や出向をさせられてはならないのだ。そのような事実があれば、きちんと事実関係を追跡することができるように、透明性が確保されなければならない。政治資金規正法による報告書に記載の義務がある。政治団体に派遣された「秘書」の給与相当分の報告書不記載は、単なる形式犯ではない。

問題は、この労働者の派遣先が、一般的な政治団体の活動ではなく、具体的な選挙運動となった場合のこと。このばあいには、公選法に明確に違反する犯罪「運動員買収罪」が成立する。派遣元も、派遣された労働者も、処罰対象となる。宇都宮君、君には心当たりがないか。保守陣営は汚い、違法を繰り返してきたと、我々は告発してきた。君には、その先頭に立つ資格があるか。

徳洲会は強く批判されている。君が追及するという猪瀬は、その徳洲会から金をもらっている。さて、その徳洲会とは何をしたのだろうか。

昨年12月の衆院選で、徳洲会は傘下の病院職員を鹿児島2区の選挙運動に送り込んだ。「徳洲会では選挙は業務が当たり前。ある意味、本業の医療より優先される」との職員談話も報道されている。病院職員が、労働契約上は生じ得ない選挙運動業務に動員されているのだ。

おそらくは、徳田虎雄の頭の中は、病院職員は自分の子飼い、医療をやらせようと選挙運動をやらせようと同じ賃金を支払っておけば何の問題があるものか、というものであろう。しかし、選挙運動は、無償でなくてはならない。病院職員としての賃金を支払いながら、選挙運動をさせれば、典型的な運動買収罪(公選法221条1項)に当たる。強制性が問題なのではない。無償原則違反が問題となるのだ。

そこで、脱法のためのカムフラージュが必要となる。この種のカムフラージュの常套手段は、「欠勤の扱い」か「有給休暇の取得」かのどちらか。まったくのボランティアとして自主的に、無償で選挙に参加したという形づくりが必要なのだ。徳洲会では、「欠勤による給与の減額分は賞与で加算支給するほか、1日3000円の日当が賞与に上乗せする形で支払われていた」と報道されている。つまりは、形だけの「無償の選挙運動」の体裁をとりながらも、実質において選挙運動に対価を支払うことが、犯罪とされているのだ。

徳洲会と言えども、脱法の形づくりくらいはやっている。宇都宮君、君の場合は、どうだったろう。君は、雇傭している複数の事務職員を選対事務所に派遣していなかったか。何のカムフラージュさえもなくだ。君の頭の中も、松井や徳田と同じように、自分の法律事務所の事務員なのだから、選挙運動をさせたところで何の問題もない、というものではなかったか。君の指示に従わざるを得なかった職員の方をまことに気の毒に思う。君の罪は深い。

事態を飲み込めない人のために、解説をしておこう。公職選挙法221条1項は、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」というのが構成要件となっている。分かりやすく、抜き書きをすれば、「選挙運動者に対し金銭(この場合はいつものとおりの給与)の供与をしたとき」は、運動員買収として犯罪なのだ、選挙運動はあくまで無償が原則、「いつものとおり賃金は払うから、選挙事務所で働いてきてくれ」というのは、運動員に対する金銭供与として、この条文の典型行為としての犯罪に当たるのだ。

徳洲会側が運動員買収の犯罪主体となった場合は、最高刑は3年の懲役。しかし、候補者本人が犯罪主体となった場合は、「4年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金」となる。宇都宮君、君は大丈夫か。徳洲会とは規模が違う、ことはそのとおりだ。しかし、徳洲会よりも人員も金額も少ないから問題がない、ことにならないことはお分かりだろう。

話題となった最近の類似事案として、2010年7月の参院選に民主党公認で立候補して落選した野村候補の事件がある。候補者自らが経営する不動産会社の複数従業員に給与を支払う約束をして投票依頼の電話をかけさせた。これが公職選挙法違反(選挙運動報酬約束罪)に当たるとして、起訴され一・二審とも有罪となり、最高裁でも上告棄却で確定した。給与相当額の金銭は合計70万2664円であったが、供与の約束だけで支払いはされなかった。それでも逮捕され、勾留され、有罪になった。運動員買収では、小林千代美衆院議員、後藤英友衆院議員の実例もある。

もちろん、すべての違反が摘発されるわけではない。このまま、公訴時効が完成する可能性は高いと思う。しかし、それまで君はそのリスクを抱えたままでいなければならない。万が一にも、当選したときには、君が「百条委員会」で脂汗を流すことになろう。3年連続の都知事選という悪夢ともなりかねない。君を推した政党や市民にも、迷惑をかけることになる。

なによりも、革新の候補者は清新で、高度の廉潔性を要求されるのだ。その点、君はまったく不適格。だから、潔く、立候補をおやめなさい。
(2013/12/29)

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Published in 月曜日, 12月 30th, 2013, at 00:00, and filed under 宇都宮君おやめなさい.

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