澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「まだ国民の支持がある」ー安倍晋三が語る採決強行の論理

ホントのところはですね。安保法制についての丁寧な説明なんて要らないんでございます。なんと言っても、自民党が選挙に勝っているわけでございますから。しかも圧倒的にですよ。国民の皆さまから、存分にやりたまえとワタクシは予めのご支持を得ているんでございます。だから、丁寧な説明抜きの採決強行についても、国民から了解済みだということをご了解いただきたいわけでございます。

民主主義の世の中ですから、民意が最も大切でございましょ。その民意は選挙に表れます。けっして、デモや集会ではないのでございます。2014年暮れの総選挙では、幸いに我が自民党が、主権者の皆さまから厳粛に引き続いての政権の委託を受けたわけでございます。国権の最高機関である国会の議席は、与党が圧倒的な多数を占め、第一党の党首であるワタクシが内閣総理大臣としての指名を受け、憲法の規定に従って天皇陛下にご任命いただいたのでございます。

選挙制度が歪んだ鏡になっているとか、小選挙区制のマジックだとか、民意は正確に議席に反映されていないとか、自民党の絶対支持率はわずか25%だとか、いろいろご意見のあることはすべて承知しています。しかし、どれもこれも民意を獲得できなかった陣営の負け惜しみというほかはありません。現行のルールでワタクシたちは勝たせていただいたのです。勝てば官軍、しかも民主主義の儀式としての選挙で勝ったのです。

その選挙の公約をよくお読みいただけば、今国会でご審議いただいている法案のことも書き込んでありますよ。具体性がないとか、目立たないようにしている、などという些末なご批判はとるに足りないものと思います。公約とは、全体的な方向を決めるものではないでしょうか。そもそも我が党は、堂々と9条を改正して国防軍を作るという具体的な憲法改正案を公表しています。ワタクシが右翼的だとか好戦的だとか、反憲法的だなどと言われているのは、今日に始まったことではありません。昔からのことでございますよ。もちろん選挙前からのこと。それでも、堂々と選挙に勝たせていただいたのですから、安全保障政策については、国民の皆さまから、このワタクシとワタクシの率いる政権がお任せいただいた、そう考えて差し支えないではありませんか。

そもそも、安全保障や軍事の問題については、国民の皆さまには分かりにくいことなのです。選挙で選ばれた政権に任せていただくことがもっとも適切だと確信しているわけでございます。

分かりにくさの原因の一つは、問題が複雑で専門用語も多いこと、本当に理解するためには厖大な時間と労力が必要なのです。実のところ、ワタクシだってよくは分かっていないのです。信頼する官僚の作ってくれた資料とメモの棒読みでなんとか急場を凌いでいるのですから。ましてや、主権者である国民の皆さま方はお忙しい。勤務のことや商売のことで頭がいっぱいでございましょう。安保法制だけを考えて暮らしておられるわけではない。デートもすれば、プロ野球も気になる、NHKのドラマも見なけりゃならないでございましょ。国民の皆さまが十分に安保法制の理解ができないことは当然のことでもあり、やむを得ないことでもあるのです。

分かりにくさの原因のもう一つは、ことがらの性質上、明らかに出来ないことが多いことにあるのでございます。何しろ、防衛機密の漏示は、戦前であれば死刑を含む重罪でした。国会では、野党の諸君が「情報公開せよ」「説明責任を全うせよ」「事実が分からずして審議ができるか」などと叫びます。国民の皆さまには、一見もっともな要求と聞こえるかも知れません。しかし、責任あるワタクシとしては、軽々に公の場で防衛秘密を漏示するに等しい利敵行為に及ぶことができようはずはありません。とぼけて話をそらしているだけというわけでもないのでございます。

ですから、我が国の安全保障についての論議は、ワタクシを信頼してお任せいただくしかないのでございます。ワタクシが信頼できないとなれば、次の選挙でワタクシに代わるどなたかを選び直せばよいのです。それまではワタクシが総理として責任をもって、法案を提出し国会では与党多数で粛々と物事を決めていく。これが民主主義というものでございます。もちろん一億国民の中には、反対も心配もございましょう。しかし、いちいちこれに対応していては、ものごとは前には進みません。何よりも安全保障には政策決定のスピードと断固たる姿勢が大切なわけでございます。

選挙で選ばれたワタクシこそが国民の総意を体現する立場にあるのでございます。ですから、ワタクシを信頼することは、民意を尊重すること。主権者国民の皆さまには、ワタクシに政治をお任せていただき、反政府的な「戦争法案反対」のデモや集会に参加するなど面倒な上に無駄なことはおやめになって、日常生活にいそしんでいただきたいのでございます。それこそが、賢明でもあり、望ましい民主主義政治のあるべき姿でございましょう。

ワタクシを首班とする閣議決定も、ワタクシの内閣が提案する法案も、それ自体が民意そのものであります。ですから、国民の皆さまには、中身を読まずとも、この法案が国家の安全を守り、国民の幸福を維持し増進するものと信頼していただくことが何よりも肝要なのでございます。

それでも、「戦争準備の法案だ」「他国の戦争に巻き込まれるおそれがある」「安倍の危険な好戦性の表れだ」「違憲の立法だ」などという悪宣伝が振りまかれていますので、これを払拭するために、繰りかえし「国民の皆さまには丁寧な説明を」と申しあげてまいりました。

何のための「丁寧な説明」か。もちろん、国民の皆さまを説得しご納得いただいて、ワタクシにご同意をいただくためのものでございます。けっして、国民の皆さまの民意を問い直すものではございません。法案成立は、国際公約なのですから、今さら撤回はできません。世論調査の結果では「丁寧な説明がなされていない」「説明不足だ」という意見が8割を超えて、説明すればするほど法案に反対の声も増えているやに聞いております。ワタクシのインターネット出演も評判が芳しくない。それなら、聞く耳を持たない、ものわかりの悪い国民の皆さまへのご説明は無駄なことですから、打ち切らざるを得ません。国会の内外でのご説明を打ち切って、「決めるときには決める」。これこそがワタクシに与えられた任務なのでございます。

繰りかえしになりますが、安保法制関連2法の採決強行は、国民の皆さまから負託を受けたワタクシの責任として断固行うものなのでございます。でありますから、野党や、憲法学者や、弁護士会や、広範な有識者や、今や反安倍で固まりつつあるマスコミの論調や、今は影響力を失った自民党の長老諸氏や、宗教団体や、反対の決議を上げている地方議会や、元法制局長や、労働組合や民間諸団体や、昨日は大人数で国会前に押しかけた若者たちや、世論調査に表れた反対世論などが、どんなに大きな声で、なんと言おうとも、やるべき時にはやらねばならないのです。反対の声に耳を傾けて、その説得力にうろたえ反対勢力の大きさに圧倒されて遅疑逡巡することは、尊敬する祖父の遺志に反することでもあり、民主主義にもとるあるまじきことであるとのワタクシの信念をご理解くださるようお願いする次第でございます。

いま、安保法制関連法案に反対は、圧倒的な国民の声になりつつあります。しかし、幸いにして、その反対世論は内閣の不信任には直結していません。最近の世論調査でも、いまだに安倍内閣の支持率は40%を維持しています。たとえ「衆参両院で2度の採決を強行して、その都度支持率が5%ずつ低下しても、まだ30%台に踏みとどまることができ、危険水域までは落ちないというのが政権の思惑だ」、一部のマスコミがこう報道したとおりなのです。「このような事態でなお私を支持してくれる国民の3割」こそがワタクシの心の支えで、頼りであり杖なのでございます。私を支持し共鳴される、この人たちのいる限り、ワタクシはその方々の誠の心に応えるつもりなのでございます。
(2015年7月11日)

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