澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「核兵器禁止条約 交渉開始決議」に日本が反対する、その「屁理屈」。

国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障問題)は、10月27日核兵器禁止条約締結に向けて交渉を開始する会議を来年に招集するとした決議案を、圧倒的な賛成多数で採択した。「『核兵器を禁止し、完全廃絶につながるような法的拘束力のある措置』を交渉するために『国連の会議を2017年に招集するよう決定する』」というもの。キーワードは「法的拘束力」である。世界各国の核廃絶への意気込みが伝わってくる。年内に国連総会本会議で採択のうえ、核兵器の法的な禁止をめぐる本格的な議論が初めて国連で行われることになる。ところが、この決議に、日本が反対に回っていることが話題になっている。

この決議の共同提案国が57か国。採決の結果は、賛成123、反対38、棄権16だった。唯一の戦争被爆国である日本が、共同提案国57か国に加わっていない。賛成123か国の中にもはいらなかった。棄権ですらなく、少数派・反対グループ38国の一員となった。北朝鮮ですら賛成している。NPT体制における核保有5大国の一角である中国は棄権と、国際世論に配慮しているのに、日本は「反対」というのだ。

「法的拘束力をもつ核軍縮には反対」と明言する日本。これが本当に、私の国だろうか。かつて、3000万筆の原水爆反対署名を集めて、国際世論を喚起した被爆国と同じ国なのだろうか。核兵器廃止に反対票を投じる現政権が、日本国民を代表する正当性をもっているのだろうか。憤懣に堪えない。

さらに噴飯物なのが、政府の反対理由である。岸田文雄外相・萩生田官房副長官が閣議のあとの記者会見で明らかにし、同旨をアベ首相も述べている。

「慎重な検討を重ねた結果、反対票を投じた。北朝鮮などの核、ミサイル開発への深刻化などに直面している中で、決議は、いたずらに核兵器国と非核兵器国の間の対立を一層助長するだけであり、具体的、実践的措置を積み重ね、核兵器のない世界を目指すというわが国の基本的考えと合致しないと判断した」

「核兵器のない世界を目指す」から、世界の潮流に断乎逆らって「法的拘束力をもつ核軍縮には反対」というのだ。誰がどう考えたところで、説明になってない。論理として成り立たない。「反対」の姿勢もさることながら、こんな理由しか言えないのだから情けない。とんでもない政府ではないか。

もし、こんな屁理屈がまかりとおるのなら、賛成・反対自由自在だ。何にでも賛成もできるし、反対もできる。訳が分からなくなる。理屈と膏薬はどこへでも付く、とはよく言ったもの。たとえば、次のようにだ。

「慎重な検討を重ねた結果、世界平和と軍縮を促進しようという決議には反対票を投じた。平和を語って戦争を準備する勢力の台頭など深刻な事態に直面している中で、決議は、いたずらに平和を称える勢力と軍縮によって軍事バランスを崩すことが危険だと考える諸国との間の対立を一層助長するだけであり、具体的、実践的措置を積み重ねて、平和な世界を目指すというわが国の基本的考えと合致しないと判断した」

「慎重な検討を重ねた結果、地球温暖化防止のための温室効果ガス排出規制に関する条約には反対票を投じた。世界に経済発展の格差という現実があり、各国が開発と環境保全との深刻な矛盾に直面している中で、決議は、いたずらに先進国と途上国、排出規制促進派と反対派の間の対立を一層助長するだけであって、具体的、実践的措置を積み重ね、地球環境保全を究極目標とするわが国の基本的考えと合致しないと判断した」

「慎重な検討を重ねた結果、あらゆる児童を労働から解放して教育の機会を保障すべきとする決議には反対票を投じた。国によっては、文化や財政や、あるいはその国に進出している資本の発言力によって、児童労働の解放は直ちに現実する見通しのない深刻な事態において、決議は、いたずらに後進国と先進国、貧しき者とこれを搾取する者との間の対立を一層助長するだけであり、具体的、実践的措置を積み重ねて、やがては過酷な児童労働をなくそうというわが国の基本的考えと合致しないと判断した」

「慎重な検討を重ねた結果、両性の平等を促進しようという決議には反対票を投じた。世界の各国はそれぞれの歴史や伝統に基づく男女の社会的・文化的・法的地位のあり方をもち、それぞれ個別多様に深刻な事態に直面している中で、決議は、いたずらに形式的平等促進を称える諸国と、国内諸事情によってそのことに慎重な諸国との間の対立を一層助長するだけであり、具体的、実践的措置を積み重ねて、真の両性の平等を目指すというわが国の基本的考えと合致しないと判断した」

「慎重な検討を重ねた結果、世界から貧困と格差をなくそうという決議には反対票を投じた。世界の各国には、貧困と格差をなくそうという諸国だけでなく、経済発展が何よりも優先と考える国もあり、熾烈な競争こそが配分すべきパイを極大化すると考える国もある。決議は、いたずらに各国の政策対立を一層助長するだけであり、具体的、実践的措置を積み重ね、貧困格差のない世界を目指すというわが国の基本的考えと合致しないと判断した」

国際問題だけではなく、国内問題でも同じことだ。

「慎重な検討を重ねた結果、近代立憲主義の原則を尊重すべしとする国会決議には反対せざるを得ない。我が国には憲法9条を遵守して国際協調と平和を擁護せよという見解のみがあるわけではない。防衛環境の変化の中で、政府が厳格に憲法を遵守すると宣言することは特定の近隣国に誤ったメッセージを送ることになり、抑止力を脆弱化することにもつながるとする意見も根強い。このような意見がある限り、決議は、いたずらに「立憲主義の理念」と「国防最優先の思想」との間の対立を一層助長するのみならず、具体的、実践的措置を積み重ねて、立憲主義と国防との両立を目指すというアベ政権の基本的考えと合致しないと判断した」

「慎重に検討を重ねた結果、福祉を増進し、教育を無償化し、労働条件を改善し、中小企業と農漁業を振興し、環境を保全するための予算増額の措置には反対せざるを得ない。我が国には、この国を「世界で一番大企業が活躍しやすい国」にすべきであるという有力な耳を傾けるべき意見がある。このような意見がある限り、老齢者福祉も、障がい者福祉も、生活保護も、貧困対策も、教育無償化も、労働条件改善も、中小企業と農漁業を振興も、すべては大企業の利益を損なうものであるいじょう、いたずらにこの国の深刻な階級対立や思想対立を一層際立たせることを助長するのみならず、具体的、実践的措置を積み重ねて、大企業が満足する範囲で福祉政策との両立を認めるというアベ政権の基本的考えと合致しないと判断した」

こんな「屁理屈政権」には、即刻退場してもらわねばならない。
(2016年10月30日)

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