澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

国家権力による「所得の逆再配分」に抗議する

本日、安倍晋三首相は、2014年4月から予定通り消費税率を8%に引き上げると表明した。予定の通りとは言え、たいへんなことだ。

私も、学生の頃に財政学や社会政策を学んだ。そこでは、財政が冨や所得の再配分機能をもっていると教えられた。福祉国家理念や、富と所得の平準化、中間層の拡大などは当然の国家目的とされた。ここには、資本主義経済が不合理で修正ないし是正を要するという了解があった。ところがどうだ。今、安倍自民がやろうとしていることは、その正反対。低所得階層から、間接税をもぎ取って、企業減税の財源にしようということだ。国家権力による「富と所得の逆再配分」だ。

アベノミクスは、3本の矢を放つという。3本とも、低所得者の心臓を狙っている。晋三の放つ、心臓への痛みの矢だ。私は既に年金生活者だ。私も強い痛みを感じる。年金は下がる。物価は上がる。そして消費増税だ。いい加減にしてくれ。

「日本経済は回復の兆しを見せている」だろうか。経済の回復とは、大企業の儲けが指標ではない。働く者が潤うこと、失業率が低下し、賃金が上昇し、そして生活必需品の物価が下がることではないか。そのような意味での経済の回復は兆しもない。そのうえ、消費増税は確実に「庶民の経済」に打撃を与えることになる。

消費増税と企業減税のセットサービスを最も喜んでいるのが経団連だ。安倍の経済政策が、「強きを助け、弱きにしわ寄せ」だから。いや、「貧者からむしりとって、富者に贈る」ものだからだ。企業経営者の満面の笑みは、本来、選挙での反撃の矢を受けるはずのもの。これまで、消費税を作り上げた内閣は、国民から相応の選挙による懲罰を受けた。どうして、安倍内閣の支持率が下がらないのか。不思議でならない。

安倍の消費増税を「決められる政治の実現として評価する」向きがあるという。恐るべきことだ。戦争やファシズムは、果断の結果であろう。庶民を苦しめる決断なら、何もしない優柔不断がずっとマシではないか。

また、安倍は、消費増税に備えて、成長戦略としての5兆円規模の歳出増を伴う経済対策と1兆円規模の企業減税をパッケージで実施するという。要するに、消費増税として庶民から吸い上げた分のすべてを企業のために使い切るということだ。何たることか。

憲法25条(生存権の保障)が泣いている。27条・28条(労働権・労働基本権)もだ。そして、憲法29条(財産権の保障)と22条(企業活動の自由) が笑っている。どこかが狂っているとしか思えない。本来なら、15条(参政権の保障)や、43条・44条(両議院の議員選挙権)の参政権や民主々義手続が、適切に働いて、こんな政権の跳梁を阻止しているはずなのだ。

民主々義が正常に機能していない。人権の保障もないがしろにされている。平和主義はもっと危うい。安倍政権に評価すべきところは皆無。憲法が危ういとは、具体的にあれもこれも危険水域にあるということなのだ。何とかしなければ‥。
(2013年10月1日)

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