高村正彦さん、卑怯な振る舞いはおやめなさい
本日の東京新聞は、集団的自衛権問題に関する記事が満載。論旨明快で読み応え十分。この新聞にこそ講読部数の伸びを期待したい。
一面トップが、「安保法制懇 空白3ヵ月」「報告時期 政権の意のまま」という大見出し。来週火曜日(5月13日)に提出とされている同懇談会の集団的自衛権容認提言について、「政治情勢に配慮し、安倍政権の都合に合わせて提出時期をずらしてきた」「諮問会議がもつべき客観性や第三者の視点は見えない」「議論は初めから容認ありきだった」「政権の意向を実現するための『舞台装置』としての役割が大きい」と、遠慮なく真実をついて手厳しい。
関連記事として、3面「核心」欄に、国民投票法改正案の衆院通過について「改憲手続きのみ先行」の記事。「『18歳成人・選挙権』棚上げ」だけでなく、他の課題についても先送りされている事情が手際よく解説されている。
24・25面が看板の「こちら特報部」、今日は集団的自衛権についての「『密接国』の見方」。米・韓は、日本の集団的自衛権行使容認論をどう見ているか、に迫っている。米での歓迎勢力は武器商人だけだ、オバマ政権はリップサービスで「歓迎」とまでは言ったが決して「必要」とは言っていないことに注意せよ、という論調。また、韓国は、朝鮮半島有事で日本とともに集団的自衛権行使を望むどころか、自衛隊の軍事活動の拡大には拒否感・警戒感が強い、という当然の指摘。
特報部の「デスクメモ」が、次のように呟いている。本質を衝く鋭さをもっている。
「憲法9条により、集団的自衛権は行使できない。どんなに解釈を変更してもできないものはできない、というのが歴代政権の姿勢だ。安倍政権は『変更』というが、『逸脱』にほかならない。改憲できないからといってあまりにひどいごまかし。本当に必要なら堂々と改憲を議論したらいい」
さらに、27面(社会面)に、砂川事件の元弁護団員が、「砂川判決 政府援用に抗議」「集団的自衛権と無関係」と、声明発表の報道記事。
この件は、他紙も報道している。
赤旗は、次の記事。
「旧米軍立川基地(東京都)の拡張に反対するデモ隊の一部が基地内に立ち入ったとして起訴された砂川事件(1957年)にかかわった弁護士らが9日、都内で記者会見し、自民党の高村正彦副総裁らが唱える砂川事件最高裁判決を援用した集団的自衛権の行使容認論について「牽強付会の強弁に過ぎない」と厳しく批判した声明を発表しました。
会見したのは砂川事件弁護団の内藤功氏、新井章氏、山本博氏、神谷咸吉郎氏ら。声明は首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、集団的自衛権の行使を容認する報告書を提出する前に取りまとめたものです。
このなかでは、裁判の「主要な争点」は日米安保条約に基づく米軍駐留の憲法9条適否であって、わが国固有の自衛権問題ではなかったことなど、砂川事件最高裁判決のとらえ方を説き、集団的自衛権行使の可否について判断も示唆も示していないと指摘しています。
会見で弁護士らは「国民世論を惑わそうとしているとしか評価できない言説」(新井氏)などと厳しく批判しました。弁護士らは声明を各政党に届け、自民党の高村副総裁にも面会を求めたいとしています。」
朝日は、
「安倍政権が集団的自衛権の行使を容認する根拠として、1959年の砂川事件の最高裁判決を引用していることについて、当時の弁護団が9日、都内で記者会見し、『砂川判決は集団的自衛権について判断を示しておらず、断固として抗議する』との声明を出した。
砂川判決は「自衛権」について、「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置」と定義。この部分について、自民党の高村正彦副総裁は「判決は必要最小限の集団的自衛権を排除していない」として、行使容認の根拠になるとの見方を示している。
この日の声明には、当時の弁護団276人のうち21人が賛同。裁判の争点について「日米安全保障条約に基づく米軍駐留の合憲性であり、わが国固有の自衛権の問題ではなかった」と指摘した。判決が定義した「自衛権」についても、「わが国をめぐる『個別的自衛権』の問題であり、集団的自衛権の問題では全くない」と訴えている。
声明文を起案した新井章弁護士(83)は「事件の当事者として、裁判で何が判断されたのか多くの人に知ってほしい」と訴えた。弁護団は今後、各政党に声明文を送り、高村副総裁に面会を求めるという。」
東京も同内容だが、自民・高村副総裁の「反論不必要という『反論』」が記事になっている。タイトルは「否定された主張 反論の必要ない」。記事の核心は、高村氏の「弁護団の主張は全面的に砂川判決で否定された。そういう人たちがなんと言っているかあまり興味がない」という発言。
そりゃおかしいよ。高村さん。
自分に都合のよいようにつまみ食いの発言をしておいて、批判されたら論戦は避けて、「あまり興味がない」ですか。元弁護団の皆さんの抗議の声明は、当時の法廷での弁護団主張を展開しているわけじゃない。この刑事裁判において、何が問題となって、最高裁がどんな文脈で何を語ったのかだけを問題にしていることが明らかではありませんか。弁護団が最高裁判決に異論あることは当然として、今問題になっているのは、「判決で否定された弁護団の主張の当否」ではない。砂川事件最高裁判決が、何を言ったのかを正確に読み解こうと言っているのではありませんか。
高村さん、論戦を仕掛けたのはあなただ。反論されて、尻尾を巻いて逃げてはいけない。面会を求められたら、あなたには、これに応じる義務がある。堂々と公開の場で論争しなければならない。「興味ない」なんて、言い訳は卑怯千万。あなたが言い出したことが、本当で正しいのか、それともごまかしのインチキに過ぎないのか、ことは憲法の解釈に関わる重大問題。たとえ、あなたに興味が無くとも、既に国民は大きな興味を抱いているのですよ。
(2014年5月10日)